説明

ドライエッチング装置

【課題】真空処理チャンバ内の中央領域と周辺領域とにおいて生じ得るエッチング速度の差をなくして、大型の基板でも均一に処理できるようにしたドライエッチング装置を提供する。
【解決手段】真空処理チャンバ1の内周側壁1c,1dで画定される真空処理チャンバの処理空間が平面において基板2の輪郭形状にほぼ相似形になるように真空処理チャンバを構成し、真空処理チャンバ内に、基板の前後及び左右における縁部から真空処理チャンバの内周側壁までの間隔がそれぞれ等しくなるように基板が基板ホルダー3に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、特に太陽電池の反射防止膜を製作するのに用いられるドライエッチング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の問題から二酸化炭素(CO)などの温室効果ガスの放出を抑える低炭素革命が叫ばれ、温室効果ガスの削減に役立つ太陽光エネルギーの利用を進めるため太陽電池の開発が進められ、実用に供されてきており、その普及には太陽電池自体のコストの低減化と共に光電変換効率の向上が急務となっている。
【0003】
知られているように、結晶系Si太陽電池分野において、シリコン基板に照射する太陽光のうちシリコン基板内部へ進む光のみが発電に寄与し、基板の表面で反射する太陽光は発電に寄与していない。そのため、基板の表面に入射した光の反射を低減する技術が開発され提案されている。例えば、太陽電池用シリコン基板の表面に反応性イオンエッチングにより凹凸形状を形成して粗面化する方法(特許文献1参照)太陽電池用シリコン基板の表面にドライエッチングにより凹凸形状を形成して粗面化する方法(特許文献2参照)、基板表面に微細な凹凸構造をもつシリコン系太陽電池(特許文献3参照)を挙げることができる。
【0004】
また、本発明者等は、先にシリコン材料の表面にドライエッチング法でテクスチャーを形成し、形成したテクスチャーをウェットエッチング法で処理して、シリコン材料の表面積を大きくししかも表面反射率を低減する方法及び装置を提案した(特許文献4及び特許文献5参照)。
【0005】
一方、太陽電池のコストの低減を図るために、また、市場拡大に伴い、基板の大型化や量産化が進んでいる。それに伴い生産装置も大型化している。
【0006】
しかし、従来の製造装置では、ドライエッチングに際して、基板は対向電極からのプラズマの影響だけでなく、真空処理チャンバの壁からの影響も受ける。その為、真空処理チャンバ内に生成されるプラズマは超深部と周縁部とでは濃さが異なり、大面積の基板をエッチングする場合、基板の中央領域と周辺領域とではエッチング速度に差ができ均一な処理が困難であった。すなわち、一般に真空処理チャンバにおいてはロードロックチャンバ等の接続、排気口などが設けられているため、電極に対して真空処理チャンバの内周壁までの距離や形状などの環境が異なり、そのため真空処理チャンバの内周壁について電子の流入差が生じ、真空処理チャンバ内に生成されるプラズマ密度が一様とならず、差が生じていた。その結果、エッチングの均一性が得られず、処理すべき基板全体に対して所望の電気的特性を得ることが難しくなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−101051公開特許公報
【特許文献2】特開2003−197940公開特許公報
【特許文献3】特開2002−111017公開特許公報
【特許文献4】特願2008−192597明細書
【特許文献5】特願2008−192598明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、真空処理チャンバ内の中央領域と周辺領域とにおいて生じ得るエッチング速度の差をなくして、大型の基板でも均一に処理できるようにしたドライエッチング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、真空処理チャンバ内に、エッチング処理すべき基板の装着される基板電極を設け、基板電極に装着した基板をエッチング処理するようにしたドライエッチング装置において、真空処理チャンバの内周側壁で画定される真空処理チャンバの処理空間が平面において基板の輪郭形状にほぼ相似形になるように真空処理チャンバを構成し、真空処理チャンバ内に、基板の前後及び左右における縁部から真空処理チャンバの内周側壁までの間隔がそれぞれ等しくなるように基板を配置したことを特徴としている。
【0010】
好ましくは、真空処理チャンバの内周側壁と処理すべき基板との間隔が基板の全周囲にわたって等しいなるように構成され得る。
【0011】
本発明の一実施形態においては、真空処理チャンバは、前後左右の長さが等しい正方形に形成される。
【0012】
本発明のドライエッチング装置においては、真空処理チャンバに設けられるゲートバルブ、排気ポート、プロセスガス導入系からのプロセスガスを拡散させるシャワープレート、及び基板電極に対向して設けられる対向電極などの構成要素は好ましくは真空処理チャンバの内壁の表面とほぼ同じ平面内に位置するように設けられ得る。
【0013】
好ましくは、エッチング処理すべき基板は少なとも125mm寸法を持つ太陽電池を構成するシリコン基板であり得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるドライエッチング装置においては、真空処理チャンバの内周側壁で画定される真空処理チャンバの処理空間が平面においてシリコン基板の輪郭形状にほぼ相似形になるように真空処理チャンバを構成し、かかる処理空間内にシリコン基板を同心に配置した構成としているので、シリコン基板の前後及び左右における縁部から真空処理チャンバの内周側壁までの間隔がそれぞれ等しくでき、それにより、プラズマに偏りが生じることがなく基板に対して均一なエッチングが可能となる。特に高密度のプラズマ生成を可能にしたプラズマ減を搭載したエッチング装置、例えば太陽電池用テクスチャー形成装置による大型基板のエッチング処理においても分布が少ないため量産化に対応できようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるドライエッチング装置の一実施形態を示すゲートバルブ側から見た概略断面図。
【図2】図1に示すドライエッチング装置の真空処理チャンバ内部における基板の配置を上面から見た概略断面図。
【図3】図1に示すドライエッチング装置の真空処理チャンバ内部における基板の配置を排気ポートの設けられた側の反対側から見た概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照して本発明によるドライエッチング装置の一実施形態について説明する。
図1には、本発明の一実施形態によるドライエッチング装置を示し、1は真空処理チャンバであり、この真空処理チャンバ1内には、少なとも125mm寸法を持つエッチング処理すべきシリコン基板2を装着する基板電極をなす基板ホルダー3が設けられ、また基板ホルダー3に対向した位置で真空処理チャンバ1の上壁1aには、上部電極組立体4が設けられている。上部電極組立体4はシャワープレート5を備えている。上部電極組立体4及びシャワープレート5の、基板ホルダー3に対向している表面が、真空処理チャンバ1の上壁1aの内面と実質的に同一面上に位置するように上部電極組立体4及びシャワープレート5は配置され構成されている。
【0017】
また、真空処理チャンバ1は、例えばロードロックチャンバ(図示していない)に通じる側壁1bに、ゲートバルブ6が設けられ、また側壁1cには排気系(図示していない)に接続される排気ポート7が設けられている。これらゲートバルブ6及び排気ポート7の真空処理チャンバ1側の内表面は、真空処理チャンバ1の側壁1b及び側壁1cの内面とそれぞれ実質的に同一面上に位置するようにされている。
【0018】
図示実施形態では、処理すべきシリコン基板12は実質的に正方形であり、従って基板の正方形に合せて真空処理チャンバ1は、その平面において図2に示すように、実質的に正方形に形成されている。この場合図2及び図3に示すように、真空処理チャンバ1の側壁1b〜1eの隣接側壁の角部は円弧状に形成されている。
【0019】
このように構成した真空処理チャンバ1の側壁1b〜1eには、上部電極組立体4、シャワープレート5、ゲートバルブ6及び排気ポート7などの構成要素が実質的に凹凸せず、従って真空処理チャンバ1の側壁1b〜1eによって画定される内壁面は全体として滑らかな面を成すことになる。そして、真空処理チャンバ1内の基板ホルダー3に配置される正方形の輪郭をもつシリコン基板2は、真空処理チャンバ1内の平面において同心に配置される。それにより、シリコン基板2の四辺の縁部とそれぞれ対向した真空処理チャンバ1の側壁1b〜1eの内壁面との間隔は全て実質的に等しくなる。この場合に真空処理チャンバ1内のプラズマ分布に影響しない程度の誤差は許容され、シリコン基板2の四辺の縁部とそれぞれ対向した真空処理チャンバ1の側壁1b〜1eの内壁面との間隔は厳密に同一でなくてもよい。
【0020】
ところで、図示実施形態では、真空処理チャンバ1は内部空間が平面において正方形になるように構成しているが、当然、処理すべき基板が正方形以外の多角形状、例えば長方形、或いは円形である場合には、それに合わせて真空処理チャンバ1は、その平面において内部空間が長方形や円形となるように構成することができる。
【0021】
また、図示実施例によるエッチング装置においては、真空処理チャンバ1の内壁1b〜1eが処理すべきシリコン基板2に対して前後左右に対称な空間すなわち内壁1b〜1eから基板2までの距離が全て等しくなるようにしているが、この場合その距離は少なくとも5mm、好ましくは10〜20mm程度になるようにするのが好ましい。
【0022】
さらに、本発明は、図示エッチング装置に限定されず、その他の種々のドライエッチング装置にも等しく応用され得ることが理解されるべきである。
【0023】
さらにまた、本発明によるドライエッチング装置は太陽電池を構成するシリコン基板の処理に限定されるものではなく、大型の基板であれは任意の種類、形状の基板にも応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、太陽電池のテクスチャー形成、有機EL、サーマルヘッドの絶縁膜エッチングに有利に応用され得る。
【符号の説明】
【0025】
1:真空処理チャンバ
1a:上壁
1b〜1e:側壁
2:エッチング処理すべき基板
3:基板ホルダー
4:上部電極組立体
5:シャワープレート
6:ゲートバルブ
7:排気ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理チャンバ内に、エッチング処理すべき基板の装着される基板電極を設け、基板電極に装着した基板をエッチング処理するようにしたドライエッチング装置であって、真空処理チャンバの内周側壁で画定される真空処理チャンバの処理空間が平面において基板の輪郭形状にほぼ相似形になるように真空処理チャンバを構成し、真空処理チャンバ内に、基板の前後及び左右における縁部から真空処理チャンバの内周側壁までの間隔がそれぞれ等しくなるように基板を配置したことを特徴とするドライエッチング装置。
【請求項2】
真空処理チャンバの内周側壁と基板との間隔が基板の全周囲にわたって等しいなるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のドライエッチング装置。
【請求項3】
真空処理チャンバが、平面において前後左右の長さが等しい正方形に形成されていることを特徴とする請求項1記載のドライエッチング装置。
【請求項4】
真空処理チャンバに設けられるゲートバルブ、排気口、プロセスガス導入系からのプロセスガスを拡散させるシャワープレート、及び基板電極に対向して設けられる対向電極などの構成要素が真空処理チャンバの内壁の表面とほぼ同じ平面内に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のドライエッチング装置。
【請求項5】
エッチング処理すべき基板が少なとも125mm寸法を持つ太陽電池を構成するシリコン基板であることを特徴とする請求項1記載のドライエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−263051(P2010−263051A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112269(P2009−112269)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】