説明

ドラフト装置及び紡績機

【課題】ミドルボトムローラに対するテンサーバーの位置決め精度の高いドラフト装置、及び紡績機を提供する。
【解決手段】フロントボトムローラRF2を回転可能に支持する第1支持部41と、ミドルボトムローラRM2を回転可能に支持する第2支持部51と、ミドルボトムローラRM2に巻回されるエプロンベルトE2の張りと位置とを規制するテンサーバーTB2を支持する第3支持部61と、を備える。第3支持部61は、第2支持部51と一体的に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラフト装置及びドラフト装置を備えた紡績機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドラフト装置で繊維束をドラフト(牽伸)するとともに、ドラフトされた繊維束を撚ることで紡績糸を製造する紡績ユニットや紡績機が知られている。
【0003】
ドラフト装置は、繊維束のドラフト方向の上流側から下流側に向かって、バックローラ対、ミドルローラ対、フロントローラ対等の複数のローラ対を備えている。各ローラ対は、駆動ローラであるボトムローラと、ボトムローラに接触して従動回転するトップローラとで構成される。各トップローラはドラフトクレードル(以下、単にクレードルという)に一体的に保持されている。各ボトムローラは、装置フレームに一体的に保持されている。
【0004】
ところで、ミドルボトムローラとミドルトップローラにはそれぞれエプロンベルトが巻回されている。エプロンベルトの張りと位置(ドラフト方向と平行な方向の位置、及びドラフト方向に直交する方向の位置)はテンサーバーで規制されている。このため、テンサーバーの取り付け状態は、エプロンベルトの張りと位置に影響を与える。エプロンベルトの張りと位置が変わるとドラフト状態が変化し、ドラフト装置でドラフトされる繊維束に太さムラ等が発生して繊維束の品質に影響を及ぼす。
【0005】
従来、ボトム側のテンサーバーをドラフト装置に取り付ける構成として、ドラフト装置の装置フレームにブラケットを取り付け、このブラケットにテンサーバーを取り付ける構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、テンサーバーは隣接する紡績ユニット2錘分に渡る長さを有し、テンサーバーの中央部分がブラケットで支持される。テンサーバーの両端には隣接する紡績ユニット2錘分のエプロンベルトが巻回される。
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、テンサーバーは、中央部が支持されて両端部が自由端になっている上、テンサーバーの長さが長いものである。このため、エプロンベルトを張るとテンサーバーを支持しているブラケットが撓んだり、テンサーバー自体が撓むことがあった。また、隣接する紡績ユニット2錘のエプロンベルトの張りに差異があると、エプロンベルトが左右で違う位置に来る場合があった。従って、特許文献1の構成では、ミドルボトムローラに対するテンサーバーの位置決め精度を確保することが困難であった。
【0007】
また、テンサーバーの中央部ではなく、両端部が支持される構成も知られている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2の構成では、テンサーバーは両端部に凸部が形成されている。明確には記載されていないが、特許文献2の構成では、テンサーバーは両端部に形成された凸部をミドルボトムローラとミドルトップローラの間に設けた凹部に嵌め込むことにより位置固定される。
【0008】
特許文献2の構成では、ミドルボトムローラとミドルトップローラの間に設ける凹部は、テンサーバーの両端部の凸部が嵌り込むだけの大きさが必要である。従って、凹部を形成する支持部材は、必然的に凸部よりも大型になる。つまり、特許文献2の構成では、ミドルボトムローラとミドルトップローラの間に凸部よりも大型の支持部材を設けるスペースが必要である。
【0009】
一般的に粗紡機や(リング)精紡機では、ドラフト速度が遅いため、各ドラフトローラの径が小さい。このようなドラフト装置であれば、ミドルボトムローラとミドルトップローラの間にスペースの余裕があるため、凸部よりも大型の支持部材を設けるスペースを容易に確保できる。しかしながら、例えば空気紡績機のドラフト装置のようにドラフト速度が高速である場合は、各ドラフトローラの径は、リング精紡機等のドラフトローラの径よりも大きくせざるを得ない。ドラフトローラの径を大きくした場合、ミドルボトムローラとミドルトップローラの間のスペースに余裕がなく、凹部を形成した支持部材を配置するスペースは、容易に確保できない。従って、特許文献2の構成は、ドラフト速度が高速であるドラフト装置には採用しにくい構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−81865号公報
【特許文献2】特開平10−158942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものである。本発明の目的は、ミドルボトムローラに対するテンサーバーの位置決め精度の高いドラフト装置、及び紡績機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、第1の発明のドラフト装置は、第1支持部と、第2支持部と、第3支持部とを備える。第1支持部は、フロントボトムローラを回転可能に支持する。第2支持部は、ミドルボトムローラを回転可能に支持する。第3支持部は、ミドルボトムローラに巻回されるエプロンベルトの張りと位置とを規制するテンサーバーを支持する。そして、第3支持部は、第1支持部と第2支持部の少なくともいずれかに配置されている。
【0014】
第2の発明のドラフト装置は、第1の発明のドラフト装置であって、第3支持部は、第2支持部と一体的に形成される。
【0015】
第3の発明のドラフト装置は、第1の発明のドラフト装置であって、第3支持部は、第1支持部と一体的に形成される。
【0016】
第4の発明のドラフト装置は、第1の発明のドラフト装置であって、第1支持部と、第2支持部と、第3支持部は、一体的に形成される。
【0017】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明のドラフト装置であって、第3支持部は、テンサーバーに形成された凹部に嵌まり込んでテンサーバーを支持する突出部を有する。
【0018】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明のドラフト装置であって、前記第3支持部は、第1分割支持部と第2分割支持部を備える。そして、第1分割支持部と第2分割支持部によりテンサーバーの両端を支持する。
【0019】
第7の発明は、第1から第6のいずれかの発明のドラフト装置と、空気紡績部と、巻取部と、を備える。空気紡績部は、ドラフト装置によりドラフトされた繊維束を空気により撚りを与えて紡績糸を生成する。巻取部は、空気紡績部により生成された紡績糸をパッケージヘと巻き取る。
【発明の効果】
【0020】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0021】
第1の発明によれば、ドラフトで重要な要素であるテンサーバーとミドルボトムローラの位置決め精度が向上するため、ドラフトの安定性が向上する。
【0022】
第2の発明によれば、ミドルボトムローラに対するテンサーバーの位置決め精度が向上する。
【0023】
第3の発明によれば、第1支持部が大きくて第2支持部の近くに第3支持部を形成できない場合であっても、第3支持部を設けることができ、ミドルボトムローラに対するテンサーバーの位置決め精度が向上する。
【0024】
第4の発明によれば、ミドルボトムローラとフロントボトムローラとの間の位置調整作業が不要になり、位置決め精度が向上する。また、ミドルボトムローラに対するテンサーバーの位置決め精度が向上する。よって、ドラフト装置により、安定した状態の繊維束を生成することができる。
【0025】
第5の発明によれば、ドラフト装置の設置スペースが限られている場合であっても、テンサーバーを確実に支持することができる。
【0026】
第6の発明によれば、テンサーバーの両端の撓みを抑えることができ、ミドルボトムローラに対するテンサーバーの位置が安定する。
【0027】
第7の発明によれば、ミドルボトムローラに対するテンサーバーの位置決め精度が高いため、安定した状態でドラフトされた繊維束から紡績糸を生成でき、紡績機が生成する紡績糸の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1に係る紡績機Mの正面図。
【図2】紡績ユニットUの側面簡略図。
【図3】本発明の実施例1に係るドラフト位置にあるドラフト装置Dの側面図。
【図4】ドラフト装置DのミドルボトムローラRM2とフロントボトムローラRF2の周辺を示す平面簡略図。
【図5】(A)図4のA―A線における断面図(B)図4のB―B線における断面図。
【図6】本発明の実施例2に係るドラフト装置DのミドルボトムローラRM2とフロントボトムローラRF2の周辺を示す平面簡略図。
【図7】図6のC―C線における断面図。
【図8】本発明の実施例3に係るドラフト装置DのミドルボトムローラRM2とフロントボトムローラRF2の周辺を示す平面簡略図。
【図9】図8のD―D線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0030】
本発明の実施例1に係るドラフト装置D及び紡績機Mについて、図1から図5を用いて説明する。
【0031】
まず紡績機Mの概略について説明する。尚、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績ユニットUにおける繊維束F、紡績糸Yの走行方向における上流及び下流を意味するものとする。
【0032】
図1、図2に示すように、紡績機Mは、複数並設された紡績ユニットU、糸継台車3、ブロアボックス4、原動機ボックス5を備えている。各紡績ユニットUは主として、ドラフト装置D、紡績装置11、ヤーンクリアラ12、糸弛み取り装置13、巻取装置21を備えている。
【0033】
図2に示すように、ドラフト装置Dは、紡績ユニットUの後部に配置されるケンス(図示せず)からトランペットTを介して供給される繊維束(スライバ)Fをドラフトするものである。本実施形態のドラフト装置Dは、繊維束Fの上流から下流に向けて段々送り速度が速くなる複数のローラ対Rを備えている。ローラ対Rは、それぞれトップローラRB1、RT1、RM1、RF1とボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2(図3参照。)とからなる。ドラフト装置Dについては後に詳細に説明する。
【0034】
紡績装置11は、旋回気流を利用して繊維束Fに撚りを与え、紡績糸Yを生成する。紡績装置11は、詳細な説明や図示は省略するが、繊維案内部と、旋回流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を備えている。繊維案内部は、ドラフト装置Dから送られた繊維束Fを紡績装置11の内部に形成される紡績室に案内する。旋回流発生ノズルは、繊維束Fの経路の周囲に配置され、紡績室内に旋回流を発生させる。この旋回流によって、紡績室内の繊維束Fの繊維端が反転され旋回する。中空ガイド軸体は、紡績された紡績糸Yを紡績室から紡績装置11の外部へと案内する。この紡績装置の駆動及び停止は不図示のユニットコントローラによって制御されている。紡績装置11は、針状部材を備えずに繊維案内部の下流側端部によって針状部材の機能を実現している空気紡績装置や、互いに反対方向に撚りを掛ける一対のエアジェットノズル方式の空気紡績装置でもよい。
【0035】
ヤーンクリアラ12は、紡績装置11から送り出される紡績糸Yの太さの異常と含有される異物の有無を監視している。ヤーンクリアラ12は、紡績糸Yの糸欠点を検出した場合には、糸欠点検出信号を図示しないユニットコントローラへ送信する。
【0036】
糸弛み取り装置13は、紡績糸Yに所定の張力を与えることで紡績装置11から紡績糸Yを引き出している。また、巻取装置21側の張力の変動が紡績装置11側に伝わらないように張力を調節する。糸継台車3による作業時には、糸弛み取り装置13は紡績装置11から送出される紡績糸Yを滞留させて紡績糸Yの弛みを防止する。
【0037】
巻取装置21は、紡績装置11から送り出される紡績糸Yを巻き取り、パッケージPを形成する。巻取装置21は、クレードルアーム22、巻取ドラム23と、トラバース装置24を備えている。クレードルアーム22は、パッケージP(ボビン)を回転可能に支持する。巻取ドラム23は、パッケージP(ボビン)の外周面に接触してパッケージP(ボビン)を回転させる。トラバース装置24は、紡績糸Yを綾振りする。巻取装置21は、トラバース装置24で紡績糸Yを綾振りさせながら巻取ドラム23を回転することで、パッケージP(ボビン)を回転させ、紡績糸Yを巻き取る。
【0038】
ユニットコントローラは、ヤーンクリアラ12から糸欠点検出信号を受信すると、直ちにカッタ14で紡績糸Yを切断し、更にドラフト装置Dや紡績装置11等を停止させる。ユニットコントローラは、糸継台車3には制御信号を送り、当該紡績ユニットUの前まで走行させる。その後、ユニットコントローラは、紡績装置11等を再び駆動し、糸継台車3に糸継ぎを行わせて巻取りを再開させる。尚、紡績ユニットUは、カッタ14を備えずに、紡績装置11への空気の供給を停止することにより、紡績糸Yの生成を停止して、紡績糸Yを切断してもよい。
【0039】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、台車部25と、台車部25に積載されるスプライサ26と、サクションパイプ27と、サクションマウス28を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニットUで糸切れや糸切断が発生すると、当該紡績ユニットUまで走行する。サクションパイプ27は、紡績装置11から送り出される糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ26へ案内する。サクションマウス28は、パッケージPから糸端を吸引しつつ捕捉してスプライサ26へ案内する。スプライサ26は、案内された糸端同士の糸継ぎを行う。
【0040】
ブロアボックス4は、内部にブロア(吸引源)が配置される。ブロアボックス4には、各紡績ユニットUに共通の吸引搬送管である主配管(図示せず)が接続される。主配管は各紡績ユニットUの後部(ドラフト方向の上流側)に配置される。ブロアボックス4は、主配管を通じて各紡績ユニットUで発生する繊維屑等を吸引、搬送して回収する。
【0041】
原動機ボックス5には、紡績機Mの原動機であるモータや、紡績機Mの各部に動力を伝達するための減速機等が内部に配置される。
【0042】
次に、ドラフト装置Dについて詳細に説明する。図3から図5に示すように、ドラフト装置Dは、複数のローラ対R、クレードル31、装置フレーム32を備えている。
【0043】
図3に示すように、複数のローラ対Rとして、本実施形態では、バックローラ対RB、サードローラ対RT、ミドルローラ対RM、フロントローラ対RFを備えている。これらのローラ対RB、RT、RM、RFは、繊維束Fの上流から下流に向けて所定の間隔をおいて配置される。各ローラ対RB、RT、RM、RFは上側のトップローラRB1、RT1、RM1、RF1と下側のボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2で構成されている。ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2は駆動ローラであり、トップローラRB1、RT1、RM1、RF1はボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2に接触して従動回転する従動ローラである。各ローラ対RB、RT、RM、RFの回転速度は、上流側から下流側に向かって段々増加する。フロントローラ対RFの下流側には、紡績装置11が配置される。
【0044】
バックトップローラRB1、サードトップローラRT1、ミドルトップローラRM1、フロントトップローラRF1は、クレードル31に一体的、かつ回動自在に装着されている。クレードル31には、隣接する紡績ユニットUの2錘分の各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1が装着されている(図1参照。)。バックボトムローラRB2、サードボトムローラRT2、ミドルボトムローラRM2、フロントボトムローラRF2は、それぞれクレードル31の各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1に対応して、装置フレーム32に装着されている。装置フレーム32にも、隣接する紡績ユニットUの2錘分の各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2が装着されている。
【0045】
ミドルトップローラRM1とフロントトップローラRF1との間には、テンサーバーTB1が配置されている。テンサーバーTB1は、ミドルトップローラRM1との間に巻回されるエプロンベルトE1の張りと位置とを規制するものである(図3参照。)。テンサーバーTB1は、クレードル31側に装着されている。
【0046】
ミドルボトムローラRM2とフロントボトムローラRF2との間には、テンサーバーTB2が配置されている。テンサーバーTB2は、ミドルボトムローラRM2との間に巻回されるエプロンベルトE2の張りと位置とを規制するものである(図3参照。)。テンサーバーTB2は、装置フレーム32側に装着されている。フロントボトムローラRF2と、ミドルボトムローラRM2と、テンサーバーTB2の装置フレーム32への取り付け構造については、後に詳しく説明する。
【0047】
クレードル31は、上流側に設けられた回動軸33を中心として装置フレーム32に対して回動自在である。このため、クレードル31を回動させることで、各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1は、各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2に対して接離する。クレードル31を閉じて各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1が各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2と接触している位置がドラフト位置である。メンテナンス等のためクレードル31を開放して各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1が各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2と離間している位置が非ドラフト位置である。従って、クレードル31は各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1と各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2をドラフト位置と非ドラフト位置とに切り替えることができる。
【0048】
クレードル31の回動操作は、オペレータがハンドル34を操作することにより行う。クレードル31を閉じてドラフト位置とした場合には、ハンドル34の下部先端のフック部35が装置フレーム32側の固定ローラ36に係合され、各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1と各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2の圧接状態が保持される。
【0049】
各ローラ対RB、RT、RM、RF間の距離は、ドラフトする繊維束(スライバ)Fの繊維長によって決定されるため、原料である繊維束(スライバ)Fの種類を替える毎に見直される。そのために、各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2のうち、ミドルボトムローラRM2とフロントボトムローラRF2は装置フレーム32に固定しているが、バックボトムローラRB2とサードボトムローラRT2は、それぞれ装置フレーム32に対して上流側、下流側に位置を変更できるよう構成されている。
【0050】
続いて、本発明の特徴部分である、フロントボトムローラRF2と、ミドルボトムローラRM2と、テンサーバーTB2の装置フレーム32への取り付け構造について説明する。
【0051】
図4と図5に示すように、フロントボトムローラRF2は、フロントボトムローラ軸SF2に装着されている。フロントボトムローラ軸SF2は、隣接する紡績ユニットUの2錘分に渡る長さを有している。フロントボトムローラ軸SF2には、隣接する紡績ユニットUの2錘分のフロントボトムローラRF2が装着される。フロントボトムローラ軸SF2の両端部は、第1支持部41に回転可能に支持されている。尚、図4と図5では図示を省略しているが、フロントボトムローラRF2は駆動ローラであるため、フロントボトムローラ軸SF2にはフロントボトムローラRF2を駆動させる駆動装置が接続されている。
【0052】
図5Aに示すように、第1支持部41は、第1基部42と、第1蓋部43とを有する。第1基部42は、第1支持部41の本体をなすものである。第1基部42は、装置フレーム32に固定されている。第1蓋部43は、第1基部42に固定されるものである。第1基部42と第1蓋部43には、それぞれフロントボトムローラ軸SF2に対応した半円形状の凹部44、45が形成されている。第1基部42に第1蓋部43が固定されて凹部44、45が組み合わされることで、フロントボトムローラ軸SF2を回転可能に支持する軸孔46を構成する。第1蓋部43に対する第1基部42の固定は、ボルト47で行われる。尚、図示は省略するが、軸孔46には、ベアリング等が組み付けられる。
【0053】
図4と図5に示すように、ミドルボトムローラRM2は、ミドルボトムローラ軸SM2に装着されている。ミドルボトムローラ軸SM2は、隣接する紡績ユニットUの2錘分に渡る長さを有している。ミドルボトムローラ軸SM2には、隣接する紡績ユニットUの2錘分のミドルボトムローラRM2が装着される。ミドルボトムローラ軸SM2の両端部は、第2支持部51に回転可能に支持されている。尚、図4と図5では図示を省略しているが、ミドルボトムローラRM2は駆動ローラであるため、ミドルボトムローラ軸SM2にはミドルボトムローラRM2を駆動させる駆動装置が接続されている。
【0054】
図5に示すように、第2支持部51は、第2基部52と、第2蓋部53とを有する。第2基部52は、第2支持部51の本体をなすものである。第2基部52は、装置フレーム32に固定されている。第2蓋部53は、第2基部52に固定されるものである。第2基部52と第2蓋部53には、それぞれミドルボトムローラ軸SM2に対応した半円形状の凹部54、55が形成されている。第2基部52に第2蓋部53が固定されて凹部54、55が組み合わされること、ミドルボトムローラ軸SM2を回転可能に支持する軸孔56を構成する。第2蓋部53に対する第2基部52の固定は、ボルト57で行われる。尚、図示は省略するが、軸孔56には、ベアリング等が組み付けられる。
【0055】
図4に示すように、テンサーバーTB2は、隣接する紡績ユニットUの2錘分に渡る長さを有している。テンサーバーTB2には、隣接する紡績ユニットUの2錘分のミドルボトムローラRM2との間にエプロンベルトE2が巻回される。テンサーバーTB2の両端部は、第2支持部51に一体的に形成された第3支持部61に支持されている。
【0056】
具体的に説明すると、テンサーバーTB2を支持する第3支持部61は、第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bを備えている。第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bはそれぞれ、第2支持部51の第2蓋部53に一体的に形成されている。第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bは、第2支持部51の第2蓋部53に対向して形成されている。第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bは対称な形状であり、実質的には同じ形状である。以下では、第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bの説明をする場合にも、特に分けて説明する必要がない限り、第3支持部61として説明する。
【0057】
第3支持部61が形成される位置は、テンサーバーTB2がミドルボトムローラRM2とフロントボトムローラRF2の間に位置するよう、ミドルボトムローラ軸SM2よりもドラフト方向の下流側である。第3支持部61は、第2支持部51の第2蓋部53に対して突出する突出部である。第3支持部61の断面形状は方形である。本実施例では、第3支持部61に対するテンサーバーTB2の取り付けはボルト63で行う。
【0058】
図5Bに示すように、テンサーバーTB2の両端部には、第3支持部61に対応した凹部71が形成される。また、凹部71に第3支持部61を嵌め合わせて、ボルト63で固定できるよう、ボルト孔が形成される。
【0059】
テンサーバーTB2を第3支持部61の第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bに取り付ける場合は、まずテンサーバーTB2に、隣接する紡績ユニットUの2錘分のエプロンベルトE2を通し、ミドルボトムローラRM2とテンサーバーTB2との間にエプロンベルトE2を巻回する。続いて、テンサーバーTB2の両端部の凹部71を、第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bにそれぞれ嵌め合わせ、ボルト63で固定する。尚、第3支持部61の位置、テンサーバーTB2の両端部の凹部71の位置は、エプロンベルトE2の張りと位置(ドラフト方向と平行な方向の位置、及びドラフト方向に直交する方向の位置)が適切になるよう、予め設定されているものとする。
【0060】
以上説明した本実施例に係るドラフト装置D及び紡績機Mによれば、次のような効果を有する。
【0061】
ドラフト装置Dでは、テンサーバーTB2を支持する第3支持部61が、ミドルボトムローラRM2を回転可能に支持する第2支持部51と一体的に形成されている。このため、ミドルボトムローラRM2に対するテンサーバーTB2の位置決め精度が向上する。
【0062】
ドラフト装置Dに設けた第3支持部61は、テンサーバーTB2に形成された凹部71に嵌まり込んでテンサーバーTB2を支持する突出部である。突出部である第3支持部61を第2支持部51に設けて、テンサーバーTB2を第3支持部61により支持する構成としたので、ドラフト装置Dの設置スペースが限られている場合であっても、テンサーバーTB2を確実に支持することができる。
【0063】
第3支持部61は第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bを備え、第1分割支持部61Aと第2分割支持部61BによりテンサーバーTB2の両端を支持する。このため、テンサーバーTB2の両端の撓みを抑えることができ、ミドルボトムローラRM2に対するテンサーバーTB2の位置が安定する。
【0064】
尚、テンサーバーTB1の位置決め精度が悪いと、フロントローラ対RFに繊維束Fがうまく案内されないため、繊維束Fが紡績装置11に案内されずに落綿(ファイバーロス)となったり、紡績装置11で正常に紡績できず、紡績装置11から紡績糸Yが紡出されない。また、紡績装置11から紡績糸Yが紡出されたとしても紡績糸Yに太さムラ、撚りムラが発生し、品質が低下する。その点、本実施例1の紡績機Mは、ドラフト装置Dと、紡績装置11と、巻取装置21とを有し、ミドルボトムローラRM2に対するテンサーバーTB2の位置決め精度が高いため、安定した状態でドラフトされた繊維束Fから紡績糸Yを生成でき、紡績機Mが生成する紡績糸Yの品質が向上する。
【実施例2】
【0065】
本発明の実施例2に係るドラフト装置D及び紡績機Mについて、図6と図7を用いて説明する。実施例2では、テンサーバーTB2を支持する第3支持部61が、第1支持部41と一体的に形成されている点が実施例1とは大きく異なっている。フロントボトムローラRF2と、ミドルボトムローラRM2と、テンサーバーTB2の装置フレーム32への取り付け構造以外の構成については実施例1と同一であるため、詳しい説明を省略する。
【0066】
図6と図7に示すように、テンサーバーTB2の両端部は、第1支持部41に一体的に形成された第3支持部61の第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bに支持されている。
【0067】
具体的に説明すると、テンサーバーTB2を支持する第3支持部61は、第1支持部41の第1蓋部43に一体的に形成されている。第3支持部61が形成される位置は、テンサーバーTB2がミドルボトムローラRM2とフロントボトムローラRF2の間に位置するよう、フロントボトムローラ軸SF2よりもドラフト方向の上流側である。第3支持部61は、第1支持部41の第1蓋部43に対して突出する突出部である。第3支持部61の断面形状は方形である。
【0068】
テンサーバーTB2を第3支持部61に取り付ける場合は、まずテンサーバーTB2に、隣接する紡績ユニットUの2錘分のエプロンベルトE2を通し、ミドルボトムローラRM2とテンサーバーTB2との間にエプロンベルトE2を巻回する。続いて、テンサーバーTB2の両端部の凹部71を、第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bにそれぞれ嵌め合わせ、ボルト63で固定する。尚、第3支持部61の位置、テンサーバーTB2の両端部の凹部71の位置は、エプロンベルトE2の張りと位置(ドラフト方向と平行な方向の位置、及びドラフト方向に直交する方向の位置)が適切になるよう、予め設定されているものとする。
【0069】
以上説明した本実施例に係るドラフト装置D及び紡績機Mによれば、次のような効果を有する。
【0070】
ドラフト装置D及び紡績機Mでは、テンサーバーTB2を支持する第3支持部61が、フロントボトムローラRF2を回転可能に支持する第1支持部41と一体的に形成されている。このため、第1支持部41が大きくて第2支持部51の近くに第3支持部61を形成できない場合であっても、第1支持部41に第3支持部61を設けることができ、ミドルボトムローラRM2に対するテンサーバーTB2の位置決め精度が向上する。
【実施例3】
【0071】
本発明の実施例3に係るドラフト装置D及び紡績機Mについて、図8と図9を用いて説明する。実施例3では、第1支持部41と第2支持部51と第3支持部61とが一体的に形成されている点が実施例1と実施例2とは大きく異なっている。フロントボトムローラRF2と、ミドルボトムローラRM2と、テンサーバーTB2の装置フレーム32への取り付け構造以外の構成については実施例1と同一であるため、詳しい説明を省略する。
【0072】
図8と図9に示すように、第1支持部41の第1基部42と、第2支持部51の第2基部52とは、一体的に形成されている。また、第1支持部41の第1蓋部43と、第2支持部51の第2蓋部53とは、一体的に形成されている。そして、テンサーバーTB2の両端部は、第1支持部41に一体的に形成された第3支持部61の第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bに支持されている。第3支持部61が形成される位置は、テンサーバーTB2がミドルボトムローラRM2とフロントボトムローラRF2の間に位置するよう、フロントボトムローラ軸SF2よりもドラフト方向の上流側である。第3支持部61は、第1支持部41の第1蓋部43に対して突出する突出部である。第3支持部61の断面形状は方形である。
【0073】
テンサーバーTB2を第3支持部61に取り付ける場合は、まずテンサーバーTB2に、隣接する紡績ユニットUの2錘分のエプロンベルトE2を通し、ミドルボトムローラRM2とテンサーバーTB2との間にエプロンベルトE2を巻回する。続いて、テンサーバーTB2の両端部の凹部71を、第1分割支持部61Aと第2分割支持部61Bにそれぞれ嵌め合わせ、ボルト63で固定する。尚、第3支持部61の位置、テンサーバーTB2の両端部の凹部71の位置は、エプロンベルトE2の張りと位置(ドラフト方向と平行な方向の位置、及びドラフト方向に直交する方向の位置)が適切になるよう、予め設定されているものとする。
【0074】
以上説明した本実施例に係るドラフト装置D及び紡績機Mによれば、次のような効果を有する。
【0075】
ドラフト装置D及び紡績機Mでは、フロントボトムローラRF2を回転可能に支持する第1支持部41と、ミドルボトムローラRM2を回転可能に支持する第2支持部51と、テンサーバーTB2を支持する第3支持部61が、一体的に形成されている。このため、ミドルボトムローラRM2とフロントボトムローラRF2との間の位置調整作業が不要になり、位置決め精度が向上する。また、ミドルボトムローラRM2に対するテンサーバーTB2の位置決め精度が向上する。よって、ドラフト装置Dにより、安定した状態の繊維束Fを生成することができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、紡績機Mの紡績ユニットUは、紡績装置11から糸弛み取り装置13により紡績糸Yを引き出す構成としたが、この構成に限定されない。紡績装置11と糸弛み取り装置13の間にデリベリローラとニップローラを設けて、これらのローラで紡績糸Yを引き出す構成としてもよい。
【0077】
また、第1支持部41と第2支持部51と第3支持部61の形状は、本実施形態の形状に限定されず、種々の形状をとることができる。
【符号の説明】
【0078】
M 紡績機
U 紡績ユニット
3 糸継台車
4 ブロアボックス
5 原動機ボックス
T トランペット
D ドラフト装置
11 紡績装置
12 ヤーンクリアラ
13 糸弛み取り装置
14 カッタ
21 巻取装置
22 クレードルアーム
23 巻取ドラム
24 トラバース装置
25 台車部
26 スプライサ
27 サクションパイプ
28 サクションマウス
31 クレードル
32 装置フレーム
33 回動軸
34 ハンドル
35 フック部
36 固定ローラ
41 第1支持部
42 第1基部
43 第1蓋部
44、45 凹部
46 軸孔
47 ボルト
51 第2支持部
52 第2基部
53 第2蓋部
54、55 凹部
56 軸孔
57 ボルト
61 第3支持部
63 ボルト
71 凹部71
F 繊維束
Y 紡績糸
P パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントボトムローラを回転可能に支持する第1支持部と、
ミドルボトムローラを回転可能に支持する第2支持部と、
前記ミドルボトムローラに巻回されるエプロンベルトの張りと位置とを規制するテンサーバーを支持する第3支持部と、を備えたドラフト装置であって、
前記第3支持部は、前記第1支持部と前記第2支持部の少なくともいずれかに配置されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドラフト装置であって、
前記第3支持部は、前記第2支持部と一体的に形成されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項3】
請求項1に記載のドラフト装置であって、
前記第3支持部は、前記第1支持部と一体的に形成されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項4】
請求項1に記載のドラフト装置であって、
前記第1支持部と、前記第2支持部と、前記第3支持部とは、一体的に形成されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のドラフト装置であって、前記第3支持部は、前記テンサーバーに形成された凹部に嵌まり込んで前記テンサーバーを支持する突出部を有する、ことを特徴とするドラフト装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のドラフト装置であって、
前記第3支持部は、第1分割支持部と第2分割支持部を備え、
前記第1分割支持部と前記第2分割支持部により前記テンサーバーの両端を支持する、ことを特徴とするドラフト装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のドラフト装置と、
前記ドラフト装置によりドラフトされた繊維束を空気により撚りを与えて紡績糸を生成する空気紡績部と、
前記空気紡績部により生成された前記紡績糸をパッケージヘと巻き取る巻取部と、を備えたことを特徴とする紡績機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate