説明

ドラムブレーキ

【課題】ブレーキレバーの強度を低下させることなく、ブレーキレバーの基端部をブレーキシューの一端部に回動可能に連結させた際において、ブレーキシューとブレーキレバーとの間の接触状態が安定する連結ピンを備えたドラムブレーキを提供する。
【解決手段】テーパー形状の基端部50bのうち第2貫通穴48cから突出させた端部50gがかしめにより第2貫通穴48cより大径に塑性変形させられて、その基端部50bがブレーキレバー48にかしめ着けられる。そのため、基端部50bの端部50fからその基端部50bにおける第2貫通穴48cの周縁部48eが当接する部分までの基端部50bの径の大きさは、ブレーキシュー18の第1貫通穴32bの径B2より小さいので、ブレーキレバー48がブレーキシュー18に取り付くと、ブレーキレバー48の平板部48bとシューウェブ32の平板部32aとが面接触し、その接触状態が従来に比較して安定になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキに係り、特にそのドラムブレーキに備えられたブレーキレバーの基端部をブレーキシューの一端部に回動可能に連結する連結ピンの性能を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドラムブレーキには、例えば特許文献1に示すように、バッキングプレートに拡開可能に配設された円弧形状の一対のブレーキシューと、その一対のブレーキシューの一方に配設された長手平板状のブレーキレバーと、そのブレーキレバーの基端部をその一方のブレーキシューの一端部に回動可能に連結する連結ピンとが備えられたものがある。そして、上記ドラムブレーキの連結ピンには、例えば本願の図8に示すように、一対のブレーキシューの一方110の一方の一端部に形成された第1貫通穴110aに嵌め入れられた先端部100aと、その先端部100aに形成されたその一方のブレーキシュー110の一端部を相対回転可能に嵌合する軸部100bと、ブレーキレバー120の基端部に形成された第2貫通穴120a内に嵌め入れられた状態でそのブレーキレバー120の基端部にかしめ着けられた基端部100cとを有するものがある。また、一方のブレーキシュー110の第1貫通穴110aの径は、連結ピン100の軸部100bの径より僅かに大きいものである。
【0003】
また、本願の図9に示すように、連結ピン100の基端部100cには、ブレーキレバー120の第2貫通穴120aの開口縁120bに着座させられたその第2貫通穴120aの径A1より大径の大径部100dと、その大径部100dの着座面100eから第2貫通穴120a内に圧入されて突き出され、外周面が鋸歯状に形成されたセレーション部100fと、そのセレーション部100fの第2貫通穴120aから突き出されたテーパー形状のテーパー部100gとが備えられている。また、本願の図8乃至図10に示すセレーション部100fの一点鎖線は、そのセレーション部100fの外周が鋸歯状に形成されていることを仮想的に示す線である。
【0004】
また、本願の図9および図10に示すように、連結ピン100のセレーション部100fがブレーキレバー120の第2貫通穴120a内に圧入され、その第2貫通穴120aから突き出したテーパー部100gが金型130の押圧面130aによって第2貫通穴120aの径A1より大径に塑性変形させられることにより、連結ピン100の基端部100cがブレーキレバー120の基端部にかしめ着けられる。また、本願の図9に示すように、かしめ用の金型130には、連結ピン100の軸部100bを挿通させるために円柱形状に凹む凹部130bが形成されており、その凹部130bの径A2は、軸部100bの径A3より大きく第2貫通穴120aの径A1より小さいものである。なお、金型130の凹部130bの径A2を連結ピン100の軸部100bの径A3と同径にすると、金型130によってテーパー部100gを押しつぶした際、その金型130の凹部130b内から連結ピン100の軸部100bが抜けなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−213503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような連結ピン100において、その連結ピン100の第2貫通穴120aから突き出されたテーパー部100gを金型130の押圧面130aによって押しつぶしても、図10に示すように凹部130bの径A2が連結ピン100の軸部100bの径A3より大きいのでそのテーパー部100gの一部が必ず残ってしまう。そのため、図8のように、ブレーキシュー110に連結ピン100がかしめ着けられたブレーキレバー120を取り付けると、その連結ピン100のテーパー部100gの一部とブレーキシュー110の第2貫通穴110aの周縁部とが接触して、そのブレーキシュー110とブレーキレバー120との間の接触状態が不安定になるという問題があった。
【0007】
また、上記のような問題を解消させるために、本願の図11乃至図13に示すドラムブレーキが考えられる。なお、以下の本願の図11乃至図13の説明においては前述したドラムブレーキと共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0008】
図11に示すように、ブレーキレバー120の基端部には、その基端部の第2貫通穴120aのブレーキシュー110側の周縁部を厚み方向に凹ませた段部120cが形成されており、連結ピン100の基端部100cには、大径部100dの着座面100eから第2貫通穴120a内に圧入されて段部120cの底面120dから突き出された、外周面が鋸歯状に形成されたセレーション部100hと、そのセレーション部100hの段部120cの底面120dから突き出されたテーパー形状のテーパー部100iとが備えられている。連結ピン100のセレーション部100hが第2貫通穴120a内に圧入された時において、その連結ピン100のテーパー部100iは、そのテーパー部100iの連結ピン100の先端部100a側の端部が段部120cから突き出ないように設定されている。
【0009】
図12に示すように、金型130の押圧面130aによって連結ピン100のテーパー部100iが押しつぶされてもそのテーパー部100iの一部が必ず残ってしまうが、その残ってしまったテーパー部100iの一部がブレーキレバー120の段部120c内に収容されている。そのため、図13に示すように、ブレーキシュー110に連結ピン100がかしめ着けられたブレーキレバー120が取り付けられると、ブレーキレバー120の平坦な平板部120eとブレーキシュー110のブレーキレバー120の平板部120eに略平行なシューウェブ140とが接触して、そのブレーキシュー110とブレーキレバー120との間の接触状態が従来に比較して安定になる。
【0010】
しかしながら、上記のようなドラムブレーキにおいては、ブレーキレバー120の基端部に連結ピン100のテーパー部100iを収容する段部120cが形成されることによって、ブレーキレバー120の基端部の板厚が従来より薄くなりそのブレーキレバー120の強度が低下してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ブレーキレバーの強度を低下させることなく、ブレーキレバーの基端部をブレーキシューの一端部に回動可能に連結させた際において、そのブレーキシューとブレーキレバーとの間の接触状態が安定する連結ピンを備えたドラムブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、(a) バッキングプレートに拡開可能に配設された円弧形状の一対のブレーキシューと、その一対のブレーキシューの一方に配設された長手平板状のブレーキレバーと、その一対のブレーキシューの一方の一端部に形成された第1貫通穴内に嵌め入れられた先端部と、その先端部に形成されたその一方のブレーキシューの一端部を相対回転可能に嵌合する軸部と、前記ブレーキレバーの基端部に形成された第2貫通穴内に嵌め入れられた状態でそのブレーキレバーの基端部にかしめ着けられた基端部とを有してそのブレーキレバーの基端部をその一方のブレーキシューの一端部に回動可能に連結する連結ピンとを備えるドラムブレーキであって、(b) 前記連結ピンの基端部は、その基端部が塑性変形される前において、前記基端部における前記連結ピンの先端部側の端部からその基端部における前記連結ピンの基端部側の端部に向かう程その基端部の径が小さくなるテーパー形状とされており、(c) 前記テーパー形状の基端部の前記連結ピンの先端部側の径は前記ブレーキレバーの基端部の第2貫通穴の径より大きく、その基端部の前記連結ピンの基端部側の径は前記ブレーキレバーの基端部の第2貫通穴の径より小さいものであり、(d) 前記テーパー形状の基端部のうち前記第2貫通穴を通して突き出された部分は、かしめによってその第2貫通穴より大径に塑性変形させられたものである。
【発明の効果】
【0013】
第1発明のドラムブレーキによれば、前記連結ピンの基端部は、その基端部が塑性変形される前において、前記基端部における前記連結ピンの先端部側の端部からその基端部における前記連結ピンの基端部側の端部に向かう程その基端部の径が小さくなるテーパー形状とされており、前記テーパー形状の基端部の前記連結ピンの先端部側の径は前記ブレーキレバーの基端部の第2貫通穴の径より大きく、その基端部の前記連結ピンの基端部側の径は前記ブレーキレバーの基端部の第2貫通穴の径より小さいものであり、前記テーパー形状の基端部のうち前記第2貫通穴を通して突き出された部分は、かしめによってその第2貫通穴より大径に塑性変形させられたものである。すなわち、前記テーパー形状の基端部のうち前記第2貫通穴を通して突き出された部分が、かしめによってその第2貫通穴より大径に塑性変形させられることにより、前記基端部のテーパー形状の外周面の一部が前記ブレーキレバーの第2貫通穴における前記連結ピンの先端部側の周縁部に当接されると共に、前記かしめによって前記第2貫通穴より大径に塑性変形させられた部分が前記ブレーキレバーの第2貫通穴における前記連結ピンの基端部側の周縁部に当接されて、前記連結ピンの前記基端部が前記ブレーキレバーの第2貫通穴の周縁部にかしめ着けられている。このため、前記連結ピンの前記基端部が前記ブレーキレバーにかしめ着けられた後において、前記基端部における前記連結ピンの先端部側の端部からその基端部のテーパー形状における前記ブレーキレバーの第2貫通穴における前記連結ピンの先端部側の周縁部が当接する部分までの前記基端部の径の大きさは、前記一方のブレーキシューの前記第1貫通穴の径より小さいので、前記連結ピンがかしめ着けられた前記ブレーキレバーを前記一方のブレーキシューの取り付けると、前記ブレーキレバーの平坦な平板部と前記ブレーキシューのそのブレーキレバーの平板部に略平行なシューウェブとが面接触してその接触面積が大きくなり、そのブレーキシューとブレーキレバーとの間の接触状態が従来に比較して安定になる。また、前記ブレーキレバーは、そのブレーキレバーの厚みを薄くさせることなく成形されるので、前記ブレーキレバーの強度が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例のドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のII-II視断面図である。
【図3】図2の連結ピンがブレーキレバーにかしめ着けられる前の状態を示す図である。
【図4】ブレーキレバーに図3の連結ピンの基端部をかしめ着けるに際して、ブレーキレバーの第2貫通穴内に挿入した状態を示す図である。
【図5】ブレーキレバーに図3の連結ピンの基端部をかしめ着けるに際して、かしめ用第1金型内にセットした状態を示す図である。
【図6】ブレーキレバーに図3の連結ピンの基端部をかしめ着けるに際して、第1金型内にセットされた連結ピンの基端部を第2金型で押圧した状態を示す図である。
【図7】ブレーキレバーにかしめ着けられた図3の連結ピンにブレーキシューを組み付ける状態を示す図である。
【図8】ブレーキレバーをブレーキシューに回動可能に連結する従来の連結ピンを説明する図である。
【図9】図8の従来の連結ピンを金型を用いてブレーキレバーにかしめ着ける前の状態を示す図である。
【図10】図8の従来の連結ピンを金型を用いてブレーキレバーにかしめ着けた状態を示す図である。
【図11】図8の従来の連結ピンの問題点を解消するために考えられる他の連結ピンのブレーキレバーへのかしめ前の状態を示す図である。
【図12】図11の連結ピンをブレーキレバーにかしめ着けた状態を示す図である。
【図13】図11の連結ピンがブレーキレバーをブレーキシューに回動可能に連結する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の一実施例のパーキングロック機能を備えたシュー間隙自動調節機構付ドラムブレーキであるリーディング・トレーリング型の車両用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10であって、有底円筒状のブレーキドラム12を取り外して示す正面図である。また、ブレーキドラム12は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちの中心側の円はブレーキドラム12の内周面14を示している。
【0017】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート16が備えられている。
【0018】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート16の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー18および20と、その一対のブレーキシュー18および20の一端部すなわち図1の上端部の間においてバッキングプレート16に位置固定に設けられたホイールシリンダ22と、一対のブレーキシュー18および20の一端部を互いに接近する方向に常時付勢してホイールシリンダ22に当接させるために、その一端部間に張設されたリターンスプリング24と、一対のブレーキシュー18および20の一端部間に架け渡された非制動時におけるその一対のブレーキシュー18および20の間の離間距離を規制する長手板状のストラット26と、一対のブレーキシュー18および20の他端部すなわち図1の下端部の間に位置するようにバッキングプレート16に固定されたアンカ部材28と、一対のブレーキシュー18および20の他端部間に張設されてそれら他端部をアンカ部材28に常時当接させるスプリング30とが備えられている。
【0019】
一対のブレーキシュー18および20は、何れも、バッキングプレート16の内周部に位置する平坦な平板部16aと略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ32および34と、それらの円弧形状を成すシューウェブ32および34の外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すようにそのシューウェブ32および34に一体的に固設された帯板状のシューリム36および38と、それらシューリム36および38の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング40および42とを備えてそれぞれ構成されている。
【0020】
また、一対のブレーキシュー18および20は、シューウェブ32およびシューウェブ34にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置44および46によってバッキングプレート16に接近する方向に押圧されることによりそのバッキングプレート16に対して面方向の相対移動が可能に保持されている。また、ブレーキシュー18のシューウェブ32には、長手平板状のブレーキレバー48が重ねられた状態で配設されており、そのブレーキシュー18のシューウェブ32の一端部とブレーキレバー48の基端部48aとは、連結ピン50によって、相対回動可能に連結されている。また、ブレーキレバー48は、平板状の金属板例えば綱板から打ち抜かれかつ所定の曲げ成形等が施されて製造されたプレス部品であり、図2に示すようにブレーキレバー48の平坦な平板部48bとシューウェブ32の平坦な平板部32aとが重ねられた状態で配置される。また、ブレーキレバー48の先端部48cには、図示されていないパーキングブレーキ操作装置が操作されることによってそのブレーキレバー48の先端部48cが図1に示す矢印F1方向に回動するように引っ張られるブレーキケーブル52が備えられている。
【0021】
図2に示すように、連結ピン50は、ブレーキシュー18のシューウェブ32の一端部に円柱形状に貫通された第1貫通穴32b内に嵌め入れられた先端部50aと、ブレーキレバー48の基端部48aに円柱形状に貫通された第2貫通穴48c内に嵌め入れられた状態でそのブレーキレバー48の基端部48aにかしめ着けられた基端部50bとによって一体に構成されている。また、図2に示すように、連結ピン50の基端部50bには、その基端部50bがブレーキレバー48の第2貫通穴48cにおける連結ピン50の基端部50b側の周縁部48dから突出する部分がかしめによってその第2貫通穴48cの径B1より大径に塑性変形された大径部50cが一体に備えられている。
【0022】
連結ピン50の先端部50aには、図2に示すように、その先端部50aに形成された円柱形状の軸部50dと、先端部50aがシューウェブ32の第1貫通穴32bから突き出した部分に図1に示す略C字形状の止め輪54が取り付けられる環状の取付溝50eとが一体に備えられている。図2に示すように、連結ピン50の軸部50dの径は、シューウェブ32の第1貫通穴32bの径B2より僅かに小さくされており、シューウェブ32の第1貫通穴32b内にその連結ピン50の軸部50dが嵌め入れられると、ブレーキレバー48の基端部48aがブレーキシュー18の一端部に回動可能に連結される。また、図2に示すように、シューウェブ32の第1貫通穴32bの径B2は、ブレーキレバー48の第2貫通穴48cの径B1より大きいものである。
【0023】
図3は、連結ピン50の基端部50bがブレーキレバー48の基端部48aにかしめ着けられる前、すなわち連結ピン50の基端部50bが塑性変形される前における連結ピン50の形状を示す図である。連結ピン50の基端部50bは、その基端部50bにおける連結ピン50の先端部50a側の端部50fからその基端部50bにおける連結ピン50の基端部50b側の端部50gに向かう程その基端部50bの径が小さくなるテーパー形状に形成されたものである。
【0024】
図3に示すように、テーパー形状の基端部50bにおいて、その基端部50bにおける連結ピン50の先端部50a側の端部50fの径はブレーキレバー48の第2貫通穴48cの径B1より大きく、その基端部50bにおける連結ピン50の基端部50b側の端部50gの径はブレーキレバー48の第2貫通穴48cの径B1より小さい。
【0025】
図4乃至図7は、ブレーキレバー48の基端部48aに連結ピン50の基端部50bをかしめ着けて、ブレーキレバー48の基端部48aをブレーキシュー18の一端部に回動可能に連結するブレーキレバー48の取付方法を説明する図である。以下において、その図4乃至図7を参照してそのブレーキレバー48の組付方法を説明する。
【0026】
図4に示すように、連結ピン50のテーパー形状の基端部50bをブレーキレバー48の第2貫通穴48cに挿通させて、その第2貫通穴48cからテーパー形状の基端部50bの端部50gを突き出させる。
【0027】
図5は、図4においてブレーキレバー48の第2貫通穴48cにテーパー形状の基端部50bを嵌め入れたものを位置固定に支持し、その第2貫通穴48bから突き出したテーパー形状の基端部48bの端部50gをかしめにより塑性変形させるプレス加工機56を説明する図である。図5に示すように、プレス加工機56には、連結ピン50の先端部50aを支持するように円柱形状に凹んだ第1凹部58aとブレーキレバー48を支持する支持面58bとを有する第1金型58と、その第1金型58の支持面58bに対して略平行な押圧面60aとその押圧面60aにおいてブレーキレバー48の第2貫通穴48cの径B1より大径に凹んだ円板形状の第2凹部60bとを有する第2金型60とが備えられ、プレス加工機56によって第2金型60の底面60cがテーパー形状の基端部50bの端部50gに接近する方向すなわち矢印F2方向に移動させられる。また、連結ピン50およびブレーキレバー48がプレス加工機56の第1金型58に支持されると、図4の一点鎖線で示された2つの円内に示すように連結ピン50のテーパー形状の基端部50bの外周面の一部がブレーキレバー48の第2貫通穴48cにおける連結ピン50の先端部50a側の周縁部48dに接触する。
【0028】
図6に示すように、プレス加工機56によって、第2金型60が矢印F2方向に移動されてその第2金型60の押圧面60aがシューウェブ32に当接されると、その第2凹部60bの底面60cによって第2貫通穴48cから突き出した基端部50bの端部50gがつぶされると共にその基端部50bの端部50gの材料がその第2凹部60b内に逃げる。そのため、連結ピン50の基端部50bの端部50gが第2貫通穴48cの径B1より大径の大径部50cに塑性変形されて、その大径部50cが第2貫通穴48cの連結ピン50の基端部50b側の周縁部48eに当接されて、連結ピン50の基端部50bがブレーキレバー48の基端部48aにかしめ着けられる。
【0029】
また、図6に示すように、テーパー形状の基端部50bの端部50gが第2金型60によって矢印F2方向に押圧されると、ブレーキレバー48の第2貫通穴48c内において、基端部50bの径が大きくなるように塑性変形されてその基端部50bの外周面の一部が第2貫通穴48cの連結ピン50の先端部50a側の周縁部48dに押し付けられた状態で、連結ピン50の基端部50bがブレーキレバー48の基端部48aにかしめ着けられる。なお、ブレーキレバー48の第2貫通穴48cの周縁部48dにテーパー形状の基端部50bが当接されるので、基端部50bがかしめられて第2貫通穴48c内でその基端部50bの径が大きくなるように塑性変形しても、基端部50bは、その基端部50bにおけるその周縁部48dに当接された部分からその基端部50bにおける連結ピン50の先端部50a側の端部50fまでの基端部50bの径は塑性変形される前と略同じであり、第1貫通穴32bの径B2より小さい。
【0030】
図7に示すように、ブレーキシュー48の基端部48aに連結ピン50の基端部50bがかしめ着けられた後、その連結ピン50の軸部50dにブレーキシュー18のシューウェブ32の第1貫通穴32bが嵌め入れられ、その第1貫通穴32bから突き出した連結ピン50の先端部50aの取付溝50fに止め輪54が取り付けられて、ブレーキレバー48の基端部48aがブレーキシュー18の一端部に回動可能に連結される。
【0031】
以上のように構成されたドラムブレーキ10によれば、図示されていないパーキングブレーキ操作装置が操作されることによってブレーキケーブル52に操作力が発生すると、ブレーキレバー48の先端部48cが連結ピン50の軸部50dまわり矢印F1方向に回動して、ブレーキシュー20がストラット26に押されると共にブレーキシュー18が連結ピン50の軸部50dに押されて一対のブレーキシュー18および20のライニング40および42がブレーキドラム12の内周面14に当接する。
【0032】
本実施例のドラムブレーキ10によれば、連結ピン50の基端部50bは、その基端部50bが塑性変形される前において、基端部50bにおける連結ピン50の先端部50a側の端部50fからその基端部50bにおける連結ピン50の基端部50b側の端部50gに向かう程その基端部50bの径が小さくなるテーパー形状とされており、テーパー形状の基端部50bの連結ピン50の先端部50a側の径はブレーキレバー48の基端部48aの第2貫通穴48cの径B1より大きく、その基端部50bの連結ピン50の基端部50b側の径はブレーキレバー48の基端部48aの第2貫通穴48cの径B1より小さいものであり、そのテーパー形状の基端部50bのうち第2貫通穴48cを通して突き出された端部50gは、かしめによってその第2貫通穴48cより大径に塑性変形させられたものである。すなわち、テーパー形状の基端部50bのうち第2貫通穴48cを通して突き出された端部50gが、かしめによってその第2貫通穴48cより大径に塑性変形させられると、基端部50bのテーパー形状の外周面の一部がブレーキレバー48の第2貫通穴48cにおける連結ピン50の先端部50a側の周縁部48dに当接されると共に、そのかしめによって第2貫通穴48cより大径に塑性変形させられた大径部50cがブレーキレバー48の第2貫通穴48cにおける連結ピン50の基端部50b側の周縁部48eに当接されて、連結ピン50の基端部50bがブレーキレバー48の第2貫通穴48cの周縁部にかしめ着けられている。このため、連結ピン50の基端部50bがブレーキレバー48にかしめ着けられた後において、基端部50bにおける連結ピン50の先端部50a側の端部50fからその基端部50bのテーパー形状におけるブレーキレバー48の第2貫通穴48cの周縁部48dが当接する部分までの基端部50bの径の大きさは、ブレーキシュー18の第1貫通穴32bの径B2より小さいので、連結ピン50がかしめ着けられたブレーキレバー48をブレーキシュー18の取り付けると、ブレーキレバー48の平坦な平板部48bとシューウェブ32の平坦な平板部32aとが面接触してその接触面積が大きくなり、そのブレーキシュー18とブレーキレバー48との間の接触状態が従来に比較して安定になる。また、ブレーキレバー48は、平板状の金属板から打ち抜かれかつ所定の曲げ成形等が施されて製造されたものであり、そのブレーキレバー48の厚みを薄くさせることなく成形されたものであるため、ブレーキレバー48の強度が図13に示す従来のブレーキレバー120のように低下することがない。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0034】
たとえば、前述のドラムブレーキ10において、プレス加工機56によって連結ピン50の基端部50bがかしめられると、図6に示すようにブレーキレバー48の第2貫通穴48cの内周面と基端部50dの外周面との間に空間が形成されたが、その空間が形成されないようにたとえば基端部50bの外周面の略全周が第2貫通穴48cの内周面に当接するように連結ピン50の基端部50bを塑性変形されても良い。
【0035】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
10:ドラムブレーキ
16:バッキングプレート
18,20:一対のブレーキシュー
32b:第1貫通穴
48:ブレーキレバー
48a:基端部
48c:第2貫通穴
50:連結ピン
50a:先端部
50b:基端部
50d:軸部
50f:端部
50g:端部
B1:第2貫通穴の径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッキングプレートに拡開可能に配設された円弧形状の一対のブレーキシューと、該一対のブレーキシューの一方に配設された長手平板状のブレーキレバーと、該一対のブレーキシューの一方の一端部に形成された第1貫通穴内に嵌め入れられた先端部と、該先端部に形成された該一方のブレーキシューの一端部を相対回転可能に嵌合する軸部と、前記ブレーキレバーの基端部に形成された第2貫通穴内に嵌め入れられた状態で該ブレーキレバーの基端部にかしめ着けられた基端部とを有して該ブレーキレバーの基端部を該一方のブレーキシューの一端部に回動可能に連結する連結ピンとを備えるドラムブレーキであって、
前記連結ピンの基端部は、該基端部が塑性変形される前において、前記基端部における前記連結ピンの先端部側の端部から該基端部における前記連結ピンの基端部側の端部に向かう程該基端部の径が小さくなるテーパー形状とされており、
前記テーパー形状の基端部の前記連結ピンの先端部側の径は前記ブレーキレバーの基端部の第2貫通穴の径より大きく、該基端部の前記連結ピンの基端部側の径は前記ブレーキレバーの基端部の第2貫通穴の径より小さいものであり、
前記テーパー形状の基端部のうち前記第2貫通穴を通して突き出された部分は、かしめによって該第2貫通穴より大径に塑性変形させられたものであることを特徴とするドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−251626(P2012−251626A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125826(P2011−125826)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】