説明

ドア開閉装置

【課題】 複数のドアスラットを屈曲可能に連結したドアをバランススプリングでバランスさせながら開口部に昇降させるに、移動部材を少ない部材数にして軽い力で昇降できるようにする。
【解決手段】 開口部の上方空間に第1送りホイールと第2送りホイールとを設け、両送りホイールにドアスラットを巻き付けて空間内に長円形状に収納するとともに、ドアスラットの重量にバランスするコイルバネを設け、コイルバネを送りホイールの回転で巻締め又は巻戻しする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部の左右両側に設けたガイドレールに案内されて上下に開閉作動するドアスラットで構成されたドアを、ガイドレールの上端から水平方向に延びるガイド溝に送り込んで収納する上部送込み式のドア開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者や車椅子利用者がいる家庭では、居間、風呂場、トイレ、クローゼット等を閉塞する各種ドアを自動又は手動で開閉させるようにしている。この場合、ドアを雨戸のような引き戸にすると、引き戸を引き込むための広い開口部や壁面を必要とする。このため、観音開きにしていることがあるが、ドアの動きを確保するために大きなスペースが必要になる。
【0003】
そこで、下記特許文献1において、ドア(シャッター)を開口部両側に設けられるガイドレールに案内されて開閉作動するドアスラット(パネル)を連綴したもので構成し、このドアスラットをガイドレールの上端から水平方向に延長して設けられる長円形渦巻状をしたガイド溝(収納レール)に送り込んで開口部の上方に収納するもの(上部送込みシャッター)が提案されており、これによると、ドアの収納スペースとして天井空間を有効利用できる。しかし、最上部のドアスラットに設けられた回転シャフトや増速機といった駆動部は、ドアスラットの開閉に伴って一緒に移動する構成になっていることから、ドアスラットの重量が増し、手動、電動を問わず開閉操作に大きな力が必要となる。
【0004】
このため、ドアスラットを常時開放(上昇)側に向けて付勢するバランススプリングを前記駆動部のシャフトに介装しているが、このスプリング自体も移動することから、ドアスラットの重量を増すことになる。また、電動にする場合も、駆動モータを移動させる構成になることから、移動部に更にモータ等の重量が加算される他、電力を供給するための配線空間をガイドレール内に設ける必要があり、この空間はドアスラットの開閉に伴って配線が移動できるように大きくしなければならない問題があった。さらに、特許文献1の例では、ガイド溝が螺旋状に形成されているので、ガイド溝の形成が複雑になる他、螺旋部の端の湾曲部の湾曲半径が徐々に小さくなるため、ドアスラットの高さ方向の幅を小さくできない場合は、屈曲した状態で湾曲部を通過するドアスラットが円滑に移動できなくなり、非常に大きな駆動力が必要となる。
【特許文献1】特開平6−330678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、開口部の上方に一重の長円形状のガイド溝を設け、これにドアスラットを送り込む上部送込み式のドアを採用し、これにおいて、駆動機構やバランス機構の効率化を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、開口部を昇降して開閉する屈曲可能に上下に連結した複数のドアスラットからなるドアを開口部の左右両側に設けたドアスラットを案内するガイドレールの上端から水平方向に長い長円形状に延設したガイド溝に送り込んで収納するともに、巻締め量によって開口部に送り出したドアスラットの送出し量に応じた巻戻し力を発揮するコイルバネを設けてコイルバネの巻締め又は巻戻しをドアスラットの動きに連動させた上部送込み式のドア開閉装置において、ガイド溝は、少なくとも、ガイドレールに接続した第1湾曲部と、ガイドレールから離れた側の第2湾曲部と、両湾曲部を上部で繋ぐ上段の直線部と、第2湾曲部の下部からガイドレールに向けて延びる下段の直線部とを備えており、第1及び第2湾曲部のそれぞれの湾曲中心を通る軸線上に第1及び第2送りホイールを設けるとともに、第1及び第2送りホイールに無端循環体を巻き掛けて無端循環体にドアスラットを連結する一方、第1又は/及び第2送りホイールの回転でコイルバネを巻締め、巻戻しすることを特徴とするドア開閉装置を提供したものである。
【0007】
これにおいて、本発明は、請求項2に記載した、第1及び第2送りホイールの半径がガイド溝の第1及び第2湾曲部の曲げ半径よりも小径であり、かつ、ドアスラットを一杯に送り込んだ状態から一杯に送り出したとき、無端循環体とドアスラットとの連結点がガイド溝内の一周回を限度として回動する手段、そして、これらにおいて、請求項3に記載した、第1又は第2送りホイールの一方の送りホイールとコイルバネとの間にコイルバネを巻締め、巻戻しするコイルバネ駆動系を設け、上記送りホイールがドアスラットを一杯に送り込んだ状態からドアスラット送り出し側に回転するとき、コイルバネが所定回転角度遅れて巻締めを始める遅延機構をコイルバネ駆動系に組み込んだ手段を提供する。
【0008】
さらに、これにおいて、請求項4に記載した、コイルバネは、一端を固定端とし他端をコイルバネを外挿して回転可能に設けられるバネ軸に固定して回動端としてバネ軸にはバネ軸ホイールを固嵌し、一方の送りホイールを取付軸で支持して取付軸に巻締めホイールを固嵌し、巻締めホイールとバネ軸ホイールに無端循環体を掛け回してコイルバネ駆動系を構成するとともに、巻締めホイールにピンを突設してピンを一方の送りホイールの側面に形成した周上に不連続個所がある溝に突入させ、かつ、一方の送りホイールを取付軸に遊嵌して遅延機構とした手段、請求項5に記載した、不連続個所が溝を塞ぐ堰であり、この堰が円周上の任意の位置に固定可能に設けられる手段、請求項6に記載した、湾曲部の曲げ半径とドアスラットの上下長さとの関係を、湾曲部を通過する際の上下のドアスラット同士の屈曲角度が湾曲部全周に亘って90度よりも大きくなるように設定した手段を提供したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によると、ドアスラットの移動に伴って移動する部分は、ドアスラットを構成する部材のみになるから、駆動に要する力は小さくてよい。この点で、手動の場合は軽く、自動の場合では駆動原であるモータ等の容量を小さくできる。なお、上部送込み式のドアにした場合、ドアスラットの送出し(ガイドレール内への垂下り)量に伴う重量が送出し方向への駆動力にはプラスに、送込み方向への駆動力にはマイナスに作用する。このため、ドアスラットの送出し量に巻き量に基づく巻戻し力で対応するコイルバネ(バランススプリング)を設けており、請求項1では、ドアスラットの送出し量に応じた回転角で回転する送りホイールでコイルバネを巻締め又は巻戻しをしている。
【0010】
したがって、これらコイルバネやその駆動系は固定的に設けることができるから、ドアスラットの移動重量の増加とならない。また、ドアスラットがガイド溝の湾曲部にさしかかる部分では、ドアスラット同士は上下に屈曲されるようになっており、ドアスラットが持ち上げられるように回転させられて抵抗が大きくなる。この抵抗はドアスラットの上下長を小さくすることで小さくなるが、部材の使用量が増える他、デザイン上の制約等から極端に小さくできない場合がある。そこで、請求項2の構成によると、ガイド溝の湾曲部の湾曲半径が必要以上に小さくならず、その分、ドアスラットの上下長を大きくしても移動抵抗が小さく抑えられる。
【0011】
以上の場合、送りホイールとコイルスプリングを直に連結すると、ドアスラットが送り出しを始めると同時にコイルバネを巻くことになる上に、ドアスラットの送出し量が十分に送出し方向への駆動力にプラスしない間にコイルバネの巻きトルクを要することなり、始動時には大きな駆動トルクが要求されることと相まって大きな駆動力を要求されるものとなる。そこで、請求項3の遅延機構をとるとすれば、コイルバネを巻き始めるときには、既にドアスラットがある程度送り出されていてこれが駆動力を軽減させることになるから、手動、自動を問わず軽い力で動かせる。特に、電動モータによる自動にした場合、その容量を小さくでき、低コスト化、小スペース化に寄与する。また、請求項4の手段によると、遅延機構が簡単になり、請求項5の手段によると、送りホイールの一回転分(360°)において、巻締め開始を任意の角度に調整できることになり、ドアスラットの寸法や重量、コイルバネの強さ、及びガイド溝の湾曲部の曲率半径等の設定に応じた調整が容易となる。さらに、請求項6の手段によると、ガイド溝の第1湾曲部や第2湾曲部の部分で屈曲状態となって移動する上下のドアスラット同士の屈曲角度が小さくなり過ぎず、これを動かすのに大きなトルクを必要としないものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1〜図3はドアスラットの送出し、送込みを示す図5中A−A相当断面図、図4は図2中B−B断面図、図5は図1中C−C断面図、図6はドアスラットの接続状態を示す正面図、図7は同側面図、図8は図1の要部拡大図であるが、本発明に係るドアは、横長の長方形パネルからなる複数のドアスラット1をその側面に設けられるガイドローラ2の回動軸をヒンジとして屈曲可能に連結したもので構成される。これにおけるドアスラット1の上下長さ(短幅)は300〜500mm程度に設定される。なお、以下の説明において、ガイド溝11がガイドレール28から遠ざかる方向を奥(後)、ガイドレール28に近付く方向を手前(前)とする。
【0013】
ガイドローラ2の取付けは、上下に隣接するドアスラット1のそれぞれ上下端の両側面に互いに相手方に延びて重合するブラケット3、4を取り付け、両ブラケット3、4の重合部位に外方からドアスラット1の継目に位置を合わせてピン5を通し、ピン5の突出部分にガイドローラ2を回動可能に取り付けている。この場合、上下のドアスラット1同士が垂直状態で接合するとき、ブラケット3、4の上下端面同士は接触して位置規制するようにしており、しかも、ドアスラット1同士が対向する上下端面には、それぞれに凸部6と凹部7を形成して互いを嵌合させている。ドアスラット1相互間に隙間ができるのを防止する他、屈曲を規制してドアの剛性を保つためである。ガイドローラ2の取付け位置は、ドアスラット1の厚み方向に対して奥側(図1中右側)へオフセットされ、これによると、上下のドアスラット1同士はガイドローラ2を挟む方向に屈曲できるものになる。
【0014】
以上のドアスラット1は、左右方向の端部(ガイドローラ2)が開口部の左右両側のガイドレール28内に挿入されるとともに、最上部のドアスラット1は開口部の上部に前後に並べて設けられた二つ同径の第1送りホイール8と第2送りホイール9の外周に巻き回されて前後に長い長円形状に張られた無端循環体29に連結される。連結にはガイドローラ2を設けた連結具36を用い、本例では最上部のドアスラット1と連結しているが、他のドアスラット1に連結することもできる。無端循環体29は、滑りの発生がない歯付ベルトやチェーンを用い、送りホイール8と送りホイール9にはそれぞれ歯型を設けて噛み合わせるようにする。
【0015】
したがって、いずれかの送りホイール8、9を駆動すると、無端循環体29が回転し、同時に最上部のドアスラット1は他のドアスラット1を伴って無端循環体29の循環軌道に沿ってガイド溝から送り出し又はガイド溝へ送り込まれる(第1送りホイール8を開口部の前面側に置き、これから送り出すドアスラット1をガイドレール28で案内しながら降下させて開口部を閉止するようにしている)。第1送りホイール8と第2送りホイール9は、開口部の上部に設けたボックス10のようなもの(フレームでもよい)の中に収容され、通常は、このボックス10を天井空間内に設置する。そして、ボックス10の左右の内側面にドアスラット1のガイドローラ2が突入して転動するガイド溝11を形成しておく。
【0016】
ガイド溝11は、無端循環体29の循環軌道から外周側へ一定間隔オフセットした位置に全体が長円形状となるように延設する。具体的には、前方に位置するガイドレール28の上端から4分円状の第1湾曲部37を経て上段の水平な直線部38に続き、その後端から半円状の第2湾曲部39を経た後に下段の水平な直線部40に折り返し、さらに、下段の直線部40の前端から4分円に満たない円弧状をした第3湾曲部41が上向きに延びている。この場合における第3湾曲部41は、図1に示すように、全てのドアスラット1が送り込まれた状態において、最上部のドアスラット1を収容する部分であり、ガイド溝11の総延長と収容されるドアスラット1の長さの関係によっては省略可能な場合がある。本例の各湾曲部37、39、41の回転半径は何れも同じに設定され、湾曲中心の軸線上にそれぞれ第1及び第2送りホイール8、9を支持する第1及び第2取付軸12、17が設けられる。こうすることで、ガイドローラ2が無端循環体29の回動に伴ってガイド溝11内を円滑に走行可能となっている。
【0017】
第1送りホイール8は、ボックス10の左右に延びる第1取付軸12の両端部に固嵌されており、第1取付軸12の一端側(図5中左側)には駆動ホイール13が固嵌されていて、近くに設けられた駆動モータ14の出力軸に取り付けられる出力ホイール15から無端循環体16で駆動される。第2送りホイール9は、ボックス10の左右に延びる第2取付軸17の両端部にベアリング18で遊嵌されており、第2取付軸17の両端側には巻締めホイール19が固嵌されている。さらに、第2送りホイール9の近傍にはドアスラット1の重量をバランスするためのコイルバネ20がバネ軸21に外挿して設けられており、バネ軸21の一端側(図5中左側)にバネ軸ホイール22が固嵌されている。この場合、コイルバネ20の一端は固定されており(固定端)、他端はバネ軸21に固定されて回動が可能になっている(回動端)。そして、第2取付軸17の巻締めホイール19とバネ軸ホイール22は無端循環体23で連結されている。これら無端循環体16、23は、上記した無端循環体29と同様に滑りの発生がない歯付ベルトやチェーンを用い、巻締めホイール19及びバネ軸ホイール22には歯型を設けて噛み合わせるようにする。
【0018】
以上により、無端循環体29の回転によって第2取付軸17を回転させると、バネ軸21を回転させてコイルバネ20を巻く又は巻き戻すことになる。この巻きトルクはコイルバネ20の巻き量に比例し、巻き量が少ない最初(ドアスラット1の送り出し始めや送り込み終わり)の頃は小さくてよいが、巻き量が多い最後(ドアスラット1の送り出し終わりや送り込み始め)の頃は大きなものになる。しかし、その反面、ドアスラット1の送出し量による重量がドアスラット1を送り出す方向にプラスに作用し、結局、送出し量と巻きトルクは完全とはいえないがバランスするものになる。しかし、上部送込み方式のドアにあっては、ガイドローラ2がガイド溝11の下段の直線部40から第2湾曲部39を通過して上段の直線部38に回動する間に、上下のドアスラット1が屈曲してドアスラット1を送り出す方向に作用する力が小さくなるととともに、ガイドローラ2がガイド溝11に押し付けられるようになることから、この間、コイルバネ20を巻き締めながらドアスラット1を動かすには大きな駆動トルクの発生を要するものになる。
【0019】
そこで、本発明は、ドアスラット1を送り出し始めた際にバネ軸21の駆動を遅らせる遅延機構24を設け、ドアスラット1の送出し量(ガイド溝11の第1湾曲部37からガイドレール28内に垂れ下がるドアスラット1の数量)が少なくて大きな駆動トルクを要求される最初のうちは、バネ軸21は回動させずに第2送りホイール9のみを回動させるようにして、コイルバネ20を巻き締めることなくドアスラット1を送り出すようにしたものである。本例の遅延機構24は、第2取付軸17に嵌合された巻締めホイール19の側面にピン25を突設し、このピン25を第2送りホイール9の側面に形成された円状の溝26に突入させ、溝26の所定個所(本例では一カ所)に堰27を設けたものにしている。そして、ピン25を堰27(第2送りホイール9)の回転方向前方に位置させたものにしている。なお、このピン25や堰7からなる遅延機構24は、左右の第2送りホイールにそれぞれ一組ずつ設けて左右のものが同期するようにしている。
【0020】
これによると、最初は無端循環体29の回転に連動して第2送りホイール9のみが回動するから駆動トルクは小さくてよく、ほぼ一回転すると、堰27がピン25を押し(図2の状態)、以後は巻締めホイール19、すなわち、バネ軸21を回転させてコイルバネ20を巻き始めるが、このときはドアスラット1がある程度送り出されており、その重量が送り出す方向にプラスされるから、それほど大きな駆動トルクを必要としない。なお、コイルバネ20は第2送りホイール9の回転によって直接巻く又は緩める構造にすることもでき、その場合は、第2取付軸17の駆動ホイール19とは左右方向反対側(図5中右側)の端で第2送りホイール9に巻締めホイール19を取り付け、これに対応させてバネ軸ホイール22や無端循環体23を左右反転させた位置に設ければよい。さらに、遅延機構24を設けないこともでき、その場合は、コイルバネ20を第1又は第2送りホイール8、9の回転によって直接巻く又は緩める構造にすればよい。
【0021】
上下のドアスラット1の屈曲角α(図8参照)が一定限度(90°)以下になると、上側のドアスラット1を送り出す方向に働く力の成分が小さくなってガイドローラ2がガイド溝11に強く押し付けられ、転動させるのに非常に大きな駆動トルクが必要になる。そこで、本例では、最小屈曲角αを110°に抑えるようにして駆動トルクの低減を図っている。最小屈曲角αの設定は、ガイド溝11の湾曲部の回転半径とドアスラット1の上下長さとの関係によって決まるが、第1及び第2湾曲部37、39の曲げ半径が大きいほど、また、ドアスラット1の上下長さが小さいほど、最小屈曲角αは大きくすることができる。しかしながら、曲げ半径はスペース上小さい方が好ましく、ドアスラット1の上下長さは大きく設定する方がガイドローラ2やブラケット3、4といった部材が少なくできてよいから、これらのバランスを考慮しながら決定する必要がある。
【0022】
一方、遅延機構24の作動範囲についても、本例では、堰27がピン25に当接した位置から再度ピン25に当接するまでのほぼ一周の範囲に設定したが、ガイド溝11の湾曲半径、ドアスラット1の上下長さや重量及びコイルバネ20の巻きトルク等のバランスを考慮して設定する必要があり、堰27の取付け位置を変更することで作動範囲を簡単に調節できるようにするのが望ましく、溝26内の任意の位置に堰27を移動させて再固定できるように、ネジ固定等の手段で任意の位置に固定できるようにするとよい。また、このようにすることで、長期の使用によって狂いが生じて再調整の必要が生じた場合や製造誤差等の個体差によって最適な作動範囲に設定することが可能となる。なお、遅延機構24の作動範囲を小さく設定した場合であれは、ドアスラット1の全開状態(図1の状態)において堰27はピン25から離れた位置に存在することになる。
【0023】
ドアスラット1が最大に送り出されて開口部を閉止したとき(図3の状態)、コイルバネ20も相応に巻かれてその巻戻し力とドアスラット1の重量とがバランスするようになっている。この点で、駆動モータ14は終始容量の小さいものでよく、コストの低減、スペースの小型化が可能になる。一方、開口部を開放するときには、駆動モータ14を駆動してドアスラット1を巻き取ることになる。このとき、ピン25と堰27とはバランス状態で互いに押圧し合って停止している状態から、送りホイール9の強制回動により堰27がピン25から離れる方向に回転することによって、ピン25はコイルバネ20の巻戻し力で堰27を押しながら同じ速度で回転し、ドアスラット1の重量をバランスさせる力を常に発生させる。よって、ドアスラット1が完全に巻き取られたときには、コイルバネ20は最初の状態(遅延機構24が働く前)に戻っている。
【0024】
無端循環体29が長期の使用によって緩みが発生した場合、開閉操作に支障を来たす虞れがあるため、本例では、この緩みを発生させないようにオートテンション機構を設けている。このオートテンション機構として、本例では、図5に示すように、ボックス10の左右両側面に固定したケース30内に前後方向に延びるスライド軸31の両端を固着し、スライド軸31にスラスト軸受32を介して可動ケース33を摺動可能に取り付け、可動ケース33に自動調芯軸受34を介してボックス10の左右両側面に突出した送り軸17を回動可能に取り付けている。そして、可動ケース33のスラスト軸受32とケース30との間のスライド軸31の部分に圧縮バネ35を外挿させ、その反発力によって可動ケース33に取り付けた送り軸17を常時奥側へ押圧させる機構である。これによれば、第2取付軸17にベアリング18で遊嵌された第2送りホイール9がスライド軸31に沿って常時後方へ移動しようとするから、無端循環体29は常に張った状態が保たれる。このようなオートテンション機構は、無端循環体29として比較的伸びが少ないタイミングベルト等を採用する場合は省略することもできる。
【0025】
ところで、本例では、第1及び第2送りホイール8、9を同径に設定した場合を示したが、当然、異径のものにもできる(図示省略)。この場合のガイド溝11の第1及び第2湾曲部37、39は、同心位置に設ける第1及び第2送りホイール8、9の外径から一定幅だけ外側にオフセットした異径のものにすればよい。前後異径の第1及び第2送りホイール8、9とした場合、当然ながら無端循環体29の上下の直線部は少なくとも一方を傾斜させる必要があり、ガイド溝11の上下段の各直線部38、40もこれから一定幅だけ外側にオフセットした位置に設けるので、同様に上下段の直線部38、40の少なくとも一方は傾斜したものとなる。これらの設定は、コイルバネ20の巻きトルクとドアスラット1の重量とのバランス関係やドアスラット1同士の最小屈曲角αに配慮して決定すればよい。また、第1送りホイール8と第2送りホイール9との前後の関係、すなわち、駆動モータ14とコイルバネ20に関連する駆動系の構成部品は前後入れ替えても機能上何ら差し支えないが、本例のように駆動モータ14を手前に配した方が、開口部付近に設けられる操作スイッチ類との配線の距離を短くできて好ましい。
【0026】
以上、本発明のドア開閉装置は、コイルバネ20の作用によりドアスラット1の重量がバランスされたものであるから、必ずしも駆動モータ14による強制駆動を必要とせず、手動であっても軽い力で操作が可能である。手動とする場合、いうまでもなく駆動モータ14、出力ホイール15及び無端循環体16の構成を省いて低コスト化を図ることができる。また、強制駆動を行う場合であっても、停電時や駆動モータ14が動かないトラブルが発生した際に、何ら特別な操作をしなくても手動で簡単に開閉操作を行うことができる他、ドアスラット1が勝手に降下する危険性がないから、安心して使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ドアスラットの送出し、送込みを示す図5中A−A相当断面図である。
【図2】ドアスラットの送出し、送込みを示す図5中A−A相当断面図である。
【図3】ドアスラットの送出し、送込みを示す図5中A−A相当断面図である。
【図4】図2中B−B断面図断面図である。
【図5】図1中C−C断面図である。
【図6】ドアスラットの接続状態を示す正面図である。
【図7】ドアスラットの接続状態を示す側面図である。
【図8】図1の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ドアスラット
2 ガイドローラ
3 ブラケット
4 ブラケット
5 ピン
6 凸部
7 凹部
8 第1送りホイール
9 第2送りホイール
10 ボックス
11 ガイド溝
12 第1取付軸
13 駆動ホイール
14 駆動モータ
15 出力ホイール
16 無端循環体
17 第2取付軸
18 ベアリング
19 巻締めホイール
20 コイルバネ
21 バネ軸
22 バネ軸ホイール
23 無端循環体
24 遅延機構
25 ピン
26 溝
27 堰
28 ガイドレール
29 無端循環体
30 ケース
31 スライド軸
32 スラスト軸受
33 可動ケース
34 自動調芯軸受
35 圧縮バネ
36 連結具
37 第1湾曲部
38 上段の直線部
39 第2湾曲部
40 下段の直線部
41 第3湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を昇降して開閉する屈曲可能に上下に連結した複数のドアスラットからなるドアを開口部の左右両側に設けたドアスラットを案内するガイドレールの上端から水平方向に長い長円形状に延設したガイド溝に送り込んで収納するともに、巻締め量によって開口部に送り出したドアスラットの送出し量に応じた巻戻し力を発揮するコイルバネを設けてコイルバネの巻締め又は巻戻しをドアスラットの動きに連動させた上部送込み式のドア開閉装置において、
ガイド溝は、少なくとも、ガイドレールに接続した第1湾曲部と、ガイドレールから離れた側の第2湾曲部と、両湾曲部を上部で繋ぐ上段の直線部と、第2湾曲部の下部からガイドレールに向けて延びる下段の直線部とを備えており、
第1及び第2湾曲部のそれぞれの湾曲中心を通る軸線上に第1及び第2送りホイールを設け、第1及び第2送りホイールに無端循環体を巻き掛けて無端循環体にドアスラットを連結する一方、第1又は/及び第2送りホイールの回転でコイルバネを巻締め、巻戻しすることを特徴とするドア開閉装置。
【請求項2】
第1及び第2送りホイールの半径がガイド溝の第1及び第2湾曲部の曲げ半径よりも小径であり、かつ、ドアスラットを一杯に送り込んだ状態から一杯に送り出したとき、無端循環体とドアスラットとの連結点がガイド溝内の一周回を限度として回動する請求項1のドア開閉装置。
【請求項3】
第1又は第2送りホイールの一方の送りホイールとコイルバネとの間にコイルバネを巻締め、巻戻しするコイルバネ駆動系を設け、上記送りホイールがドアスラットを一杯に送り込んだ状態からドアスラット送出し側に回転するとき、コイルバネが所定回転角度遅れて巻締めを始める遅延機構をコイルバネ駆動系に組み込んだ請求項1又は2のドア開閉装置。
【請求項4】
コイルバネは、一端を固定端とし他端をコイルバネを外挿して回転可能に設けられるバネ軸に固定して回動端としてバネ軸にはバネ軸ホイールを固嵌し、一方の送りホイールを取付軸で支持して取付軸に巻締めホイールを固嵌し、巻締めホイールとバネ軸ホイールに無端循環体を掛け回してコイルバネ駆動系を構成するとともに、巻締めホイールにピンを突設してピンを一方の送りホイールの側面に形成した周上に不連続個所がある溝に突入させ、かつ、一方の送りホイールを取付軸に遊嵌して遅延機構とした請求項3のドア開閉装置。
【請求項5】
不連続個所が溝を塞ぐ堰であり、この堰が円周上の任意の位置に固定可能に設けられる請求項4のドア開閉装置。
【請求項6】
湾曲部の曲げ半径とドアスラットの上下長さとの関係を、湾曲部を通過する際の上下のドアスラット同士の屈曲角度が湾曲部全周に亘って90度よりも大きくなるように設定した請求項1〜5いずれかのドア開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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