説明

ドライフィルムレジストの薄膜化処理方法

【課題】ドライフィルムレジスト(DFR)をムラ無く、均一に薄膜化することが可能で、除去液の再生が可能で、廃液量を大きく削減でき、環境に優しい処理方法であり、除去液の再生の処理時間が大きく短縮可能なドライフィルムレジストの薄膜化処理方法を提供する。
【解決手段】DFRが貼り付けられた基板の該DFRを処理液で処理する工程、その後に、除去液を用いて表面の不用なDFRを除去液を用いて除去する工程とからなるDFRの薄膜化処理方法において、除去液中に含まれるDFR濃度が0.5質量%を超える前に、除去液中に溶解したDFRを、pHを一旦低下させることにより、凝集、沈殿させ、ろ過助剤としてセルロースパウダーを使用し、加圧型の脱水ろ過機を用いて固液分離し、分離後のろ過水のpHを中性に戻して、再度、除去液として再利用することを特徴とするDFRの薄膜化処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライフィルムレジスト(以下、「DFR」と略す場合がある)を、ムラ無く、均一に薄膜化することが可能なDFRの薄膜化処理方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板やリードフレームの製造方法としては、基板上にエッチングレジスト層を形成し、そのエッチングレジスト層で被覆されていない金属層をエッチングによって取り除くサブトラクティブ法が挙げられる。この手法は、他の手法に比べ、製造工程が短くコスト安であること、金属パターンと絶縁板の接着強度が強いこと等の優位点があるため、現在のプリント配線板及びリードフレーム製造の主流となっている。そして、サブトラクティブ法にてエッチングレジスト層を設ける方法としては、DFRと呼ばれるシート状の感光材料及び液状フォトレジストを用いた方法が挙げられ、これらの中でも、取り扱い性が優れ、テンティングによるスルーホールの保護が可能なことから、DFRの方が一般的に好まれている。
【0003】
さて、近年の電子機器の小型、多機能化に伴い、機器内部に使用されるプリント配線板も高密度化や金属パターンの微細化が進められており、サブトラクティブ法によって、現在では、導体幅が50〜80μm、導体間隙が50〜80μmの金属パターンを有するプリント配線板が製造されている。また、更なる高密度化、微細配線化が進み、50μm以下の超微細な金属パターンが求められるようになっている。それに伴い、パターン精度やインピーダンスの要求も高くなっている。このような微細な金属パターンを達成するために、従来からセミアディティブ法が検討されているが、工程数が大幅に増加するという問題やめっき銅の密着性不良等の問題があった。
【0004】
サブトラクティブ法において、このような微細な金属パターンを形成する場合、生産ライン全ての技術レベルや管理レベルを向上させる必要があることはもちろんであるが、その中でもエッチングが大きなポイントとなる。これは、サブトラクティブ法の特徴である導体の側面方向から進行するサイドエッチングが問題となるからであり、サイドエッチングの量を抑えるために、液組成管理、基板への液吹き付け角度や強さ等、最適なエッチング条件を調整する必要がある。また、エッチング条件の調整だけではなく、エッチングレジスト層の膜厚によってもサイドエッチングは影響を受ける。つまり、膜厚が厚いほど微細なレジストパターン間に液が循環しにくくなり、その結果、サイドエッチングが大きくなる。現在主流となっているDFRの厚みは25μm前後の厚みであり、一方、微細な金属パターンを形成するためにはできるだけレジスト膜厚を薄くする必要があり、そのために、近年では10μm以下の厚みのDFRが開発され、商品化されはじめている。しかし、このような薄いDFRではゴミを核とした気泡の混入及び凹凸追従性が不十分となり、レジスト剥がれや断線が発生する問題があった。
【0005】
このような問題を解決すべく、サブトラクティブ法によって導電パターンを作製する方法において、基板上にDFRを貼り付けた後、無機アルカリ性化合物の含有量が5〜20質量%の高濃度アルカリ水溶液によってDFRを処理し、その後、一挙に除去する方法で薄膜化処理を行い、次に回路パターンの露光、現像、エッチングを行うことを特徴とする導電パターンの形成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、不要なレジストを除去する工程として、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物のうち、少なくともいずれか1種を含むpH5〜10の水溶液を用いて、レジスト1cm当たり0.03〜1L/minの供給流量で除去する方法が記載されている。除去液の使用方法について、引用文献1には詳細に説明されていないが、一度使用してそのまま排出してしまう場合と、予め一定量の除去液を槽内に貯めておき、繰り返し使用する場合が考えられる。そのまま排出してしまう場合における除去液の排出量についても具体的に述べられてはいないが、例えば、両面銅張積層板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学(株)製、商品名:CCL−E170)に貼り付けた厚み40μmのDFRを20μmにまで薄膜化処理する場合を想定して実験した結果を説明する。この薄膜化処理において、不要なレジストを除去するために必要な最低限の除去液の供給量として、基板の半分の面積に相当する除去液を常時吐出し、不要なDFRの除去作業を行った時の排出量を考えると、1枚(片面)処理するだけでも26〜867L/minの排出量になり、除去液の費用に関しコスト的に問題があり、また、排出された除去液を廃棄処理するための排水処理設備が別途必要となるなどの問題もあった。
【0006】
次に、予め一定量の除去液を槽内に貯めておき繰り返し使用する場合、除去液が建浴後の新液である場合は問題無く薄膜化処理が可能であったが、除去液を循環させて繰り返し使用した場合、除去液のpHに関係なく、除去液中に含有されるDFR溶解物の濃度がある一定量を超えると、薄膜化処理したDFR表面が白く曇る現象(曇りムラ)が見られる場合があった。薄膜化処理を行った後、露光、現像、エッチングを行うことにより金属パターンを形成するが、曇りムラが発生した場所は露光量が不足して硬化不足となり、現像工程において正常部よりもDFRが薄くなるか、または完全にDFRが溶解してしまうこととなる。このように、本来DFRが存在すべき部分であるのにDFRが無い部分や正常部よりもDFRが薄くなった部分は、次工程のエッチング工程でエッチングされ、欠陥の無い金属パターンを得ることができなくなり、製品としては全く使用できなくなるという問題が発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/096438号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、DFRをムラ無く均一に薄膜化することが可能で、除去液の再生も可能であり、これにより廃棄量を大きく削減できる、環境に優しいDFRの薄膜化処理方法であり、更に、除去液の再生の処理時間が大きく短縮可能である薄膜化処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが検討した結果、DFRが貼り付けられた基板の該DFRを処理液で処理する工程、その後に、除去液を用いて表面の不用なDFRを除去する工程とからなるDFRの薄膜化処理方法において、除去液中に含まれるDFR濃度が0.5質量%を超える前に、除去液中に溶解したDFRを、pHを一旦低下させることにより、凝集、沈殿させ、ろ過助剤としてセルロースパウダーを使用し、加圧型の脱水ろ過機を用いて固液分離し、分離後のろ過水のpHを中性に戻して、再度、除去液として再利用することを特徴とするDFRの薄膜化処理方法によって、上記課題を解決できた。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、基板上のDFRを処理液及び除去液によって、ムラ無く均一に薄膜化処理するものである。薄膜化処理の方法としては、まず、処理液で処理する工程を行い、DFRのミセルを一旦不溶化し、高濃度アルカリ水溶液中に溶解拡散しにくくする。そして、その後、一挙にミセルを除去する方法で表面の不要なDFRを除去する工程を行い、薄膜化を行う。除去液を繰り返し使用し、除去液中に溶解したDFR濃度が高くなってくると、薄膜化処理したDFR表面に曇りムラが発生し、0.5質量%を超えてDFRが溶解している除去液はそれ以上使用することはできなくなり、これまでは廃液処理を行っていた。しかしながら、これでも廃液量の負担は大きく、更に削減する必要があった。延命処置として、各種フィルターを用いて除去液中に溶解したDFRを除去する方法があるが、安価な粗いフィルターを用いた場合は溶解した細かなDFRが捕獲できず、曇りムラが発生することがあり、高価な目の細かいフィルターを用いた場合、フィルターの目詰まりが激しく、フィルター交換の手間と経済的な面を考慮すると適切ではなかった。本発明で鋭意検討した結果、除去液中に含まれるDFR濃度が0.5質量%を超える前に、除去液中に溶解したDFRを、除去液のpHを一旦低下させることにより凝集、沈殿させ、加圧型の脱水ろ過機を用いて固液分離し、分離後のろ過水のpHを中性に戻して再度除去液として再利用することが可能であることが判明した。除去液の再生は、DFRの種類にもよるが、最低でも5回の再生が可能であり、このような方法で除去液を再利用することで、廃液処理量は更に大きく削減することが可能となった。
【0011】
更に、薄膜化処理における除去液の再生処理を行う場合に重要な点は、再生処理のスピードである。薄膜化の速度はDFRの種類によって異なり、薄膜化の速度が遅いDFRを用いた場合、薄膜化処理の速度に対して再生処理の速度が速いために、DFRの薄膜化処理中に除去液の再生が可能となるが、薄膜化処理の速度が速いDFRを用いた場合は、薄膜化処理の速度に対し再生処理の速度が遅くなってしまい、再生処理が追い付かなくなる場合があった。特に、基盤の両面にDFRを貼り付けた両面処理を行う場合には、片面処理に比べ2倍量のDFRが除去液中に溶解することとなり、このため、再生処理の速度を早める必要があった。この点に関し検討した結果、加圧型の脱水ろ過機を用いて固液分離プロセスを行い、ろ過助剤としてセルロースパウダーを添加することで、ろ過速度が大きく改善できることが判明した。また、使用するセルロースパウダーとして、その繊維径が10〜30μm、繊維長が30〜200μmの範囲にあるものを使用することで、更に効率良く脱水ろ過を行うことができることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】薄膜化処理装置の構成を簡単に表した模式図である。
【図2】除去液を再生する工程を表した簡単なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のDFRの薄膜化処理方法について詳細に説明する。DFRが貼り付けられた基板は、基板の少なくとも片面にDFRを貼り付けることで得られる。貼り付けには、例えば、100℃以上に加熱したゴムロールを加圧して押し当てるラミネータ装置を用いる。基板には酸洗等の前処理を施しても良い。貼り付け後、DFRのキャリアフィルムを剥がし、DFRの薄膜化処理を施す。
【0014】
本発明のDFRの薄膜化処理方法の後に回路パターンの露光を行い、更に現像を行ってエッチングレジスト層を形成し、次にエッチングレジスト層以外の金属層をエッチングすることで、導電パターンを形成することができる。
【0015】
基板としては、プリント配線板またはリードフレーム用基板が挙げられる。プリント配線板としては、例えば、フレキシブル基板、リジッド基板が挙げられる。フレキシブル基板は、通常、ポリエステルやポリイミド、アラミド、ポリエステル−エポキシベースが絶縁層の材料として用いられている。フレキシブル基板の絶縁層の厚さは5〜125μmで、その両面もしくは片面に1〜35μmの金属層が設けられており、非常に可撓性がある。絶縁層や金属層の厚みはこの範囲以外のものであっても良い。フレキシブル基板は、シート状の形態でも良いし、ロール状の形態でも良い。ロール状の形態であれば、ロール トゥ ロール(Roll to Roll)の方式で、薄膜化処理、露光、現像、エッチング等の工程を処理できる。
【0016】
リジッド基板としては、紙基材またはガラス基材にエポキシ樹脂またはフェノール樹脂等を浸漬させた絶縁性基板を必要枚数重ねて絶縁層とし、その片面もしくは両面に金属箔を載せ、加熱、加圧して積層し、金属層が設けられたものが挙げられる。また、内層配線パターン加工後、プリプレグ、金属箔等を積層して作製する多層用のシールド板、また貫通孔や非貫通孔を有する多層板も挙げられる。厚みは60μm〜3.2mmであり、プリント基板としての最終使用形態により、その材質と厚みが選定される。金属層の材料としては、銅、金、銀、アルミニウム等が挙げられるが、銅が最も一般的である。これらプリント基板は、例えば「プリント回路技術便覧−第二版−」((社)プリント回路学会編、日刊工業新聞社刊)や「多層プリント回路ハンドブック」(J.A.スカーレット編、(株)近代化学社刊)に記載されているものを使用することができる。リードフレーム用基板としては、鉄ニッケル合金、銅系合金等の基板が挙げられる。
【0017】
DFRとは、一般的に使用されている回路形成用の感光性材料であり、光照射部が硬化して現像液に不溶化するネガ型のレジストが挙げられる。DFRは、少なくとも光架橋性樹脂層からなり、ポリエステル等のキャリアフィルム(透明支持体)上に光架橋性樹脂層が設けられ、場合によってはポリエチレン等の保護フィルムで光架橋性樹脂層上を被覆した構成となっている。ネガ型の光架橋性樹脂層は、例えば、カルボキシル基を含むバインダーポリマー、光重合性不飽和化合物、光重合開始剤、溶剤、その他添加剤からなる。それらの配合比率は、感度、解像度、硬度、テンティング性等の要求される性質のバランスによって決定される。光架橋性樹脂組成物の例は「フォトポリマーハンドブック」(フォトポリマー懇話会編、1989年刊行、(株)工業調査会刊)や「フォトポリマー・テクノロジー」(山本亜夫、永松元太郎編、1988年刊行、日刊工業新聞社刊)等に記載されており、所望の光架橋性樹脂組成物を使用することができる。光架橋性樹脂層の厚みは15〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。この厚みが15μm未満では、ゴミを核とした気泡の混入や凹凸追従性不良によってレジスト剥がれや断線が発生する場合があり、100μmを超えると、薄膜化で溶解除去される量が多くなって薄膜化処理時間が長くなることがある。
【0018】
薄膜化処理とは、DFRの厚みを略均一に薄くする処理のことであり、薄膜化処理を施す前の厚みの0.05〜0.9倍の厚みにする。薄膜化処理の工程は大きく2つの工程に分けられる。第一に、処理液として高濃度アルカリ水溶液を用いてDFRの光架橋性樹脂成分のミセルを一旦不溶化し、アルカリ水溶液中に溶解拡散しにくくする工程、第二に、この不溶化したミセルを除去する工程である。その後に、ミセルが除去されて薄膜化された光架橋性樹脂層表面を十分に水洗する工程を設けても良い。
【0019】
処理液に使用されるアルカリ性化合物としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの炭酸塩または重炭酸塩等のアルカリ金属炭酸塩、カリウム、ナトリウムのリン酸塩等のアルカリ金属リン酸塩、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物等のアルカリ金属水酸化物、カリウム、ナトリウムのケイ酸塩等のアルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物を挙げることができる。また、有機アルカリ性化合物として、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキサイド(コリン)等の有機アルカリ性化合物が挙げられる。本発明に係わる上記アルカリ性化合物は、単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。このうち特に好ましい化合物としては、アルカリ金属炭酸塩が挙げられる。
【0020】
処理液は、上記アルカリ性化合物を処理液に対して5〜20質量%含有することが好ましい。5質量%未満では溶解除去途中のミセルが溶解拡散しやすくなって、処理液の流動によって薄膜化処理が不均一になる場合がある。また、20質量%を超えると析出が起こりやすくなって、液の経時安定性、作業性に劣る場合がある。溶液のpHは9〜12の範囲とすることが好ましい。また、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜少量添加することもできる。
【0021】
処理液を用いて光架橋性樹脂成分のミセルを一旦不溶化する工程は、DFRを貼り付けた基板を処理液中に浸漬させて実施する、いわゆるディップ方式で行うことが好ましい。ディップ方式で行うことにより、光架橋性樹脂表面を均一にミセル化させることが可能となる。
【0022】
処理液の温度範囲としては、具体的には10〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜35℃、更に好ましくは15〜25℃である。処理液の温度が大きく異なると、不溶化するミセルの量が安定しなくなるため、処理液の温度は常に一定に保つことが望ましい。
【0023】
本発明における不溶化したミセルを除去する工程に用いる除去液は、温度20℃におけるpHの値が6.0〜9.0の範囲の水溶液であり、かつ、除去液中に溶解した不要なDFRの濃度が0.5質量%以下である水溶液を用いる。この除去液を用いて、高濃度アルカリ水溶液で不溶化された光架橋性樹脂成分を再分散させて溶解除去する。
【0024】
本発明に用いる除去液は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物のうち少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。また、除去液の温度20℃におけるpHの値は、pH7.0〜8.5の範囲がより好ましい。不要なDFRの除去工程においてpHが6.0未満では、再分散により溶け込んだ光架橋性樹脂成分が凝集し、不溶性のスラッジとなって薄膜化したDFR表面に付着し、薄膜化処理したドライフィルム表面に白い曇りムラが発生する。一方、水溶液のpHが9.0を超えると、光架橋性樹脂成分の溶解拡散が促進され、面内で膜厚ムラが発生するため好ましくなく、同様に、薄膜化処理したドライフィルム表面に白い曇りムラが発生する。
【0025】
本発明に用いる除去液のpHは、硫酸、リン酸、塩酸などを用いて、液のpHを調整した後に使用しても良い。また、除去処理の工程で、前段の処理工程からのアルカリ性化合物の持ち込みなどから除去液のpHの値が上昇した場合、規定の範囲内に収まるように随時必要量を添加し、規定のpHの範囲内に収めた後に、再度、除去工程を開始することができる。更に、予め、pHが規定の範囲内に収まるように酸の添加量を自動制御しておけば、連続して除去処理を行うこともできる。
【0026】
本発明に用いる除去液のpHの測定方法としては、ある一定量の除去液を採取し、温度を20℃に調整した後、測定することもできるが、薄膜化装置で使用している除去液のpHをそのまま測定することが好ましい。除去液は、予め一定量の除去液を槽内に貯めておき、繰り返し使用するものであるため、槽内の温度を20℃に制御しておき、槽内に設置したpH計にて随時測定することが好ましい。このように、温度を自動制御し、pHを随時測定することで、上記の如く、酸の添加量を自動制御して連続して除去処理を行うことが可能となる。pH計としては一般的に用いられる水溶液測定タイプのpH計が使用可能であり、例えば、イワキ(株)製の商品名:S650CDなどを用いることができる。
【0027】
本発明に用いる除去液中のDFR濃度の範囲は0.5質量%以下であり、0.3質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましい。除去液中のDFR溶解量の範囲が0.5質量%より多くなると、薄膜化処理したDFR表面に白い曇りムラが発生する。このため、除去液中のDFR溶解量が0.5質量%を超える前に除去液の再生処理を行う必要がある。
【0028】
本発明に用いる除去液の再生方法としては、まず始めに、レジストが溶解した除去液を良く攪拌しながら、ろ過助剤としてセルロースパウダーを添加する。ろ過助剤としては活性炭や珪藻土なども一般的に使用されるが、活性炭は、分離は可能であるものの、ろ過を完了するまでに長い時間が必要となり、現実的ではなかった。珪藻土は、分離の速度は速いものの固液分離が完全でなく、ろ過後のろ液中にレジストが残っている場合や、珪藻土に含まれる酸化ケイ素などの酸化化合物が基板の表面に付着することで、製品とした場合に欠陥を発生する場合があった。これに対しセルロースパウダーは、主成分がセルロースであり基板の最終製品に悪影響を与えないこと、更に、ろ過を行う際に完全に捕獲され、ろ過後の除去液中にセルロースパウダーが残存することがほぼ皆無であることから、安全に使用することが可能であった。
【0029】
セルロースパウダーの添加量としては特に制限は無く、セルロースパウダーの種類によってもその添加量には最適な値が存在するが、除去液の質量に対して0.1〜1.0質量%の範囲が好ましく、0.2〜0.6質量%の範囲がより好ましい。添加量が少ない場合はろ過速度の改善が認められないし、添加量を多くすると、脱水後にフィルター上に形成されるレジスト固形物(以後、「ケーキ層」と略すことがある)の厚みが大きくなり過ぎて、脱水ろ過の回数を増やす必要に迫られる場合や、ケーキ層が嵩高くなることから廃棄物処理物の体積量が多くなってしまう問題点が発生する場合がある。
【0030】
セルロースパウダーは一般的に使用される市販のものを使用することが可能であるが、その繊維径が10〜30μm、繊維長が30〜200μmの範囲にあるものを使用することで、更に効率良く脱水ろ過を行うことができる。より好ましい繊維径は15〜30μmであり、更に好ましい繊維径は15〜25μmである。また、より好ましい繊維長は50〜150μmであり、更に好ましい繊維長は100〜150μmである。繊維径が細くなり過ぎても太くなり過ぎても脱水効率が悪くなる場合があるし、繊維長が短くなり過ぎると脱水効率が悪くなる場合があるし、長くなり過ぎても脱水効率が悪くなる場合があり、更に、ケーキ層の嵩が高くなってしまい、廃棄物が嵩張る問題点が生じる場合がある。具体的に用いられるセルロースパウダーの一例としては、日本製紙ケミカル(株)製のKCフロック(登録商標)、東亜化成(株)製のARBOCEL(登録商標)、ADVANTEC(株)製の無灰パルプや濾紙粉末、ダイセルファインケム(株)製のセリッシュ(登録商標)などを挙げることができる。
【0031】
本発明に使用されるセルロースパウダーの繊維長と繊維径の測定方法は、OpTest Equipment(株)製のFQA;ファイバークオリティーアナライザーを用いて測定した。測定条件は、繊維長:0.04〜10.0mm、繊維幅:7〜60μm、ファイン分:0.04〜0.20mmの設定である。繊維長は加重平均値の繊維長[LW]の項で示される値を用い、繊維径は[FiberWidth]の項で示される値を用いた。
【0032】
本発明に用いる除去液の再生方法の次工程として、除去液を良く攪拌しながら酸を添加し、pHを4.0以下に調整する。pHの範囲は3.0〜4.0の範囲が好ましく、3.0〜3.5の範囲がより好ましい。pHを低くするほどDFRの凝集が進行しやすくなるので好ましいものの、後工程で再度pHを中性に戻す必要があり、この時に過剰なアルカリ溶液が必要となるため、低くてもpH=3.0までに抑えておくことが好ましい。pHを下げるために用いる酸は、一般的に用いられる酸であれば問題無く使用できる。例えば、硫酸、塩酸、リン酸などを使用することが好ましい。
【0033】
本発明に用いる除去液の再生方法の次工程として、加圧型の脱水ろ過機を用いて固液分離を行う。固液分離とは、除去液を酸性にし、凝集、沈殿したDFR(固体成分)と除去液(液体成分)とを分離する工程である。固液分離のプロセスに用いられる機器としては、遠心力を利用したサイクロン方式のものなどもあるが、サイクロン方式のものは固液の比重差が重要な因子であり、DFRの比重が除去液と大きな差が無く、完全に分離するまでに長い時間を要する。このことから、固液分離に用いる装置としては加圧ろ過方式が、効率良く固液分離が可能であり好ましい。また、使用するフィルターとしては、紙製のもの、化学繊維製のもの、不織布など、適宜使用することができる。孔径としては特に制限は無いが、数μm〜数十μm程度のものを使用することで効率良くろ過が可能となる。加圧型の脱水ろ過機は一般的なフィルターを用いた加圧型のろ過方式であり、液面に圧力を加えることでろ過を促進させる方法である。加圧ろ過方式としては、例えば、各社フィルタープレス機、その他、三進製作所(株)製のレプレスター(登録商標)、三鷹工業所(株)製のオートカスポンクリーナー(Cuspon Cleaner、登録商標)、三協技研工業(株)製のエクセラー(登録商標)フィルターなどを用いることができる。
【0034】
本発明に用いる除去液の再生方法の最後の工程として、ろ過した除去液を良く攪拌しながらアルカリ性化合物を添加し、pHを中性に戻す。中性として、除去液の温度20℃におけるpH=7に調整することが最も好ましいが、除去液として使用可能な範囲のpHである6.0〜9.0に調整することができれば、除去液として問題無く使用することができる。更に、pHの範囲としてはpH7.0〜8.5の範囲がより好ましい。pH調整に使用されるアルカリ性化合物としては、除去液に使用されるものと同じ種類のアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物のうち少なくともいずれか1種を用いることが好ましい。このうち特に好ましい化合物としては、アルカリ金属炭酸塩が挙げられる。
【0035】
本発明に用いる除去液の再生処理は、使用するDFRの種類にも依存するが、最低でも5回の再生処理が可能である。しかしながら、再生処理をそれ以上行っていくと、理由はまだ明らかにされてはいないものの、除去液中に残存するイオン種の含有量が増えてくることにより、除去液での処理工程で必要以上に過剰な薄膜化処理が進行してしまう場合があり、安定した薄膜化処理が行えなくなる現象が発生する場合があった。このようなことから、再生処理は最低でも5回の処理が行えるが、その後は、DFRの種類や薄膜化処理の状況を確認しながら廃棄時期を見極めることが必要となる。
【0036】
本発明に用いる除去液中のDFR濃度の測定方法としては、絶乾質量から測定することができる。具体的な方法としては、例えば、DFRが溶解した除去液10gをシャーレに採取し、温度100℃の乾燥機に入れ、完全に水分を蒸発させる。次に、蒸発後の質量を測定することで、除去液10g中に溶解していたDFRの量(質量%)を計算することが可能となる。
【0037】
本発明における表面の不要なDFRを除去する工程としては、処理液を用いて一旦不溶化させた光架橋性樹脂成分のミセルを一気に除去することが望ましいことから、スプレー方式、ブラッシング方式、スクレーピング方式などがあり、スプレー方式が、光架橋性樹脂層の溶解速度の点からは最も好ましい。スプレー方式の場合、処理条件(温度、時間、スプレー圧)は使用する光架橋性樹脂成分の溶解速度に合わせて適宜調整される。具体的には、処理温度は10〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜35℃、更に好ましくは15〜25℃である。また、スプレー圧は0.01〜0.5MPaとするのが好ましく、0.1〜0.3MPaがより好ましい。スプレーは、不要なDFRを滞留させることなく一気に除去することが好ましいことから、光架橋性樹脂層表面に垂直な方向に対して傾いた方向から噴射するのが好ましい。
【0038】
除去液の供給流量は、DFR1cm当たり0.030〜1.0L/minが好ましく、0.050〜1.0L/minがより好ましく、0.10〜1.0L/minが更に好ましい。供給流量がこの範囲であると、薄膜化後の光架橋性樹脂層表面に不溶解成分を残すことなく、面内略均一にミセルを除去することができる。DFR1cm当たりの供給流量が0.030L/min未満では、不溶化した光架橋性樹脂成分の溶解不良が起こる場合がある。一方、供給流量が1.0L/minを超えると、供給のために必要なポンプなどの部品が巨大になり、大掛かりな装置が必要となる場合がある。更に、1.0L/minを超えた供給量では、光架橋性樹脂成分の溶解拡散に与える効果が変わらなくなることがある。
【0039】
本発明に係わる薄膜化処理において、除去液を供給し、処理液で不溶化された光架橋性樹脂成分を再分散させて溶解除去した後、DFR表面を水によって十分に洗浄することが好ましい。水洗処理の方法は、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式等があり、処理速度が速いため、スプレー方式が最も適している。
【0040】
本発明に係わる薄膜化処理を行った後、露光、現像、エッチングを行うことにより、回路パターンを形成することができる。露光方法としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とした反射画像露光、フォトツールを用いた片面、両面密着露光や、プロキシミティ方式、プロジェクション方式やレーザー走査露光が挙げられる。走査露光を行う場合には、He−Neレーザー、He−Cdレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンイオンレーザー、ルビーレーザー、YAGレーザー、窒素レーザー、色素レーザー、エキシマレーザー等のレーザー光源を発光波長に応じてSHG波長変換して走査露光する、あるいは液晶シャッター、マイクロミラーアレイシャッターを利用した走査露光によって露光することができる。
【0041】
現像の方法としては、使用するDFRに見合った現像液を用い、基板の上下方向から基板表面に向かってスプレーして、レジストパターンとして不要な部分を除去し、回路パターンに相当するエッチングレジスト層を形成する。一般的には、1〜3質量%の炭酸ナトリウム水溶液が使用される。
【0042】
エッチングは、現像で形成されたエッチングレジスト層以外の露出した金属層を除去する方法である。エッチング工程では、「プリント回路技術便覧」((社)日本プリント回路工業会編、1987年刊行、日刊工業新聞社発行)記載の方法等を使用することができる。エッチング液は金属層を溶解除去できるもので、また少なくともエッチングレジスト層が耐性を有しているものであれば良い。一般に金属層に銅を使用する場合には、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液等を使用することができる。
【0043】
以下、本発明の薄膜化処理方法で使用される装置について、詳細に説明する。
【0044】
図1は、薄膜化処理装置の構成を簡単に表した模式図である。この図は左側から、処理液を用いて光架橋性樹脂層成分のミセルを一旦不溶化し、処理液中に溶解拡散しにくくする工程(1)、次に、この不溶化したミセルを除去する工程(2)、次に、ミセルが除去されて薄膜化された光架橋性樹脂層表面を十分に水洗する工程(3)、最後に、ブロアを用いて、薄膜化された光架橋性樹脂層表面上に残っている水を完全に除去する工程(4)で使用されるユニット1〜4を示したものである。
【0045】
DFRが貼り付けられた基板5は、まず搬入口6より挿入される。工程(1)のユニット1にはディップ槽7が設けてあり、ディップ槽7の中には搬送用ロール8が対になった状態で設置されている。基板5上のDFRは、このディップ槽7の中で不溶化されたミセル層を形成することとなる。処理液は、ディップ槽の下部から処理液供給用ポンプ9にて供給され、オーバーフローさせる。オーバーフローした処理液は、処理液回収管10を介して処理液貯蔵タンク11に回収され、再使用されることとなる。また、処理液回収管10にはバルブ12が取り付けてあり、古くなった処理液は、これを切り替えることで廃液管18から適宜廃液することもできる。
【0046】
次に基板5は、連結口13を通って次工程(2)のユニット2に搬送される。ユニット2にはミセル除去用のスプレーノズル14が設置してあり、このスプレーノズルに除去液が供給、噴出され、基板5上に形成された不溶化したミセルを一気に除去する。ミセル除去用のスプレーノズル14は、両面処理が可能なように基板5の上下に設置されてある。ユニット1と同様に、除去液は貯蔵タンク15からポンプ16を介して供給される。ユニット2の下部にはバルブ17が取り付けてある除去液回収管10と廃液管18があり、これらを操作することで回収と廃棄を選択することが可能となる。
【0047】
ユニット3とユニット4はそれぞれ、水洗工程(3)と乾燥工程(4)のユニットである。ユニット3では、水供給管26から水洗用のスプレーノズル19に水が供給され、基板5の表面を綺麗に洗浄する。洗浄後の水は排水処理管20を介し廃棄される。水洗後、基板5はユニット4に導入される。ユニット4にはターボブロワ21が設けられ、ターボブロワ21の吸引管22がユニット4に接続され、ターボブロワ21の吐出管23に複数の空気噴射ノズル24が接続され、基板5の表面に向けて空気を噴射する構成となっている。これにより、基板5に付着した水滴を除去し、搬出口25より基板5が搬出され、一連の薄膜化処理が完了する。
【0048】
図2は、除去液を再生する工程を表した簡単なフロー図である。まず始めに、DFRが溶解した除去液を本槽とは別の再生処理槽に移動させる。ここで除去液を攪拌させながら必要量のセルロースパウダーを添加する。セルロースパウダーが良く分散したら、次に、pHが3.0〜4.0の範囲になるまで酸を添加する。pHが完全に3.0〜4.0の範囲になったところで、加圧型の脱水ろ過機を用いて固液分離を開始する。固液分離が完了したら、分離した除去液にアルカリを加えてpHを6.0〜9.0の範囲に調整する。pHの調整が完了したら、除去液を本槽に戻して終了となる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0050】
比較例1
両面銅張積層板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学(株)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト(旭化成イーマテリアルズ(株)製、商品名:サンフォート(登録商標)AQ−4038、厚み40μm)を貼り付けた。次に、キャリアフィルムを剥離した後、DFRの厚みが平均10μmにする薄膜化処理を行った。この時の薄膜化処理の条件としては、表1に記載してある如く、処理液の組成として10質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用い、3m/minの処理速度で薄膜化処理した。1回の処理に要する時間は1minであり、1回の処理で10μmの薄膜化処理が可能であった。なお、処理液の温度は20℃、ディップ方式で処理した。除去液の組成としてはpH=7.5の炭酸ナトリウム水溶液とし、除去液の温度は20℃、スプレー圧力は0.15MPa、除去液の流量は、DFR1cm当たり0.3L/minを使用する、かけ流しの条件で行った。このため、薄膜化処理に要した除去液の水量は上記銅張積層板の面積×0.3L/minで計算され、約520L/minすなわち31200L/hrの除去液使用量となった。
【0051】
比較例2
同様の薄膜化処理を、140Lの除去液を建浴、循環させ、除去液中に溶解している不要なDFR濃度が0.3質量%になるまで繰り返し行い、その後、廃棄した。除去液は、薄膜化処理を行っている間、必要に応じて0.5質量%の硫酸を加えて、20℃におけるpHの値が常に7.0〜8.5の範囲になるように調整した。除去液中のDFR濃度が0.3質量%になるまでに、比較例1で使用した銅張積層板では80枚の薄膜化処理が必要であり、処理時間として約240minを要した。これより、140Lの除去液を240min使用した後廃棄したため、最終的に約35L/hrの除去液使用量となった。
【0052】
比較例3
除去液中のレジスト濃度が0.6質量%になるまで繰り返し使用し、その後、廃棄する以外は比較例2と同様に薄膜化処理を行った。除去液の使用量は約18L/hrであったが、除去液中のレジスト濃度が0.5質量%を超えたところから、薄膜化処理した基板のレジスト表面に白い曇りムラが発生し、製品として使用することはできなかった。
【0053】
参考例1
比較例2と同様の薄膜化処理を行い、引き続き、0.3質量%のDFRが溶解した除去液を、本槽から再生処理を行う再生処理槽へ移動させた。再生処理槽にて、除去液を攪拌しながら1質量%の硫酸を添加し、除去液のpHを3.5まで低下させた。pH=3.5の除去液は、溶解していたレジストが凝集し、目視可能な程度の細かな凝集物が確認できた。続いてこの除去液を、三協技研工業株式会社製の全自動加圧脱水ろ過機エクセラー(登録商標)フィルターEF−10型(ろ過面積0.1m)を用いて固液分離を行った。ろ過速度は約40L/hrであり、除去液140Lを処理するのに約210minを要した。続いて、ろ過後の除去液をよく攪拌させながら10質量%の炭酸ナトリウム水溶液を加え、除去液のpHを7.5に調整した。pH調整後、除去液を本槽に戻し、再度除去液中に0.3質量%のDFRが溶解するまで薄膜化処理を行い、除去液の再生を行った。この除去液の再生サイクルを5回繰り返し、その後、除去液を廃棄した。この時の除去液の使用量は約7L/hrであった。
【0054】
実施例1〜7
除去液の再生処理を行う際に、ろ過助剤としてセルロースパウダーを表1及び表2記載の添加量で使用すること以外は、参考例1と同様に薄膜化処理を行った。
【0055】
比較例4
除去液の再生処理を行う際に、ろ過助剤として活性炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製、白鷺C)を表1記載の添加量で使用すること以外は、参考例1と同様に薄膜化処理を行った。
【0056】
比較例5
除去液の再生処理を行う際に、ろ過助剤として珪藻土(昭和化学工業(株)製、♯R2000)を表1記載の添加量で使用すること以外は、参考例1と同様に薄膜化処理を行った。
【0057】
参考例2
レジストを片面貼り付けから両面貼り付けに変更すること以外は、参考例1と同様に薄膜化処理を行った。
【0058】
実施例8
レジストを片面貼り付けから両面貼り付けに変更すること以外は、実施例1と同様に薄膜化処理を行った。
【0059】
実施例9〜16
除去液の再生処理を行う際に、ろ過助剤として使用するセルロースパウダーの繊維径、繊維長、添加量を表2記載の数値に変更した以外は、実施例1と同様に薄膜化処理を行った。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
比較例1及び2と参考例1との比較から明らかなように、除去液を再生処理して使用するレジストの薄膜化処理方法は、使用する水量が極めて少ない、廃液量を大きく削減できる、環境に優しい薄膜化処理方法であることがわかる。
【0063】
また、ろ過助剤であるセルロースパウダーの添加量の効果としては、実施例1〜7に示したように、添加量が多くなるほど除去液の再生に要する処理時間が短く、優れた再生処理方法であることがわかる。セルロースパウダーの添加量が0.2質量%より少なくなると処理時間が遅くなり、0.1質量%より少なくなると処理時間が更に遅くなり、ろ過速度の改善が認められなくなってくる。0.6質量%以上になると処理時間に対する効果が小さくなり、1.0質量%を超えると処理時間に対する効果に差が無くなることから、添加量としては0.1〜1.0質量%の範囲が好ましく、0.2〜0.6質量%の添加量がより好ましいことがわかる。
【0064】
ろ過助剤の種類の効果に関して、実施例4と比較例4及び5を比較してみると、活性炭を使った比較例4は、分離は可能であったが、ろ過助剤を入れてない場合の参考例1と比較して処理速度の改善がほとんど認められなく、使用できなかった。珪藻土を使用した比較例5は、分離の速度は速いものの分離が完全でなく、ろ過済みの液中にDFRが残っており、使用できなかった。
【0065】
参考例2と実施例8は、DFRを両面に貼り付けた場合の薄膜化処理と再生処理の状況を示したものである。DFRを両面に貼り付けているため、片面に貼り付けた実施例1と比較すると、処理枚数が半分で除去液中のDFR濃度が0.3質量%に達しており、これに伴い薄膜化の処理時間も半分になっている。このため、セルロースパウダーを添加しないで再生処理を行った実施例9では、再生処理に210minを要するため、再生処理が追い付かなかった。これに対し、セルロースパウダーを添加して再生処理を行った実施例10では、再生処理時間が105minに短縮され、レジストを両面に貼り付けた薄膜化処理に要する時間である120minの間に充分再生処理が行え、薄膜化処理と再生処理のサイクルを上手く繰り返すことが可能となった。
【0066】
更に、セルロースパウダーの繊維径と繊維長の効果を、実施例9〜12及び実施例13〜16に示した。繊維径に関しては、あまり細すぎても太くなり過ぎても処理能力が劣ってくることがわかる。最適な繊維径としては、10〜30μmの範囲が好ましい範囲といえる。繊維長に関しては、長くしていくと処理能力が向上するものの、ある長さを超えると次第に頭打ちになっていることがわかる。最適な繊維長としては、30〜200μmの範囲が好ましい範囲といえる。
【0067】
以上の実施例及び参考例、比較例で明らかなように、本発明の除去液を再処理して使用するDFRの薄膜化処理方法は、DFRをムラ無く均一に薄膜化することが可能で、使用する水量が極めて少ない、廃液量を大きく削減できる環境に優しい処理方法であることがわかる。また、ろ過助剤としてセルロースパウダーを使用することで、効率良く再生処理を行うことが可能となり、薄膜化処理と再生処理のサイクルを繰り返しながら、スムーズな薄膜化処理を行うことが可能な薄膜化処理方法であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、サブトラクティブ法における金属パターンの形成に広く使用され、例えば、プリント配線板、リードフレーム等の作製に使用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 工程(1)ユニット
2 工程(2)ユニット
3 工程(3)ユニット
4 工程(4)ユニット
5 ドライフィルムレジスト(DFR)が貼り付けられた基板
6 搬入口
7 ディップ槽
8 搬送用ロール
9 ユニット1用処理液供給用ポンプ
10 処理液(除去液)回収管
11 処理液貯蔵タンク
12 バルブ
13 連結口
14 ミセル除去用のスプレーノズル
15 除去液貯蔵タンク
16 除去液供給用ポンプ
17 バルブ
18 廃液管
19 水洗用のスプレーノズル
20 排水処理管
21 ターボブロワ
22 吸引管
23 吐出管
24 空気噴射ノズル
25 搬出口
26 水供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライフィルムレジストが貼り付けられた基板の該ドライフィルムレジストを処理液で処理する工程、その後に、除去液を用いて表面の不用なドライフィルムレジストを除去する工程とからなるドライフィルムレジストの薄膜化処理方法において、除去液中に含まれるドライフィルムレジスト濃度が0.5質量%を超える前に、除去液中に溶解したドライフィルムレジストを、pHを一旦低下させることにより、凝集、沈殿させ、ろ過助剤としてセルロースパウダーを使用し、加圧型の脱水ろ過機を用いて固液分離し、分離後のろ過水のpHを中性に戻して、再度、除去液として再利用することを特徴とするドライフィルムレジストの薄膜化処理方法。
【請求項2】
該セルロースパウダーの繊維径が10〜30μm、繊維長が30〜200μmの範囲にある請求項1記載のドライフィルムレジストの薄膜化処理方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−189750(P2012−189750A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52544(P2011−52544)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】