説明

ドライパウダー吸入器製剤

dpi製剤は、ベクロメタゾンの溶媒和物を含み、賦形剤およびキャリアーを実質的に含まない。溶媒和物粒子は0.5〜10ミクロンの大きさであり、超音波の存在下でのステロイドの結晶化によって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロイドのドライパウダー吸入器製剤に関し、特に、ベクロメタゾンのドライパウダー吸入器製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾルを介した肺へのステロイド送達が周知であり、喘息、気道疾患および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む多くの疾患の治療に用いられている。製剤は、通常、ドライパウダー吸入器(dpi)、定量吸入器(mdi)、および、それほどではないが、ネブライザーを介して投与される。
【0003】
推奨粒子の大きさが60〜90ミクロンのラクトース粒子と共に、2〜5ミクロンの大きさの範囲内のジプロピオン酸ベクロメタゾン粒子を含む、ベクロメタゾンのdpi製剤が知られている。この製剤は、一見したところ適切な粒径および含量均一性データで、ベクロメタゾンの投与に首尾よく用いられている。しかし、満足のいく含量均一性データを得るために、ラクトースおよび活性物を非常に慎重に混ぜなければならない。さらに、National Digestive Diseases Information Clearing Houseによると、推定3000〜5000万人のアメリカ人(アメリカ合衆国の人口の約25%)がラクトース不耐性であり、ラクトースを含む製剤に対して副作用を起こし得る。
【0004】
これらの製剤のさらなる不都合な点は、患者への送達点でのベクロメタゾンの有効投与量が、製剤に含まれる有効投与量よりもかなり低いことであり、送達中に生成物の若干の損失が生じることが認識されている。この損失は、製剤に含まれる活性物の量で相殺され、これは、容認できると見なされている解決策である。それでもやはり、この損失を減らすことが所望される。いくらかの損失は、ある程度制御不能であるので、投与の信頼性に影響を及ぼすからである。
【0005】
国際公開第02/089942号には、超音波の存在下で結晶化が起こる、小結晶の調製方法が記載されている。国際公開第2004/073827号は、mdiおよびdpiでの使用のためのエアロゾル製剤の調製を記載しており、そこでも活性成分の結晶化中に超音波を用いている。国際公開第2010/007447号は、固体物質の結晶性を高めるプロセスを記載し、このプロセスをdpi製剤用の粒子を調製するために用いることを記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、代替の、好ましくは改良された、ベクロメタゾンのdpi製剤およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、ベクロメタゾン溶媒和物から実質的になる、dpi製剤を提供する。ベクロメタゾン溶媒和物は、好ましくは超音波の存在下での結晶化によって得られる。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、ベクロメタゾン溶媒和物は、(i)溶媒中に溶解されたベクロメタゾンを含む液滴の(ii)ベクロメタゾンの非溶媒中の懸濁液を形成させる工程、および超音波をこれらの液滴に当てて、結晶化したベクロメタゾン粒子を形成させる工程によって得られる。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、ベクロメタゾン溶媒和物は、溶媒中のベクロメタゾンの溶液を乾燥してベクロメタゾンの固形、好ましくは実質的に非晶質の粒子を得、次いで、これをベクロメタゾンの非溶媒と接触させ、超音波に当てて、結晶化したベクロメタゾン粒子を形成させることによって得られる。その溶液は液滴の形態であり得る。乾燥は、急速沈殿、フリーズドライ、凍結乾燥、超臨界溶媒急速膨張、噴霧乾燥、またはそれらの混合によって実行され得る。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本発明は、キャリアーまたは賦形剤を実質的に用いることなしに、そのような製剤を調製することを可能にし、キャリアー不耐性に関連した問題を回避し、含量均一性データの提供の必要性を回避する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
溶媒和物の形成に用いるのに適した非溶媒としては、水および炭素数5〜7の炭化水素が挙げられる。炭素数5〜7の炭化水素は、典型的には非環式、直鎖または分岐であり、本発明の1つの好ましい実施形態では、炭素数5〜7の炭化水素はヘプタンである。1つの特定の実施形態では、ヘプタンはn−ヘプタンである。
【0012】
本発明の好ましい製剤は、直径0.5〜10ミクロン、より好ましくは0.5〜5ミクロンのベクロメタゾン溶媒和物粒子を含む。さらに、かなりの割合が患者の肺に達するように、かなりの割合の生成物が、これらの規定した大きさの範囲内にあることが好ましい。好ましくは少なくとも75%(数基準)、より好ましくは少なくとも90%(数基準)の溶媒和物粒子が、規定した大きさの範囲内にある。溶媒和物の粒度分布が、X10が0.1ミクロン以上、X50が5ミクロン以下およびX90が10ミクロン以下の範囲内であることがさらに好ましく、より好ましくは、X10が0.5ミクロン以上、X50が3ミクロン以下およびX90が7ミクロン以下の範囲内であり、本発明の1つの特定の実施形態では、粒度分布が、X10が0.5ミクロン以上、X50が3ミクロン以下およびX90が5ミクロン以下の範囲内である。
【0013】
本明細書で使用される粒径または粒子の直径は、たとえばISO規格13320−1に記載されるような、レーザー回折に基づく方法によって、適切に決定され得る。Malvern社のMastersizer 2000TMなどのレーザー回折粒径測定装置が使用され得る。
【0014】
本発明の製剤の使用では、典型的には、活性物の投与量の少なくとも80%(質量基準)が患者に送達され、好ましくは少なくとも85%(質量基準)、およびより好ましくは、活性物の投与量の少なくとも90%(質量基準)が患者に送達される。本発明の1つの特定の実施形態では、活性物の投与量の少なくとも95%(質量基準)が患者に送達され、本発明のさらなる実施形態では、活性物の投与量の少なくとも97%(質量基準)が患者に送達され得る。本発明のよりさらなる実施形態では、活性物の投与量の98%(質量基準)までが患者に送達され得る。本発明の代替の実施形態では、活性物の投与量の99%(質量基準)までまたは100%(質量基準)までが患者に送達され得る。
【0015】
本発明を用いると、SEMイメージングによって視覚的に均質な形態を有するベクロメタゾン溶媒和物粒子が得られ、略平滑な表面および丸い縁取りによって特徴付けられる。
【0016】
本発明の製剤では、ベクロメタゾンは、製剤の90質量%以上を構成し得、キャリアーまたは賦形剤は、製剤の10質量%までを構成し得る。製剤の95質量%以上がベクロメタゾンであり、製剤の5質量%までがキャリアーまたは賦形剤であることが好ましい。本発明の特に好ましい1つの特定の実施態様では、製剤の98質量%以上がベクロメタゾンであり、製剤の2質量%までがキャリアーまたは賦形剤である。さらなる実施形態では、ベクロメタゾンは製剤の少なくとも99%(質量基準)を構成する。本発明の1つの特定の実施形態では、ベクロメタゾンは製剤の100%(質量基準)を構成する。
【0017】
典型的には、本発明のdpi製剤は、ベクロメタゾンから本質的になり、好ましい製剤は、キャリアーおよび賦形剤を実質的に含まない。本発明の好ましい製剤は、ベクロメタゾンを実質的に含み、どのさらなる成分も僅少量で存在する。
【0018】
本発明の適切なdpi製剤は、ベクロメタゾン15〜300mcgの個別化投与量を含み得、好ましくは、個別化投与量は20〜200mcgの範囲内である。本発明の好ましい製剤は、ベクロメタゾン約25mcgの個別化投与量を含み、本発明の他の実施形態では、製剤はベクロメタゾン約50mcgの個別化投与量を含み、本発明のよりさらなる実施形態では、製剤はベクロメタゾン約125mcgの個別化投与量を含む。あるいは、本発明のdpi製剤はベクロメタゾン約37.5mcgの個別化投与量を含み得、本発明の他の実施形態では、製剤はベクロメタゾン約75mcgの個別化投与量を含み、本発明のよりさらなる実施形態では、製剤はベクロメタゾン約187.5mcgの個別化投与量を含む。
【0019】
本発明はまた、ベクロメタゾン溶媒和物のdpi製剤を調製する方法を提供し、この方法は、(i)超音波の存在下でベクロメタゾン溶媒和物粒子を結晶化させる工程、および(ii)結晶化した粒子をDPI製剤に調剤する工程を含む。
【0020】
本発明の1つの実施形態では、本方法は、(i)溶媒中に溶解されたベクロメタゾンを含む液滴の(ii)ベクロメタゾンの非溶媒中の懸濁液を形成させる工程、および超音波をこれらの液滴に当てて、結晶化したベクロメタゾン溶媒和物粒子を形成させる工程を含む。
【0021】
ベクロメタゾンは、溶媒中のステロイドの溶液を形成し、この溶液の液滴のステロイドの非溶媒中の懸濁液を形成し、そして超音波をこの液滴に当てることによって、適切に結晶化される。懸濁した液滴中のステロイドは、主にまたは完全にベクロメタゾンであり得るが、結晶化して略球状型の粒子を形成する。より具体的には、ベクロメタゾンは、ステロイドを溶媒に溶解させ、溶液の液滴を形成し(例えばこの溶液からエアロゾルを生成することによって)、この液滴のステロイドの非溶媒中の分散系を形成し、そしてこの液滴を超音波に曝露して、ステロイドの結晶化を開始するまたは結晶化を生じさせることによって、結晶化される。
【0022】
本発明の代替の実施形態では、上記方法は、溶媒中のベクロメタゾンの溶液を乾燥して、固形、好ましくは実質的に非晶質の粒子を得、次いで、ベクロメタゾンの非溶媒と接触させ、超音波に当てて、結晶化したベクロメタゾン粒子を形成させる工程を含む。その溶液は液滴の形態であり得る。乾燥は、急速沈殿、フリーズドライ、凍結乾燥、超臨界溶媒急速膨張、噴霧乾燥、またはそれらの混合によって実行され得る。
【0023】
液滴は、電気流体力学的噴霧、高圧を用いる噴霧、噴霧ノズル、ネブライザー、圧電トランスデューサーもしくは超音波トランスデューサーなどのトランスデューサー、または他のエアロゾルジェネレーターによって、調製され得る。
【0024】
結晶性ステロイド溶媒和物の所望の粒径を得るために、液滴の大きさおよび溶媒中のステロイドの量が、変更および制御される。プロセスは、ある程度は経験に基づく。これは、同様の条件下で操作しても系が異なれば、異なる最終粒径がもたらされるからである。しかし、液滴は通常、ミクロンサイズであり、たとえば1〜100ミクロン、好ましくは3〜30ミクロンの範囲の大きさで、0.5〜10ミクロンの範囲の大きさの結晶を生成する。
【0025】
より略球状の結晶を得るために、溶媒の液滴は、高い割合のステロイドを含むことが好ましい。溶媒は、エアロゾル内の溶媒液滴から蒸発し、この蒸発は、液滴がベクロメタゾンの非溶媒中に集められる、またはベクロメタゾンの非溶媒と組み合わせられる場合に、この液滴が、液滴の少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%のステロイドを含むように、制御および最適化され得る。
【0026】
非溶媒と接触する前に液滴を乾燥に供する本発明の実施形態では、乾燥した粒子は、通常、ミクロンサイズであり、例えば、10ミクロンまでの範囲、好ましくは0.1〜10ミクロンで、0.5〜10ミクロンの範囲の大きさの結晶を生成する。乾燥条件および次の超音波処理の操作で、所定の特性を有する結晶が形成される。そのような特性には、粒子形態、表面自由エネルギー、粒度分布、所望の多形、および単離された粒子の点では、流動性、減少した静電気、ならびに結合性/接着性の特性が含まれ得る。
【0027】
したがって、液滴中の生成物の割合(%)および液滴の大きさを含む、多くのパラメーターの変動によって、最終的な結晶粒子径は、0.5〜10ミクロン、好ましくは0.5〜5ミクロンの範囲内の粒子が得られるように制御され得る。溶媒和物の粒度分布は、X10が0.1ミクロン以上、X50が5ミクロン以下およびX90が10ミクロン以下の範囲内であることがさらに好ましく、より好ましくは、X10が0.5ミクロン以上、X50が3ミクロン以下およびX90が7ミクロン以下の範囲内であり、本発明の1つの特定の実施形態では、粒度分布が、X10が0.5ミクロン以上、X50が3ミクロン以下およびX90が5ミクロン以下の範囲内である。
【0028】
ベクロメタゾンに適した溶媒は、アルコールおよびケトン、特に低分子量のケトン、アルコールおよびハロゲン化アルカンであり、特定の例は、アセトン、エタノール、メタノールおよびジクロロメタンである。本発明の好ましい実施形態では、溶媒はメタノールであるか、または含む。
【0029】
非溶媒は、ステロイドを非常に少ない量で、好ましくは0.1%(w/w)以下で溶解する。非溶媒は、溶媒と混和性であってもよく、液滴の懸濁の安定性を補助するために、乳化剤または他の薬剤が加えられてもよい。適した非溶媒としては、炭素数5〜7の炭化水素が挙げられ、これは、非環式、直鎖または分岐であり得る。好ましい非溶媒はヘプタンであり、本発明の1つの特定の実施形態では、ヘプタンはn−ヘプタンである。本発明の方法の使用のために、さらなる好ましい非溶媒は水である。
【0030】
超音波をステロイドに当てることによって、結晶化が生じる、または結晶化が開始される。結晶化はまた、超音波を溶媒和物に当てることによって、生じる、または開始される。超音波は、連続的に、またはパルスのように断続的に、当てられ得る。超音波は、懸濁液内に挿入されるプローブのような種々の装置を用いて、当てられ得る。
【0031】
周波数および振幅は変動し得るが、20kHz〜5MHzの周波数を有する超音波の存在下で、ベクロメタゾンは結晶化され得る。それとは別に、超音波は0.2W/cm以上、または0.3W/cm以上の強度を有し得る。
【0032】
本発明の実施形態では、16kHz〜1MHzの超音波の周波数が用いられ得る。
【0033】
本発明の方法は、典型的には、溶媒和物粒子を乾燥する工程をさらに含む。適した乾燥方法としては、噴霧乾燥および超臨界COによる乾燥が挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、上記粒子が噴霧乾燥によって乾燥される。
【0034】
本発明の1つの特定の実施形態は、ベクロメタゾンのdpi製剤を調製する方法を提供し、この方法は、
(a)(i)溶媒中に溶解したベクロメタゾンを含む液滴の(ii)n−ヘプタンまたは水中の懸濁液を形成させる工程、
(b)超音波を上記液滴に当てて、0.5〜5ミクロンの結晶化したベクロメタゾン粒子を形成する工程、
(c)噴霧乾燥によって上記粒子を乾燥する工程、および
(d)患者に投与するのに適切な賦形剤非含有dpi剤形に、上記乾燥した粒子を封入する工程を含む。
【0035】
本発明のさらなる1つの特定の実施形態は、ベクロメタゾンのdpi製剤を調製する方法を提供し、この方法は、
(a)溶媒中にベクロメタゾンの溶液を形成させる工程、
(b)上記溶液を、急速沈殿、フリーズドライ、凍結乾燥、超臨界溶媒急速膨張、噴霧乾燥、またはそれらの混合からなる群より選択されるプロセスに供する工程であって、ベクロメタゾンが実質的に乾燥した固形の物質に変換される、工程、
(c)必要に応じて、工程(b)のプロセスの液体または気体成分から、ベクロメタゾンを単離する工程、
(d)工程(b)または(c)からのベクロメタゾンをn−ヘプタンまたは水で処理する工程、
(e)工程(d)のn−ヘプタンまたは水と接触させる時に超音波をベクロメタゾンに当てて、0.5〜5ミクロンの結晶化したベクロメタゾン粒子を形成させる工程、
(f)噴霧乾燥によって上記粒子を乾燥する工程、および
(g)患者に投与するのに適切な賦形剤非含有dpi剤形に、上記乾燥した粒子を封入する工程を含む。
【0036】
本方法のさらなる1つの特定の実施形態では、上記溶媒はメタノールを含む。
【0037】
本発明のよりさらなる1つの特定の実施形態は、ベクロメタゾンのdpi製剤を調製する方法を提供し、この方法は、
(a)(i)溶媒中に溶解したベクロメタゾンを含む液滴の(ii)n−ヘプタンまたは水中の懸濁液を形成させる工程、
(b)超音波を上記液滴に当てて、X10が0.5ミクロン以上、X50が3ミクロン以下およびX90が5ミクロン以下の範囲内の粒度分布を有する結晶化したベクロメタゾンを形成させるための工程、
(c)噴霧乾燥によって上記粒子を乾燥する工程、および
患者に投与するのに適切な賦形剤非含有dpi剤形に、上記乾燥した粒子を封入する工程を含む。
【0038】
本発明のなおさらなる1つの特定の実施形態は、ベクロメタゾンのdpi製剤を調製する方法を提供し、この方法は、
(a)溶媒中にベクロメタゾンの溶液を形成させる工程、
(b)上記溶液を、急速沈殿、フリーズドライ、凍結乾燥、超臨界溶媒急速膨張、噴霧乾燥、またはそれらの混合からなる群より選択されるプロセスに供する工程であって、ベクロメタゾンが実質的に乾燥した固形の物質に変換される、工程、
(c)必要に応じて、工程(b)のプロセスの液体または気体成分から、ベクロメタゾンを単離する工程、
(d)工程(b)または(c)からのベクロメタゾンをn−ヘプタンまたは水で処理する工程、
(e)工程(d)のn−ヘプタンまたは水と接触させる時に超音波をベクロメタゾンに当てて、X10が0.5ミクロン以上、X50が3ミクロン以下およびX90が5ミクロン以下の範囲内の粒度分布を有する結晶化したベクロメタゾン粒子を形成させる工程、
(f)噴霧乾燥によって上記粒子を乾燥する工程、および
(g)患者に投与するのに適切な賦形剤非含有dpi剤形に、上記乾燥した粒子を封入する工程を含む。
【0039】
本明細書中でベクロメタゾンという場合、その適切かつ利用可能な形態のいずれかの薬物物質をいい、その塩および他の誘導体を含み、例えばジプロピオン酸ベクロメタゾンおよび吉草酸ベクロメタゾンなどがあるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
超音波処理を用いてベクロメタゾンを結晶化させた。手短に言えば、この方法は、薬物溶液を形成した後、それを噴霧し、噴霧乾燥によって制御しながら溶媒を蒸発させ、実質的に非晶質の粒子を生じ、次いで、これをベクロメタゾンの非溶媒と接触させ、超音波に当てて、結晶化ベクロメタゾン粒子を含む生成物スラリーを形成させることを含んだ。次いで、噴霧乾燥または超臨界二酸化炭素乾燥によって、生成物スラリーを固型単離物にした。この方法はProsonix Ltd.(英国、オックスフォード)により実行され、この方法のさらなる詳細は、国際公開第2010/007447号に記載の通りである。
【0041】
超音波の存在下での結晶化によって得たベクロメタゾン水和物
プロトコール:
投入:6gの無水ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)
3%(w/v)の無水BDPのメタノール溶液を水中に噴霧し、噴霧乾燥およびソノプロセスを施した
温度:0℃
粒子を噴霧乾燥によって単離した
噴霧乾燥による単離後の示差走査熱量測定(DSC)およびTGAは、高度に結晶性のBDP水和物を示した。
【0042】
SEMは、平滑な表面および均質な形態の粒子を示した。乾燥下でのSympatec社PSD分析は、粒度分布が充分に吸入範囲内にあることを確認した。
【0043】
表1は、乾燥下でのSympatec社PSD分析の結果を示す。
【0044】
【表1】

【0045】
長期貯蔵に及ぼす湿度の影響を評価するために、処理したBDP水和物を20%の相対湿度(RH)に48時間曝露した。
【0046】
処理したBDP水和物のDVSマスプロットは、貯蔵中、試料が最初、部分脱水による顕著な重量損失を経験したことを示した。試料は、約1,500分後、定常状態に達した。試料からの水分損失は、噴霧乾燥後の試料中に残存する自由水の損失を反映しているようである。これは、この乾燥技術が通常、100%の効率ではないからである。
【0047】
これらの結果は、BDPが非常に低い水分含量の水和物を形成し、長期貯蔵にて安定性を保つことが見込まれることを示す。
【0048】
貯蔵後に回収した試料を、DSC、TGA、PSDおよびSEMで分析した。
【0049】
貯蔵した試料のDSCトレースは、試料の湿度処理後の熱挙動における変動を示さなかった。水和した試料は、長期貯蔵にて無水BDPよりも高い安定性を示した。
【0050】
PSDは、粒径の有意な変動を示さず、SEM分析は、貯蔵前の試料と同じ形態を示した。
【0051】
表2は、貯蔵後試料の乾燥下でのSympatec社PSD分析の結果を示す。
【0052】
【表2】

【0053】
(実施例2)
超音波処理を用いてベクロメタゾンを結晶化させる。手短に言えば、この方法は、薬物溶液を形成した後、それを噴霧し、制御しながら溶媒を蒸発させ、非溶媒を含む容器内にこの予備濃縮した粘性液滴を回収し、そして超音波力で核生成を介して結晶化すること、を含む。次いで、噴霧乾燥または超臨界二酸化炭素乾燥によって、生成物スラリーを固型単離物にする。この方法のさらなる詳細は、国際公開第2004/073827号に記載の通りである。
【0054】
超音波の存在下での結晶化によって得たベクロメタゾン水和物
プロトコール:
投入:6gの無水ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)
3%(w/v)の無水BDPのメタノール溶液を水中に噴霧し、ソノプロセスを施す
温度:0℃
粒子を噴霧乾燥によって単離する
【0055】
(実施例3)
n−ヘプタンを用いた超音波の存在下での結晶化(実施例1に従う)
プロトコール:
投入:6gの無水ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)
3%(w/v)の無水BDPのメタノール溶液をn−ヘプタン中に噴霧し、噴霧乾燥およびソノプロセスを施した
温度:0℃
粒子を噴霧乾燥によって単離した
【0056】
噴霧乾燥による単離後の示差走査熱量測定(DSC)およびTGAは、単離した物質がn−ヘプタン溶媒和物であり高度に結晶性があることを確認した。
【0057】
SEMは、平滑な表面およびはっきりとした小石様形態の非常に均質な粒子を示した。乾燥下でのSympatec社PSD分析は、粒度分布が非常に有望であり吸入範囲内にあることを確認した。
【0058】
表3は、乾燥下でのSympatec社PSD分析の結果を示す。
【0059】
【表3】

【0060】
長期貯蔵に及ぼす湿度の影響を評価するために、処理したBDPヘプタンを20%の相対湿度(RH)に48時間曝露した。
【0061】
処理したBDPヘプタンのDVSマスプロットは、上記物質が質量の変化の点で充分な安定性を維持したことを示した。
【0062】
貯蔵後に回収した試料を、DSC、TGA、PSDおよびSEMで分析した。
【0063】
貯蔵した試料のDSCトレースは、試料の湿度処理後の熱挙動における変動を示さなかった。
【0064】
PSDは、粒径の有意な変動を示さず、SEM分析は、貯蔵前の試料と同じ形態を示した。
【0065】
表4は、貯蔵後試料の乾燥下でのSympatec社PSD分析の結果を示す。
【0066】
【表4】

【0067】
(実施例4)
n−ヘプタンを用いた超音波の存在下での結晶化(実施例2に従う)
プロトコール:
投入:6gの無水ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)
3%(w/v)の無水BDPのメタノール溶液をn−ヘプタン中に噴霧し、ソノプロセスを施す
温度:0℃
粒子を噴霧乾燥によって単離する
【0068】
(実施例5)
ベクロメタゾン製剤
国際公開第2004/073827号に記載されるように、ベクロメタゾンを溶媒に溶解して、次いでベクロメタゾン溶液の非溶媒中の懸濁液を形成し、そして超音波を当てて、ベクロメタゾンを結晶化させることによって、ベクロメタゾンのDPI製剤を調製する。
【0069】
実質的に2〜3ミクロンの範囲内の大きさの結晶化ベクロメタゾンの粒径を得るように、流量および超音波出力を含む操作パラメーターを変更する。
【0070】
得られたベクロメタゾン溶媒和物を照射による最終殺菌に供し、以下の個別化投与量に処方される最終DPI製剤を生成する:
【0071】

ベクロメタゾン 25mcg

ベクロメタゾン 50mcg

ベクロメタゾン 125mcg

ベクロメタゾン 37.5mcg

ベクロメタゾン 75mcg

ベクロメタゾン 187.5mcg
【0072】
(実施例6)
ベクロメタゾン製剤
国際公開第2010/007447号に記載されるように、ベクロメタゾンを溶媒に溶解して、制御条件下で、噴霧乾燥によって溶媒を蒸発させ、実質的に非晶質の粒子を得て、次いで、これをベクロメタゾンの非溶媒と接触させ、超音波に当てて、ベクロメタゾンを結晶化することによって、ベクロメタゾンのDPI製剤を調製する。
【0073】
実質的に2〜3ミクロンの範囲内の大きさの結晶化ベクロメタゾンの粒径を得るように、流量および超音波出力を含む操作パラメーターを変更する。
【0074】
得られたベクロメタゾン溶媒和物を照射による最終殺菌に供し、以下の個別化投与量に処方される最終DPI製剤を生成する:
【0075】

ベクロメタゾン 25mcg

ベクロメタゾン 50mcg

ベクロメタゾン 125mcg

ベクロメタゾン 37.5mcg

ベクロメタゾン 75mcg

ベクロメタゾン 187.5mcg
【0076】
したがって、本発明は、ベクロメタゾン含有dpi製剤、およびその製造方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベクロメタゾン溶媒和物から実質的になる、dpi製剤。
【請求項2】
前記ベクロメタゾン溶媒和物が、超音波の存在下での結晶化によって得られる、請求項1に記載のdpi製剤。
【請求項3】
前記ベクロメタゾン溶媒和物が、(i)溶媒中に溶解したベクロメタゾンを含む液滴の(ii)ベクロメタゾンの非溶媒中の懸濁液を形成させ、超音波を該液滴に当てて、結晶化したベクロメタゾン粒子を形成させることによって得られる、請求項1または2に記載のdpi製剤。
【請求項4】
前記非溶媒が水である、請求項3に記載のdpi製剤。
【請求項5】
前記非溶媒が炭素数5〜7の炭化水素である、請求項3に記載のdpi製剤。
【請求項6】
前記炭素数5〜7の炭化水素が非環式、直鎖または分岐である、請求項5に記載のdpi製剤。
【請求項7】
前記炭素数5〜7の炭化水素が、ヘプタンである、請求項6に記載のdpi製剤。
【請求項8】
前記ヘプタンが、n−ヘプタンである、請求項7に記載のdpi製剤。
【請求項9】
直径0.5〜10ミクロンのベクロメタゾン溶媒和物粒子を含む、請求項1から8のいずれかに記載のdpi製剤。
【請求項10】
粒度分布が、X10が0.1ミクロン以上、X50が5ミクロン以下およびX90が10ミクロン以下の範囲内である、請求項9に記載のdpi製剤。
【請求項11】
前記粒度分布が、X10が0.5ミクロン以上、X50が3ミクロン以下およびX90が7ミクロン以下の範囲内である、請求項10に記載のdpi製剤。
【請求項12】
前記粒度分布が、X10が0.5ミクロン以上、X50が3ミクロン以下およびX90が5ミクロン以下の範囲内である、請求項11に記載のdpi製剤。
【請求項13】
略平滑な表面および丸い縁取りの、SEMイメージングによって視覚的に均質な形態を有するベクロメタゾン粒子を含む、請求項1から12のいずれかに記載のdpi製剤。
【請求項14】
前記製剤の90質量%以上がベクロメタゾンであり、前記製剤の10質量%までがキャリアーまたは賦形剤である、請求項1から13のいずれかに記載のdpi製剤。
【請求項15】
前記製剤の95質量%以上がベクロメタゾンであり、前記製剤の5質量%までがキャリアーまたは賦形剤である、請求項14に記載のdpi製剤。
【請求項16】
前記製剤の98質量%以上がベクロメタゾンであり、前記製剤の2質量%までがキャリアーまたは賦形剤である、請求項15に記載のdpi製剤。
【請求項17】
前記製剤が、ベクロメタゾンから本質的になる、請求項1から16のいずれかに記載のdpi製剤。
【請求項18】
前記製剤が、キャリアーおよび賦形剤を実質的に含まない、請求項1から16のいずれかに記載のdpi製剤。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載のベクロメタゾン溶媒和物のdpi製剤を調製する方法であって、(i)超音波の存在下で、ベクロメタゾン溶媒和物粒子を結晶化させる工程、および(ii)該結晶化した粒子をdpi製剤に調剤する工程を含む、方法。
【請求項20】
(i)溶媒中に溶解したベクロメタゾンを含む液滴の(ii)ベクロメタゾンの非溶媒中の懸濁液を形成させる工程、および超音波を該液滴に当てて、結晶化したベクロメタゾン溶媒和物粒子を形成させる工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記非溶媒が水である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記非溶媒が炭素数5〜7の炭化水素である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記炭素数5〜7の炭化水素が非環式、直鎖または分岐である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記炭素数5〜7の炭化水素が、ヘプタンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ヘプタンが、n−ヘプタンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記結晶化したステロイド粒子を乾燥する工程をさらに含む、請求項20から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記粒子が噴霧乾燥によって乾燥される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ベクロメタゾンのdpi製剤を調製する方法であって、
(e)(i)溶媒中に溶解したベクロメタゾンを含む液滴の(ii)n−ヘプタンまたは水中の懸濁液を形成する工程、
(f)超音波を該液滴に当てて、0.5〜5ミクロンの結晶化したベクロメタゾン粒子を形成させる工程、
(g)噴霧乾燥によって該粒子を乾燥する工程、および
(h)患者に投与するのに適切な賦形剤非含有dpi剤形に、該乾燥した粒子を封入する工程
を含む、方法。
【請求項29】
前記溶媒が、メタノールを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ベクロメタゾンのdpi製剤を調製する方法であって、
(d)(i)溶媒中に溶解したベクロメタゾンを含む液滴の(ii)n−ヘプタンまたは水中の懸濁液を形成させる工程、
(e)超音波を該液滴に当てて、X10が0.5ミクロン以上、X50が3ミクロン以下およびX90が5ミクロン以下の範囲内の粒度分布を有する結晶化したベクロメタゾンを形成する工程、
(f)噴霧乾燥によって該粒子を乾燥する工程、および
患者に投与するのに適切な賦形剤非含有dpi剤形に、該乾燥した粒子を封入する工程
を含む、方法。

【公表番号】特表2013−501760(P2013−501760A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524248(P2012−524248)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061915
【国際公開番号】WO2011/018531
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(503183455)ブレス リミテッド (11)
【Fターム(参考)】