説明

ドライアイススノー洗浄装置および方法

【課題】キャピラリ内でのパーティクルの発生を防止できるドライアイススノー洗浄装置を提供する。
【解決手段】供給源から供給された液化炭酸ガスを膨張させ冷却させるオリフィス3と、上記オリフィス3から噴射ノズル1に至るキャピラリ2と、上記キャピラリ2が接続されてドライアイススノーを噴射する噴射ノズル1と、上記噴射ノズル1に対してドライアイススノーの噴射ガスを供給する噴射ガス供給管4とを備え、上記キャピラリ2における噴射ガス供給管4の合流部よりも上流側の部分に、キャピラリ2を外側から加温する加温手段を設けたことにより、キャピラリ2内面をドライアイスの温度よりも高い温度に保ってキャピラリ2内面に薄いガス層を形成し、固体のドライアイスがキャピラリ2内面に衝突することを防止してパーティクルの発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイススノーのパーティクルの発生を防止することができるドライアイススノー洗浄装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液化炭酸ガスをオリフィスやニードル弁等の絞り機構で膨張させて冷却することによって微細なドライアイスを生成し、キャピラリと呼ばれる細管内を流通させることでドライアイスを凝縮させながらユースポイントで噴射ガスとともに噴射させて被洗浄物を洗浄することが行われている(例えば、下記の特許文献1)。このようなドライアイススノーによる洗浄は、原料ガスとして高純度の液化炭酸ガスが用いられ、ドライアイスの粒径が数十μmと微小なためにエレクトロニクス分野での洗浄に応用されている。なお、固形のドライアイスを原料に用いて装置内で数百μm程度に削ってユースポイントで噴射するドライアイスブラストによる洗浄もあるが、この方法はドライアイスの粒径が大きく、清浄度も低いためにエレクトロニクス分野での洗浄には向いていない。
【0003】
上記のようなドライアイススノー洗浄装置では、強固に付着した異物を除去するために必要なドライアイスの粒子径および密度を得るため、一般に、液化炭酸ガスをキャピラリと呼ばれる細管内に流通させてドライアイススノーを得ることが行なわれる。
【0004】
このような装置では、ドライアイスのラインと噴射ガスのラインを洗浄ノズルまで引き回す必要がある。この場合、キャピラリを二重管とし、ドライアイススノーを内管に流通させ、噴射ガスを外管に流す二重管構造等の方式が採用されている。
【0005】
図4は、従来の二重管構造等のドライアイススノー洗浄装置の一例を示す。この装置は、噴射ガスを流通する噴射ガス流通管24の中にキャピラリ2が挿通された二重管構造となっている。この二重管の先端に噴射ノズル1が接続され、キャピラリ2の根元側にオリフィス3が設けられている。また、噴射ガス流通管24の根元側に噴射ガスを供給している。これにより、キャピラリ2の根元にあるオリフィス3で膨張され冷却されて生成したドライアイスがキャピラリ2を流通して先端の噴射ノズル1に供給され、噴射ガス流通管24の根元側に供給された噴射ガスは噴射ガス流通管24を流通して噴射ノズル1に供給される。
【0006】
このような二重管構造により、キャピラリ2を通ったドライアイスが噴射ノズル1から噴射される際に、噴射ガス流通管24を通った噴射ガスで加速されてドライアイススノーとして噴射される。このような二重管構造では、噴射ガス流通管24に噴射ガスを流すことにより、キャピラリ2の内部でドライアイスが冷却されることによる流路の閉塞現象を防いでスノーを安定化し、キャピラリ2の結露防止も図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3457616号公報
【特許文献2】特開2008−043909号公報
【特許文献3】特開2003−126793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記二重管構造では、ドライアイスがキャピラリ2を通過する際に、キャピラリ2内面にドライアイスが衝突して微小なパーティクルが発生し、それが噴射ノズル1からドライアイスに混じって噴射されてしまうという問題がある。洗浄によりサブミクロン単位の微小な汚れを除去する際には、キャピラリ2内面から発生したパーティクルの影響が無視できなくなる。
【0009】
また、上記二重管構造では、ドライアイスを加速させるための噴射ガスが、噴射ガス流通管24内を流れることから、ドライアイスの衝突力を上げるために噴射ガスの圧力を高くする必要があるため、噴射ガス流通管24を多くの噴射ガスを流さなければならない。二重管の外管である噴射ガス流通管24を流れる噴射ガスは、キャピラリ2を流れるドライアイスと熱交換を行ないながら噴射ノズル1から噴射され、この熱交換によりキャピラリ2内のドライアイスが冷やされ過ぎることによる閉塞現象を防止できるが、大量の噴射ガスを流して熱交換させると、ドライアイスの生成量が減ってしまい、噴射ノズル1から噴射されるドライアイス量が減ってしまう。また、熱交換量を減らすために噴射ガス流通管24を流れる噴射ガスを減らすと、噴射ガスの圧力が下がってしまい、ドライアイスの衝突力が落ちてしまう。
【0010】
そこで、特許文献2に示すように、二重管構造ではなく、液化炭酸ガスを流すキャピラリと噴射ガスを流す噴射ガス供給ラインを別々に引き回し、ノズル部でキャピラリと噴射ガス供給ラインとを合流させる構造が考えられるが、ドライアイスの閉塞現象によりスノーが不安定になるという問題がある。また、ドライアイスが流れるキャピラリの結露対策を別途行わねばならないという不都合も生じる。しかもこの場合は、キャピラリ内面からパーティクルが発生する点において二重管構造と変わりない。
【0011】
また、上記特許文献3に示すように、キャピラリを用いずに、ノズル近傍の絞り機構によってドライアイスを発生させて洗浄する方法もあるが、このような方式では、ドライアイスの粒子径や密度が不足してしまい、十分な洗浄効果を得られない。
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、キャピラリ内でのパーティクルの発生を防止し、さらには、効率よくドライアイススノーを生成して炭酸ガスの消費量を節減できるドライアイススノー洗浄装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のドライアイススノー洗浄装置は、加圧液化炭酸ガスを膨張させ冷却させることにより形成されたドライアイススノーを被洗浄物に対して噴射して洗浄する装置であって、
供給源から供給された液化炭酸ガスを膨張させ冷却させる絞り部と、上記絞り部から噴射ノズルに至るキャピラリと、上記キャピラリが接続されてドライアイススノーを噴射する噴射ノズルと、上記噴射ノズルに対してドライアイススノーの噴射ガスを供給する噴射ガス供給路とを備え、
上記キャピラリにおける噴射ガス供給路の合流部よりも上流側の部分に、キャピラリを外側から加温する加温手段が設けられていることを要旨とする。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明のドライアイススノー洗浄方法は、加圧液化炭酸ガスを膨張させ冷却させることにより形成されたドライアイススノーを被洗浄物に対して噴射して洗浄する方法であって、
供給源から供給された液化炭酸ガスを絞り部で膨張させ冷却させ、上記絞り部から噴射ノズルに至るキャピラリを通してドライアイススノーを生成し、噴射ガス供給路から噴射ノズルに対して噴射ガスを供給して噴射ノズルからドライアイススノーを噴射する際に、
上記キャピラリにおける噴射ガス供給路の合流部よりも上流側の部分において、キャピラリを外側から加温手段により加温することを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
すなわち、本発明は、上記キャピラリにおける噴射ガス供給路の合流部よりも上流側の部分に加温手段が設けられ、当該上流側の部分においてキャピラリを外側から加温する。このように、キャピラリにおける噴射ガス供給路の合流部よりも上流側の部分を外側から加温することにより、キャピラリ内面はドライアイスの温度よりも高い温度に保たれる。この状態では、ドライアイスがキャピラリ内面に衝突する前に固体から気体になってキャピラリ内面に薄いガス層が形成され、固体のドライアイスがキャピラリ内面に衝突することが防止され、パーティクルの発生が防止される。これにより、例えば、サブミクロン単位の微小な汚れを除去する際にもパーティクルの影響を受けずに洗浄することができる。
【0016】
本発明において、上記加温手段はヒータである場合には、上記ヒータの加温制御により、キャピラリの加温状態を、ドライアイスの生成量を減らさずにパーティクルを発生させない最適な状態に制御することができ、パーティクルを発生させることなくかつ効率的にドライアイスを生成し、洗浄効果を低下させず、炭酸ガスの消費量も節減できる。
【0017】
本発明において、上記加温手段が加温用流体を含んで構成されている場合には、加温用流体によりキャピラリの外周を加温でき、大きな設備を設けることなく、パーティクルの発生を防止することができる。
【0018】
本発明において、上記加温用流体の流通方向がドライアイススノーの流通方向と反対である場合には、キャピラリにおける絞り部から噴射ノズルとの接続部までの間において、噴射ノズル側での熱交換量が大きくなる。このように、ドライアイスの粒径や密度がより大きくなる噴射ノズル側において熱交換量が大きくなることにより、噴射ノズル側でドライアイスがキャピラリ内面に衝突することを有効に防止し、パーティクルの発生が確実に防止される。
【0019】
本発明において、上記加温用流体として、噴射ノズルに供給される噴射ガスの一部を利用したものである場合には、ドライアイススノーの噴射に利用する噴射ガスの一部を加温用流体として利用することにより、従来の設備を利用してキャピラリの加温を行ない、パーティクルの発生を防止することができる。
【0020】
本発明において、上記加温用流体として、噴射ガス以外の加温用ガスを使用した場合には、噴射ガス以外の加温用ガスによりキャピラリの外周を加温でき、大きな設備を設けることなく、パーティクルの発生を防止することができる。また、例えば、噴射ガスの流量とは別個に加温用流体の流量を制御することが可能となり、キャピラリの加温状態を、ドライアイスの生成量を減らさずにパーティクルを発生させない最適な状態に制御することができ、パーティクルを発生させることなくかつ効率的にドライアイスを生成し、洗浄効果を低下させず、炭酸ガスの消費量も節減できる。
【0021】
本発明において、上記加温用流体の流量を噴射ガスとは別個に制御する流量制御手段を備えている場合には、噴射ガスの流量とは別個に加温用流体の流量を制御し、キャピラリの加温状態を、ドライアイスの生成量を減らさずにパーティクルを発生させない最適な状態に制御することができ、パーティクルを発生させることなくかつ効率的にドライアイスを生成し、洗浄効果を低下させず、炭酸ガスの消費量も節減できる。
【0022】
本発明において、キャピラリの加温部において、上記加温手段は、熱交換量の大きい部分を少なくとも噴射ノズル側に配置している場合には、キャピラリの加温部において、ドライアイスの粒径や密度がより大きくなる噴射ノズル側において加温手段の熱交換量の大きい部分を配置することにより、噴射ノズル側でドライアイスがキャピラリ内面に衝突することを有効に防止し、パーティクルの発生が確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態のドライアイススノー洗浄装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態のドライアイススノー洗浄装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態のドライアイススノー洗浄装置を示す概略構成図である。
【図4】従来のドライアイススノー洗浄装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0025】
図1は、本発明が適用されたドライアイススノー洗浄装置の一実施形態を示す図である。
【0026】
このドライアイススノー洗浄装置は、加圧液化炭酸ガスを膨張させ冷却させることにより形成されたドライアイススノーを噴射ノズル1から被洗浄物(図示せず)に対して噴射して洗浄をする装置である。
【0027】
より詳しく説明すると、この装置は、加圧液化炭酸ガスの供給源に接続されてその供給を開閉する供給バルブとしての炭酸ガス供給弁8と、上記炭酸ガスの供給源から供給された液化炭酸ガスを膨張させ冷却させる絞り部としてのオリフィス3と、上記オリフィス3から噴射ノズル1に至る細管であるキャピラリ2と、上記キャピラリ2が接続されてドライアイススノーを噴射する噴射ノズル1と、上記噴射ノズル1に対してドライアイススノーの噴射ガスを供給する噴射ガス供給路としての噴射ガス供給管4とを備えている。なお、上記オリフィス3は供給された液化炭酸ガスを膨張させ冷却させうる絞り部として機能するのであれば、例えばニードル弁等を適用することも可能である。
【0028】
液化炭酸ガスボンベ等の供給源からの液化炭酸ガスは、炭酸ガス供給管6に設けられた炭酸ガス供給弁8を開けることにより供給されてオリフィス3に導かれ、オリフィス3で膨張され冷却されてドライアイススノーが形成されると、細長いキャピラリ2を通って噴射ノズル1に導入され、噴射ノズル1の先端から噴射される。上記炭酸ガス供給管6には、炭酸ガス供給弁8ならびに液化炭酸ガスの供給圧力を検知する圧力ゲージ9が設けられている。上記炭酸ガス供給弁8の開閉により液化炭酸ガスの供給をオンオフする。液化炭酸ガスの供給圧力は、図示しないボンベに設けられたヒータで温度調節をすることや、昇圧設備により所望の圧力に調節する。
【0029】
上記オリフィス3と噴射ノズル1との間は細長い管であるキャピラリ2によって接続され、オリフィス3で膨張し冷却して発生したドライアイススノーは、キャピラリ2内を流通しながらドライアイスの凝縮が行われて噴射ノズル1から噴射される。上記キャピラリ2としては、例えばフッ素樹脂やエンジアリング樹脂等から形成された可撓性のチューブを用いることができる。
【0030】
一方、上記噴射ノズル1に供給する噴射ガスは、噴射ガスボンベ等の供給源から噴射ガス供給管4によって供給され、この噴射ガス供給管4が噴射ノズル1に接続されて噴射ノズル1に供給される。上記噴射ガス供給管4は、従来の2重管構造のようにキャピラリ2の外管として存在するのではなく、キャピラリ2とは別個に引き回されてその先端が噴射ノズル1に接続されて合流している。これにより、上記噴射ノズル1の噴射口近傍に噴射ガスを供給する噴射ガス供給管4は、上記キャピラリ2とは熱的に隔離された状態で存在し、キャピラリ2内を流通するドライアイスと噴射ガスとの間で熱交換が行われないようになっている。
【0031】
そして、上記噴射ノズル1は、例えば、噴射ノズル1の内部通路においてその先端開口近傍までキャピラリ2の先端を延ばし、上記噴射ノズル1に設けた分岐部である合流部に噴射ガス供給管4の先端を連通させて構成することができる。
【0032】
上記噴射ガス供給管4には、供給圧力を検知する圧力ゲージ13と、噴射ガスの供給をオンオフする噴射ガス供給弁14と、噴射ガスの供給圧力を調整可能な圧力調整弁12とが設けられている。また、上記噴射ガス供給管4には、噴射ガスを加熱する一次ヒータ15が設けられ、上記一次ヒータ15には、その加熱温度を調節する温度コントローラ17ならびに上記加熱温度を検知する温度計16が設けられている。
【0033】
そして、上記噴射ガス供給管4には、上記一次ヒータ15より下流側に二次ヒータ18が設けられている。さらに、上記二次ヒータ18の加熱温度を調節する温度コントローラ20ならびに上記加熱温度を検知する温度計19が設けられている。
【0034】
上記二次ヒータ18は、一次ヒータ15より下流側で噴射ノズル1との連通部近傍にわたって長尺状にかつ噴射ガス供給管4の周囲に巻きつけるように配置されている。このようにすることにより、噴射ガスが冷却されることなく均一かつ一定の温度を保ったまま噴射ノズル1に導入される。したがって、噴射ノズル1の温度を均一かつ一定に保つことができ、ドライアイススノーの噴射状態を一層安定化させることができる。上記噴射ガスとしては、例えば、高圧の窒素ガス等を用いることができる。
【0035】
上記一次ヒータ15および二次ヒータ18は、噴射ノズル1が過度に冷却される場合に用いられ、噴射ノズル1が冷却され過ぎない場合には用いなくても良い。噴射ノズル1の冷却状況に応じて、一次ヒータ15だけを用いたり二次ヒータ18だけを用いたりすることもできるし、一次ヒータ15と二次ヒータ18を併せて用いることもできる。
【0036】
そして、この実施形態では、上記キャピラリ2における噴射ガス供給路の合流部よりも上流側の部分に、キャピラリ2を外側から加温する加温手段としてのキャピラリヒータ7が設けられている。上記キャピラリヒータ7には、上記キャピラリヒータ7の加熱温度を調節する温度コントローラ10ならびに上記加熱温度を検知する温度計11が設けられている。
【0037】
上記キャピラリヒータ7は、キャピラリ2の外壁面を外側から加温し、キャピラリ2の内周面にある程度の熱を与えて内部を流通するドライアイスをキャピラリ2の内壁面近傍で気化させてガス層を形成させ、キャピラリ2の内壁面にドライアイスが衝突するのを防止する。
【0038】
上記キャピラリヒータ7は、噴射ノズル1側とオリフィス3側との2箇所を含む複数に分割し、キャピラリ2におけるオリフィス3から噴射ノズル1との接続部までの間において、熱交換量の大きい部分を少なくとも噴射ノズル1側に配置するようにすることができる。この場合、キャピラリヒータ7は、噴射ノズル1側とオリフィス3側の二分割とすることもできるし、噴射ノズル1側とオリフィス3側とその間の3分割とすることもできる。また、噴射ノズル1側の1/3〜1/4とオリフィス3側の3/4〜2/3の二分割としてもよい。
【0039】
この装置により、供給源から供給された液化炭酸ガスを絞り部であるオリフィス3で膨張させ冷却させ、上記オリフィス3から噴射ノズル1に至るキャピラリ2を通してドライアイススノーを生成し、噴射ガス供給路から噴射ノズルに対して噴射ガスを供給して噴射ノズルからドライアイススノーを噴射する際に、上記キャピラリ2における噴射ガス供給管4の合流部よりも上流側の部分において、キャピラリ2を外側から加温手段により加温する本発明の一実施形態のドライアイススノー洗浄方法を実施することができる。
【0040】
以上の構成により、本実施形態によれば、下記のような作用効果を奏する。
【0041】
すなわち、上記キャピラリ2における噴射ガス供給管4の合流部よりも上流側の部分に加温手段が設けられ、当該上流側の部分においてキャピラリ2を外側から加温する。このように、キャピラリ2における噴射ガス供給管4の合流部よりも上流側の部分を外側から加温することにより、キャピラリ2内面はドライアイスの温度よりも高い温度に保たれる。この状態では、ドライアイスがキャピラリ2内面に衝突する前に固体から気体になってキャピラリ2内面に薄いガス層が形成され、固体のドライアイスがキャピラリ2内面に衝突することが防止され、パーティクルの発生が防止される。これにより、例えば、サブミクロン単位の微小な汚れを除去する際にもパーティクルの影響を受けずに洗浄することができる。
【0042】
本実施形態では、上記加温手段はヒータ(キャピラリヒータ7)であるため、上記ヒータの加温制御により、キャピラリ2の加温状態を、ドライアイスの生成量を減らさずにパーティクルを発生させない最適な状態に制御することができ、パーティクルを発生させることなくかつ効率的にドライアイスを生成し、洗浄効果を低下させず、炭酸ガスの消費量も節減できる。
【0043】
本実施形態において、キャピラリ2におけるオリフィス3から噴射ノズル1との接続部までの間における加温部において、上記キャピラリヒータ7は、熱交換量の大きい部分を少なくとも噴射ノズル1側に配置している場合には、キャピラリ2におけるオリフィス3から噴射ノズル1との接続部までの間において、ドライアイスの粒径や密度がより大きくなる噴射ノズル1側においてキャピラリヒータ7の熱交換量の大きい部分を配置することにより、噴射ノズル1側でドライアイスがキャピラリ2内面に衝突することを有効に防止し、パーティクルの発生が確実に防止される。
【0044】
すなわち、キャピラリ2を流れる炭酸ガスは、温度が低くなりながら粒径や密度の大きいドライアイスに成長していくことから、キャピラリ2自体の温度も噴射ノズル1側に近くなるにつれて低くなる傾向にある。したがって、例えば、キャピラリヒータ7のヒータ容量を均一にした場合でも、キャピラリ2の温度が低くなる噴射ノズル1側の方がキャピラリヒータ7との熱交換量が大きくなる。
【0045】
図2は、本発明のドライアイススノー洗浄装置の第2実施形態を示す。
【0046】
この例では、上記キャピラリ2は、オリフィス3から噴射ノズル1にわたって設けられた加温管5内に挿通され、噴射ガス供給管4が接続されて合流した噴射ノズル1から上記加温管5に噴射ガスの一部が加温用流体としての加温ガスとして供給される。上記加温ガスは、加温管5内を噴射ノズル1側からオリフィス3側に向かって流通し、加温管5のオリフィス3近傍に設けられた排出路21から排出されるようになっている。
【0047】
すなわち、本実施形態では、本発明の加温手段が加温用流体を含んで構成され、上記加温用流体として、噴射ノズル1に供給される噴射ガスの一部を利用したものである。また、上記加温用流体すなわち加温ガスの流通方向がドライアイススノーの流通方向と反対である。
【0048】
上記排出路21には、排出される加温ガスの流量を調節する流量調節弁22が設けられている。上記流量調節弁22により排出される加温ガスの流量を調節することにより、加温管5内を流通する加温ガスの流量を調節し、キャピラリ2を加温する温度調節を行えるようになっている。
【0049】
すなわち、本実施形態では、上記加温用流体の流量を噴射ガスとは別個に制御する流量制御手段として上記流量調節弁22が設けられている。
【0050】
本実施形態では、上記加温ガスは、噴射ノズル1に供給され、加温管5内を噴射ノズル1側からオリフィス3側に向かって流通しながらキャピラリ2を加温することから、上記加温ガスによるキャピラリ2との熱交換は、オリフィス3から噴射ノズル1までの間において噴射ノズル1側が最も大きくなっている。すなわち、キャピラリ2におけるオリフィス3から噴射ノズル1との接続部までの間において、本発明の加温手段は、熱交換量の大きい部分が少なくとも噴射ノズル1側に配置されている。
【0051】
それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0052】
本実施形態によれば、下記のような作用効果を奏する。
【0053】
本実施形態は、上記加温手段が加温用流体を含んで構成されているため、加温用流体によりキャピラリ2の外周を加温でき、大きな設備を設けることなく、パーティクルの発生を防止することができる。
【0054】
本実施形態は、上記加温用流体の流通方向がドライアイススノーの流通方向と反対であるため、キャピラリ2におけるオリフィス3から噴射ノズル1との接続部までの間において、噴射ノズル1側での熱交換量が大きくなる。このように、ドライアイスの粒径や密度がより大きくなる噴射ノズル1側において熱交換量が大きくなることにより、噴射ノズル1側でドライアイスがキャピラリ2内面に衝突することを有効に防止し、パーティクルの発生が確実に防止される。
【0055】
本実施形態は、上記加温用流体として、噴射ノズル1に供給される噴射ガスの一部を利用したものであるため、ドライアイススノーの噴射に利用する噴射ガスの一部を加温用流体として利用することにより、従来の設備を利用してキャピラリ2の加温を行ない、パーティクルの発生を防止することができる。
【0056】
本実施形態は、上記加温用流体の流量を噴射ガスとは別個に制御する流量制御手段としての流量調節弁22を備えているため、噴射ガスの流量とは別個に加温用流体の流量を制御し、キャピラリ2の加温状態を、ドライアイスの生成量を減らさずにパーティクルを発生させない最適な状態に制御することができ、パーティクルを発生させることなくかつ効率的にドライアイスを生成し、洗浄効果を低下させず、炭酸ガスの消費量も節減できる。
【0057】
本実施形態は、キャピラリ2におけるオリフィス3から噴射ノズル1との接続部までの間における加温部において、上記加温手段は、熱交換量の大きい部分を少なくとも噴射ノズル1側に配置しているため、キャピラリ2におけるオリフィス3から噴射ノズル1との接続部までの間において、ドライアイスの粒径や密度がより大きくなる噴射ノズル1側において加温手段の熱交換量の大きい部分を配置することにより、噴射ノズル1側でドライアイスがキャピラリ2内面に衝突することを有効に防止し、パーティクルの発生が確実に防止される。
【0058】
それ以外は、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0059】
図3は、本発明のドライアイススノー洗浄装置の第3実施形態を示す。
【0060】
この例では、上記第2の実施形態と同様に、キャピラリ2は、オリフィス3から噴射ノズル1にわたって設けられた加温管5内に挿通されている。そして、加温用流体としての加温ガスが噴射ガスとは別に上記加温管5の噴射ノズル1近傍に設けられた供給口23から供給される。上記加温ガスは、加温管5内を噴射ノズル1側からオリフィス3側に向かって流通し、加温管5のオリフィス3近傍に設けられた排出路21から排出される。上記加温用流体の流量を噴射ガスとは別個に制御する流量制御手段として上記流量調節弁22が設けられている点も上記第2実施形態と同様である。

【0061】
すなわち、この実施形態では、上記加温用流体として、噴射ガス以外の加温用ガスを使用している。
【0062】
それ以外は、上記第1実施形態および第2実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0063】
本実施形態によれば、下記のような作用効果を奏する。
【0064】
本実施形態は、上記加温用流体として、噴射ガス以外の加温用ガスを使用したため、噴射ガス以外の加温用ガスによりキャピラリ2の外周を加温でき、大きな設備を設けることなく、パーティクルの発生を防止することができる。また、例えば、噴射ガスの流量とは別個に加温用流体の流量を制御することが可能となり、キャピラリ2の加温状態を、ドライアイスの生成量を減らさずにパーティクルを発生させない最適な状態に制御することができ、パーティクルを発生させることなくかつ効率的にドライアイスを生成し、洗浄効果を低下させず、炭酸ガスの消費量も節減できる。
【0065】
それ以外は、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【実施例】
【0066】
下記の実施例1,2および比較例1,2の洗浄試験を実施した。
○実施例1:図1の装置においてキャピラリヒータ7でキャピラリ2を加温した。
○実施例2:図2の装置において加温ガスを流してキャピラリ2を加温した。
○比較例1:図4の装置を使用した。
○比較例2:図1の装置においてキャピラリヒータ7をオフにした。
【0067】
洗浄方法は、8インチウェハにドライアイススノーを噴射した後、ウェハに付着した異物をレーザ表面検査装置(パーティクルカウンタ)で測定することによりパーティクルの発生状態を評価した。ドライアイススノーはロボットを使用してウェハの全面に噴射し、噴射時間はウェハ1枚あたり100秒とした。パーティクルの測定は、サイズφ0.1μm以上のものをカウントし、ウェハ上においてカウントされたパーティクル数の合計を計測して評価した。キャピラリは、外形φ1/16インチ(内径φ0.8mm)で長さ1.9mのエンジアリング樹脂製ものを用いた。オリフィスは、図1および図2の装置は内径φ0.1μmのものを用い、図4の装置は内径φ0.14μmのものを用いた。
【0068】
結果を下記の表1に示す。
【表1】

【0069】
上記表1の結果からわかるとおり、実施例1、実施例2ともに、比較例1、比較例2に比べてパーティクル数は大幅に少なく、良好な洗浄性能が得られた。
【0070】
なお、実施例1および2において、それぞれキャピラリヒータ7および加温管5を除いた状態でキャピラリ2の外周の温度を測定したところ、オリフィス3の直後では約−13℃であり、噴射ガス供給管4の合流部直前では、約−30℃であった。すなわち、キャピラリ2を流れる炭酸ガスが、温度が低くなりながら粒径や密度の大きいドライアイスに成長していき、キャピラリ2自体の温度が噴射ノズル1側に近くなるにつれて低くなる傾向にあることがわかる。したがって、例えばキャピラリヒータ7のヒータ容量が均一であった場合でも、キャピラリ2の温度が低くなる噴射ノズル1側の方がキャピラリヒータ7との熱交換量は大きくなる。
【符号の説明】
【0071】
1:噴射ノズル
2:キャピラリ
3:オリフィス
4:噴射ガス供給管
5:加温管
6:炭酸ガス供給管
7:キャピラリヒータ
8:炭酸ガス供給弁
9:圧力ゲージ
10:温度コントローラ
11:温度計
12:圧力調整弁
13:圧力ゲージ
14:噴射ガス供給弁
15:一次ヒータ
16:温度計
17:温度コントローラ
18:二次ヒータ
19:温度計
20:温度コントローラ
21:排出路
22:流量調節弁
23:供給口
24:噴射ガス流通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧液化炭酸ガスを膨張させ冷却させることにより形成されたドライアイススノーを被洗浄物に対して噴射して洗浄する装置であって、
供給源から供給された液化炭酸ガスを膨張させ冷却させる絞り部と、上記絞り部から噴射ノズルに至るキャピラリと、上記キャピラリが接続されてドライアイススノーを噴射する噴射ノズルと、上記噴射ノズルに対してドライアイススノーの噴射ガスを供給する噴射ガス供給路とを備え、
上記キャピラリにおける噴射ガス供給路の合流部よりも上流側の部分に、キャピラリを外側から加温する加温手段が設けられていることを特徴とするドライアイススノー洗浄装置。
【請求項2】
上記加温手段はヒータである請求項1記載のドライアイススノー洗浄装置。
【請求項3】
上記加温手段が加温用流体を含んで構成されている請求項1記載のドライアイススノー洗浄装置。
【請求項4】
上記加温用流体の流通方向がドライアイススノーの流通方向と反対である請求項3記載のドライアイススノー洗浄装置。
【請求項5】
上記加温用流体として、噴射ノズルに供給される噴射ガスの一部を利用したものである請求項3または4記載のドライアイススノー洗浄装置。
【請求項6】
上記加温用流体として、噴射ガス以外の加温用ガスを使用した請求項3または4記載のドライアイススノー洗浄装置。
【請求項7】
上記加温用流体の流量を噴射ガスとは別個に制御する流量制御手段を備えている請求項3〜6のいずれか一項に記載のドライアイススノー洗浄装置。
【請求項8】
キャピラリの加温部において、上記加温手段は、熱交換量の大きい部分を少なくとも噴射ノズル側に配置している請求項1〜7のいずれか一項に記載のドライアイススノー洗浄装置。
【請求項9】
加圧液化炭酸ガスを膨張させ冷却させることにより形成されたドライアイススノーを被洗浄物に対して噴射して洗浄する方法であって、
供給源から供給された液化炭酸ガスを絞り部で膨張させ冷却させ、上記絞り部から噴射ノズルに至るキャピラリを通してドライアイススノーを生成し、噴射ガス供給路から噴射ノズルに対して噴射ガスを供給して噴射ノズルからドライアイススノーを噴射する際に、
上記キャピラリにおける噴射ガス供給路の合流部よりも上流側の部分において、キャピラリを外側から加温手段により加温することを特徴とするドライアイススノー洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−227741(P2010−227741A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75314(P2009−75314)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】