説明

ドライアイ用眼鏡

【課題】水分の蒸散の抑制と促進をバランス良く制御し、湿気を長時間安定的に供給することができるドライアイ用眼鏡の提供。
【解決手段】眼鏡枠のテンプルの内側に、湿気を蒸散させる湿気蒸散体と、眼鏡装着時側頭部と接して側頭部の熱の伝達を受ける受熱体と、当該受熱体の熱を湿気蒸散体に伝達する熱伝導体とを備えていることを特徴とするドライアイ用眼鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドライアイ用眼鏡、特に加湿体を備えたドライアイ用眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライアイ用眼鏡としては、眼鏡の枠(テンプルやリム、あるいは智の部分)に、水分を保持した加湿体を取り付けたものが既に知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
しかしながら、斯かる従来のドライアイ用眼鏡は、加湿体の水分が蒸散し易く、すぐに乾いてカラカラな状態になるため、頻繁に水分を補給したり、加湿体そのものを交換しなければならない、と云う問題があった。
そこで、例えば水分に粘性を付与するなどして蒸散しにくくすることも考えられるが、単に蒸散しにくくすると今度は湿気が不足してしまい、そもそもドライアイ用眼鏡として用をなさなくなってしまうのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第314146号公報
【特許文献2】特開2000−5215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の如き従来の問題と実状に鑑みてなされたものであり、水分の蒸散の抑制と促進をバランス良く制御することができるドライアイ用眼鏡を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、常温では蒸散しにくい水分を用いた場合であっても、眼鏡装着時に接する側頭部の体温を利用すれば、当該水分の蒸散作用が促進されるので、水分の蒸散の抑制と促進をバランス良く制御することができることを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、眼鏡枠のテンプルの内側に、湿気を蒸散させる湿気蒸散体と、眼鏡装着時側頭部と接して側頭部の熱の伝達を受ける受熱体と、当該受熱体の熱を湿気蒸散体に伝達する熱伝導体とを備えていることを特徴とするドライアイ用眼鏡により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のドライアイ用眼鏡を用いれば、眼鏡装着時に側頭部の体温が、受熱体、熱伝導体、湿気蒸散体に順次伝達され、当該伝達された熱により、常温では蒸散しにくい水分もその蒸散が促進される結果、水分の蒸散の抑制と促進をバランス良く制御することができるので、湿気を長時間安定的に供給することが可能となる。
特に、本発明のドライアイ用眼鏡は、非装着時においては、殆ど水分が蒸散することがないので、水分の補給頻度や湿気供給部材の交換頻度は、従来に比しかなり低減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明ドライアイ用眼鏡における眼鏡枠のテンプル内側面説明図。
【図2】本発明ドライアイ用眼鏡の平面説明図。
【図3】図2のA−A線拡大端面説明図。
【図4】湿気蒸散体取り付け部の拡大横断面説明図。
【図5】受熱体の取り付け例を示す拡大縦断説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0011】
図1及び2において、10は眼鏡枠のテンプルで、その内側に湿気蒸散体20と、受熱体30と、熱伝導体40が取り付けられている。
【0012】
湿気蒸散体20は、水分を蒸散させることができるものであればその具体的構造の如何を問わないが、例えば図3及び図4に示す如く、表面板部に適宜数の蒸散孔21aを有する器体21内に、水分を保持した保水部材22を、交換可能なように出入自在に収納したものが好適に使用される。ここに器体21は熱伝導性に優れた金属製とするのが望ましい。また保水部材22としては、水分を保持し得るものであれば特に限定されないが、例えばスポンジ、海綿、フェルト、紙等が用いられる。また、保水部材22に保持される水分としては、水にヒアルロン酸等の物質を添加することにより、常温、例えば30℃以下での蒸散を抑制したものが、短時間で乾いてしまうのを防止する上で望ましい。
【0013】
湿気蒸散体20は、眼鏡装着時、目の近辺となる部位、より具体的にはテンプル10の蝶番部50近傍部の内側に、着脱自在に取り付けるのが、目の周囲に効率良く水分を蒸散させることができると共に、湿気蒸散体20の交換が容易となり望ましい。着脱自在の取り付け方法としては、弾性嵌合方式、突起と溝による係止方式等その如何を問わない。
また、湿気蒸散体20の取り付けは、その一部(図3参照)、あるいはその全部をテンプル10中に埋設して取り付けるのが、湿気蒸散体20が視野に入りにくくなると共に、デザイン的にもスッキリしたものとなるため望ましい。
【0014】
受熱体30は、眼鏡装着時、側頭部と接するテンプル10の内側に取り付けられており、側頭部からの熱の伝達を受けるようになっている。この受熱体30は、熱伝導性の良い素材であれば、金属、合成樹脂等その素材の如何を問わないが、特にチタン等の熱伝導性に優れ、かつ肌に悪影響を与えない金属製とするのが望ましい。この場合、受熱体30の形態は、できるだけ表面積の大きい薄板状とするのが、側頭部から効率良く熱の伝達を受ける上で望ましい。
また、受熱体30の取り付けは、単にテンプル10の内側に接着したものであっても良いが、図5(1)に示すように、その一部をテンプル10中に埋設して取り付けたり、図5(2)に示すようにその全部をテンプル10中に埋設して取り付けるのが、眼鏡装着時、側頭部に押圧感を与えることがなく望ましい。尚、一部をテンプル10中に埋設する場合は、突出する受熱体30のエッヂ部は曲面とするのが安全性の点で望ましい。
【0015】
熱伝導体40は、受熱体30の熱を湿気蒸散体20に伝達するもので、その一端部が受熱体30に連結されていると共に、その他端部が湿気蒸散体20に連結されている。熱伝導体40の素材は、前述した受熱体30と同様なものが用いられ、特に、チタン等の熱伝導性に優れた金属を用い、受熱体30との一体成形体とするのが、熱伝導性の点で望ましい。この場合、熱伝導体40は受熱体30より巾狭のテープ状とし、図4に示す如く、湿気蒸散体20と連結される他端部は、当該湿気蒸散体20の外底部面に密着せしめるのが、効率良く側頭部の熱を湿気蒸散体20に伝達する上で望ましい。
また、熱伝導体40は、受熱体30と同様に、その一部、あるいはその全部(図4参照)をテンプル中に埋設して取り付けるのが突出感を与えることがなく望ましい。
【符号の説明】
【0016】
10:テンプル
20:湿気蒸散体
21:器体
21a:蒸散孔
22:保水部材
30:受熱体
40:熱伝導体
50:蝶番部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡枠のテンプルの内側に、湿気を蒸散させる湿気蒸散体と、眼鏡装着時側頭部と接して側頭部の熱の伝達を受ける受熱体と、当該受熱体の熱を湿気蒸散体に伝達する熱伝導体とを備えていることを特徴とするドライアイ用眼鏡。
【請求項2】
前記湿気蒸散体が、蒸散孔を有する器体内に、常温では蒸散しにくい水分を保持した保水部材を出入自在に収納せしめて構成されていることを特徴とする請求項1記載のドライアイ用眼鏡。
【請求項3】
前記湿気蒸散体が、テンプルの蝶番部近傍部に、着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のドライアイ用眼鏡。
【請求項4】
前記湿気蒸散体の一部又は全部が、テンプル中に埋設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のドライアイ用眼鏡。
【請求項5】
前記受熱体が、眼鏡装着時側頭部と接するテンプルの内側に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載のドライアイ用眼鏡。
【請求項6】
前記受熱体の一部又は全部が、テンプル中に埋設されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載のドライアイ用眼鏡。
【請求項7】
前記熱伝導体の一端部が受熱体に連結されていると共に、その他端部が湿気蒸散体の外底部に密着して連結されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載のドライアイ用眼鏡。
【請求項8】
前記熱伝導体の一部又は全部が、テンプル中に埋設されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載のドライアイ用眼鏡。
【請求項9】
前記受熱体と熱伝導体が、熱伝導性に優れた金属の一体成形体であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項記載のドライアイ用眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−253100(P2011−253100A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127837(P2010−127837)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)