説明

ドップラーセンサー

【課題】 誤判定が抑えられるドップラーセンサーを提供する。
【解決手段】 取付面FSに対して固定される基板1と、弾性材料からなる制振体2を介して基板1に対して固定され電波を反射する反射体3とを備える。基板1には、それぞれ送信アンテナ11a,11bにより互いに同じ向きの検出立体角SR1,SR2へ電波を送信するとともに検出立体角SR1,SR2からの電波を受信し検出立体角SR1,SR2内に存在する物体と基板1との間の距離の変化速度に応じた周波数のドップラー信号を生成する2個の送受信回路が実装されており、一方の検出立体角SR2は反射体3に覆われている。他方の検出立体角SR1内に移動物体(人体)が存在するか否かが、上記2個の送受信回路が出力したドップラー信号間の差分信号に基いて判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドップラーセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばミリ波のような電波(送信波)を所定の検出立体角に照射するとともに、検出立体角内で反射された電波(反射波)を受信し、送信波と反射波とから得られるドップラー信号を用いて人体等の移動物体の有無を判定するドップラーセンサーが提供されている。この種のドップラーセンサーは、例えば、人体の有無に応じて光源の点灯・消灯を切り替える照明システムにおいて、人体の有無の判定に用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
人体の有無の判定に用いられるセンサーとしては他には例えば人体から放射される熱線を検出する熱線センサーがあるが、ドップラーセンサーは熱線センサーに比べて遠距離の人体を感知することができるという利点があるため、天井が高い建物内で天井に取り付けられるような使用形態に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−204333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ドップラーセンサー自体が振動すると、静止した物体とドップラーセンサーとの間に相対速度が発生することにより、静止した物体で反射した反射波にもドップラーシフトが生じることになる。この結果、実際には人体が存在しないにも関わらず、人体が存在するとの誤判定が発生する可能性がある。上記のようにドップラーセンサー自体に振動が発生する原因としては、例えば、ドップラーセンサーの付近に設置されたクレーンやリフトやエレベーターといった機械の動作や、ドップラーセンサーが固定された取付面が受ける風圧等が考えられる。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、誤判定が抑えられるドップラーセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、取付面に対して固定される基板と、前記基板に実装され、所定の送信周波数の送信信号を生成する発振回路と、前記基板に実装され、送信信号が変換された送信波を所定の第1検出立体角へ送信するとともに、送信波が第1検出立体角内で反射された第1反射波を受信し、送信信号の周波数と第1反射波の周波数との差の周波数を有する第1ドップラー信号を含む出力を生成する第1送受信回路と、弾性材料からなり前記基板に対して固定された制振体と、送信波を反射する材料からなり制振体に支持された反射体と、前記基板に実装され、送信信号が変換された送信波を、第1検出立体角と同じ向きであって反射体によって覆われる所定の第2検出立体角へ送信するとともに、送信波が第2検出立体角内で反射体により反射された第2反射波を受信し、送信信号の周波数と第2反射波の周波数との差の周波数を有する第2ドップラー信号を含む出力を生成する第2送受信回路と、第1検出立体角内に移動物体が存在するか否かを、第1ドップラー信号と第2ドップラー信号との差分信号に基いて判定する判定回路とを備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、弾性材料からなる制振体を介して支持されていることにより基板よりも振動が抑えられていると推定される反射体の速度を反映する第2ドップラー信号と第1ドップラー信号との差分信号が判定に用いられることで、第1ドップラー信号のみに基いて判定が行われる場合に比べ、基板の振動による影響が抑えられるから、基板すなわちドップラーセンサー自体の振動による誤判定が抑えられる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、反射体において第2検出立体角内に位置する面は、第2検出立体角の中心軸に直交する平面形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、弾性材料からなる制振体を介して支持されていることにより基板よりも振動が抑えられていると推定される反射体の速度を反映する第2ドップラー信号と第1ドップラー信号との差分信号が用いられることで、第1ドップラー信号のみに基いて判定が行われる場合に比べ、基板の振動による影響が抑えられるから、基板すなわちドップラーセンサー自体の振動による誤判定が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の要部を示す断面図である。
【図2】同上の概略構成を示すブロック図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれ同上の要部を示し、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ同上の動作を示す説明図であり、(a)は第1ドップラー信号の波形の例を示し、(b)は第2ドップラー信号の波形の例を示し、(c)は差分信号の波形の例を示す。
【図5】(a)(b)はそれぞれ同上の変更例の要部を示し、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本実施形態は、図2に示すように、アンテナ11a,11b,12a,12bを用いて送受信される電波により所定の第1検出立体角SR1(図1参照)内に移動物体としての人体(図示せず)が存在するか否かを判定するとともに、判定結果に応じて照明装置6を制御するものである。
【0014】
また、本実施形態は、図1及び図3(a)(b)に示すように、壁面や天井面等の取付面FSに対して固定される平板形状の基板1を備える。基板1の一面には、それぞれ平面アンテナからなる第1送信アンテナ11a、第1受信アンテナ12a、第2送信アンテナ11b、並びに、第2受信アンテナ12bが設けられている。
【0015】
さらに、基板1には、弾性材料からなり角筒形状であって第2送信アンテナ11bと第2受信アンテナ12bとをそれぞれ囲み一方の開口が基板1によって閉塞される形で基板1に対して固着された制振体2と、電波を反射する材料からなり制振体2の他方の開口を閉塞する形で制振体2に対して固着された反射体3とを備える。すなわち、反射体3は、基板1と反射体3との間に介在する制振体2によって支持されており、制振体2の弾性変形により基板1に対して変位可能となっている。また、反射体3は平板形状であって、制振体2が弾性変形していない状態では基板1に対して平行となる。制振体2の材料としては例えば制振ゴムとして市販されている合成ゴムを用いることができる。また、反射体3の材料としては例えば銅や鉄などの金属を用いることができる。
【0016】
上記の各アンテナ11a,11b,12a,12bはそれぞれ基板1の厚さ方向(図1での左右方向)に平行な中心軸に関して軸対称な指向性を有する。第1送信アンテナ11aと第1受信アンテナ12aとが電波を送受信する第1検出立体角SR1が開放されているのに対し、第2送信アンテナ11bと第2受信アンテナ12bとが電波を送受信する第2検出立体角SR2は反射体3で覆われている。制振体2が弾性変形していない状態では、既に述べたように反射体3は基板1に対して平行となるので、反射体3において第2送信アンテナ11bと第2受信アンテナ12bとに向けられる面(すなわち第2検出立体角SR2内に位置する面)は上記の中心軸に直交することになる。
【0017】
また、本実施形態は、ミリ波帯の所定の周波数の電気信号である送信信号を生成するとともに各送信アンテナ11a,11bにそれぞれ入力することで各送信アンテナ11a,11bからそれぞれ送信信号と同じ周波数の電波(ミリ波)からなる送信波を送信させる発振回路41と、第1受信アンテナ12aに受信された電波(請求項における第1反射波)の周波数と送信信号の周波数との差の周波数を有する第1ドップラー信号を生成及び出力する第1信号処理回路42aと、第2受信アンテナ12bに受信された電波(請求項における第2反射波)の周波数と送信信号の周波数との差の周波数を有する第2ドップラー信号を生成及び出力する第2信号処理回路42bとを備える。すなわち、第1送信アンテナ11aと第1受信アンテナ12aと第1信号処理回路42aとで請求項における第1送受信回路が構成され、第2送信アンテナ11bと第2受信アンテナ12bと第2信号処理回路42bとで請求項における第2送受信回路が構成されている。各信号処理回路42a,42bにおいて、それぞれ、ドップラー信号は、受信アンテナ12a,12bでの電波の受信により生成された受信信号と送信信号とを乗算して得られる合成波形信号を適宜の帯域フィルターに通すことにより生成されるものである。発振回路41と各信号処理回路42a,42bとは1チップの信号処理用集積回路4に集積されており、この信号処理用集積回路4は基板1に実装されている。上記のような信号処理用集積回路4は周知技術で実現可能であるので、詳細な図示並びに説明は省略する。
【0018】
ここで、上記の第1ドップラー信号は、第1検出立体角SR1内に存在する移動物体と基板1との間の距離の変化速度に応じた周波数となる。また、上記の第2ドップラー信号は、第2検出立体角SR2内に存在する移動物体すなわち反射体3と基板1との間の距離の変化速度に応じた周波数となる。
【0019】
さらに、本実施形態は、第1ドップラー信号から第2ドップラー信号を減算して得られる差分信号に基いて、第1検出立体角SR1内に人体が存在するか否かを判定するとともに、判定結果に応じた制御信号を照明装置6に対して出力する判定回路5を備える。第1ドップラー信号の波形が図4(a)に示すようなものであって第2ドップラー信号の波形が図4(b)に示すようなものである場合、上記の差分信号の波形は図4(c)に示すようなものとなる。判定回路5は、具体的には例えば、上記の差分信号の振幅を所定の判定閾値と比較し、上記の差分信号の振幅が判定閾値以上であれば人体が存在すると判定し、上記の差分信号の振幅が判定閾値未満であれば人体が存在しないと判定する。
【0020】
照明装置6は電気的光源(図示せず)を点灯させるものであって、判定回路5から入力された制御信号に応じて電気的光源の光出力の変更や点灯・消灯を行う。判定回路5は、具体的には例えば、人体が存在すると判定されたときに電気的光源の定格電力での点灯の開始を指示する制御信号を照明装置6に入力し、人体が存在しないとの判定が所定の遅れ時間にわたって継続したときに電気的光源の消灯(又は光出力の低下)を指示する制御信号を照明装置6に入力する。上記の電気的光源としては例えば発光ダイオードや放電灯を用いることができる。また、制御信号は、有線で送受信される電気信号であってもよいし、ワイヤレス信号であってもよい。いずれの場合にも判定回路5及び照明装置6はそれぞれ周知技術で実現可能であるので詳細な図示並びに説明は省略する。
【0021】
ここで、基板1自体が厚さ方向に振動した場合、第1検出立体角SR1内の静止物体との間の距離が変化することにより、基板1の振動の速さに応じたノイズ成分が第1ドップラー信号に発生する。一方、基板1の振動時には反射体3には慣性力が作用し、基板1と反射体3との間に介在する制振体2が弾性変形することにより、反射体3の振動の振幅は基板1の振動の振幅に比べて小さくなる。従って、第1ドップラー信号と第2ドップラー信号との差分信号においては、第1ドップラー信号に比べて上記のノイズ成分は抑えられる。
【0022】
本実施形態では、第1検出立体角SR1内に人体が存在するか否かの判定が、第1ドップラー信号と第2ドップラー信号との差分信号に基いて行われるので、第1ドップラー信号のみが判定に用いられる場合に比べ、上記のような基板1の振動に起因する誤判定が抑えられる。また、上記のような振動によるノイズ成分以外にも、第1ドップラー信号と第2ドップラー信号とに同じ位相で発生するノイズ成分が存在する場合、そのノイズ成分による誤判定も抑えられる。
【0023】
なお、上記のように送信アンテナ11a,11bと受信アンテナ12a,12bとを別々に設ける代わりに、図5(a)(b)に示すように送信と受信とに兼用される送受信アンテナ13a,13bを設けてもよい。この場合、信号処理用集積回路4には、発振回路41からの送信信号を送受信アンテナ13a,13bに入力することで送受信アンテナ13a,13bを送信アンテナ11a,11bとして機能させる送信状態と、送受信アンテナ13a,13bを対応する信号処理回路42a,42bに接続することで送受信アンテナ13a,13bを受信アンテナ12a,12bとして機能させる受信状態とを、周期的に交互に切り替えるサーキュレーター(図示せず)が、送受信アンテナ13a,13bと信号処理回路42a,42bとの各組についてそれぞれ設けられる。上記の各サーキュレーターは動作を互いに同期させ、動作の状態(送信状態又は受信状態)を常に互いに一致させる。上記のようなサーキュレーターは周知技術で実現可能であるので、詳細な図示並びに説明は省略する。
【0024】
また、上記のようにアンテナ11a,11b,12a,12b,13a,13bとして平面アンテナを用いる代わりに、ホーンアンテナ等の立体的なアンテナを用いてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 基板
2 制振体
3 反射体
5 判定回路
11a 第1送信アンテナ(請求項における第1送受信回路の一部)
11b 第2送信アンテナ(請求項における第2送受信回路の一部)
12a 第1受信アンテナ(請求項における第1送受信回路の一部)
12b 第2受信アンテナ(請求項における第2送受信回路の一部)
13a 送受信アンテナ(請求項における第1送受信回路の一部)
13b 送受信アンテナ(請求項における第2送受信回路の一部)
41 発振回路
42a 第1信号処理回路(請求項における第1送受信回路の一部)
42b 第2信号処理回路(請求項における第2送受信回路の一部)
FS 取付面
SR1 第1検出立体角
SR2 第2検出立体角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面に対して固定される基板と、
前記基板に実装され、所定の送信周波数の送信信号を生成する発振回路と、
前記基板に実装され、送信信号が変換された送信波を所定の第1検出立体角へ送信するとともに、送信波が第1検出立体角内で反射された第1反射波を受信し、送信信号の周波数と第1反射波の周波数との差の周波数を有する第1ドップラー信号を含む出力を生成する第1送受信回路と、
弾性材料からなり前記基板に対して固定された制振体と、
送信波を反射する材料からなり制振体に支持された反射体と、
前記基板に実装され、送信信号が変換された送信波を、第1検出立体角と同じ向きであって反射体によって覆われる所定の第2検出立体角へ送信するとともに、送信波が第2検出立体角内で反射体により反射された第2反射波を受信し、送信信号の周波数と第2反射波の周波数との差の周波数を有する第2ドップラー信号を含む出力を生成する第2送受信回路と、
第1検出立体角内に移動物体が存在するか否かを、第1ドップラー信号と第2ドップラー信号との差分信号に基いて判定する判定回路とを備えることを特徴とするドップラーセンサー。
【請求項2】
反射体において第2検出立体角内に位置する面は、第2検出立体角の中心軸に直交する平面形状であることを特徴とする請求項1記載のドップラーセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−128120(P2011−128120A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289690(P2009−289690)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】