説明

ドコサペンタエン酸およびアラキドン酸等の有用脂肪酸残基を含む脂質の製造方法

【課題】特定の軟体動物からn−3ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸のいずれか1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質を製造する方法を提供する。また、従来、低利用又は未利用のマキガイ等の軟体動物や水産加工廃棄物等を再資源化する方法を提供する。
【解決手段】腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)のいずれかに属する軟体動物の1種以上の軟体部及び/又は卵を有機溶媒で抽出し、抽出物を必要に応じてクロマトグラフィー処理して脂質成分を分画してドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸のいずれか1種以上を脂質構成脂肪酸として含む有用脂肪酸含有脂質を製造する。前記軟体動物は、前記酸のいずれか1種以上を含む藻類、及び/又は、リノール酸等が含まれる植物を餌として用いて飼育した貝類であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟体動物、特に、マキガイ綱、ニマイガイ綱、及びヒザラガイ綱(以下、これらを合わせて「貝」又は「貝類」ということがある。)、並びにイカ綱よりなる群から選択されるいずれか1種以上の動物、特にその軟体部及び/又は卵からなる群から選択されるものを原料として用いる、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上の残基を含む脂質を製造する方法に関する。
本発明で得られるドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を残基として含む脂質成分は、食品素材を始め、医薬品素材、化粧品素材、及び研究用試薬等に広く用いることができる。
【背景技術】
【0002】
水産物由来の脂質に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n−3)やイコサペンタエン酸(EPA、20:5n−3)は、n−3不飽和脂肪酸(n−3PUFA)の一種で、ヒトにとって必須の成分であり、ヒトの健康によい生理機能が明らかとなっており、例えば、EPAは医薬品として認可され、DHAは特定保健用食品素材として利用されている(非特許文献1)。最近、DHAの前駆体である、ドコサペンタエン酸が、EPAの1/10程度の量で、DHAと同等以上の生理機能を示すことが明らかとなった(非特許文献2)。一方、リノール酸(18:2n−6)などのn−6不飽和脂肪酸(n−6PUFA)もヒトに必須の成分とされ、特にアラキドン酸(20:4n−6)は、ヒトの脳の発達や老化防止に重要な役割を果たす脂肪酸であって、自然界に高純度なものはほとんどない(非特許文献3)。また、最近では、ドコサペンタエン酸やアラキドン酸の生産が微生物などから見出され、その利用が拡大してきている(特許文献1、2、及び3)。ただし、食経験のない微生物由来のドコサペンタエン酸やアラキドン酸を飲食用とする場合、安全性の試験を行い毒性のないことを確認する煩雑な操作が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−116566号公報
【特許文献2】特開平8−214893号公報
【特許文献3】特開2010−178745号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】原健次著、「生理活性脂質EPA・DHAの生化学と応用」、幸書房、1995年
【非特許文献2】INFORM、8、428−447、1997年
【非特許文献3】文部科学省編、「五訂増補日本食品成分表脂肪酸成分表編」、国立印刷局、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、n−3やn−6不飽和脂肪酸の中でも、ドコサペンタエン酸やアラキドン酸は、有用機能を持ち、近年その需要が増しているものの、これらの不飽和脂肪酸及びこれらの不飽和脂肪酸を残基として含む脂質の供給源がほとんどないため、その供給源の開発が待たれている。特に、安全性に問題のない食経験のある素材からの簡便な供給が望まれている。
【0006】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を高い含量で脂質構成脂肪酸として含む脂質を効率良く得るための製造方法を提供することである。
さらに、本発明の別の課題は、上記の脂質を多量に供給することができる製造方法を提供することにある。好ましくは、食経験のある素材からの製造方法を提供することにある。
また、本発明のさらなる課題は、種々の未利用マキガイや廃棄されるマキガイ内臓、低利用の陸生貝類を再資源化し、環境保全に寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の記載中、脂質中の脂肪酸の量を「%」で示した場合は、リン脂質及びトリアシルグリセロールなどの脂質を構成する脂肪酸残基を遊離脂肪酸として計算した量及び脂質中に遊離脂肪酸が存在する場合にはその遊離脂肪酸をさらに合わせた質量%を意味する。
また、本明細書中、脂質構成脂肪酸とは、リン脂質及びトリアシルグリセロールなどの脂質成分の脂肪酸残基を遊離脂肪酸と見なしたもの及び、存在する場合には、脂質に含まれる遊離の脂肪酸を合わせていう。また、本明細書において、脂質に含まれる脂肪酸に言及する場合には、他に特に注釈がない限り、この脂質構成脂肪酸のことをいう。
「脂質」とは、脂質を構成する2種以上の脂質成分の混合物であっても、その混合物からさらに単離精製した1つの成分であってもよく、これらは遊離の脂肪酸を成分として含んでいてもよい。
また、軟体部とは、軟体動物の貝殻、軟甲、又は甲を除いた全ての部分をいい、軟体部には、例えば、筋肉、外套膜、生殖巣、及び中腸腺などが含まれるがこれらに限定されない。
【0008】
本発明者は、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される不飽和脂肪酸を標的として、軟体動物から脂質成分を抽出し、その脂質を分析したところ、腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)の軟体部、例えば、アメフラシ(Aplysia kurodai、アプリシア クロダイ)並びにマガキガイ(Conomurex luchuanus、コノムレックス ルチュアヌス)やミスジマイマイ(Euhadra peliomphala、ユーカドラ ペリオンホラ)等のマキガイの筋肉や内臓にこれらの酸を残基として含む脂質が高い含量で含まれていることを見出した。特に、植(草・藻)食性及び/または雑食性の腹足類の極性脂質には驚くべきことに特異的に高い含量でこれらの脂質が含まれていることを見出した。例えば、アメフラシ内臓では、脂質構成脂肪酸として、アラキドン酸が、粗製脂質中の6%以上(精巣で8.7〜15.0%、その他内臓で6.3〜7.3%)(これら数値の範囲は複数回の試験の結果で得られた数値の最大値と最小値による範囲を表す。本明細書に記載した脂質構成脂肪酸の量を示す数値範囲について以下に同じである。)に達した。従来報告されている動物筋肉や内臓では、この量は1%程度であるの対し、上記の動物においては飛躍的に脂質構成脂肪酸全体に占めるアラキドン酸の割合が高いことを見出した。さらに、精製したリン脂質(ホスファチジルエタノールアミン中では、それぞれ精巣で10.9〜11.0%、卵巣で10.0〜13.1%、中腸腺で6.3〜9.4%、筋肉で6.3〜7.6%、及びその他内臓で11.3〜11.7%で含まれ、ホスファチジルコリン中では、それぞれ精巣で5.9〜8.9%、卵巣で13.3〜13.3%、中腸腺で7.6〜17.2%、筋肉で4.7〜5.0%、及びその他内臓で10.3〜16.9%で含まれ、脂質構成脂肪酸全体に占めるアラキドン酸の割合が高いことも見出した。成熟した卵巣で高い含量のアラキドン酸が得られることから放卵された卵や卵塊を脂質採取の原料として用いることもできる。陸棲のマキガイではこの量はさらに高く、スクミリンゴガイ(Pomacea canaliculata、ポマセア カナリキュラタ)では、ホスファチジルエタノールアミン中で26.9%、ホスファチジルコリン中で18.3%に達していた。同様に、陸棲の貝類では、アラキドン酸の誘導体であるドコサテトラエン酸も、脂質構成脂肪酸全体に占める割合が高いことを見出した。例えば、スクミリンゴガイでは、脂質構成脂肪酸全体に占めるドコサテトラエン酸の割合が、軟体部ホスファチジルエタノールアミン中で15.3〜16.3%、ホスファチジルコリン中で11.9〜13.6%に達していた。
【0009】
一方、ドコサペンタエン酸は、海産のマキガイに多く、例えば、マガキガイではドコサペンタエン酸は足及びその他内臓ホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ13.7〜17.2%、及び16.8〜19.7%、足及びその他内臓ホスファチジルコリン中で、それぞれ17.6〜18.0%、及び13.0〜17.8%含まれていた。公知のタテゴトアザラシ(Phoca groenlandicaフォカ グロエンランディカ)由来成分では4%程度であるの対し、それより高いことを見出した。また、同時にドコサペンタエン酸の前駆体であるイコサペンタエン酸も高含量で含まれることが分かった。さらに、マキガイを、アラキドン酸などの有用脂肪酸やその前駆体を含む藻類や植物を餌として用いて飼育すると、当該マキガイ筋肉や内臓に、天然の採取したマキガイと比較してさらに高含量のアラキドン酸などの有用脂肪酸を蓄積させることができることを見出し、これらの脂質を採取し、必要に応じて精製することによって、上記有用脂肪酸を脂質構成脂肪酸として多く含む脂質を得る方法について検討し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択されるいずれか1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質成分を収率よく製造する方法を提供するものである。
また、本発明は、種々の未利用マキガイや廃棄されるマキガイ内臓、低利用の陸生貝類を再資源化し、環境保全に寄与するものである。さらに、本発明は、安定かつ豊富な供給が望まれているドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を高い含量で脂質構成脂肪酸として含む脂質成分を多量に供給することができるその製造方法を提供するものである。
なお、上記のドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質ないし脂質成分とは、具体的には例えば、これらの脂肪酸の1種以上を構成酸残基として含むモノ、ジ、トリアシルグリセロール、及びリン脂質、リン脂質としては特にホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールからなる群から選択される脂質ないし2種以上の脂質成分を含む脂質混合物を典型的にはいうがこれに限定されず、技術常識によって「脂質」と理解される全ての成分が含まれる。さらに、この「脂質」の成分には、前記の遊離脂肪酸が含まれていてもよい。
【0011】
また、本発明においては、簡便に高濃度の上記標的脂肪酸を脂質構成脂肪酸として含有する脂質成分を抽出法によって製造できることから、本発明は、これらの脂肪酸に関してはこれらを低濃度で含む脂質しか供給できないという従来の知見を革新的に変えることができた。また、本発明の製造方法に用いる原料である軟体動物はその多くが、食経験がある動物かそれに類似する動物であり、かつ、本発明の製造方法の一態様では、脂質の抽出に飲食用成分の抽出に許容される抽出溶媒、例えばエタノールなどを用いることから、得られた脂質ないし脂質成分は飲食用素材として安全性に問題なく使用できる。
さらに、素材の軟体動物を、ドコサペンタエン酸やアラキドン酸、及び/又はそれらの前駆体であるリノール酸、リノレン酸、オクタデカトリエン酸、オクタデカテトラエン酸、及びイコサジエン酸からなる群から選択される脂肪酸のいずれか1種以上が含まれる植物を餌として飼育することによって、その軟体動物から、より高含量のドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される脂質構成脂肪酸を含む脂質ないし脂質成分を得ることができる。この発見に基づいて、本発明の脂質の製造方法において、リノール酸、リノレン酸、オクタデカテトラエン酸、及びイコサジエン酸からなる群から選択される1種以上含む藻類以外の植物、並びに、リノール酸、リノレン酸、オクタデカテトラエン酸、及びイコサジエン酸からなる群から選択される1種以上を含む、紅藻、褐藻、及び緑藻からなる群から選択される植物を餌として飼育した軟体動物を原料として用いる方法も完成した。この紅藻、褐藻、及び緑藻としては、以下の植物が例示できるが、これらに限られない。ワカメ(Undaria pinnatifida ウンダリア・ピナティフィダ)やカジメ(Ecklonia cava エクロニア・カバ)、アラメ(Eisenia bicyclis エイセニア・ビシクリス)やコンブ(Laminaria spp. ラミナリア種)、ヒバマタ(Fucus evanescens フクス・エバネセンス)などのコンブ目やヒバマタ目などの褐藻類、エゴノリ(Camphylaephora hyopnaeoides カムフィァエホラ・ヒプナエオイデス)やマクサ(Gelidium amansii ゲリヂウム・アマンシイ)、スサビノリ(Porphyra spp. ポルフィラ種)などのウシケノリ目、テングサ目、スギノリ目、イギス目などの紅藻類、アオサ類(Ulva spp. ウルバ種)などの緑藻類が挙げられ、特に、アラキドン酸、オクタデカテトラエン酸、オクタデカトリエン酸、イコサペンタエン酸の1種以上の脂肪酸を多く含むので好ましい。また、藻類以外の植物としては、野菜や果実類が挙げられ、特にトウモロコシ、ニンジンが、脂質含量も高くアラキドン酸の前駆体であるリノール酸を多く含み好ましい。また、それらの皮や茎、葉、芯(軸)等の不可食部を用いることもできる。さらに、飼育した軟体動物を原料として用いた場合、軟体動物に含まれる脂質の含量を上げることができるとともに、水温や餌などの影響による収量の変動を小さくでき、アラキドン酸等の目的とする脂肪酸や目的とする脂肪酸を残基として含む脂質を、常に一定の量確保できる。
【0012】
同時に、本発明の製造方法に用いる軟体動物には、アラキドン酸の誘導体であるドコサテトラエン酸も脂質構成脂肪酸として相当量含まれていることを見出した。
【0013】
これらの有用脂肪酸類を脂質構成脂肪酸として含む脂質は、クロロホルムやメタノールなどの抽出溶媒でもエタノール等の溶媒を用いた場合と同様に効率良く抽出でき、それらの抽出溶媒を用いて得られた脂質は、医薬品、化粧品、及び研究用の試薬としての用途に用いることができる。
【0014】
すなわち、本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであって、次のとおりの軟体動物のいずれか1種以上を原料として用いる、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質を製造する方法に関する。
(1)腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)のいずれかに属する1種以上の軟体動物の軟体部及び/又は卵を原料として用いる、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質の製造方法。
(2)腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)からなる群のいずれかに属する1種以上の軟体動物の軟体部及び/又は卵を原料として用い、前記軟体部及び/又は卵から脂質を有機溶媒で抽出してドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択されるいずれか1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質成分を採取することを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)のいずれかに属する1種以上の軟体動物の軟体部及び/又は卵を原料として用いて有機溶媒で抽出をし、さらに抽出物をクロマトグラフィー処理し、有機溶媒によって分画してドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質を得ることを特徴とするドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質の製造方法。
(4)腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)のいずれかに属する1種以上の軟体動物の軟体部及び/又は卵を原料として用いて、エタノール、含水エタノール、アセトン、及びヘキサンからなる群から選択される1種以上の溶媒で抽出をし、抽出物をエタノール、含水エタノール、アセトン、及びヘキサンからなる群から選択される1種以上の溶媒でクロマトグラフィー処理及び分画して、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質を採取することを特徴とするドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を含む脂質の製造方法。
(5)用いる軟体動物が、上記の腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、及びヒザラガイ綱よりなる群から選択される1種以上の貝である上記(1)〜(3)のいずれかの製造方法。
(6)上記の貝が、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、オクタデカテトラエン酸、及びオクタデカトリエン酸からなる群から選択される1種以上を含む紅藻、褐藻、及び緑藻、並びにリノール酸、リノレン酸、オクタデカテトラエン酸、及びイコサジエン酸からなる群から選択される1種以上を含む藻類以外の植物のうちの1種以上を餌として用いて飼育した、腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、及びヒザラガイ綱よりなる群から選択される1種以上の貝である上記(1)から(4)のいずれかの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の脂質の製造方法によれば、腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)のいずれかに属する1種以上の軟体動物の軟体部及び/又は卵を原料として効率よくドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質を得ることができる。この結果、従来、タテゴトアザラシに微量存在しているとされていたドコサペンタエン酸や微生物を用いて供給されていたアラキドン酸を脂質構成脂肪酸として含む脂質を安全な食品素材から多量に簡便に効率よく製造することができる。本発明の方法によって得られるドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質は、たとえ粗製油であっても、充分な量の上記の有用脂肪酸を脂質構成脂肪酸として含有しているため、食品素材、医薬品素材、及び化粧品素材等として広く用いることができるし、また、研究試薬としても用いることができる。さらに、アフリカマイマイ及びスクミリンゴガイなどの軟体部及び/又は卵を原料に用いると、従来、害虫として駆除され、用途のほとんどなかったそれらの動物の軟体部及び/又は卵を有用資源として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の製造方法によって得られた脂質をメチルエステル化して得られたアラキドン酸のDMOX(ジメチルオキサゾリン)誘導体のマススペクトルを示す図である。
【図2】図2は、本発明の製造方法によって得られた脂質をメチルエステル化して得られたドコサペンタエン酸のDMOX(ジメチルオキサゾリン)誘導体のマススペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における腹足類(マキガイ綱)としては、以下に記す巻き貝が例示される。オキナエビスガイ(Mikadotrochus beyrichii ミカドトロチュス ベイリッチイ)、リュウグウオキナエビスガイ(Entemnotrochus rumphii エンテムノトロチェス ルムフィイ)等のオキナエビスガイ(Archaeogastropoda アーキアガストロポーダ)類、マダカアワビ(Haliotis madaka ハリオティス マダカ)、メガイアワビ(Haliotis gigantea ハリオティス ギガンテア)、ミミガイ(Haliotis asinina ハリオティス アシニナ)、アカネアワビ(Haliotis rufescens ハリオティス ルフェスセンス)などのミミガイ(Haliotidae ハリオティダエ)類、カサガイ(Cellana mazatlandica セラナ マザトランディカ)、ヨメガカサガイ(Cellana toreuma セラナ トレウマ)、トラフザラガイ(Cellana testudinaria セラナ テストディナリア)等のツタノハガイ(Patellidae パテリダエ)類、ウノアシガイ(Patelloida saccharina パテロイダ サッカリナ)、アオガイ(Notoacmea schrenckii ノトアメア シュレネキイ)、シロガイ(Collisella cassis コリセラ カッシス)、スゲガサガイ(Lepeta lima レペタ リマ)等のユキノカサガイ(Acmaeidae アクマエイダエ)・シロガサガイ(Lapetidae ラペティダエ)類、キサゴ(Umbonium costatum ウムボニウム ソスタツム)、ダンベイキサゴ(Umbonium giganteum ウムボニウム ギガンテウム)、ナツモモガイ(Clanculus margaritarius クランキュルス マルガリタリウス)、マキアゲエビスガイ(Turcica coreensis ツルシカ コレーンシス)、ギンエビスガイ(Ginebis argenteonitens ギネビス アルゲンテオニテンス)、オオコシダカガンガラ(Omphalius pfeifferi オムファリウス フェイフェリ)、コシダカガンガラ(Omphalius rusticus オムファリウス ルスチクス)、ギンタカハマガイ(Tectus pyramis テクツス ピラミス)、サラサバテイラ(Tectus maximus テクツス マキシムス)、ニシキウズガイ(Trochus maculatus トロチュス マキュラツス)、クボガイ(Chlorostoma lischkei クロロストマ リスクケイ)等のニシキウズガイ類、イシダタミガイ(Monodonta labio モノドンタ ラビオ)等のニシキウズガイ類(Trochidae)、アマオブネガイ(Nerita albicilla ネリタ アルビシラ)、アマガイ(Nerita japonica ネリタ ジャポニカ)、カノコガイ(Clithon sowerbianus クリソン ソエルビアヌス)等のアマオブネガイ類、サザエ(Batillus cornutus バチルス コルヌッツス)、タツマキサザエ(Turbo reevei ツルボ レベイ)、チョウセンサザエ(Marmarostoma argyrostoma マルマロストマ アルジロストマ)、ヤコウガイ(Lunatica marmorata ルナティカ マルマラタ)等のリュウテンサザエ類(Turbinidae ツルビニダエ)、オオタニシ(Cipangopaludina japonica シパンゴパルヂナ ジャポニカ)、マルタニシ(Cipangopaludina chinensis シパンゴパルヂナ チネンシス)等のタニシ類(Vivipariidae ビビパリイダエ)、カワニナ(Semisuleospira libertina セミスレオスピラ リベルチナ)、クロダカカワニナ(Semisulcospira kurodai セミスレオスピラ クロダイ)等のカワニナ類(Pleuroceridae プレウロセリダエ)、タマキビガイ(Littorina brevicula リットリナ ブレビクラ)、クロタマキビガイ(Neritorema sitkana ネリトレナ シトカナ)等のタマキビガイ類(Littorinidae リトリニダエ)、ウミニナ(Batillaria multiformis バチラリア マルチフォルミス)等のウミニナ類(Potamididae ポタミヂアエ)、オニノツノガイ(Cerithium modulosum セリシウム モヅロスム)等のオニツノガイ類(Cerithidae セリシダエ)、クモガイ(Lambis lambis ランビス ランビス)、スイジガイ(Harpago chiragra ハルパゴ チラグラ)、サソリガイ(Lambis crocata ランビス クロカタ)等のスイショウガイ類(Stombidae ストンビダエ)、ハチジョウダカラガイ(Mauritia mauritiana マウリチア マウリチアナ)、ナンヨウダカラガイ(Callistocypraea aurantium カリプトシプラエア アウランチウム)等のタカラガイ類(Cypraeidae シプラエイダエ)、アメフラシ(Aplysia kurodai アプリシア クロダイ)、フウセンアメフラシ(Notarchus punctatus ノタルチュス プンクタツス)、タツナミガイ(Dolabella auricula ドラベラ アウリクラ)等のアメフラシ類(Anaspidae アナスピダエ)、エダウミウシ(Kaloplocamus ramosus カロプロカムス ラモサス)、ムカミノデウミウシ(Pteraeolidia ianthina テラエオリディア イアンチナ)、オオミノウミウシ(Aeolidiella papillosa アエリヂエラ パピロサ)等のウミウシ類(Nudibranchia ヌディブランキア)、イソアワモチ(Oncidium verruculatum オンシヂウム ベルキュカツム)類、モノアラガイ(Radix japonicaラディックス ジャポニカ)、オオモノアラガイ(Radix megasoma ラディックス メガソーマ)等のモノアラガイ類(Basommatphora バソマトホラ)、オカモノアラガイ類(Succineidae スッシネイダエ)、スルガギセルガイ(Decolliphaedusa surugensis デコリファエデュサ スルガエンシス)等のキセルガイ類(Crausiliidae クラウシリイダエ)、ミスジマイマイ(Euhadra peliomphala ユーハドラ ペリオムファラ)、アフリカマイマイ(Achatina fulica アチャチナ フリカ)、シマアフリカマイマイ(Achatina zebra アチャチナ ゼブラ)、ナメクジ(Incilaria bilineata インシラリア ビリネアタ)、ヤマナメクジ(Incilaria fruhstorferi インシナリア フルストルフェリ)、ダイオウマイマイ(Ryossota otahietana リョソタ オタヘタナ)、ナミマイマイ(Euhadra sandai ユーハドラ サンダイ)、アワマイマイ(Euhadra awaensis ユーハドラ アワエンシス)、サラセンマイマイ(Otala galena オタラ ガレナ)、エスカルゴ(Helix pomatia ヘリックス ポマテア)、キブツネジレガイ(Gonaxis kibweziensis ゴナキス キブジエンシス)、プチグリ(Helix aspersa ヘリックス アスペルサ)、オオアカマイマイ(Strophocheilus popelairianus ストロフォチェイルス ポペライリアヌス)などのマイマイ類、スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ、Pomacea canaliculata ポマセア カナリキュラタ)、タニシモドキ(Pila polita ピラ ポリタ)等のリンゴガイ類(Ampullariidae アムプラリイダエ)、ツノガイ類(Scaphopoda スカフォポーダ)を例示することが出来る。
【0018】
また、ヒザラガイ綱としては、ヒザラガイ(Acanthopleura japonica アカントプレウラ ジャポニカ)、ババガゼ(Placiphorella stimpsoni プラシフォレラ スチムプソニ)、ニシキヒザラガイ(Ornithochiton hirasei オルニソキートン ヒラセイ)、オニヒザラガイ(Acanthopleura gemmata アカントプレウラ ゲマタ)、エゾヤスイリヒザラガイ(Lepidozona albrechtii レピドゾナ アルブレチ)、オオバンヒザラガイ(Cryptochiton stelleri クロプトキートン ステレリ)、クサズリガイ(Rhyssoplax kurodai リソプラックス クロダイ)等のヒザラガイ(Polyplacophora ポリプラコフォレ)類、斧足類(ニマイガイ綱)には、マシジミ(Corbicula leana コルビキュラ レアナ)等のシジミ類(Corbiculidae コルビキュリダエ)、ツキガイ(Codakia tigerina コダキア チゲリナ)、ウメノハナガイ(Pillucina pisidium ピルシナ ピシヂウム)等のツキガイ類(Lucinidae ルシニダエ)、ミドリガイ(Smaragdinella calyculata スマラグヂネラ カリキュラタ)等のブドウガイ類(Cephalaspidae セファラスピダエ)、ザルガイ(Vasticardium burchardi バスチカルヂウム ブルチャルディ)、イシカゲガイ(Clinocardium buellowi クリノカルヂウム ブエロイ)等のザルガイ類(Cardiidae カルヂイダエ)、ヒメシャコガイ(Tridacna crocea トリダクナ クロセア)、シラナミガイ(Tridacna maxima トリダクナ マキシマ)等のシャコガイ類(Tridacnidae トリダクニイダエ)、ウチムラサキガイ(Saxidamus purparatus サキシダムス プルパラツス)、アサリ(Ruditapes phillipinarum ルヂタペス フィリピナラム)、ハマグリ(Meretrix lusoria メレトリックス ルソリア)、コタマガイ(Gomphina melanaegis ゴムフィナ メラナエギス)、カガミガイ(Phacosoma japonucum ファコソマ ジャポニクム)、ホンビノスガイ(Mercenaria mercenaria メルセナリア メルセナリア)、スダレガイ(Pophia lischkei ポフィア リスチケイ)等のマルスダレガイ類(Veneridae ベネリイダエ)、アカガイ(Scapharea broughtonii スカファレア ブログトニイ)、サルボウガイ(Scapharea subcrenata スカファレア サブクレナタ)等のフネガイ類(Archidae アーキダエ)、マガキ(Crassostrea gigas クラスオストレア ギガス)、イタボガキ(Ostrea denselamellosa オストレア デンセラメロサ)、ヨーロッパガキ(Ostrea edulis オストレア エデュリス)等のイボタガキ類(Ostreidae オストレイダエ)、ホタテガイ(Mizhopecten yessoensis ミズホペクテン エゾエンシス)、ヒオウギガイ(Chlamys nobilis チュラミス ノビリス)、ニシキガイ(Chlamys squamata チュラミス スクアマタ)、ツキヒガイ(Amusium japonicum アムシウム ジャポニカム)等のイタヤガイ類(Pectiniidae ペクティニダエ)、ウバガイ(Pseudocardium sachalinense シュウドカルヂウム サチャリネンシス)、バカガイ(Mactra chinensis マクトラ チネンシス)、オオトリガイ(Lutraria maxima ルトラリア マキシマ)、ミルクイガイ(Tresus keenae トレスス キーナエ)等のバカガイ類(Mactriidae マクトリイダエ)、アコヤガイ(Pinctada fucata ピンクタダ フカタ)、シロチョウガイ(Pinctada maxima ピンクタダ マキシマ)、クロチョウガイ(Pinctada margaritifera ピンクタダ マルガリチフェラ)、マベガイ(Pteria penguin プテリア ペングイン)等のウグイスガイ類(Pteriidae プテリイダエ)、タイラギ(Atrina pectinata アトリナ ペクチナタ)等のハボウキガイ類(Pinnidae ピニダエ)、ムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis ミチルス ガロプロバンシアリス)、カワヒバリガイ(Limnoperna fortunei リムノペルナ フォルツネイ)等のイガイ類(Mytilidae ミチリダエ)、ドブガイ(Anodonta woodiana アノドンタ ウーディアナ)、カラスガイ(Cristaria plicata クリスタリア プリカタ)、イケチョウガイ(Hyriopsis schlegeli ヒリオプシス シュレゲリ)等のサンカクガイ類(Paleoheterodonta パレオヘテロドンタ)、アゲマキガイ(Sinonovacula constricta シノノバクラ コンストリクタ)、マテガイ(Solen strictusソレン ストリクトス)等のマテガイ類(Solenidae ソレニダエ)、オオノガイ(Mya arenariaミア アレナリア)類(Myidae ミイダエ)等を例示することができる。
【0019】
さらに、頭足類(イカ綱)としては、コウイカ(Sepia esculenta セピア エスキュレンタ)、カミナリイカ(Sepia lycidas セピア リシダス)、シリヤケイカ(Sepiella japonica セピエラ ジャポニカ)、モンゴウイカ(Sepia afficinalis セピア アフィシナリス)、コブシメ(Sepia latimanus セピア ラチナムス)、ダンゴイカ(Sepiola birostrata セピオラ ビロストラタ)、ミミイカ(Euprymna morsei ユープリムナ モルセイ)、アオリイカ(Sepioteuthis lessoniana セピオテウチス レソニアナ)、ヤリイカ(Loligo bleekeri ロリゴ ブリーケリ)、ケンサキイカ(Loligo edulis ロリゴ エデュリス)、ジンドウイカ(Loligo japonica ロリゴ ジャポニカ)、スルメイカ(Todarodes pacificus トダロデス パシフィクス)、トビイカ(Stenoteuthis oualaniensis ステノテウチス オウアラニエンシス)、ソデイカ(Thysanoteuthis rhombus チサノテウチス ロンブス)、ツメイカ(Onychoteuthis borealijaponica オニコテウチス ボレアリジャポニカ)、ホンツメイカ(Onychoteuthis banksii オニコテウチス バンクシイ)、ホタルイカ(Watasenia scintillans ワタセニア シンチランス)、アカイカ(Ommastrephes bartramii オマストレフェス バルトラミイ)、アメリカオオアカイカ(Dosidicus gigas ドシディクス ギガス)、スジイカ(Eucleoteuthis luminosa エウクレオチス ルミノサ)、タコイカ(Gonatopsis borealis ゴナトプシス ボレアリス)等のイカ類、イイダコ(Octopus ocellatus オクトパス オケラトス)、スナダコ(Octopus aegina オクトパス アエギナ)、マダコ(Octopus vulgaris オクトパス ブルガリス)、マメダコ(Octopus brenice オクトパス ブレニセ)、テナガダコ(Octopus minor オクトパス マイナー)、ヤナギダコ(Octopus conispadiceus オクトパス コニスパヂセウス)、エゾクモダコ(Octopus araneoides オクトパス アラネオイデス)、ミズダコ(Octopus dofleini オクトパス ドフレイニ)、ワモンダコ(Callistoctopus cyanea カリストオクトパス シアネア)、チヒロダコ(Benthoctopus frofundorum ベントオクトパス フロフンドルム)、シマダコ(Octopus ornata オクトパス オルナタ)等のタコ類を挙げることができる。
【0020】
これらの軟体動物には、ヒザラガイ、キサゴ、カサガイ、ウミウシ類やイカ・タコ類のように海洋に生棲する生物、シジミ等のように汽水に生息する生物、或いはオオタニシ、モノアラガイ、及びカワニナのように淡水に生息する生物、エスカルゴ及びアフリカマイマイのように陸上に生息する生物がある。本発明では、これらいずれかの軟体動物の軟体部及び/又は卵を用いることができ、その1種だけでなく2種以上を併用することができる。これら軟体動物のうち、植食性の腹足類であるカサガイやアメフラシ、並びにウミウシ類にはドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸を脂質構成脂肪酸として高い含量で含むグリセリド脂質が多く、その軟体部のすべての部位を原料として用いることができる。また、ヒザラガイ、オオバンヒザラガイ、及びムラサキイガイ等の軟体部にも、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸を脂質構成脂肪酸として高い含量で含むグリセリド脂質が多く、本発明の製造方法のための好ましい原料として用いることができる。なお、貝類の場合、軟体部としては、足、外套膜、閉穀筋、生殖巣、その他の内蔵のいずれを用いてもよいが、これらの2種以上の組み合わせ、あるいはこれらを全て用いてもよい。また、頭足類の場合、外套膜、腕部、触腕、頭部、及び内臓のいずれを用いてもよいが、これらの2種以上の組み合わせ、あるいはこれらを全て用いてもよい。また、それらの生物の卵を用いてもよい。特にサザエやアワビなどの筋肉部を採取した後の軟体部内臓、スクミリンゴガイ、及び/又はアフリカマイマイから本発明の方法によりドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される脂肪酸を高い含量で脂質構成脂肪酸として含むグリセリド脂質、又はドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される脂肪酸を高い含量で含む脂肪酸の混合物を採取した場合には、従来は廃棄されている資源や害虫として駆除されている生物を再資源化することができ、これらを抽出素材として用いる脂質の製造方法が実用化された場合、環境や農業の保全に寄与するばかりでなく、上述した有用脂肪酸成分の含量が多い点からみても明らかに有利である。また、これらの植食性の腹足類を養殖によって飼育し、その場合にそれらの餌である海藻や陸上植物として、ドコサペンタエン酸やアラキドン酸、及び/又はそれらの前駆体であるリノール酸、リノレン酸、オクタデカトリエン酸、オクタデカテトラエン酸、及びイコサジエン酸からなる群から選択される脂肪酸のいずれか1種以上が含まれる海藻や陸上植物を餌として用いることよって、当該腹足類の軟体部にはより高濃度のドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される脂質構成脂肪酸を含む脂質が蓄積されるため、さらに効率良くそこからドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される脂肪酸を脂質構成脂肪酸として高い含量で含むグリセリド脂質を採取したり、特定の脂肪酸が脂質構成脂肪酸として濃縮されたグリセリド脂質を採取することができる。
【0021】
本発明では、これらの腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)のいずれか1種以上の軟体動物の軟体部をそのまま及び/または煮熟し、エタノール等の食品用の抽出溶媒として許容される有機溶媒及び/またはその他の種々の有機溶媒で抽出し、必要に応じてさらにクロマトグラフィー処理し、n−ヘキサン、アセトン、エタノール、含水エタノール等食品に用いることのできる有機溶媒又はその他の有機溶媒を用いて分画して、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される脂肪酸を脂質構成脂肪酸として含む脂質のうち、中性脂質であるトリグリセリド、極性脂質であるリン脂質画分等を別々に又は混合物として採取し、さらに必要に応じて精製することによってドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸のいずれか1種以上を脂質構成脂肪酸として多く含む脂質を効率良く得ることができる。
上記の抽出溶媒としては、食品に用いることのできる前述の具体的な溶媒以外に、メタノール、ブタノール、t−ブタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、及びその他のアルコール類、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、及びその他のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、並びにエーテル等が用いられる。また、抽出溶媒として超臨界二酸化炭素を用いてもよい。医薬品素材や化粧品素材として用いる脂質を得ることを目的とする場合、これらの溶媒を単独で用いてもよいし、数種の溶媒を混合して用いてもよい。中でも、エタノールや含水エタノール、アセトン、n−ヘキサンは、飲食用に用いる脂質を抽出するために用いる溶媒として好ましく、特に、エタノールや含水エタノールが、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される脂肪酸を脂質構成脂肪酸として含む極性脂質を高濃度で溶解することができるので好ましい。
【0022】
また、上記のクロマトグラフィー処理は、充填剤としてシリカゲル、アルミナ、フロリジル等から選択される充填剤を用いることができ、また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)処理する場合は充填剤としてシリカゲル(順相)やC18、フェニル、及び/又はCN等が化学結合したシリカゲル(逆相)等を用いて行うことができる。
【0023】
ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質の製造は、上記の軟体動物の軟体部及び/又は卵を生のままおよび/または煮熟、すなわち熱湯中で煮沸 し、冷却後取り出し、そのまま/又は乾燥させてから、エタノールや含水エタノール等の有機溶媒に浸漬し、破砕し、さらに必要に応じて同様の有機溶媒をさらに加えてドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸のうち1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質を抽出し、次に濃縮して粗製脂質を得る。生のまま抽出しても十分量のドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸のうちの1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質を得ることができるが、原料を水等で煮熟することにより、タンパク質を固化させ、且つ原料から水を除く効果があり、その結果、次の抽出工程において目的とする脂質をより効率よく抽出できる。また、得られた原料を抽出前に凍結乾燥すれば、水分をさらに除き、より効率よくエタノールなどの抽出溶媒を用いて脂質を抽出できる。次いで、得られた粗製脂質をクロマトグラフィー処理し、n−ヘキサン、アセトン、エタノール、又は含水エタノール等の有機溶媒を用いて成分を分画し、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸のいずれか1種以上を脂質構成脂肪酸として高濃度で含む各脂質クラスを得る。粗製脂質及び/又は各脂質クラスに含まれるドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸の同定は、粗製脂質または精製各脂質を、メチルエステル化し、標品のドコサペンタエン酸メチル、アラキドン酸メチル、イコサペンタエン酸メチル、及びドコサテトラエン酸メチルと、ガスクロマトグラフィーのクロマトグラム中の保持時間が一致することで行うことができる。また、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器)で分子量やその分子フラグメントからも化合物の同定を行うことができる。ここで、本発明の製造方法によれば、成分分画及び/又は精製をする前の粗製脂質であっても、飲食用としては充分に高い濃度のドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸を脂質構成脂肪酸として含む脂質であるといえるが、さらに精製することにより、さらに高濃度でこれらの酸を脂質構成脂肪酸として含む各脂質クラス(脂質群)に分画することができる。また、それぞれの脂質クラスは、酸や塩基等の触媒を用いてエタノールと反応させることにより、ドコサペンタエン酸エチル、アラキドン酸エチル、イコサペンタエン酸エチル、及びドコサテトラエン酸エチルからなる群から選択される1種以上を高濃度で含む脂肪酸エチルエステル混合物へと変換することもできる。
【0024】
本発明者は、多数の天然及び飼育した軟体動物を原料にしてその脂質を分析し、腹足類、斧足類及び頭足類の脂質に、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸が脂質構成脂肪酸として多く含まれることを見出し、本発明の製造方法を完成したものであるが、脂質の分析例を、アメフラシを例にとって示すと次のとおりである。
【0025】
アメフラシ(Aplysia kurodai、体重301.0g及び293.1g)2個体の軟体部を95℃で5分間煮熟した後、水を切り室温まで冷却した。精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓に分け、各々の一部をそれぞれエタノール50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。それをろ過後、200mLのエタノールを数度に分け、ろ紙上の固形物に注ぎかけ、脂質を抽出し、ろ液に加えた。ろ液すべてを減圧下濃縮して乾固させ、粗製脂質を得た。粗製脂質は、一部をそのままメチルエステル化(メタノール、触媒量濃塩酸、80℃、2時間)し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メルク社製カラムクロマトグラフィー用シリカゲル60、粒径0.663〜0.200mm、70〜230メッシュ)により、トリアシルグリセロールなどの中性脂質(アセトンのみでトリアシルグリセロールは溶出でき、アセトン−エタノール、2/1、v/vでジアシルグリセロール及び遊離脂肪酸が溶出できる)、ホスファチジルエタノールアミン(10%含水エタノールで溶出できる)、及びホスファチジルコリン(30%含水エタノールで溶出できる)などの各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにする(アジレント社製ガスクロマトグラフィー:HP-5890又はHP-6890、スペルコ社製キャピラリーカラム:オメガワックス−250、30m×0.25mm内径、厚さ0.25μm、カラム温度215℃、注入口温度230℃、FID検出器温度240℃、キャリヤーガス:ヘリウム及びインテグレーター:HPケミステーション、A.06)とともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し(アジレント社製ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器:HP-5973N、スペルコ社製キャピラリーカラム:オメガワックス−250、30m×0.25mm内径、厚さ0.25μm、カラム温度215℃、注入口温度230℃、キャリヤーガス:ヘリウム及びPCワークステーション−データ処理システム:MSDChemStationG1701CJガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器)に供し、化学構造の解析を行った(図1及び図2)。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、精巣、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ8.7〜15.0%、6.3〜7.3%で含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓ホスファチジルエタノールアミン中では、それぞれ10.9〜11.0%、10.0〜13.1%、6.3〜9.4%、6.3〜7.6%、及び11.3〜11.7%で含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓ホスファチジルコリン中では、それぞれ5.9〜8.9%、13.3〜13.3%、7.6〜17.2%、4.7〜5.0%、及び10.3〜16.9%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサペンタエン酸は、精巣、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ4.9〜5.8%、2.0〜3.0%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓ホスファチジルエタノールアミン中では、それぞれ4.1〜8.9%、3.2〜4.4%、5.0〜5.9%、6.9〜8.9%、及び3.5〜3.6%、ホスファチジルコリン中では、それぞれ2.9〜6.1%、3.2〜3.2%、2.8〜3.1%、4.9〜6.1%、及び3.6〜4.5%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸は、精巣、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ6.4〜12.3%、1.9〜4.6%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓ホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ8.1〜9.8%、10.9〜12.5%、5.5〜7.9%、7.4〜14.6%、及び11.4〜11.7%含まれていた。
【0026】
なお、全脂質構成脂肪酸に占める各脂肪酸の割合は、上記のとおり脂質構成脂肪酸をメチルエステルに公知の方法で変換し、そのメチルエステルを上で例示した、ガスクロマトグラフィー及び/又はガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器を用いて定量することによって決定することができる。上で示した脂質中に含まれる脂質構成脂肪酸の量も、以下で示す本発明の実施例に示した脂質構成脂肪酸の量もこの定量方法を用いて測定した値である。
【0027】
ここで、トリアシルグリセロールの溶出溶媒として、アセトンの他にエタノール−n-ヘキサン(1/1、v/v)を用いてもよい。また、ジアシルグリセロールや遊離脂肪酸の溶出溶媒として、アセトン−エタノール(2/1、v/v)の他に、エタノールのみを用いてもよい。ホスファチジルエタノールアミンの溶出には5%含水エタノールの他に、10%含水エタノールで溶出できる場合もある。ホスファチジルコリンは、20%含水エタノールで溶出されるが、他に30%含水エタノールでも溶出できる。以上のように、食品用として許容される抽出溶媒を用いて簡便に、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択されるいずれか1種以上が脂質構成脂肪酸として含まれる精製脂質を高収率で得ることができる。また、クロロホルムやジクロルメタンなどの塩素系溶媒やメタノールなどアルコール系溶媒を用いても、同様に、目的とするドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上が含まれる精製脂質が容易に得られる。
次に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【実施例1】
【0028】
アメフラシ(Aplysia kurodai、平均体重697.2g)5個体の軟体部を、95℃で5分間煮熟した後、水を切り室温まで冷却した。精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓に分け、各々の一部をそれぞれクロロホルム−メタノール2/1混液、約50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。そこへ約200mLの飽和食塩水を加え、ジクロルメタン50mLで3回抽出し、有機相を減圧下濃縮し、粗製脂質を得た。粗製脂質は、一部をそのままメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。また、粗製脂質は、カラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(ジクロロメタン/エーテル、50/1、v/vで溶出した)、ホスファチジルエタノールアミン(ジクロロメタン/メタノール、1/1、v/vで溶出した)やホスファチジルコリン(ジクロロメタン/メタノール、1/50、v/vで溶出した)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂肪酸組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、精巣、卵巣、筋肉、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ3.0〜4.6%、2.4〜4.7%、5.1〜6.5%、及び5.2〜9.0%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ7.3〜13.3%、13.6〜14.6%、7.2〜10.1%、7.8〜9.1%、及び9.9〜13.8%含まれていた。また、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓ホスファチジルコリン中では、それぞれ5.5〜8.8%、5.6〜7.9%、3.4〜8.1%、4.7〜9.8%、及び5.9〜13.9%で含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサペンタエン酸は、精巣、卵巣、筋肉、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ2.4〜3.2%、1.7〜2.9%、3.6〜5.7%、及び3.8〜4.3%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、その他内臓ホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ4.3〜5.0%、4.8〜5.1%、5.3〜6.5%、8.5〜11.0%、及び8.6〜9.5%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、イコサペンタエン酸は、精巣、卵巣、筋肉、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ6.7〜9.0%、3.2〜9.4%、6.4〜9.6%、及び9.0〜12.0%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓ホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ15.5〜18.4%、16.1〜18.6%、10.3〜14.2%、5.6〜11.1%、及び11.7〜14.6%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓のホスファチジルコリン中では、それぞれ10.2〜12.9%、12.4〜13.6%、8.7〜13.2%、11.5〜12.7%、及び10.3〜14.8%含まれていた。全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸は、精巣、卵巣、筋肉、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ2.0〜3.6%、2.0〜3.5%、4.1〜9.5%、及び3.2〜7.1%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ6.6〜9.6%、4.8〜5.1%、5.4〜9.3%、8.9〜17.7%、及び7.1〜9.5%含まれていた。
【実施例2】
【0029】
アマクサアメフラシ(Aplysia juliana、平均体重347.2g)5個体の軟体部を、95℃で5分間煮熟した後、水を切り室温まで冷却した。それぞれ精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓に分け、各々の一部をそれぞれクロロホルム−メタノール2/1混液約50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。そこに約200mLの飽和食塩水を加え、ジクロルメタン50mLで3回抽出し、有機相を減圧下濃縮し、粗製脂質を得た。粗製脂質は、一部をそのままメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。また、粗製脂質は、カラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(ジクロロメタン/エーテル、50/1、v/vで溶出した)、ホスファチジルエタノールアミン(ジクロロメタン/メタノール、1/1、v/vで溶出した)、及びホスファチジルコリン(ジクロロメタン/メタノール、1/50、v/vで溶出した)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が精巣、卵巣、筋肉、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ7.0〜14.9%、5.6〜6.4%、3.2〜7.4%、及び4.8〜10.3%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓トリアシルグリセロールにおいて、それぞれ3.5〜5.9%、2.9〜4.1%、3.2〜5.6%、8.9〜12.4%、及び3.5〜5.2%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ11.2〜17.4%、12.1〜16.1%、6.8〜10.2%、8.9〜12.4%、及び7.6〜13.6%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ8.2〜16.0%、5.4〜12.8%、6.3〜9.3%、8.5〜14.2%、及び8.0〜16.8%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサペンタエン酸は、精巣、筋肉、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ2.9〜5.9%、2.5〜5.3%、及び2.0〜3.0%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓ホスファチジルエタノールアミン中では、それぞれ4.8〜10.0%、3.8〜6.5%、3.3〜5.3%、5.3〜7.2%、及び3.7〜4.8%で含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓のホスファチジルコリン中では、それぞれ2.9〜6.5%、2.5〜4.4%、2.0〜4.5%、3.9〜4.7%、及び3.2〜3.4%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸が精巣、卵巣、筋肉、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ6.3〜12.6%、5.2〜5.2%、3.3〜5.3%、及び1.9〜7.3%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ10.7〜18.1%、10.9〜14.4%、8.4〜12.1%、11.4〜14.8%、及び6.7〜11.4%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ7.9〜14.4%、7.1〜10.3%、5.2〜7.0%、6.7〜7.4%、及び5.2〜8.5%含まれていた。イコサペンタエン酸が精巣、卵巣、筋肉、及びその他内臓の粗製脂質では、それぞれ8.6〜10.9%、5.4〜5.6%、4.4〜7.0%、及び3.3〜6.1%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、その他内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ10.4〜14.1%、3.8〜6.5%、4.4〜7.4%、5.3〜7.2%、及び6.0〜6.6%含まれ、精巣、卵巣、中腸腺、筋肉、及びその他内臓のホスファチジルコリン中では、それぞれ9.3〜11.3%、9.3〜11.3%、7.3〜9.7%、8.1〜8.2%、及び7.2〜8.9%含まれていた。
【実施例3】
【0030】
ミスジマイマイ(Euhadra peliomphala、殻高20mm、体重4.1583g)1個体の軟体部全体をそれぞれ含水エタノール、約50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。ろ過後、200mLのエタノールを数度に分け、ろ紙上の固形物に注ぎかけ、脂質を抽出し、ろ液に加えた。ろ液すべてを減圧下で濃縮して乾固させ、粗製脂質11.4mg(脂質含量:0.27%)を得た。粗製脂質は、一部をそのままメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(アセトンで溶出した)などの中性脂質、ホスファチジルエタノールアミン(5%含水エタノールで溶出した)、及びホスファチジルコリン(30%含水エタノールで溶出した)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、粗製脂質中では、10.8〜10.9%含まれ、ホスファチジルエタノールアミン中で14.7〜17.8%、ホスファチジルコリン中で12.2〜12.3%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸も粗製脂質中では、4.0〜4.1%含まれ、ホスファチジルエタノールアミン中で4.5〜5.4%、ホスファチジルコリン中で4.7〜4.7%で含まれていた。
【実施例4】
【0031】
にんじん(リノール酸及びリノレン酸を含有する)及びキュウリ(リノール酸及びリノレン酸を含有する)で9ヶ月間飼育したミスジマイマイ(Euhadra peliomphala、殻高15mm、体重9.1844g)1個体の軟体部(筋肉)及び内臓の一部をそれぞれ含水エタノール、約50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。これをろ過後、200mLのエタノールを数度に分け、ろ紙上の固形物に注ぎかけ、脂質を抽出し、ろ液に加えた。ろ液すべてを減圧下で濃縮して乾固させ、粗製脂質71.2mg(筋肉から:13.3mg、内臓から:57.9mg、用いた原料全体に対する脂質含量:0.78%)を得た。組成脂質の一部は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(アセトンで溶出した)などの中性脂質、ホスファチジルエタノールアミン(5%含水エタノールで溶出した)やホスファチジルコリン(30%含水エタノールで溶出した)などの各脂質クラスを分離させた。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、筋肉及び内臓のトリアシルグリセロールでそれぞれ5.9〜6.0%、及び4.1〜4.1%、筋肉及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中でそれぞれ14.7〜14.9%、及び21.8〜22.0%、筋肉及び内臓のホスファチジルコリン中でそれぞれ11.3〜11.6%、及び12.0〜12.0%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸も、筋肉及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中でそれぞれ8.4〜8.5%、及び6.3〜6.3%、筋肉及び内臓のホスファチジルコリン中でそれぞれ6.4〜6.8%、及び4.0〜4.0%含まれていた。目的とするアラキドン酸などの各脂肪酸の各クラス中の百分率は実施例14の天然ミスジマイマイとほぼ近接していた。一方、飼育したミスジマイマイでは、原料全体に対する脂質含量が0.78%と、天然ミスジマイマイに比較して、約2.9倍の脂質含量であったため、目的とするアラキドン酸等の各脂肪酸の実際の収量は、天然ミスジマイマイより飼育したものでは2.9倍程度多かった。
【実施例5】
【0032】
スクミリンゴガイ(Pomacea canaliculata、殻高42mm及び54mm、体重12.7094g及び29.8182g)2個体の軟体部一部をそれぞれエタノール約50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。これを濾過し、約200mLのエタノールを数度に分けてろ紙上の固形物に注ぎかけ、脂質を抽出し、ろ液に加えた。合わせた抽出液を減圧下で濃縮して乾固させ、粗製脂質43.5〜191.5mgを得た。組成脂質の一部は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(アセトンで溶出)などの中性脂質、ホスファチジルエタノールアミン(10%含水エタノールで溶出)、及びホスファチジルコリン(30%含水エタノールで溶出)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、トリアシルグリセロールでは13.5〜14.5%、ホスファチジルエタノールアミン中で25.4〜26.9%、ホスファチジルコリン中で17.8〜18.3%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸も、ホスファチジルエタノールアミン中で15.3〜16.3%、ホスファチジルコリン中で11.9〜13.6%含まれていた。
【実施例6】
【0033】
マガキガイ(Conomurex luchuanus、殻高43.0、47.0mm、体重16.686g、19.709g)2個体の軟体部を足(筋肉)とその他内臓に分け、それぞれの一部をそれぞれエタノール50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。これをろ過後、150mLのエタノールを数度に分け、ろ紙上の固形物に注ぎかけ、脂質を抽出し、ろ液に加えた。合わせたろ液を減圧下濃縮して乾固させ、粗製脂質を得た。粗製脂質は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(アセトンで溶出した)などの中性脂質、ホスファチジルエタノールアミン(10%含水エタノールで溶出した)やホスファチジルコリン(30%含水エタノールで溶出した)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化した。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が足及びその他内臓ホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ15.6〜19.0%、及び19.4〜20.0%、足及びその他内臓ホスファチジルコリン中で、それぞれ12.7〜15.9%、及び17.0〜17.3%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサペンタエン酸は足及びその他内臓ホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ13.7〜17.2%、及び16.8〜19.7%、足及びその他内臓ホスファチジルコリン中で、それぞれ17.6〜18.0%、及び13.0〜17.8%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸は、足及びその他内臓ホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ10.4〜13.7%、及び12.9〜20.0%、足及びその他内臓ホスファチジルコリン中で、それぞれ9.0〜10.2%、7.2〜10.2%含まれていた。
【実施例7】
【0034】
マガキガイ(Conomurex luchuanus、殻高50.8〜57.0mm、体重26.0〜34.7g)10個体を煮熟後、冷凍で数日間保存した。それぞれの軟体部を足及びその他内臓に分け、各々の一部をそれぞれクロロホルム−メタノール2/1混液、50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。200mLの飽和食塩水を加え、ジクロルメタン50mLで3回抽出し、有機相を減圧下で濃縮し、粗製脂質を得た。得られた粗製脂質は、カラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(ジクロロメタン/エーテル、50/1、v/vで溶出した)、ホスファチジルエタノールアミン(ジクロロメタン/メタノール、1/1、v/vで溶出した)やホスファチジルコリン(ジクロロメタン/メタノール、1/50、v/vで溶出した)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、足及びその他内臓のトリアシルグリセロール中で、それぞれ3.2〜6.6%、及び4.4〜6.6%含まれ、足及びその他内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ15.8〜18.2%、及び13.7〜20.5%、足及びその他内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ12.7〜17.2%、及び14.4〜18.5%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサペンタエン酸は、足及びその他内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ19.1〜24.1%、及び11.7〜14.1%、足及びその他内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ18.6〜25.7%、及び11.5〜15.2%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸は、足及びその他内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ10.2〜14.8%、及び9.6〜13.0%、足及びその他内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ7.2〜10.5%、及び6.7〜10.4%含まれていた。
【実施例8】
【0035】
バテイラ(Omphalius pfeifferi、殻高31〜41mm、体重11.4537〜19.2229g)6個体(雌3個体、雄3個体)の軟体部を足(筋肉)及び内臓に分け、それぞれ95度で3分間煮熟した後、水を切り室温まで冷却した。各々の一部をそれぞれクロロホルム−メタノール2/1混液、50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。これに200mLの飽和食塩水を加え、ジクロルメタン50mLで3回抽出し、有機相を減圧下で濃縮し、粗製脂質を得た。粗製脂質は、一部をそのままメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。粗製脂質は、カラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(ジクロロメタン/エーテル、50/1、v/vで溶出した)、ホスファチジルエタノールアミン(ジクロロメタン/メタノール、1/1、v/vで溶出した)、及びホスファチジルコリン(ジクロロメタン/メタノール、1/50、v/vで溶出)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が足の粗製脂質では、13.9〜14.6%含まれ、内臓及び足のトリアシルグリセロール中に、それぞれ3.1〜5.2%、及び3.2〜6.6%含まれ、内臓及び足のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ18.1〜23.9%、及び16.2〜22.7%、内臓及び足のホスファチジルコリン中で、それぞれ11.1〜17.0%、及び11.0〜14.5%で含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサペンタエン酸は、足の粗製脂質では、7.3〜8.0%含まれ、内臓及び足のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ4.1〜7.2%、及び9.1〜12.5%、内臓及び足のホスファチジルコリン中で、それぞれ5.6〜8.3%、8.2〜10.4%含まれていた。さらに、全脂質構成脂肪酸中、イコサペンタエン酸は、足の粗製脂質では、5.2〜5.7%含まれ、足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ11.0〜14.1%、8.2〜15.4%、足及び内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ6.6〜8.4%、6.0〜13.1%含まれていた。
【実施例9】
【0036】
クマノコガイ(Chlorostoma xanthostigma、殻高24〜31mm、体重9.4984〜24.7592g)6個体の軟体部を筋肉及び内臓に分け、それぞれ95℃で3分間煮熟した後、水を切り室温まで冷却した。各々一部をそれぞれクロロホルム−メタノール2/1混液、50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。これに200mLの飽和食塩水を加え、ジクロルメタン50mLで3回抽出し、有機相を減圧下濃縮し、粗製脂質を得た。粗製脂質は、カラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(ジクロロメタン/エーテル、50/1、v/vで溶出した)、ホスファチジルエタノールアミン(ジクロロメタン/メタノール、1/1、v/vで溶出した)及びホスファチジルコリン(ジクロロメタン/メタノール、1/50、v/vで溶出した)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が内臓及び足のトリアジルグリセロールでは、それぞれ7.7〜7.7%、及び21.4〜21.5%、内臓及び足のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ16.3〜41.8%、及び24.5〜27.6%、内臓及び足のホスファチジルコリン中で、それぞれ16.3〜28.8%、及び16.8〜21.1%含まれていた。また、脂質構成脂肪酸中、ドコサペンタエン酸は内臓及び足のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ3.1〜3.2%、及び5.6〜8.0%、内臓及び足のホスファチジルコリン中で、それぞれ2.5〜4.8%、及び4.8〜6.7%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸は、内臓及び足のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ6.1〜7.1%、及び6.8〜9.3%、内臓及び足のホスファチジルコリン中で、それぞれ5.3〜10.3%、及び6.3〜11.1%含まれていた。さらに、全脂質構成脂肪酸中、イコサペンタエン酸は、筋肉及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ4.6〜7.2%、4.1〜5.8%、筋肉及び内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ3.4〜3.9%、2.2〜5.8%で含まれていた。
【実施例10】
【0037】
ヤコウガイ(Lunatica marmorata、殻高149〜186mm、体重1380.0〜1520.0g)3個体の軟体部から、足(筋肉)、中腸腺、及び生殖巣(卵巣)の各々の一部をそれぞれ95℃で3分間煮熟した後、水を切り室温まで冷却した。それぞれをクロロホルム−メタノール2/1混液50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。そこへ200mLの飽和食塩水を加え、ジクロルメタン50mLで3回抽出し、有機相を減圧下濃縮し、粗製脂質を得た。粗製脂質は、カラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(ジクロロメタン/エーテル、50/1、v/vで溶出した)、ホスファチジルエタノールアミン(ジクロロメタン/メタノール、1/1、v/vで溶出した)、及びホスファチジルコリン(ジクロロメタン/メタノール、1/50、v/vで溶出した)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、足、中腸腺、及び卵巣の粗製脂質では、12.8〜12.9%、8.6〜10.9%、10.1〜10.2%含まれ、足、中腸腺、及び卵巣の各トリアシルグリセロールでは、それぞれ5.6〜13.1%、9.6〜11.0%、及び10.5〜10.6%、足、中腸腺、及び卵巣の各ホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ18.5〜23.0%、17.5〜21.9%、及び18.0〜18.0%、足、中腸腺、及び卵巣の各ホスファチジルコリン中で、それぞれ10.4〜10.9%、14.0〜17.1%、及び12.3〜12.3%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサペンタエン酸は、足の粗製脂質では、8.9〜9.0%含まれ、足、中腸腺、及び卵巣の各ホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ12.9〜14.9%、6.0〜7.5%、及び2.8〜2.8%、足、中腸腺、及び卵巣のホスファチジルコリン中で、それぞれ9.4〜11.0%、5.1〜6.5%、及び2.8〜2.8%含まれていた。さらに、全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸は、足、及び卵巣の粗製脂質では、7.3〜7.3%、4.4〜4.4%含まれ、足、中腸腺、及び卵巣のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ13.0〜13.8%、5.2〜6.2%、及び5.9〜5.9%、足、中腸腺、及び卵巣のホスファチジルコリン中で、それぞれ6.0〜6.4%、4.1〜5.3%、及び8.3〜8.3%含まれていた。
【実施例11】
【0038】
ヒメタニシ(Sinotaia quadrata histrica、殻高24〜27mm、体重2.2412〜3.8868g)5個体の軟体部一部をそれぞれエタノール、約50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。これを濾過し、約200mLのエタノールを数度に分け、ろ紙上の固形物に注ぎかけ、脂質を抽出し、ろ液に加えた。合わせた抽出液を減圧下にて濃縮して乾固させ、粗製脂質10.4〜12.3mgを得た。粗製脂質は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(エタノール/n-ヘキサン、1/1、v/vで溶出)などの中性脂質、ホスファチジルエタノールアミン(5%含水エタノールで溶出)、及びホスファチジルコリン(30%含水エタノールで溶出)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、トリアジルグリセロールでは3.8〜4.2%、ホスファチジルエタノールアミン中では12.5〜14.2%、ホスファチジルコリン中では8.1〜9.4%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、イコサペンタエン酸は、トリアジルグリセロールで3.6〜6.7%、ホスファチジルエタノールアミン中で4.9〜5.1%、ホスファチジルコリン中で3.2〜3.6%含まれていた。
【実施例12】
【0039】
トコブシ(Haliotis diversicolor、殻長6.1〜8.1cm、43.0〜70.0g)6個体の内臓の一部を肝臓(中腸腺)、卵巣、その他内臓に分割し、それぞれ95度で3分間煮熟した後、水を切り室温まで冷却した。前記のそれぞれの部位をエタノール50mLにそれぞれ浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。ろ過後、150mLのエタノールを数度に分け、ろ紙上の固形物に注ぎかけ、脂質を抽出し、ろ液に加えた。合わせたろ液を減圧下濃縮して乾固させ、粗製脂質をそれぞれ22.2〜112.6mgを得た。粗製脂質は、一部をそのままメチルエステル化し、脂肪酸組成を明らかにした。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロールなどの中性脂質(アセトンで溶出した)、ホスファチジルエタノールアミン(5%含水エタノールで溶出した)やホスファチジルコリン(20%含水エタノールで溶出した)などの各脂質クラスに分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂肪酸組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、粗製脂質では、肝臓で8.0〜13.1%、卵巣で10.0〜17.0%、その他内臓で11.0〜14.0%含まれていた。また、ホスファチジルエタノールアミン中には、それぞれ肝臓で14.0〜22.9%、卵巣で18.2〜26.3%、その他内臓で14.3〜22.6%、ホスファチジルコリン中では、それぞれ肝臓で6.2〜13.3%、卵巣で11.7〜15.9%、その他内臓では10.0〜14.8%含まれていた。また、脂質構成脂肪酸中、ドコサペンタエン酸は、粗製脂質中では、肝臓で7.0〜9.9%、卵巣で8.1〜11.5%、その他内臓で6.7〜9.2%含まれていた。また、ホスファチジルエタノールアミン中では、それぞれ肝臓で7.4〜12.0%、卵巣で5.3〜7.6%、その他内臓で5.2〜9.2%のドコサペンタエン酸が全脂質構成脂肪酸に対して含まれていた。ホスファチジルコリン中には、全脂質構成脂肪酸中、それぞれ肝臓で6.6〜12.2%、卵巣で9.7〜12.5%、その他内臓で8.2〜11.9%のドコサペンタエン酸が含まれていた。全脂質構成脂肪酸中、イコサペンタエン酸は、粗製脂質では、肝臓で6.0〜8.6%、卵巣で8.5〜10.1%、その他内臓で4.6〜6.7%含まれていた。また、ホスファチジルエタノールアミン中には、それぞれ肝臓で8.2〜11.7%、卵巣で12.6〜14.6%、その他内臓で5.6〜10.0%、ホスファチジルコリン中には、それぞれ肝臓で4.7〜8.0%、卵巣で8.9%〜9.9%、その他内臓では5.2〜7.2%のイコサペンタエン酸が含まれていた。さらに、得られた脂質には相当量のドコサテトラエン酸も脂質構成脂肪酸として含まれていた。たとえば、ホスファチジルエタノールアミン中には、それぞれ肝臓で3.1〜3.6%、卵巣で2.1〜3.2%、その他内臓で3.4〜4.8%、ホスファチジルコリン中には、肝臓で2.0〜3.7%、卵巣で2.6〜3.4%、その他内臓では3.9〜4.7%のドコサテトラエン酸が脂質構成脂肪酸として含まれていた。
【実施例13】
【0040】
サザエ(Batillus cornuttus、殻高7.0〜10.5cm、体重184.043〜281.790g)11個体の軟体部の内、足(筋肉)及びその他内臓のそれぞれ一部をそれぞれクロロホルム−メタノール2/1混液、50mLにそれぞれ浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。200mLの飽和食塩水を加え、ジクロルメタン50mLで3回抽出し、減圧下濃縮し、粗製脂質138.9〜212.0mg(脂質含量:0.5 ± 0.0%、筋肉)、及び393.3〜930.4mg(脂質含量:1.7 ± 0.1%、その他内臓)を得た。粗製脂質は、カラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(ジクロロメタン/エーテル、50/1、v/vで溶出した)、ホスファチジルエタノールアミン(ジクロロメタン/メタノール、1/1、v/vで溶出した)、及びホスファチジルコリン(ジクロロメタン/メタノール、1/50、v/vで溶出した)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が足及び内臓のトリアシルグリセロールに、それぞれ8.5〜14.2%、及び7.7〜17.4%、足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ18.4〜26.0%、及び27.4〜34.6%、足及び内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ11.1〜16.0%、及び18.9〜24.7%含まれていた。また、ドコサペンタエン酸は足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ10.2〜15.5%、及び4.6〜11.7%、足及び内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ6.6〜9.8%、及び4.0〜8.5%含まれていた。さらに、ドコサテトラエン酸が足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ12.1〜17.0%、及び9.6〜15.8%、足及び内臓のホスファチジルコリン中では、それぞれ6.8〜11.7%、及び7.7〜16.3%含まれていた。
【実施例14】
【0041】
ワカメ(褐藻;成分として含まれる全脂肪酸中、リノール酸が平均6.5%、リノレン酸平均9.0%、オクタデカテトラエン酸平均20.5%、アラキドン酸平均12.0%、及びイコサペンタエン酸平均13.1%を含有していた。これら含有量は上述したメチルエステル化した試料をガスクロマトグラフィーで分析して測定した。)で8ヶ月間飼育したサザエ(Batillus cornuttus、殻高10.5、11.0cm、体重275.449、315.726g)2個体の軟体部一部の足、内臓をそれぞれ二昼夜凍結乾燥機に供し、乾燥した足、内臓を得た。これをそれぞれ10%含水エタノール50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。ろ過後、150mLのエタノールを数度に分け、ろ紙上の固形物に注ぎかけ、脂質を抽出し、ろ液に加えた。合わせたろ液を減圧下濃縮・乾固し、粗製脂質を得た(脂質含量:0.5 ± 0.0%、筋肉、及び脂質含量:4.2 ± 0.0%、その他内臓)。粗製脂質は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(ヘキサン−エタノール、1/1、v/vで溶出した)などの中性脂質、ホスファチジルエタノールアミン(5%含水エタノールで溶出した)、及びホスファチジルコリン(30%含水エタノールで溶出した)などの各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が足及び内臓のトリアシルグリセロールで、それぞれ8.8〜12.1%、及び4.3〜15.9%、足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ25.8〜25.9%、及び33.4〜33.8%、足及び内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ13.6〜14.0%、及び19.8〜22.6%含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中、ドコサペンタエン酸は足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ13.6〜14.0%、及び5.4〜6.1%、足及び内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ8.4〜8.6%、及び6.2〜7.0%の含有量だった。さらに、全脂質構成脂肪酸中、ドコサテトラエン酸は足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ15.6〜16.5%、及び10.5〜13.0%、ホスファチジルコリン中で、それぞれ7.8〜8.6%、及び9.1〜15.3%の含有量だった。イコサペンタエン酸は足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、全脂質構成脂肪酸のうち、それぞれ6.0〜6.2%、4.1〜9.0%で含まれていた。目的とするアラキドン酸などの各脂肪酸の各クラス中の百分率は実施例3の天然サザエとほぼ近接していた。足を原料として用いた場合には、ほぼ同量の各脂肪酸が回収された。一方、飼育したサザエでは、その他内臓の脂質含量が4.2%と、天然サザエに比較して、約2.5倍であったため、目的とするアラキドン酸等の各脂肪酸の実際の収量は、天然サザエに比較して2.5倍程度多く回収された。また、飼育サザエではバラツキも小さく、安定した品質であり、季節変動などの影響も少ない。
【実施例15】
【0042】
クロアワビ(Haliotis discus discus、殻長90mm、体重63.3g)1個体の内臓部を95℃で3分間煮熟した後、水を切り室温まで冷却した。中腸腺、その他の内臓をそれぞれエタノール50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕し、ろ過した。150mLのエタノールを数度に分け、ろ紙上の固形物に注ぎかけ、脂質を抽出し、ろ液に加えた。合わせたろ液を減圧下濃縮して乾固させ、粗製脂質504.8mg(中腸腺)、及び175.2mg(その他内臓)をそれぞれ得た。粗製脂質は、一部をそのままメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。中腸腺の粗製脂質には、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸、イコサペンタエン酸がそれぞれ7.6〜7.6%、3.0〜3.0%、7.1〜7.3%含まれていた。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(アセトンで溶出した)などの中性脂質、ホスファチジルエタノールアミン(10%含水エタノールで溶出した)やホスファチジルコリン(30%含水エタノールで溶出した)などの各脂質クラスに分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸がトリアシルグリセロール中、前記の部位に対してそれぞれ7.6〜7.7%、10.6〜10.6%含まれていた。また、ホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ17.0〜17.2%、19.2〜19.3%、ホスファチジルコリン中で、それぞれ9.9〜10.0%、7.5〜7.5%のアラキドン酸が全脂質構成脂肪酸中に含まれていた。また、ドコサペンタエン酸はホスファチジルエタノールアミン中に6.5〜6.6%、7.2〜7.3%、ホスファチジルコリン中に4.4〜4.4%、2.1〜2.1%、脂質構成脂肪酸として含まれていた。また、イコサペンタエン酸はホスファチジルエタノールアミン中でそれぞれ12.8〜13.0%、11.4〜11.4%、脂質構成脂肪酸として含まれていた。
【実施例16】
【0043】
クロアワビ(Haliotis discus discus、殻長119〜149mm、体重274.35〜601.16g)5個体の軟体部を足(筋肉)、内臓に分け、各一部分をそれぞれクロロホルム−メタノール2/1混液、50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。200mLの飽和食塩水を加え、ジクロルメタン50mLで3回抽出し、減圧下濃縮し、粗製脂質を得た。粗製脂質は、カラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(ジクロロメタンで溶出した)、ホスファチジルエタノールアミン(ジクロロメタン/メタノール、1/1、v/vで溶出した)、及びホスファチジルコリン(ジクロロメタン/メタノール、1/50、v/vで溶出した)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにするとともに、ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体化し、DMOX体を得て、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル検出器に供し、化学構造の解析を行った。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、足及び内臓のトリアシルグリセロールで、それぞれ15.8〜22.0%、及び6.3〜12.4%、足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ19.7〜27.4%、及び19.3〜24.1%、足及び内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ9.7〜14.5%、及び14.9〜17.4%含まれていた。また、ドコサペンタエン酸は、足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ5.6〜11.5%、及び4.7〜6.8%、足及び内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ6.6〜10.3%、及び3.8〜5.8%含まれていた。
【実施例17】
【0044】
エゾアワビ(Haliotis discus hannai、殻長10.0〜10.8cm、体重112.2〜193.8g)3個体の足、内臓を分け、各部の一部をそれぞれエタノール50mLに浸せきし、ホモジナイザーにより破砕した。これをろ過後、150mLのエタノールを数度に分け、ろ紙上の固形物に注ぎかけ、脂質を抽出し、ろ液に加えた。合わせたろ液を減圧下濃縮して乾固させ、粗製脂質をそれぞれ112.2〜193.8mg(足部)、及び242.9〜617.6mg(内臓)の量で得た。粗製脂質は、一部をそのままメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、トリアシルグリセロール(アセトンで溶出した)などの中性脂質、ホスファチジルエタノールアミン(10%含水エタノールで溶出した)やホスファチジルコリン(30%含水エタノールで溶出した)の各脂質クラスを分離した。それぞれの脂質クラスをメチルエステル化し、脂質構成脂肪酸の組成を明らかにした。全脂質構成脂肪酸中、アラキドン酸が、足及び内臓のトリアシルグリセロールで、それぞれ4.4〜6.0%、及び4.5〜5.5%で含まれていた。また、全脂質構成脂肪酸中のアラキドン酸の割合は、足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ14.6〜17.2%、及び20.0〜23.8%、足及び内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ8.3〜10.8%、及び14.0〜15.8%であった。また、脂質構成脂肪酸に占めるドコサペンタエン酸の量は、足及び内臓のホスファチジルエタノールアミン中で、それぞれ8.0〜10.2%、3.8〜8.9%、足及び内臓のホスファチジルコリン中で、それぞれ7.3〜8.6%、4.5〜5.4%であった。
【0045】
このように、上記実施例に記載したように本発明の製造方法によって、腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)からなる群のいずれかに属する1種以上の軟体動物の軟体部及び/又は卵から選択される部位を原料として用いて、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上の脂質構成脂肪酸を豊富に含む脂質を製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上詳細に説明したとおり、本発明によれば、腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)のいずれかに属する軟体動物の1種以上の軟体部及び/又は卵を原料として多量にかつ収率よくドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質を製造できる。また、本発明の方法によって得られるドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含有する脂質には、たとえ粗製脂質であっても、機能性リン脂質が含まれるため、生理活性物質として食品素材、化粧品素材、及び医薬品素材等として広く用いることができるし、また、研究用試薬としても用いることができる。
このように、本発明の製造方法は、食品、医薬品、化粧品などの研究分野や製造の現場において広く活用できる有益な発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)からなる群のいずれかに属する1種以上の軟体動物の軟体部及び/又は卵を原料として用いる、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上の脂質構成脂肪酸を含む脂質の製造方法。
【請求項2】
腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)からなる群のいずれかに属する1種以上の軟体動物の軟体部及び/又は卵を原料として用い、前記軟体部及び/又は卵から脂質を有機溶媒で抽出して、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択されるいずれか1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質成分を採取することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)からなる群のいずれかに属する1種以上の軟体動物の軟体部及び/又は卵を原料として用い、前記軟体部及び/又は卵から脂質を有機溶媒で抽出し、さらに、得られた抽出物をクロマトグラフィー処理し、前記抽出物に含まれる脂質成分を有機溶媒によって分画してドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択されるいずれか1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質成分を採取することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、ヒザラガイ綱、及び頭足類(イカ綱)からなる群のいずれかに属する1種以上の軟体動物の軟体部及び/又は卵から脂質をエタノール、含水エタノール、アセトン、及びヘキサンからなる群から選択される1種以上の溶媒で抽出し、得られた抽出物をエタノール、含水エタノール、アセトン、及びヘキサンの1種以上の溶媒を用いてクロマトグラフィー処理して、前記抽出物に含まれる脂質成分を分画することにより、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、及びドコサテトラエン酸からなる群から選択される1種以上を脂質構成脂肪酸として含む脂質成分を採取することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記軟体動物が、腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、及びヒザラガイ綱からなる群から選択されるいずれかの貝である請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記軟体動物が、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、オクタデカテトラエン酸、及びオクタデカトリエン酸のいずれか1種以上が含まれる紅藻、褐藻、及び緑藻から選択される藻類、並びに/又は、リノール酸、リノレン酸、オクタデカテトラエン酸、及びイコサジエン酸のいずれか1種以上が含まれる植物を餌として用いて飼育された腹足類(マキガイ綱)、斧足類(ニマイガイ綱)、及びヒザラガイ綱よりなる群から選択されるいずれかの貝である、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−40235(P2013−40235A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176297(P2011−176297)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(510304634)
【Fターム(参考)】