説明

ドライブレコーダ固定具

【課題】曲面又は段差を有する設置面にドライブレコーダを確実に固定できるようにするとともに、設置面の形状に関わらずドライブレコーダを所望の角度で固定できるようにする。
【解決手段】設置面Dにドライブレコーダ200を固定するものであり、ドライブレコーダ200を保持する枠体2の幅方向両端部2b、2cにそれぞれ互いに独立して固定される第1固定体3及び第2固定体4を有し、第1固定体3が、円弧状をなすスリット孔321を有し、このスリット孔321を介して枠体2の幅方向一端部2bに固定されるものであり、第2固定体4が、円弧状をなす複数のスリット孔421を有し、当該複数のスリット孔421が回転中心Pに対して同心円状に設けられており、複数のスリット孔421を介して、枠体2の幅方向他端部2cに少なくとも2点で固定されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内部状況や周囲状況等を記録して、そのような状況に至った原因解析等を事後に好適に行えるようにしたドライビングレコーダを、車両のダッシュボード等に固定するためのドライブレコーダ固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、運転中の車両(自動車)の内部や外部の映像を自動的に記録して、事故やヒヤリハット等の際の客観的な状況を事後分析できるようにした車両搭載型のドライビングレコーダが開発されてきており、例えばタクシー等では、日常運転の事後分析による事故予防対策や、事故が起こったときにはその原因の客観的な証拠、究明等のために、この種のドライビングレコーダを搭載する動きも出てきている。
【0003】
このようなドライビングレコーダとして、車両に搭載して走行中の車両の内部や外部の画像データ等の状況データを、時系列的に順次一時メモリ内に格納しておき、車両の加速度(減速度)が一定以上の数値を示したときに、ヒヤリハットや事故、異常等が発生したとして、その前後一定期間における状況データのみを、一時メモリから事後分析に用いるための不揮発メモリ等に記録するようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
このドライブレコーダには、車両の加速度を検出するための加速度センサが内蔵されている。そして、ドライブレコーダを車両に設置する場合には、加速度センサの加速度検出軸(X軸、Y軸、Z軸)が車両の前後方向、左右方向及び上下方向とほぼ一致するようにしている。なお、加速度センサの検出軸が車両の前後方向、左右方向及び上下方向とずれていた場合には、加速度センサの検出軸と車両の前後方向、左右方向及び上下方向とのオフセットを補正することで、車両の加速度を検出するように構成している。
【0005】
しかしながら、ドライブレコーダの取付角度によってはオフセット補正を正確に行うことが難しく、またオフセット補正を行うプログラムの仕様によりオフセット補正を正確に行うことができない場合もある。このような場合には、加速度センサにより得られた車両の加速度を正確に検出することができず誤作動してしまい、車両に衝撃が加わっていないにも関わらず自動的に不揮発メモリ等に状況データを保存してしまうという問題が生じる。このような無駄な状況データは、事後の運行状況の分析を難しくする要因となるだけでなく、ドライブレコーダにおける不揮発メモリ等のメモリを無駄に使ってしまうという問題にもなる。
【0006】
そして、近年において車両のダッシュボード等の内装がデザイン重視になっており、ドライブレコーダの設置面が曲面形状である場合が多い。このような曲面形状をなす設置面にドライブレコーダを設置する場合には、上記の問題が特に顕著になる。
【0007】
なお、特許文献2に示すように、車載用機器を回転軸により軸支して上下方向に回転可能にした回転金具と、この回転金具をベアリングを介して水平方向に回転可能に支持する上側基板(下側基板)とを備えた取付ブラケットが考えられている。この取付ブラケットを用いれば、上側基板に対して、車載用機器を上下方向及び水平方向に回転させることができる。
【0008】
ところが、上側基板が平板状をなすものであり、ダッシュボード等の曲面形状を有する設置面に取り付けることができない。そもそも曲面形状を有する設置面に車載用機器を取り付けることを意図しておらず、仮に当該設置得面に上側基板を取り付けたとしても、車載用機器を回転軸による上下方向の回転及びベアリングにより回転では、所望の位置、つまり、加速度センサの検出軸と車両の前後方向、左右方向及び上下方向とを一致させるように位置調節することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−197858号公報
【特許文献2】実開昭60−30586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、曲面又は段差を有する設置面にドライブレコーダを確実に固定できるようにするとともに、設置面の形状に関わらず、ドライブレコーダを所望の角度に固定できるようにすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明に係るドライブレコーダ固定具は、曲面、傾斜又は段差を有する設置面にドライブレコーダを固定するための固定具であり、前記ドライブレコーダの幅方向両端部又は前記ドライブレコーダを保持する枠体の幅方向両端部にそれぞれ互いに独立して固定される第1固定体及び第2固定体を有し、前記第1固定体又は前記第2固定体の一方が、幅方向に沿った所定の回転中心に対して円弧状をなし前記枠体に対する固定点を円弧方向に移動可能とするスリット孔又は円弧状に配置された複数の孔からなる孔列を有し、前記スリット孔を介して又は前記孔列を介して前記ドライブレコーダ又は前記枠体の幅方向一端部に固定されるものであり、前記第1固定体又は前記第2固定体の他方が、幅方向に沿った所定の回転中心に対して円弧状をなす複数のスリット孔又は円弧状に配置された複数の孔からなる複数の孔列を有し、当該複数のスリット孔又は複数の孔列が前記回転中心に対して同心円状に設けられており、前記複数のスリット孔又は前記複数の孔列を介して、前記ドライブレコーダ又は前記枠体の幅方向他端部に少なくとも2点で固定されるものであることを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、第1固定体及び第2固定体が互いに独立してドライブレコーダ又は枠体の幅方向両端部と設置面とに固定されることから、設置面の形状に関わらず、ドライブレコーダを確実に固定することができる。また、第1固定体及び第2固定体に所定の回転中心に対して円弧状のスリット孔又は孔列を設けていることから、ドライブレコーダの幅方向に沿った回転軸周り(Y軸周り)の設置角度を調節することができる。さらに第1固定体及び第2固定体のスリット孔又は孔列それぞれにおいて、ドライブレコーダ又は枠体の上下方向の固定位置を調節することによって、ドライブレコーダの前後方向に沿った回転軸周り(X軸周り)の設置角度を調節することができる。その上、第1固定体及び第2固定体の設置面における設置位置を互いに前後方向にずらすことによって、ドライブレコーダの上下方向に沿った回転軸周り(Z軸周り)の設置角度を調節することができる。上記の通り、X軸周り、Y軸周り及びZ軸周りの位置調節が可能なことから、設置面のねじれを吸収することもでき、設置面のねじれに関わらず、ドライブレコーダを所望の角度に固定することができる。また、第1固定体又は第2固定体が、同心円状に配置された複数のスリット孔又は孔列を有し、少なくとも2点でドライブレコーダ又は枠体に固定されることから、第1固定体及び第2固定体によりドライブレコーダをしっかりと固定することができる。これにより走行中にドライブレコーダが振動して生じる加速度の測定誤差を小さくすることができる。
【0013】
前記第1固定体及び前記第2固定体が、前記スリット孔又は前記孔列を2つ有し、当該2つのスリット孔又は2つの孔列が前記回転中心に対して同心円状に設けられており、前記2つのスリット孔又は前記2つの孔列を介して、前記ドライブレコーダ又は前記枠体の幅方向両端部に2点で固定されるものであることが望ましい。これならば、スリット孔又は孔列を3つ以上設ける場合に比べて、第1固定体及び第2固定体の構成を簡単化できる。また、ドライブレコーダ又は枠体が幅方向両端部において2点止めされることから、第1固定体及び第2固定体によりより確実にドライブレコーダを固定することができる。さらに、第1固定体及び第2固定体を同一の構成とすることで、部品点数の削減及び加工効率の向上を可能にすることもできる。その上、第1固定体及び第2固定体がスリット孔又は孔列を2つ有することから、第1固定体又は第2固定体の一方において、固定するスペースが制限されて1点固定しかできない場合でも他方を2点固定することで、ドライブレコーダをしっかりと固定することができる。
【0014】
前記第1固定体及び前記第2固定体が、手で変形自在に形成されていることが望ましい。これならば、第1固定体又は第2固定体を設置面の形状に変形させることができるので、接着部材等によって第1固定体又は第2固定体を設置面に固定させる場合に、その固定を確実にすることができる。また、設置面の形状により、第1固定体又は第2固定体がドライブレコーダ又は枠体の幅方向両端部よりも内側に位置する又は外側に離間する等の位置関係になったとしても、第1固定体又は第2固定体を変形させることで、ドライブレコーダ又は枠体に固定できるようになる。
【0015】
また本発明に係るドライブレコーダ固定具は、曲面、傾斜面又は段差を有する設置面にドライブレコーダを固定するための固定具であり、前記ドライブレコーダを保持する枠体と、前記枠体の幅方向両端部にそれぞれ互いに独立して固定される第1固定体及び第2固定体とを有し、前記枠体の幅方向一端部が、幅方向に沿った所定の回転中心に対して円弧状をなし前記第1固定体に対する固定点を円弧方向に移動可能とするスリット孔又は円弧状に配置された複数の孔からなる孔列を有しており、前記スリット孔を介して又は前記孔列を介して前記第1固定体に固定されるものであり、前記枠体の幅方向他端部が、幅方向に沿った所定の回転中心に対して円弧状をなし前記第2固定体に対する固定点を円弧方向に移動可能とする複数のスリット孔又は円弧状に配置された複数の孔からなる複数の孔列を有し、当該複数のスリット孔又は複数の孔列が前記回転中心に対して同心円状に設けられており、前記複数のスリット孔又は前記複数の孔列を介して、前記第2固定体に少なくとも2点で固定されるものであることを特徴とする。
【0016】
このようなものであれば、第1固定体及び第2固定体が互いに独立してドライブレコーダ又は枠体の幅方向両端部と設置面とに固定されることから、設置面の形状に関わらず、ドライブレコーダを確実に固定することができる。また、枠体の幅方向両端部に所定の回転中心に対して円弧状のスリット孔又は孔列を設けていることから、ドライブレコーダの幅方向に沿った回転軸周り(Y軸周り)の設置角度を調節することができる。さらに枠体の幅方向両端部のスリット孔又は孔列それぞれにおいて、枠体の上下方向の固定位置を異ならせることによって、ドライブレコーダの前後方向に沿った回転軸周り(X軸周り)の設置角度を調節することができる。その上、第1固定体及び第2固定体の設置位置を互いに前後方向にずらすことによって、ドライブレコーダの上下方向に沿った回転軸周り(Z軸周り)の設置角度を調節することができる。上記の通り、X軸周り、Y軸周り及びZ軸周りの位置調節が可能なことから、設置面のねじれを吸収することもでき、設置面のねじれに関わらず、ドライブレコーダを所望の角度に固定することができる。また、枠体の幅方向両端部の何れかが、同心円状に配置された複数のスリット孔又は孔列を有し、少なくとも2点でドライブレコーダ又は枠体に固定されることから、第1固定体及び第2固定体によりドライブレコーダをしっかりと固定することができる。これにより走行中にドライブレコーダが振動して生じる加速度の測定誤差を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、曲面、傾斜面又は段差を有する設置面にドライブレコーダを確実に固定できるようにするとともに、設置面の形状に関わらず、ドライブレコーダをオフセット補正、つまりゼロ点調整ができる所望の角度で固定できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態のドライブレコーダを車両に取り付けた状態を示す模式的縦断面図。
【図2】同実施形態のドライブレコーダの機能ブロック図。
【図3】同実施形態のドライブレコーダ固定具によりドライブレコーダを取り付けた状態を示す斜視図。
【図4】同実施形態のドライブレコーダ固定部によりドライブレコーダを取り付けた状態を示す正面図。
【図5】同実施形態のドライブレコーダ固定部によりドライブレコーダを取り付けた状態を示す右側面図。
【図6】同実施形態の枠体の構成を示す斜視図、正面図及び右側面図。
【図7】同実施形態の第1固定体の構成を示す斜視図、正面図及び右側面図。
【図8】同実施形態の第2固定体の構成を示す斜視図、正面図及び右側面図。
【図9】変形実施形態に係る第1固定体を示す斜視図。
【図10】変形実施形態に係る第1固定体を示す右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係るドライブレコーダ固定具100の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
まず本実施形態のドライブレコーダ固定具100により固定されるドライブレコーダ200について説明する。
【0021】
このドライブレコーダ200は、図1に示すように、車両Vに搭載されて、事故発生時又はヒヤリハット時等の前後一定期間における自動車車両Vの挙動や周囲状況、操作状況等を記録するものであり、車両Vの内外の状況や車両位置等を示す状況データを、車両Vに加わる急ブレーキ等の衝撃に反応して自動的にSDカード等の記録媒体に保存する装置である。具体的にドライブレコーダ200は、図2及び図3に示すように、幅広の概略直方体形状をなすケーシング201と、このケーシング201内に保持された録音装置202、加速度センサ203、GPS受信機204、報知手段205、入力手段206、通信手段207、着脱式記録手段208、情報処理手段(CPU、内部メモリ等を含む。)209及び補助電源210等とを備える。
【0022】
なお、ドライブレコーダ200には、ケーシング201とは別体として設けられた撮像装置211が有線又は無線により接続される。この撮像装置211は、CMOS等の光学センサを撮像素子とするものであり、車両V内外の状況を所定の時間毎に撮像し、その静止画像を示す静止画像データ(例えばJPEG形式)を出力するもので、その受像面が車両V外の所望の撮像方向に設定できるように、ルームミラーR上方等のフロントガラスFに設置される(図1参照)。
【0023】
録音装置202は、車両V内外の一連の音声を連続的に録音し、その音声を示す音声データを出力するものである。加速度センサ203は、例えばピエゾ抵抗効果を利用して構成したもので、車両Vに作用する1〜3次元(例えば3次元であれば、前後、左右、上下)の加速度をセンシングし、その加速度を示す加速度データを出力するものである。GPS受信機204は、例えば複数の衛星からの電波をキャッチして車両Vの位置をセンシングし、その位置を示す位置データを出力するものである。なお、GPS受信機204は、ケーシング背面に設けられたGPSコネクタに接続される。報知手段205は、ケーシング上端面201aに設けられた音声出力体であるスピーカである(図3参照)。入力手段206は、ケーシング前面201bに設けられた操作面に露出させたボタンスイッチである(図3参照)。通信手段207は、ケーシング201に内蔵され、配送センタに設けられたセンタコンピュータ(図示しない。)と電波によって各種データを送受信する無線LAN用のハードウェアである。着脱式記録手段208とは、ケーシング操作面に開口したスロット201e(図3ではスライド扉201fに覆われている。)に挿脱可能に取り付けたSDカードである。
【0024】
なお、状況データとしては、上述の静止画像データ、音声データ、加速度データ及び位置データの他、車両Vの車速センサから送信されてくる車速データや、ドアの開閉を示すドア開閉データ、ブレーキのON/OFFを示すブレーキデータ等が挙げられ、これらは、図示しない有線又は無線を介して受信される。
【0025】
このドライブレコーダ200は、前記状況データを一定のサンプリングタイムで時系列的に次々と受信して、その受信した状況データを、内部メモリ内の所定領域(揮発性メモリ部)に設定したデータ一時格納部に次々書き込んでいく。なお、このデータ一時格納部はリングバッファで構成され、その容量が一杯になると、古いデータから順次消されて、そこに新しい状況データが書き込まれる。
【0026】
そして、ドライブレコーダ200は、状況データのうちトリガ因子データとして用いるものの内容が所定条件を満たすかどうかを判断し、その所定条件を満たす場合(例えば加速度データが所定の閾値以上の場合)、又は、ドライバにより操作面のボタンスイッチ206が押下された場合に、その前後一定期間に亘る状況データを、データ一時格納部から、内部メモリ(不揮発性メモリ部)及び/又は着脱式記録手段208(SDカード)の所定領域に設けられた状況データ格納部に移送する。
【0027】
しかして本実施形態に係るドライブレコーダ固定具100は、上述したドライブレコーダ200を曲面、傾斜面又は段差を有する設置面D、具体的には、車両VのダッシュボードDに固定するための金具である。なお、ドライバがボタンスイッチ206を操作し易くするために、このドライブレーダ固定具100によりドライブレコーダ200はハンドルの近傍に設置される。
【0028】
具体的にドライブレコーダ固定具100は、図3〜図5に示すように、ドライブレコーダ200を保持する枠体2と、この枠体2の幅方向一端部2bにねじ固定される第1固定体3と、前記枠体2の幅方向他端部2cにねじ固定される第2固定体4とを備える。
【0029】
枠体2は、図3〜図6に示すように、正面視において概略コの字形状をなすものであり、ドライブレコーダ200の上面に対向する上板部2aと、ドライブレコーダ200の左側端面201cに対向する左側板部2bと、ドライブレコーダ200の右側端面201dに対向する右側板部2cとを有する。なお、本実施形態の枠体2は、板金により一体成形される。その他、上板部2aを構成する板金及び左右側板部2b、2cを構成する板金を溶接等により一体としても良い。
【0030】
上板部2aは、平板状をなす接着部材5を介してドライブレコーダ200の上端面201aに接着される(図4参照)。これにより、ドライブレコーダ200は、枠体2に保持される。また、左側板部2b及び右側板部2cは、ドライブレコーダ200の左側端面201cに設けられた凹部201m及び右側端面201dに設けられた凹部201nに係合する突起部21、22を有する。この突起部21、22は、ドライブレコーダ200の上端面201aと枠体2の上板部2aとを接着した状態においてドライブレコーダ200の左右側端面201c、201dの凹部201m、201nに係合する(図4参照)。このように凹部201m、201n及び突起部21、22を係合させていることにより、接着部材5を介して接着された枠体2及びドライブレコーダ200が剥離しないように構成している。さらに、枠体2の左右側板部2b、2cには、第1固定体3及び第2固定体4をねじ固定するための固定ねじ8が挿入される貫通孔23が前後方向に2つ設けられている(図6参照)。
【0031】
なお、枠体2は、図3に示すように、ドライブレコーダ200の上端面201aに設けられたカバー部201x(SIMカード挿入口及び補助電源210をカバーするもの)を覆わないようにドライブレコーダ200を保持するものである。このカバー部201xは、ドライブレコーダ200の上端面201aにおいて、中央部又はそれよりも後ろ側に設けられている。つまり、枠体2は、ドライブレコーダ200の上端面201aにおいてカバー部201xよりも前側に設けられる。
【0032】
第1固定体3及び第2固定体4は、図3及び図4等に示すように、互いに分離しており、それぞれ独立して枠体2の左右側板部2b、2cに固定ねじ8及びナット9によりねじ固定されるものである。この第1固定体3は、図7に示すように、正面視において概略L字形状をなすものであり、設置面Dに接着部材6により接着される矩形状をなす下板部31と、この下板部31から立設されて枠体2の左側板部2bに固定ねじ8及びナット9によりねじ固定される矩形状をなす起立板部32とを有する。また、第2固定体4は、図8に示すように、正面視において概略左右逆L字形状をなすものであり、設置面Dに接着部材7により接着される矩形状をなす下板部41と、この下板部41から立設されて枠体2の右側板部2cに固定ねじ8及びナット9によりねじ固定される矩形状をなす起立板部42とを有する。なお、本実施形態の第1固定体3及び第2固定体4はそれぞれ、板金により一体成形される。その他、下板部31、41を構成する板金及び起立板部32、42を構成する板金を溶接等により一体としても良い。
【0033】
起立板部32、42は、図7及び図8に示すように、ドライブレコーダ200の幅方向に沿った所定の回転中心(回転軸P)に対し円弧状の2つのスリット孔321、421を有する。ここで幅方向に沿った所定の回転軸Pとは、起立板部32,42の板面と直交する方向(Y軸方向)に沿って設定されており、所定の回転軸Pに対してドライブレコーダ200を回転した際に、ドライブレコーダ200が設置面Dに接触しないように設定されている。本実施形態では、ドライブレコーダ200の背面に外付けされるGPS受信機204が設置面Dに接触しないように、GPS受信機204よりも後方に設定されている。
【0034】
2つのスリット孔321、421は、ドライブレコーダ200が、前記回転軸Pに対して所定の角度範囲(例えば0度〜30度)で回転可能となるように同心円状に設けられたものであり、枠体2の左右側板部2b、2cに対する固定点を円弧方向(スリット孔321、421の周方向)に移動可能にする円弧状長孔である。この2つのスリット孔321、421の間隔は、前記枠体2の左右側板部2b、2cに設けられた貫通孔23の間隔と同一である。そして、前記枠体2の左右側板部2b、2cに設けられた2つの貫通孔23と2つのスリット孔321、421とに固定ねじ8を挿通してナット9で共締めすることにより、枠体2の左右側板部2b、2cに第1固定体3及び第2固定体4を固定する(図3及び図4等参照)。
【0035】
また、起立板部32、42には2つのスリット孔321、421とは別に、前記所定の角度範囲外での固定を可能するための固定孔322、422が設けられている。本実施形態の固定孔322、422は、それぞれ2つ設けられているが、枠体2と第1固定体3又は第2固定体4を固定するに際しては、固定ねじ8及びナット9により1点止めとなる。このように固定孔322、422を設けることで、ドライブレコーダ200の位置調整の自由度を増すことができる。
【0036】
このように構成した枠体2、第1固定体3及び第2固定体4を用いて種々形状を有する設置面Dに対して、ドライブレコーダ200を水平状態等の所望の角度に設置する態様について説明する。なお、本明細書において水平状態とは、車両Vの前後方向(X軸方向)、左右方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)に対して、ドライブレコーダ200に内蔵された加速度センサ203の検出軸(X軸、Y軸及びZ軸)が一致する状態をいう。
【0037】
まず、設置面Dが前下がり曲面を有する場合には、図5に示すように、固定体3、4の下板部31、41が前下がりの状態で設置面Dに固定される。この状態でドライブレコーダ200を水平状態となるように固定するには、枠体2の貫通孔23が固定体3、4のスリット孔321、421の上部位置となるようにして固定ねじ8及びナット9により共締めして固定する。これにより、ドライブレコーダ固定具100により設置面Dの前下がり曲面が吸収されてドライブレコーダ200を所望の角度となるように調整することができる。なお、設置面Dが前上がり曲面を有する場合には、枠体2の貫通孔23が固定体3、4のスリット孔321、421の下部位置となるようにして固定ねじ8及びナット9により共締めして固定する。
【0038】
また、設置面Dが右下がり曲面(右下がりの段差)を有する場合(左下がり曲面を有する場合も同様)には、図4に示すように、固定体3、4の下板部31、41を設置面Dに固定すると、それぞれの起立板部32、42の上下位置が互いに異なることになる。なお、下板部31、41を設置面Dに固定する際に起立板部32、42をZ軸方向に沿うように変形させる。この状態でドライブレコーダ200を水平状態となるように固定するためには、枠体2の左側板部2bの貫通孔23が第1固定体3のスリット孔321の下部位置となるように固定ねじ8及びナット9により共締めして固定するととともに、枠体2の右側板部2cの貫通孔23が第2固定体4のスリット孔421の上部位置となるように固定ねじ8及びナット9により共締めして固定する。これにより、ドライブレコーダ固定具100により設置面Dの右下がり曲面が吸収されてドライブレコーダ200を所望の角度となるように調節することができる。
【0039】
さらに、設置面Dとの関係で、ドライブレコーダ200の幅方向の水平面内での傾き(Z軸周りの回転位置)を調整したい場合には、第1固定体3及び第2固定体4を互いに前後方向(X軸方向)にずらして設置面Dに固定する。そして、このように前後方向にずらして配置した第1固定体3及び第2固定体4に枠体2を固定することによって、ドライブレコーダ200の幅方向の傾きを調整することができる。なお、第1固定体3及び第2固定体4を枠体2に固定した状態で、ドライブレコーダ200の幅方向の傾きを調整するように設定面Dに固定するようにしても良い。
【0040】
また、設置面Dが左右でねじれた曲面を有する場合には、第1固定体3の起立板部32及び第2固定体4の起立板部42がそれぞれ異なるように延出して固定される。この状態でドライブレコーダ200を所望の角度となるように固定するためには、枠体2の左側板部2b又は右側板部2cの一方の貫通孔23と第1固定体3又は第2固定体4のスリット孔321、421と固定ねじ8及びナット9で2点固定するとともに、左側板部2b又は右側板部2cの他方の貫通孔23と第1固定体3又は第2固定体4のスリット孔321、421と1点固定する。これによりドライブレコーダ固定具100により設置面Dの左右にねじれた曲面が吸収されてドライブレコーダ200を所望の角度となるように調節することができる。
【0041】
このように構成した本実施形態に係るドライブレコーダ固定具100によれば、第1固定体3及び第2固定体4が互いに独立して枠体2の幅方向両端部2b、2cと設置面Dとに固定されることから、設置面Dの形状に関わらず、ドライブレコーダ200を設置面Dに確実に固定することができる。
【0042】
また、第1固定体3及び第2固定体4に所定の回転軸Pに対して円弧状のスリット孔321、421を設けていることから、ドライブレコーダ200の幅方向に沿った回転軸(Y軸)周りの設置角度を調節することができる。さらに第1固定体3及び第2固定体4のスリット孔321、421それぞれにおいて、枠体2の固定位置を上下で調節することによって、ドライブレコーダ200の前後方向に沿った回転軸(X軸)周りの設置角度を調節することができる。その上、第1固定体3及び第2固定体4の設置位置を互いに前後方向にずらすことによって、ドライブレコーダ200の上下方向に沿った回転軸(Z軸)周りの設置角度を調節することができる。上記のとおりX軸周り、Y軸周り及びZ軸周りの位置調節が可能なことから、設置面Dのねじれを吸収することもでき、設置面Dのねじれに関わらず、ドライブレコーダ200を水平状態等の所望の角度に固定することができる。
【0043】
また、第1固定体3及び第2固定体4が、同心円状に配置された複数のスリット孔321、421を有し、2点で枠体2に固定されることから、第1固定体3及び第2固定体4によりドライブレコーダ200をしっかりと固定することができ、走行中にドライブレコーダ200が振動して生じる加速度の測定誤差を小さくすることができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、前記実施形態では、ドライブレコーダ固定具がドライブレコーダを保持する枠体を有するものであったが、固定具が枠体を有さないものであっても良い。この場合の構成としては、例えばドライブレコーダの左右側端面にねじ軸を設けて、このねじ軸を介して第1固定体又は第2固定体をナットで共締めして固定することが考えられる。その他、枠体にねじ軸を設けて、このねじ軸をスリット孔に挿通させた状態で当該ねじ軸にナットを螺合させることにより枠体と第1固定体又は第2固定体とを固定するようにしても良い。
【0045】
また、前記実施形態ではスリット孔が第1固定体及び第2固定体に形成されているが、枠体に形成したものであって良い。つまり、前記実施形態の枠体に形成された貫通孔を第1固定体及び第2固定体に形成し、第1固定体及び第2固定体に形成されたスリット孔を枠体に形成したものであっても良い。
【0046】
さらに、前記実施形態の第1固定体及び第2固定体が、手によって自由形状に変形自在に形成したものであっても良い。具体的には、図9に示すように、第1固定体3及び第2固定体4の下板部31,41に、側面から内側に向かって短手方向(起立板部32の板面と直交する方向(Y軸方向))に延びる複数の変形用スリット31S(図9(A)参照)を形成することが考えられる。ここで変形用スリット31Sは互いにスリット長及びスリット幅が異なるように形成しても良い。また下板部31、41の中央部に短手方向(起立板部32の板面と直交する方向(Y軸方向))に延びる複数の変形用スリット孔31H(図9(B)参照)を形成することが考えられる。ここで変形用スリット孔31Hは互いに異なる開口形状を有するように形成しても良い。また下板部31,41に、側面から内側に向かって長手方向(起立板部32の板面と平行な方向(X軸方向))に延びる複数の変形用スリット31S(図9(C)参照)を形成することが考えられる。ここで変形用スリット31Sは互いにスリット長及びスリット幅が異なるように形成しても良い。その他、複数の変形用スリット孔31H(図9(B)参照)は、長手方向に延びるように形成しても良い。これならば、下板部31、41を手で曲げることが可能となり、曲面形状又は段差形状をなす設置面Dの形状に合わせて下板部31、41を変形させることができ、下板部31、41と設置面Dとの接着性を向上させることができる。また、変形状スリット31S又は変形用スリット孔31Hを設けるのは、下板部31、41の他、起立板部32、42であっても良い。起立板部32、42に変形用スリット31S又は変形用スリット孔31Hを設けた場合には、下板部31、41の取付位置に関係なく、起立板部32,42を枠体2の左右側板部2b、2cに沿うように変形させることができ、枠体2に対して起立板部32、42をねじ固定し易くすることができる。また、起立板部32、42を変形させることで、ドライブレコーダ200の位置調節の自由度を増すことができる。その他、第1固定体3及び第2固定体4の板金の厚みを調節することで手で変形自在に構成しても良い。
【0047】
その上、前記実施形態では、第1固定体3及び第2固定体4に円弧状のスリット孔321、421を形成した場合について説明したが、その他、図10に示すように、複数の孔323aを円弧状に配置してなる孔列323を形成しても良い。なお、図10においては第1固定体3について示している。この場合であっても、孔列323を同心円状に2つ以上設けることが望ましい。なお、同心円状に設ける場合には、径方向に隣接する2つの孔323aを回転軸Pに対して同一径方向となるように設ける。
【0048】
さらにその上、前記実施形態では製造コスト削減のため、ドライブレコーダを枠体に接着部材を介して接着する構成としているが、ねじ固定するように構成しても良い。
【0049】
加えて、枠体は、ドライブレコーダを上側から覆うように収容するものであったが、下側から覆うように収容するものであっても良いし、ドライブレコーダの上下端面及び左右側面を覆うように収容するものであっても良い。また、枠体は、ドライブレコーダの左側端部の左側側面、上面及び下面を覆う断面コの字状をなす第1枠部と、ドライブレコーダの右側端部の右側側面、上面及び下面を覆う断面コの字状をなす第2枠部とからなるものであっても良い。
【0050】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
100・・・ドライブレコーダ固定具
200・・・ドライブレコーダ
D ・・・設置面
2 ・・・枠体
2b ・・・幅方向一端部(左側板部)
2c ・・・幅方向他端部(右側板部)
3 ・・・第1固定体
321・・・スリット孔
4 ・・・第2固定体
421・・・スリット孔
8 ・・・固定ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面、傾斜面又は段差を有する設置面にドライブレコーダを固定するための固定具であり、
前記ドライブレコーダの幅方向両端部又は前記ドライブレコーダを保持する枠体の幅方向両端部にそれぞれ互いに独立して固定される第1固定体及び第2固定体を有し、
前記第1固定体又は前記第2固定体の一方が、幅方向に沿った所定の回転中心に対して円弧状をなし前記枠体に対する固定点を円弧方向に移動可能とするスリット孔又は円弧状に配置された複数の孔からなる孔列を有し、前記スリット孔を介して又は前記孔列を介して前記ドライブレコーダ又は前記枠体の幅方向一端部に固定されるものであり、
前記第1固定体又は前記第2固定体の他方が、幅方向に沿った所定の回転中心に対して円弧状をなす複数のスリット孔又は円弧状に配置された複数の孔からなる複数の孔列を有し、当該複数のスリット孔又は複数の孔列が前記回転中心に対して同心円状に設けられており、前記複数のスリット孔又は前記複数の孔列を介して、前記ドライブレコーダ又は前記枠体の幅方向他端部に少なくとも2点で固定されるものであるドライブレコーダ固定具。
【請求項2】
前記第1固定体及び前記第2固定体が、前記スリット孔又は前記孔列を2つ有し、当該2つのスリット孔又は2つの孔列が前記回転中心に対して同心円状に設けられており、前記2つのスリット孔又は前記2つの孔列を介して、前記ドライブレコーダ又は前記枠体の幅方向両端部に2点で固定されるものである請求項1記載のドライブレコーダ固定具。
【請求項3】
前記第1固定体又は前記第2固定体の少なくとも一方が、手で変形自在に形成されている請求項1又は2記載のドライブレコーダ固定具。
【請求項4】
曲面、傾斜面又は段差を有する設置面にドライブレコーダを固定するための固定具であり、
前記ドライブレコーダを保持する枠体と、
前記枠体の幅方向両端部にそれぞれ互いに独立して固定される第1固定体及び第2固定体とを有し、
前記枠体の幅方向一端部が、幅方向に沿った所定の回転中心に対して円弧状をなし前記第1固定体に対する固定点を円弧方向に移動可能とするスリット孔又は円弧状に配置された複数の孔からなる孔列を有しており、前記スリット孔を介して又は前記孔列を介して前記第1固定体に固定されるものであり、
前記枠体の幅方向他端部が、幅方向に沿った所定の回転中心に対して円弧状をなし前記第2固定体に対する固定点を円弧方向に移動可能とする複数のスリット孔又は円弧状に配置された複数の孔からなる複数の孔列を有し、当該複数のスリット孔又は複数の孔列が前記回転中心に対して同心円状に設けられており、前記複数のスリット孔又は前記複数の孔列を介して、前記第2固定体に少なくとも2点で固定されるものであるドライブレコーダ固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−245958(P2012−245958A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121648(P2011−121648)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】