説明

ドア開口構造

【課題】ドア開口の周縁部に形成されたコーナー部の変形を抑制する。
【解決手段】ドア開口構造10は、閉断面38を形成するアウタパネル22及びインナパネル24を有して構成されると共に、アウタパネル22及びインナパネル24における一端側の接合部30が車両に形成されたドア開口26の周縁部26Aを構成する骨格部材14と、周縁部26Aに形成されたコーナー部26A1の長手方向に沿って延在されると共に、そのドア開口26側の端部40Aが接合部30に接合された本体部40と、本体部40とで閉断面38内に中空部44を形成する補強部42とを有する補強部材16と、を備えている。この構成によれば、例えば、車両の走行時にサスペンション等から車体12への入力によりコーナー部26A1に応力が集中しても、このコーナー部26A1の変形を補強部材16によって抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開口構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヒンジピラー内にヒンジピラーレインフォースメントが設けられると共に、センターピラー内にセンターピラーレインフォースメントが設けられ、これらがサイドシル内に設けられたサイドシルレインフォースメントの前端部及び後端部に接合された自動車の側部車体構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−39063号公報
【特許文献2】特開平7−112670号公報
【特許文献3】実開平6−61660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、ピラーとサイドシルとの剛性を向上させることができるものの、ドア開口の周縁部に形成されたコーナー部の変形を抑制することに関しては改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ドア開口の周縁部に形成されたコーナー部の変形を抑制することができるドア開口構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のドア開口構造は、閉断面を形成する一対のパネルを有して構成されると共に、前記一対のパネルにおける一端側の接合部が車両に形成されたドア開口の周縁部を構成する骨格部材と、前記周縁部に形成されたコーナー部の長手方向に沿って延在されると共に、その前記ドア開口側の端部が前記接合部に接合された本体部と、前記本体部とで前記閉断面内に中空部を形成する補強部とを有する補強部材と、を備えている。
【0007】
このドア開口構造によれば、ドア開口の周縁部に形成されたコーナー部は、骨格部材の閉断面内に中空部を有する補強部材によって補強されている。従って、例えば、車両の走行時にサスペンション等から車体への入力によりコーナー部に応力が集中しても、このコーナー部の変形を抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載のドア開口構造は、請求項1に記載のドア開口構造において、前記中空部が、前記コーナー部の外側に設けられると共に、前記コーナー部側に凸を成すように湾曲して形成された構成とされている。
【0009】
このドア開口構造によれば、中空部は、コーナー部の外側に設けられると共に、コーナー部側に凸を成すように湾曲して形成されている。従って、上記入力によりコーナー部に対してこのコーナー部を変形(屈曲)させる方向にモーメントが作用しても、このモーメントを中空部によって低減(キャンセル)することができる。これにより、コーナー部の変形をより一層抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載のドア開口構造は、請求項1又は請求項2に記載のドア開口構造において、前記本体部における前記ドア開口側と反対側の端部が、前記一対のパネルにおける他端側の接合部、又は、前記骨格部材に設けられた骨格補強部材に接合された構成とされている。
【0011】
このドア開口構造によれば、本体部におけるドア開口側と反対側の端部は、一対のパネルにおける他端側の接合部、又は、骨格部材に設けられた骨格補強部材に接合されている。これにより、補強部材の剛性を向上させることができるので、コーナー部の変形をより一層抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載のドア開口構造は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のドア開口構造において、前記中空部が、前記コーナー部の長手方向に沿うビードを有する構成とされている。
【0013】
このドア開口構造によれば、中空部は、コーナー部の長手方向に沿うビードを有している。従って、このビードによって稜線が増えることにより中空部の曲げ剛性を向上させることができるので、コーナー部の変形をより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上詳述したように、本発明によれば、ドア開口の周縁部に形成されたコーナー部の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態に係るドア開口構造が適用された車体における左側の後方側部を車両幅方向外側から見た側面図である。
【図2】図1のF2−F2線拡大断面図である。
【図3】図2に示される補強部材の斜視図である。
【図4】図1のF4−F4線拡大断面図である。
【図5】図2に示される補強部材の第一変形例を示す斜視図である。
【図6】図2に示される補強部材の第二変形例を示す図2に対応する断面図である。
【図7】図6に示される補強部材の斜視図である。
【図8】図2に示される補強部材の第三変形例を示す斜視図である。
【図9】図2に示される補強部材の第四変形例を示す斜視図である。
【図10】図4に示される補強部材の変形例を示す図4に対応する断面図である。
【図11】図10に示される補強部材の斜視図である。
【図12】本発明の第二実施形態に係るドア開口構造の構成を示す側面図である。
【図13】図12に示される補強部材の斜視図である。
【図14】図12のF14−F14線拡大断面図である。
【図15】(A)〜(C)は、本発明の第二実施形態に係るドア開口構造における中空部に作用するモーメントを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態について説明する。
【0017】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印LHは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側(左側)をそれぞれ示している。
【0018】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係るドア開口構造10が適用された車体12は、骨格部材14と、複数の補強部材16,18,20とを備えている。骨格部材14は、車体12の側部を構成しており、図2に示されるように、本発明における一対のパネルに相当するアウタパネル22とインナパネル24とを有している。
【0019】
アウタパネル22は、インナパネル24に対して車両外側に設けられている。このアウタパネル22及びインナパネル24によって構成された車体12の側部には、図示しないサイドドアによって開閉されるドア開口26(図1も参照)が形成されている。また、アウタパネル22及びインナパネル24における一端側には、ドア開口26側に延びるフランジ22A,24A(ドアオープニングフランジ)がそれぞれ形成されている。
【0020】
この一対のフランジ22A,24Aは、後述する補強部材16の本体部40におけるドア開口26側の端部40Aを介して重ね合わされており、例えばスポット溶接による溶接部28により端部40Aと共に接合されている。この一対のフランジ22A,24Aによって構成された接合部30は、ドア開口26の周縁部26Aを構成している。
【0021】
一方、アウタパネル22及びインナパネル24における他端側には、フランジ22B,24Bがそれぞれ形成されており、この一対のフランジ22B,24Bは、互いに重ね合わされている。この一対のフランジ22B,24Bによって構成された接合部32のうち車両上側に位置する部位は、ルーフパネル34における車両幅方向外側の端部34Aに車両下側から重ねられている。そして、この接合部32のうち車両上側に位置する部位は、例えばスポット溶接による溶接部36により端部34Aと接合されている。また、このようにして両端部が接合されたアウタパネル22及びインナパネル24は、ドア開口26の周縁部26Aの長手方向と直交する方向に沿って切断した断面が閉断面38を形成するように構成されている。
【0022】
補強部材16は、図1に示されるように、周縁部26Aに形成された車両上側のコーナー部26A1に設けられている。この補強部材16は、図3に示されるように、本体部40と補強部42を有して構成されている。本体部40は、コーナー部26A1の長手方向(矢印A1方向)に沿って延在されるように湾曲して形成されている。
【0023】
補強部42は、本体部40におけるドア開口26側と反対側の端部40Bに連続して形成されており、本体部40の車両幅方向外側に折り返されている。そして、この補強部42は、ロール状に形成されて、本体部40とで中空部44を形成している。また、この補強部42の先端部42Aは、本体部40に例えばアーク溶接による複数の溶接部46によって接合されている。なお、この補強部材16は、例えば、一枚の板材がロールフォーミング成形やプレス成形等されることによって形成されている。また、中空部44は、コーナー部26A1の長手方向を軸方向として延在されており、図2に示されるように、閉断面38内に形成されている。
【0024】
一方、図1に示されるように、補強部材18は、周縁部26Aに形成された車両後側のコーナー部26A2に設けられている。この補強部材18は、上述の補強部材16と同様の構成とされており、図4に示されるように、本体部50と補強部52を有して構成されている。
【0025】
本体部50は、コーナー部26A2の長手方向(図1の矢印A2方向)に沿って延在されており、補強部52は、本体部50の車両幅方向外側においてロール状に形成されて、本体部50とで中空部54を形成している。また、この補強部52の先端部52Aは、本体部50に例えばアーク溶接による溶接部56によって接合されている。中空部54は、コーナー部26A2の長手方向を軸方向として延在されており、閉断面38内に形成されている。また、本体部50におけるドア開口26側の端部50Aは、一対のフランジ22A,24Aの間に挟まれており、この一対のフランジ22A,24Aと溶接部28により接合されている。
【0026】
また、補強部材18の車両後側には、骨格補強部材60(リアピラーリインフォースメント)が設けられている。この骨格補強部材60は、閉断面38内に設けられると共に、車両幅方向内側に開口する断面ハット状に形成されている。この骨格補強部材60の両端部60A,60Bは、インナパネル24に例えばスポット溶接による溶接部62,64によりそれぞれ接合されている。
【0027】
なお、図1に示されるように、補強部材20は、周縁部26Aに形成された車両下側のコーナー部26A3に設けている。この補強部材20は、上述の補強部材16,18と同様の構成とされており、その説明は省略する。
【0028】
次に、本発明の第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
本発明の第一実施形態に係るドア開口構造10によれば、ドア開口26の周縁部26Aに形成されたコーナー部26A1は、図2に示されるように、骨格部材14の閉断面38内に中空部44を有する補強部材16によって補強されている。従って、例えば、車両の走行時にサスペンション等から車体12への上向きの入力A及び下向きの入力B(図1参照)によりコーナー部26A1に応力が集中しても、このコーナー部26A1の変形(折れ)を抑制することができる。
【0030】
また同様に、コーナー部26A2,26A3は、補強部材18,20によってそれぞれ補強されている。従って、例えば、車両の走行時にコーナー部26A2,A3に応力が集中しても、このコーナー部26A2,26A3の変形を抑制することができる。以上により、例えば、このドア開口26が形成された車体12の側部と連続するルーフパネル34の振動を抑制することができ、車両におけるNV(ノイズ・アンド・バイブレーション)性能を向上させることができる。
【0031】
また、図2に示されるように、補強部材16自体に中空部44が形成されているため、補強部材16の一部を骨格部材14に接合するだけで、容易に骨格部材14の閉断面38内にこれとは別の閉断面を形成する中空部44を配置することができる。これにより、ドア開口26の周縁部26Aに形成されたコーナー部26A1(図1参照)を容易に補強することができる。また、閉断面38の内部に中空部44が配置されることにより、閉断面38の変形、ひいては、コーナー部26A1の変形をより効果的に抑制することができる。これらのことについては、他の補強部材18,20についても同様である。
【0032】
次に、本発明の第一実施形態の変形例について説明する。
【0033】
図2の想像線(二点鎖線)で示されるように、本体部40におけるドア開口26側と反対側の腹部40C(中空部44の腹に相当する部分)は、インナパネル24に例えばスポット溶接、プラグ溶接、レーザ溶接などの溶接部70によって接合されていても良い。また、この腹部40Cは、インナパネル24に接着材によって固定されていても良い。
【0034】
また、図5に示されるように、コーナー部26A1の長手方向における本体部40の両端側には、フランジ40Dが形成され、このフランジ40Dは、インナパネル24に例えばスポット溶接による溶接部72により接合されていても良い。以上のように構成されていると、補強部材16の剛性を向上させることができるので、コーナー部26A1の変形をより一層抑制することができる。
【0035】
また、図5に示されるように、補強部42の先端部42Aにコーナー部26A1の長手方向に間隔を空けて複数のフランジ42Bが形成されていても良い。そして、各フランジ42Bが例えばスポット溶接による溶接部74により本体部40に接合されていても良い。
【0036】
また、補強部材16は、次のように構成されていても良い。すなわち、図6,図7に示される変形例では、本体部40におけるドア開口26側と反対側がフランジ22B,24B側に延長されると共に、本体部40には、コーナー部26A1の長手方向に並ぶ一対のスリット40E(図7参照)が端部40B側から形成されている。そして、このスリット40Eの間の部分は、車両幅方向外側に折り返されて補強部42として形成されている。また、補強部42の先端部42Aには、コーナー部26A1の長手方向に沿ってフランジ42Cが形成されており、このフランジ42Cは、コーナー部26A1の長手方向に並ぶ複数の溶接部76により本体部40に接合されている。
【0037】
なお、図6,図7に示される補強部材16において、補強部42は、本体部40の端部40A側と反対側へ延長されると共に、車両幅方向外側に折り返されていたが、本体部40の端部40B側と反対側へ延長されると共に、車両幅方向外側に折り返されていても良い(つまり、図6,図7の構成と上下逆に形成されていても良い)。
【0038】
また、図6に示されるように、本体部40におけるドア開口26側と反対側の端部40Bは、一対のフランジ22B,24Bの間に挟まれると共に、この一対のフランジ22B,24Bと溶接部36により接合されていても良い。このように構成されていても、補強部材16の剛性を向上させることができる。
【0039】
また、図6の想像線(二点鎖線)で示されるように、本体部40における端部40Aと端部40Bとの間の中間部40Fは、インナパネル24に例えばスポット溶接、プラグ溶接、レーザ溶接などの溶接部78によって接合されていても良い。また、この中間部40Fは、インナパネル24に接着材によって固定されていても良い。このように構成されていても、補強部材16の剛性を向上させることができる。
【0040】
また、図6の想像線(二点鎖線)及び図8に示されるように、補強部42には、コーナー部26A1(図8参照)の長手方向に沿うビード80が形成されていても良い。このように構成されていると、このビード80によって稜線が増えることにより中空部44の曲げ剛性を向上させることができるので、コーナー部26A1の変形をより一層抑制することができる。
【0041】
また、ビード80の先端部80Aは、本体部40に例えばスポット溶接による溶接部82により接合されていても良い。このように構成されていると、中空部44の曲げ剛性をより一層向上させることができる。なお、ビード80は、本体部40に形成されていても良く、本体部40と補強部42の両方に形成されていても良い。
【0042】
また、図9に示されるように、本体部40における端部40Aと端部40Bとの間の部分が、本体部40におけるコーナー部26A1に沿う方向の一方側(矢印C側)に延長されると共に、車両幅方向外側に折り返されて補強部42として形成されていても良い。また、補強部42の先端部42Aには、端部40Aと端部40Bとを繋ぐ方向に沿ってフランジ42Dが形成され、このフランジ42Dは、端部40Aと端部40Bとを繋ぐ方向に並ぶ複数の溶接部84によって本体部40に接合されていても良い。
【0043】
また、図9に示される補強部42には、端部40Aと端部40Bとを繋ぐ方向に沿ってビード90が形成されていても良い。このように構成されていると、ビード90によって稜線が増えることにより中空部44の断面崩れを抑制することができる。また、ビード90の先端部90Aは、本体部40に例えばスポット溶接による溶接部92により接合されていても良い。このように構成されていると、中空部44の断面崩れをより一層抑制することができる。
【0044】
なお、図2〜図9に示される補強部材16において、例えば、中空部44の剛性を確保することができる場合には、補強部42の先端部42Aは、本体部40に接合されていなくても良い。
【0045】
また、図4の想像線(二点鎖線)で示されるように、補強部材18の本体部50におけるドア開口26側と反対側の腹部50C(中空部54の腹に相当する部分)は、インナパネル24に例えばスポット溶接、プラグ溶接、レーザ溶接などの溶接部100によって接合されていても良い。また、この腹部50Cは、インナパネル24に接着材によって固定されていても良い。このように構成されていると、補強部材18の剛性を向上させることができるので、コーナー部26A2(図1参照)の変形をより一層抑制することができる。
【0046】
また、補強部材18は、図10,図11に示されるように構成されていても良い。すなわち、この変形例では、図11に示されるように、コーナー部26A2の長手方向(矢印A2方向)における本体部50の両端部50Dに沿ってスリット50Eが端部50B側から形成されている。また、この本体部50における両端部50Dの間の部分は、端部50A側と反対側へ延長されると共に車両幅方向外側に折り返されて補強部52として形成されている。
【0047】
また、補強部52における一対のスリット50Eの間には、コ字状(C字状)のスリット50Fが形成され、このスリット50Fの内側の部分によってフランジ50Gが形成されている。そして、このフランジ50Gを含む本体部50におけるドア開口26側と反対側の端部50Bは、図10に示されるように、骨格補強部材60のドア開口26側の端部60Aとインナパネル24との間に挟まれてこれらと溶接部62により接合されている。このように、本体部50におけるドア開口26側と反対側の端部50Bが骨格補強部材60の端部60Aに接合されていると、補強部材18の剛性を向上させることができる。
【0048】
また、本体部50における端部50Aと端部50Bとの間の中間部50Hは、図10に示されるように、インナパネル24に例えばスポット溶接、プラグ溶接、レーザ溶接などの溶接部102によって接合されている。なお、この中間部50Hは、インナパネル24に接着材によって固定されていても良い。このように、中間部50Hがインナパネル24に接合されていることによっても、補強部材18の剛性を向上させることができる。
【0049】
なお、この補強部材18の中空部54にも、上述のビード80(図8参照)と同様のビードが形成されても良い。
【0050】
また、図4,10,図11に示される補強部材18において、例えば、中空部54の剛性を確保することができる場合には、補強部52の先端部52Aは、本体部50に接合されていなくても良い。
【0051】
また、図1に示される補強部材20についても、上述の補強部材16と同様の変形例(図5〜図9参照)を採用することが可能である。
【0052】
また、本発明の第一実施形態に係るドア開口構造10は、サイドドアによって開閉される車両側部のドア開口26に対して適用されていたが、その他にも、例えば、バックドアによって開閉される車両後部のドア開口に対して適用されても良い。
【0053】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0054】
図12に示される本発明の第二実施形態に係るドア開口構造110は、上述のドア開口構造10(図1〜図9参照)に対し、補強部材16における中空部44の構成が変更されている。すなわち、図12〜図14に示されるように、補強部材16の中空部44は、コーナー部26A1の外側に設けられると共に、コーナー部26A1側(矢印IN側)に凸を成すように湾曲して形成されている。つまり、中空部44は、コーナー部26A1の曲げ形状(湾曲)とは逆向きに湾曲して形成されている。
【0055】
このように構成されていると、車両の走行時におけるサスペンション等から車体12への入力によりコーナー部26A1に対してこのコーナー部26A1を変形(屈曲)させる方向にモーメントが作用しても、このモーメントを中空部44によって低減(キャンセル)することができる。これにより、コーナー部26A1の変形をより一層抑制することができる。
【0056】
また、図14に示されるように、中空部44がインナパネル24に接着材104によって固定されていると、補強部材16の剛性をより一層向上させることができる。なお、この中空部44は、インナパネル24に例えばスポット溶接、プラグ溶接、レーザ溶接などの溶接によって固定されていても良い。
【0057】
ここで、図15(A)〜(C)を用いて、直線状の中空部144に荷重が入力された場合に、この直線状の中空部144に生じるモーメントと、本実施形態の湾曲状の中空部44に対して荷重が入力された場合に、この湾曲状の中空部44に生じるモーメントとの相違について説明する。
【0058】
先ず、図15(A),(C)に示されるように、直線状の中空部144に集中荷重Wが入力されると、この中空部44には、集中荷重Wの作用点で最大となるモーメントM1が作用する。これに対して、図15(B),(C)に示されるように、本実施形態の湾曲状の中空部44に集中荷重Wが入力されると、集中荷重Wの作用点において最大となるモーメントM2が作用する。ところが、このモーメントM2の最大値M2maxは、モーメントM1の最大値M1maxよりも小さくなる。
【0059】
これは、湾曲状の中空部44を支持する支点R1,R2から湾曲状の中空部44に対して支点反力F,Fがそれぞれ中空部44の中心方向へ作用することにより、キャンセルモーメントM3が生じることによるものである。
【0060】
つまり、荷重Wの入力方向に対して湾曲状となるように中空部44を形成することによって中空部44の両端部に支点反力F,Fが生じ、これにより、中空部44に作用するモーメントを低減することができるのである。これは、中空部44にキャンセルモーメントが作用することで、中空部44の入力荷重に対する剛性を向上させるということと等価である。
【0061】
このように、中空部44が湾曲状に形成されると、中空部44に作用するモーメントを低減することができ、中空部44の剛性、ひいては、補強部材16(図12,図13参照)の剛性を向上させることができる。
【0062】
なお、特に図示しないが、その他の補強部材18,20(図1参照)の中空部についても、上述の補強部材16の中空部44と同様に構成することが可能である。
【0063】
また、本発明の第二実施形態に係るドア開口構造110についても、上述の本発明の第一実施形態に係るドア開口構造10と同様の変形例(図5〜図11参照)を採用することが可能である。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
10,110 ドア開口構造
14 骨格部材
16,18,20 補強部材
22 アウタパネル(一対のパネルの一方)
24 インナパネル(一対のパネルの他方)
26 ドア開口
26A 周縁部
26A1,26A2,26A3 コーナー部
30 接合部
38 閉断面
40,50 本体部
42,52 補強部
44,54 中空部
60 骨格補強部材
80 ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉断面を形成する一対のパネルを有して構成されると共に、前記一対のパネルにおける一端側の接合部が車両に形成されたドア開口の周縁部を構成する骨格部材と、
前記周縁部に形成されたコーナー部の長手方向に沿って延在されると共に、その前記ドア開口側の端部が前記接合部に接合された本体部と、前記本体部とで前記閉断面内に中空部を形成する補強部とを有する補強部材と、
を備えたドア開口構造。
【請求項2】
前記中空部は、前記コーナー部の外側に設けられると共に、前記コーナー部側に凸を成すように湾曲して形成されている、
請求項1に記載のドア開口構造。
【請求項3】
前記本体部における前記ドア開口側と反対側の端部は、前記一対のパネルにおける他端側の接合部、又は、前記骨格部材に設けられた骨格補強部材に接合されている、
請求項1又は請求項2に記載のドア開口構造。
【請求項4】
前記中空部は、前記コーナー部の長手方向に沿うビードを有している、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のドア開口構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−56373(P2012−56373A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199395(P2010−199395)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】