説明

ドア装置

【課題】ドアパネル本体に梯子体を組込んだ場合でも軽量でパネル剛性を維持でき大型化が可能なドア装置を提供する。
【解決手段】ドアパネル本体19に梯子体20を一体化する。ドアパネル本体19は、複数段の梯子体装着用開口部を設けた外側板21と、この外側板21から離反する方向に膨出形成した外枠状補強用凸部と複数段の横梁状補強用凸部との間に複数段の梯子体装着用開口部を設けた内側板とを備えている。上記梯子体20は、上下方向に配置した手摺部84と、この手摺部84に設けるとともに上記外側板21および上記内側板に固定した複数段の取付板部85と、これらの取付板部85に外側から見て凹状に一体形成するとともに上記外側板21および上記内側板の上記梯子体装着用開口部に嵌合した複数段の足掛凹部86とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梯子体を一体化したドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車重60トン以上の大型作業機械は、キャブから地上に降りることなく上部旋回体の各部メンテナンスができるように、図15に示されるように、キャブ後方のドアパネル本体1に複数のステップ2,3を溶接付けすることにより、これらのステップ2,3によって梯子の機能を持たせ、上部旋回体上に登れるようにしている。
【0003】
また、キャブに昇降するための梯子をキャブ下側のドアパネル本体の内側に一体化させたものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、上部旋回体のタンク側面に梯子を設け、上部旋回体上に登れるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−182099号公報(第2頁、図2−3)
【特許文献2】特開2000−204596号公報(第3頁、図1−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図15および特許文献1に示されるようにドアパネル本体にステップや梯子を一体化させる場合は、ドアパネル本体自体が板金の溶接構造物であるため重い上に、さらに、この板金溶接構造のドアパネル本体に梯子を取付けるため、より重くなり、耐久性を維持したままドアパネル本体を大きくすることができない。
【0007】
このため、特許文献2に示されるようにドアパネル本体ではなく上部旋回体の外側面に梯子を設置する場合もあるが、上部旋回体の側面から梯子が張出し、上部旋回体の側面に沿って移動する作業者にとって、梯子が障害物となるおそれもある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ドアパネル本体に梯子体を組込んだ場合でも軽量でパネル剛性を維持でき大型化が可能なドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明は、複数の金属板部材を接着して形成されたドアパネル本体と、このドアパネル本体に一体化された梯子体とを備え、上記ドアパネル本体は、複数段の梯子体装着用開口部が設けられた外側板と、この外側板から離反する方向に膨出形成された外枠状補強用凸部とこの外枠状補強用凸部の枠内に外側板から離反する方向に膨出形成された複数段の横梁状補強用凸部との間に外側板の内側面に接着された複数段の接合部を有し、これらの接合部に外側板の梯子体装着用開口部に対応する複数段の梯子体装着用開口部が設けられた内側板とを備え、上記梯子体は、上下方向に配置された手摺部と、この手摺部に設けられ上記外側板および上記内側板の複数段の接合部に固定された複数段の取付板部と、これらの取付板部に外側から見て凹状に一体形成され上記外側板および上記内側板に設けられた複数段の梯子体装着用開口部に嵌合された複数段の足掛凹部とを備えたドア装置である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のドア装置における梯子体の複数段の足掛凹部が、ドアパネル本体の外側面に開口を有する角箱形に形成され、各足掛凹部の開口の下縁に沿って手摺部に設けられた複数段の足掛ロッド部を備えたものである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のドア装置において、外側板と内側板の外枠状補強用凸部および横梁状補強用凸部との間の空間に充填された発泡材を具備したものである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のドア装置におけるドアパネル本体が、外側板の一端側と内側板の一端側に位置する外枠状補強用凸部との間に設けられドアパネル本体を取付相手フレームに開閉自在に連結するヒンジを取付けるための一端側の内部補強板と、外側板の他端側と内側板の他端側に位置する外枠状補強用凸部との間に設けられドアパネル本体を取付相手フレームに固定するロック機構を取付けるための他端側の内部補強板とを備えたものである。
【0013】
請求項5に記載された発明は、請求項4記載のドア装置におけるヒンジが、ドアパネル本体の一端側の上部から下部にわたって設けられ、ロック機構は、ドアパネル本体の他端側の中央部に設けられたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、外側板と、この外側板から離反する方向に膨出形成された外枠状補強用凸部および複数段の横梁状補強用凸部を有する内側板とを接合してドアパネル本体を形成したので、ドアパネル本体側の軽量化とパネル剛性の向上を図ることができるとともに、ドアパネル本体の外側板および内側板の接合部に梯子体の複数段の取付板部を固定することで、ドアパネル本体と梯子体とが相互に補強し合って、十分なパネル剛性および梯子強度を確保でき、梯子体を取付けてもドアパネル本体の大型化が可能である。さらに、外側板および内側板に設けられた複数段の梯子体装着用開口部に、梯子体の複数段の取付板部に設けられた複数段の足掛凹部を嵌合したので、ドアパネル本体の外側に梯子体が突出する量を抑えてコンパクトに組込むことができるとともに、梯子体の取付板部に一体形成された足掛凹部は、梯子体の強度を向上させるとともにドアパネル本体の剛性を向上させることもできる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、角箱形に形成された複数段の足掛凹部と、各足掛凹部の開口の下縁に沿って設けられた足掛ロッド部とにより、梯子体の強度およびドアパネル本体の剛性を向上できるとともに、各足掛凹部に掛けた足を各足掛ロッド部により確実に係止できる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、梯子体を用いて昇降する際にドアパネル本体から生じるおそれのある騒音を、発泡材により吸収して防止できる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、外側板の一端側と内側板の一端側に位置する外枠状補強用凸部との間に設けられた一端側の内部補強板にヒンジを取付け、外側板の他端側と内側板の他端側に位置する外枠状補強用凸部との間に設けられた他端側の内部補強板にロック機構を取付けるので、一端側の内部補強板および他端側の内部補強板により、ヒンジおよびロック機構の取付強度を向上できるとともに、ドアパネル本体のパネル剛性を向上でき、このドアパネル本体を介して梯子体を支持する強度を確保できる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、ドアパネル本体の一端側の上部から下部にわたって設けられたヒンジと、ドアパネル本体の他端側の中央部に設けられたロック機構とにより、ドアパネル本体の他端側の下部にロック機構を配置する場合に比べて、ドアパネル本体をバランスよく固定支持でき、このドアパネル本体を介して梯子体を支持する際の十分なパネル剛性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るドア装置の一実施の形態を示す外側からの斜視図である。
【図2】同上ドア装置の内側からの斜視図である。
【図3】同上ドア装置を備えた作業機械の斜視図である。
【図4】同上ドア装置の正面図である。
【図5】図4のV-V線断面図である。
【図6】図5のVI部の拡大図である。
【図7】図5のVII部の拡大図である。
【図8】図5のVIII部の拡大図である。
【図9】同上ドア装置の外側からの分解斜視図である。
【図10】同上ドア装置の内側からの分解斜視図である。
【図11】同上ドア装置のドアパネル本体の断面図である。
【図12】同上ドア装置のドアパネル本体の分解斜視図である。
【図13】同上ドア装置のロック機構およびロック解除操作機構の正面図である。
【図14】同上ドア装置のロック機構およびロック解除操作機構の側面図である。
【図15】従来のドア装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、図1乃至図14に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0021】
図3は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、掘削アームを備えた作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17などにより覆われている。サイドドア17はラジエータ室のドアであり、このサイドドア17に隣接するサイドドア18は、エンジン吸気フィルタなどを格納したフィルタ室のドアであり、これらのサイドドア17,18は、上部旋回体12の機体フレームに開閉自在に取付けられている。
【0022】
図1乃至図8に示されるように、サイドドア18は、ドアパネル本体19と梯子体20とが一体化されたものである。この梯子体20と、その取付構造は、後で詳細に説明する。
【0023】
図11は、サイドドア18のドアパネル本体19を示し、このドアパネル本体19は、金属板部材としての外側板21と、この外側板21に対し凹凸状にプレス成形されて外側板21の内側面に凹部を固定されるとともに凸部と外側板21との間に空間22を形成する金属板部材としての内側板23と、これらの外側板21と内側板23との間の空間22に充填された発泡材24とを具備している。
【0024】
図12に示されるように、外側板21および内側板23には、4列の梯子体装着用開口部25a,25bがそれぞれ同一形状に形成され、これらの梯子体装着用開口部25a,25bにより、図9および図10に示される梯子体装着用開口部25が構成されている。
【0025】
外側板21は、内側板23の1.2〜5.0倍の板厚にする。言い換えれば、内側板23は、外側板21より薄い板厚の鉄板を用いる。例えば、外側板21を1.2mmの鉄板とした場合、内側板23は、相反する強度と加工性とを満足するために、0.6mm、0.8mmなどの鉄板を用いることが望ましい。
【0026】
発泡材24は、外側板21または内側板23の内面に貼付された未発泡状態のシート状の発泡素材を、外側板21と内側板23との間の空間22内で加熱して発泡させ、成形する。発泡素材は、20倍程度の体積膨張率を有する高発泡性のゴム系吸音材が望ましい。発泡素材の加熱は、焼付塗装用加熱炉を用いて、焼付塗装と同時に行なうことが望ましい。
【0027】
そして、ドアパネル本体19を製造する際は、外側板21と内側板23とを、外側板21の周縁部のヘミング加工と、図示しない固定治具により固定した状態で焼付塗装用加熱炉に入れて、これらの間に塗布されている熱硬化性の接着剤を硬化させ、外側板21と内側板23とを接着する。
【0028】
このとき、外側板21または内側板23の内面に貼付された発泡素材を、焼付塗装用加熱炉の加熱により発泡させて、空間22内に発泡材24を充填し、さらに、焼付塗装用加熱炉の加熱により、外側板21および内側板23の外表面に予め吹付けられた塗料を焼付ける。
【0029】
例えば、接着剤34の熱硬化は、150℃で5分間の加熱をし、発泡材24の発泡は、150℃で20分間の加熱をし、焼付塗装は、180℃〜200℃で20分間の加熱をする。これらの加熱は、既存の焼付塗装用加熱炉を用いて行なうことができる。
【0030】
図12に示されるように、外側板21には、ヒンジ取付側の板部26aと、最上段および最下段の横方向に成形された板部26bと、上から第2段、第3段および第4段の横方向に成形された板部26cと、ロック機構取付側の板部26dとの間に、梯子体装着用開口部25aが開口されている。
【0031】
内側板23は、外側板21に接着剤により接合された4段の接合部27および外周側の接合部28と、これらの接合部27,28に対し外側板21から離間する方向に膨出成形された凸部29とを具備している。接合部27には、外側板21・内側板23間の余剰接着剤を溜めることで接着剤を均一に展伸するための接着剤溜り凸部27aが設けられている。
【0032】
図12に示されるように、この内側板23の凸部29は、ドアパネル本体19の一端側すなわちヒンジ取付側に位置する縦方向に成形された大型断面の外枠状補強用凸部29aと、最上段および最下段の横方向に成形された大型断面の外枠状補強用凸部29b,29bと、上から第2段、第3段および第4段の横方向に成形された小型断面の横梁状補強用凸部29cと、ドアパネル本体19の他端側すなわちロック機構取付側に位置する縦方向に成形された大型断面の外枠状補強用凸部29dとで構成されている。
【0033】
ヒンジ取付側の外枠状補強用凸部29aと、最上段および最下段の横方向に成形された外枠状補強用凸部29b,29bと、ロック機構取付側の外枠状補強用凸部29dとにより、内側板23の外周部を外側板21から離反する方向に膨出させて角枠状に形成した外枠状補強用凸部29a,29b,29b,29dが構成され、3本の横梁状補強用凸部29cは、その外枠状補強用凸部29a,29b,29b,29dの枠内で内側板23の一部を外側板21から離反する方向に膨出させて形成する。
【0034】
前記発泡材24は、図11に示されるように横方向に成形された外枠状補強用凸部29bと横梁状補強用凸部29cとに充填する。最上部および最下部の太い外枠状補強用凸部29bには、図12に示されるように縦方向に凹状の強化用凹部30が形成されている。
【0035】
図11に示されるように、内側板23は、外側板21に密着された接合部27,28に沿って膨出成形された凸部29の中間部に段差状の補強変形部31が形成され、この段差状の補強変形部31により外側板21に対し凸部29の十分な高さを確保するとともに強度を確保している。
【0036】
図10乃至図12に示されるように、太い外枠状補強用凸部29a,29b,29b,29dは、断面二次モーメントなどの断面性能に優れ、強化用凹部30および補強変形部31などの補強構造もあることから、曲げ応力などに対して変形しにくいパネル剛性を有する。
【0037】
図12に示されるように、内側板23の接合部27には、外側板21に開口された3列の梯子体装着用開口部25aと対応して、梯子体装着用開口部25bがそれぞれ穴加工により設けられ、これらの各梯子体装着用開口部25a,25bの左右両側部では、接合部27などに穿設された梯子体固定孔32a,32bがそれぞれ設けられている。
【0038】
図11に示されるように、外側板21の外周縁部は、内側板23の周縁部を包みこむように折返し平坦に押しつぶして形成したヘミング加工部33により、内側板23の周縁部を咬込み結合する。内側板23の接合部27,28は、接着剤34により外側板21に接着され、この接着剤34により外側板21と内側板23の接合部27,28とを接合するとともにシールする。接着剤34は、粘性と熱硬化性を有するペーストタイプ構造用接着剤が望ましい。
【0039】
図12に示されるように、横梁状補強用凸部29cの一端側および他端側に位置する外枠状補強用凸部29a,29dは、最上部に位置する外枠状補強用凸部29bを内側に傾けるように内側に曲げ加工され、パネル剛性の向上が図られている。その曲げ加工をする際に内側板23のヒンジ取付側の外枠状補強用凸部29aおよびロック機構取付側の外枠状補強用凸部29dの各上部に皺が発生しやすいので、内側板23のヒンジ取付側の外枠状補強用凸部29aおよびロック機構取付側の外枠状補強用凸部29dが曲げ加工される内側の面に、皺の発生を防止する皺発生防止凹部38,39が形成されている。
【0040】
さらに、梯子体装着用開口部25aを有する外側板21と、この外側板21に対し位置決めされて外側板21の内側面に固定された梯子体装着用開口部25bを有する内側板23との間で挟まれるようにして、ヒンジ取付用の内部補強板41と、ロック機構取付用の内部補強板41aとが、それぞれ熱硬化性の接着剤により固定されている。
【0041】
すなわち、内側板23は、外側板21から離反する方向に膨出形成された一端側の外枠状補強用凸部29aおよび他端側の外枠状補強用凸部29dを含む外枠状補強用凸部29a,29b,29b,29dと、その枠内に形成された複数の横梁状補強用凸部29cとの間に梯子体装着用開口部25bが設けられた構造であるので、一端側のヒンジ取付用の内部補強板41は、外側板21の一端側と内側板23の一端側に位置する外枠状補強用凸部29aとの間に固定され、また、他端側のロック機構取付用の内部補強板41aは、外側板21の他端側と内側板23の他端側に位置する外枠状補強用凸部29dとの間に固定されている。
【0042】
内部補強板41は、中央部に凹状補強部42が細長く設けられ、この凹状補強部42の上下部にヒンジ取付凸部43,44がそれぞれ平面状に成形され、これらのヒンジ取付凸部43,44に位置決め用嵌合部45がそれぞれ凹状に形成され、1対のボルト挿入孔50がそれぞれ穿設されている。
【0043】
この内部補強板41に対し、内側板23のヒンジ取付側の外枠状補強用凸部29aの中央部には、内部補強板41の凹状補強部42と嵌合される凹状補強部47が細長く設けられ、この凹状補強部47の上側および下側にヒンジ取付面部48,49がそれぞれ平面状に成形され、これらのヒンジ取付面部48,49に複数のボルト挿入孔48h,49hがそれぞれ穿設され、また、各ヒンジ取付面部48,49の中央部であって2つのボルト挿入孔48h,49hの間に、位置決め用嵌合部51がそれぞれ下方へ突出する凸状に形成されている。
【0044】
そして、内側板23のヒンジ取付面部48,49に設けられた各位置決め用嵌合部51と、内部補強板41のヒンジ取付凸部43,44に設けられた各位置決め用嵌合部45とが、相互に嵌合して、内側板23に対し内部補強板41を位置決めする。この位置決めにより、内部補強板41の凹状補強部42と内側板23の凹状補強部47とが嵌合されるとともに、内部補強板41のボルト挿入孔50と内側板23のボルト挿入孔48h,49hとが正確に位置決めされる。
【0045】
一方、図12に示されるように、内側板23のヒンジ取付側とは反対側の辺部である外枠状補強用凸部29dにおける中央位置には、ロック機構取付用の取付孔52が設けられ、この取付孔52の下方に位置するドアパネル本体19の下部には、ロック解除操作機構取付用の取付穴53が開口されている。
【0046】
ロック機構取付用の内部補強板41aは、ヒンジ取付用の内部補強板41と共通の素材を用いて成形したものであり、ヒンジ取付用の内部補強板41と同様に外側板21と内側板23との間に固定されるが、ヒンジ取付凸部43,44の代わりに、中央部にロック機構取付用の取付孔52aが設けられ、下部にロック解除操作機構取付用の切欠部53aが設けられている。
【0047】
内側板23には、ロック機構取付用の4個の取付孔52が穿設されており、同様に、ロック機構取付用の内部補強板41aにも、4個の取付孔52aが穿設されている。これらの取付孔52aの裏面には後述するボルト69と螺合するナット(図示せず)が溶接されている。
【0048】
内側板23のヒンジ取付面部48,49上には、図10に示されるようにヒンジ54が取付けられる。
【0049】
このヒンジ54は、上部旋回体12の機体フレームFに複数のボルトにより固定された長尺の一方ヒンジプレート54aに対し、この一方ヒンジプレート54aの一端部および他端部にそれぞれ軸部材により回動自在に連結された複数の他方ヒンジプレート54bを介して、これらの他方ヒンジプレート54bにボルトにより固定されたサイドドア18のドアパネル本体19が開閉自在に設けられている。
【0050】
さらに、一方ヒンジプレート54aから他方ヒンジプレート54bにわたって、一方ヒンジプレート54aに対する他方ヒンジプレート54bの開き動作を一定角度で係止するヒンジプレート開き角度規制機構55が設けられている。
【0051】
図10に示されるように、このヒンジプレート開き角度規制機構55は、一方ヒンジプレート54aにガイドプレート55aが溶接され、他方ヒンジプレート54bにブラケット部55bが水平に折曲して設けられ、このブラケット部55bの軸穴55cにホールドステイロッド55dの基端側の縦軸部が垂直に回動自在かつ上下方向摺動自在に遊嵌され、このホールドステイロッド55dは、ガイドプレート55aに設けられた上下方向細長状のガイド穴を通して反対側に突出され、その先端側の縦軸部が、ガイドプレート55aの下部から水平方向に折曲形成された受板部55eの係合穴55fに係脱自在となっており、受板部55eの先端部には案内部55gが傾斜状に形成されている。
【0052】
そして、ドアパネル本体19の全開状態では、案内部55gの登り勾配を上昇したホールドステイロッド55dの先端側の縦軸部が、受板部55eの係合穴55f内に落下するので、一方ヒンジプレート54aに対するホールドステイロッド55dの動きを拘束して、このホールドステイロッド55dを介し、他方ヒンジプレート54bの開閉動作をロックすることができる。すなわち、他方ヒンジプレート54bに取付けられたドアパネル本体19の開閉動作をロックすることができる。
【0053】
この全開状態でのロック作用を解除するときは、ホールドステイロッド55dの先端側を押上げて、その先端側の縦軸部を係合穴55f内から取出すことで、ロック状態を解除し、他方ヒンジプレート54bを閉じ方向へ動かすことができる。
【0054】
次に、ドアパネル本体19の内側板23のヒンジ取付側とは反対側の辺部である外枠状補強用凸部29dにおける中央部には、ロック機構取付用の取付孔52および内部補強板41aの取付孔52aを用いて、図10に示されるように、機体フレームFに対するドアパネル本体19のロックおよびロック解除が可能なロック機構57がボルトにより取付けられている。
【0055】
さらに、ドアパネル本体19の開閉側の下部に開口された取付穴53に、図10に示されるように、ロック機構57のロック状態を解除操作するロック解除操作機構58が設けられ、このロック解除操作機構58とロック機構57とが、ロック解除操作機構58のロック解除操作をロック機構57に伝達するロッド状のリンク部材59により連結されている。
【0056】
ロック機構57は、図14に示されるように機体フレームFにボルト60により取付けられたストライカ61と、このストライカ61に対応してドアパネル本体19の外枠状補強用凸部29dの中央位置に取付けられたラッチ62とを備えている。このストライカ61は、ラッチ62と係合してドアパネル本体19の開閉方向および上下方向の動きを規制する。
【0057】
ストライカ61は、図14に示されるように、上下1対の振止斜面部63と、これらの振止斜面部63間から突設されてラッチ62に挿入されラッチ62により係止されるフック金具64とを備えている。
【0058】
ラッチ62は、図13および図14に示されるように、ドアパネル本体19にボルト69により取付けられた1対の本体プレート65,66をベース部材にして構成され、これらの本体プレート65,66には、図14に示されるようにストライカ61のフック金具64と嵌合するフック挿入溝部67がそれぞれU字形に切込み形成され、これらの各フック挿入溝部67の開口側に複数の振止規制部68がそれぞれV字形に一体形成されている。
【0059】
本体プレート65,66の間には、軸部材71a,71bによりラッチプレート72およびロックプレート73が回動自在に軸支され、ラッチプレート72には、ラッチ溝74が設けられ、スプリング75により図14時計方向に附勢され、ロックプレート73には、係止溝76が設けられ、スプリング77により図14反時計方向に附勢されている。
【0060】
そして、サイドドア18のドアパネル本体19が、機体フレームFに向かって閉じられるときは、図14に示されるように、機体フレームFに取付けられたストライカ61のフック金具64が、相対的にドアパネル本体19のラッチ62に向かって移動し、その本体プレート65,66に設けられたフック挿入溝部67に挿入される。
【0061】
その際、ラッチプレート72のラッチ溝74がストライカ61のフック金具64により押圧されて、図14に示される角度までラッチプレート72が回転すると、ロックプレート73の係止溝76がラッチプレート72の復帰動作を係止するので、ストライカ61のフック金具64は、図14に示された位置に拘束係止される。
【0062】
一方、ロック解除操作機構58は、操作部本体78内のハンドルプレート(図示せず)を外部に引出すように軸78aを中心に回動操作すると、ハンドルレバー79により一方の運動方向転換レバー80のレバー端部80aが押圧され、この運動方向転換レバー80は軸部材80bを支点に図13時計方向に回動して、連結軸部材81を押し下げるので、この連結軸部材81に連結された他方の運動方向転換レバー82は、軸部材82aを支点に図13反時計方向に回動し、ピン82bに接続されたリンク部材59を上方(ラッチ固定解除方向)に作動するように構成されている。
【0063】
そして、リンク部材59を上方に作動すると、図14に示されるピン73aを介してロックプレート73が軸部材71bを中心に時計方向に回動され、このロックプレート73の係止溝76によるラッチプレート係止作用が解除され、ラッチプレート72は、スプリング75により図14時計方向に復帰動作して、ラッチ溝74からストライカ61のフック金具64を開放する。
【0064】
次に、図1乃至図10に基いて前記梯子体20の詳細を説明する。
【0065】
図1および図2に示されるように、この梯子体20は、上下方向に配置された手摺部84と、この手摺部84に設けられ上記外側板21および上記内側板23の複数段の接合部27に固定された複数段の取付板部85と、これらの取付板部85に外側から見て凹状に一体形成され上記外側板21および上記内側板23に設けられた複数段の梯子体装着用開口部25に嵌合される複数段の足掛凹部86とを備えている。
【0066】
図9および図10に示されるように、手摺部84は、ドアパネル本体19の外側面に沿って、1対の本体プレート部84aと、1対の上部プレート部84bとが一定の角度で一体形成され、これらの上部プレート部84bの背面側には補強部84cがそれぞれ一体形成されている。
【0067】
各本体プレート部84aおよび各上部プレート部84bのドアパネル本体19側には、外側板21に当接される当接部88に対し、指先を掛けることが可能な凹部89が設けられている。
【0068】
左右の上部プレート部84bの内側には凹形断面に形成された取付部90がそれぞれ設けられ、これらの取付部90には、図9に示されるようにボルト挿入孔91が穿設されている。
【0069】
取付板部85は、図9および図10に示されるように足掛凹部86の左右両側に配置されたボルト挿入孔92を有し、図1に示されるようにこれらのボルト挿入孔92に挿入されたボルト93と、図2に示されるようにこのボルト93と螺合するナット94とにより、取付板部85がドアパネル本体19の接合部27に固定されている。
【0070】
図4および図5に示されるように、各足掛凹部86は、ドアパネル本体19の外側面に開口を有する角箱形に形成され、これらの各足掛凹部86の開口の下縁に沿って手摺部84の各本体プレート部84a間および各上部プレート部84b間に、複数段の足掛ロッド部95が掛渡して設けられている。
【0071】
そして、図12に示されるように外側板21および内側板23に穿設された梯子体固定孔32a,32bが接合されて図9および図10に示されるように一体化された梯子体固定孔32と、梯子体20のボルト挿入孔92とに、図1、図6および図7に示されるようにボルト93を挿入し、図2に示されるようにナット94と螺合させて締付けるとともに、図8に示されるように前記取付部90のボルト挿入孔91にボルト96を挿入し、ナット97と螺合させて締付けることで、梯子体20をドアパネル本体19に固定する。
【0072】
次に、この図1乃至図10に示された梯子体20の効果を説明する。
【0073】
外側板21から離反する方向に膨出形成された内側板23の外枠状補強用凸部29a,29b,29b,29dと、その枠内に形成された複数段の横梁状補強用凸部29cとの間に複数段の接合部27が設けられ、これらの接合部27に梯子体装着用開口部25が設けられ、これらの梯子体装着用開口部25に梯子体20が装着されたので、外枠状補強用凸部29a,29d内に内部補強板41,41aが設けられたことと相俟って、外側板21および内側板23の薄肉化による軽量化と、パネル剛性の向上とを両立させることができる。
【0074】
すなわち、外側板21と、この外側板21から離反する方向に膨出形成された外枠状補強用凸部29a,29b,29b,29dおよび複数段の横梁状補強用凸部29cを有する内側板23とを接合してドアパネル本体19を形成したので、ドアパネル本体19の軽量化とパネル剛性の向上を図ることができるとともに、ドアパネル本体19の外側板21および内側板23の接合部27に梯子体20の複数段の取付板部85を固定することで、ドアパネル本体19と梯子体20とが相互に補強し合って、十分なパネル剛性および梯子強度を確保でき、梯子体20を取付けてもドアパネル本体19の大型化が可能である。さらに、外側板21および内側板23に設けられた複数段の梯子体装着用開口部25a,25bに、梯子体20の複数段の取付板部85に設けられた複数段の足掛凹部86を嵌合したので、ドアパネル本体19の外側に梯子体20が突出する量を抑えてコンパクトに組込むことができるとともに、梯子体20の取付板部85に一体形成された足掛凹部86は、梯子体20の強度を向上させるとともにドアパネル本体19の剛性を向上させることもできる。
【0075】
角箱形に形成された複数段の足掛凹部86と、各足掛凹部86の開口の下縁に沿って設けられた足掛ロッド部95とにより、梯子体20の強度およびドアパネル本体19の剛性を向上できるとともに、各足掛凹部86に掛けた足を各足掛ロッド部95により確実に係止できる。
【0076】
外側板21と内側板23との間に充填された発泡材24により、ドアパネル本体19から発生する音を減衰させて、低騒音化を図ることができるとともに、梯子体20を用いて昇降する際にドアパネル本体19から生じるおそれのある騒音を、発泡材24により吸収して防止できる。
【0077】
外側板21の一端側と内側板23の一端側に位置する外枠状補強用凸部29aとの間に設けられた一端側の内部補強板41にヒンジ54を取付け、外側板21の他端側と内側板23の他端側に位置する外枠状補強用凸部29dとの間に設けられた他端側の内部補強板41aにロック機構57を取付けるので、一端側の内部補強板41および他端側の内部補強板41aにより、ヒンジ54およびロック機構57の取付強度を向上できるとともに、ドアパネル本体19のパネル剛性を向上でき、このドアパネル本体19を介して梯子体20を支持する強度を確保できる。
【0078】
ドアパネル本体19の一端側の上部から下部にわたって設けられたヒンジ54と、ドアパネル本体19の他端側の中央部に設けられたロック機構57とにより、ドアパネル本体19の他端側の下部にロック機構を配置する場合に比べて、ドアパネル本体19をバランスよく固定支持でき、このドアパネル本体19を介して梯子体20を支持する際の十分なパネル剛性を確保できる。
【0079】
このように、外側板21と内側板23とが重なった複層構造レイヤドアの比較的剛性の高い部分にボルト93・ナット94およびボルト96・ナット97で梯子体20を締結する構造であり、大型機でも、この複層構造レイヤドアを採用することによって、ドア自体を安価に製造でき、軽くかつ耐久性が高く、さらに溶接が無いので外観も良くなるとともに、梯子体20を追加しても軽量化を維持できるだけでなく、パネル剛性を向上させることもでき、比較的幅の大きなドアのまま実施できるというメリットがある。そして、梯子構造を追加した幅の広いドアでも軽量化を図れるので、製造および組付などの実施が容易になる。
【0080】
これに対して、ドア自体が板金の溶接構造物である従来品は、重く、高価であり、溶接時の歪などにより製造性も悪く、外観も溶接による凹凸で見栄えが悪い上に、その板金溶接構造のドアに梯子構造を持たせると、より重たくなるため、ドア自体を大きくすることができず、もしくは耐久性を維持し難く、1枚のドアで済めば安価になるところを、小さなドアの2枚仕様にする必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、油圧ショベル、ローダ、ブルドーザなどの作業機械の例えばラジエータ室、フィルタ室、バッテリ室またはポンプ室などのサイドドアなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
F 取付相手フレームとしての機体フレーム
19 ドアパネル本体
20 梯子体
21 外側板
22 空間
23 内側板
24 発泡材
25 梯子体装着用開口部
25a 梯子体装着用開口部
25b 梯子体装着用開口部
27 接合部
29a 外枠状補強用凸部
29b 外枠状補強用凸部
29c 横梁状補強用凸部
29d 外枠状補強用凸部
41 一端側の内部補強板
41a 他端側の内部補強板
54 ヒンジ
57 ロック機構
84 手摺部
85 取付板部
86 足掛凹部
95 足掛ロッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属板部材を接着して形成されたドアパネル本体と、
このドアパネル本体に一体化された梯子体とを備え、
上記ドアパネル本体は、
複数段の梯子体装着用開口部が設けられた外側板と、
この外側板から離反する方向に膨出形成された外枠状補強用凸部とこの外枠状補強用凸部の枠内に外側板から離反する方向に膨出形成された複数段の横梁状補強用凸部との間に外側板の内側面に接着された複数段の接合部を有し、これらの接合部に外側板の梯子体装着用開口部に対応する複数段の梯子体装着用開口部が設けられた内側板とを備え、
上記梯子体は、
上下方向に配置された手摺部と、
この手摺部に設けられ上記外側板および上記内側板の複数段の接合部に固定された複数段の取付板部と、
これらの取付板部に外側から見て凹状に一体形成され上記外側板および上記内側板に設けられた複数段の梯子体装着用開口部に嵌合された複数段の足掛凹部とを備えた
ことを特徴とするドア装置。
【請求項2】
梯子体の複数段の足掛凹部は、ドアパネル本体の外側面に開口を有する角箱形に形成され、
各足掛凹部の開口の下縁に沿って手摺部に設けられた複数段の足掛ロッド部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のドア装置。
【請求項3】
外側板と内側板の外枠状補強用凸部および横梁状補強用凸部との間の空間に充填された発泡材
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載のドア装置。
【請求項4】
ドアパネル本体は、
外側板の一端側と内側板の一端側に位置する外枠状補強用凸部との間に設けられドアパネル本体を取付相手フレームに開閉自在に連結するヒンジを取付けるための一端側の内部補強板と、
外側板の他端側と内側板の他端側に位置する外枠状補強用凸部との間に設けられドアパネル本体を取付相手フレームに固定するロック機構を取付けるための他端側の内部補強板とを備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のドア装置。
【請求項5】
ヒンジは、ドアパネル本体の一端側の上部から下部にわたって設けられ、
ロック機構は、ドアパネル本体の他端側の中央部に設けられた
ことを特徴とする請求項4記載のドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−99284(P2011−99284A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255866(P2009−255866)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】