説明

ドライブレコーダ

【課題】容量が限られた記録媒体の記録領域の効率的な利用を可能にすると共に、管理上必要とされる時間範囲の記録データを確実に残すことが可能なドライブレコーダを提供する。
【解決手段】2種類以上の記録対象データのうち少なくとも1種類の第1のデータについて、事前に決定された記録時間長上限値を保持する時間長上限値保持部25と、前記記録媒体上の空き領域が存在しないかもしくは不足する場合に、記録媒体30上に記録されている前記第1のデータの記録時間長と前記記録時間長上限値とを比較し、前記記録時間長上限値を超えた場合は、前記第1のデータが記録されている領域の中から不要なデータを消去して新たな空き領域を確保する記録制御部10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載器として車両に搭載されるドライブレコーダに関し、特に所定の記録媒体上に記録するデータの管理に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両に搭載されるドライブレコーダは、車載カメラで撮影された映像や車両の速度などのデータをメモリカードなどの記録媒体に自動的に記録するものが多い。また、従来より交通事故の発生などのイベントをトリガとして一定時間だけ記録を実行するトリガ記録タイプや、イベントとは無関係に常時記録を実行する常時記録タイプのドライブレコーダが存在している。
【0003】
ところで、上記のようなドライブレコーダにおいては、メモリカードなどの記録媒体がデータの保存先になるので、記録可能なデータの容量が有限である。しかし、記録すべきデータについては、イベントが発生するたびに、あるいは時間の経過に伴って徐々に追加されるので、取得した全てのデータを記録し保存することはできない。従って、ドライブレコーダにおいては、記録媒体上でデータを記録可能な空き領域がなくなった場合には、時間的に古い記録データを記録媒体から消去して新たな空き領域を確保したり、古い記録データを上書きするようにデータの書き込みを行うのが一般的である。
【0004】
ドライブレコーダの従来技術については、例えば特許文献1および特許文献2に開示された技術が知られている。
特許文献1においては、自車両の走行状態に係る情報をより長期にわたって記憶保持することのできるドライブレコーダが開示されている。具体的には、複数種類の走行データを作成し、走行データの種類に応じて優先度を付与し、時間の経過に伴い重要性の低下した走行データの優先度を小さくし、記録媒体の空き容量が少なくなった時には、優先度の小さい走行データから順に消去することを提案している。
【0005】
特許文献2においては、事故検証を詳細に行うことが可能な情報を収集する記録装置を開示している。具体的には、車両の現在の状態を示す車両情報を一定の時間間隔で記録し、事故の発生を検知した場合には、事故前よりも短い時間間隔で記録することを提案している。また、衝撃の大きさからその衝撃が事故レベルか否かを判定し、衝撃が事故レベルの場合、事故検出前、例えば10分間分の記録の上書きを禁止して事故直前の情報を保護することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−15789号公報
【特許文献2】国際公開第2007/110958号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、常時記録タイプのドライブレコーダは、例えばタクシー車両やトラックのような業務用車両の運行の状況を表す情報を記録するために利用することができる。また、業務用車両の場合には、映像のデータとして、道路など車外を撮影した映像の他に、車内の運転手の様子や乗客の様子を撮影した映像を記録することが考えられる。車内の映像については、運転手の安全な運転や乗客に対する応対などの状況を管理者が把握するために利用できる。また、例えばタクシー車両の車内における乗客の忘れ物等の状況を確認するためにも利用できる。
【0008】
また、タクシー車両用のドライブレコーダの場合、業務の管理上、車外を撮影した映像のデータについては、当日に撮影されたデータだけ残っていれば十分な場合が多い。しかし、例えば乗車から1週間程度経過した後で、タクシー会社が乗客から忘れ物について問い合わせを受ける場合もあるので、車内を撮影した映像については車外の映像のデータよりも長期間にわたって保存しておくことが望ましい。
【0009】
しかし、ドライブレコーダに装着するメモリカード等の記録媒体は記録データ容量が限られているし、映像を含むデータは容量が大きくなるので長時間に渡って取得されたデータを全て保存することはできない。すなわち、記録媒体上に空き領域がなくなると、新たな記録領域を確保するために、古くなったデータは自動的に消去されてしまう。
【0010】
もしも特許文献1の従来技術を採用すれば、記録するデータの種類毎に異なる優先度を割り当てることが可能である。従って、例えば車内を撮影した映像データの優先度を高くして、車外を撮影した映像データの優先度を低くすることも考えられる。
【0011】
しかしながら、車内を撮影した映像データの優先度を高くした場合であっても、管理上必要とされる期間(例えば1週間)内の全ての記録データが残っているとは限らない。また、車外を撮影した映像データの優先度を低くした場合であっても、管理上必要とされる時間長を超える長さで記録データが残る場合があり、記録媒体の限られた容量の記録領域を効率的に利用できない。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容量が限られた記録媒体の記録領域の効率的な利用を可能にすると共に、管理上必要とされる時間範囲の記録データを確実に残すことが可能なドライブレコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係るドライブレコーダは、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 車両の運行に伴って発生する互いに種類が異なる2種類以上の記録対象データを、定期的にもしくは所定のイベント発生に応答して繰り返し取得し、取得した記録対象データを所定の記録媒体上の空き領域に順次に記録するドライブレコーダであって、
前記2種類以上の記録対象データのうち少なくとも1種類の第1のデータについて、事前に決定された記録時間長上限値を保持する時間長上限値保持部と、
前記記録媒体上の空き領域が存在しないかもしくは不足する場合に、前記記録媒体上に記録されている前記第1のデータの記録時間長と前記記録時間長上限値とを比較し、前記記録時間長上限値を超えた場合は、前記第1のデータが記録されている領域の中から不要なデータを消去して新たな空き領域を確保する記録制御部と
を備えること。
(2) 上記(1)に記載のドライブレコーダであって、
前記記録制御部は、前記記録対象データの中に、前記第1のデータとは種類が異なる第2のデータおよび第3のデータが含まれる状況において、前記記録媒体上の空き領域が存在しないかもしくは不足する場合に、前記記録媒体上に記録されている前記第1のデータの記録時間長が前記記録時間長上限値以内の時には、前記記録媒体上に記録されている前記第2のデータの記録時間長と、前記記録媒体上に記録されている前記第3のデータの記録時間長とを比較し、前記第2のデータおよび第3のデータのうち記録時間長の長い方を優先的に選択し、選択したデータが記録されている領域の中から不要なデータを消去して新たな空き領域を確保すること。
(3) 上記(1)に記載のドライブレコーダであって、
前記記録制御部は、前記第1のデータの記録時間長が前記記録時間長上限値を超えた場合には、前記第1のデータが記録されている領域の中で、保護対象のデータを除き、記録された時間が最も古いデータを探し出し、このデータを不要なデータとして消去すること。
(4) 上記(2)に記載のドライブレコーダであって、
前記記録制御部は、前記新たな空き領域を確保する際に、選択した前記第2のデータ又は第3のデータが記録されている領域の中で、保護対象のデータを除き、記録された時間が最も古いデータを探し出し、このデータを不要なデータとして消去すること。
(5) 上記(1)に記載のドライブレコーダであって、
前記記録制御部は、2種類以上の前記記録対象データとして、少なくとも、互いに異なる場所を撮影する複数の車載カメラにより撮影された複数種類の画像データを前記記録媒体上に記録すること。
【0014】
上記(1)の構成のドライブレコーダによれば、前記記録媒体上に記録される前記第1のデータの記録時間長を予め定めた前記記録時間長上限値に制限できる。従って、必要以上に長い期間に渡って前記第1のデータが保存されるのを防止でき、容量が限られた記録媒体の記録領域を効率的に利用できる。
上記(2)の構成のドライブレコーダによれば、前記第1のデータについて、前記記録時間長上限値以内の長さの管理上必要とされるデータを確実に残すことができる。また、前記第2のデータおよび第3のデータについて、記録時間長を均等にすることができる。
上記(3)の構成のドライブレコーダによれば、前記第1のデータの中で重要度の高い箇所のデータについては、時間的に古くなっても消去されないように保護することができる。
上記(4)の構成のドライブレコーダによれば、前記第2のデータおよび第3のデータの中で重要度の高い箇所のデータについては、時間的に古くなっても消去されないように保護することができる。
上記(5)の構成のドライブレコーダによれば、例えば車外を撮影して得られる映像データの記録時間長と、車内を撮影して得られる映像データの記録時間長とを独立して管理することができ、必要なデータだけを確実に残すことが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドライブレコーダによれば、容量が限られた記録媒体の記録領域の効率的な利用が可能になり、管理上必要とされる時間範囲の記録データを確実に残すことが可能になる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施形態のドライブレコーダの主要部の構成例を表すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示したドライブレコーダの主要な動作を表すフローチャートである。
【図3】図3は、図1に示したドライブレコーダが記録するデータの構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のドライブレコーダに関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0019】
<装置の構成>
本実施形態におけるドライブレコーダ100の主要部の構成例が図1に示されている。なお、本実施形態では、タクシーやトラックなどの業務用車両に車載器として搭載する常時記録タイプのドライブレコーダ100を想定している。
【0020】
図1に示すように、このドライブレコーダ100には、記録制御部10、インタフェース11〜14、車外撮影用車載カメラ21、車内撮影用車載カメラ22、車速(速度)センサ23、加速度(G)センサ24、不揮発性メモリ25および記録媒体30が備わっている。
【0021】
なお、これらの構成要素のうち、車外撮影用車載カメラ21、車内撮影用車載カメラ22および車速センサ23は、このドライブレコーダ100を搭載する車両側に予め設置されている。それ以外の構成要素については、ドライブレコーダ100の車載器内部に組み込まれている。
【0022】
車外撮影用車載カメラ21は、例えば自車両のフロントウインドシールドの車室内側に配置され、この車両の進行方向前方の風景、すなわち道路の路面や、前方の車両などを被写体として撮影できるように固定される。勿論、車両後部の窓ガラスの近傍位置から後方の風景を撮影することも考えられる。
【0023】
車内撮影用車載カメラ22は、この車両の車室内に配置され、例えば運転席付近における運転者の状況、又は後部座席付近における乗客等の状況、あるいはそれらの双方を撮影できる方向に向けて固定される。
【0024】
なお、図1に示す例では車外撮影用車載カメラ21および車内撮影用車載カメラ22を1台ずつ設置する場合を想定しているが、互いに異なる場所を撮影可能な複数台の車外撮影用車載カメラ21及び/又は複数台の車内撮影用車載カメラ22をドライブレコーダ100に接続しても良い。
【0025】
記録制御部10は、マイクロコンピュータを含む電子回路により構成されており、予め用意されたプログラムを実行することによりドライブレコーダ100の制御に必要とされる処理を実現する。記録制御部10の動作については後で詳細に説明する。
【0026】
車速センサ23は、車両の変速機出力軸が所定量回動する毎にそれを検出してパルス信号を生成する。従って、車速センサ23が出力するパルス信号のパルス数や発生周期を測定することにより、車速や移動距離の情報を取得できる。
【0027】
加速度センサ24は、交通事故発生時の異常に大きい加速度や、急加速、急減速に伴う加速度を検出するために利用される。加速度センサ24は、車両の進行方向(前後方向)や横方向の加速度の大きさを検出する。
【0028】
インタフェース11は、車外撮影用車載カメラ21の撮影により得られた映像信号を所定のデジタル信号に変換し、記録制御部10が処理可能な映像データとして出力する。インタフェース12は、車内撮影用車載カメラ22の撮影により得られた映像信号を所定のデジタル信号に変換し、記録制御部10が処理可能な映像データとして出力する。インタフェース13は、車速センサ23から出力される車速パルス信号を、記録制御部10の処理に適した信号に変換する。インタフェース14は、加速度センサ24が出力する信号を記録制御部10が処理可能なデジタル信号に変換する。
【0029】
記録媒体30は、例えば不揮発性メモリを内蔵したメモリカードにより構成され、ドライブレコーダ100が取得した各種データを保存するために利用される。記録媒体30に対しては、記録制御部10からのアクセスによりデータの書き込み及び読み出しを自在に行うことができる。
【0030】
<制御に使用する定数データの構成例>
図1に示した不揮発性メモリ25は、記録制御部10の制御に必要な定数などのデータを予め保持している。本実施形態では、次の表1に示すような内容で構成される記録制御テーブルのデータも不揮発性メモリ25に登録されている。
【表1】

【0031】
上記の表1に示した記録制御テーブルにおいては、3種類のデータDA、DB、DCのそれぞれについて、記録時間長制限の有無を表す情報と、記録時間長上限値を表す情報とが登録できるように構成されている。具体的には、データDAは車両情報(車速や加速度など)に相当し、データDBは車外撮影用車載カメラ21の撮影により得られる車外映像データに相当し、データDCは車内撮影用車載カメラ22の撮影により得られる車内映像データに相当する。
【0032】
つまり、この記録制御テーブルを記録制御部10が利用することにより、互いに種類が異なるデータDA、DB、DCのそれぞれについて、記録時間長を制限することが可能になる。なお、記録制御テーブルの内容については、ドライブレコーダ100を使用する実際の環境や、車両を管理する会社が要求する条件などの仕様に応じて適宜書き換えることが想定される。
【0033】
<記録時間長の説明>
図1に示したドライブレコーダ100が記録したデータの構成の具体例が図3に示されている。なお、図3に示されたデータの構成は記録の結果を表しており、図3における時間軸はデータが記録された時刻を示している。
【0034】
ドライブレコーダ100は、車両の運行中に、車両情報のデータDA、車外映像データDB、車内映像データDCのそれぞれを、一定の周期(例えば0.1秒間隔)で繰り返し取得し、これらを時系列データとして記録媒体30に順次に記録し保存することができる。しかし、記録媒体30が記録可能なデータの容量は有限であり予め定まっているので、所定量のデータを書き込んだ後は、新たなデータを書き込むべき空き領域が記録媒体30上になくなる。従って、新しいデータの書き込みを続けるために、古いデータを削除(消去)して新たな空き領域を確保するか、あるいは古いデータを無効化しその領域を空き領域として上書きできるように制御する必要がある。
【0035】
図3に示された記録例においては、車両情報のデータDAについては、過去の時刻t3から現在時刻t5までの期間中に取得された範囲の全てのデータが記録されているが、時刻3以前の古いデータは既に削除されている。但し、時刻t1から時刻t2までの範囲のデータについては特別な保護情報が割り当てられているため、削除されず残っている。データDAの記録時間長TAについては、前述の記録制御テーブルで無指定であるため、記録媒体30のデータ容量や他の要因によって変動する。
【0036】
また、車外映像データDBについては、過去の時刻t4から現在時刻t5までの期間中に取得された範囲の全てのデータが記録されているが、時刻t4以前の古いデータは既に削除されている。但し、時刻t1から時刻t2までの範囲のデータについては特別な保護情報が割り当てられているため、削除されず残っている。車外映像データDBの記録時間長TBについては、前述の記録制御テーブルで指定されている記録時間長上限値(この場合は6時間)と一致する一定の長さになる。
【0037】
車内映像データDCについては、過去の時刻t3から現在時刻t5までの期間中に取得された範囲の全てのデータが記録されているが、時刻t3以前の古いデータは既に削除されている。但し、時刻t1から時刻t2までの範囲のデータについては特別な保護情報が割り当てられているため、削除されず残っている。車内映像データDCの記録時間長TCについては、前述の記録制御テーブルで無指定であるため、記録媒体30のデータ容量や他の要因によって変動する。
【0038】
なお、図3に示された時刻t1からt2の範囲のように特別に保護されるデータは、例えば交通事故の発生を検知した時に取得されたデータのように、時間的に古くなっても重要な価値を持つデータに相当する。
【0039】
<装置の動作の説明>
図1に示したドライブレコーダ100の主要な動作が図2に示されている。図2に示す動作は、実際には図1に示した記録制御部10のマイクロコンピュータの処理によって実現される。図2に示す動作について以下に説明する。
【0040】
ステップS11では、記録制御部10は、記録対象データを一定の周期(例えば0.1秒間隔)で繰り返し取得する。具体的には、車速センサ23が出力する車速パルスに基づいて算出した車速の値や、加速度センサ24が出力する信号に対応する加速度の値を車両情報のデータDAとして取得する。また、車外撮影用車載カメラ21が撮影した映像を車外映像データDBとして取得し、車内撮影用車載カメラ22が撮影した映像を車内映像データDCとして取得する。
【0041】
ステップS12では、記録制御部10は記録媒体30上でデータを書き込み可能な所定以上の空き領域が存在するか否かを識別する。なお、データが以前に書き込まれた領域であっても、既にそのデータが削除(消去)されるかあるいは無効化されている場合は空き領域として認識する。十分な空き領域が存在する場合はステップS12からS13に進み、存在しない場合はステップS14に進む。
【0042】
ステップS13では、記録制御部10はステップS11で取得した最新のデータDA、DB、DCを、データの種類毎に区分して記録媒体30上の空き領域に時系列データとして書き込み保存する。
【0043】
また、例えば所定の閾値を超える大きさの加速度を検出した場合のように、現在の時間帯で記録するデータの重要度が高いと認識した場合には、ステップS13で記録するデータについて「保護」を表す情報を付加する。なお、保護の有無をデータDA、DB、DCの種類毎に識別しても良い。その場合は、前述の記録制御テーブルに保護有無に関する条件を登録しておくことが想定される。
【0044】
ステップS14では、記録制御部10は不揮発性メモリ25上に存在する前述の記録制御テーブルの内容を参照し、記録時間長制限があるデータについて、指定されている記録時間長上限値(この例では6時間)を取得する。そして、該当する種類のデータ(この例では車外映像データDB)の記録媒体30上の現在の記録時間長と、記録時間長上限値とを比較し、記録時間長上限値以上の長さで記録されている場合はステップS15に進み、記録時間長上限値未満の場合はステップS16に進む。
【0045】
なお、前述の表1の記録制御テーブルでは車外映像データDBのみ記録時間長を制限してあるが、複数種類のデータについてそれぞれ記録時間長を制限することもできる。その場合は、記録時間長の制限があるそれぞれの種類のデータについて、ステップS14、S15と同様の処理を行う。
【0046】
ステップS15では、記録制御部10は記録媒体30上で処理対象のデータ(この例では記録時間長制限ありの車外映像データDB)が記録されている領域の中から、記録された時刻が最も古い一部のデータを検出し、該当するデータを削除する。但し、時間的に古いデータであっても、前述の「保護」を表す情報が付加されている範囲については削除対象から除外する。古いデータを削除することにより、記録媒体30上に新たな空き領域が確保される。
【0047】
ステップS16では、記録制御部10は前述の記録制御テーブル上で記録時間長制限の指定がないデータ、すなわち車両情報のデータDAと車内映像データDCについて、記録媒体30上の現在の記録時間長を比較する。
【0048】
例えば、図3に示す現在時刻t5の状態であれば、車両情報のデータDAの記録時間長TAと車内映像データDCの記録時間長TCとを比較する。そして、「TA>TC」の条件を満たす場合はステップS17に進み、そうでなければステップS18に進む。
【0049】
なお、記録時間長制限の指定がないデータが3種類以上存在する場合には、それらのデータの中で現在の記録時間長が最も長い1種類のデータを選択し、それを次のステップS17で処理対象とする。
【0050】
ステップS17では、記録制御部10は記録媒体30上で処理対象のデータ(この例では記録時間長制限なしのデータDA)が記録されている領域の中から、記録された時刻が最も古い一部のデータを検出し、該当するデータを削除する。但し、時間的に古いデータであっても、前述の「保護」を表す情報が付加されている範囲については削除対象から除外する。古いデータを削除することにより、記録媒体30上に新たな空き領域が確保される。
【0051】
ステップS18では、記録制御部10は記録媒体30上で処理対象のデータ(この例では記録時間長制限なしの車内映像データDC)が記録されている領域の中から、記録された時刻が最も古い一部のデータを検出し、該当するデータを削除する。但し、時間的に古いデータであっても、前述の「保護」を表す情報が付加されている範囲については削除対象から除外する。古いデータを削除することにより、記録媒体30上に新たな空き領域が確保される。
【0052】
<ドライブレコーダ100の利点>
ドライブレコーダ100が図2に示した動作を実行することにより、図3に示したような結果が得られる。すなわち、前述の記録制御テーブル上で記録時間長制限のある車外映像データDBについては、指定された記録時間長上限値とほぼ一致する長さ(この例では6時間)の範囲だけデータが記録媒体30上に残り、それ以前の古いデータについては保護対象の範囲を除いて自動的に削除される。また、記録時間長制限のない他のデータ(DA,DC)については、保存されるデータの記録時間長(TA,TC)がほぼ均等になるように制御される。
【0053】
従って、図3に示した例では、車外映像データDBについて、管理上必要な範囲の過去6時間の範囲のデータを確実に記録媒体30上に保存することができる。また、記録時間長上限値(6時間)を超えたデータは優先的に削除されるので、データ容量の大きい不要なデータが記録媒体30の領域を占有するのを防止することができ、記録媒体30のデータ容量を有効に活用できる。
【0054】
また、記録時間長の制限がない他のデータ(DA,DC)については、記録時間長(TA,TC)にばらつきが生じるのを防止することができ、記録媒体30のデータ容量の制限による範囲内で古くなったデータもなるべく保存しておくことができる。例えば、タクシー車両の場合の車内映像データ(DC)のように、1週間程度経過しても利用価値のあるデータについては、ある程度古くなってもそのまま記録媒体30上に保存しておくことが可能である。
【0055】
なお、図1に示したドライブレコーダ100においては前述の記録制御テーブルを不揮発性メモリ25上に配置してあるが、前述の記録時間長上限値等を管理者等が変更する必要がない場合には、固定データとして読み出し専用メモリ(ROM)上に保持しても良いし、記録制御部10が実行するプログラムの中に組み込んでも良い。
【符号の説明】
【0056】
10 記録制御部
11,12,13,14 インタフェース
21 車外撮影用車載カメラ
22 車内撮影用車載カメラ
23 車速センサ
24 加速度センサ
25 不揮発性メモリ
30 記録媒体
100 ドライブレコーダ
DA 車両情報のデータ
DB 車外映像データ
DC 車内映像データ
TA,TB,TC 記録時間長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運行に伴って発生する互いに種類が異なる2種類以上の記録対象データを、定期的にもしくは所定のイベント発生に応答して繰り返し取得し、取得した記録対象データを所定の記録媒体上の空き領域に順次に記録するドライブレコーダであって、
前記2種類以上の記録対象データのうち少なくとも1種類の第1のデータについて、事前に決定された記録時間長上限値を保持する時間長上限値保持部と、
前記記録媒体上の空き領域が存在しないかもしくは不足する場合に、前記記録媒体上に記録されている前記第1のデータの記録時間長と前記記録時間長上限値とを比較し、前記記録時間長上限値を超えた場合は、前記第1のデータが記録されている領域の中から不要なデータを消去して新たな空き領域を確保する記録制御部と
を備えるドライブレコーダ。
【請求項2】
前記記録制御部は、前記記録対象データの中に、前記第1のデータとは種類が異なる第2のデータおよび第3のデータが含まれる状況において、前記記録媒体上の空き領域が存在しないかもしくは不足する場合に、前記記録媒体上に記録されている前記第1のデータの記録時間長が前記記録時間長上限値以内の時には、前記記録媒体上に記録されている前記第2のデータの記録時間長と、前記記録媒体上に記録されている前記第3のデータの記録時間長とを比較し、前記第2のデータおよび第3のデータのうち記録時間長の長い方を優先的に選択し、選択したデータが記録されている領域の中から不要なデータを消去して新たな空き領域を確保する
ことを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項3】
前記記録制御部は、前記第1のデータの記録時間長が前記記録時間長上限値を超えた場合には、前記第1のデータが記録されている領域の中で、保護対象のデータを除き、記録された時間が最も古いデータを探し出し、このデータを不要なデータとして消去する
ことを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項4】
前記記録制御部は、前記新たな空き領域を確保する際に、選択した前記第2のデータ又は第3のデータが記録されている領域の中で、保護対象のデータを除き、記録された時間が最も古いデータを探し出し、このデータを不要なデータとして消去する
ことを特徴とする請求項2に記載のドライブレコーダ。
【請求項5】
前記記録制御部は、2種類以上の前記記録対象データとして、少なくとも、互いに異なる場所を撮影する複数の車載カメラにより撮影された複数種類の画像データを前記記録媒体上に記録する
ことを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−61727(P2013−61727A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198558(P2011−198558)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(501418498)矢崎エナジーシステム株式会社 (79)
【Fターム(参考)】