説明

ドライミスト噴霧方法および装置

【課題】二流体ノズルを用いるドライミスト噴霧装置の小型・簡略化に伴う噴霧動作の不安定さを解消すると共に、その取り扱い操作を容易にする。
【解決手段】コンプレッサ2と、液体容器3と、二流体ノズル4とコンプレッサから分岐して二流体ノズルに通じるノズル気体管6と、容器用気体管7と、液体管9とを備えたドライミスト噴霧装置1において、前記気体管の管路抵抗を前記液体容器の液面から前記二流体ノズルまでの使用時の高さに対応して設定する。
【効果】エアコンプレッサからの高圧空気をノズルへの液体および気体の供給に共通に用いることにより装置を簡略化し、これに伴って液体管および液体管が挿入される液体容器の着脱部を操作容易なものとすると共にノズルと液面との間の距離の増加によるノズルの噴霧動作の不安定化を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二流体ノズルを用いたドライミストの噴霧方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体と気体を混合して霧滴として吐出する二流体ノズルは低圧で微細の霧滴を発生させることができるため従来から調湿、洗浄等種々の分野で用いられており(特開2005−46338:特許文献1)、これによって得られる微細な液滴の噴霧により周囲に濡れを生じないいわゆるドライミストを発生させて効率的に調温/調湿を行うことが近年次第に普及しており、店頭やショールームでの応用が試みられている。
【0003】
二流体ノズルには種々の形式のものが知られているが、加圧下に供給される水をノズル内部において液膜として形成し、加圧下に導入した空気を旋回流としてこの液膜に作用させて剪断力を与えることにより微細なドライミストを発生させる構成の二流体ノズルは極めて低圧で作動し、ナノオーダーのドライミストを効果的に発生させることができる。本発明者はこのような形式の二流体ノズルを用いて病室内等におけるインフルエンザウィルスの不活性等に用いる噴霧装置を開発してこれを提案している(特開2011−52900号)。
【0004】
前記形式のノズルによれば低圧の加圧空気と小流量の水の供給によって効果的にドライミストを発生させることができる。たとえば約300mの通常の居住空間の湿度を短時間で所定の湿度に制御することができる。このために用いられるエアコンプレッサは出力約50KPa以下の小型低圧のコンプレッサで充分であり、噴霧システム全体の重量や容積が著しく小型化し騒音の発生もほとんどなく、電力消費量も約30Wであって著しい省エネルギー効果が期待される。
【0005】
このような小型のドライミスト噴霧装置はさらにスキンケアや吸入器等の美容、保健用途のようなパーソナルユースにも適用が可能となり、これらの目的用途のためにはシステム全体の一層の小型化、取り扱いの容易さが求められる。たとえば装置を移動可能なものとするため1つのコンプレッサをノズルに供給する水および加圧空気の動力源として共通に用い、加圧空気の管路を介してその圧力の一部により水タンクの液面を加圧してノズルに液体を供給することが一部で知られている。またこのようなシステムにおいて水タンクを小容量で着脱可能な缶またはボトルとすれば、多様な種類の液体容器を用途に応じて随時交換して用いることができ、多目的な装置として使用することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−46338
【特許文献2】特開2011−52900
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしこのような場合には、共通のコンプレッサを用いて空気および液体を同時に供給するので、それらの間の圧力の分配のバランスが崩れやすく噴霧動作が不安定になりやすい。また液体容器に対して加圧用の気体管と加圧によってノズルに水を供給する液体管とが夫々接続されているので容器を通常の螺合により脱着することが困難である。これらの課題を解決するためには何等かの機構が必要となるがそのための具体的な手段はこれまで知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、
高圧の気体を供給するコンプレッサと、
液体を貯留する液体容器と、
前記液体容器の液面よりも上方に位置し、ノズルに供給される液体により形成された液膜に対して旋回流の形状として加圧気体により剪断力を与えてらせん状のドライミストを発生させる二流体ノズルと、
一端側がコンプレッサに通じ、他端側は分岐部により分岐してその一方の分岐管が二流体ノズルに通じるノズル用気体管を構成し、他方の分岐管が液体容器内の液面に通じる容器用気体管を構成する気体管と、
一端側が前記液体容器の液体に臨み、他端側が二流体ノズルに通じる液体管と、
を有する噴霧装置を用い、
前記容器用気体管から供給される気体による加圧で前記液体容器内の液体を前記液体管を介して前記二流体ノズルに圧送するようになされている。
【0009】
前記の構成においては、コンプレッサからの加圧空気は分岐部により分岐され、その一方の分岐管であるノズル用気体管を通して二流体ノズルに供給されて内部で旋回流を形成する。他方の側の分岐管は前記分岐部より液体容器に連通しており、液体容器内に貯留した液体の水面を加圧する。これによって一端が容器内の液中に臨む液体管を通して液体が加圧下に上昇されノズルに供給される。
【0010】
これによって従来液体容器としてのタンクからの液体の圧送のために用いられていたモータ等を省略することができ、全体の装置構成がコンパクトなものとなる。また、水道水の水圧を利用して水を供給する場合には水道タップから噴霧システムまでの長い配管が必要となるため設置場所が制約されていたが、液体容器を内蔵している本発明のドライミスト噴霧装置は任意の場所に設けることができる。
【0011】
さらに本発明においては、前記容器用気体管および前記液体管は、前記液体容器の頸部に着脱自在に取り付けられる接続蓋を介して前記液体容器に接続固定される。
【0012】
これによって、液体容器への気体管と液体容器からの液体管は接続蓋を介して液体容器内部にまとめて配置される。接続蓋は液体容器に対して着脱自在であることから、頸部から液体を補給する場合等には容器用気体管および液体管を迅速に液体容器から外すことができる。
【0013】
また本発明の好ましい態様においては、前記接続蓋は、前記容器用気体管および前記液体管が取り付けられて頸部の軸方向に着脱する内蓋と、頸部の外周に螺子係合して前記内蓋を頸部の先端に気密に圧接する外蓋とからなる。
【0014】
液体容器の交換時には通常気体管/液体管を挿通した状態の接続蓋を液体容器に対して螺合により回転させるが、このままの構造ではその際に接続蓋の回転に伴って二本の配管に捻れ反力が生じるので操作を円滑に行うことができない。本発明ではたとえば接続蓋の取り外し時には外蓋の螺子を緩めこの状態で内蓋を軸方向に移動させることにより、容器用気体管および液体管に捩れを生じさせることなく接続蓋を液体容器の頸部から容易にはずすことができる。
【0015】
また本発明の別の態様においては、前記接続蓋は、内周に雌螺子が形成され、外周において噴霧装置のケーシングに回転不能に嵌合し、前記液体容器は、頸部が前記接続蓋の雌螺子に対して螺子係合により着脱可能になされている。
【0016】
これにより接続蓋の取り外し時に液体容器を回転させると接続蓋との螺子係合がはずれて液体容器を容易に外すことができる。容器用気体管および液体管は噴霧装置のケーシングに回転不能に嵌合した接続蓋に取り付けられていることから、着脱時の操作で容器用気体管および液体管に捩れが生じることもない。
【0017】
さらに本発明においては、前記気体管の管路抵抗を、前記液体容器の液面から前記二流体ノズルまでの使用時の高さに対応して調節・設定する。コンプレッサからの加圧気体をノズルへの噴霧用の加圧気体および容器内の液体のノズルへの圧送のための加圧気体に分岐して用いる本発明では、所望のドライミストの噴霧が得られるようにコンプレッサ出力、各配管系の管長や管径、液体容器の形状や体積、および容器内の液面からノズル迄の高さ等を予め設定し、それによってノズルへの液体および加圧気体の供給量が定められる。
【0018】
ここで前記液面からノズルまでの高さはたとえば噴霧にともなう液面の低下、ノズル操作位置の移動、容器設置位置の変更等により変化する。この高さが設定位置よりも高くなると容器中の液体を大気圧に抗して上昇させるための容器用液体管への圧力が不足し、液量と気体量とのバランスが崩れて噴霧動作が次第に不安定となりある位置を越えると液体の供給が中断されて所望のドライミスト噴霧が実質上停止してしまう。
【0019】
本発明ではノズル用気体管の管路抵抗を液面からノズルまでの使用時の高さに対応して調節・設定する。個々の装置の使用条件によって、たとえば高さの増加が予測される場合、これに対応して気体管の管路抵抗を増大させることによりコンプレッサからのノズル用気体管側の加圧空気の圧力が減少し、高さの増加による液体供給のための圧力の低下が相対的に補償されてドライミストの噴霧が安定化する。
管路抵抗の調節(増大)には種々の手段が考えられる実験によれば管長の増加と空気抵抗の増大(それによる圧力の低下)はほゞ比例しており、個々の装置の使用条件に基いて高さの最大変動値を予測しておけばそれに対応すべき管長は容易に設定することができる。また管路抵抗は管径の減少にともなって増加するので特定の場合には管径の減少により管路抵抗を増加させる手段も有効である。さらに気体管の分岐部のコンプレッサ出口からの距離を調節し、容器用気体管の圧力を増大させてノズル部での水圧と気体圧力との差を相対的に増大させることによって前記高さの増加に対応することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るドライミスト噴霧装置の構成ブロック図である。
【図2】接続蓋の一実施例の断面図である。
【図3】接続蓋の他の実施例の断面図である。
【図4】液体容器の外観図であり、(a)、(b)、(c)はそれぞれ平面図、正面図、側面図である。
【図5】エア洗浄装置の構成図である。
【図6】二流体ノズルの一例の説明図である。
【図7】液面からノズル迄の高さに対応する管長の関係を示すグラフである。
【図8】容器用気体管の分岐位置と圧力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のドライミスト噴霧装置は、美容室や家庭における皮膚のスキンケア、マッサージ、吸入等の美容・保健用途、空気清浄化の用途等、多様な目的に適用することができる。
【0022】
図1において、本発明のドライミスト噴霧装置1は、加圧気体を供給するコンプレッサ2と、液体を貯留する液体容器3と、液体容器3の液面よりも上方に位置し、ノズル内部に加圧下に供給される液体により形成された液膜に対して旋回流の形状としての気体により剪断力を与えてらせん状のドライミストを発生させる二流体ノズル4と、一端側がコンプレッサ2に通じ、他端側は分岐部5により分岐してその一方の分岐管が二流体ノズル4に通じるノズル用気体管6を構成し、他方の分岐管が液体容器3に連通する容器用気体管7を構成する気体管8と、一端側が液体容器3の底部に臨み、他端側が二流体ノズル4に通じる液体管9とを備えている。気体は一般的には空気であり、液体としては例えば水、その他保湿、消臭、美容、殺菌用の種々の薬液が用いられる。
【0023】
美容室や家庭における美容・保健用途としてのドライミスト噴霧装置1では、コンプレッサ2は50kPa程度またはそれ以下の出力定格のもので充分であり、外形としても例えば15cm角、20cm長程度の小型サイズのものが市販されている。
【0024】
二流体ノズル4としては、ノズル内部に加圧下に供給される液体により形成された液膜に対して旋回流の形状として気体により剪断力を与えてらせん状のドライミストを発生させるものであれば特に限定されるものではないが、図6に示す二流体ノズル4を好適に使用できる。図6(a)は二流体ノズルの概略を示す断面図であり、図6(b)は第1気流旋回部の説明図、図6(c)は第2気流旋回部の説明図である。
【0025】
二流体ノズル4は、液体供給器42、気体供給器43、液膜形成壁44、供給された気体の一部を旋回させる第1気流旋回部45、残りの気体を旋回させる第2気流旋回部46および円筒状の外筒47とから構成される。図6(a)に示すように、液膜形成壁44は、噴射口48に向けて漸次縮径となるように環状に立設され、その円形開口縁44bは尖端に形成され、内周壁面44aは液膜の形成部位となる。液体供給器42には、第1気流旋回部45に臨むように、円周方向に沿って複数の液体噴射孔42bが貫通形成されている。液体供給器42の端壁42aは円錐形状の突起形状の中心体42cとなって液膜形成壁44の円形開口縁44bの近傍まで軸方向に延びている。
第1気流旋回部45は、液体供給器42の端壁42aから環状に立ち上がり形成されて液膜形成壁44の基部44cに当接する壁部45bを有しており、この壁部45bには、気体供給器43の流路43aと連通し、図6(b)に示すように、半径流方式で、第1の気流に旋回を与える溝形状の流路45aが複数形成されている。第2気流旋回部46は、液膜形成壁44の基部44cの外周縁から環状に立ち上がり形成されて外筒47の端壁47aに当接する壁部46bを有しており、この壁部46bには、気体供給器43の流路43aと連通し、図6(c)に示すように、半径流方式で、第2の気流に旋回を与える溝形状の流路46aが複数形成されている。
外筒47の端壁47aには円形の開口が形成されており、液膜形成壁44の円形開口縁44bで形成された噴射口48と同心に配設されるように環状噴射口49が形成される。
【0026】
二流体ノズル4の構成は以上からなり、液体は、液体供給器42の液体噴射孔42bから噴射されて液膜形成壁44の内周壁面44aに付着し、液膜として形成される。一方気体は、その一部が気体供給器43の流路43aから第1気流旋回部45の各流路45aに流れ込むことにより、液膜形成壁44の内側において第1の旋回気流が発生し、この第1の旋回気流により、液膜に対し剪断力が作用し液体の微粒化が行われ液膜形成壁44の円形開口縁44bから液滴が放出される。また、残りの気体が第2気流旋回部46の各流路46aに流れ込むことにより、液膜形成壁44の外側において第2の旋回気流が発生する。この第2の旋回気流によってさらなる剪断力が作用し、一層、液体粒子が微粒化する。
【0027】
図1、図2を参照して気体管8、液体管9およびこれら気体管8、液体管9を液体容器3に接続固定する接続蓋10について説明する。コンプレッサ2のエア供給口には気体管7の一端側を構成するコンプレッサ接続気体管11が取り付けられ、このコンプレッサ接続気体管11の下流端には分岐部5としての三又コネクタ12が取り付けられる。三又コネクタ12の残り2つの接続口の内、一方の接続口にノズル用気体管6の一端が取り付けられ、他方の接続口に容器用気体管7の一端が取り付けられる。気体管8、液体管9としては合成樹脂管、ゴム管等が好適である。
【0028】
図2を参照して、容器用気体管7および液体管9は、液体容器3の頸部13に着脱自在に取り付けられる接続蓋10を介して液体容器3に接続固定される。接続蓋10は、容器用気体管7および液体管9が取り付けられて頸部13の軸方向に着脱する内蓋14と、頸部13の外周に螺子係合して内蓋14を頸部13の先端に気密に圧接する外蓋15とからなる。
【0029】
内蓋14は、頸部13の開口部に挿入される挿入部14Aと、挿入部14Aの上部において頸部13の先端径と略同径に形成されたフランジ部14Bとを有した形状からなり、中央には上下に貫通する螺子孔14Cが形成されている。内蓋14は例えばアルミニウム合金製である。フランジ部14Bの下面側にはテフロン(登録商標名)等からなるリング状のシール材16が取り付けられている。
【0030】
内蓋14の上面側には前記螺子孔14Cと螺子係合する態様で三又コネクタ17の接続口が取り付けられ、上方に臨む三又コネクタ17の残り2つの接続口の内、一方の接続口に容器用気体管7の他端が取り付けられる。三又コネクタ17の接続口の内壁にはストッパ部18が環状に突設されており、容器用気体管7の他端はこのストッパ部18に突き当たるまで三又コネクタ17の接続口に挿入固定される。容器用気体管7の他端周りと三又コネクタ17の接続口の内壁との間には適宜に封密部材19が介設される。
【0031】
一方、液体管9は第1液体管9Aと第2液体管9Bとから構成されている。第1液体管9Aは三又コネクタ17と二流体ノズル4との間に配管され、その一端は三又コネクタ17の残りの接続口にストッパ部18に突き当たるまで挿入固定される。第1液体管9Aの一端周りと三又コネクタ17の接続口の内壁との間にも適宜に封密部材19が介設される。第2液体管9Bは、その一端が第1液体管9Aの一端の内部に挿入固定される細管からなり、三又コネクタ17の内部を通って他端が液体容器3の底部に臨む。第1液体管9Aと第2液体管9Bとの接続部に多少の隙間が形成されていたとしても、圧送されているときの水の表面張力が大きいために、隙間から水が漏れることはない。
【0032】
外蓋15は、三又コネクタ17を通す逃げ孔15Cが中央に形成された天蓋部15Aと、天蓋部15Aの周縁から下方に延設され、頸部13の外周の雄螺子と螺子係合する雌螺子15Dが形成された筒状の摘み部15Bとを有した形状からなる。外蓋15を頸部13に被せ螺合して締付けると、外蓋15の天蓋部15Aが内蓋14のフランジ部14Bを押圧し、シール材16と頸部13の先端との間が気密状態になる。外蓋15も例えばアルミニウム合金製である。なお、摘み部15Bの外周には滑り止めとしてローレット処理が施されている。
【0033】
以上により、液体容器3に気体を供給する気体管8、具体的には容器用気体管7と液体容器3から液体を供給する液体管9とは接続蓋10を介して液体容器3にまとめて接続固定される。コンプレッサ2によるノズル噴霧動作で液体を使い切った液体容器3に対し頸部13から液体を注入補給する場合等には、外蓋15の摘み部15Bを回し螺子を緩めて頸部13から外したうえで内蓋14を頸部13の軸方向に移動させる、つまり回転を伴うことなく単に上方に持ち上げる。これにより接続蓋10を液体容器3から容易に外すことができる。
気体管/液体管を取り付けた螺子式の接続蓋を液体容器3から外そうとした場合、通常の場合では接続蓋の回転に伴って二本の配管に捻れ反力が生じて操作を円滑に行うことができないおそれがあるのに対し、内蓋14を頸部13の軸方向に移動させる構造を用いたことにより、容器用気体管7および液体管9に回転の捩れを生じさせることなく頸部13から外して液体の補給作業を円滑に行うことができる。
【0034】
図3に接続蓋の他の実施例を示す。図3に示す接続蓋30は、内周に雌螺子30Dが形成され、外周において噴霧装置のケーシング31に回転不能に嵌合している。接続蓋30は、三又コネクタ17の接続口と螺子係合する螺子孔30Cが中央に形成された天蓋部30Aと、天蓋部30Aの周縁から下方に延設され、頸部13の外周の雄螺子と螺子係合する前記雌螺子30Dが形成された筒胴部30Bとを有した形状からなる。なお、三又コネクタ17に対する容器用気体管7および液体管9の取付態様は図2と同じである。
【0035】
ケーシング31は例えば液体容器3やコンプレッサ2等を収容する筐体であり、図3ではケーシング31の一部を構成する水平状の板部を局所的に示している。このケーシング31の板部の下面側には例えば六角形状の座ぐり孔32が形成されている。接続蓋30の外周は座ぐり孔32に対応して六角形状に形成されており、接続蓋30は座ぐり孔32に圧入等により嵌め込まれ、ケーシング31に対して回転不能に嵌合固定される。天蓋部30Aの下面側にはテフロン等からなるリング状のシール材33が取り付けられている。液体容器3が取り付けられた際、シール材33は天蓋部30Aの下面と頸部13の先端とを気密状態にする。座ぐり孔32の上方には三又コネクタ17を通すための逃げ孔34が形成される。
【0036】
そして、液体容器3は、頸部13が接続蓋30の雌螺子30Dに対して螺子係合により着脱自在に構成される。本実施例は固定された接続蓋30に対し液体容器3を回転させて着脱する構造であることから、液体容器3としては小型の容器が適しており、汎用のアルミ缶やペットボトル等が使用される。容器の容積が0.1〜2Lと小型の場合、毎分10cc程度の液量で使用した場合、10分〜3時間で内容物を使い切ることになり、多種類の処理薬液を用途に応じて使い分け経時変化の少ない状態で用いることができる。
【0037】
以上により、コンプレッサ2によるノズル噴霧動作で液体を使い切った液体容器3に対し頸部13から液体を注入補給する場合等には、単に液体容器3を回転させるだけで簡単に液体容器3を外すことができる。液体容器3の着脱時には、容器用気体管7および液体管9はケーシング31に固定された接続蓋30に取り付けられたままの状態であり、これら容器用気体管7、液体管9に回転の捩れが生じることもない。
【0038】
液体容器3としては、耐圧性を考慮して図4に示すように3軸方向から見て全て楕円形状を呈した3軸楕円型の容器を好適に使用することができる。この場合、液体容器3はたとえば合成樹脂製とすることが好ましい。液体容器3の上部には搬送用の取っ手20が設けられている。また、液体容器3の上部には前記頸部13が形成されている。
【0039】
図1に示すようにノズル供給用気体管6の途中にはエア洗浄装置21が適宜に介設される。エア洗浄装置21は、図5に示すようにノズル用気体管6に接続した多孔質のセラミック材質などのエアストーン22を槽23内に液没させ、エアストーン22から発泡した気体を液体に通過洗浄させる構成からなる。液体としては水の他、二酸化塩素、電解水等の殺菌剤を用いてもよく、これにより、二流体ノズル4に洗浄されたエアを供給できる。
【0040】
本発明のドライミスト噴霧装置はコンプレッサ2の出力、液体容器3の液面から二流体ノズル4までの高さ、ノズル用気体管6、容器用気体管7、液体管9などの各配管の管長および管径などを二流体ノズルに対する最適な気体(空気)・液体(水)の供給量が得られるように夫々所定値に設定することによって設計、製作される。一例として、たとえばコンプレッサ出口の出力を40KPa、ノズル用気体供給管6の管長を3.0m、ノズル用気体管および容器用気体管の管径を夫々6mmとし、コンプレッサの出口から所定の距離の位置で容器用気体管7を分岐して、液体容器に接続した場合、満水時の液面からノズルまでの標準的な高さを50cmとし、水量10cc/min、空気量10L/minの供給によって安定なミスト噴霧を行うことができる。
【0041】
ここで、満水時の液面からノズル迄の前記標準的な高さ50cmは本発明の装置製作の際に実際の使用条件を考慮して設定された平均値であって、この値は実際の個々の装置については固有の使用条件によって変動する。たとえばノズルの噴霧動作にともなって液体容器の満水時の液面が低下したときやノズルの操作位置の変更によって液面に対するノズルの位置が高くなったときなどには液面とノズル間の高さが増加する。これらの場合には液体管中を大気圧に抗して上昇させる液柱の高さが増加するので水を押上げる圧力が不足し、前記水および空気の供給量のバランスが崩れ噴霧が不安定になる。液面とノズルとの高さ距離がたとえば前記の50cmから40cm増加して90cmになるとノズルへの液体の供給が中断しノズルからのドライミストの状態としての噴霧は実質的に行われなくなる。
【0042】
このような場合の対策として液面からノズル迄の高さの増加にともなってコンプレッサの出力自体を増加方向に制御するか又は流量制御装置を用いることを前提として水配管系への圧力を増大させることなどが考えられるが、そのための具体的な手段は知られておらず、個々の場合に対処してこのような制御をすることは装置ユーザにとって不可能なことはもとより、個々の装置を使用場所に設置する作業者にとっても極めて煩雑で困難な措置である。
【0043】
本発明の具体的な噴霧装置の実験段階において、ノズル用気体管の管長を所定値より長目に設定しておくと、水面からノズル迄のの高さが前記90cmに増加してもノズルからのミストの噴霧が継続して安定に得らる傾向が認められた。たとえば図7に示すようにノズル気体管の管長を当初の設定値3.0mからさらに1.5m増大すると噴霧は常に安定して継続された。これはノズル用気体管の管長の増大にともなってその管路抵抗が増大しコンプレッサからの加圧空気の圧力が管路抵抗のために減少し、ノズル部での圧力差(水圧 ― 気体圧力)が相対的に増大することにより、圧力差が小さい、いいかえると相対水圧が小さいために、水がノズルから押し戻されていた従来の問題が解消し、水がノズルまで届く様になったためと考えられる。
【0044】
管長を増大させる際の管路抵抗(空気抵抗)の増大と空気抵抗の増大(ノズル側空気圧の減少)との関係を確認するために前記噴霧装置について行った実験によれば、管長の増大と管路抵抗の増大とは略々直線的な比例関係にあることが判明した。したがって特定の噴霧装置についての液面とノズルとの間の予測される最大の高さに基いてノズル部での水圧と空気圧との相対的な圧力差を調節するために必要な管長値は容易に設定することができる。
【0045】
前記最大高さは本発明の目的用途におけるドライミスト噴霧装置の一般的な使用状態からすれば、実際のノズル操作、液面低下の状態からみて約1m程度であり、これに応じる範囲で管長の増加を考えれば実用上十分である。
【0046】
尚管路抵抗を増大させる手段としては一般的には管の断面積(管径)の減少も考えられる。しかし、前記具体的な噴霧装置について実際に測定した実験結果によれば、ノズル供給用気体管の外径を8mm、6mm、4mmとした場合、空気抵抗は1→2.1倍→24.8倍となり、僅かの径差に対する空気抵抗の変化が極めて急激であってかつ簡単な比例関係にもないので管径の変化によって管路抵抗すなわちノズル側の空気圧の低下を調節することは、管長による調節の場合と比較して困難である。但し、管長による調節の際に管長が著しく長くなるおそれのあるときは、管径の減少又はこれと前記管長の増大との組合せによる調節も有効である。
【0047】
次に管路抵抗を調節する別の手段としてノズル部の相対水圧を制御する方法を図8によって説明する。図8は、気体管の管長を2.6mと一定にした場合のノズル部の分岐部における容器気体管の空気圧を示す。横軸は、気体管全長の2.6mの途中に設けられた容器用気体管7の分岐位置を、比率(2.6mに対する割合)で示し、縦軸は各分岐位置で測定した容器側気体管への圧力を示す。
【0048】
図8中の下側の直線で示すようにノズル用気体のノズル側の空気圧は24kPaで一定であり、これに対して上側の曲線で示すように容器側気体管の空気圧は分岐点を前記比率1とした位置(分岐位置=ノズル部)から比率0とした位置(分岐位置=コンプレッサ出口)に向かってほゞ直線的に増大する。分岐部以降の容器用気体管7中では、そこを流れる空気流がノズルに注入される水量(例えば、10cc/分)と同程度と少ない、すなわちノズル用空気配管の空気量(例えば10L/分)に比べて著しく少ないため、そこでの空気圧力損失は極めて小さくなる。従って、タンク部分の水圧はこの分岐部分の空気圧力とほぼ同じになる。従って、分岐位置を調整することで、水圧を調節できることになり、ノズルと水面の高さに対応した適切な水圧を与えることができ、安定な噴霧が可能となる。
【0049】
前記のとおり、水圧が減ると、いつかはノズルから噴霧ができなくなる。実際には水圧の低下とともに、ノズルから噴霧される噴霧量、言い換えると水量は徐々に減少し、ついにはゼロとなり、噴霧が停止するが、分岐点の位置を適切に選択することにより、追加の部品を用いることなく水圧を調整し、これにより噴霧量適切にを調節することが可能である。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は図面に記載したものに限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ドライミスト噴霧装置
2 コンプレッサ
3 液体容器
4 二流体ノズル
5 分岐部
6 ノズル用気体管
7 容器供気体管
8 気体管
9 液体管
10、30 接続蓋
13 頸部
14 内蓋
15 外蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧の気体を供給するコンプレッサと、
液体を貯留する液体容器と、
前記液体容器の液面よりも上方に位置し、ノズルに供給される液体により形成された液膜に対して旋回流の形状として加圧気体により剪断力を与えてらせん状のドライミストを発生させる二流体ノズルと、
一端側がコンプレッサに通じ、他端側は分岐部により分岐してその一方の分岐管が二流体ノズルに通じるノズル用気体管を構成し、他方の分岐管が液体容器内の液面に通じる容器用気体管を構成する気体管と、
一端側が前記液体容器の液体に臨み、他端側が二流体ノズルに通じる液体管とを有し、
前記容器用気体管および前記液体管は、前記液体容器の頸部に着脱自在に取り付けられる接続蓋を介して前記液体容器に接続固定され、
前記容器用気体管から供給される気体による加圧で前記液体容器内の液体を前記液体管を介して前記二流体ノズルに圧送するドライミスト噴霧装置において、
前記液体容器の液面から前記二流体ノズルまでの使用時の高さの増加に対応して前記気体管の管路抵抗を調節・設定するようになされていることを特徴とするドライミスト噴霧装置。
【請求項2】
前記接続蓋は、
前記容器用気体管および前記液体管が取り付けられて頸部の軸方向に着脱する内蓋と、
頸部の外周に螺子係合して前記内蓋を頸部の先端に気密に圧接する外蓋とから構成されることを特徴とする請求項1に記載のドライミスト噴霧装置。
【請求項3】
前記接続蓋は、内周に雌螺子が形成され、外周において噴霧装置のケーシングに回転不能に嵌合し、
前記液体容器は、頸部が前記接続蓋の雌螺子に対して螺子係合により着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1記載のドライミスト噴霧装置。
【請求項4】
前記ノズル用気体管は、前記液体容器の液面から前記二流体ノズルまでの使用時の高さの増加に対応して増大された管長を有することを特徴とする請求項1記載のドライミスト噴霧装置。
【請求項5】
前記ノズル用気体管は、前記液体容器の液面から前記二流体ノズルまでの使用時の高さの増加に対応して減少された管径を有することを特徴とする請求項1記載のドライミスト噴霧装置。
【請求項6】
前記気体管の分岐部のコンプレッサ出口からの距離が前記液体容器の液面から前記二流体ノズルまでの使用時の高さの増加に対応して調節・設定されていることを特徴とする請求項7記載のドライミスト噴霧装置。
【請求項7】
高圧の気体を供給するコンプレッサと、
液体を貯留する液体容器と、
前記液体容器の液面よりも上方に位置し、ノズルに供給される液体により形成された液膜に対して旋回流の形状として加圧気体により剪断力を与えてらせん状のドライミストを発生させる二流体ノズルと、
一端側がコンプレッサに通じ、他端側は分岐部により分岐してその一方の分岐管が二流体ノズルに通じるノズル用気体管を構成し、他方の分岐管が液体容器内の液面に通じる容器用気体管を構成する気体管と、
一端側が前記液体容器の液体に臨み、他端側が二流体ノズルに通じる液体管と有し、
前記容器用気体管および前記液体管が前記液体容器の頸部に着脱自在に取り付けられる接続蓋を介して前記液体容器に接続固定され、
前記容器用気体管から供給される気体による加圧で前記液体容器内の液体を前記液体管を介して前記二流体ノズルに圧送するドライミスト噴霧装置を用いてドライミストを噴霧する方法において、
前記気体管の管路抵抗を前記液体容器の液面から前記二流体ノズルまでの使用時の高さの増加に対応して調節・設定することを特徴とするドライミスト噴霧方法。
【請求項8】
前記接続蓋を、
前記容器用気体管および前記液体管が取り付けられて頸部の軸方向に着脱する内蓋と、
頸部の外周に螺子係合して前記内蓋を頸部の先端に気密に圧接する外蓋と、
から構成することを特徴とする請求項7記載のドライミスト噴霧方法。
【請求項9】
前記接続蓋は、内周に雌螺子が形成され、外周において噴霧方法のケーシングに回転不能に嵌合し、
前記液体容器の頸部を前記接続蓋の雌螺子に対して螺子係合により着脱自在とすることを特徴とする請求項7記載のドライミスト噴霧方法。
【請求項10】
前記ノズル用気体管の管長を前記液体容器の液面から前記二流体ノズルまでの使用時の高さの増加に対応して増大させることを特徴とする請求項7記載のドライミスト噴霧方法。
【請求項11】
前記ノズル用気体管の管径を前記液体容器の液面から前記二流体ノズルまでの使用時の高さの増加に対応して減少させることを特徴とする請求項7記載のドライミスト噴霧方法。
【請求項12】
前記気体管の分岐部の前記コンプレッサまでの距離を前記液体容器の液面から前記二流体ノズルまでの使用時の高さの増加に対応して調節・設定することを特徴とする請求項7記載のドライミスト噴霧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−223688(P2012−223688A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92352(P2011−92352)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(509247766)株式会社ナノ・スケール (2)
【Fターム(参考)】