説明

ドップラーレーダーシステム、ドップラーレーダー送信装置及び送信波最適化方法

【課題】本発明は、検出対象物体を容易にかつ精度よく検出するための相関処理に基づくドップラーレーダー送信装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ドップラーレーダー受信装置において自己相関が算出される検出対象物体からの反射波及び予め定められた参照波の周波数スペクトルが同一となるように、検出対象物体の移動速度のうち検出対象となる移動速度、自己の移動速度及びレーダー波の伝搬速度に基づいて、送信波の周波数スペクトルを調整する可変周波数発振部414及び読み出しアドレス生成部415と、送信波を検出対象物体に照射する送信波照射部と、を備えることを特徴とするドップラーレーダー送信装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物体を容易にかつ精度よく検出するためのドップラーレーダーシステム、ドップラーレーダー送信装置及び送信波最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物にミリ波などの電磁波を照射し、反射波のドップラー効果による周波数偏移を計測すると、対象物の移動速度を検知でき、車両速度計測器や野球競技のスピードガンなどに実用化されている。また同様の原理にもとづくレーダー装置にドップラーレーダーがあり、霧や雲などの移動を調べ、上空の気流の様子を観測できる。超音波を使用してレーダー計測をすると、低速移動の物体の速度も効率よく検出できる。身体内の血流の分布と方向を観測できるため、超音波エコー診断装置のドップラーエコー機能として実用化されている。このようなドップラーレーダーが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−265031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらはすべて、あらかじめ所定の波形をもった送信波を送出し、反射波を精密に周波数分解することで、ドップラー効果を検出し、対象物の移動速度を検知し、対象空間内の画像化をしている。汎用性の高いものであるが、速度の不明な対象物から反射してくるさまざまな受信波の周波数分解を精密に高速に行うために、FFT(高速フーリエ変換)処理などを行う高速演算装置を必要とし、システム規模は大規模となり、また検出速度に要する時間も長くなりがちであった。
【0005】
ここで、相関処理又は整合フィルタに適した波形を使用して、精度よく時間分解を行うことをパルス圧縮技術と呼ぶ。この手法は、レーダーにおける基本的処理として、以前から用いられており、FFT処理などは不要であり、高速実時間処理を行うことに特徴がある。しかし、レーダー検出対象が動いていて、受信波形にドップラー偏移が加わった場合、受信波形は送信波形から変化してしまうため、単純な相関処理又は整合フィルタによるパルス圧縮では受信信号の正確な時間分解をできなくなる。これまで移動する検出対象でドップラー偏移を生じることは、パルス圧縮による位置検出性能を損なうものとして、なるべくその効果を低減する整合フィルタ処理の修正方式、送出波形の工夫等が試みられてきた。このように、パルス圧縮レーダーにおいて、ドップラー偏移の効果を低減する技術は、多くの付加的な処理を要するものであり、かつ対象の移動速度という有用な情報を破棄することで成立していた。
【0006】
しかし、ドップラー偏移の検出は対象物の移動速度を検知するということから有用なものであり、相関処理を行うレーダー方式においてドップラー偏移の影響を精度よく検出できる方法や送出波形の合成が望まれる。このような観点からドップラーレーダーのパルス圧縮波形を得ようとする発明は、これまでになかった。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、検出対象物体を容易にかつ精度よく検出するための相関処理に基づくドップラーレーダーシステム、ドップラーレーダー送信装置及び送信波最適化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、ドップラーレーダー受信装置が、予め定められた周波数スペクトルを有する反射波を受信するように、ドップラーレーダー送信装置は、検出対象となる移動速度、自己の移動速度及びレーダー波の伝搬速度に基づいて、送信波の周波数スペクトルを調整するようにし、ドップラーレーダー受信装置の構成を簡便にした。
【0009】
具体的には、本発明は、検出対象物体からの反射波及び予め定められた参照波の自己相関を算出することにより、自己及び前記検出対象物体の位置関係を算出するドップラーレーダー受信装置と、前記反射波及び前記参照波の周波数スペクトルが同一となるように、前記検出対象物体の移動速度のうち検出対象となる移動速度、自己の移動速度及びレーダー波の伝搬速度に基づいて、送信波の周波数スペクトルを調整し、前記送信波を前記検出対象物体に照射するドップラーレーダー送信装置と、を備えることを特徴とするドップラーレーダーシステムである。
【0010】
この構成によれば、ドップラーレーダー受信装置の構成を簡便にすることができる。
【0011】
また、本発明は、前記ドップラーレーダー送信装置は、複数の異なる送信波の周波数スペクトルを調整し、前記複数の異なる送信波を前記検出対象物体に照射し、前記ドップラーレーダー受信装置は、各送信波に対応する各反射波及び各参照波の自己相関を算出することにより、自己及び前記検出対象物体の位置関係を算出することを特徴とするドップラーレーダーシステムである。
【0012】
この構成によれば、自己及び検出対象物体の位置関係を精度よく算出することができる。
【0013】
また、本発明は、前記ドップラーレーダー送信装置は、前記送信波の波形を記憶しており、記憶している前記送信波の波形を読み出す速度を調整することにより、前記送信波の周波数スペクトルを調整することを特徴とするドップラーレーダーシステムである。
【0014】
この構成によれば、送信波の波形を容易に時間軸方向に伸縮することができ、送信波の周波数スペクトルを容易に調整することができる。
【0015】
また、本発明は、前記送信波の波形は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式におけるマルチキャリア波形であることを特徴とするドップラーレーダーシステムである。
【0016】
この構成によれば、マルチキャリア波形の多くのパラメータを最適化することにより、検出対象物体を精度よく検出するための送信波の波形を得ることができる。
【0017】
また、本発明は、ドップラーレーダー受信装置において自己相関が算出される検出対象物体からの反射波及び予め定められた参照波の周波数スペクトルが同一となるように、前記検出対象物体の移動速度のうち検出対象となる移動速度、自己の移動速度及びレーダー波の伝搬速度に基づいて、送信波の周波数スペクトルを調整する送信波調整部と、前記送信波を前記検出対象物体に照射する送信波照射部と、を備えることを特徴とするドップラーレーダー送信装置である。
【0018】
この構成によれば、ドップラーレーダー受信装置の構成を簡便にすることができる。
【0019】
また、本発明は、前記送信波調整部は、複数の異なる送信波の周波数スペクトルを調整し、前記送信波照射部は、前記複数の異なる送信波を前記検出対象物体に照射することを特徴とするドップラーレーダー送信装置である。
【0020】
この構成によれば、自己及び検出対象物体の位置関係を精度よく算出することができる。
【0021】
また、本発明は、前記送信波の波形を記憶している送信波記憶部、をさらに備え、前記送信波調整部は、前記送信波記憶部が記憶している前記送信波の波形を読み出す速度を調整することにより、前記送信波の周波数スペクトルを調整することを特徴とするドップラーレーダー送信装置である。
【0022】
この構成によれば、送信波の波形を容易に時間軸方向に伸縮することができ、送信波の周波数スペクトルを容易に調整することができる。
【0023】
また、本発明は、前記送信波の波形は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式におけるマルチキャリア波形であることを特徴とするドップラーレーダー送信装置である。
【0024】
この構成によれば、マルチキャリア波形の多くのパラメータを最適化することにより、検出対象物体を精度よく検出するための送信波の波形を得ることができる。
【0025】
また、本発明は、ドップラーレーダーシステム又はドップラーレーダー送信装置において前記検出対象物体に照射される前記送信波について、前記送信波の波形のパラメータの初期値を設定する初期値設定ステップと、時間軸方向で相互に合致させないように相互にずらした前記送信波の波形の間で相関を小さくするように、前記送信波の波形のパラメータを最適化する最適化ステップと、を順に備えることを特徴とする送信波最適化方法である。
【0026】
この構成によれば、パルス圧縮において効率を高くすることができる。
【0027】
また、本発明は、ドップラーレーダーシステム又はドップラーレーダー送信装置において前記検出対象物体に照射される前記複数の異なる送信波について、前記複数の異なる送信波の波形のパラメータの初期値を設定する初期値設定ステップと、時間軸方向で相互に合致させないように相互にずらした各送信波の波形の間で相関を小さくするとともに、前記複数の異なる送信波の波形の間で相関を小さくするように、前記複数の異なる送信波の波形のパラメータを最適化する最適化ステップと、を順に備えることを特徴とする送信波最適化方法である。
【0028】
この構成によれば、パルス圧縮において効率を高くすることができるとともに、送信合成開口において角度分解能を高くすることができる。
【0029】
また、本発明は、前記最適化ステップでは、前記送信波の波形について平均電力に対するピーク電力の比率を小さくするように、前記送信波の波形のパラメータを最適化することを特徴とする送信波最適化方法である。
【0030】
この構成によれば、ドップラーレーダーシステムの耐雑音性能を高めることができるとともに、ドップラーレーダーシステムのダイナミックレンジを下げることができる。
【0031】
また、本発明は、前記送信波の波形は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式におけるマルチキャリア波形であり、前記送信波の波形のパラメータは、各キャリア波形の振幅及び位相であることを特徴とする送信波最適化方法である。
【0032】
この構成によれば、マルチキャリア波形の多くのパラメータを最適化することにより、検出対象物体を精度よく検出するための送信波の波形を得ることができる。
【0033】
また、本発明は、前記最適化ステップでは、遺伝的アルゴリズムを適用することにより、前記送信波の波形のパラメータを最適化することを特徴とする送信波最適化方法である。
【0034】
この構成によれば、局所的なパラメータ空間でなく、広範なパラメータ空間において、送信波の波形のパラメータを最適化することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、検出対象物体を容易にかつ精度よく検出するための相関処理に基づくドップラーレーダーシステム、ドップラーレーダー送信装置及び送信波最適化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ドップラーレーダーシステムの概要を示す図である。
【図2】ドップラーレーダーシステムの構成を示す図である。
【図3】送信信号処理部の構成を示す図である。
【図4】受信信号処理部の構成を示す図である。
【図5】送信波を最適化する山登り法を示すフローチャートである。
【図6】送信波を最適化する遺伝的アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図7】マルチキャリア信号の波形を示す図である。
【図8】マルチキャリア信号を適用したときの物体検出の実験結果を示す図である。
【図9】M系列信号を適用したときの物体検出の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0038】
(ドップラーレーダーシステムの概要)
ドップラーレーダーシステムの概要を、空中超音波によるドップラーレーダーシステムを例に説明する。本発明の具体例として、図1において、自動車1がv=0.5m/s程度の速度域で後方に移動するときに、空中超音波を用いたバックセンサ4を用いて、停止した障害物2(相対速度v=0.5m/s)のみを検出し、移動する障害物3を検出しない、ドップラーレーダーシステムについて説明する。ただし、レーダー波は、水中超音波やミリ波などの電磁波であってもよい。速度vで移動するノードが、停止した障害物のみを検出する場合を考える。ただし、ノードは移動していても停止していてもよく、障害物は停止していても移動していてもよい。いずれの場合であっても、ドップラーレーダーシステムの概要は同様である。
【0039】
この際、レーダー波を移動方向に、周波数fで送出すれば、受信波の周波数fはドップラー偏移を受け、
【数1】

となって帰ってくる。ここでcは空気中の音速であり、またvは対象に接近する向きを正にとる。そこで送信周波数を、ノードの速度vにあわせて、
【数2】

として送出し、fを受信機の検出周波数にとれば、f=fとなって、その周波数を有する超音波を受信する受信機は、相対速度vを有する停止物を選択的に検出できるようになる。移動ノードにとってvを別の方法(車輪の回転速度等)で計測すればそれは既知であり、またcはその環境の大気の温度や湿度から算出できるので、このような送信操作は可能である。
【0040】
以上では送信波は単一周波数の純スペクトルのように記載したが、後述のように、それではレーダーの距離分解をできないため、送信波には一定のスペクトル幅をもつ波形を使用する。よって数2の変換は送信波のすべての周波数成分に対し適用する。具体的には、速度v=0に対応する送信波の時間波形をT(t)とした場合、速度vにおいて、
【数3】

として送出すればよい。なお、c>>vの領域では、この式は近似的に、
【数4】

とも書ける。
【0041】
送信波が単一周波数の純スペクトルであるとすれば、受信機は周波数fの信号のみを選択的に検出するように構成する。その操作には放送受信機に広く使用される周波数選択性フィルタを応用できるが、レーダーに強い周波数選択性フィルタを使用すると、レーダーパルスの先頭又は末尾位置が不定となってしまい、結果的に対象物の位置検出精度を悪化させる。レーダーにおいて微弱な受信波を雑音成分から分離するためにも、受信において何らかのフィルタ操作を必要とするが、単純な周波数による選択では距離検出を悪化させるため適用できない。
【0042】
そこで一般に相関処理又は整合フィルタと呼ばれる検出手法が知られている。相関処理では、送信波の時間波形をT(t)としたとき、受信信号をR(t)として、
【数5】

として遅延時間スペクトルD(t)を得る。整合フィルタでは、R(ω),T(ω)をおのおのR(t),T(t)のフーリエ変換とし、また記号*を複素共役をあらわす記号としたとき、
【数6】

で遅延tの位置の受信信号中の遅延時間スペクトルD(t)を検出する。D(ω)をD(t)に変換するには、逆フーリエ変換を使用する。
【0043】
送出波形T(t)の選び方により、相関処理又は整合フィルタによる遅延時間分解性能は変わってくる。本発明の前提とする状況で有効な送出波形は、高い遅延時間分解能を導くことのみならず、特定のドップラー偏移を受けた信号をその他の信号から分離する速度分解能も重要となる。さらに複数の送信スピーカーを配置して異なった波形を同時送信し、高い空間分解能を得る送信合成開口も適用できることが望ましく、複数の上記のような特性をもった送信波形において、相関処理によりその相互を弁別できることが望ましい。
【0044】
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)通信に用いられるマルチキャリア信号の変調パラメータを、上記のような特性に注目しつつ、遺伝的アルゴリズムを使用して調整することで、特に特定速度検出のドップラーレーダーに適した送信波形を合成できる。
【0045】
(ドップラーレーダーシステムの構成)
本発明のドップラーレーダーシステムは、例えば図1のような状況で使用される。ここで、自動車1は、後退中であり、バックセンサ4を使用して、後方の障害物2、3を検出し、ドライバーに警告情報を与える。バックセンサ4に本発明の原理を使用することにより、後方の障害物2、3のうち、静止している障害物2及び動いている障害物3を容易に弁別することができるので、後方の障害物2、3という対象ごとに異なった警告を発することができ、従来のものより精度の高いバックセンサ4として機能させることができる。なお、この原理によるセンサを、自動車4の前方に設置して前方の障害物を検出することができるようにしてもよく、また水中音波を使うソナーやミリ波(電磁波)を使用するレーダーにも利用することができる。
【0046】
バックセンサ4は図2のような構成をもつ。バックセンサ4は、送信信号処理部41、駆動増幅部42、スピーカー43A、43B、マイクロホンアレイ44、信号増幅部45、A/D変換部46、受信信号処理部47及びクロック48から構成される。バックセンサ4は、ドップラーレーダーシステムに対応する。送信信号処理部41、駆動増幅部42、スピーカー43A、43Bは、ドップラーレーダー送信装置を構成し、マイクロホンアレイ44、信号増幅部45、A/D変換部46、受信信号処理部47及びクロック48は、ドップラーレーダー受信装置を構成する。送信信号処理部41は、速度検出部5に接続され、受信信号処理部47は、画像表示部6に接続される。
【0047】
送信信号処理部41には速度検出部5より検出対象速度vを与える。送信信号処理部41はそれにもとづき波形を合成する。送信波形は単一でもよいが、送信合成開口技術により空間分解能を向上させようとすれば、複数の信号を同時生成するべきで、ここでは各スピーカー43A、43Bが各波形を送出している。波形は駆動増幅部42を経て、2台の電磁的スピーカー43又は広帯域のピエゾ素子スピーカー43より送出される。
【0048】
障害物2により反射された反射波は、線状に配置された後述のn個のマイクロホン44−1、44−2、・・・、44−nから構成されるマイクロホンアレイ44で受信される。マイクロホンアレイ44を使うのは受信結果を距離・角度で分解した2次元画像として表示するためで、対象までの距離だけ表示するのでよければ、1個のマイクロホン44−1だけでもよい。
【0049】
n個の受信信号 (そこにはスピーカー43A、43Bからの信号が重畳されている) は、信号増幅部45により増幅され、A/D変換部46によりA/D変換され、デジタル信号となる。それが受信信号処理部47で処理され、2次元画像となり画像表示部6に表示される。一般に高感度マイクロホンアレイ44の受信可能な周波数帯域幅は限られており、送信波形はそれを考慮して決定され、また受信機構におけるA/D変換や受信信号処理のクロック48もこの信号周波数帯域を考慮して決定される。
【0050】
送信信号処理部41は図3のような構成をもつ。送信信号処理部41は、気温センサ411、湿度センサ412、音速算出部413、可変周波数発振部414、読み出しアドレス生成部415、送信波形メモリ416A、416B及びD/A変換部417A、417Bから構成される。可変周波数発振部414及び読み出しアドレス生成部415は、送信波調整部に対応し、送信波形メモリ416A、416Bは、送信波記憶部に対応し、スピーカー43A、43Bは、送信波照射部に対応する。
【0051】
可変周波数発振部414及び読み出しアドレス生成部415は、受信信号処理部47において自己相関が算出される障害物2からの反射波及び予め定められた参照波の周波数スペクトルが同一となるように、障害物2の移動速度のうち検出対象となる移動速度、自動車1の移動速度及びレーダー波の伝搬速度に基づいて、送信波の周波数スペクトルを調整する。スピーカー43は、送信波を障害物2に照射する。
【0052】
ここで、可変周波数発振部414及び読み出しアドレス生成部415は、複数の異なる送信波の周波数スペクトルを調整してもよい。そして、スピーカー43は、複数の異なる送信波を障害物2に照射してもよい。これにより、自動車1及び障害物2の位置関係を精度よく算出することができる。
【0053】
送信波形メモリ416A、416Bは、送信波の波形を記憶している。可変周波数発振部414及び読み出しアドレス生成部415は、送信波形メモリ416A、416Bが記憶している送信波の波形を読み出す速度を調整することにより、送信波の周波数スペクトルを調整する。これにより、送信波の波形を容易に時間軸方向に伸縮することができ、送信波の周波数スペクトルを容易に調整することができる。
【0054】
送信信号処理部41の処理を具体的に説明する。速度検出部5により出力された車速信号などから得られた検出対象速度vにもとづき、数2により可変周波数発振部414の周波数を調整する。多くの場合、常温空気中の音速をc=340m/sとしてもよいが、さらに厳密には、気温センサ411及び湿度センサ412などにより測定された使用雰囲気における気温及び湿度などにより修正した音速を使用してもよく、音速算出部413はそれを行う。
【0055】
可変周波数発振部414は、障害物2のもたらすドップラー効果を勘案して、周波数がfである送信クロックを生成する。読み出しアドレス生成部415は、周波数がfである送信クロックで読み出しアドレスを更新しつつ、送信波形メモリ416A、416Bの内容を読み出すことで、数3又は数4により修正された送信波形を得る。これはD/A変換部417A、417BによりD/A変換され、後続段に送られる。読み出しアドレスをリセットして波形生成を始める動作の開始タイミング(送出タイミング)は受信信号処理部47より与えられる。
【0056】
受信信号処理部47は図4のような構成をもつ。受信信号処理部47は、相関処理部471−1、471−2、・・・、471−n、画像合成部472、タイミング生成部473、読み出しアドレス生成部474及び参照波形メモリ475から構成される。
【0057】
送信信号処理部41が、1つの種類の送信波を送信するときには、受信信号処理部47は、障害物2からの反射波及び予め定められた参照波の自己相関を算出することにより、自動車1及び障害物2の位置関係を算出する。これにより、受信信号処理部47の構成を簡便にすることができる。送信信号処理部41が、複数の種類の送信波を送信するときには、受信信号処理部47は、各送信波に対応する各反射波及び各参照波の自己相関を算出することにより、自動車1及び障害物2の位置関係を算出する。これにより、自動車1及び障害物2の位置関係を精度よく算出することができる。
【0058】
受信信号処理部47の処理を具体的に説明する。n個のマイクロホン44−1、44−2、・・・、44−nからの信号は、信号増幅部45及びA/D変換部46により増幅及びA/D変換された後、n台の独立した相関処理部471−1、471−2、・・・、471−nに入れられる。相関処理部471−1、471−2、・・・、471−nは、数5又は数6の演算を行う機構である。この結果、n組の遅延時間スペクトルD1A(t),D1B(t),D2A(t),D2B(t),・・・,DnA(t),DnB(t)を得る。遅延時間スペクトルは画像合成部472で2次元のセクタースキャン画像に変換される。その具体的手法は一般的な超音波装置で使われているので、省略する。
【0059】
ここで、実施形態では、参照波形メモリ475が記憶している参照波形は、送信波形メモリ416A、416Bが記憶している送信波形と同一である。しかし、変形例として、参照波形メモリ475が記憶している参照波形は、送信波形メモリ416A、416Bが記憶している送信波形と同一でなくてもよい。いずれの場合でも、反射波及び参照波の周波数スペクトルが同一となるように、送信波の周波数スペクトルを調整すればよい。
【0060】
タイミング生成部473は、読み出しアドレス生成部415に対して、送出タイミングを通知するとともに、画像合成部472に対して、合成タイミングを通知する。タイミング生成部473がタイミング信号を生成するのは、超音波パルスが送信されてから受信されるまでの間に、次の超音波パルスが送信されることを防止するためである。読み出しアドレス生成部474は、周波数がfであるクロック48のクロック信号で読み出しアドレスを更新しつつ、参照波形メモリ475の内容を読み出すことで参照波形を得る。
【0061】
(送信波を最適化する方法)
ここで使用する送信波形及び参照波形は、高い時間分解能、高い速度分解能及び複数波形間の高い弁別性能をもつ必要がある。それを次のように合成する。送信波形には、
【数7】

の形をもつ、周波数がfからfまでのN個のキャリアを合成した、マルチキャリア波を使用する。ここで各キャリアの振幅a及び位相φは任意に調整できるパラメータであり、時間分解能、速度分解能及び複数波形間の弁別性能が良好になるように調整する。
【0062】
通常、N個のキャリア信号の周波数fは、等間隔になるように選択される。f,・・・,fはキャリア数N、スピーカー周波数帯域及びマイクロホン周波数帯域などを考慮して決定される。その数は多いほど調整可能パラメータが増え、時間分解能、速度分解能及び複数波形間の弁別性能のよい波形を得られる可能性が高まる。一方、N個のキャリア信号の周波数間隔Δf=fk+1−fの逆数L=1/ΔfはOFDM送信を行うときの基本送信波形長となる。送受信周波数帯域の制限された中でキャリア数Nを増やすと、送信波形長Lは長くなり、レーダーの分解能を低下させるので、あまり大きなNの使用は望ましくなく、以上のトレードオフを考慮して適切に選択する。
【0063】
一般にレーダーに使用する送信波形は、その波形自身を時間軸でずらしながら相関をとった場合の自己相関特性について、ずらし時間0のところにのみピークが現れ、それ以外はピーク近傍も含めなるべく小さなピークとなることが望ましい。効率よくパルス圧縮処理をするための条件である。また送信開口合成などの処理により角度分解能を向上させようとすれば、相異なる複数の信号間で相関を求めたとき、その相互相関特性はなるべく小さくなるような波形を選択できることが望ましい。
【0064】
本発明の対象とするような運動物体検出のドップラーレーダーにおいては、ドップラーシフトにより周波数の変化した信号波すなわち時間軸方向に任意に伸縮させた信号波形が生成される。ここで、ドップラーシフトにより生成された信号波について、相互相関がなるべく小さくなることが望ましい。そして、鋭いドップラーシフト検出能力を求めるために、時間軸方向の伸縮程度が異なる同種の信号波について、自己相関がなるべく小さくなることが望ましく、時間軸方向の伸縮程度が同一の信号波について、ずらし時間0のところでのみ自己相関がなるべく大きくなることが望ましい。
【0065】
次に、この発明で必要な送信波形を、マルチキャリア波として得る手法について解説する。n個のキャリア波よりなるマルチキャリア波は、各キャリア波の振幅及び位相を指定すると定義される。これをp、qの2セット分用意する。p、qの各セットでは、振幅はapk,aqkであり、位相はφpk,φqkであり、添え字kは1からnまで変わりうる。たとえばapk,aqkについては区間[0,1]の一様乱数から得て、φpk,φqkについては区間[−π,π]の一様乱数から得るとよい。それで得られる2種の時間波形をf(t),f(t)と書くことにする。
【数8】

【数9】

【0066】
この波形について、自己相関μ(δ(v),τ),μ(δ(v),τ)及び相互相関μpq(δ(v),τ)を、以下のように計算する。
【数10】

【数11】

【数12】

ここでδ(v)はドップラーシフトによる波形の時間伸縮によって相関の変動する程度を測定するため導入したパラメータであり、vを測定対象の移動速度とすればδ(v)=(c−v)/(c+v)である。δ(0)=1はドップラーシフトの影響のない状態をあらわす。
【0067】
ドップラーシフト検出能力も含めたマルチキャリア波を評価するための評価関数M(apk,aqk,φpk,φqk)は下記のようになる。
【数13】

【0068】
ここで、鋭いドップラーシフト検出能力を求めるために、時間軸方向の伸縮程度が異なる同種の信号波について、自己相関はなるべく小さくなることが望ましい。そこで、自己相関の効果は、評価関数に不適合項として組み込まれている。そして、ドップラーシフトにより生成された信号波について、相互相関はなるべく小さくなることが望ましい。そこで、相互相関の効果は、評価関数に不適合項として組み込まれている。PAPR,BWT,BWVはドップラーレーダーとして波形の不適合度を表すパラメータで、後述する。
【0069】
max1,max2については、|v|としてはv=0近傍を除いた測定領域内の物体の取りうる速度域全般、|τ|としてはτ=0近傍を除いた測定領域の最遠の物体までの距離を音速で割った時間範囲をとる。max3については、|v|としては測定領域内の物体の取りうる速度域全般、|τ|としては測定領域の最遠の物体までの距離を音速で割った時間範囲をとる。k,k,k,kは適当な正の係数であり、たとえばk=20,k=10,k=20,k=20とするとよい。対数には常用対数を使用している。M(apk,aqk,φpk,φqk)で自由に増減できるパラメータは4n個ある。キャリア数nとしてたとえば128を選べば、パラメータ数は512となり、多変量の最適化問題とみなすことができる。
【0070】
マルチキャリア波は本質的にレーダー用途に適するのであるが、波形包絡線は一定の値はとらず、増減する。その中で包絡線はピーク値をもつが、レーダー波の送信系、受信系は包絡線ピーク値の電力を十分に伝達できるだけの信号電力余裕域(ダイナミックレンジ)をもって設計しなければならない。しかしシステムの耐雑音性能は波形の平均電力により決まり、すなわちピーク値より小さなものとなるため、両者の比PAPR(Peak−to−Average Power Ratio)はあまり大きくならないことが望ましい。そこでPAPRを評価関数のペナルティー項に加え、抑制をはかる。マルチキャリア波を使用する多くのシステムで考慮される項である。
【0071】
自己相関関数μ(δ(0),τ),μ(δ(0),τ)は、τ=0でピークである1という値をとるが、その近傍ではすみやかに値を減じるほうが時間分解能のよいレーダー波形となる。τ=0近傍での尖り具合すなわち相関関数値が半値となるτの幅Δτの増加に応じて評価関数を悪化させることで、時間分解能の高い波形を選択的に得ることができる。BWT=Δτ/(2T)(Tは送信波の継続時間)として時間分解能を評価、改善する。一般のレーダー用途で重要な項である。
【0072】
自己相関関数μ(δ(v),0),μ(δ(v),0)は、v=0でピークである 1という値をとるが、その近傍ではすみやかに値を減じるほうが速度分解能のよいレーダー波形となる。v=0近傍での尖り具合すなわち相関関数値が半値となるvの幅Δvの増加に応じて評価関数を悪化させることで、速度分解能の高い波形を選択的に得ることができる。BWV=Δv/(2c)(cは音速)として速度分解能を評価、改善する。特にドップラーレーダー用途に重要な項である。
【0073】
図5は、送信波を最適化する山登り法を示すフローチャートである。ステップS1は、初期値設定ステップに対応し、ステップS2からステップS6までは、最適化ステップに対応する。apk,aqk,φpk,φqkの初期値を乱数で生成する(ステップS1)。ひとつのパラメータたとえばapkに対して、変化分Δap1を設定する(ステップS2)。M(apk,aqk,φpk,φqk),M(apk+Δap1,aqk,φpk,φqk),M(apk−Δap1,aqk,φpk,φqk)の3種の場合の評価関数を計算する(ステップS3)。3種の場合の評価関数のうち最大値を採用し、すなわちapk+Δap1又はapk−Δap1を使うほうがapkを使うよりも良い成績をもたらせば、apkをapk+Δap1又はapk−Δap1で置き換える(ステップS4)。
【0074】
ステップS2からステップS4までをすべてのパラメータについて繰り返す(ステップS5)。更新回数が所定回数に到達した場合(ステップS6においてYES)、最適解に達したとみなし、アルゴリズムを停止させる。
【0075】
図6は、送信波を最適化する遺伝的アルゴリズムを示すフローチャートである。山登り法で多パラメータ空間における極大値を得られるが、これはあくまでも局所的な極大値である。より広範なパラメータ空間における極大値を得るためには、遺伝的アルゴリズムを使うとよい効果を得られる場合がある。
【0076】
ステップS11は、初期値設定ステップに対応し、ステップS12からステップS15までは、最適化ステップに対応する。f(t)、f(t)の候補として、たとえば400種ずつの出発値(個体)を用意し、これを第1世代の個体集合とする(ステップS11)。第1世代の中から上位の成績を示すもの、たとえば100セットを取り出しエリート集合とする(ステップS12)。エリートから任意の2個体を取り出し、パラメータを交叉させることで第2世代の個体候補を作る(ステップS13)。そのように作った新しい個体集合とエリート集合の個体のうち一部(15%程度)について、パラメータを新しく乱数で生成したものに変更し、突然変異を加える(ステップS13)。このようにして次世代個体候補を得たのち、優れた評価関数値を示すものを400個体残し、第2世代の集合とする(ステップS14)。
【0077】
この操作を多くの世代分くりかえし、世代交代を繰り返しても評価関数に十分な改善を得られなくなった場合(ステップS15においてNO)、最適解に達したとみなし、アルゴリズムを停止させる。
【0078】
(物体検出の実験結果)
以上のような制約条件のもと、a,φについていくつかの候補すなわち個体集合を生成し、図6の遺伝的アルゴリズムにより新しい世代を生成し、改善をはかる。ここでは、N=125を採用し、送信スピーカーおよび受信スピーカーの特性を考慮して、中心周波数50kHz、帯域幅25kHzとなるように等間隔に位置したマルチキャリア波を使用した。遺伝的アルゴリズムによるループを2000世代分行い、高い時間分解能、速度分解能、低いSNR(Signal−to−Noise Ratio)をもつ、2つの送信信号(信号ペア)T(t),T(t)を得ることができた。図7の上図は、送信信号T(t)を示し、図7の下図は、送信信号T(t)を示す。
【0079】
送信信号T(t),T(t)を、105mm離れた2台のスピーカー43A,43Bにより送信し、その近傍に間隔5.08mmでn=16個線状配置したマイクロホンアレイ44により受信した。スピーカー43A,43B及びマイクロホンアレイ44からの距離約2mの場所に、相対速度v=0.5m/sで移動する検出対象及び静止した検出対象を同時配置した。図8及び図9はそれぞれ、マルチキャリア信号及びM系列信号を適用したときの物体検出の実験結果を示す図である。図8及び図9において、左図では静止した検出対象(図面では“B”と表記する。)を検出しており、右図では相対速度v=0.5m/sで移動する検出対象(図面では“A”と表記する。)を検出している。
【0080】
図8及び図9において、送信時間長及びピーク送信電力は合致しており、マルチキャリア信号及びM系列信号のパラメータは最適化されている。ただし、図9においてM系列信号波形に速度分解能を持たせることは考慮しておらず、図8においてマルチキャリア信号波形に速度分解能を持たせることは考慮している。図9においてM系列信号を適用したときには、このレーダー方式である程度の位置速度分解性能を得ることができるが、静止した検出対象を検出するときには、移動する検出対象の像が残っており、移動する検出対象を検出するときには、静止した検出対象の像が残っている。図8においてマルチキャリア信号を適用したときには、左図では静止した検出対象を図9のM系列信号の場合より明瞭に識別することができており、右図では相対速度v=0.5m/sで移動する検出対象を図9のM系列信号の場合より明瞭に識別することができている。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のドップラーレーダーシステム、ドップラーレーダー送信装置及び送信波最適化方法は、自動車が障害物に衝突しないようにするためのバックセンサやフロントセンサ、視覚障害者が障害物に衝突しないようにするための障害物センサなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1:自動車
2:障害物
3:障害物
4:バックセンサ
5:速度検出部
6:画像表示部
41:送信信号処理部
42:駆動増幅部
43:スピーカー
44:マイクロホンアレイ
45:信号増幅部
46:A/D変換部
47:受信信号処理部
48:クロック
411:気温センサ
412:湿度センサ
413:音速算出部
414:可変周波数発振部
415:読み出しアドレス生成部
416:送信波形メモリ
417:D/A変換部
471:相関処理部
472:画像合成部
473:タイミング生成部
474:読み出しアドレス生成部
475:参照波形メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物体からの反射波及び予め定められた参照波の自己相関を算出することにより、自己及び前記検出対象物体の位置関係を算出するドップラーレーダー受信装置と、
前記反射波及び前記参照波の周波数スペクトルが同一となるように、前記検出対象物体の移動速度のうち検出対象となる移動速度、自己の移動速度及びレーダー波の伝搬速度に基づいて、送信波の周波数スペクトルを調整し、前記送信波を前記検出対象物体に照射するドップラーレーダー送信装置と、
を備えることを特徴とするドップラーレーダーシステム。
【請求項2】
前記ドップラーレーダー送信装置は、複数の異なる送信波の周波数スペクトルを調整し、前記複数の異なる送信波を前記検出対象物体に照射し、
前記ドップラーレーダー受信装置は、各送信波に対応する各反射波及び各参照波の自己相関を算出することにより、自己及び前記検出対象物体の位置関係を算出することを特徴とする、請求項1に記載のドップラーレーダーシステム。
【請求項3】
前記ドップラーレーダー送信装置は、前記送信波の波形を記憶しており、記憶している前記送信波の波形を読み出す速度を調整することにより、前記送信波の周波数スペクトルを調整することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のドップラーレーダーシステム。
【請求項4】
前記送信波の波形は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式におけるマルチキャリア波形であることを特徴とする、請求項1から請求項3に記載のいずれかのドップラーレーダーシステム。
【請求項5】
ドップラーレーダー受信装置において自己相関が算出される検出対象物体からの反射波及び予め定められた参照波の周波数スペクトルが同一となるように、前記検出対象物体の移動速度のうち検出対象となる移動速度、自己の移動速度及びレーダー波の伝搬速度に基づいて、送信波の周波数スペクトルを調整する送信波調整部と、
前記送信波を前記検出対象物体に照射する送信波照射部と、
を備えることを特徴とするドップラーレーダー送信装置。
【請求項6】
前記送信波調整部は、複数の異なる送信波の周波数スペクトルを調整し、
前記送信波照射部は、前記複数の異なる送信波を前記検出対象物体に照射することを特徴とする、請求項5に記載のドップラーレーダー送信装置。
【請求項7】
前記送信波の波形を記憶している送信波記憶部、をさらに備え、
前記送信波調整部は、前記送信波記憶部が記憶している前記送信波の波形を読み出す速度を調整することにより、前記送信波の周波数スペクトルを調整することを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載のドップラーレーダー送信装置。
【請求項8】
前記送信波の波形は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式におけるマルチキャリア波形であることを特徴とする、請求項5から請求項7に記載のいずれかのドップラーレーダー送信装置。
【請求項9】
請求項1に記載のドップラーレーダーシステム又は請求項5に記載のドップラーレーダー送信装置において前記検出対象物体に照射される前記送信波について、前記送信波の波形のパラメータの初期値を設定する初期値設定ステップと、
時間軸方向で相互に合致させないように相互にずらした前記送信波の波形の間で相関を小さくするように、前記送信波の波形のパラメータを最適化する最適化ステップと、
を順に備えることを特徴とする送信波最適化方法。
【請求項10】
請求項2に記載のドップラーレーダーシステム又は請求項6に記載のドップラーレーダー送信装置において前記検出対象物体に照射される前記複数の異なる送信波について、前記複数の異なる送信波の波形のパラメータの初期値を設定する初期値設定ステップと、
時間軸方向で相互に合致させないように相互にずらした各送信波の波形の間で相関を小さくするとともに、前記複数の異なる送信波の波形の間で相関を小さくするように、前記複数の異なる送信波の波形のパラメータを最適化する最適化ステップと、
を順に備えることを特徴とする送信波最適化方法。
【請求項11】
前記最適化ステップでは、前記送信波の波形について平均電力に対するピーク電力の比率を小さくするように、前記送信波の波形のパラメータを最適化することを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の送信波最適化方法。
【請求項12】
前記送信波の波形は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式におけるマルチキャリア波形であり、
前記送信波の波形のパラメータは、各キャリア波形の振幅及び位相であることを特徴とする、請求項9から請求項11に記載のいずれかの送信波最適化方法。
【請求項13】
前記最適化ステップでは、遺伝的アルゴリズムを適用することにより、前記送信波の波形のパラメータを最適化することを特徴とする、請求項9から請求項12に記載のいずれかの送信波最適化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−137340(P2012−137340A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288791(P2010−288791)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(504202472)大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 (119)
【Fターム(参考)】