説明

ドラムユニット

【課題】感光ドラムをフレームに容易に組み付けることができながら、感光ドラムの回転速度の変動を抑制することができる、ドラムユニットを提供する。
【解決手段】ドラムユニット6のフレーム8には、感光ドラム9が回転可能に支持されるとともに、その感光ドラム9の周面に面接触する接触部材68が保持されている。感光ドラム9の周面には、静電潜像が形成される像形成領域A1と、像形成領域A1に隣接する非像形成領域A2とが設けられている。接触部材68は、像形成領域A1には接触せず、非像形成領域A2に面接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタなどの画像形成装置に備えられるドラムユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタなどの画像形成装置の一例では、感光ドラムを保持したドラムユニットが装置本体に着脱可能に設けられている。
【0003】
感光ドラムは、中空円筒状のドラム本体と、ドラム本体の中心軸線に沿って延びるドラム軸とを備えている。ドラム軸は、ドラムユニットのフレームに回転不能に保持されている。ドラム本体は、ドラム軸に回転可能に支持されている。ドラム本体の一端部には、フランジが嵌合され、その反対側の他端部には、ドラムギヤが結合されている。ドラムギヤにモータの駆動力が入力されることにより、感光ドラム(ドラム本体)は、一定の方向に回転される。
【0004】
フレームには、現像ローラを保持した現像ユニットが装着される。この現像ユニットがフレームに装着されると、ドラム本体に現像ローラが圧接される。現像ローラは、ドラム本体に圧接された状態で、そのドラム本体に圧接された部分がドラム本体の表面と同じ方向に移動するように、感光ドラムの回転方向と逆方向に回転される。感光ドラムおよび現像ローラの回転に伴って、現像ローラからドラム本体の表面にトナーが供給され、ドラム本体の表面に形成されている静電潜像がトナー像に現像される。また、転写ローラがドラム本体と対向して配置されており、ドラム本体の表面に担持されるトナー像は、転写ローラと対向したときに、その転写ローラとドラム本体との間に進入した用紙に転写される。
【0005】
画像形成動作中、ドラム本体の回転速度は一定に保持されなければならない。なぜなら、ドラム本体の回転速度が変動すると、その変動に応じてドラム本体の表面に形成される静電潜像が伸縮し、用紙に形成される画像(トナー像)が伸縮するなど、用紙に形成される画像の品質の低下を招くからである。
【0006】
ところが、ドラム本体の回転速度は、画像形成動作中に、ドラム本体に入力される外乱により変動する可能性がある。たとえば、ドラム本体と転写ローラとの間に進入する用紙の先端がドラム本体の表面に当接して、ドラム本体の表面が用紙の先端により押され、ドラム本体の回転が助長されると、ドラム本体の回転速度が変動(上昇)する。
【0007】
ドラム本体の回転速度の変動を抑制するため、たとえば、ドラム本体に嵌合されたフランジに対して、ドラム軸に沿う方向から制動部材が押しつけられる。具体的には、フランジに対してドラム軸に沿う方向と対向する位置に、制動部材が設けられ、制動部材とドラムユニットのフレームとの間に、制動部材をフランジに向けて付勢するための付勢部材が設けられる。付勢部材の付勢力により、制動部材がフランジに圧接され、制動部材からフランジに摩擦力が付与されることにより、ドラム本体の回転速度の変動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−316631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この制動部材および付勢部材を備える構成では、ドラム本体の回転速度の変動を良好に抑制するためには(ドラム本体に入力される外乱の影響を排除するためには)、付勢部材の付勢力(弾性力)を増大させればよい。しかしながら、感光ドラムをドラムユニットのフレームに組み付ける際には、その組み付け過程において、制動部材を付勢部材の付勢力に抗してドラムユニットのフレームから遠ざける方向に移動させなければならず、付勢部材の付勢力が増大されると、制動部材の移動のために、より一層大きな力が必要となる。そのため、フレームに対する感光ドラムの組付けの作業性が低下する。
【0010】
本発明の目的は、感光ドラムをフレームに容易に組み付けることができながら、感光ドラムの回転速度の変動を抑制することができる、ドラムユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明は、ドラムユニットにおいて、フレームと、前記フレームに回転可能に支持される感光ドラムと、前記フレームに保持され、前記感光ドラムの周面に接触する接触部材とを備え、前記感光ドラムの周面は、静電潜像が形成される像形成領域と、前記像形成領域に隣接する非像形成領域とを有し、前記接触部材は、前記非像形成領域に面接触し、前記像形成領域に非接触に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドラムユニットのフレームには、感光ドラムが回転可能に支持されるとともに、その感光ドラムの周面に面接触する接触部材が保持されている。感光ドラムの周面には、静電潜像が形成される像形成領域と、像形成領域に隣接する非像形成領域とが設けられている。接触部材は、像形成領域には接触せず、非像形成領域に面接触している。
【0013】
感光ドラムが回転されると、感光ドラムの周面の非像形成領域に対して接触部材が摺擦する。これにより、接触部材から感光ドラムの周面に摩擦力が付与され、この摩擦力が感光ドラムの回転に対する抵抗となる。したがって、感光ドラムは、弱い制動力が常に加えられた状態(ブレーキが常に緩く掛けられた状態)で回転される。そのため、感光ドラムの回転速度の変動が抑制される。
【0014】
そして、接触部材が感光ドラムの周面に対向する位置に設けられるので、感光ドラムをフレームに組み付ける際に、接触部材を感光ドラムが配置されるスペースから退避させる必要がない。そのため、感光ドラムをフレームに容易に組み付けることができる。
【0015】
よって、感光ドラムをフレームに容易に組み付けることができながら、感光ドラムの回転速度の変動を抑制することができる。
【0016】
また、感光ドラムに対するその回転軸線方向の側方に接触部材を配置するためのスペースが不要であるから、感光ドラムの回転軸線方向におけるドラムユニットのサイズを小さくすることができる。
【0017】
さらに、接触部材と感光ドラムとの接触箇所が感光ドラムの回転軸線から離れた周面に設定されることにより、感光ドラムの回転軸線に近い位置に接触箇所が設定される構成と比較して、より小さな力によって効果的に、接触部材から感光ドラムに摩擦力を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るドラムユニットが装着されたレーザプリンタの断面図である。
【図2】図2は、図1に示されるドラムユニットの右側面図である。
【図3】図3は、図2に示される切断線A−Aにおけるドラムユニットの断面図である。
【図4】図4は、図3に示される円で囲まれる部分の拡大断面図である。
【図5】図5は、図1に示されるドラムユニットの平面図である。
【図6】図6は、図5に示される切断線B−Bにおけるドラムユニットの断面図である。
【図7】図7は、図2に示される上フレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
1.レーザプリンタ
図1に示されるように、画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ1は、装置本体の一例としての本体ケーシング2を備えている。本体ケーシング2の一方側壁には、カートリッジ着脱口3が形成され、このカートリッジ着脱口3を開閉するフロントカバー4が設けられている。
【0020】
なお、フロントカバー4が設けられている側(図1における右側)をレーザプリンタ1の前側(正面側)とする。また、レーザプリンタ1の上下左右に関しては、レーザプリンタ1を前側から見たときを基準とする。また、後述するドラムユニット7については、特に言及がない限り、本体ケーシング2に装着された状態での方向を基準として説明する。
【0021】
本体ケーシング2内の中央より少し前側の位置には、プロセスユニット5が装着されている。プロセスユニット5は、フロントカバー4を開いた状態で、カートリッジ着脱口3を介して、本体ケーシング2内に装着され、また、本体ケーシング2内から離脱される。
【0022】
プロセスユニット5は、ドラムユニット6と、そのドラムユニット6に対して着脱自在な現像ユニット7とからなる。
【0023】
ドラムユニット6は、フレーム8を備えている。フレーム8の後端部には、感光ドラム9が左右方向に延びる回転軸線10を中心に回転可能に保持されている。また、フレーム8には、帯電器11および転写ローラ12が保持されている。帯電器11および転写ローラ12は、それぞれ感光ドラム9の後方および下方に配置されている。
【0024】
フレーム8における感光ドラム9よりも前側の部分は、現像ユニット装着部13とされており、この現像ユニット装着部13に、現像ユニット7が装着される。
【0025】
現像ユニット7は、トナーを収容する筐体14を備えている。筐体14の内部には、互いに連通するトナー収容室15および現像室16が前後に隣接して形成されている。
【0026】
トナー収容室15には、アジテータ17が左右方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。アジテータ17の回転により、トナー収容室15内に収容されているトナーが攪拌されつつ、トナー収容室15から現像室16へ送られる。
【0027】
現像室16には、現像ローラ18および供給ローラ19がそれぞれ左右方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。現像ローラ18は、その周面の一部が筐体14の後端部から露出するように配置されている。現像ユニット7は、現像ローラ18の周面が感光ドラム9の周面と接触するように、ドラムユニット6に装着される。供給ローラ19は、その周面が現像ローラ18の周面に対して前下方から接触するように配置されている。現像室16内のトナーは、供給ローラ19により現像ローラ18の周面に供給され、現像ローラ18の周面上に薄層となって担持される。
【0028】
また、本体ケーシング2内には、プロセスユニット5の上方に、レーザなどを備える露光器20が配置されている。
【0029】
画像形成時には、感光ドラム9が図1における時計回りに一定速度で回転される。感光ドラム9の回転に伴って、感光ドラム9の周面(表面)は、帯電器11からの放電により、一様に帯電される。一方、プリンタ1に接続されたパーソナルコンピュータ(図示せず)から受信する画像データに基づいて、露光器20からレーザビームが出射される。レーザビームは、帯電器11と現像ユニット7との間を通り、一様に正帯電された感光ドラム9の周面に照射され、感光ドラム9の周面を選択的に露光する。これにより、感光ドラム9の露光された部分から電荷が選択的に除去され、感光ドラム9の周面に静電潜像が形成される。感光ドラム9の回転により、静電潜像が現像ローラ18に対向すると、現像ローラ18から静電潜像にトナーが供給される。これによって、感光ドラム9の周面にトナー像が形成される。
【0030】
本体ケーシング2の底部には、被転写体の一例としての用紙Pを収容する給紙カセット21が配置されている。給紙カセット21の上方には、給紙カセット21から用紙を送り出すためのピックアップローラ22が設けられている。
【0031】
また、本体ケーシング2内には、側面視S字状の搬送路23が形成されている。この搬送路23は、給紙カセット21から感光ドラム9と転写ローラ12との間を経由して、本体ケーシング2の上面に形成された排紙トレイ24に至る。搬送路23上には、互いに対向配置される分離ローラ25および分離パッド26、1対の給紙ローラ27、1対のレジストローラ28ならびに1対の排紙ローラ29が設けられている。
【0032】
給紙カセット21から送り出された用紙Pは、分離ローラ25と分離パッド26との間を通過し、その際に1枚ずつに捌かれる。その後、用紙Pは、給紙ローラ27により、レジストローラ28に向けて搬送される。そして、その用紙Pは、レジストローラ28によるレジスト後に、レジストローラ28により、感光ドラム9と転写ローラ12との間に向けて搬送される。
【0033】
感光ドラム9の周面上のトナー像は、感光ドラム9の回転により、感光ドラム9と転写ローラ12との間を通過する用紙Pと対向したときに、転写ローラ12により電気的に引き寄せられて、用紙Pに転写される。
【0034】
搬送路23上には、転写ローラ12に対して用紙Pの搬送方向の下流側に、定着器30が設けられている。トナー像が転写された用紙Pは、搬送路23を搬送されて、定着器30を通過する。定着器30では、加熱および加圧により、トナー像が画像となって用紙Pに定着される。
【0035】
このプリンタ1は、動作モードとして、用紙Pの片面に画像(トナー像)を形成する片面モードと、用紙Pの一方面に画像を形成した後、その用紙Pの一方面と反対の他方面に画像を形成する両面モードとを有している。
【0036】
片面モードでは、一方面に画像が形成された用紙Pは、排紙ローラ29により、排紙トレイ24に排出される。
【0037】
両面モードを実現するための構成として、本体ケーシング2内には、反転搬送路31が形成されている。反転搬送路31は、排紙ローラ29の近傍から搬送路23と給紙カセット21との間を延び、搬送路23における給紙ローラ27とレジストローラ28との間の部分に接続されている。反転搬送路31上には、1対の第1反転搬送ローラ32および1対の第2反転搬送ローラ33が設けられている。
【0038】
両面モードでは、用紙Pの一方面に画像が形成された後、その用紙Pは、排紙トレイ24に排出されずに、反転搬送路31に送り込まれる。そして、用紙Pは、第1反転搬送ローラ32および第2反転搬送ローラ33により、反転搬送路31を搬送され、その表裏が反転されて、画像が形成されていない他方面が感光ドラム9の周面と対向する姿勢で搬送路23に送り込まれる。そして、用紙Pの他方面に画像が形成されることにより、用紙Pの両面への画像の形成が達成される。
2.ドラムユニット
ドラムユニット6のフレーム8は、図2,3に示されるように、上下に2分割に構成されている。すなわち、フレーム8は、下フレーム41と、この下フレーム41と別体に形成され、下フレーム41に上方から組み付けられる上フレーム42とを備えている。
(1)下フレーム
下フレーム41は、図5に示されるように、左側壁43、右側壁44、底壁45および前壁46を一体的に備えている。
【0039】
左側壁43および右側壁44は、左右方向(幅方向)に間隔を空けて対向しており、側面視でほぼ同一形状をなしている。図6に右側壁44が示されるように、左側壁43および右側壁44は、ドラム対向壁部47、現像ローラ案内壁部48およびカートリッジ対向壁部49を含む。
【0040】
ドラム対向壁部47は、側面視で船首形状をなしている。
【0041】
現像ローラ案内壁部48は、ドラム対向壁部47の前端縁の中央より下側の部分から前方に延びている。現像ローラ案内壁部48の上端縁は、前上方に延び、現像ローラ案内壁部48の上下方向の幅は、後側部分より前側部分で大きくなっている。そして、ドラム対向壁部47の前端部には、現像ローラ案内壁部48の上端縁にその下端縁が連続するように、前側に凹む凹部として、現像ローラ18の回転軸(図示せず)の端部を受け入れるローラ軸受入部50が形成されている。
【0042】
カートリッジ対向壁部49は、現像ローラ案内壁部48の前端縁から前方に延び、側面視で略矩形状をなしている。
【0043】
左右の現像ローラ案内壁部48およびカートリッジ対向壁部49で挟まれる部分は、現像ユニット装着部13であり、現像ローラ18の回転軸がローラ軸受入部50に受け入れられて、現像ユニット7(図1参照)の後端部が押し下げられることにより、現像ユニット7が現像ユニット装着部13に装着される。この現像ユニット7の装着時には、現像ローラ18の回転軸をローラ案内壁部48上を摺動させることにより、現像ローラ18がローラ軸受入部50にスムーズに導入される。
【0044】
底壁45は、図5に示されるように、略平板状をなし、左側壁43および右側壁44の各下端縁を連結するように形成されている。底壁45の後端部には、図6に示されるように、転写ローラ12を収容する転写ローラ収容部51が形成されている。具体的には、転写ローラ12は、図3に示されるように、金属製の転写ローラ軸52と、その転写ローラ軸52の周りを被覆するゴムローラ53とを備えている。そして、転写ローラ収容部51は、図6に示されるように、上方に凸湾曲した断面半円弧状から上端部を切除した形状をなし、その切除された部分からゴムローラ53の上部が上方に突出する状態でゴムローラ53を収容している。
【0045】
また、底壁45の後端部には、転写ローラ収容部51の左右両側に、図3に示されるように、転写ローラ12の転写ローラ軸52を下方から支持する転写ローラ支持板54が立設されている。転写ローラ軸52の左右両端部が転写ローラ支持板54に支持されることにより、転写ローラ12は、回転可能に設けられている。
【0046】
さらに、底壁45の前後方向の中央部には、図6に示されるように、上方に凸湾曲した断面半円弧状のレジストローラ収容部55が形成されている。レジストローラ28は、レジストローラ収容部55に収容されて、左側壁43および右側壁44により回転可能に支持されている。
【0047】
前壁46は、底壁45の前端縁から上方に立ち上がり、その左右両端縁がそれぞれ左側壁43および右側壁44に接続されている。
(2)上フレーム
上フレーム42は、図7に示されるように、左側壁61、右側壁62、後壁63および壁部の一例としての天壁64を一体的に備えている。
【0048】
左側壁61および右側壁62は、左右方向(幅方向)に間隔を空けて対向している。図3に示されるように、上フレーム42が下フレーム41に組み付けられた状態で、左側壁61および右側壁62は、それぞれ左側壁43および右側壁44のドラム対向壁部47に対して外側から対向する。具体的には、各ドラム対向壁部47の上部は、下部より薄く形成されて、その外側面が内側に一段下がっている。上フレーム42が下フレーム41に組み付けられた状態において、そのドラム対向壁部47の上部の外側面に左側壁61および右側壁62が接触した状態で対向し、左側壁61および右側壁62の外側面とドラム対向壁部47の下部の外側面とがほぼ面一をなす。
【0049】
左側壁61および右側壁62には、それぞれ後述するドラム軸72が挿通される外側ドラム軸挿通孔65,66が形成されている。また、下フレーム41の左側壁43のドラム対向壁部47には、外側ドラム軸挿通孔65と対向する位置に、ドラム軸72が挿通される内側ドラム軸挿通孔56が形成されている。一方、下フレーム41の右側壁44のドラム対向壁部47には、外側ドラム軸挿通孔66と対向する位置に、ドラム軸72が挿通される内側ドラム軸挿通孔57が形成されている。
【0050】
後壁63は、図7に示されるように、左側壁61および右側壁62の各後端縁間に架設されている。後壁63の前面(内面)には、帯電器11が保持されている。
【0051】
天壁64は、図6に示されるように、後壁63の上端縁から前方に向けて延びている。天壁64の下面の左右両端部には、図4,7に示されるように、接触部材貼着部67が形成されている。各接触部材貼着部67は、その前端部が感光ドラム9の回転軸線10を中心とする断面円弧状をなし、その前端部の下面が円弧面の一例である。
【0052】
そして、各接触部材貼着部67には、ウレタンフォームなどの弾性体からなる接触部材68が貼着されている。接触部材68は、図6に示されるように、接触部材貼着部67に沿って、側面視で円弧状に湾曲している。
【0053】
また、天壁64の下面には、各接触部材貼着部67の内側(左側の接触部材貼着部67の右側および右側の接触部材貼着部67の左側)に隣接する位置に、図4,7に示されるように、天壁64から下方に突出するリブ状の接触防止部69が形成されている。接触防止部69は、前後方向に延びる板状をなしている。
(3)感光ドラム
下フレーム41に上フレーム42が組み付けられた状態において、下フレーム41および上フレーム42により区画される空間は、前方に開放されており、この空間に、感光ドラム9が配置されている。
【0054】
感光ドラム9は、図3に示されるように、円筒状のドラム本体71と、このドラム本体71の中心軸線に沿って延びるドラム軸72とを備えている。
【0055】
ドラム本体71は、アルミニウムなどの導電性材料を用いて形成されている。ドラム本体71の外周面には、ポリカーボネートなどからなる正帯電性の感光層が形成されている。
【0056】
ドラム軸72は、金属棒材からなる。ドラム軸72の左端部は、下フレーム41の内側ドラム軸挿通孔56および上フレーム42の外側ドラム軸挿通孔65に挿通されて、固定具73により上フレーム42に対して固定されている。一方、ドラム軸72の右端部は、下フレーム41の内側ドラム軸挿通孔57および上フレーム42の外側ドラム軸挿通孔66に挿通されて、固定具74により上フレーム42に対して固定されている。これにより、ドラム軸72は、フレーム8に回転不能に支持されている。
【0057】
ドラム本体71の左端部には、左フランジ部材75が圧入されている。左フランジ部材75は、ドラム本体71に相対回転不能に内嵌される円筒状の内嵌部76と、内嵌部76と中心軸線が一致する円筒状をなし、ドラム軸72が相対回転可能に挿通される軸挿通部77と、内嵌部76および軸挿通部77を連結する連結部78とを一体的に有している。
【0058】
ドラム本体71の右端部には、右フランジ部材79が圧入されている。右フランジ部材79は、ドラム本体71に相対回転不能に内嵌される円筒状の内嵌部80と、内嵌部80と中心軸線が一致する円筒状をなし、ドラム軸72が相対回転可能に挿通される軸挿通部81と、内嵌部80の左右方向の途中部および軸挿通部81を連結する連結部82とを一体的に有している。
【0059】
左フランジ部材75の軸挿通部77および右フランジ部材79の軸挿通部81にドラム軸72が回転可能に挿通され、左フランジ部材75および右フランジ部材79がドラム軸72に回転可能に支持されることにより、ドラム本体71は、左フランジ部材75および右フランジ部材79を介して、ドラム軸72に回転可能に支持されている。
【0060】
そして、感光ドラム9がフレーム8に組み付けられた状態で、ドラム本体71の左右両端部に接触部材68が圧接される。言い換えれば、接触部材68は、ドラム本体71の左右両端部の周面と天壁64の接触部材貼着部67との間に圧縮された状態で介在される。より具体的には、ドラム本体71の周面には、静電潜像が形成される像形成領域A1と、像形成領域A1の左右方向両側に隣接し、静電潜像が形成されない非像形成領域A2とが設けられている。そして、接触部材68は、ドラム本体71の非像形成領域A2と接触部材貼着部67との間に圧縮された状態で介在され、非像形成領域A2に面接触している。また、天壁64の下面から接触防止部69の先端縁までの長さは、天壁64とドラム本体71の周面との間の間隔より小さく、接触防止部69は、ドラム本体71の周面に接触していない。
【0061】
また、右フランジ部材79の右方には、押圧部材83が設けられている。押圧部材83は、円板部84と、円板部84の左側面から右フランジ部材79の内嵌部80の内部に向けて突出する円筒部85とを一体的に有している。円板部84の中央部には、ドラム軸72が挿通される貫通孔が形成されている。この貫通孔は、ドラム軸72よりも大きな径を有しており、ドラム軸72は、円板部84と接触していない。円筒部85は、右フランジ部材79の内嵌部80に摺動可能かつ相対回転不能に内嵌されている。
【0062】
押圧部材83の円筒部85の内側には、コイルばね86が設けられている。コイルばね86は、押圧部材83を右方に付勢している。そして、下フレーム41における押圧部材83と対向する部分には、フェルトからなる摩擦部材87が配置されている。コイルばね86の付勢力により、押圧部材83の円板部84が摩擦部材87に圧接されている。
3.作用効果
以上のように、ドラムユニット6のフレーム8には、感光ドラム9が回転可能に支持されるとともに、その感光ドラム9の周面に面接触する接触部材68が保持されている。感光ドラム9の周面には、静電潜像が形成される像形成領域A1と、像形成領域A1に隣接する非像形成領域A2とが設けられている。接触部材68は、像形成領域A1には接触せず、非像形成領域A2に面接触している。
【0063】
感光ドラム9が回転されると、感光ドラム9の周面の非像形成領域A2に対して接触部材68が摺擦する。これにより、接触部材68から感光ドラム9の周面に摩擦力が付与され、この摩擦力が感光ドラム9の回転に対する抵抗となる。したがって、感光ドラム9は、弱い制動力が常に加えられた状態(ブレーキが常に緩く掛けられた状態)で回転される。そのため、感光ドラム9の回転速度の変動が抑制される。
【0064】
そして、接触部材68が感光ドラム9の周面に対向する位置に設けられるので、感光ドラム9をフレームに組み付ける際に、接触部材68を感光ドラム9が配置されるスペースから退避させる必要がない。そのため、感光ドラム9をフレームに容易に組み付けることができる。
【0065】
よって、感光ドラム9をフレームに容易に組み付けることができながら、感光ドラム9の回転速度の変動を抑制することができる。
【0066】
また、感光ドラム9に対する左右両側に接触部材68を配置するためのスペースが不要であるから、ドラムユニット6の左右方向のサイズを小さくすることができる。
【0067】
さらに、接触部材68と感光ドラム9との接触箇所が感光ドラム9の回転軸線から離れた周面に設定されることにより、感光ドラム9の回転軸線に近い位置に接触箇所が設定される構成と比較して、より小さな力によって効果的に、接触部材68から感光ドラム9に摩擦力を付与することができる。
(2)作用効果2
非像形成領域A2は、像形成領域A1の左右両側に設けられている。そして、接触部材68は、複数(この実施形態では、2つ)設けられ、各非像形成領域A2に面接触している。そのため、感光ドラム9に対して接触部材68からの摩擦力を左右バランスよく付与することができる。その結果、感光ドラム9の左右方向の一端側が他端側に対して遅れ気味に回転することを防止でき、感光ドラム9を安定して回転させることができる。
(3)作用効果3
また、フレーム8には、感光ドラム9の周面を帯電させるための帯電器11が保持されている。そして、フレーム8における感光ドラム9に対して帯電器11と反対側、つまり感光ドラム9の前方に、静電潜像を現像剤像に現像するための現像ユニット7が装着される現像ユニット装着部13が形成されている。このように、感光ドラム9に対する後方に帯電器11が配置され、その反対側の前方に現像ユニット装着部13が形成されているので、感光ドラム9の上方に帯電器11が配置される構成と比べて、ドラムユニット6の上下方向のサイズを小さく(ドラムユニット6を薄型化)することができる。
(4)作用効果4
そして、フレーム8は、帯電器11に対向する位置から現像ユニット装着部13に向けて延び、感光ドラム9の周面に間隔を空けて対向する天壁64を有している。この天壁64により、感光ドラム9の周面がフレーム8から露出することを防止できる。
(5)作用効果5
接触部材68は、天壁64に保持されて、天壁64と感光ドラム9の周面との間に介在されている。すなわち、ドラムユニット6の薄型化のために、天壁64自体の厚さを小さくすることが望まれるが、その厚さを小さくするほど、天壁64の強度を確保することが困難となる。天壁64の厚さが撓み変形を生じる程度に小さくされたとしても、天壁64と感光ドラム9の周面との間に接触部材68が介在されているので、天壁64がその撓み変形により感光ドラム9の周面に接触することを防止できる。よって、ドラムユニット6のさらなる薄型化を図ることができながら、天壁64の接触による感光ドラム9の周面の損傷の発生を防止することができる。
(6)作用効果6
そのうえ、天壁64には、接触防止部69が接触部材68と隣接する位置に形成されている。接触防止部69は、天壁64から感光ドラム9の周面に向けて延び、その長さは、天壁64と感光ドラム9の周面との間の間隔よりも小さい。そのため、通常は、接触防止部69は感光ドラム9の周面に接触せず、感光ドラム9の周面に面接触している接触部材68により、天壁64の撓み変形による感光ドラム9の周面への接触が防止される。そして、天壁64が接触部材68の圧縮により吸収できない程度に撓み変形した場合には、接触防止部69が感光ドラム9の周面の非像形成領域A2に接触して、天壁64のそれ以上の撓み変形が阻止される。よって、感光ドラム9の周面への天壁64の接触を確実に防止することができる。
【0068】
すなわち、天壁64が感光ドラム9に接触することを確実に防止するためには、接触部材68よりも剛性を有する接触防止部64を感光ドラム9に接触させることが望ましい。しかしながら、そのような剛性を有する接触防止部64を感光ドラム9に常に接触させると、感光ドラム9の摩耗に繋がるおそれがある。前述の構成によれば、常時は、接触部材68を感光ドラム9の周面に接触させる構成とし、非常時(天壁64が何らかの外力によって大きく撓み変形した場合)にのみ、接触防止部64を感光ドラム9の周面に接触させる構成とすることにより、感光ドラム9の摩耗を低減しつつ、天壁64と感光ドラム9の表面との接触防止の確実性を向上させることができる。
(7)作用効果7
また、接触部材68は、天壁64と感光ドラム9の周面との間に圧縮された状態で介在されている。そのため、接触部材68は、その復元力により、感光ドラム9の周面に適当な押圧力で面接触する。その結果、接触部材68から感光ドラム9の周面に適当な摩擦力を付与することができ、感光ドラム9の回転速度の変動を良好に抑制することができる。
(8)作用効果8
フレーム8には、感光ドラム9の周面に形成されるトナー像を用紙Pに転写するための転写ローラ12が保持されている。転写ローラ12は、感光ドラム9に対して接触部材68と反対側から接触するように配置されている。そのため、接触部材68から感光ドラム9の周面が受ける押圧力を転写ローラ12により受けることができ、その押圧力による感光ドラム9の位置ずれが生じることを防止できる。
(9)作用効果9
また、天壁64には、感光ドラム9の回転軸線を中心とする円弧面を有する接触部材貼着部67が形成されている。そして、接触部材68は、その接触部材貼着部67に固定されている。そのため、接触部材68は、感光ドラム9の周面に対してその周方向に一様に面接触する。よって、接触部材68から感光ドラム9の周面に摩擦力を良好に付与することができ、感光ドラム9の回転速度の変動を一層良好に抑制することができる。
(10)作用効果10
また、右フランジ部材79の右方に押圧部材83が設けられ、コイルばね86の付勢力により、押圧部材83が摩擦部材87に圧接されている。これにより、感光ドラム9(ドラム本体71)の回転時には、摩擦部材87から押圧部材83に摩擦力が付与される。その結果、感光ドラム9の回転速度の変動が補助的に抑制される。
4.変形例
本発明は、モノクロプリンタに限らず、カラープリンタに適用することもできる。
【0069】
また、前述の実施形態では、ドラムユニット6と現像ユニット7とが別体(現像ユニット7がドラムユニット6に対して着脱可能な構成)とされているが、ドラムユニット6と現像ユニット7とが一体に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
6 ドラムユニット
7 現像ユニット
8 フレーム
9 感光ドラム
11 帯電器
13 現像ユニット装着部
64 天壁
67 接触部材貼着部
68 接触部材
69 接触防止部
A1 像形成領域
A2 非像形成領域
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに回転可能に支持される感光ドラムと、
前記フレームに保持され、前記感光ドラムの周面に接触する接触部材とを備え、
前記感光ドラムの周面は、静電潜像が形成される像形成領域と、前記像形成領域に隣接する非像形成領域とを有し、
前記接触部材は、前記非像形成領域に面接触し、前記像形成領域に非接触に設けられている、ドラムユニット。
【請求項2】
前記非像形成領域は、前記像形成領域に対して前記感光ドラムの回転軸線方向の両側に設けられ、
前記接触部材は、複数設けられて、各前記非像形成領域に面接触している、請求項1に記載のドラムユニット。
【請求項3】
前記フレームに保持され、前記感光ドラムの周面を帯電させるための帯電器と、
前記フレームにおける前記感光ドラムに対して前記帯電器と反対側に形成され、前記静電潜像を現像剤像に現像するための現像ユニットが装着される現像ユニット装着部とを含む、請求項1または2に記載のドラムユニット。
【請求項4】
前記フレームは、前記帯電器に対向する位置から前記カートリッジ装着部に向けて延び、前記感光ドラムの周面に間隔を空けて対向する壁部を有している、請求項3に記載のドラムユニット。
【請求項5】
前記接触部材は、前記壁部に保持されて、前記壁部と前記感光ドラムの周面との間に介在され、前記非像形成領域に面接触している、請求項4に記載のドラムユニット。
【請求項6】
前記壁部には、前記接触部材に隣接して、前記感光ドラムの周面に向けて延び、前記壁部と前記感光ドラムとの対向方向において前記壁部と前記感光ドラムの周面との間の間隔よりも小さい長さを有する接触防止部が設けられている、請求項5に記載のドラムユニット。
【請求項7】
前記接触部材は、前記壁部と前記感光ドラムの周面との間に圧縮された状態で介在されている、請求項5または6に記載のドラムユニット。
【請求項8】
前記フレームに保持され、前記感光ドラムに対して前記接触部材と反対側から接触し、前記感光ドラムの周面に形成される現像剤像を被転写体に転写するための転写ローラを含む、請求項7に記載のドラムユニット。
【請求項9】
前記壁部は、前記感光ドラムの回転軸線を中心とする円弧面を有し、
前記接触部材は、前記円弧面に固定されている、請求項5〜8のいずれか一項に記載のドラムユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−3044(P2012−3044A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138025(P2010−138025)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】