説明

ドデカン二酸およびその誘導体の生成方法

生体源由来のドデカン二酸を精製するための方法、および生体源由来のドデカン二酸を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、第1に、ムコン酸を、再生可能な炭素源から生物学的に形成する工程、上記ムコン酸をヘキセン二酸に還元する工程、次いで、上記ヘキセン二酸と、不飽和脂肪酸(代表的には、Δ不飽和脂肪酸)とを、メタセシス反応において反応させて、ドデセン二酸を生成する工程を包含する。次いで、ドデセン二酸は、ドデカン二酸に還元される。ドデカン二酸は、ポリマー(例えば、ポリアミド)を形成するために使用され得る。ポリアミドの例としては、ナイロン(例えば、ナイロン6,12)が挙げられる。ナイロン6,12は、ドデカン二酸と、1,6−ヘキサメチレンジアミンとを反応させることによって形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年1月22日に出願された米国仮出願第61/146,545号の利益を主張し、上記米国仮出願は、その全容が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、再生可能な供給原料からのドデカン二酸の生成、およびその後の使用(例えば、ポリアミドを形成するための)に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ナイロンは、ごく僅かであるが例を挙げると、ファブリック、楽器の弦(musical string)、ロープ、ねじおよび歯車を作製するために使用される合成熱可塑性ポリアミドのファミリーについての包括的な名称である。ナイロンは、充填剤としても(例えば、ガラス充填変種および硫化モリブデン充填変種)利用可能である。
【0004】
ナイロン6は、最も一般的な市販のグレードの成形ナイロンである。多くの接尾辞が、モノマーによって与えられる炭素原子の数(ジアミンは最初に、および二酸は二番目に)を特定する。ナイロン6,6については、上記ジアミンは、代表的には、ヘキサメチレンジアミンであり、上記二酸は、アジピン酸である。これらモノマーの各々は、上記ポリマー鎖に6個の炭素を与える。
【0005】
有用なナイロンの別の例は、ナイロン6,12であり、これは、6個の炭素のジアミンおよび12個の炭素のジカルボン酸のコポリマーである。ナイロン6,12を作製するための1つの方法は、1,6−ヘキサメチレンジアミンおよびドデカン二酸の重縮合生成物を形成する工程を包含する。このようなポリマー材料の商業的生成については、その出発物質は、炭化水素源から実質的に単独で得られる。
【0006】
ドデカン二酸は、従って、非常に重要な化合物である。これは、種々の産業的適用(例えば、ポリマーのための可塑剤、エポキシ硬化剤、接着剤および粉末コーティング、エンジニアリングプラスチック(engineering plastics)、香料製品および医薬品など)において使用される。1年に、15,000,000,000ポンドのドデカン二酸が、石油化学供給原料から合成されている。このような石油化学供給原料は、主に枯渇しつつある天然資源であり、このような供給原料の使用は、地球規模での環境に対する有害な変化に関連してきた。
【0007】
ナイロンの生成に有用なこのような供給原料材料は、従って、利用可能性が制限されており、実質的な物価変動を受けやすい。結果として、ドデカン二酸、ならびに再生可能で、持続可能な環境にとってより無害なポリアミドを生成するための代替法に対する興味が高まっており、かつその必要性が高まっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明の局面は、有用な市販の生成物(例えば、ポリアミド)の生成(これは、非再生可能供給原料(例えば、石油もしくは他の化石炭素資源)から得られる出発材料を使用するものとは対称的に、再生可能な供給原料から生物学的プロセスによって生成される材料で始まる)に関する。本発明の局面は、より具体的には、再生可能なバイオマス由来炭素源からの、ジカルボン酸、およびその誘導体の生成に関する。より具体的には、本発明のいくつかの局面は、再生可能なバイオマス由来炭素源からの、ドデカン二酸、ならびにその前駆物質および誘導体の生成に関する。より具体的には、本発明の方法は、生体源由来の(biosourced)ジカルボン酸(例えば、ドデカン二酸)を再生可能な生体源由来の供給原料から生成するために、オレフィン化合物でのメタセシス工程を利用する。得られる再生可能なドデカン二酸は、上記メタセシス反応の他の生成物からおよび任意の残りの出発物質から分離され得る。ドデカン二酸およびその誘導体は、ポリアミドおよび他のポリマーの生成において有用性を有する。
【0009】
いくつかの局面において、本発明は、第1に、ムコン酸を再生可能な供給原料から生物学的に生成するための方法を提供する。好ましい実施形態において、上記ムコン酸は、ヘキセン二酸の単一のもしくは複数の異性体に還元される。上記ムコン酸の還元は、当該分野で公知の方法(例えば、亜鉛ハライド試薬、電気化学的還元、もしくは選択的水素化)を使用して行われ得る。上記ヘキセン二酸は、誘導体(例えば、エステル、アミド、もしくは塩)として存在し得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記ヘキセン二酸は、不飽和脂肪酸と、メタセシス反応において反応させられて、ドデセン二酸を生成し、これは、次いで、ドデカン二酸に還元される。上記反応は、代表的には、メタセシス触媒(例えば、グラブス触媒(ベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウムもしくはベンジリデン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムが挙げられる))を使用することを包含する。
【0011】
ムコン酸を生物学的形成することは、Escherichia属、Klebsiella属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Arthrobacter属、Bacillus属、Pseudomonas属、Streptomyces属、Staphylococcus属、もしくはSerratia属に属する原核生物を細菌的に使用して、またはSaccharomyces属もしくはSchizosaccharomyces属の酵母を使用することによって、上記ムコン酸を形成する工程を包含し得る。
【0012】
ムコン酸は、任意の適切な試薬を使用して、ヘキセン二酸(例えば、3−ヘキセン二酸)の異性体に還元される。他の適切な試薬は、亜鉛ハライド試薬(例えば、ピリジン中の塩化亜鉛)である。
【0013】
上記ヘキセン二酸もしくはその誘導体は、不飽和脂肪酸と反応させられて、不飽和ジカルボン酸もしくはその誘導体を形成する。好ましい実施形態において、上記不飽和脂肪酸は、第1に、自己メタセシス反応において反応させられて、Δオクタデセン二酸を生成する。Δオクタデセン二酸は、次いで、上記ヘキセン二酸と反応して、ドデセン二酸を生成する。好ましくは、上記不飽和脂肪酸は、Δ不飽和脂肪酸である。上記Δ不飽和脂肪酸の例としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、エライジン酸、およびオレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。次いで、上記メタセシス反応によって生成される上記不飽和ジカルボン酸もしくはその誘導体は、飽和ジカルボン酸に還元され得る。好ましい実施形態において、形成される上記不飽和ジカルボン酸は、ドデセン二酸であり、これは、次いで、その飽和アナログであるドデカン二酸に還元される。これは、例えば、貴金属水素化触媒を使用して、上記ドデセン二酸を水素化する工程によって達成され得る。
【0014】
別の実施形態において、上記Δ不飽和脂肪酸は、第1に、対称性のΔ不飽和ジカルボン酸であるオクタデセン二酸に、自己メタセシス反応を介して転換される。次いで、上記対称性のΔオクタデセン二酸は、交差メタセシス反応において、上記対称性3−ヘキセン二酸とともに使用されて、上記メタセシス反応の単一生成物として所望のドデセン二酸を与え得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記ドデカン二酸は、ポリマー(例えば、ポリアミド)を形成するために使用される。ポリアミドの例としては、ナイロン(例えば、ナイロン6,12)が挙げられる。ナイロン6,12は、1,6−ヘキサメチレンジアミンとドデカン二酸とを反応させることによって形成され得る。
【0016】
開示される発明の特定の実施形態は、第1に、Escherichia属、Klebsiella属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Arthrobacter属、Bacillus属、Pseudomonas属、Streptomyces属、Staphylococcus属もしくはSerratia属に属する原核生物、またはSaccharomyces属もしくはSchizosaccharomyces属の酵母を使用して、ムコン酸を生物学的に形成する工程を包含する。上記ムコン酸は、亜鉛ハライド試薬を使用して、3−ヘキセン二酸に還元される。上記3−ヘキセン二酸は、Δ不飽和脂肪酸(例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、エライジン酸、オレイン酸、もしくはこれらの組み合わせ)と、メタセシス触媒を使用してメタセシス反応において反応させられて、ドデセン二酸を生成する。上記ドデセン二酸は、ドデカン二酸を形成するために水素化によって還元される。次いで、上記ドデカン二酸は、適切なジアミン(例えば、1,6−ヘキサメチレンジアミン)との反応によって、ポリアミド(例えば、ナイロン6,12)を形成するために使用される。
【0017】
本発明の局面は、生体源由来の不飽和ジカルボン酸もしくはその誘導体、およびバイオマス由来の再生可能な供給原料から生成されたそれらの飽和アナログを含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、生体源由来のドデセン二酸もしくはそのドデセン二酸誘導体を含む。好ましい実施形態において、開示されるのは、再生可能な炭素源から合成される生成物に特徴的な炭素同位体分布もしくは14C/12C比を有する生体源由来の生成物である。いくつかの実施形態において、上記再生可能な、単離されたドデセン二酸もしくはそのドデセン二酸誘導体は、0より大きい、0.9×10−12より大きい、もしくは約1.2×10−1214C/12C比によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記ドデセン二酸誘導体は、ジメチルドデセン二酸である。他の実施形態において、生体源由来のドデカン二酸もしくはその誘導体を含む組成物が、開示される。本発明の他の局面は、再生可能な単離された3−ヘキセン二酸およびその3−ヘキセン二酸誘導体を含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記生体源由来の3−ヘキセン二酸およびその3−ヘキセン二酸誘導体は、約1.2×10−1214C/12C同位体比によって特徴付けられる。本発明のさらなる局面は、生体源由来のポリアミドを含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記ポリアミドは、ナイロン6,12ポリマーであり、モノマーユニットあたり少なくとも12個の炭素原子が再生可能な炭素源から得られる。いくつかの実施形態において、上記ナイロン6,12は、検出可能な微量の炭素14を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される上記再生可能な化合物は、最大約1兆分の1までの炭素14を含む。
【0018】
本発明の局面は、ドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体、および上記ドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体から得られる少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体副生成物を含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、上記ドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体から得られる少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種の副生成物を含む。いくつかの実施形態において、上記少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体副生成物は、約7〜約16個の炭素原子を有するアルケン鎖を含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、上記ドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体から得られる少なくとも9種の副生成物を含み、上記副生成物は、約7〜約16個の炭素原子を有するアルケン鎖を含む。いくつかの実施形態において、上記ドデセン二酸誘導体は、ドデセン二酸ジエステルである。好ましい実施形態において、上記ドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体は、最大約1兆分の1までの炭素14を含む。好ましくは、上記アルケン鎖は、C3−C4の位置において炭素二重結合を含む。
【0019】
本発明の他の局面は、9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体、および9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体から得られる少なくとも1種のオクタデセン二酸もしくはオクタデセン二酸誘導体副生成物を含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体から得られる少なくとも1種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも15種、少なくとも16種の副生成物を含む。いくつかの実施形態において、上記オクタデセン二酸もしくはオクタデセン二酸誘導体副生成物は、C1−C2、C2−C3、C3−C4、C4−C5、C5−C6、C6−C7、C7−C8、C8−C9、C10−C11、C11−C12、C12−C13、C13−C14、C14− C15、C15−C16、C16−C17、もしくはC17−C18の位置において炭素二重結合を含む。いくつかの実施形態において、上記9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体は、最大約1兆分の1までの炭素14を含む。
【0020】
上記に記載される本発明の利点は、さらなる利点とともに、添付の図面とともに考慮して、以下の説明を参照することによって、理解され得る。図面は、必ずしも同一縮尺ではなく、代わりに、本発明の原理を図示する際に、強調が一般になされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1−1】図1は、芳香族アミノ酸生合成の一般の経路およびcis,cis−ムコン酸を3−デヒドロシキメートから合成する分岐経路(divergent pathway)を示す。
【図1−2】図1は、芳香族アミノ酸生合成の一般の経路およびcis,cis−ムコン酸を3−デヒドロシキメートから合成する分岐経路を示す。
【図2】図2は、ドデカン二酸合成の実施形態のプロセスフロー模式図を示す。図2は、対称性Δオクタデセン二酸を形成する自己メタセシス反応およびその後の3−ヘキセン二酸との交差メタセシス反応を示す。
【図3】図3は、自己メタセシス反応の際の二重結合移動の効果を示す。
【図4】図4は、交差メタセシス反応の際の二重結合移動の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明の局面は、ドデセン二酸およびその誘導体ならびに/もしくはドデカン二酸およびその誘導体を生成するための方法および組成物に関する。いくつかの局面において、本発明は、ドデセン二酸を3−ヘキセン二酸およびオクタデセンジオエートから生成するための方法および組成物に関する。好ましい実施形態において、ドデセン二酸は、ヘキセン二酸ジメチルおよびオクタデセン二酸ジメチルから生成される。好ましい実施形態において、ドデセン二酸ジメチルの還元は、ドデカン二酸ジメチルを生じる。本明細書で使用される場合、用語、ヘキセン二酸およびヘキサンジオエート(hexenedioate)は、交換可能に使用され、6個の炭素原子、8個の水素原子、および4個の酸素原子を含み、式:HOOC−CH−CH=CH−CH−COOHを有する分子をいう。本明細書で使用される場合、用語、ドデセン二酸およびドデセンジオエートは、交換可能に使用され、12個の炭素原子、20個の水素原子および4個の酸素原子を含み、式:HOOC−CH−CH=CH−(CH−COOHを有する分子をいう。本明細書で使用される場合、用語、ドデカン二酸およびドデカン二酸(dodecanedioic acid)は、交換可能に使用され、12個の炭素原子、22個の水素原子および4個の酸素原子を含み、式:HOOC−(CH10−COOHを有する分子をいう。
【0023】
いくつかのマルチステップ化学プロセスが、ドデカン二酸を、通常は、シクロヘキサノン、シクロドデカジエンもしくはシクロドデカトリエンから生成するために使用されてきた。ドデカン二酸は、過酸化水素および酢酸を使用して、その対応するエポキシ化合物(これは、後に水素化されて、アルコールを形成し、酸化されて、所望の生成物を形成する)を形成する、1,5,9 シクロデカトリエンのエポキシ化から生成され得る。別の化学プロセスにおいて、上記ドデカン二酸は、有機性ヒドロペルオキシドで1,5,9 シクロデカトリエンをエポキシ化して、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを形成し、その後この化合物をドデカン二酸へ酸化可能なシクロ誘導体へ変換することによって調製される。いくつかの局面において、本発明は、ジカルボン酸、オキソ化合物(例えば、オキソアルデヒドおよびオキソエステル)の生成のための代替出発材料として、油もしくは脂肪およびムコン酸を使用する。
【0024】
本明細書で使用される場合、語句「好ましい」および「好ましくは」とは、特定の状況下で、特定の利益を与える本発明の実施形態に言及する。しかし、他の実施形態もまた、同じもしくは他の状況下で好ましい可能性がある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを意味せず、他の実施形態を本発明の範囲から排除することを意図しない。
【0025】
単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「上記、この、その(the)」は、文脈が明らかに別のことを示さなければ、複数形への言及を含む。
【0026】
用語「含む、包含する、構成する(comprise)」および「含む、包含する、構成する(comprising)」は、包括的な開放系の意味で使用され、さらなる要素が含まれ得ることを意味する。
【0027】
用語「含む、包含する、挙げられる(including)」は、「〜が挙げられるが、これらに限定されない」を意味するために使用される。「含む、包含する、挙げられる」および「〜が挙げられるが、これらに限定されない」は、交換可能に使用される。
【0028】
本明細書で使用される場合、以下の用語および語句は、以下に示される意味を有するものとする。別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0029】
本明細書で記載される任意の数値は、下側の値から上側の値までの全ての値を含む。本明細書で列挙される下限値から上限値の間の数値の全ての考えられる組み合わせは、本願に明示的に含められる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「アルデヒド」とは、以下の式を有するカルボニル含有官能基をいい:
【0031】
【化1】

ここでRは、実質的に任意の基であり、例を挙げると、脂肪族、置換された脂肪族、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「脂肪族」とは、実質的に炭化水素ベースの化合物、もしくはそのラジカル(例えば、ヘキサンラジカルについてはC13)をいい、アルカン、アルケンおよびアルキンが挙げられ、さらには、直鎖および分枝鎖の配置、ならびに全ての立体異性体および位置異性体を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」とは、一般式:C2n+1を有する同族シリーズにおける鎖に配置された炭化水素をいう。アルキル置換基としては、メチル(CH−)、エチル(C−)、プロピル(C−)、ブチル(C−)、ペンチル(C11−)などが挙げられる。アルキル基の構造は、そのアルカン対応物のものに似ているが、水素原子が1個少ない。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」とは、環構造を有する別の基(具体的には、他の有機基)に結合される置換基として、実質的に炭化水素ベースの芳香族化合物もしくはそのラジカル(例えば、C)をいい、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセンなどが挙げられる。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「アリールアルキル」とは、脂肪族構造および芳香族構造の両方を含む、別の基(具体的には、他の有機基)に結合される置換基としての化合物、もしくはそのラジカル(例えば、トルエンについてはC)をいう。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「カルボン酸」とは、式:R-COOHを有する化合物であって、ここでRは、実質的に任意の基(例を挙げると、脂肪族、置換された脂肪族、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールなどが挙げられるが、これらに限定されない)であり得る化合物をいう。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「環式の」とは、実質的に炭化水素の閉環した化合物もしくはそのラジカルをいう。環式化合物もしくは置換基はまた、不飽和の1個以上の部位を含み得る。例示的な環式化合物は、代表的には、3個以上、より代表的には、4個以上、およびさらにより代表的には、5個以上の炭素原子をその環の中に有する化合物を含み、シクロペンタン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、およびこれらの結合体化誘導体(例えば、カルボニル官能基(例えば、カルボン酸)、アミドおよびエステルと結合体化したオレフィンを有する化合物)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「誘導体」とは、親化合物とは化学構造が異なる分子をいう。誘導体の例としては、親とは化学構造が少しずつ(incrementally)異なるホモログ(例えば、脂肪族鎖の長さの差異);分子フラグメント;親化合物とは1種以上の官能基だけ異なる構造(例えば、親の1個以上の官能基を変換することによって(例えば、親分子の酸官能基を酸ハライド、アミドもしくはエステルへと変化させることによって)作製され得る);親のイオン化状態の変化(例えば、酸を、その共役塩基へイオン化する);異性体(位置異性体、幾何異性体、および立体異性体が挙げられる);ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「エステル」とは、以下の式を有する化合物をいい:
【0040】
【化2】

ここでRおよびR’は、実質的に任意の基(脂肪族、置換された脂肪族、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールなどが挙げられる)から独立して選択される。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリール」とは、別の基(具体的には、他の有機基)に結合される置換基としての芳香族の閉環した化合物もしくはそのラジカルであって、上記芳香族環中の少なくとも1個の原子が炭素以外(例えば、酸素、硫黄および/もしくは窒素)であるものをいう。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「複素環式の」とは、別の基(具体的には、他の有機基)に結合される置換基としての環式の(すなわち、閉環した)脂肪族化合物もしくはそのラジカルであって、上記環構造中の少なくとも1個の原子が炭素以外(例えば、酸素、硫黄および/もしくは窒素)であるものをいう。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「ケトン」とは、以下の式を有する化合物をいい:
【0044】
【化3】

ここでRおよびR’は、実質的に任意の基(脂肪族、置換された脂肪族、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールなどが挙げられるが、これらに限定されない)から独立して選択される。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「低級の」有機化合物とは、10個以下の炭素原子を鎖(全ての分枝バリエーションもしくは立体化学バリエーションを含む)中に有する有機化合物もしくはそのラジカルをいい、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルが挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「置換された」とは、代表的には、水素原子の代わりに、第2の原子、置換基、官能基などが結合した基本的化合物(例えば、脂肪族、アリール、アリール脂肪族、複素環式、ヘテロアリール、もしくはヘテロアリール脂肪族化合物)またはそのラジカルに言及する。例えば、置換されたアリール化合物もしくは置換基は、上記アリールベース閉じた環に結合した脂肪族基を有し得る(例えば、トルエンに関しては、ベンゼンの水素原子の代わりに置換されたメチル基を有する)。繰り返し、単に、限定せずに例示すると、長鎖炭化水素は、限定せずに、これに結合した原子もしくは置換基(例えば、ハライド、ヘテロ原子、官能基、アリール基、環式基、ヘテロアリール基もしくは複素環式基)を有し得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「不飽和脂肪酸」とは、アルケン鎖と末端カルボン酸基とを有する化合物をいう。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「不飽和ジカルボン酸」とは、非分枝状炭素鎖(これはまた、上記炭素鎖の中に少なくとも1個の二重結合を含む)の各末端にカルボン酸を有する化合物をいう。
【0049】
(ムコン酸)
本発明の説明は、用語「ムコネート」および「ムコン酸」を使用する。用語「ムコン酸」とは、両方のカルボン酸官能基がプロトン化された化学種に言及し、上記分子は、正式には、中性種である。用語「ムコネート」とは、上記カルボン酸官能基のうちの一方もしくは両方が、脱プロトン化されて、アニオン性もしくは二重にアニオン性の形態のムコン酸(生理学的pH値において主な化学種である)を与える化学種をいう。しかし、用語「ムコン酸」および「ムコネート」が同じ分子のプロトン化形態もしくは脱プロトン化形態をいうので、この用語は、上記分子のプロトン化形態と脱プロトン化形態(例えば、非イオン化形態とイオン化形態)との間の差異が有用に区別されない場合に、類義語として使用される。
【0050】
ヘキサ−2,4−ジエン二酸には、3種の異性体が存在する(一般には、ムコン酸といわれ:これらは、trans,trans(2E,4E)異性体、cis,trans(2Z,4E)異性体およびcis,cis(2Z,4Z)異性体である):
【0051】
【化4】

Cis cis−ムコン酸およびtrans,trans−ムコン酸は、少量で(例えば、Sigma−Aldrichから)市販されているが、極めて高価である。しかし、cis,cis−ムコン酸はまた、数種の細菌によって、芳香族化合物の酵素分解を通じて生成される。いくつかの実施形態において、cis,cis−ムコン酸は、米国特許第5,487,987号および同第5,616,496号(これらは、本明細書に参考として援用される)に開示されるように、特定の細菌で生物学的に合成される。産業スケールの量のcis,cis−ムコン酸は、このような生合成によって生成され得る。cis,cis−ムコン酸を生合成し得る細菌は、芳香族アミノ酸生合成の内因性の共通する経路を有する属のメンバーである。このような細菌としては、Escherichia属、Klebsiella属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Arthrobacter属、Bacillus属、Pseudomonas属、Streptomyces属、Staphylococcus属、もしくはSerratia属に属する原核生物が挙げられる。真核生物宿主細胞もまた、特に、Saccharomyces属もしくはSchizosaccharomyces属の酵母が、利用され得る。
【0052】
適切な原核生物種としては、Escherichia coli、Klebsiella pneumonia、Corynebacterium glutamicum、Corynebacterium herculis、Brevibacterium divaricatum、Brevibacterium lactofermentum、Brevibacterium flavum、Bacillus brevis、Bacillus cereus、Bacillus circulans、Bacillus coagulans、Bacillus lichenformis、Bacillus megaterium、Bacillus mesentericus、Bacillus pumilis、Bacillus subtilis、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas angulata、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas tabaci、Streptomyces aureofaciens、Streptomyces avermitilis、Streptomyces coelicolor、Streptomyces griseus、Streptomyces kasugensis、Streptomyces lavendulae、Streptomyces lipmanii、Streptomyces Iividans、Staphylococcus epidermis、Staphylococcus saprophyticus、およびSerratia marcescensが挙げられる。適切な真核生物種としては、Saccharomyces cerevisiaeおよびSaccharomyces carlsbergensisが挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態において、上記方法は、生体源由来のムコン酸の、市販の再生可能な炭素源からの微生物生合成を含む(例えば、米国特許第5,616,496号(これは本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。本明細書で使用される場合、用語「生物源由来の」とは、非生物学的プロセス(例えば、合成による化学プロセス)とは対照的に、生物学的プロセスを使用して得られる材料に言及する。例えば、「生物源由来の」ムコン酸は、発酵可能な炭素源を利用する発酵プロセスから得られる。「生物源由来の」化合物もしくは生成物は、全体として、もしくは一部は、生体源由来の材料から構成される生成物に言及する。いくつかの実施形態において、本発明において使用するための好ましい宿主細胞は、炭素源をD−エリスロース−4−ホスフェート(E4P)およびホスホエノールピルベート(PEP)に変換し得る。いくつかの実施形態において、E4PおよびPEPは、その後、最終的に芳香族アミノ酸を生成する代謝経路を介してアミノ酸へと変換される。発酵可能な炭素源は、D−エリスロース4−ホスフェート(E4P)およびホスホエノールピルベート(PEP)(芳香族アミノ酸生合成の共通する経路への2種の前駆化合物)に生体触媒により変換され得る本質的に任意の炭素源を含み得る。適切な炭素源としては、バイオマス由来の再生可能な資源(例えば、デンプン、セルロース、ポリオール(例えば、グリセロール)、ペントース糖(例えば、アラビノースおよびキシロース)ヘキソース糖(例えば、グルコース)、およびフルクトース、ジサッカリド(例えば、スクロースおよびラクトース)、ならびに微生物代謝を支援し得る他の炭素源(例えば、一酸化炭素)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な炭素源は、グルコース、グリセロール、スクロース、キシロースおよびアラビノースが挙げられる。一実施形態において、D−グルコースは、バイオマス由来の炭素源である。
【0054】
本発明における使用に適した宿主細胞としては、芳香族化合物(例えば、アミノ酸)の生合成において所望の中間体の生物学的生成に利用され得る属のメンバーが挙げられる。いくつかの実施形態において、このような宿主細胞は、産業的に有用な芳香族化合物、およびこのような有用な化合物をもたらす中間体の産業スケールでの生合成もしくは生物学的生成に適している。芳香族アミノ酸生合成の経路における1つの中間体は、3−デヒドロシキメート(DHS)である。特に、適切な宿主細胞は、少なくともDHSの生成に機能する芳香族アミノ酸生合成の内因性の共通する経路を有し得る。芳香族アミノ酸の生合成に共通の経路は、広く種々の微生物において内因性であり、種々の芳香族化合物の生成に使用され得る。特定の実施形態において、3−デヒドロシキメート(DHS)の、コリスメート(chorismate)への変換をブロックする変異を有する栄養要求性細胞株が使用される。このような変異体は、シキメートデヒドロゲナーゼ、シキメートキナーゼ、EPSPシンターゼもしくはコリスメートシンターゼをコードする遺伝子のうちの1種以上に変異を有する。これら変異体は、上昇した細胞内レベルのDHSを蓄積させる。適切な変異細胞株としては、Escherichia coli AB2834株、AB2829株、およびAB2849株、が挙げられる。
【0055】
例えば、E. coli AB2834は、シキメートデヒドロゲナーゼをコードするaroE遺伝子座に変異を有するので、上記細胞が、DHSをシキミ酸へ変換しないようになる。結果として、芳香族アミノ酸生合成へと指向される炭素の流れは、DHSより先には進まない。同様に、E.coli AB2829は、DHSを蓄積させる。なぜなら、それは、EPSPシンターゼをコードするaroA遺伝子座における変異に起因して、シキメート3−ホスフェート(S3P)を5−エノールピルビルシキメート(enoipyruvylshikimate)−3−ホスフェート(EPSP)に変換できないからである。E.coli AB2849は、コリスメートシンターゼをコードするaroC遺伝子座における変異に起因して、EPSPをコリスミン酸へ変換することを触媒できない。このことはまた、DHSの細胞内レベルの増加を生じる。
【0056】
宿主細胞は、細胞内DHSが、カテコール(これは、その後、ムコン酸へと変換され得る)への生体触媒による変換(biocatalytic conversion)のための基質として使用され得るように、形質転換され得る。例えば、宿主細胞は、組換えDNAで形質転換されて、炭素の流れを、DHSが生成された後の芳香族アミノ酸生合成の共通する経路から外して、ムコン酸を生成するための分岐経路に入るようにし得る。
【0057】
炭素の流れを上記分岐経路へと指向するために宿主細胞を形質転換するための機構は、3−デヒドロシキメートデヒドラターゼ、プロトカテキュエートデカルボキシラーゼ、およびカテコール1,2−ジオキシゲナーゼをコードする発現可能な配列を含む遺伝的エレメントの挿入を包含し得る。利用される正確な機構に関係なく、これら酵素活性の発現は、上記宿主細胞への組換え遺伝的エレメントの移入によってもたらされるかもしくは媒介されることが予期される。本明細書で定義される場合、遺伝的エレメントは、生成物(例えば、タンパク質、アポプロテイン、もしくはアンチセンスRNA(これらは、経路を酵素的に機能するように実行し得るかもしくは制御し得る)についての発現可能なコード配列を有する核酸(一般には、DNAもしくはRNA)を含む。その発現されるタンパク質は、酵素として機能し得るか、酵素活性を抑制し得るかもしくは抑制を解除して活性化し得るか、または酵素の発現を制御し得る。これら発現可能な配列をコードする核酸は、染色体(例えば、宿主細胞染色体に組み込まれる)もしくは染色体外(例えば、プラスミド、コスミドなどによって保持される)のいずれかにあり得る。
【0058】
本発明の遺伝的エレメントは、プラスミド、コスミド、ファージ、酵母人工染色体、もしくは宿主細胞への上記遺伝的エレメントの移入を媒介する他のベクターによって宿主細胞へと導入され得る。これらベクターは、上記ベクター、および上記ベクターによって保持される上記遺伝的エレメントの複製を制御するシス作用性制御エレメントとともに、複製起点を含み得る。選択マーカーは、上記遺伝的エレメントが導入された宿主細胞の同定を補助するためにベクターに存在し得る。例えば、選択マーカーは、特定の抗生物質(例えば、テトラサイクリン、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、もしくはネオマイシン)に対する耐性を付与する遺伝子であり得る。
【0059】
遺伝的エレメントを宿主細胞に導入することは、染色体外マルチコピープラスミドベクター(この中に遺伝的エレメントが挿入される)を利用し得る。プラスミドによってもたらされる宿主細胞への上記遺伝的エレメントの誘導は、制限酵素でのプラスミドの最初の切断、続いて、上記プラスミドと本発明に従う遺伝的エレメントとの連結を包含する。上記連結される組換えプラスミドの再環化の際に、プラスミド移入のための他の機構(例えば、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションなど)の形質導入が、上記宿主細胞へ上記プラスミドを移入するために利用される。遺伝的エレメントを上記宿主細胞へ挿入するために適したプラスミドとしては、pBR322、およびその誘導体(例えば、pAT153、pXf3、pBR325、pBr327、pUCベクター)、pACYCおよびその誘導体、pSC101およびその誘導体、ならびにColE1が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、コスミドベクター(例えば、pLAFR3)もまた、宿主細胞への遺伝的エレメントの挿入に適している。プラスミド構築物の例としては、p2−47、pKDS.243A、pKD8.243B、およびpSUaroZY157−27(これらは、Klebsiella pneumoniaeから単離されたaroZ遺伝子座およびaroY遺伝子座(それぞれ、3−デヒドロシキメートデヒドラターゼおよびプロトカテキュエートデカルボキシラーゼをコードする)を有する)が挙げられるが、これらに限定されない。プラスミド構築物のさらなる例としては、pKDS.292(これは、カテコール1,2−ジオキシゲナーゼをコードするAcinetobacter calcoaceticus catAに対して内因性の遺伝子フラグメントを有する)が挙げられる。
【0060】
宿主細胞を形質転換するための方法はまた、芳香族アミノ酸生合成の共通経路への炭素の提供を増大させる酵素をコードする遺伝子の挿入を包含し得る。遺伝子の発現は、それ自体のプロモーターによって主に指向されるが、他の遺伝的エレメント(選択肢的な発現制御配列(例えば、リプレッサー、およびエンハンサー)を含む)が、タンパク質、アポタンパク質、もしくはアンチセンスRNAのコード配列の発現もしくは抑制を制御するために含まれ得る。さらに、組換えDNA構築物は、上記遺伝子の天然のプロモーターが、上記遺伝子生成物の発現を増大させるために代わりのプロモーターで置換されることによって生成され得る。プロモーターは、構成性もしくは誘導性のいずれかであり得る。構成性プロモーターは、細胞の寿命の間に一定割合で遺伝子の転写を制御するのに対して、誘導性プロモーター活性は、特定の誘導因子の存在(もしくは非存在)によって決定されるように変動する。例えば、制御配列は、野生型宿主細胞に挿入されて、上記宿主細胞ゲノムにおいて既にコードされた選択された酵素の過剰発現を促進し得るか、または代わりに、染色体外にコードされた酵素の合成を制御するために使用され得る。
【0061】
DHSの過剰発現を促進するための制御配列が使用され得る。先に示されるように、DHSは、ペントースホスフェート経路酵素であるトランスケトラーゼ(tktによってコードされる)とともに、3−デオキシ−D−アラビノヘプツロン酸 7−ホスフェート(DAHP)シンターゼ(aroFによってコードされる)および3−デヒドロキネート(DHQ)シンターゼ(aroBによってコードされる)のチロシン感受性アイソザイムの一連の触媒活性によって共通経路において合成される。これら生合成酵素の発現は、D−グルコースをDHSへ変換するのを増大させるために増幅され得る。DAHPシンターゼ(上記共通経路の第1の酵素である)のインビボ触媒活性を増大させると、芳香族生合成へと指向されるD−グルコース等価物の流れが増大する。しかし、DAHPシンターゼ触媒活性のあるレベルは達成されるものの、これを超えて、さらなる改善が芳香族生合成に与えられるD−グルコースの割合において達せいされない。芳香族アミノ酸生合成のこの制限レベルにおいて、ペントースホスフェート経路酵素であるトランスケトラーゼの触媒レベルの増幅は、上記経路へと吸い上げられるD−グルコースの割合においてかなりの増大を達成する。
【0062】
増幅されたトランスケトラーゼ活性は、D−エリスロース 4−ホスフェート濃度を増大させ得る。DAHPシンターゼの2つの基質のうちの1つとして、制限されたD−エリスロース 4−ホスフェート利用性が、DAHPシンターゼ触媒活性を制限し得る。従って、DAHPシンターゼ、DHQシンターゼおよびDHQデヒドラターゼの触媒活性を増大させるための1方法は、これら酵素をコードする組換えDNA配列で上記微生物触媒を形質転換することによって、上記酵素種を過剰発現することである。
【0063】
DAHPシンターゼおよびトランスケトラーゼの増幅された発現は、芳香族アミノ酸生合成の共通経路へと指向される炭素の流れのサージ(この経路へと指向される通常の炭素の流れより多い)を作り出し得る。上記共通芳香族アミノ酸経路における個々の酵素によって触媒される生成物への個々の基質の変換率が、DAHP合成の速度より低い場合、これら律速酵素の基質が、細胞内に蓄積し得る。
【0064】
微生物(例えば、E.coli)は、その外部環境(例えば、バルク発酵培地)へとこのような基質をエクスポートすることによって蓄積した基質にうまく対処する。このことは、上記共通経路からの炭素の流れの損失を生じる。なぜなら、エクスポートされた基質は、代表的には、上記微生物の代謝を受けないからである。DHQシンターゼは、律速共通経路酵素の一例である。DHQシンターゼの増幅された発現は、この酵素の上記律速の特徴を取り除き、DAHPその非リン酸化アナログであるDAHの蓄積を防止する。DHQデヒドラターゼは、律速性ではない。従って、aroFによってコードされるDAHPシンターゼ、tktによってコードされるトランスケトラーゼおよびaroBによってコードされるDHQシンターゼの増幅された発現は、DHSの生成を増大させ、上記DHSは、DHSデヒドラターゼおよびプロトカテキュエートデカルボキシラーゼの存在下でカテコールに変換され、上記カテコールは、その後、cis,cis−ムコン酸へと生体触媒により変換される。
【0065】
従って、本発明の好ましい実施形態として、DHSデヒドラターゼ、プロトカテキュエートデカルボキシラーゼ、およびカテコール1,2−ジオキシゲナーゼをコードする遺伝子を発現するEscherichia coliの異型株を構築したところ、cis,cis−ムコン酸へのD−グルコースの生体触媒による変換が可能になった。DHSへのD−グルコースの効率的変換を、pKD136での上記宿主細胞の形質転換の際に達成した。次いで、上記株E.coli AB2834/pKD136を、プラスミドpKD8.243AおよびpKDS.292で形質転換した。その結果は、上記酵素、3−デヒドロシキメートデヒドラターゼ(aroZ)、プロトカテキュエートデカルボキシラーゼ(aroY)およびカテコール1,2−ジオキシゲナーゼ(catA)を発現するE.coli AB2834/pKD136/pKDS.243A/pKDS.292であった。この細菌細胞株を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(12301 Parklawn Drive,Rockville MD 20852)に、1995年8月1日に寄託し、アクセッション番号69875が割り当てられた。
【0066】
別の実施形態において、E.coli AB2834/pKD136は、プラスミドp2−47およびpKD8.292で形質転換されて、E.coli AB2834/pKD136/p2−47/pKDS.292を生成する。別の実施形態において、E.coli AB2834/pKD136は、プラスミドpKD8.243BおよびpKDS.292で形質転換されて、E.coli AB2834/pKD136/p2−47/pKDS.292を生成する。これら異型宿主細胞株の各々は、D−グルコースをcis,cis−ムコン酸へ変換することを触媒する。合成されたcis,cis−ムコン酸は、細胞外に蓄積し、上記細胞から分離され得る。その後、上記cis,cis−ムコン酸は、cis,trans−ムコン酸へ、そして所望であれば、さらにtrans,trans−ムコン酸へと異性化され得る。
【0067】
従って、本発明のいくつかの局面は、芳香族アミノ酸生合成の内因性の共通経路を有する宿主細胞の形質転換体に関する。上記形質転換体は、3−デヒドロシキメートデヒドラターゼ、プロトカテキュエートデカルボキシラーゼ、およびカテコール1,2−ジオキシゲナーゼをコードする異種遺伝子の構成的発現によって特徴付けられる。一実施形態において、上記細胞形質転換体は、上記酵素、トランスケトラーゼ、DAHPシンターゼ、およびDHQシンターゼをコードする発現可能な組換えDNA配列でさらに形質転換される。別の実施形態において、上記宿主細胞は、変異細胞株(3−デヒドロシキメートをコリスメートへ変換するのをブロックするアミノ酸生合成の共通経路における変異を有する変異を含む)の群から選択される。さらに別の実施形態において、3−デヒドロシキメートデヒドラターゼおよびプロトカテキュエートデカルボキシラーゼをコードする上記遺伝子は、Klebsiella pneumoniaeに対して内因性である。さらなる実施形態において、カテコール1,2−ジオキシゲナーゼをコードする上記異種遺伝子は、Acinetobacter calcoaceticusに対して内因性である。
【0068】
図1に示されるように、上記分岐経路における中間体は、プロトカテキュエート、カテコール、およびcis,cis−ムコン酸である。プロトカテキュエートへのDHSの生体触媒による変換を担う酵素は、酵素3−デヒドロシキメートデヒドラターゼ(図1において「aroZ」と表示)である。カテコールを形成するためのプロトカテキュエートの上記脱カルボキシル化を担う酵素は、プロトカテキュエートデカルボキシラーゼ(図1において「aroY」と表示)である。最後に、cis,cis−ムコン酸を生成するためにカテコールの酸化を触媒する酵素は、カテコール1,2−ジオキシゲナーゼ(図1において「catA」と表示)である。標準的表記法によれば、これら酵素の発現のための遺伝子は、斜体を使用して示されるので、それぞれ、aroZ、aroY、およびcatAである。上記cis,cis−ムコン酸は、その後、異性化され得る(示さず)。本発明の一実施形態において、宿主細胞は、上記遺伝子、aroZ、aroY、およびcatAの構成的発現を示し得る。別の実施形態において、宿主細胞は、上記遺伝子、aroZ、aroYおよびcatAのうちのいずれか1つ以上;またはそれらのうちの2つのいずれの組み合わせの構成的発現を示し得る。さらに別の実施形態において、宿主細胞は、aroZ、aroYおよびcatAのうちのいずれの構成発現をも示さない可能性がある。
【0069】
上記酵素、3−デヒドロシキメートデヒドラターゼおよびプロトカテキュエートデカルボキシラーゼは、微生物(例えば、Neurospora、Aspergillus、Acinetobacter、Klebsiella、およびPseudomonas)が芳香族(ベンゾエートおよびp−ヒドロキシベンゾエート)ならびにヒドロ芳香族(シキメートおよびキネート(quinate))を、増殖のための唯一の炭素源として使用することができるオルト切断経路から補充される。DHSデヒドラターゼは、キナ酸およびシキミ酸の微生物異化作用において重要な役割を果たす。プロトカテキュエートデカルボキシラーゼは、Klebsiella aerogenesによるp−ヒドロキシベンゾエートの異化作用の間に、プロトカテキュエートをカテコールに変換するのを触媒するように、Patelによって処方された。Patelの株(現在では、Enterobacter aerogenesといわれている)の再試験[(a)Grant,D.J.W.;Patel,J.C. Antonie van Leewenhoek 1969,35,325。(b)Grant,D.J.W. Antonie van Leewenhoek 1970,36,161]から、近年、Ornstonがプロトカテキュエートデカルボキシラーゼは、p−ヒドロキシベンゾエートの異化作用において代謝的に重要ではなかったと結論づけている[Doten,R.C.;Ornston,N.J.Bacteriol.1987,169,5827]。
【0070】
(再生可能な化合物)
少なくとも1個の炭素原子を含む目的の化合物(例えば、ムコン酸、ドデカン二酸、ドデセン二酸、3−ヘキセン二酸および再生可能な生物学的に得られる炭素源から生成されるこれらの誘導体)は、植物によって組み込まれた大気の二酸化炭素に由来する(例えば、炭素源(グルコース、スクロース、グリセリン、もしくは植物性油)に由来する)炭素から構成される。従って、このような化合物は、それらの分子構造中に、化石燃料ベースもしくは石油ベースの炭素ではなく、再生可能な炭素を含む。よって、上記生体源由来のドデカン二酸もしくはドデカン二酸から合成された生成物、および関連誘導体生成物は、従来の方法によって生成されたドデカン二酸および関連生成物より小さい炭素フットプリントを有する。なぜなら、それらは、化石燃料も石油備蓄も枯渇させず、かつ炭素循環中の炭素量を増大させない(例えば、生活環分析は、地球全体の炭素バランスに対する正味の炭素増加を示さない)。
【0071】
上記生体源由来のドデカン二酸および関連生成物、ならびにその出発化合物(例えば、ムコン酸)もしくは中間体生成物(例えば、3−ヘキセン二酸)は、当該分野で公知の方法(例えば、)デュアル炭素同位元素フィンガープリンティング(dual carbon−isotopic finger printing)によって、化石燃料もしくは石油化学炭素源から生成される生成物から区別され得る。この方法は、別の方法で化学的に同定された材料を区別し得、14Cおよび13C同位体比を使用して、生物学的供給源 対 非生物学的供給源による、上記材料中の炭素原子を区別する。炭素同位体14Cは不安定であり、5730年の半減期を有する。上上記安定な13C同位体に対する記不安定な14C同位体の相対量を測定すると、化石(死んで久しい)供給原料と生物圏の(生きた、従って再生可能な)供給原料との間の試料炭素を区別することができる(Currie,L.A.「Source Apportionment of Atmospheric Particles」,Characterization of Environmental Particles,J.Buffle and H.P.van Leeuwen,Eds., 1 of Vol.I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc)(1992)3−74を参照のこと)。放射性炭素年代決定における基本的仮定は、大気中の14C濃度の定常性が、生きている生物における14Cの定常性をもたらすということである。
【0072】
単離されたサンプルを取り扱う場合、サンプルの経年数は、以下の関係によっておよそ導き出され得る:t=(−5730/0.693)ln(A/A) ここでt=経年数であり、5730年は、上記不安定な14C同位体の半減期であり、AおよびAは、それぞれ、上記サンプルのおよび現代基準の比14C放射能である(Hsieh,Y.,Soil ScL Soc.Am J.,56,460,(1992))。しかし、1950年以来の大気圏核実験、および1850年以来の化石燃料の燃焼が原因で、14Cは、第2の地球化学時間特徴を獲得した。大気中CO中のその濃度、従って、生きている生物圏における濃度は、核実験のピーク時(1960年代半ば)の約2倍になってしまっている。上記大気中CO中のその濃度は、そのとき以来、7〜10年のおよその弛緩半減期(relaxation half−life)で、約1.2×10−12の定常状態宇宙線起源の(大気)ベースライン同位体比(14C/12C)に徐々に戻り続けている(この前者の半減期は、同位体半減期とは区別されねばならない(すなわち、原子力時代の始まり以来、大気中および生物圏中の14Cのバリエーションを追跡するために詳細な大気中核投入量/崩壊関数を使用せねばならない))。上記大気中CO中のその濃度は、最近の生物圏の炭素の年代決定の見込みを提供するこの後者の生物圏中の14C時間特徴である。14Cは、加速器質量分析(AMS)によって測定され得、結果は、現代炭素の分数の単位(units of fraction)で示される(f)。fは、National Institute of Standards and Technology (NIST) Standard Reference Materials (SRMs) 4990Bおよび4990C(それぞれ、シュウ酸標準物質HOxIおよびHOxIIとして公知)によって定義される。上記基本的定義は、0.95×14C/12C同位体比 HOxI(AD 1950を基準にした(referenced to AD 1950))に関する。現在の生きている生物圏(植物材料)に関しては、f≒1.1である。
【0073】
上記安定な炭素同位体13Cおよび12Cの比は、資源の区別および配分に対する補完的手段を提供する。所定の生体源由来の材料における上記13C/12C比は、二酸化炭素が固定される時間における大気中二酸化炭素における13C/12C比の結果であり、正確な代謝経路も反映する。地域的なバリエーションもまた存在する。石油、C植物(広葉)、C植物(草本)、および海洋性炭水化物(marine carbonate)は全て、13C/12Cにおける顕著な差および上記13C値(すなわち、δ13C値)における対応する差を示す。上記13C測定スケールは、ベレムナイト化石(pee dee belemnite)(PDB)石灰岩によるゼロ設定によって最初は定義された。ここで、値は、この材料からの千分率(parts per thousand)偏差で示される。上記δ13C値は、千分率(パーミル(per mil)(‰と省略される))単位であり、以下のように計算される:
δ13C=(13C/12C)サンプル−(13C/12C)標準物質/(13C/12C)標準物質×1000‰ 。
【0074】
上記PDB基準物質(RM)は使い果たされてしまったので、一連の代替RMが、IAEA、USGS、NISTおよび他の選択された国際同位体研究室と協力して開発された。PDBからのパーミル偏差の表記が、δ13Cである。測定値は、COに関して、質量44、45および46の分子イオンに対する高精密安定比重質量分析(IRMS)によって行われる。さらに、C植物およびC植物の脂質物質は、上記代謝経路の結果と同じ植物の炭水化物成分から導き出された材料とは異なって分析する。測定の精密性の範囲内で、13Cは、同位体分画効果に起因して大きな変動を示す。そのうちの最も顕著なものは、本発明に関しては、光合成機構である。植物における上記炭素同位体比における差異の主な原因は、上記植物における光合成炭素代謝の経路における差異、特に、最初のカルボキシル化(例えば、大気中COの最初の固定)の間に生じる反応と密接に関連している。植生の2つの大きなクラスは、C(もしくはCalvin−Benson)光合成経路を組み込むものと、C(もしくはHatch−Slack)光合成経路を組み込むものである。C植物(例えば、硬木および針葉樹)は、温帯気候のゾーンで優勢である。C植物では、主なCO固定もしくはカルボキシル化反応は、酵素、リブロース−1,5−ジホスフェートカルボキシラーゼを必要トシ、第1の安定な生成物は、3個の炭素の化合物である。対照的に、C植物は、熱帯草本、トウモロコシおよびサトウキビのような植物を含む。C植物において、別の酵素であるホスホエノールピルベートカルボキシラーゼを必要とするさらなるカルボキシル化反応が、主なカルボキシル化反応である。第1の安定な炭素化合物は、4個の炭素の酸(これは、その後、脱カルボキシル化される)である。このようにして放出されたCOは、上記C経路によって再固定される。C植物およびC植物はともに、ある範囲の13C/12C同位体比を示すが、代表的な値は、約−10〜−14パーミル(C)および−21〜−26パーミル(C)である(Weberら,J.Agric.Food Chem.,45,2942(1997))。石炭および石油は、一般には、この後者の範囲に入る。
【0075】
従って、本発明の生体源由来のムコン酸、ドデカン二酸、およびドデカン二酸を含む組成物は、14C(f)およびデュアル炭素同位体フィンガープリンティングに基づいて、それらの古代の化石燃料および石油化学由来対応物とは区別され得る。このことは、新たな組成物を示す(例えば、米国特許第7,169,588号、同第7,531,593号、および同第6,428,767号)。これら生成物を区別する能力は、商業上、これら材料を追跡することにおいて有益である。例えば、新たなおよび古い炭素同位体両方のプロフィールを含む生成物は、古代の材料のみから作製された生成物とは区別され得る。従って、上記生体源由来のドデカン二酸および誘導体材料は、それらの独特のプロフィールに基づいて、商業上追跡され得る。
【0076】
従って、少なくとも1個の炭素原子を含む分子もしくは化合物(例えば、ムコン酸もしくはその誘導体、脂肪酸もしくはその誘導体、3−ヘキセン二酸もしくはその誘導体、ドデセン二酸もしくはその誘導体、ドデカン二酸もしくはその誘導体、ジカルボン酸もしくはその誘導体、ポリアミドもしくはその誘導体、ナイロンもしくはその誘導体)が、それらの炭素同位体分布(例えば、14C、13C、もしくは12C)によって、またはそれらの14C/12C比によって記載され得ることが認識される。化合物内の各々の単一の炭素原子が、天然に存在する炭素同位体に由来するので、炭素原子の供給源は、上記化合物の炭素同位体分布もしくは上記14C/12C比に影響を及ぼす。より具体的には、石油化学供給原料から合成される化合物の上記炭素同位体分布もしくは14C/12C比は、再生可能な炭素源から生成された化合物の上記炭素同位体分布もしくは14C/12C比とは区別され得る。その基本的仮定は、大気中の14C濃度の定常性が、生存している生物中の14Cの定常性をもたらすのに対して、無機炭素源(例えば、石油化学供給原料)中では、全ての上記14Cが崩壊してしまっていることである。従って、再生可能な炭素源によって生成される化合物は、無機炭素源から生成される生成物とは区別され得る。いくつかの実施形態において、上記14C/12C比は、放射性炭素および同位体比質量分析を使用して天然の範囲の材料の生体ベースの内容物を決定するASTM試験法 D 6866−05(本明細書に参考として援用される)を使用して測定される。化合物中の上記再生可能に形成している炭素の評価は、標準的試験法を介して行われ得る。放射性炭素および同位体比質量分析を使用して、材料の生体ベースの内容物が決定され得る。ASTM International(正式には、American Society for Testing and Materialsとして公知)は、材料の上記生体ベースの内容物を評価するための確立した標準的方法を有する。上記ASTM法は、ASTM−D6866と称される。この試験法は、サンプル中の上記14C/12C同位体比を測定し、これと、標準の100%生体源由来の材料 対 所定の%生体源由来の上記サンプルの内容物における14C/12C同位体比とを比較する。
【0077】
いくつかの実施形態において、生体源由来のドデカン二酸、ドデセン二酸、3−ヘキセン二酸、ポリアミドを含む上記組成物は、14C分布もしくは14C/12C比を使用して、再生可能でない対応する化合物から区別され得る。いくつかの実施形態において、上記14C/12C比は、再生可能な炭素源に由来する炭素原子の画分を示す。例示的実施形態において、ドデカン二酸を生成するための出発物質は、ムコン酸およびΔ不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸)である。好ましい実施形態において、ムコン酸は、生物学的に得られる炭素源から生成され、上記Δ不飽和脂肪酸は、植物源もしくは動物源から得られる。従って、交差メタセシスから得られたドデカン二酸生成物は、全ての炭素原子が再生可能な炭素源に由来し、古代の炭素(例えば、石炭、石油もしくは天然ガスに由来する炭素)に由来する炭素原子がないことを示す14C/12C比を有する。14Cを含む再生可能な炭素源および放射性炭素を含まない古代の炭素源に由来する出発物質からの化合物の合成は、生体源由来の物質から全体が構成される化合物の14C/12C比と比較した場合に、14C/12C比の減少を生じる。1.2×10−12値が、全体が生体源由来の材料から構成される化合物の14C/12C比を表し、0値が古代の炭素から得られる化合物の14C/12C比に対応すると推測することによって、生体源由来の材料から一部形成される化合物は、1.2×10−12より低い放射性炭素サインもしくはフィンガープリントを有する。例示的実施形態において、ナイロン6,12は、1,6−ヘキサメチレンジアミンおよびドデカン二酸の縮合から生じる。1,6−ヘキサメチレンジアミンが、石油化学供給原料から(例えば、石炭、石油、および天然ガスから)生成され、ドデカン二酸(doceanedioic acid)が、全て生体源由来の材料から形成される場合、上記炭素原子含有量の2/3は、再生可能な炭素源に由来する。ある実施形態において、所望の生成物の14C/12C比は、0より大きいか、0.9×10−12より大きい。いくつかの実施形態において、化合物の上記生体源由来の炭素含有量は分析され得、14Cの量の比が、生体源由来の参照標準のもの(現代の炭素のパーセント)に対して報告され得る。いくつかの実施形態において、生体源由来の生成物の炭素含有量は、100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%である。
【0078】
本発明の局面は、本明細書に記載されるプロセスによって調製される生成物に関する。上記出発ムコン酸がバイオマスから調製されるいくつかの実施形態において、上記プロセスの得られる生成物は、再生可能な資源から得られる炭素の顕著な割合を含む。このような生成物は、独特である。なぜなら、上記生成物は、ASTM D6866−08に従って決定される場合に、検出可能な微量のもしくはある量の炭素14(好ましくは、最大約1兆分の1まで)を含むからである。得られる生成物は、好ましくは、再生可能な資源(例えば、バイオマス(好ましくは、微生物合成による))に由来する3個以上の炭素、より好ましくは、9個以上の炭素、より好ましくは、12個以上の炭素を含む。得られる生成物は、発酵装置制御条件下で、微生物合成によって調製される再生可能な資源から調製される。上記生成物がポリマーを調製するために利用される実施形態において、そのモノマーユニットは、好ましくは、12個以上の炭素(再生可能な資源(例えば、バイオマス)由来)を含む。
【0079】
(ムコン酸誘導体)
本発明のいくつかの局面において、ムコン酸は、3−ヘキセン二酸に還元される。いくつかの実施形態において、組換え宿主細胞培養によって生物学的に生成されるcis,cis−ムコン酸およびその誘導体は、まず、3−ヘキセン二酸に還元される。いくつかの実施形態において、3−ヘキセン二酸は、メタセシス反応において使用されて、所望の化合物を形成する。本発明の範囲内のムコン酸およびムコン酸誘導体を例示する一般式1は、以下に提供される:
【0080】
【化5】

式1を参照すると、R〜Rは、代表的には、脂肪族、置換された脂肪族、アルコキシ、アミノ、アミン、置換されたアミン、保護されたアミン、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、カルボニル含有部分(例えば、アルデヒド、アミド、カルボン酸、エステル、ケトンおよびチオエステル)、環式、置換された環式、エーテル、置換されたエーテル、ハライド、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環式、置換された複素環式、水素、ヒドロキシル、ヒドロキシルアミン、および窒素含有部分(例えば、ニトリル(RCN)、ニトロ(NO)およびニトロソ(RNO))から独立して選択される。好ましくは、R〜Rは、脂肪族、代表的には、低級脂肪族、およびさらにより好ましくは、低級アルキル、ならびに水素から独立して選択される。RおよびRは、最も代表的には、独立して、水素もしくは低級アルキルである。R〜Rは、最も代表的には、水素である。式1、および本明細書中に提供される特定の他の構造式は、全ての考えられる立体異性体がその特定の一般式中に含まれることを示すために、破線とは対照的に、波線によって示される結合を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、ムコン酸から作製される主な誘導体は、(1)共役塩基、(2)親化合物の異性化反応により生成される種々の立体異性体、および/もしくは(3)1個以上のカルボン酸官能基を別の官能基に変換することによって形成される化合物である。いくつかの実施形態において、cis,cis−ムコン酸は、cis,cis−ムコン酸を、微量の要素と共にメタノール中に溶解し、上記反応混合物を光に曝すことによって、trans,trans−ムコン酸に異性化され得る。cis,cis−ムコン酸およびtrans,trans−ムコン酸のメタン溶解度は、実質的に異なる。結果として、trans,trans−ムコン酸は、これが形成してくるにつれて、溶液から沈殿する。
【0082】
いくつかの実施形態において、上記cis,cis−ムコン酸は、当該分野で公知の方法を使用して、cis,trans−ムコン酸へと異性化され得る。上記cis,trans−ムコン酸は、上記cis,cis−異性体もしくはtrans,trans−異性体のいずれよりも、有機溶媒および水性媒体の両方において可溶性が高いので、cis,trans−ムコン酸は、容易な加工処理および回収を可能にする有利な出発化合物であることが認識されるはずである。
【0083】
種々の実施形態において、上記方法は、3−デヒドロシキメートデヒドラターゼ、プロトカテキュエートデカルボキシラーゼおよびカテコール1,2−ジオキシゲナーゼを発現する組換え細胞を、再生可能な炭素源を含む培地中、このような再生可能な炭素源が、上記細胞の芳香族アミノ酸生合成の共通経路において見いだされる酵素によってDHSに変換される条件下で培養する工程を包含し、得られたDHSは、cis,cis−ムコン酸へと生体触媒により変換される。特定の実施形態において、上記発酵ブロスは、発酵容器のような容器中に提供され、異性化反応が、上記容器中で行われ得る。
【0084】
上記再生可能な炭素源の発酵によるcis,cis−ムコン酸の生成は、上記組換え細胞および細胞外cis,cis−ムコン酸を含むブロスを生成し得る。上記生成はまた、上記組換え細胞、細胞細片、不溶性タンパク質および他の所望されない固体を、上記ブロスから分離して、上記発酵によって形成されたcis,cis−ムコン酸の実質的に全てもしくは大部分を含む清澄な発酵ブロスを与える工程を包含し得る。ムコン酸が生成された後、ムコン酸は、上記細胞外培地(例えば、発酵ブロス)中に蓄積し得、遠心分離、濾過もしくは当該分野で公知の他の方法によって、上記細胞から分離され得る。いくつかの実施形態において、cic,cis−ムコン酸は、最初に、cis,trans−ムコン酸へと異性化され、次いで、これは、上記発酵ブロスもしくは無細胞発酵ブロスから、沈殿、抽出、濾過、もしくは当該分野公知の他の方法によって分離される。
【0085】
本発明のいくつかの局面において、上記ムコン酸のカルボン酸官能基は、環付加反応を促進する種々の異なる官能基へと変換される。この変換は、上記環付加反応によって作製される化合物、またはそこから、モノマーとして環付加によって生成される化合物を使用して作製される誘導体もしくはポリマー、あるいは両方の所望の物理的特性を促進する。例示的なカルボン酸官能基変換としては、以下が挙げられる:当業者に公知の適切な試薬(例えば、チオニルクロリド、五塩化リンもしくは五臭化リン(phosphorus pentbromide))を使用する酸ハライド(例えば、酸クロリド)の形成。上記ムコン酸のカルボン酸官能基はまた、エステル(例えば、メチルエステルもしくはエチルエステル)に変換され得る。エステル(特に、低級アルキルエステル)を形成するための方法の例としては、以下が挙げられる:上記アルコール/H プロトコル(例えば、メタノールもしくはエタノールと、触媒性硫酸を使用して、その対応するメチルエステルおよびエチルエステルを形成する(これは実行しやすいが、二重結合異性化が付随する可能性がある);ジアゾメタンでメチル化して、メチルエステルを形成する;または社交プロトコルにおいて上記酸をヨウ化アルキル(例えば、MeI/EtNOH)で処理。好ましい実施形態において、ジメチルエステル誘導体は、cis,cis−ムコン酸から出発して、硫酸ジメチルおよび炭酸カリウムを使用して得られる。
【0086】
以下の表1は、例示的ムコン酸および低級アルキルムコン酸エステル(特に、メチルムコン酸エステルおよびエチルムコン酸エステル)、ならびにそれらの融点および再結晶化による精製に有用な溶媒の部分的列挙を提供する。
【0087】
【表1−1】

【0088】
【表1−2】

(ムコン酸の還元)
以下のスキーム1は、ムコン酸もしくはムコン酸誘導体を、3−ヘキセン二酸もしくはその誘導体(例えば、モノエステルもしくはジエステル)に還元するための方法の一実施形態を図示する。スキーム1に示されるように、上記ムコン酸ジエンは、適切な溶媒(例えば、ピリジン)中で亜鉛ハライド試薬を使用して、3−ヘキセン二酸に還元され得る。Kotoraら,Chem.Lett.,p.236−237(2000)を参照のこと。
【0089】
【化6】

(オレフィンメタセシス)
本明細書で使用される場合、用語「オレフィン」とは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む不飽和化合物をいう。例示的実施形態において、1個の二重結合のみを有し他の官能基がない最も単純なオレフィンは、一般式 C2nを有する同族の一連の炭化水素を形成する。用語「低級オレフィン」とは、約10個未満の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む有機化合物をいう。低級オレフィンは、1個、2個もしくはそれ以上の不飽和結合を有し得る。好ましくは、上記低級オレフィンは、1個の不飽和結合を有する。低級オレフィンは、任意の位置において、上記炭素鎖とともに、1個以上の置換基で置換され得るが、ただし、上記1個以上の置換基は、上記メタセシス反応に関して実質的に不活性である。適切な置換基としては、アルキル(好ましくは、メチル)、ならびにヒドロキシ、エーテル、ケト、およびアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
オレフィンメタセシスは、有機合成において使用される重要な反応である。オレフィンメタセシスはまた、トランスアルキリデン化有機反応として公知であり、アルケン二重結合の切断、後に、アルキレンフラグメントの再分布を必然的に伴う。上記反応は、Yves Chauvin、Richard R.SchrockおよびRobert H.Grubbs(彼らは、2005年にノーベル化学賞を分け合った)によって開発された。オレフィンメタセシス反応は、触媒上有効な量のメタセシス触媒の存在下で進行する。例示的なメタセシス触媒としては、触媒性遷移金属(例えば、ルテニウム、ニッケル、タングステン、オスミウム、クロム、レニウム、およびモリブデン)に基づくメチルカルベン触媒が挙げられる。メタセシス触媒(これは、本発明に従うプロセスにおいて使用され得る)は、当業者に公知でありかつメタセシス反応に適した全てのメタセシス触媒、もしくは少なくとも2種の触媒の混合物である。いくつかの実施形態において、上記オレフィンメタセシス反応は、第1世代のグラブス触媒、上記第1世代グラブスタイプ触媒の変形もしくは誘導体を使用する。他の実施形態において、上記オレフィンメタセシス反応は、第2世代のグラブス触媒、上記グラブスタイプ触媒の変形もしくは誘導体を使用する。グラブス触媒の例としては、ベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウムおよびベンジリデン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムが挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態において、シュロック触媒または上記シュロック触媒の変形もしくは誘導体は、上記メタセシス反応のための触媒として使用される。さらに他の実施形態において、上記触媒は、ホベイダ−グラブス触媒もしくは上記ホベイダ−グラブス触媒の変改である。いくつかの実施形態において、カルベン錯体もしくはカルビン錯体またはこれら錯体の混合物から選択される少なくとも1種のメタセシス触媒が使用される。用語「錯体」とは、本明細書で使用される場合、金属原子と、少なくとも1個の配位子もしくはこれに結合した錯化因子に言及する。メタセシス触媒は、当業者に公知の技術を使用して、使用される。
【0091】
【化7】

スキーム2に図示されるように、3−ヘキセン二酸もしくはその誘導体(例えば、それらの低級アルキルエステル)は、不飽和ジカルボン酸(特に、Δジカルボン脂肪酸)と、メタセシス触媒の存在下で反応させられて、ドデセン二酸を生成し得る。しかし、任意の適切な不飽和脂肪酸が、本発明のプロセスにおいて適切に使用され得る。
【0092】
上記不飽和脂肪酸のアルケン鎖は、直鎖状であっても分枝状であってもよいし、必要に応じて、上記カルボン酸基に加えて、1個以上の官能基を含み得る。例えば、いくつかのカルボン酸は、1個以上のヒドロキシル基を含む。上記アルケン鎖は、代表的には、約4〜約30個の炭素原子、より代表的には、約4〜約22個の炭素原子を含む。多くの実施形態において、上記アルケン鎖は、18個の炭素原子(すなわち、C18脂肪酸)を含む。上記不飽和脂肪酸は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を上記アルケン鎖の中に有し(すなわち、モノ不飽和脂肪酸)、上記アルケン鎖の中に1個より多い二重結合を有し得る(すなわちポリ不飽和脂肪酸)。例示的実施形態において、上記不飽和脂肪酸は、Δ不飽和脂肪酸である。Δ不飽和脂肪酸は、上記不飽和脂肪酸のアルケン鎖の中のC9とC10との間に位置した炭素−炭素二重結合を有する。この位置を決定するにあたって、上記アルケン鎖は、上記不飽和脂肪酸のカルボニル基中の炭素原子始まって番号付けされる。好ましい実施形態において、上記Δ不飽和出発物質は、直鎖のアルケン鎖を有する。Δ不飽和脂肪酸の適切な例としては、ミリストレイン酸、HC(CH3−CH=CH(CHCOOH、パルミトレイン酸、HC(CHCH=CH(CHCOOH、エライジン酸、HC(CHCH=CH(CHCOOHおよびオレイン酸、HC(CHCH=CH(CHCOOHが挙げられるが、これらに限定されず、これらのうちの各々は、C9−C10不飽和結合を有する(Δオレフィン)。多くの実施形態において、有用なΔ不飽和脂肪酸は、天然の油(例えば、植物ベースの油もしくは動物性脂肪)から得られる。再生可能な植物ベースの油の代表例としては、オリーブ油、落花生油、グレープシード油、シーバックソーン(sea buckthorn)油、およびごま油、ポピーシード油、ナツメグバター、パーム油、ココナツ油、マカダミア油、シーバックソーン油が挙げられる。動物性脂肪の代表例としては、ラード脂およびタロウ脂が挙げられる。不飽和脂肪酸は、商業的に得られ得るか、または当業者に公知の方法を使用して、脂肪酸エステルの鹸化によって合成され得る。
【0093】
好ましい実施形態において、ドデセン二酸もしくはその誘導体(例えば、(Z)−ジメチルドデセン二酸)は、図2に示されるように、メタセシス触媒を使用する交差メタセシス反応によって合成される。
【0094】
例示的実施形態において、オレイン酸は、Ngo and Foglia(JAOCS,1985,84:777−784)に記載されるように、2工程合成プロセスにおいてオクタデセン二酸ジメチルに変換される。例えば、オレイン酸は、メタセシス触媒の存在下に置かれて、9−オクタデセン二酸ジメチルを形成する。次いで、オクタデセン二酸は、当該分野で公知の技術を使用して、精製され得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、上記出発物質は、ヘキセン二酸ジメチルおよびオクタデセン二酸ジメチルを含む。オクタデセン二酸ジメチルの存在下でのヘキセン二酸ジメチルの交差メタセシスの後、ドデセン二酸ジメチルが形成される。上記ドデセン二酸は、水素化によってドデカン二酸へと変換されて、上記オレフィンを飽和させ得る。好ましい実施形態において、ドデセン二酸ジメチルは、ドデカン二酸ジメチルを形成するために還元される。好ましい実施形態において、生体源由来のヘキセン二酸ジメチルは、ムコン酸誘導体の還元によって生成される。上記メタセシス反応から得られた生成物は、生体源由来のドデカン二酸ジメチル化合物を含む組成物である。
【0096】
メタセシス反応は、所望のメタセシス生成物を生成するために適切な条件下で行われる。いくつかの実施形態において、メタセシス反応は、不活性雰囲気下で行われ得る。好ましくは、上記不活性雰囲気は、メタセシス触媒に干渉しない不活性ガスである。不活性ガスの例としては、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウムおよびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記メタセシス反応は、任意の所望の圧力下で加工処理される。いくつかの実施形態において、上記メタセシス反応は、触媒を妨げない不活性溶媒中で行われる。例えば、不活性溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼンもしくはトルエン)、ハロゲン化芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素(例えば、メタノール)が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒は、上記反応が全体に混和性でない場合に望ましいことがあり、ともに、適切な溶媒中に溶解され得る。好ましくは、上記溶媒は、熱的に安定でありかつ上記プロセス温度で分解しない。さらに、いくつかの他の実施形態において、メタセシス反応は、無溶媒反応において進行する。上記メタセシス反応は、上記所望の生成物を形成しかつ望ましくない生成物の形成を低下させるように選択された温度で行われる。代表的には、上記温度は、0℃より高いか、20℃より高いか、40℃より高いか、50℃より高い。例示的実施形態において、上記メタセシス反応温度は、約20℃〜約100℃である。例えば、上記プロセス温度は、約45℃〜約50℃であり得る。いくつかの実施形態において、上記メタセシス反応において使用される触媒の量は、上記所望の生成物を形成しかつ望ましくない生成物の形成を低下させるように選択される。例えば、上記二酸 対 上記触媒のモル比は、5:1〜20:1もしくは〜100:1、もしくは〜1,000:1、もしくは〜100,000:1の範囲におよび得る。いくつかの実施形態において、上記反応時間は、約1時間、約2時間、約4時間、約5時間、約10時間、約15時間、もしくはそれ以上である。
【0097】
交差メタセシスの後、上記生成物は、出発物質からおよび上記触媒から分離される。出発物質もしくは他の所望されない生成物から所望の生成物を分離し精製するための有用な技術としては、蒸留、クロマトグラフィー、分別再結晶、液体/液体抽出、もしくはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、上記所望の生成物は、高い程度まで、例えば、90%以上まで精製される。いくつかの実施形態において、上記変換は、ガスクロマトグラフィー−質量分析によってチェックされうる。例えば、上記反応混合物(ヘキセン二酸ジメチルおよびオクタデセン二酸ジメチルの交差メタセシス、ならびにその後の水素化)の濾液は、ガスクロマトグラフィー−質量分析によってチェックされ得、標準的なドデカン二酸ジメチル較正曲線と比較され得る。
【0098】
オレイン酸、オクタデカ−9−エン二酸(octadoc−9−enedioic acid)および上記3−ヘキセン二酸は、カルボキシル末端基もしくはエステル末端基に関して対称性の分子であり、よって、上記オレイン酸の自己メタセシス反応、もしくは上記オクタデカ−9−エン二酸および上記3−ヘキセン二酸の交差メタセシスは、理論的には、非対称性分子が使用された場合より少ない生成物の形成を生じることが認識されるべきである。例えば、3−ヘキセン二酸とオクタデカ−9−エン二酸ジメチルとの交差メタセシスは、理論的には、ドデセン二酸ジメチルのみを形成する。cis異性体もしくはtrans異性体が、このタイプの反応において形成されるか否かは、それらが上記触媒、ならびに新たに形成してくる分子の炭素−炭素二重結合上の置換基の立体に配位する場合に想定される分子の配向によって決定される。
【0099】
メタセシスプロセスのために使用される上記メタセシス触媒が、二重結合移動を促進する場合、すなわち、上記メタセシス触媒が、上記二重結合を、上記不飽和脂肪酸におけるその元の位置から、上記カルボン酸官能基に近いもしくはそこからさらに離れた位置のいずれかに移動させる場合、上記メタセシス反応は、ジカルボン酸生成物の混合物を生成する。例えば、上記メタセシス触媒が、上記オクタデカ−9−エンジオエートの中心の二重結合移動を促進して、オクタデカ−8−エンジオエート、オクタデカ−7−エンジオエートおよびオクタデカ−6−エンジオエートなど(図3に示されるように)を形成する場合、これらオクタデセンジオエートは、ヘキセン二酸ジメチルとともに交差メタセシスを受けて、7個の炭素から16個の炭素までの種々の骨格長を有する不飽和脂肪酸ジメチルエステル副生成物(図4に示されるように)を形成する。いくつかの実施形態において、反応条件は、二重結合移動を防止するように改変される。いくつかの実施形態において、低級オレフィン 対 不飽和脂肪酸もしくはその誘導体の比は、二重結合移動を防止するために選択される。一実施形態において、上記ヘキセン二酸ジメチルは、オクタデセン二酸ジメチルより多く添加される。例えば、反応物であるヘキセン二酸ジメチル/オクタデセン二酸ジメチルのモル比は、2:1、3:1、4:1もしくはそれ以上であり得る。他の実施形態において、酸性添加剤は、二重結合移動および望ましくない生成物形成を阻害するために添加される。酸性添加剤の例としては、安息香酸および塩、リン酸および塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明の局面は、ドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体、およびドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体から得られる少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体副生成物を含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、上記ドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体に由来する少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種の副生成物を含む。いくつかの実施形態において、上記少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体副生成物は、約7〜約16個の炭素原子を有するアルケン鎖を含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、上記ドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体に由来する少なくとも9種の副生成物を含み、上記副生成物は、約7〜約16個の炭素原子を有するアルケン鎖を含むを含む。いくつかの実施形態において、上記ドデセン二酸誘導体は、ドデセン二酸ジエステルである。好ましくは、上記アルケン鎖は、C3−C4の位置において炭素二重結合を含む。
【0101】
本発明の他の局面は、9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体、および9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体に由来する少なくとも1種のオクタデセン二酸もしくはオクタデセン二酸誘導体副生成物を含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体に由来する少なくとも1種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも15種、少なくとも16種の副生成物を含む。いくつかの実施形態において、上記オクタデセン二酸もしくはオクタデセン二酸誘導体副生成物は、C1−C2位置、C2−C3位置、C3−C4位置、C4−C5位置、C5−C6位置、C6−C7位置、C7−C8位置、C8−C9位置、C10−C11位置、C11−C12位置、C12−C13位置、C13−C14位置、C14−C15位置、C15−C16位置、C16−C17位置、もしくはC17−C18位置において炭素二重結合を含む。
【0102】
(ポリアミド生成)
本明細書で使用される場合、「ポリアミド」は、アミンとカルボン酸もしくはその誘導体を反応させることによって生成されるアミド結合によって連結されたアミドモノマーを含むポリマーである。上記ポリエステルと同様に、個々のポリアミドは、多くの用途を有し、上記ポリアミドとしては、アラミド、ナイロン、およびポリアスパラギン酸が挙げられる。アラミド(以下に図示される)は、テレフタル酸もしくはその誘導体を重合することによって作製される芳香族ポリアミド(例えば、テレフタロイルクロリド)、およびジアミン(例えば、1,4−フェニルジアミン(パラ−フェニレンジアミン)である。
【0103】
ナイロンは、わずかであるが例を挙げると、ファブリック、楽器の弦、ロープ、ねじおよび歯車を作製するために使用される合成熱可塑性ポリアミドのファミリーについての包括的名称である。ナイロンは、充填剤(例えば、ガラス充填およびポリブデンスルフィド充填の変形)と共に利用することもできる。ナイロン6は、最も一般的な市販グレードの成形ナイロンである。数値の接尾辞は、上記モノマーによって与えられる炭素原子数を特定する;上記ジアミンが最初に、上記二酸が二番目にくる。ナイロン6,6については、上記ジアミンは、代表的には、ヘキサメチレンジアミンであり、上記に酸は、アジピン酸である。これらモノマーのうちの各々は、上記ポリマー鎖に6個の炭素原子を与える。
【0104】
有用なナイロンの別の例は、ナイロン6,12であり、これは、46℃のガラス遷移温度、および310.48g/molの反復ユニットの分子量を有する。ナイロン6,12の構造式は、以下に示される。
【0105】
【化8】

ナイロン6,12を作製するための1方法は、1,6−ヘキサメチレンジアミン HN−(CH−NHおよびドデカン二酸HOOC−(CH10−COOHの重縮合生成物を形成することである(例えば、米国特許第3,903,152号(これは、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。米国特許第3,903,152号は、ドデカン二酸からのナイロン6,12の生成のための方法を提供し、この方法において、20gのドデカン二酸を、20gの水と一緒に70℃へと加熱し、50重量% ヘキサメチレンジアミン水溶液で中和した。次いで、そのpHを8に調節して、50% ナイロン塩水溶液を調製した。次いで、上記ナイロン塩水溶液を、室温から250℃へと、ソルトバス中、窒素雰囲気下で加熱し、続いて、250℃で5時間にわたって常圧下で重合した。WO/2000/009586は、ナイロン6,12を作製するための別の方法を提供する。この文書によれば、ナイロン6,12は、デカン二酸および1,6−ヘキサンジアミン水溶液を水中で、30分間90℃でのオートクレーブにおいて攪拌しながら合わせることによって調製される。その結果、55重量%の塩溶液が得られる。水は、最初に、その温度を10分間で180℃へと上昇させ、半量の水を蒸留によって除去し、次いで、その温度を200℃へと上昇させ、例えば、90重量%の水性塩溶液を得るように、一定量の水を蒸留によって除去することによって、除去される。上記反応器は、完全に閉じられ、上記蒸留は停止され、その温度は227℃へと上昇させられ、重合が始まる。存在する水および高温によって、圧力がゆっくりと上昇する。重合の終了時の圧力は、約12×10Paである。上記プレポリマー化(prepolymerization)は、一定温度で1/2時間の間に行われ、その後、上記オートクレーブの内容物を、窒素雰囲気に当てる(flashed)。上記プレポリマーを窒素雰囲気中で冷却する。得られた上記プレポリマー顆粒を、1〜2mmの間の直径を有する画分が得られるように、ふるいにかける。この画分を、静止ベッド(static bed)(収容力約50gの固体物質)もしくはタンブルドライヤー(収容力約10リットル)のいずれかに導入し、高温(上記ポリマーの融点より約25℃低い)で、窒素/水蒸気(75/25要体積%)雰囲気中、24時間にわたって後濃縮(postcondense)する。次いで、上記ポリマー顆粒を、室温へと冷却した。このようにして調製されたポリマーから、多くのロッドおよびプレートを射出成形した。
【0106】
本発明は、特定の実施形態を参照しながら具体的に示されかつ記載されてきたが、形態および詳細において種々の変化が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行われ得ることは、当業者によって理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドデカン二酸を生成するための方法であって、該方法は、
ムコン酸をヘキセン二酸に還元する工程;
該ヘキセン二酸と、不飽和脂肪酸とをメタセシス反応において反応させて、ドデセン二酸を生成する工程;および
該ドデセン二酸をドデカン二酸に還元する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記不飽和脂肪酸を自己メタセシス反応において反応させて、Δオクタデセン二酸を生成する工程、および前記ヘキセン二酸と、該Δオクタデセン二酸とを反応させて、ドデセン二酸を生成する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ムコン酸を提供する工程であって、ここでムコン酸は、cis,trans−ムコン酸である工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ムコン酸は、再生可能な炭素源から、生体触媒による変換を介して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
3−デヒドロシキメートデヒドラターゼ、プロトカテキュエートデカルボキシラーゼおよびカテコール1,2−ジオキシゲナーゼを発現する組換え細胞を、前記再生可能な炭素源を含む培地中で、該再生可能な炭素源が、該細胞の芳香族アミノ酸生合成の通常の経路における酵素によって3−デヒドロシキメートに変換され、かつ該3−デヒドロシキメートが、cis,cis−ムコン酸に生体触媒により変換される条件下で培養する工程をさらに包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
cis,cis−ムコン酸をcis,trans−ムコン酸に、該cis,cis−ムコン酸の実質的に全てがcis,trans−ムコン酸に異性化される反応条件下でさらに異性化する工程を包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記組換え細胞は、原核生物細胞もしくは酵母細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記原核生物細胞は、Escherichia属、Klebsiella属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Arthrobacter属、Bacillus属、Pseudomonas属、Streptomyces属、Staphylococcus属、もしくはSerratia属に属する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酵母細胞は、Saccharomyces属もしくはSchizosaccharomyces属に属する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記培養する工程は、前記組換え細胞および細胞外ムコン酸を含むブロスを生成し、さらに該組換え細胞を該ブロスから取り出す工程をさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記ムコン酸をヘキセン二酸に還元する工程は、該ムコン酸と、亜鉛ハライドとを反応させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記不飽和脂肪酸は、Δ不飽和脂肪酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記Δ不飽和脂肪酸は、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、エライジン酸、オレイン酸、もしくはこれらの組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
メタセシス触媒を使用する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒は、グラブス触媒である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒は、ベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウムもしくはベンジリデン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ドデセン二酸を水素化して、ドデカン二酸を形成する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ドデカン二酸を使用して、ポリアミドを形成する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリアミドは、ナイロン6,12である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1,6−ヘキサメチレンジアミンと、ドデカン二酸とを反応させる工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ヘキセン二酸は、3−ヘキセン二酸の異性体である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記再生可能な炭素源は、D−グルコースである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ドデカン二酸を生成するための方法であって、該方法は、
ヘキセン二酸と、不飽和脂肪酸とを、メタセシス反応において反応させ、それによって、ドデセン二酸を生成する工程;および
該ドデセン二酸をドデカン二酸に還元する工程、
を包含する、方法。
【請求項24】
前記不飽和脂肪酸を、自己メタセシス反応において反応させて、Δオクタデセン二酸を生成し、その後、前記ヘキセン二酸と、該Δオクタデセン二酸とをメタセシス反応において反応させる工程を包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ヘキセン二酸は、3−ヘキセン二酸の異性体であり、前記不飽和脂肪酸は、Δ不飽和脂肪酸である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ドデカン二酸を生成するための方法であって、該方法は、
再生可能な炭素源から生体触媒による変換を介して生成されるムコン酸を提供する工程;
該ムコン酸を、亜鉛ハライド試薬を使用してヘキセン二酸に還元する工程;
該ヘキセン二酸と、Δ不飽和脂肪酸とをメタセシス反応において反応させて、ドデセン二酸を生成する工程;
該ドデセン二酸をドデカン二酸に還元する工程;および
ポリアミドを、該ドデカン二酸を使用して形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項27】
前記Δ不飽和脂肪酸を自己メタセシス反応において反応させて、Δオクタデセン二酸を生成する工程、および前記ヘキセン二酸と該Δオクタデセン二酸とを反応させて、ドデセン二酸を生成する工程をさらに包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記Δ不飽和脂肪酸は、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、エライジン酸、オレイン酸、もしくはこれらの組み合わせである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
メタセシス触媒を使用する工程を包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記触媒は、ベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウムもしくはベンジリデン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリアミドは、ナイロン6,12である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
以下の式:HOOC−(CH−COOHによって表される生体源由来のジカルボン酸を含む組成物であって、ここでnは、4〜22の整数である、組成物。
【請求項33】
前記ジカルボン酸は、ドデカン二酸もしくはその誘導体である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記生体源由来のジカルボン酸は、0より大きい14C/12C比を構成する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記生体源由来のジカルボン酸は、約1.2×10−1214C/12C比を構成する、請求項32に記載の組成物。
【請求項36】
前記ドデカン二酸誘導体は、ジメチルドデカン二酸である、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
式R−OOC−(CH−COO−Rの生体源由来のジカルボン酸ジエステルを含む組成物であって、ここでRおよびRは、各々独立して、水素もしくは脂肪族基であり、nは、4〜22の整数である、組成物。
【請求項38】
前記ジカルボン酸ジエステルは、0より大きい14C/12C比を構成する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ジカルボン酸ジエステルは、約1.2×10−1214C/12C比を構成する、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
以下の式:HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOHによって表される生体源由来のドデセン二酸を含む、組成物。
【請求項41】
前記ドデセン二酸は、0より大きい14C/12C比を構成する、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記ドデセン二酸は、約1.2×10−1214C/12C比を構成する、請求項40に記載の組成物。
【請求項43】
以下の式:R−OOC−CH−CH=CH−(CH−COO−Rによって表される生体源由来のドデセン二酸ジエステルを含む組成物であって、ここでRおよびRは、各々独立して、水素もしくは脂肪族基である、組成物。
【請求項44】
前記ドデセン二酸ジエステルは、0より大きい14C/12C比を構成する、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記ドデセン二酸ジエステルは、約1.2×10−1214C/12C比を構成する、請求項43に記載の組成物。
【請求項46】
以下の式:R−OOC−CH−CH=CH−CH−COO−Rによって表される生体源由来の3−ヘキセン二酸もしくはその3−ヘキセン二酸誘導体を含む組成物であって、ここでRおよびRは、各々独立して、水素もしくは脂肪族基である、組成物。
【請求項47】
前記3−ヘキセン二酸もしくはその3−ヘキセン二酸誘導体は、約1.2×10−1214C/12C比を構成する、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
生体源由来のナイロン6,12を含む組成物であって、ここで該ナイロン6,12は、0より大きい14C/12C比を構成する、組成物。
【請求項49】
前記14C/12C比は、0.9×10−12より大きい、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
以下の式:HOOC−(CH−COOHによって表される生体源由来のジカルボン酸を含む組成物であって、ここでnは、4〜22の整数であり、該生体源由来のジカルボン酸は、最大約1兆分の1までの炭素14を含む、組成物。
【請求項51】
式:R−OOC−(CH−COORの生体源由来のジカルボン酸ジエステルを含む組成物であって、ここでRおよびRは、各々独立して、水素もしくは脂肪族基であり、nは、4〜22の整数であり、生体源由来のジカルボン酸は、最大約1兆分の1までの炭素14を含む、組成物。
【請求項52】
式:R−OOC−(CH−COO−Rの生体源由来のドデカン二酸ジエステルを含む組成物であって、ここでR1およびR2は、各々独立して、水素もしくは脂肪族基であり、該生体源由来のドデカン二酸ジエステルは、最大約1兆分の1までの炭素14を含む、組成物。
【請求項53】
以下の式:R−OOC−CH−CH=CH−CH−COO−Rによって表される生体源由来の3−ヘキセン二酸もしくはその3−ヘキセン二酸誘導体を含む組成物であって、ここでRおよびRは、各々独立して、水素もしくは脂肪族基であり、該生体源由来の3−ヘキセン二酸は、最大約1兆分の1までの炭素14を含む、組成物。
【請求項54】
生体源由来のナイロン6,12を含む組成物であって、ここで該ナイロン6,12は、検出可能な微量の炭素14を含む、組成物。
【請求項55】
以下の工程:
ムコン酸をヘキセン二酸に還元する工程;
該ヘキセン二酸と不飽和脂肪酸とを、メタセシス反応において反応させて、不飽和ジカルボン酸を生成する工程;および
該不飽和ジカルボン酸を還元して、ジカルボン酸を形成する工程
を含むプロセスによって生成されるジカルボン酸であって、
ここで該ジカルボン酸は、以下の式:HOOC−(CH−COOHによって表され、nは、4〜22の整数である、
ジカルボン酸。
【請求項56】
前記ムコン酸は、再生可能な炭素源から生体触媒による変換を介して生成される、請求項55に記載のジカルボン酸。
【請求項57】
前記不飽和脂肪酸は、Δ不飽和C18脂肪酸であり、前記ジカルボン酸は、ドデカン二酸である、請求項55に記載のジカルボン酸。
【請求項58】
前記ドデカン二酸は、最大約1兆分の1までの炭素14を含む、請求項57に記載のドデカン二酸。
【請求項59】
ジカルボン酸を生成するための方法であって、該方法は、
ムコン酸をヘキセン二酸に還元する工程;
該ヘキセン二酸と不飽和脂肪酸とを、メタセシス反応において反応させて、ドデセン二酸を生成する工程;および
該不飽和ジカルボン酸を還元して、該ジカルボン酸を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項60】
前記不飽和脂肪酸を自己メタセシス反応において反応させて、Δオクタデセン二酸を生成する工程、および前記ヘキセン二酸と該Δオクタデセン二酸とを反応させて、ドデセン二酸を生成する工程をさらに包含する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体、および該ドデセン二酸もしくは該ドデセン二酸誘導体から得られる少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体副生成物を含む組成物。
【請求項62】
少なくとも2種の不飽和ジカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体副生成物を含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
少なくとも9種の不飽和ジカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体副生成物を含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項64】
前記少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体副生成物は、約7〜約16個の炭素原子を有するアルケン鎖を含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項65】
前記ドデセン二酸誘導体は、ドデセン二酸ジエステルである、請求項61に記載の組成物。
【請求項66】
前記ドデセン二酸もしくはドデセン二酸誘導体は、最大約1兆分の1までの炭素14を含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項67】
前記アルケン鎖は、C3−C4の位置に炭素二重結合を含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項68】
9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体、およびC1−C2、C2−C3、C3−C4、C4−C5、C5−C6、C6−C7、C7−C8、C8−C9、C10−C11、C11−C12、C12−C13、C13−C14、C14−C15、C15−C16、C16−C17、もしくはC17−C18の位置に炭素二重結合を含む少なくとも1種のオクタデセン二酸もしくはオクタデセン二酸誘導体副生成物を含む組成物であって、ここで該少なくとも1種の副生成物は、9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体から得られる、組成物。
【請求項69】
9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体から得られる少なくとも2種の副生成物を含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記9−オクタデセン二酸もしくは9−オクタデセン二酸誘導体は、最大約1兆分の1までの炭素14を含む、請求項68に記載の組成物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−515795(P2012−515795A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548161(P2011−548161)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/021894
【国際公開番号】WO2010/085712
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511289736)アミリス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】