説明

ドライアイスブラスト式清掃装置

【課題】鉄道車両の台車などの大型の被清掃物であってもドライアイスブラスト式清掃によって清掃が可能且つ省スペース化が可能なドライアイスブラスト式清掃装置の提供。
【解決手段】液化炭酸ガスから粒子状のドライアイス(ショット材)を生成して噴射可能な噴射ノズル20を採用することで、ドライアイス状態ではなく液化炭酸ガスでの保管が可能である。また、ロボットアームの採用により、ドライアイスブラスト式清掃による被清掃物の清掃を自動化でき、更なる省スペース化、清掃員の安全性確保およびショット材消費量低減が可能となる。また、大型の被清掃物や複雑形状の被清掃物に対してドライアイスブラストをくまなく噴射できる。さらに、清掃に必要な粒子状のドライアイスの必要量に応じて可搬式の液化炭酸ガスボンベの数量を調節することで液化炭酸ガス貯蔵部30の液化炭酸ガス貯蔵量を調節でき、更なる省スペース化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の台車などの大型の被清掃物であってもドライアイスブラスト式清掃によって清掃が可能且つ省スペース化が可能なドライアイスブラスト式清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粒子状のドライアイスを高圧の圧縮空気で吹きつけ、被清掃物から汚れを剥離させるドライアイスブラスト式清掃装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種のドライアイスブラスト式清掃装置においては、ドライアイスを装置内に低温で保管し、このドライアイスを専用工具などで粉砕することでドライアイスのショット材を生成し、生成したドライアイスのショット材を高圧の圧縮空気で被清掃物に吹きつけることで被清掃物の清掃を行っている。
【0004】
なお、ドライアイスブラスト式清掃によって被清掃物から汚れが剥離する主な原理としては、(1)粒子の衝撃による剥離、(2)昇華による体積膨張による剥離、(3)冷熱による汚れの熱収縮による剥離が挙げられる。
【0005】
このようなドライアイスブラスト式清掃の主な長所としては、(1)ショット材の回収が不要であること、(2)金属部分に傷を付けることがないこと、(3)清掃に伴う準備・後処置などの簡素化が計れること、などが挙げられる。
【0006】
また、ロボット等と組み合わせて清掃工程を自動化したドライアイスブラスト式清掃装置もあり(例えば、特許文献2参照。)、自動車用の小型部品や電子基盤等を対象としたものを中心に、汎用性が高く、広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−000462号公報
【特許文献2】特開平10−202208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のようなドライアイスブラスト式清掃装置においては、次のような問題があった。すなわち、ドライアイスブラスト式清掃では、被清掃物の大きさに比べて膨大な量のドライアイスを必要とする。したがって、ドライアイスブラスト式清掃の被清掃物が例えば自動車の部品や電子基盤など比較的小型の物品である場合でも、ドライアイスを低温で保管するための保冷設備も大型のものになる。また、このように保冷設備が大型になるため、装置を設置するスペースや装置の建設費用などの問題から、鉄道車両の台車などの比較的大型の物品をドライアイスブラスト式清掃の被清掃物とする実用例が少なかった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、鉄道車両の台車などの大型の被清掃物であってもドライアイスブラスト式清掃によって清掃が可能且つ省スペース化が可能なドライアイスブラスト式清掃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係るドライアイスブラスト式清掃装置(1:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄で用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、液化炭酸ガスから粒子状のドライアイスを生成して被清掃物に対して噴射可能な噴射ノズル(20)を用いるドライアイスブラスト式清掃装置(1)において、一つ以上の可搬式の液化炭酸ガスボンベ(31a、31b)から構成される液化炭酸ガスを貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵部(30)と、前記液化炭酸ガス貯蔵部(30)が貯蔵する液化炭酸ガスを前記噴射ノズル(20)に供給する液化炭酸ガス供給部(40)と、前記噴射ノズル(20)に空気を高圧状態で供給する高圧空気供給部(70)と、前記被清掃物を搬送する搬送手段(12)と、前記噴射ノズル(20)を把持するとともに前記噴射ノズル(20)から粒子状のドライアイスが噴射される噴射位置および噴射方向を変更可能な噴射ノズル把持部(14)と、前記ノズル把持部(14)を制御することで前記噴射ノズル(20)から粒子状のドライアイスが噴射される噴射時間、噴射位置および噴射角度を、前記搬送手段(12)によって搬送される前記被清掃物の種別に応じて制御する制御部(80)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
このように構成された本発明のドライアイスブラスト式清掃装置(1)によれば、次のような作用効果を奏する。
すなわち、液化炭酸ガスから粒子状のドライアイス(ショット材)を生成して噴射可能な噴射ノズル(20)を採用することで、ドライアイス状態ではなく液化炭酸ガスでの保管を実現することができる。そして、このような液化炭酸ガスでの保管であれば、液化炭酸ガスを汎用のボンベ(31)を用いて高圧状態で保管することができる。この結果、液化炭酸ガス状態での保管方法によるショット材の消費量単位当たり容積が、ドライアイス状態での保管方式と比べて極めて小さくなるなど、保管における制約上有利となる。よって、装置を設置するスペースや装置の建設費用などの問題が解決される。
【0012】
また、ドライアイスブラスト式清掃による被清掃物の清掃を自動化することができ、更なる省スペース化、清掃員の安全性確保およびショット材消費量低減を図ることができる。
【0013】
また、液化炭酸ガスからショット材を生成・噴射する為、液化炭酸ガスを噴射ノズルに供給する細い配管を曲げたり捻ったりしても、従来のショット材を保管庫から供給する場合と異なり、ドライアイスが配管途中でつまることがなく、大型の被清掃物や複雑形状の被清掃物に対して適切な位置・角度でドライアイスブラストをくまなく噴射することができる。一方、小型の被清掃物の場合には、被清掃物が吹き飛ばされないよう調節することができる。
【0014】
したがって、本発明のドライアイスブラスト式清掃装置(1)によれば、鉄道車両の台車などの大型の被清掃物であっても、小型の被清掃物であってもドライアイスブラスト式清掃によって清掃することができる。
【0015】
また、清掃に必要な粒子状のドライアイスの量に応じて可搬式の液化炭酸ガスボンベ(31)の数量を調節することで液化炭酸ガス貯蔵部(30)の液化炭酸ガス貯蔵量を調節でき、したがって、更なる省スペース化を図ることができる。
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項2に係るドライアイスブラスト式清掃装置(1)は、請求項1に記載のドライアイスブラスト式清掃装置(1)において、前記搬送手段(12)によって搬送される前記被清掃物に、前記噴射ノズル(20)によって噴射される粒子状のドライアイスを吹き付けるための清掃ブース(10)を備え、前記清掃ブース(10)は、前記搬送手段(12)によって搬送されながら前記噴射ノズル(20)によって噴射される粒子状のドライアイスが吹き付けられている前記被清掃物を覆う清掃ブース本体(11)と、前記搬送手段(12)が前記被清掃物を前記清掃ブース本体(11)内に搬入するための搬入口(11a)と、前記搬送手段(12)が前記被清掃物を前記清掃ブース本体(11)から搬出するための搬出口(11b)と、を有することを特徴とする。
【0017】
このように構成された本発明のドライアイスブラスト式清掃装置(1)によれば、噴射後のショット材が昇華して二酸化炭素になった場合に、二酸化炭素が周囲に影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0018】
なお、清掃ブース(10)内に酸素濃度計や炭酸ガス濃度計を設置して常時監視するとともに、清掃ブース(10)内への作業者の立ち入り用の扉をインターロック設定することで、作業者が誤って清掃中に清掃ブース(10)内に立ち入ることを防止するようにすればなおよい。
【0019】
上記課題を解決するためになされた請求項3に係るドライアイスブラスト式清掃装置(1)は、請求項1または請求項2の何れか1項に記載のドライアイスブラスト式清掃装置(1)において、さらに、前記液化炭酸ガス貯蔵部(30)が貯蔵する液化炭酸ガスを前記噴射ノズル(20)に供給する前記液化炭酸ガス供給部(40)の下流側で液化炭酸ガスの流量を計測する流量計(42)と、前記液化炭酸ガス貯蔵部(30)において前記噴射ノズル(20)に供給する前記液化炭酸ガスボンベ(31a、31b)を切替る液取出バルブ(32a、32b)と、加圧する前記液化炭酸ガス貯蔵部(30)の前記液化炭酸ガスボンベ(31a、31b)を切替る加圧バルブ(60)と、を備え、前記制御部は、前記流量計(42)の積算流量値に基づき、前記液取出バルブ(32a、32b)と加圧バルブ(60)との開閉を制御することで液化炭酸ガスボンベ(31a、31b)を切替ることを特徴とする。
【0020】
このように構成された本発明のドライアイスブラスト式清掃装置(1)によれば、清掃中に、貯留する液化炭酸ガスの量が所定量以上である液化炭酸ガスボンベ(31a、31b)を常に用いることができ、ドライアイスブラスト式清掃の自動化および安定した長時間連続運転を実現することができる。
【0021】
上記課題を解決するためになされた請求項4に係るドライアイスブラスト式清掃装置(1)は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のドライアイスブラスト式清掃装置(1)において、炭酸ガスを高圧状態で貯蔵する高圧炭酸ガス貯蔵部(40)と、前記高圧炭酸ガス貯蔵部(50)が貯蔵する高圧炭酸ガスを前記液化炭酸ガス貯蔵部(30)に供給する高圧炭酸ガス供給部(60)と、を備えることを特徴とする。
【0022】
このように構成された本発明のドライアイスブラスト式清掃装置(1)によれば、液化炭酸ガス貯蔵部(30)内の液化炭酸ガスにかかる圧力を所定値以上に保つことができ、ドライアイスブラスト式清掃の自動化および安定した長時間連続運転を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のドライアイスブラスト式清掃装置1の全体構成図
【図2】(a)運転準備フローを示す説明図、(b)高圧ボンベ切替ルーチンを示す説明図、(c)LCO2ボンベ切替ルーチンを示す説明図
【図3】自動運転フローを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
[1.ドライアイスブラスト式清掃装置1の構成の説明]
図1に示すように、ドライアイスブラスト式清掃装置1は、清掃ブース10と、搬送手段としての搬送レール12と、ロボットアーム14と、ブロアー16と、集塵機18と、噴射ノズル20と、液化炭酸ガス貯蔵部30と、液化炭酸ガス供給部40と、高圧炭酸ガス貯蔵部50と、高圧炭酸ガス供給部60と、高圧空気供給部70と、制御部80と、を備える。以下、順に説明する。
【0025】
[1.1.清掃ブース10などの構成の説明]
清掃ブース10は、搬送レール12によって外部から搬送される被清掃物に、噴射ノズル20によって噴射される粒子状のドライアイスを吹き付けるための設備である。
【0026】
具体的には、清掃ブース10は、床面の周囲を壁面で囲うとともに上方を天井面で覆った構造体(清掃ブース本体11)を有している。また、清掃ブース10の壁面には、清掃ブース10内に被清掃物を搬入するための開閉可能な搬入口11aおよび清掃ブース10内に搬入された被清掃物を搬出するための開閉可能な搬出口11bが設けられている。
【0027】
また、清掃ブース10内には、搬送手段としての長尺状の一対の搬送レール12が、搬入口11aを経由して外部から導入されるとともに搬出口11bを経由して外部に導出される経路で設置されている。
【0028】
本実施形態では、被清掃物としての鉄道車両の台車を搬送レール12上を自走させながら、搬入口11aを経由して外部から清掃ブース10内に入った後に搬出口11bを経由して清掃ブース10から外部に出ることになる。なお、本発明を、自動車の部品や電子基盤など比較的小型で自走不可能な被清掃物の清掃に適用する場合には、ベルトコンベアーなどの搬送手段を用いて、搬入口11aを経由して外部から清掃ブース10内に搬入した後に搬出口11bを経由して清掃ブース10から外部に搬出するようにしてもよい。
【0029】
また、清掃ブース10には外部のブロアー16が接続されるとともに清掃ブース10内には集塵機18が設置されており、ブロアー16が高圧で送出する空気を清掃ブース10内に導入しながら、清掃によって被清掃物から剥離した大量の汚れを清掃ブース10内の集塵機18が空気とともに吸引して清掃ブース10の外部に排出するようになっている。
【0030】
[1.2.ロボットアーム14および噴射ノズル20の構成の説明]
また、清掃ブース10内には、噴射ノズル把持部としてのロボットアーム14が設置されている。このロボットアーム14は、噴射ノズル20を把持するとともに、制御部80からの指示に基づき、噴射ノズル20から粒子状のドライアイスが噴射される噴射時間、噴射位置および噴射方向を変更可能である。なお、ロボットアーム14の構成については公知技術に従うのでここではその詳細な説明は省略する。
【0031】
また、この噴射ノズル20は、液化炭酸ガスから粒子状のドライアイスを生成して被清掃物に対して冷却空気とともに噴射可能に構成されている。なお、噴射ノズル20の構成については公知技術に従うのでここではその詳細な説明は省略する。
【0032】
[1.3.液化炭酸ガス貯蔵部30および液化炭酸ガス供給部40の構成の説明]
液化炭酸ガス貯蔵部30は、可搬式のLCO2ボンベ31と、LCO2液取出バルブ32と、を備える。なお、図1では、2本のLCO2ボンベ31(一番目のLCO2ボンベ31aおよび二番目のLCO2ボンベ31b)および2個のLCO2液取出バルブ32(一番目のLCO2液取出バルブ32aおよび二番目のLCO2液取出バルブ32b)のみを図示している。このうちのLCO2ボンベ31は、液化炭酸ガス(LCO2)を貯蔵する可搬式のボンベである。なお、LCO2ボンベ31の数量は、液化炭酸ガスの最大供給量に合わせて増減させることができる。また、LCO2液取出バルブ32は、LCO2ボンベ31を開閉可能なバルブであり、LCO2ボンベ31毎に一つずつ設置される。
【0033】
また、液化炭酸ガス供給部40は、LCO2元バルブ41を備える。このLCO2元バルブ41は、液化炭酸ガス貯蔵部30と噴射ノズル20とを接続するライン上に設置され、液化炭酸ガス貯蔵部30を開閉可能なバルブである。
【0034】
そして、液化炭酸ガス貯蔵部30のLCO2液取出バルブ32が開放された状態で、液化炭酸ガス供給部40のLCO2元バルブ41を開放すると、液化炭酸ガス貯蔵部30のLCO2ボンベ31に貯蔵される液化炭酸ガスが液化炭酸ガス供給部40のLCO2元バルブ41を経由して噴射ノズル20に供給されるようになっている。
【0035】
なお、液化炭酸ガス供給部40のLCO2元バルブ41の下流側には流量計42が設置されており、液化炭酸ガス供給部40を経由して噴射ノズル20に供給される液化炭酸ガスの流量を計測可能となっている。
【0036】
[1.4.高圧炭酸ガス貯蔵部50および高圧炭酸ガス供給部60の構成の説明]
高圧炭酸ガス貯蔵部50は、可搬式の高圧ボンベ51と、高圧ボンベ切替バルブ52と、を備える。なお、図1では、2本の高圧ボンベ51(一番目の高圧ボンベ51aおよび二番目の高圧ボンベ51b)および2個の高圧ボンベ切替バルブ52(一番目の高圧ボンベ切替バルブ52aおよび二番目の高圧ボンベ切替バルブ52b)のみを図示している。このうちの高圧ボンベ51は、炭酸ガスを高圧状態で貯蔵する可搬式のボンベである。なお、高圧ボンベ51の数量は、高圧炭酸ガス貯蔵部50が液化炭酸ガス貯蔵部30に供給される高圧炭酸ガスを貯蔵する役割を担っているため、液化炭酸ガス貯蔵部30の容量に合わせて増減させることができる。また、高圧ボンベ切替バルブ52は、高圧ボンベ51を開閉可能なバルブであり、高圧ボンベ51毎に一つずつ設置される。
【0037】
また、高圧炭酸ガス供給部60は、LCO2加圧バルブ61を備える。このLCO2加圧バルブ61は、高圧炭酸ガス貯蔵部50と液化炭酸ガス貯蔵部30とを接続するライン上に設置され、高圧炭酸ガス貯蔵部50を開閉して液化炭酸ガス貯蔵部30のLCO2ボンベ31に対して高圧炭酸ガスを供給するためのバルブであり、液化炭酸ガス貯蔵部30のLCO2ボンベ31毎に一つずつ設置される。
【0038】
そして、高圧炭酸ガス貯蔵部50の高圧ボンベ切替バルブ52が開放された状態で、高圧炭酸ガス供給部60のLCO2加圧バルブ61を開放すると、高圧炭酸ガス貯蔵部50の高圧ボンベ51に貯蔵される高圧炭酸ガスが高圧炭酸ガス供給部60のLCO2加圧バルブ61を経由して液化炭酸ガス貯蔵部30のLCO2ボンベ31に供給されるようになっている。
【0039】
なお、高圧炭酸ガス貯蔵部50の各高圧ボンベ51の下流側には圧力計53(一番目の圧力計53aおよび二番目の圧力計53b)がそれぞれ設置されており、各高圧ボンベ51から供給される高圧炭酸ガスの圧力を計測可能となっている。
【0040】
[1.5.高圧空気供給部70の構成の説明]
高圧空気供給部70は、アフタークーラー71と、ドライヤー72と、エアバルブ73,74と、を備える。このうちのアフタークーラー71は、図示しない空気圧縮機から供給される高圧の空気(一次エアー)を冷却して噴射ノズル20に供給するための機器である。また、ドライヤー72は、アフタークーラー71と噴射ノズル20とを接続する2系統のラインのうちの一方のライン上に設置され、アフタークーラー71によって冷却された高圧の空気を除湿するための機器である。また、エアバルブ73は、アフタークーラー71と噴射ノズル20とを接続するラインを開閉可能なバルブであり、ドライヤー72が設置されていない側のライン上に設置されている。また、エアバルブ74は、アフタークーラー71と噴射ノズル20とを接続するラインを開閉可能なバルブであり、ドライヤー72の下流側に設置されている。
【0041】
そして、清掃中などに高圧の空気を除湿せずに噴射ノズル20に供給する場合には、エアバルブ73を開放すると、アフタークーラー71によって冷却された高圧の空気がエアバルブ73を経由して噴射ノズル20に供給される。一方、運転準備中などに高圧の空気を除湿して噴射ノズル20に供給する場合には、ドライヤー72を起動させるとともにエアバルブ74を開放すると、アフタークーラー71によって冷却された高圧の空気がドライヤー72で除湿された後にエアバルブ74を経由して噴射ノズル20に供給される。
【0042】
[1.6.制御部80の構成の説明]
制御部80は、ロボットアーム14を制御することで噴射ノズル20から粒子状のドライアイスが噴射される噴射時間、噴射位置および噴射角度を、搬送レール12によって搬送される被清掃物の種別に応じて制御するなど、当該ドライアイスブラスト式清掃装置1全体を制御する。
【0043】
[2.ドライアイスブラスト式清掃装置の動作の説明]
ドライアイスブラスト式清掃装置の動作を、図2および図3を参照して説明する。
[2.1.運転準備フローの説明]
最初に、制御部80が実行する運転準備フローについて、図2(a)を参照して説明する。
【0044】
図示しないメイン電源SWがONになることを受け付け(S105)、図示しない運転準備SWがONになることを受け付けたら(S110)、ドライヤー72を起動させ(S115)、ドライヤー72側のエアバルブ74(VA1)を開放する(S120)。そして、アフタークーラー71を起動させる。すると、図示しない空気圧縮機から供給される高圧の空気(一次エアー)がアフタークーラー71によって冷却され、この冷却された高圧の空気がドライヤー72で除湿された後にエアバルブ74(VA1)を経由して噴射ノズル20に供給される。
【0045】
そして、本処理を終了する。
[2.2.高圧ボンベ切替ルーチンの説明]
次に、制御部80が実行する高圧ボンベ切替ルーチンについて、図2(b)を参照して説明する。
【0046】
ここでは、2本の高圧ボンベ51のうちの一方(一番目の高圧ボンベ51a)から他方(二番目の高圧ボンベ51b)に切り替える例を説明する。
まず、高圧炭酸ガス貯蔵部50の一番目の高圧ボンベ51aから供給可能な高圧炭酸ガスの圧力に相当する圧力計53aの計測値が設定値(本実施形態では2MPaG)以上であるか否かを判断する(S205)。
【0047】
圧力計53aの計測値が設定値以上であると判断する場合には、液化炭酸ガス貯蔵部30に対して一番目の高圧ボンベ51aから充分な高圧炭酸ガスを供給可能であると判断し、自動運転フローを実行可能である旨を指示し(S220)、本処理を終了する。
【0048】
一方、圧力計53aの計測値が設定値未満であると判断する場合には、液化炭酸ガス貯蔵部30に対して一番目の高圧ボンベ51aからは充分な高圧炭酸ガスを供給不可能であると判断し、二番目の高圧ボンベ51bからの高圧炭酸ガスの供給を開始するために二番目の高圧ボンベ切替バルブ52b(VG2)を開放し(S210)、一番目の高圧ボンベ51aからの高圧炭酸ガスの供給を停止するために一番目の高圧ボンベ切替バルブ52a(VG1)を閉鎖する(S215)。このことにより、液化炭酸ガス貯蔵部30に対して二番目の高圧ボンベ51aから充分な高圧炭酸ガスを供給可能になったため、自動運転フローを実行可能である旨を指示し(S220)、本処理を終了する。
【0049】
[2.3.LCO2ボンベ切替ルーチンの説明]
次に、制御部80が実行するLCO2ボンベ切替ルーチンについて、図2(c)を参照して説明する。
【0050】
ここでは、2本のLCO2ボンベ31のうちの一方(一番目のLCO2ボンベ31a)から他方(二番目のLCO2ボンベ31b)に切り替える例を説明する。
制御部80では、流量計42の計測値に基づいて一番目のLCO2ボンベ31aからの液化炭酸ガスの供給量を積算しており、この積算流量値が設定値(本実施形態では150kg)以上であるか否かを判断する(S305)。
【0051】
積算流量値が設定値未満であると判断する場合には、噴射ノズル20に対して一番目のLCO2ボンベ31aから充分な液化炭酸ガスを供給可能であると判断し、自動運転フローを実行可能である旨を指示し(S330)、本処理を終了する。
【0052】
一方、積算流量値が設定値以上であると判断する場合には、噴射ノズル20に対して一番目のLCO2ボンベ31aからは充分な液化炭酸ガスを供給不可能であると判断し、二番目のLCO2ボンベ31bからの液化炭酸ガスの供給を開始するために二番目のLCO2加圧バルブ61b(VG3)を開放するとともに二番目のLCO2液取出バルブ32b(VL3)を開放し(S310、S315)、一番目のLCO2ボンベ31aからの液化炭酸ガスの供給を停止するために一番目のLCO2加圧バルブ61a(VG4)を閉鎖するとともに一番目のLCO2液取出バルブ32a(VL2)を閉鎖する(S320、S325)。このことにより、噴射ノズル20に対して二番目のLCO2ボンベ31aから充分な液化炭酸ガスを供給可能になったため、自動運転フローを実行可能である旨を指示し(S330)、本処理を終了する。
【0053】
[2.4.自動運転フローの説明]
次に、制御部80が実行する自動運転フローについて、図3を参照して説明する。
まず、図示しない操作部からの清掃モードの選択を受け付け(S405)、図示しない自動清掃SWがONになることを受け付けたら(S410)、集塵機18を起動させるとともにブロアー16を起動させる(S415、S420)。なお、清掃モードの種別は、車両形式や台車種別(例えば駆動モータの有無)を選択可能に設定される。このことにより、ブロアー16が高圧で送出する空気を清掃ブース10内に導入しながら、清掃によって被清掃物から剥離した大量の汚れを清掃ブース10内の集塵機18が空気とともに吸引して清掃ブース10の外部に排出できるようになる。
【0054】
続いて、被清掃物としての鉄道車両の台車を搬送レール12上で移動させ、搬入口11aを経由して外部から清掃ブース10内に搬入させ(S425)、図示しない検知センサによって所定場所に被清掃物が位置するか否かの在荷検知を行う(S430)。
【0055】
続いて、除湿されていない高圧の空気を高圧空気供給部70から噴射ノズル20に供給するため、ドライヤー72側でないエアバルブ73(VA2)を開放するとともにドライヤー72側のエアバルブ74(VA1)を閉鎖する(S435、S440)。
【0056】
続いて、高圧炭酸ガスを高圧炭酸ガス貯蔵部50から液化炭酸ガス貯蔵部30に供給するため、一番目の高圧ボンベ51aに対応する一番目の高圧ボンベ切替バルブ52a(VG1)を開放する(S445)。但し、上述の高圧ボンベ切替ルーチンにおいて、一番目の高圧ボンベ51aから供給可能な高圧炭酸ガスの圧力値が設定値未満である場合には、一番目の高圧ボンベ51aから二番目の高圧ボンベ51bへの切り替えが既に終了しているので、本S445の処理は実行せずに次の処理に移行する。
【0057】
さらに、上述のLCO2ボンベ切替ルーチンにおいて、一番目のLCO2ボンベ31aから供給された液化炭酸ガスの積算流量値が設定値未満であるときには、LCO2ボンベ31aからの液化炭酸ガスの供給を開始するため、一番目のLCO2加圧バルブ61a(VG4)を開放するとともに一番目のLCO2液取出バルブ32a(VL2)を開放する(S450、S455)。但し、積算流量値が設定値以上であるときには、上述のLCO2ボンベ切替ルーチンにおいて、一番目のLCO2ボンベ31aから二番目のLCO2ボンベ31bへの切り替えが既に終了しているので、S450およびS455の処理は実行せずに次の処理に移行する。
【0058】
続いて、液化炭酸ガスを液化炭酸ガス貯蔵部30から噴射ノズル20に供給するため、LCO2元バルブ41(VL1)を開放する(S460)。これで、噴射ノズル20に液化炭酸ガスおよび冷却空気が供給され、噴射ノズル20では、液化炭酸ガスから生成される粒子状のドライアイスが冷却空気とともに先端から噴射される。
【0059】
続いて、ロボットアーム14を用いてプログラム清掃を行う(S465)。具体的には、ロボットアーム14を制御することで、噴射ノズル20から粒子状のドライアイスが噴射される噴射時間、噴射位置および噴射角度を、搬送レール12によって搬送される被清掃物の種別に応じて制御する。
【0060】
プログラム清掃が終了したら、液化炭酸ガス貯蔵部30からの噴射ノズル20への液化炭酸ガスの供給を停止するため、LCO2元バルブ41(VL1)を閉鎖する(S470)。
【0061】
続いて、除湿された高圧の空気を高圧空気供給部70から噴射ノズル20に供給するため、ドライヤー72側でないエアバルブ73(VA2)を閉鎖するとともにドライヤー72側のエアバルブ74(VA1)を開放する(S475、S480)。
【0062】
続いて、ロボットアーム14を制御して原点復帰させる(S485)。
続いて、次の被清掃物が存在するか否かを判断する(S490)。具体的には、搬入口11aの手前に設置された検知センサ(図示省略)が被清掃物を検知した場合には、次の被清掃物が存在すると判断する。
【0063】
次の被清掃物が存在すると判断する場合には、S425に移行してその被清掃物を搬入口11aから清掃ブース10内に搬入する。
一方、次の被清掃物が存在しないと判断する場合には、本処理を終了する。
【0064】
[3.実施形態の効果]
(1)このように本実施形態のドライアイスブラスト式清掃装置1によれば、次のような作用効果を奏する。
【0065】
すなわち、液化炭酸ガスから粒子状のドライアイス(ショット材)を生成して噴射可能な噴射ノズル20を採用することで、ドライアイス状態ではなく液化炭酸ガスでの保管を実現することができる。そして、このような液化炭酸ガスでの保管であれば、液化炭酸ガスを汎用のボンベである可搬式のLCO2ボンベ31を用いて高圧状態で保管することができる。この結果、液化炭酸ガス状態での保管方法によるショット材の消費量単位当たり容積が、ドライアイス状態での保管方式と比べて極めて小さくなるなど、保管における制約上有利となる。よって、装置を設置するスペースや装置の建設費用などの問題が解決される。
【0066】
また、ドライアイスブラスト式清掃による被清掃物の清掃を自動化することができ、更なる省スペース化、清掃員の安全性確保およびショット材消費量低減を図ることができる。
【0067】
また、大型の被清掃物や複雑形状の被清掃物に対してドライアイスブラストをくまなく噴射することができる。一方、小型の被清掃物の場合には、被清掃物が吹き飛ばされないよう調節することができる。
【0068】
したがって、本実施形態のドライアイスブラスト式清掃装置1によれば、鉄道車両の台車などの大型の被清掃物であっても、小型の被清掃物であってもドライアイスブラスト式清掃によって清掃することができる。
【0069】
また、清掃に必要な粒子状のドライアイスの量に応じて可搬式のLCO2ボンベ31の数量を調節することで液化炭酸ガス貯蔵部30の貯蔵量を調節でき、したがって、更なる省スペース化を図ることができる。
【0070】
(2)また、本実施形態のドライアイスブラスト式清掃装置1によれば、清掃ブース10を備え、ドライアイスブラスト式清掃が清掃ブース10で行われるので、噴射後のショット材が昇華して二酸化炭素になった場合に、二酸化炭素が周囲に影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0071】
なお、清掃ブース10内に酸素濃度計や炭酸ガス濃度計を設置して常時監視するとともに、清掃ブース10内への作業者の立ち入り用の扉をインターロック設定することで、作業者が誤って清掃中に清掃ブース10内に立ち入ることを防止するようにすればなおよい。
【0072】
(3)また、本実施形態のドライアイスブラスト式清掃装置1によれば、液化炭酸ガス貯蔵部30に貯蔵される液化炭酸ガスの量を所定量以上に保つことができ、ドライアイスブラスト式清掃の自動化および安定した長時間連続運転を実現することができる。
【0073】
(4)また、本実施形態のドライアイスブラスト式清掃装置1によれば、清掃中に、貯留する液化炭酸ガスの量が所定量以上である液化炭酸ガスボンベを常に用いることができ、ドライアイスブラスト式清掃の自動化および安定した長時間連続運転を実現することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…ドライアイスブラスト式清掃装置、10…清掃ブース、11…清掃ブース本体、11a…搬入口、11b…搬出口、12…搬送レール、14…ロボットアーム、16…ブロアー、18…集塵機、20…噴射ノズル、30…液化炭酸ガス貯蔵部、31(31a、31b)…LCO2ボンベ、32(32a、32b)…LCO2液取出バルブ、40…液化炭酸ガス供給部、41…LCO2元バルブ、42…流量計、50…高圧炭酸ガス貯蔵部、51(51a、51b)…高圧ボンベ、52(52a、52b)…高圧ボンベ切替バルブ、53(53a、53b)…圧力計、60…高圧炭酸ガス供給部、61(61a、61b)…LCO2加圧バルブ、70…高圧空気供給部、71…アフタークーラー、72…ドライヤー、73…エアバルブ、74…エアバルブ、80…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化炭酸ガスから粒子状のドライアイスを生成して被清掃物に対して噴射可能な噴射ノズルを用いるドライアイスブラスト式清掃装置において、
一つ以上の可搬式の液化炭酸ガスボンベから構成される液化炭酸ガスを貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵部と、
前記液化炭酸ガス貯蔵部が貯蔵する液化炭酸ガスを前記噴射ノズルに供給する液化炭酸ガス供給部と、
前記噴射ノズルに空気を高圧状態で供給する高圧空気供給部と、
前記被清掃物を搬送する搬送手段と、
前記噴射ノズルを把持するとともに前記噴射ノズルから粒子状のドライアイスが噴射される噴射位置および噴射方向を変更可能な噴射ノズル把持部と、
前記ノズル把持部を制御することで前記噴射ノズルから粒子状のドライアイスが噴射される噴射時間、噴射位置および噴射角度を、前記搬送手段によって搬送される前記被清掃物の種別に応じて制御する制御部と、
を備えることを特徴とするドライアイスブラスト式清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドライアイスブラスト式清掃装置において、
前記搬送手段によって搬送される前記被清掃物に、前記噴射ノズルによって噴射される粒子状のドライアイスを吹き付けるための清掃ブースを備え、
前記清掃ブースは、前記搬送手段によって搬送されながら前記噴射ノズルによって噴射される粒子状のドライアイスが吹き付けられている前記被清掃物を覆う清掃ブース本体と、前記搬送手段が前記被清掃物を前記清掃ブース本体内に搬入するための搬入口と、前記搬送手段が前記被清掃物を前記清掃ブース本体から搬出するための搬出口と、を有することを特徴とするドライアイスブラスト式清掃装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れか1項に記載のドライアイスブラスト式清掃装置において、
さらに、
前記液化炭酸ガス貯蔵部が貯蔵する液化炭酸ガスを前記噴射ノズルに供給する前記液化炭酸ガス供給部の下流側で液化炭酸ガスの流量を計測する流量計と、
前記液化炭酸ガス貯蔵部において前記噴射ノズルに供給する前記液化炭酸ガスボンベを切替る液取出バルブと、
加圧する前記液化炭酸ガス貯蔵部の前記液化炭酸ガスボンベを切替る加圧バルブと、
を備え、
前記制御部は、前記流量計の積算流量値に基づき、前記液取出バルブと加圧バルブとの開閉を制御することで液化炭酸ガスボンベを切替ること
を特徴とするドライアイスブラスト式清掃装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のドライアイスブラスト式清掃装置において、
炭酸ガスを高圧状態で貯蔵する高圧炭酸ガス貯蔵部と、
前記高圧炭酸ガス貯蔵部が貯蔵する高圧炭酸ガスを前記液化炭酸ガス貯蔵部に供給する高圧炭酸ガス供給部と、
を備えることを特徴とするドライアイスブラスト式清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−212590(P2011−212590A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83230(P2010−83230)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年10月1日 社団法人 日本鉄道技術協会発行の「JREA 2009 October Vol.52,No.10」に発表
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】