説明

ドライブレコーダ

【課題】ユーザの操作を必要とすることなく撮影した画像が記憶され、かつ機密情報の保護が図られるドライブレコーダを提供する。
【解決手段】制限有無判断部62は、位置検出部21で検出した車両の位置から、車両がカメラ61での撮影が制限される制限領域にあるか判断する。上限加速度変更部63は、車両が制限領域にあると判断されたとき、一時記憶部52から保存データ記憶部53に画像データを記憶する閾値を上限加速度から制限時上限加速度へ変更する。そのため、車両が制限領域にある場合、一時記憶部52の画像データは、通常よりも大きな加速度が車両に加わったときに保存データ記憶部53に記憶される。また、暗号化部64は、保存データとして記憶される画像データに暗号化処理を施す。そのため、制限領域において記憶された保存データは、任意に再生することができない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転中に生じる事故やヒヤリ−ハットに遭遇した際に、車両の一部や車両の周囲を撮影して記憶するドライブレコーダの普及が進んでいる。ドライブレコーダは、車両で搭載したカメラで撮影した画像を一時記憶手段に一時的に記憶し、加速度検出手段で検出した車両の加速度が上限値を超えると、この上限値を超えた前後において一時記憶手段に記憶されている画像データを保存データ記憶手段に記憶する。これにより、事故やヒヤリ−ハットなどによって車両に異常な加速度が加わると、その前後における画像データが保存データ記憶手段に記憶される。保存データ記憶手段に記憶された画像データは、これを再生することにより、事故やヒヤリ−ハットの原因の解明に利用される。
【0003】
ところで、企業の敷地は、機密情報保護の観点から、各種の撮影手段による撮影を制限する制限領域が設定されている場合がある。このような制限領域では、ドライブレコーダに限らずデジタルスチルカメラやビデオカメラなどの各種の撮影手段の持ち込み禁止や、撮影の禁止などの制限が課されている。そのため、ユーザは、車両が制限領域に出入りするたびに、ドライブレコーダによる画像データの記憶の可否などを操作する必要がある。その結果、操作が煩雑になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−141501号公報
【特許文献2】特開2008−312009号公報
【特許文献3】特開2008−064592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、ユーザの操作を必要とすることなく撮影した画像が記憶され、かつ機密情報の保護が図られるドライブレコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、制限有無判断手段は、位置検出手段で検出した車両の位置に基づいて、車両が地図データに含まれる制限領域にあるか否かを判断する。すなわち、制限有無判断手段は、車両の位置に基づいて自立的に車両が制限領域にあるか否かを判断する。上限加速度変更手段は、制限有無判断手段で車両が制限領域にあると判断されたとき、一時記憶手段に記憶されている画像データを保存データとして保存データ記憶手段に記憶する上限加速度を制限時上限加速度に変更する。すなわち、上限加速度変更手段は、車両が制限領域にあるとき、予め設定されている上限加速度を、より大きな制限時上限加速度に変更する。そのため、車両が制限領域にある場合、一時記憶手段の画像データは、通常よりも大きな加速度が車両に加わったときに保存データ記憶手段に記憶される。つまり、車両が制限領域にあるとき、一時記憶手段に記憶されている画像データが保存データ記憶手段に記憶されるためには、車両に通常よりも大きな加速度が加わる必要がある。これにより、車両に生じる加速度の変化が比較的小さいとき、画像データは保存データとして記憶されない。その結果、制限領域における画像データの保存に制限が加わり、機密情報の保護が図られる。したがって、ユーザの操作を必要とすることなく撮影した画像を記憶することができるとともに、機密情報の保護を図ることができる。
【0007】
請求項2記載の発明では、制限有無判断手段は、位置検出手段で検出した車両の位置に基づいて、車両が地図データに含まれる制限領域にあるか否かを判断する。すなわち、制限有無判断手段は、車両の位置に基づいて自立的に車両が制限領域にあるか否かを判断する。暗号化手段は、制限有無判断手段で車両が制限領域にあると判断されたとき、一時記憶手段に記憶されている画像データを暗号化した保存データとして保存データ記憶手段に記憶する。すなわち、暗号化手段は、車両が制限領域にあるとき、画像データに暗号化処理を施す。保存データ記憶手段に記憶されている暗号化された保存データは、例えば警察などの外部機関でのみ復号化可能となる。これにより、制限領域において記憶された保存データは、任意に再生することができず、機密情報の保護が図られる。したがって、ユーザの操作を必要とすることなく撮影した画像を記憶することができるととに、機密情報の保護を図ることができる。
【0008】
請求項3記載の発明では、制限有無判断手段は、位置検出手段で検出した車両の位置に基づいて、車両が地図データに含まれる制限領域にあるか否かを判断する。すなわち、制限有無判断手段は、車両の位置に基づいて自立的に車両が制限領域にあるか否かを判断する。上限加速度変更手段は、制限有無判断手段で車両が制限領域にあると判断されたとき、一時記憶手段に記憶されている画像データを保存データとして保存データ記憶手段に記憶する上限加速度を制限時上限加速度に変更する。すなわち、上限加速度変更手段は、車両が制限領域にあるとき、予め設定されている上限加速度を、より大きな制限時上限加速度に変更する。そのため、車両が制限領域にある場合、一時記憶手段の画像データは、通常よりも大きな加速度が車両に加わったときに保存データ記憶手段に記憶される。つまり、車両が制限領域にあるとき、一時記憶手段に記憶されている画像データが保存データ記憶手段に記憶されるためには、車両に通常よりも大きな加速度が加わる必要がある。これにより、車両に生じる加速度の変化が比較的小さいとき、画像データは保存データとして記憶されない。また、暗号化手段は、保存データとして記憶される画像データに暗号化処理を施す。保存データ記憶手段に記憶されている暗号化された保存データは、例えば警察などの外部機関でのみ復号化可能となる。これにより、制限領域において記憶された保存データは、任意に再生することができない。その結果、制限領域における画像データの記憶に制限が加わり、機密情報の保護が図られる。したがって、ユーザの操作を必要とすることなく撮影した画像を記憶することができるとともに、機密情報の保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態によるドライブレコーダの構成を示すブロック図
【図2】一実施形態によるドライブレコーダを含む車両の車内LANを示すブロック図
【図3】一実施形態によるドライブレコーダを搭載した車両を示す模式図
【図4】一実施形態によるドライブレコーダで用いる地図データを示す模式図
【図5】一実施形態によるドライブレコーダの作動の流れを示す概略図
【図6】一実施形態によるドライブレコーダの一時記憶部に記憶された画像データの構造を可視的に示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ドライブレコーダの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、一実施形態によるドライブレコーダ10は、ナビゲーション機能を有する車載装置11と一体に構成されている。また、ドライブレコーダ10は、図2に示すように車両の各種制御を行う車両ECU(Electronic Control Unit)12、および図示しないエンジンの制御を行うエンジンECU13と、車内LAN14を経由して通信可能に接続されている。ドライブレコーダ10を含む車載装置11は、図3に示すように車両15に搭載されている。車載装置11は、図1に示すように制御部20、位置検出部21、地図データ記憶部22、地図データ入力部23、操作スイッチ部24、記憶部25、表示部26、音声コントローラ27およびリモコンセンサ28などを備えている。制御部20は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。
【0011】
位置検出部21は、車載装置11を搭載した車両15の現在位置を検出する。位置検出部21は、方位センサ31、ジャイロセンサ32、距離センサ33、加速度センサ34およびGPS受信器35を有している。方位センサ31は、車両15の方位を検出する。ジャイロセンサ32は、車両15の回転角度を検出する。距離センサ33は、車両15の走行距離を検出する。加速度センサ34は、車両15に加わる加速度を検出する。なお、加速度センサ34は、ジャイロセンサ32と一体またはジャイロセンサ32と共用してもよい。GPS受信器35は、GPS(Global Positioning System)により車両15の現在位置を測位するために、図示しないGPS衛星から送信される電波を受信する。
【0012】
地図データ記憶部22は、地図データを記憶している。図4に示すように地図データ40は、複数のノードおよびノード同士をつなぐリンクにより形成された道路地図データ41、目印データ42、マップマッチング用データ43、目的地データ44、および交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータ45などの各種のデータを含んでいる。また、地図データ40は、制限領域を制限領域データ46して道路地図データ41などとともに含んでいる。制限領域は、例えば事業所の敷地や個人の所有地などドライブレコーダ10による画像の撮影が制限される領域である。さらに、地図データ40には、地名や施設名などが地点名データ47として含まれている。地図データ記憶部22に記憶されている地図データ40は、図示しないドライブ装置によって地図データ入力部23に読み取られる。地図データ記憶部22は、例えばDVDやCDなどの光学記憶媒体、あるいはフラッシュメモリやハードディスクドライブなどの磁気記憶媒体などが用いられる。
【0013】
図1に示す操作スイッチ部24は、表示部26の画面の近傍に設けられているメカニカルスイッチ、および表示部26の画面に設けられているタッチパネルスイッチなどから構成されている。ユーザは、操作スイッチ部24の各スイッチを用いて、車両15の目的地の設定、表示部26の画面や表示態様の切り替え(例えば、地図縮尺の変更、メニュー画面の選択、経路の探索、経路案内の開始、現在位置の修正および音量の調整など)を行う各種のコマンドを入力する。これにより、車載装置11は、ユーザの指示にしたがって作動する。リモコンセンサ28は、リモコン51との間で有線または無線でコマンドなどの送受信を行う。リモコン51には、複数の操作スイッチが設けられている。リモコン51の操作スイッチを操作することにより、リモコン51からリモコンセンサ28を経由して各種の指令信号が制御部20へ入力される。操作スイッチ部24およびリモコン51は、いずれの操作によっても制御部20へ同一の機能を実行させることができる。
【0014】
記憶部25は、一時記憶部52および保存データ記憶部53から構成されている。記憶部25を構成する一時記憶部52および保存データ記憶部53は、例えばフラッシュメモリやハードディスクドライブによって一体的に構成されている。また、一時記憶部52および保存データ記憶部53からなる記憶部25は、上述の地図データ記憶部22と一体に構成してもよい。さらに、一時記憶部52は、制御部20の図示しないRAMと共有する構成としてもよい。さらに、物理的に記憶部25の記憶領域を一時記憶部52および保存データ記憶部53に分割するのではなく、例えば記憶されるデータにIDを付すことにより、一時記憶部52への記憶に相当するデータであるか、または保存データ記憶部53への記憶に相当するデータであるかを分類する構成としてもよい。表示部26は、例えば液晶や有機ELなどのカラーディスプレイを有している。表示部26の画面は、車両15の現在位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、この地図表示に重ねて車両15の現在位置および進行方向を示す現在地マークが表示される。また、目的地までの経路案内を実行するとき、表示部26の画面には経路案内用の画面が表示される。
【0015】
音声コントローラ27は、車載スピーカ54に接続している。音声コントローラ27は、制御部20からの音声出力信号に基づいて、車載スピーカ54から音声を出力する。車載スピーカ54から出力される音声は、案内に関する音声、操作説明に関する音声、盗難防止機能の動作中であることを報知する音声、ならびに音声認識結果に応じたトークバック音声などである。
【0016】
制御部20は、車両15が走行経路に沿って移動可能とするために、表示部26の画面に現在地周辺の道路地図を表示するとともに、車両15の位置および進行方向を示す現在地マークを地図上の道路に重ねて表示する。この場合、現在地の表示は、車両15の走行にともなって、表示部26に表示された地図上を移動する。表示部26に表示された地図は、車両15の位置に応じてスクロールされる。このとき、制御部20は、車両15の現在位置を道路上にあわせるマップマッチングを実施する。
【0017】
ドライブレコーダ10は、上述の車載装置11の制御部20、位置検出部21、地図データ記憶部22、記憶部25および加速度センサ34に加え、撮影手段としてのカメラ61、制限有無判断部62、上限加速度変更部63および暗号化部64を備えている。加速度センサ34は、特許請求の範囲の加速度検出手段に相当する。カメラ61は、図示しないレンズおよび撮影素子から構成され、車両15の内部および外部を撮影する。例えば図3に示すように車両15のフロントガラス65の近傍にカメラ61を搭載する場合、カメラ61は車両15のダッシュボードおよび車両15の外部前方を撮影する。撮影素子は、例えばCMOSやCCDであり、撮影した画像を電気信号に変換する。撮影素子から出力された電気信号は、図1に示すように画像処理部66で処理されたディジタルの画像データに変換される。
【0018】
記憶部25を構成する一時記憶部52は、画像処理部66で生成された画像データを一時的に記憶する。一方、保存データ記憶部53は、一時記憶部52に記憶されている画像データのうち必要な画像データを保存データとして記憶する。具体的には、制御部20は、加速度センサ34で検出した車両15の加速度の絶対値が上限加速度を超えると、この上限加速度を超えた時点から前後に予め設定された時間範囲において一時記憶部52に記憶されている画像データを、保存データとして保存データ記憶部53に記憶する。制御部20は、例えば上限加速度を超えた時点より前の10秒間、および上限加速度を超えた時点から後の30秒間に相当する画像データを、保存データとして保存データ記憶部53に記憶する。この上限加速度は、予め設定されている。
【0019】
制限有無判断部62、上限加速度変更部63および暗号化部64は、制御部20で実行されるコンピュータプログラムによってソフトウェア的に実現されている。なお、これら制限有無判断部62、上限加速度変更部63および暗号化部64は、ハードウェア的に実現してもよい。制限有無判断部62は、車両15が制限領域にあるか否かを判断する。具体的には、制限有無判断部62は、位置検出部21で検出した車両15の現在位置、および地図データ記憶部22に記憶されている地図データ40に含まれる制限領域データ46から、車両15が制限領域にあるか否かを判断する。
【0020】
上限加速度変更部63は、制限有無判断部62で車両15が制限領域にあると判断されたとき、予め設定されている上限加速度を制限時上限加速度に変更する。この制限時上限加速度は、上限加速度よりも大きな値として設定されている。例えば制限領域を除く通常の非制限領域で保存データ記憶部53に記憶データを記憶する上限加速度が0.3Gに設定されているとき、上限加速度変更部63は、制限領域における制限時上限加速度を0.5Gに変更する。なお、この上限加速度の値である0.3Gおよび制限時上限加速度の値である0.5Gは、あくまでも理解を容易にするための例示であり、これに限定されるものではない。
暗号化部64は、制限有無判断部62で車両15が制限領域にあると判断されたとき、一時記憶部52から保存データ記憶部53に記憶する画像データを暗号化する。具体的には、暗号化部64は、一時記憶部52に記憶されている画像データに対し、記憶部25に記憶されている暗号鍵データで暗号化を施して保存データを生成する。
【0021】
次に、上記の構成によるドライブレコーダ10の作動の流れについて図5に基づいて説明する。
車両15の電源がオンされると、ドライブレコーダ10の制御部20は、車両15の位置、および撮影の可否に関する情報が入手可能であるか否かを判断する(S101)。すなわち、制御部20は、位置検出部21から車両15の位置を取得可能であるか否か、および地図データ記憶部22から制限領域データ46を取得可能であるか否かを判断する。制御部20は、これら車両15の位置および撮影の可否に関する情報が入手可能でないと判断すると(S101:No)、これらが入手可能になるまで待機する。
【0022】
S101において車両15の位置および撮影の可否に関する情報が入手されると(S101:Yes)、制御部20は、カメラ61から画像の取得、すなわち画像データの一時記憶部52への記憶を開始する(S102)。すなわち、制御部20は、カメラ61で撮影された画像から生成した画像データを、一時記憶部52に記憶する。一時記憶部52は、例えば数十秒から数分間の撮影時間に対応する画像データを一時的に記憶する。一時記憶部52における記憶容量がすべて消費されると、最古の画像データが記憶されている記憶領域に最新の画像データが逐次上書きされる。これにより、一時記憶部52には、常に所定の撮影時間に対応する画像データが記憶されている。制御部20は、画像データの一時記憶部52への記憶に同期して、車内LAN14を経由して車両ECU12およびエンジンECU13から各種の情報を取得し一時記憶部52に記憶する。
【0023】
制限有無判断部62は、位置検出部21で検出した車両15の位置が制限領域にあるか否かを判断する(S103)。すなわち、制限有無判断部62は、位置検出部21で検出した車両15の位置、および地図データ記憶部22に記憶されている地図データ40に含まれる制限領域データ46とを対比して、車両15の現在位置が制限領域にあるか否かを判断する。車両15が制限領域にあると判断されたとき(S103:Yes)、制御部20は、車両15が制限領域であると最初に判断された時刻、すなわち車両が制限領域に進入した時刻を、進入時刻として記憶部25の図示しない時刻記憶領域に記憶する(S104)。また、制御部20は、車両15が制限領域に進入した後も、カメラ61で撮影した画像に基づいて生成する画像データを一時記憶部52へ継続して蓄積する。
【0024】
また、S103において車両15が制限領域にあると判断されると、制御部20は、進入時刻の記憶とともに、車両15が制限領域を走行中である旨を報知する(S105)。すなわち、制御部20は、例えば音声コントローラ27を経由して車載スピーカ54から車両15が制限領域を走行している旨の音声や警報音を発し、聴覚的にユーザへその旨を報知する。また、制御部20は、車両15が制限領域を走行している旨を表示部26に表示し、視覚的にユーザへその旨を報知してもよい。
【0025】
さらに、S105においてユーザへの報知がなされると、上限加速度変更部63は、上限加速度を制限時上限加速度に変更する(S106)。すなわち、上限加速度変更部63は、カメラ61で撮影した画像データを保存データ記憶部53に記憶する基準として予め設定されている上限加速度を、この上限加速度よりも大きな制限時上限加速度に変更する。言い換えると、上限加速度変更部63は、車両15が制限領域にあるとき、画像データを保存データとして記憶する基準を、上限加速度から制限時上限加速度に引き上げる。
【0026】
制御部20は、S106において制限時上限加速度に変更された後、車両15に制限時上限加速度を超える急加速または急減速が生じたか否かを判断する(S107)。具体的には、制御部20は、車両15に加わる加速度を加速度センサ34から取得し、取得した加速度が制限時上限加速度を超えたか否かを判断する。例えば事故が生じたり、事故を未然に回避するために車両15に急加速または急減速が生じると、加速度センサ34で検出した車両15の加速度は大きくなる。そのため、制御部20は、加速度センサ34から車両15に加わる加速度を取得し、車両15に急加速または急減速が生じたか否かを監視する。
【0027】
制御部20は、S107において車両15に制限時上限加速度を超える加速度が加わったと判断すると(S107:Yes)、一時記憶部52に記憶されている画像データを保存データとして保存データ記憶部53に記憶する(S108)。一時記憶部52に記憶されている画像データを図6に視覚的に示す。図6に示す場合、両端部が制限時上限加速度を超える加速度が加わった時期に相当する。このとき、一時記憶部52には、制限時上限加速度を超える前すなわち事故が生じる前の事故前画像データと、制限時上限加速度を超えた後すなわち事故が生じた後の事故後画像データとが記憶されている。制御部20は、図6に示す例の場合、車両15に加わる加速度が制限時上限加速度を超えると、一時記憶部52に記憶されている画像データのうち事故前画像データの10秒分と、事故後画像データの30秒分とを保存データとして保存データ記憶部53に記憶する。また、図6に示す例の場合、車両15は、制限が加えられていない非制限領域から制限領域へ進入した後、制限領域から非制限領域に退出することを意味している。
【0028】
このように一時記憶部52から保存データ記憶部53に記憶する画像データは、非制限領域で撮影した画像データと制限領域で撮影した画像データとを含む場合がある。この場合、制御部20は、非制限領域で撮影した画像データを、そのまま保存データ記憶部53に記憶する。これに対し、一時記憶部52から保存データ記憶部53に記憶する画像データに制限領域で撮影した画像データが含まれるとき、暗号化部64は一時記憶部52に記憶されている画像データに暗号化を施す。そして、制御部20は、制限領域で撮影されたために暗号化された画像データを、保存データとして保存データ記憶部53に記憶する。具体的には、暗号化部64は、一時記憶部52に記憶されている画像データのうち制限領域で撮影した画像データについて、記憶部25に記憶されている暗号鍵データを用いて暗号化する。そして、制御部20は、暗号化部64で暗号化された画像データを保存データとして保存データ記憶部53に記憶する。制御部20は、S108において保存データ記憶部53へ記憶データを記憶すると、S107にリターンする。
【0029】
S107において車両15に制限時上限加速度を超える加速度が加わっていないと判断されると(S107:No)、制限有無判断部62は、車両15が制限領域を退出したか否かを判断する(S109)。すなわち、制限有無判断部62は、S103と同様に位置検出部21で検出した車両15の現在位置と地図データ40に含まれる制限領域データ46とを対比して、車両15が制限領域から退出したか否かを判断する。制御部20は、車両15が制限領域から退出したと判断すると(S109:Yes)、車両15が制限領域から退出した時刻を、退出時刻として記憶部25の時刻記憶領域に記憶し(S110)、S101へリターンする。一方、制御部20は、車両15が制限領域から退出していないと判断すると(S109:No)、S107にリターンする。
【0030】
ところで、S103において車両15が制限領域にないと判断されると(S103:No)、制御部20は、車両15に加わる加速度が上限加速度を超えたか否かを判断する(S111)。この場合、車両15は、制限領域にない、すなわち非制限領域を走行中である。そのため、制御部20は、車両15に加わる加速度が予め設定されている通常の上限加速度を超えたか否かを判断する。
【0031】
制御部20は、S111において車両15に上限加速度を超える加速度が加わっていないと判断すると(S111:No)、S101へリターンする。一方、制御部20は、S111において車両15に上限加速度を超える加速度が加わったと判断すると(S111:Yes)、一時記憶部52に記憶されている画像データに制限領域で記憶した画像データが含まれているか否かを判断する(S112)。上述の通り、車両15は、制限領域と非制限領域との間を出入りする。そのため、車両15が非制限領域を走行中であっても、一時記憶部52に記憶されている画像データに制限領域で記憶した画像データが含まれている場合がある。そのため、制御部20は、一時記憶部52に記憶されている画像データに、制限領域で撮影した画像の画像データが含まれているか否かを判断する。
【0032】
制御部20は、S112において一時記憶部52に記憶されている画像データが制限領域で撮影した画像データを含んでいると判断すると(S112:Yes)、一時記憶部52に記憶されている画像データについて、所定の処理をした後に保存データとして保存データ記憶部53に記憶する(S113)。具体的には、暗号化部64は、一時記憶部52に記憶されている画像データのうち、制限領域で撮影した画像データを暗号化し、保存データとして保存データ記憶部53に記憶する。また、制御部20は、一時記憶部52に記憶されている画像データのうち、非制限領域で撮影した画像データについてそのまま保存データ記憶部53に記憶する。
【0033】
これに対し、制御部20は、S112において一時記憶部52に記憶されている画像データが制限領域で撮影した画像データを含んでいないと判断すると(S112:No)、一時記憶部52に記憶されているすべての画像データをそのまま保存データ記憶部53に記憶する(S114)。すなわち、制限領域で撮影した画像データが含まれていない場合、一時記憶部52に記憶されている画像データはすべて非制限領域で撮影した画像データに相当する。そのため、一時記憶部52から保存データ記憶部53に記憶する画像データは、機密事項を含んでいない。したがって、制御部20は、通常のドライブレコーダと同様に一時記憶部52に記憶されている画像データをそのまま保存データ記憶部53に記憶する。S113およびS114において保存データ記憶部53への画像データおよび保存データの記憶が完了すると、制御部20はS101へリターンする。
制御部20は、車両15の電源がオンされている間、上記の処理を繰り返して実行する。
【0034】
以上説明した一実施形態では、制限有無判断部62は、位置検出部21で検出した車両15の位置に基づいて、車両15がカメラ61での撮影が制限される制限領域にあるか否かを判断する。すなわち、制限有無判断部62は、車両15の位置に基づいて自立的に車両15が制限領域にあるか否かを判断する。上限加速度変更部63は、制限有無判断部62で車両15が制限領域にあると判断されたとき、上限加速度を制限時上限加速度に変更する。すなわち、上限加速度変更部63は、車両15が制限領域にあるとき、予め設定されている上限加速度を、より大きな制限時上限加速度に変更する。そのため、車両15が制限領域にある場合、一時記憶部52の画像データは、通常よりも大きな加速度が車両15に加わったときに保存データ記憶部53に記憶される。つまり、車両15が制限領域にあるとき、一時記憶部52に記憶されている画像データが保存データ記憶部53に記憶されるためには、車両15に通常よりも大きな加速度が加わる必要がある。これにより、車両15に生じる加速度の変化が比較的小さいとき、画像データは保存データとして記憶されない。また、暗号化部64は、保存データとして記憶される画像データに暗号化処理を施す。保存データ記憶部53に記憶されている暗号化された保存データは、例えば警察などの外部機関でのみ復号化可能となる。これにより、制限領域において記憶された保存データは、任意に再生することができない。その結果、制限領域における画像データの記憶に制限が加わり、機密情報の保護が図られる。したがって、ユーザの操作を必要とすることなく撮影した画像を記憶することができるとともに、機密情報の保護を図ることができる。
【0035】
以上説明した実施形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
上述の実施形態では、車両15が制限領域にあるとき、上限加速度変更部63において、一時記憶部52から保存データ記憶部53に画像データを記憶する基準となる上限加速度を制限上限加速度に変更するだけでなく、保存データ記憶部53に記憶する保存データを暗号化する例について説明した。しかし、上限加速度の制限上限加速度への変更と、保存データの暗号化とを別個に実施する構成としてもよい。すなわち、車両15が制限領域にあるとき、上限加速度変更部63において上限加速度を制限上限加速度へ変更するだけでもよい。このように、上限加速度を制限上限加速度へ変更するだけでも、車両15に加わる加速度が上限加速度よりも大きな制限上限加速度を超えない限り、画像データは保存データ記憶部53に記憶されない。そのため、上限加速度の変更だけでも、機密情報の保護を図ることができるとともに、ユーザの操作を必要とすることなく事故または事故に至る状況を記憶することができる。
【0036】
さらに、車両15が制限領域にあるとき、一時記憶部52から保存データ記憶部53に記憶する画像データを暗号化するだけでもよい。このように、保存データ記憶部53に記憶する画像データを暗号化するだけでも、制限領域にある車両15で撮影された画像は任意の再生ができない。そのため、上限加速度を変更することなく画像データの暗号化を施すだけでも、機密情報の保護を図ることができるとともに、ユーザの操作を必要とすることなく事故または事故に至る状況を記憶することができる。
【符号の説明】
【0037】
図面中、10はドライブレコーダ、11は車載装置、15は車両、21は位置検出部(位置検出手段)、22は地図データ記憶部(地図データ記憶手段)、34は加速度センサ(加速度センサ)、52は一時記憶部(一時記憶手段)、53は保存データ記憶部(保存データ記憶手段)、61はカメラ(撮影手段)、62は制限有無判断部(制限有無判断手段)、63は上限加速度変更部(上限加速度変更手段)、64は暗号化部(暗号化手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置を検出する位置検出手段と、
画像の撮影が制限される制限領域を制限領域データとして含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記車両に搭載され、前記車両の少なくとも一部および前記車両の周囲の画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影した画像を画像データとして一時的に記憶する一時記憶手段と、
前記車両に加わる加速度を検出する加速度検出手段と、
前記加速度検出手段で検出した前記車両に加わる加速度が予め設定された上限加速度を超えると、前記一時記憶手段に記憶されている画像データのうち前記車両に加わる加速度が前記上限加速度を超えた時点から前後の予め設定された時間範囲における画像データを保存データとして記憶する保存データ記憶手段と、
前記位置検出手段で検出した前記車両の位置が前記制限領域にあるか否かを判断する制限有無判断手段と、
前記制限有無判断手段で前記車両が前記制限領域にあると判断されたとき、前記上限加速度を予め設定された値よりも大きな値である制限時上限加速度に変更する上限加速度変更手段と、
を備えることを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項2】
車両の位置を検出する位置検出手段と、
画像の撮影が制限される制限領域を制限領域データとして含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記車両に搭載され、前記車両の少なくとも一部および前記車両の周囲の画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影した画像を画像データとして一時的に記憶する一時記憶手段と、
前記車両に加わる加速度を検出する加速度検出手段と、
前記加速度検出手段で検出した前記車両に加わる加速度が予め設定された上限加速度を超えると、前記一時記憶手段に記憶されている画像データのうち前記車両に加わる加速度が前記上限加速度を超えた時点から前後の予め設定された時間範囲における画像データを保存データとして記憶する保存データ記憶手段と、
前記位置検出手段で検出した前記車両の位置が前記制限領域にあるか否かを判断する制限有無判断手段と、
前記制限有無判断手段で前記車両が前記制限領域にあると判断されたとき、前記一時記憶手段から前記保存データ記憶手段に記憶する保存データを暗号化する暗号化手段と、
を備えることを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項3】
車両の位置を検出する位置検出手段と、
画像の撮影が制限される制限領域を制限領域データとして含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記車両に搭載され、前記車両の少なくとも一部および前記車両の周囲の画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影した画像を画像データとして一時的に記憶する一時記憶手段と、
前記車両に加わる加速度を検出する加速度検出手段と、
前記加速度検出手段で検出した前記車両に加わる加速度が予め設定された上限加速度を超えると、前記一時記憶手段に記憶されている画像データのうち前記車両に加わる加速度が前記上限加速度を超えた時点から前後の予め設定された時間範囲における画像データを保存データとして記憶する保存データ記憶手段と、
前記位置検出手段で検出した前記車両の位置が前記制限領域にあるか否かを判断する制限有無判断手段と、
前記制限有無判断手段で前記車両が前記制限領域にあると判断されたとき、前記上限加速度を予め設定された値よりも大きな値である制限時上限加速度に変更する上限加速度変更手段と、
前記制限有無判断手段で前記車両が前記制限領域にあると判断されたとき、前記一時記憶手段から前記保存データ記憶手段に記憶する保存データを暗号化する暗号化手段と、
を備えることを特徴とするドライブレコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−232858(P2011−232858A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100841(P2010−100841)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】