説明

ドライフィルムおよびそれを用いたプリント配線板

【課題】ソルダーレジストに用いた際に、外観不良の発生を防止することが可能なドライフィルム、および、それを用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】キャリアフィルム上に、銅からなる回路パターンが形成された基板上に積層される乾燥塗膜を備えるドライフィルムである。乾燥塗膜が、回路パターンを被覆する、銅の酸化抑制のための下層と、下層上に積層された、レーザー加工および銅回路隠蔽のための1層以上の上層と、からなり、下層が、(a)エポキシ樹脂および(b)フェノール樹脂を含有する組成物から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドライフィルムおよびそれを用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器などに用いられるプリント配線板において、電子部品を実装する際には、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域に、樹脂組成物を塗布するかまたはドライフィルム上の乾燥塗膜をラミネートした後、硬化してなるソルダーレジストが形成される。このソルダーレジストは、不必要な部分へのはんだの付着を防止するとともに、回路の導体を保護するものである。
【0003】
また、ソルダーレジストには、回路パターンの、熱ないし湿気等による変色や、電気的な変色、傷、汚れなどを隠蔽して、プリント配線板の外観性の悪化を防止する役割もある。そのため、隠蔽性を向上するために、ソルダーレジストを形成するために用いられる樹脂組成物やドライフィルムには通常、着色剤が添加される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、近年、電子機器の小型化や高機能化の要求に基づき、プリント配線板についても回路パターンの微細化が進んでおり、これに伴い、ソルダーレジストについてもより一層薄膜化が進んでいる。その結果、ソルダーレジストの隠蔽性が低下して、下層である回路の変色等がソルダーレジストを通して見えてしまい、外観不良に繋がるという問題が生じていた。よって、他の要求性能を損なうことなく、外観不良の発生を防止できるソルダーレジストの実現が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−258613号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ソルダーレジストに用いた際に、外観不良の発生を防止することが可能なドライフィルム、および、それを用いたプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、ソルダーレジスト用として、回路パターンを被覆する側の層が銅の酸化を抑制する機能を有する、2層以上の積層構造からなるドライフィルムを用いることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、銅からなる回路パターンが形成された基板上に積層される乾燥塗膜を備えるドライフィルムにおいて、
前記乾燥塗膜が、前記回路パターンを被覆する、銅の酸化抑制のための下層と、該下層上に積層された、レーザー加工および銅回路隠蔽のための1層以上の上層とからなり、該下層が、(a)エポキシ樹脂および(b)フェノール樹脂を含有する組成物から形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、前記(a)エポキシ樹脂が、レゾルシノール型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、本発明においては、前記上層のうち少なくとも1層が、(A)エポキシ樹脂と、(B)着色剤と、(C)硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物からなり、該(B)着色剤が、波長350nm〜550nmまたは570nm〜700nmの範囲のうち、いずれか一方または両方の範囲内に吸光度のピークを有し、かつ、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有するものとすることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記レーザーは、好適には炭酸ガスレーザー、UV−YAGレーザーおよびエキシマレーザーのうちから選択されるいずれかである。また、本発明のドライフィルムにおいては、前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、(D)無機充填剤として、その屈折率と、樹脂成分の屈折率との差が0.05以上であるものの1種または2種以上を、固形分換算として、30〜80質量%含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明のプリント配線板は、銅からなる回路パターンが形成された基板上に、上記本発明のドライフィルム上の前記乾燥塗膜が積層され、熱硬化されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことにより、ソルダーレジストに用いた際に、外観不良の発生を防止することが可能なドライフィルム、および、それを用いたプリント配線板を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】酸化前後における銅の吸光度スペクトルの差を示すグラフである。
【図2】実施例で用いたPigment Blue 15:3のUV−vis(紫外・可視)スペクトルである。
【図3】実施例で用いたPigment Blue 15:3およびPigment Yellow 147のIR(赤外吸収)スペクトルである。
【図4】実施例で用いたPigment Yellow 147のUV−vis(紫外・可視)スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、銅からなる回路パターンが形成された基板上に積層され、熱硬化されることでプリント配線板を構成する乾燥塗膜を備えるものである。
【0015】
本発明のドライフィルムにおける乾燥塗膜は、回路パターンを被覆する、銅の酸化抑制のための下層と、この下層上に積層された、レーザー加工および銅回路隠蔽のための1層以上の上層(以下、1層の場合および2層以上の場合の各層を含めて「上層」という。)とからなる積層構造を有し、このうち下層が、(a)エポキシ樹脂および(b)フェノール樹脂を含有する組成物から形成されているものである。回路パターンを被覆する下層が、銅の酸化を抑制する機能を有するものとしたことで、銅回路の酸化を抑制して、外観不良の発生を防止することができる。一方で、その上に積層される上層についてはそのような機能を付与せずに、レーザー加工性および隠蔽性を有する一般的なソルダーレジスト用の樹脂組成物からなるものとしたことで、ソルダーレジストとしての他の要求性能を損なわないドライフィルムを得ることが可能となった。
【0016】
本発明において、ドライフィルムが2層以上の積層構造からなる乾燥塗膜を有するものとして、そのうち下層に酸化抑制機能を持たせているのは、以下の理由による。すなわち、回路パターンを被覆する下層が酸化抑制機能を有すれば本発明の効果が得られるのに対し、上層に酸化防止機能を持たせてもさらなる効果は得られず、また、上層の設計の自由度を高めることで、上記酸化抑制機能とソルダーレジストとしての要求特性とを両立できるためである。
【0017】
本発明のドライフィルムにおいては、積層構造からなる乾燥塗膜のうち、下層が上記条件を満足するものであればよく、これにより本発明の所期の効果を得ることができ、それ以外の点については、常法に従い適宜実施することができ、特に制限されるものではない。
【0018】
本発明において、上層は、ソルダーレジストとしての要求特性を満足するためのものであり、一般的なソルダーレジスト用の樹脂組成物からなるものとすることができ、特に制限はない。上層は、少なくとも1層、例えば、1〜5層とすることができ、好ましくは1〜3層であり、より好ましくは1層である。2層以上の場合の各層の組成は、同一であっても異なっていてもよい。好適には、上層のうち少なくとも1層が、(A)エポキシ樹脂と、(B)着色剤と、(C)硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物からなるものとする。
【0019】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アミノクレゾール型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂などが用いられる。これらエポキシ樹脂は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0020】
特に、得られるドライフィルムにおいて良好なフィルム特性を得るためには、(A)エポキシ樹脂として、20℃で液状のエポキシ樹脂と、40℃で固形のエポキシ樹脂との混合物を用いることが好ましい。その配合割合としては、好適には、エポキシ樹脂の総量中に、固形分換算として、20℃で液状のエポキシ樹脂を10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは25〜60質量%の割合で配合するものとする。これは、20℃で液状のエポキシ樹脂の配合量が、10質量%未満であるとフィルム化が困難となり、一方、80質量%を超えるとフィルム表面が粗化されやすくなるためである。ここで、本発明における「液状」の判定は、特開2010−180355号公報に記載の判定方法に基づいて実施することができる。
【0021】
20℃で液状のエポキシ樹脂としては、例えば、828(三菱化学社製)、YD−128(東都化成社製)、840,850(DIC社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、806,807(三菱化学社製)、YDF−170(東都化成社製)、830,835,N−730A(DIC社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、ZX−1059(東都化成社製)などのビスフェノールA、F混合物、YX−8000,8034(三菱化学社製)、ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、630(三菱化学社製)、ELM−100(住友化学社製)などのアミノフェノール型エポキシ樹脂、HP−820(DIC社製)などのアルキルフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0022】
また、40℃で固形のエポキシ樹脂としては、例えば、エピクロン1050,同3050(DIC社製)、エピコート1001,同1002,同1003(三菱化学社製)、エポトートYD−011,同YD−012(東都化成社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポトートYDF−2001,同2004(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、YDB−400(東都化成社製)、EPICLON152,153(DIC社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、EXA−1514(DIC社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、N−770,775(DIC社製)、EPPN−201H,RE−306(日本化薬社製)、152,154(三菱化学社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、EOCN−102S,103S,104S(日本化薬社製)、YDCN−701,702,703,704(東都化成社製)、N−660,670,680(DIC社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、157S70(三菱化学社製)、N−865(DIC社製)などのビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、YX−4000(三菱化学社製)、NC−3000(日本化薬社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、NC−7000L(日本化薬社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、HP−7200(DIC社製)、XD−1000(日本化薬社製)などのジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、EPPN−501H,502H(日本化薬社製)、1031S(三菱化学社製)、HP−5000(DIC社製)などのトリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
(B)着色剤としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の顔料、染料、色素等のうちから適宜選択して用いることができ、特に制限はない。(B)着色剤は、1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明においては、具体的には、(B)着色剤として、波長350nm〜550nmおよび570nm〜700nmの範囲のうち、いずれか一方または両方の範囲内に吸光度のピークを有し、かつ、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有するものを用いる。好ましくは400nm〜550nmおよび570nm〜650nmの範囲であり、より好ましくは430nm〜530nmおよび580nm〜640nmの範囲であり、さらに好ましくは430nm〜520nmおよび580nm〜630nmの範囲であり、最も好ましくは460nm〜500nmおよび580nm〜620nmの範囲である。上記2つの波長領域は、図1に示すように、回路パターンを形成する銅の酸化前後における吸光度スペクトルの差を取ったとき、強度の強い2つの波長範囲に対応する。よって、(B)着色剤が、これら2つの波長領域のうち少なくとも一方に吸光度のピークを有するものとすることで、下層の銅からなる回路の変色を、効果的に隠蔽することが可能となる。また、(B)着色剤が、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有するものとすることで、より低いエネルギーで、ソルダーレジストのレーザー加工を行うことが可能となる。かかるレーザー加工に使用されるレーザーとしては、気体レーザー、固体レーザーおよび他の産業用に用いられる各種レーザーを挙げることができ、好適には、気体レーザーとしては炭酸ガスレーザーおよびエキシマレーザーであり、固体レーザーとしてはUV−YAGレーザーである。より好適には、炭酸ガスレーザーおよびUV−YAGレーザーである。これらのレーザーの発振波長は、JIS C6802「レーザー製品の安全基準」に規定される方法により測定されるものである。
【0025】
本発明において、かかる(B)着色剤としては、上記2つの波長領域のうち少なくとも一方に吸光度のピークを有し、かつ、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有するものであれば、1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。使用可能な着色剤としては青、緑、黄、赤などの公知の着色剤を混合して使用することができ、顔料、染料および色素のうちのいずれでもよい。具体的には、フタロシアニン系であるPigmentBlue15:1、Pigment Blue15:3、アンスラキノン系であるPigment Red177等を挙げることができる。
【0026】
なお、単独では上記2つの波長領域に十分な吸光度のピークを持たない着色剤についても、2つ以上を組み合わせて用いることで、銅回路の酸化を隠蔽するのに十分な吸光度のピークを持つものとすることが可能である場合がある。この場合、用いる着色剤の少なくとも一つが、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有するものであればよい。(B)着色剤の配合量は、好適には、固形分換算として、組成物全体の0.05〜5質量%の範囲とする。着色剤の配合量が上記範囲よりも少ないと、十分なレーザー加工性および隠蔽性を得られないおそれがあり、一方、上記範囲よりも多いと、ソルダーレジストとしての熱的特性や電気的特性等を損なうおそれがあり、いずれも好ましくない。
【0027】
(C)硬化剤としては、エポキシ硬化剤として、従来公知の各種エポキシ樹脂硬化剤やエポキシ樹脂硬化促進剤を用いることができる。具体的には例えば、フェノール樹脂、イミダゾール化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、酸無水物、脂肪族アミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、第3級アミン、ジシアンジアミド、グアニジン類、またはこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもののほか、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム、テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物、DBUもしくはその誘導体などを挙げることができ、硬化剤または硬化促進剤のいかんに拘らず、単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0028】
上記エポキシ硬化剤の中でも、フェノール樹脂やイミダゾール化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂などが好適であり、特にはフェノール樹脂やイミダゾール化合物を含有することが好ましく、さらには、少なくともフェノール樹脂を含有することが好ましい。フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類、フェノール/ナフトール樹脂等の公知慣用のものを、単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0029】
かかるフェノール樹脂としては、具体的には、フェノライトTD−2090,同2131,ベスモールCZ−256−A(DIC社製)、シヨウノールBRG−555,同BRG−556(昭和電工社製)、ミレックスXLC−4L,同XLC−LL(三井化学社製)、PP−700,同1000,DPP−M,同3H,DPA−145,同155(新日本石油化学社製)、SK−レジンHE100C,SK−レジンHE510,同900(住金ケミカル社製)、HF−1M,HF−3M,HF−4M,H−4(明和化成社製)、NHN,CBN(日本化薬社製)、HPC−9500(DIC社製)などを挙げることができ、これらフェノール樹脂を、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0030】
上記フェノール樹脂は、(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基と、フェノール樹脂中の水酸基との比率が、水酸基/エポキシ基(当量比)=0.2〜2となるような割合で配合することが好ましい。水酸基/エポキシ基(当量比)を上記範囲内とすることで、デスミア工程におけるフィルム表面の粗化を防止することができる。より好ましくは水酸基/エポキシ基(当量比)=0.2〜1.5であり、さらに好ましくは水酸基/エポキシ基(当量比)=0.3〜1.0である。
【0031】
上記ポリカルボン酸およびその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物およびその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物などの他、カルボン酸末端イミド樹脂等のカルボン酸末端を有する樹脂が挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のジョンクリル(商品群名)、サートマー社製のSMAレジン(商品群名)、新日本理化社製のポリアゼライン酸無水物、DIC社製のV−8000、V−8002等のカルボン酸末端ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0032】
上記シアネートエステル樹脂は、一分子中に2個以上のシアネートエステル基(−OCN)を有する化合物である。シアネートエステル樹脂は、公知のものをいずれも使用することができる。シアネートエステル樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、アルキルフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂が挙げられる。また、一部がトリアジン化したプレポリマーであってもよい。シアネートエステル樹脂の市販品としては、ロンザジャパン社製のフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂PT30、ロンザジャパン社製のビスフェノールA型ジシアネートで一部がトリアジン化されたプレポリマーBA230、ロンザジャパン社製のジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂DT−4000、DT−7000等が挙げられる。
【0033】
上記活性エステル樹脂は、一分子中に2個以上の活性エステル基を有する樹脂である。活性エステル樹脂は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。市販されている活性エステル化合物としては、例えば、DIC社製EXB−9451、EXB−9460、三菱化学社製DC808、YLH1030)などが挙げられる。
【0034】
(C)硬化剤の配合量としては、固形分換算として、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、1〜70質量部の範囲とすることが好ましい。(C)硬化剤の配合量が上記範囲よりも少ないと、硬化不足となるおそれがあり、一方、上記範囲を超えて多量に配合しても、硬化促進効果を増大させることはなく、かえって耐熱性や機械強度を損なう問題が生じ易いので、好ましくない。より好ましくは5〜65質量部であり、さらに好ましくは10〜50質量部である。
【0035】
上層を構成する熱硬化性樹脂組成物には、上記(A)エポキシ樹脂、(B)着色剤および(C)硬化剤に加えて、さらに、(D)無機充填剤を配合することが好ましい。かかる(D)無機充填剤としては、好適には、その屈折率と、樹脂成分の屈折率との差が0.05以上であるものを用いる。樹脂成分との間の屈折率差が大きい無機充填剤を用いることで、組成物の隠蔽性をより高めることができる。ここで、本発明において樹脂成分とは、(A)エポキシ樹脂を初めとする、組成物中に含まれる樹脂の混合物を意味する。一般的に、樹脂成分の屈折率は1.51〜1.59であるので、無機充填剤の屈折率は、具体的には1.46以下または1.64以上とすることが好ましい。また、本発明においては、(D)無機充填剤として、レーザー加工性に優れるものを用いることも好ましい。
【0036】
その屈折率と、樹脂成分の屈折率との差が0.05以上の(D)無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム(屈折率:1.64)、シリカ(屈折率:1.46)、酸化アルミニウム(屈折率:1.76)、酸化チタン(屈折率:2.52)などを用いることができる。また、レーザー加工性に優れる(D)無機充填剤としては、炭酸ガスレーザーの波長帯に強い吸収ピークを持ち、かつ、ビアホール形成の際に無機充填剤の残渣が残り難いものとして、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等が好ましく、また、より残渣が残らないものとして、硫酸バリウムがより好ましい。これら無機充填剤は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組み合せて用いることができる。
【0037】
そのほか、マイカ、アルミナ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物なども用いることが可能である。
【0038】
(D)無機充填剤の配合量は、固形分換算として、30〜80質量%であることが望ましい。無機充填剤の配合量がこの範囲より少ないと、組成物から形成されるドライフィルムを用いて得られる硬化膜の硬度などの塗膜性能が不十分となるおそれがあり、また、レーザー加工性も低下する。一方、無機充填剤の配合量がこの範囲を超えると、樹脂フィルムと積層した際にその界面で剥離が生じ、クラックを生ずる原因となるおそれがある。また、レベリング性などの塗布性が劣化して、レーザー加工後のデスミア工程でビアホールの側面や周囲から脱粒が生じ、ビアホールの形状が不安定となるおそれもある。無機充填剤の含有量は、より好ましくは30〜70質量%であり、さらに好ましくは35〜70質量%である。なお、上記無機充填剤の平均粒子径は、好適には、レーザー回折散乱法により測定される粒子径による平均粒子径で0.01μm以上10μm未満であり、より好適には0.05μm以上5μm未満、さらに好適には0.1μm以上2μm未満である。
【0039】
上層を構成する熱硬化性樹脂組成物には、さらに、フェノキシ樹脂、硬化触媒、添加剤、溶剤などを配合してもよい。
【0040】
フェノキシ樹脂は、造膜性を改善するために配合することができ、例えば、1256,4250,4275,YX8100BH30,YX6954BH30(三菱化学社製)、YP50,YP50S,YP55U,YP70,ZX−1356−2,FX−316,YPB−43C,ERF−001M30,YPS−007A30,FX−293AM40(東都化成社製)等が挙げられる。これらフェノキシ樹脂は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0041】
硬化触媒としては、ジシアンジアミド、芳香族アミン、イミダゾール類、酸無水物などを用いることができる。具体的には、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また、市販されているものとしては、例えば、四国化成工業社製の、2MZ−A,2MZ−OK,2PHZ,2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N,U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU,DBN,U−CATSA102,U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などを挙げることができる。これら硬化触媒は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0042】
また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、これら密着性付与剤としても機能する化合物を、熱硬化触媒と併用することが好ましい。
【0043】
上層を構成する熱硬化性樹脂組成物には、さらにウレタン化触媒を加えることができる。ウレタン化触媒としては、錫系触媒、金属塩化物、金属アセチルアセトネート塩、金属硫酸塩、アミン化合物およびアミン塩よりなる群から選択される1種以上のウレタン化触媒を使用することが好ましい。
【0044】
上記錫系触媒としては、例えば、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、無機錫化合物などが挙げられる。
【0045】
上記金属塩化物としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属の塩化物で、例えば、塩化第二コバルト、塩化第一ニッケル、塩化第二鉄などが挙げられる。
【0046】
上記金属アセチルアセトネート塩は、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属のアセチルアセトネート塩であり、例えば、コバルトアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0047】
上記金属硫酸塩としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属の硫酸塩で、例えば、硫酸銅などが挙げられる。
【0048】
また、本発明では、反応触媒として金属化合物を使用することができる。中でも、コバルトアセチルアセトナートが好適であり、その金属化合物の添加量は、上層を構成する熱硬化性樹脂組成物に対し、金属換算で10〜500ppm、好ましくは25〜200ppmの範囲である。
【0049】
添加剤としては、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤のうちの少なくともいずれか1種、ヒドロキシベンゾフェノン類、ヒドロキシベンゾエート類、ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート類、トリスヒドロキシメタン系エポキシ樹脂、テトラキスヒドロキシエタン系エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の紫外線吸収剤、エポキシ系、ビニル系、アクリル系、メタクリル系、アミノ系、フェニル系、メルカプト系、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、レオロジー調整剤、酸化防止剤、防錆剤などの公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0050】
溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを用いることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これら溶剤は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。なお、溶剤の配合量は、組成物の印刷性やフィルム形成性に基づき、選定することができる。
【0051】
次に、下層は、(a)エポキシ樹脂および(b)フェノール樹脂を含有するものであればよく、これにより銅の酸化を抑制する機能を発現させることができ、それ以外の点については、一般的なソルダーレジスト用の樹脂組成物と同様の組成の樹脂組成物からなるものとすることができる。
【0052】
本発明において、(a)エポキシ樹脂としては、レゾルシノール型エポキシ樹脂を含むことが好ましく、かかるレゾルシノール型エポキシ樹脂と、その他のエポキシ樹脂とを適宜組み合わせて用いることができる。レゾルシノール型エポキシ樹脂を用いると、銅回路の酸化が抑制され、外観性の低下を抑制する効果が得られる。特に、薄膜形成の際には、顕著な効果がある。レゾルシノール型エポキシ樹脂としては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。かかるその他のエポキシ樹脂としては、上記(A)エポキシ樹脂として挙げたもののうちから、1種または2種以上を組み合わせて適宜選択して用いることができ、特に制限はない。
【0053】
(b)フェノール樹脂としては、上記(C)硬化剤として挙げたフェノール樹脂のうちから、1種または2種以上を組み合わせて適宜選択して用いることができ、特に制限はない。また、(b)フェノール樹脂は、(a)エポキシ樹脂中のエポキシ基と、(b)フェノール樹脂中の水酸基との比率が、水酸基/エポキシ基(当量比)=0.2〜2となるような割合で配合することが好ましい。水酸基/エポキシ基(当量比)を上記範囲内とすることで、銅の酸化のさらなる抑制を図ることができる。より好ましくは水酸基/エポキシ基(当量比)=0.2〜1.5であり、さらに好ましくは水酸基/エポキシ基(当量比)=0.3〜1.0である。
【0054】
下層を構成する樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂および(b)フェノール樹脂の他、上層と同様の構成成分を、適宜配合して構成することができ、好適には、熱硬化性樹脂組成物からなるものとする。下層を構成する樹脂組成物には、添加剤として、酸化防止剤などを配合することもできる。
【0055】
酸化防止剤としては、特に限定されるものではないが、好ましくはヒンダードフェノール系化合物である。ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラック300、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上いずれも大内新興化学工業社製);MARKAO−30、MARK AO−40、MARK AO−50、MARK AO−60、MARK AO616、MARK AO−635、MARK AO−658、MARK AO−15、MARKAO−18、MARK 328、MARK AO−37(以上いずれもアデカアーガス化学社製);イルガノックス245、イルガノックス259、イルガノックス565、イルガノックス1010、イルガノックス1035、イルガノックス1076、イルガノックス1081、イルガノックス1098、イルガノックス1222、イルガノックス1330、イルガノックス1425WL(以上いずれもBASFジャパン社製)などが挙げられる。
【0056】
また、下層においても、上層に用いるものと同じ顔料を用いることができる。銅回路の変色を、効果的に隠蔽することができる点で有効である。
【0057】
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、上記上層および下層のそれぞれを構成する樹脂組成物を順次塗布、乾燥、必要に応じて保護フィルムをラミネートして、2層構造の乾燥塗膜を形成することにより、製造することができる。
【0058】
キャリアフィルムの材質としては、好適にはポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることができ、その他、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどを用いることができる。キャリアフィルムの厚みは、好適には8〜60μmである。キャリアフィルムの厚みが薄いほど、キャリアフィルム上から加工した際のレーザー加工性は向上するが、厚さが8μm未満であると、ビアホール周辺のレーザー照射によるダメージを抑制することが困難となる。一方、キャリアフィルムの厚みが60μmを超えると、レーザー光の透過率が低下して、開口径が小さくなる。キャリアフィルムの厚みは、より好ましくは10〜50μmであり、さらに好ましくは12〜38μmである。
【0059】
保護フィルムの材質としては、キャリアフィルムに用いるものと同様のものを用いることができ、好適にはPETまたはPPである。保護フィルムの厚みは、好適には5〜50μmである。保護フィルムの厚みが5μm未満であると、保護フィルムをラミネートする際のハンドリングが悪化する傾向にある。一方、保護フィルムの厚みが50μmを超えると、ドライフィルムの形態にした際の巻き径が大きくなりすぎて、搬送・取り扱いが困難となる。保護フィルムの厚みは、より好ましくは8〜38μmであり、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0060】
ここで、熱硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法などの方法を用いることができる。また、揮発乾燥方法としては、熱風循環式乾燥炉、IR(赤外線)炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど、蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて、乾燥機内の熱風を、向流接触させる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方法を用いることができる。
【0061】
また、本発明のプリント配線板は、銅からなる回路パターンが形成された基板上に、上記ドライフィルム上の乾燥塗膜を積層し、熱硬化してなる硬化膜を有するものである。その製造方法について、以下に説明する。
【0062】
まず、回路パターンが形成された基板に対し、脱脂やソフトエッチングなどの前処理を行う。その後、上記基板上に、上記本発明のドライフィルムをラミネートすることにより、基板上に、タックフリーの乾燥塗膜を形成する。なお、ラミネート後のキャリアフィルムは、ラミネート後、熱硬化後、レーザー加工後またはデスミア処理後のいずれかに、剥離すればよい。
【0063】
次に、乾燥塗膜が形成された基板を、130〜200℃で30〜120分間加熱し、熱硬化させて、硬化膜(樹脂絶縁層)を形成する。次に、このようにして形成された樹脂絶縁層の、回路パターンが形成された基板上の所定の位置に対応する位置に、レーザーを照射してビアホールを形成し、回路配線を露出させることで、プリント配線板を製造することができる。
【0064】
この際、ビアホール内の回路配線上に除去しきれないで残留した成分(スミア)が存在する場合には、このスミアを、過マンガン酸塩溶液等のデスミア処理の薬液を用いて分解除去するデスミア処理を行う。このデスミア処理には、プラズマを用いることができる。このようなプラズマ処理においては、例えば、真空プラズマ装置や、常圧プラズマ装置などを用いることができ、酸素、アルゴン、ヘリウム、四フッ化炭素などのガスを用いたプラズマ、および、これらの混合ガスのプラズマなど、公知のプラズマを用いることができる。
【0065】
なお、両面基板や多層基板においても、上記と同様にして、ドライフィルムを用いて硬化膜を形成し、レーザーによりビアホールを形成した後、所望に応じデスミア処理を行えばよい。
【0066】
このようにして製造されたプリント配線板には、さらに、回路配線に金めっきを施し、あるいはプリフラックス処理した後、実装される半導体チップなどの電子部品を、金バンプやはんだバンプにより接合して、搭載することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記表1(下層)および表2(上層)に示す各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混練して、下層用と上層用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0068】
【表1】

*1)ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(20℃で液状)(三菱化学社製,エポキシ当量184〜194)
*2)レゾルシノール型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製,エポキシ当量117)
*3)フェノールノボラック樹脂(DIC社製)
*4)球状シリカ(アドマテックス社製)
*5)イミダゾール(四国化成工業社製)
*6)溶剤
【0069】
【表2】

*7)ナフトール型エポキシ樹脂(DIC社製,エポキシ当量135〜165)
*8)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製,エポキシ当量200〜230)の固形分60%のシクロヘキサノン溶液
*9)フェノキシ樹脂(三菱化学社製)の固形分30%のシクロヘキサノン/エチルメチルケトン溶液
*10)フェノールノボラック樹脂(明和化成社製,水酸基当量105)の固形分60%のシクロヘキサノン溶液
*11)Pigment Blue 15:3(UV−visスペクトル(図2),IRスペクトル(図3))
*12)Pigment Yellow 147(UV−visスペクトル(図4),IRスペクトル(図3))
*13)*1,*7,*8,*9,*10の混合物の屈折率である。
【0070】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
表1,表2のようにして調製した下層用と上層用のそれぞれの熱硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて、厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに順次塗布し、90℃で乾燥させて、表3に示す各実施例および比較例のドライフィルムを作製した。下層の乾燥後膜厚は、それぞれ表1中に示すとおりであり、上層の乾燥後膜厚はいずれも10μmであった。
【0071】
【表3】

【0072】
<銅の酸化確認>
厚さ18μmの銅箔(GTS−MP−18,古河電子工業社製)の光沢面に、処理剤(CZ−8100+CL−8300,メック社製)を用いて前処理を施すことにより、銅エッチング量1μm相当のプロファイルを形成した。この前処理の施された銅箔に、表3に示す評価用各ドライフィルムを、2チャンバー式真空ラミネーター(CVP−300,ニチゴーモートン社製)により、ラミネート温度100℃、真空度5mmHg以下、圧力5kg/cmの条件でラミネートし、170℃で1時間加熱硬化することにより硬化膜を形成して、評価用基板を作製した。
【0073】
各基板の銅箔から硬化膜を剥離し、硬化膜に覆われていた部分の銅の酸化による硬化後の変色具合を目視にて確認した。結果は、変色が全く確認されない場合を◎、変色がほとんど確認されない場合を○、変色がわずかに確認された場合を△、変色が確認された場合を×とした。その結果を、表4に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
表4に示す結果から明らかなように、実施例1においては、酸化による変色がほとんど確認されなかった。また、実施例2では、実施例1と比較して、酸化が抑制されて、酸化による変色は全く確認されなかった。下層を薄くした実施例3であっても、比較例に比べると酸化抑制効果があるが、わずかに酸化による変色が確認された。下層を厚くした実施例4では、銅の酸化による変色を全く確認することができなかった。これに対し、比較例1〜3では、銅の酸化による変色が確認された。
【0076】
<外観変色確認>
次に、回路基板として、銅厚10μmの導電層が形成された400mm×300mm×厚み0.8mmの両面銅張積層板(MCL−E−679FGR,日立化成工業社製)を用い、これに処理剤(CZ−8100+CL−8300,メック社製)を用いて前処理を施すことにより、銅エッチング量1μm相当のプロファイルを形成した。この前処理の施された銅張積層板に、表3に示す評価用各ドライフィルムを、2チャンバー式真空ラミネーター(CVP−300,ニチゴーモートン社製)により、ラミネート温度100℃、真空度5mmHg以下、圧力5kg/cmの条件でラミネートし、170℃で1時間加熱硬化することにより硬化膜を形成して、評価用基板を作製した。
【0077】
評価用各基板につき、硬化膜上からの銅回路の変色を目視により確認して、回路の隠蔽性について評価した。変色が確認されない場合を○、変色がわずかに確認された場合を△、変色が確認された場合を×とした。その結果を、表5に示す。
【0078】
【表5】

【0079】
表5に示す結果から明らかなように、実施例1〜4については、銅の酸化が抑制されており、変色が確認されなかった。これに対し、比較例1〜3については、変色が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルム上に、銅からなる回路パターンが形成された基板上に積層される乾燥塗膜を備えるドライフィルムにおいて、
前記乾燥塗膜が、前記回路パターンを被覆する、銅の酸化抑制のための下層と、該下層上に積層された、レーザー加工および銅回路隠蔽のための1層以上の上層とからなり、該下層が、(a)エポキシ樹脂および(b)フェノール樹脂を含有する組成物から形成されていることを特徴とするドライフィルム。
【請求項2】
前記(a)エポキシ樹脂に、レゾルシノール型エポキシ樹脂が含まれる請求項1記載のドライフィルム。
【請求項3】
前記上層のうち少なくとも1層が、(A)エポキシ樹脂と、(B)着色剤と、(C)硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物からなり、該(B)着色剤が、波長350〜550nmまたは570〜700nmの範囲のうち、いずれか一方または両方の範囲内に吸光度のピークを有し、かつ、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有する請求項1または2記載のドライフィルム。
【請求項4】
前記レーザーが炭酸ガスレーザー、UV−YAGレーザーおよびエキシマレーザーのうちから選択されるいずかである請求項3記載のドライフィルム。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、(D)無機充填剤として、その屈折率と、樹脂成分の屈折率との差が0.05以上であるものの1種または2種以上を、固形分換算として、30〜80質量%含有する請求項3または4記載のドライフィルム。
【請求項6】
銅からなる回路パターンが形成された基板上に、請求項1〜5のうちいずれか一項記載のドライフィルム上の前記乾燥塗膜が積層され、熱硬化されてなることを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−12729(P2013−12729A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120017(P2012−120017)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(310024066)太陽インキ製造株式会社 (16)
【Fターム(参考)】