説明

ドラム回転式染色機における被処理物の脱水方法及び脱水装置

【課題】本発明においては、脱水工程において、被処理物の水分率を均一にする様に脱水し、全体としての水分率を低下させること
【解決手段】外胴内に水平軸を中心に回転可能に設けた内胴としてのドラム1に、被染物などの被処理物を装填して回転駆動することにより脱水処理をするドラム回転式染色機における脱水方法において、ドラム1の回転方向を正転し、停止させ、再回転(逆転を含む。)し、停止させ、被処理物の内周、外周又は折れ位置に変動をきたす工程を繰り返し、被処理物の平均水分率を低下させるドラム回転式染色機における被処理物の脱水方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物のドラム回転式染色機の脱水方法及び脱水装置に関するものである。
【0002】
ここで、被処理物とは、ポリエステル、ポリエステルの混紡及び交織品等の合成繊維や、合成皮革、綿、レーヨン及び麻等のセルローズ系繊維、及びこれらセルローズ系繊維を含む混紡品等を含める。
【背景技術】
【0003】
従来のドラム回転式染色機の脱水方法及び脱水装置にあっては、被処理物を脱水する時、ドラムの回転を一方向とされていた。このため、被処理物がドラムの外周方向に移動し、遠心力で押さえつけられ位置が変わりにくく、ドラムの内周部に位置する被処理物と外周部に位置する被処理物との水分率に差が生じていた。
【0004】
また、ドラムが回転している間、ドラムの外周に押さえつけられた被処理物は、ほぼ同じ形状のままで脱水されるため、被処理物が折れて密度の高い部分と低い部分とができ、水分率に差が生じていた。
【特許文献1】特開2003−42658 パレット等の遠心脱水方法及び装置
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のドラム回転式染色機では、被処理物の水分率に差が生じて、水分率の高い被染物に合わせて乾燥時間を設定しなければならないことから、脱水工程後の乾燥時間が長くなってしまう問題点があった。本発明において、これらの問題点を解決することを目的とする。
【0006】
そこで、本発明においては、脱水工程において、被処理物の水分率を均一にする様に脱水し、全体としての水分率を低下させることができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1発明として、外胴内に水平軸を中心に回転可能に設けた内胴としてのドラムに、被染物などの被処理物を装填して回転駆動することにより脱水処理をするドラム回転式染色機における脱水方法において、ドラムの回転方向を正転し、停止させ、再回転(逆転を含む。)し、停止させ、被処理物の内周、外周又は折れ位置に変動をきたす工程を繰り返し、被処理物の平均水分率を低下させるドラム回転式染色機における被処理物の脱水方法とした。
【0008】
また、第2発明として、ドラム内の被処理物の脱水方法として、脱水工程の全体を約18分(20分程度)として、正転又は逆転の回転時間を3分間隔毎に停止を6回程度組み入れて、順次、被処理物の内周、外周又は折れ位置に変動をきたすような工程を設け、被処理物の平均水分率を低下させるドラム回転式染色機における被処理物の脱水方法とした。
【0009】
更に、第3発明として、外胴内に水平軸を中心に回転可能に設けた内胴としてのドラムに、被染物などの被処理物を装填して回転駆動することにより脱水処理をするドラム回転式染色機において、被処理物をドラム内に設けた突起部に引っ掛かるようにしてドラムの回転に連動させ、ドラムを正転、停止、再回転(逆転を含む。)、停止するように駆動モータを制御し、被処理物の平均水分率を低下させるドラム回転式染色機における被処理物の脱水装置とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の脱水方法及び脱水装置を用いることで、被染物の脱水率が向上し、被処理物の全体の水分率を低下させ、その後の乾燥工程の時間短縮を図れるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の脱水方法及び脱水装置に用いられる被処理物の形状としては、人工皮革等の不織布関係、布帛、ニット、製品(ガーメント)等の全ての形状、形態に対応できる。
【0012】
また、脱水処理時の形態としては、ドラム回転式のもの特に、丸タンク式のドラム染色機で、ドラムが回転し、布帛、製品を処理する形態をしているものが含まれる。
さらに、脱水処理の目的の範囲としては、ドラムを回転させる機械を使用して、前処理、染色、脱水を目的とする処理全般を含むものとする。
【実施例1】
【0013】
本発明のドラム回転式染色機の構造を図1及び図2に示す。
【0014】
図1及び図2において、1は染色槽、2はドラムで、染色槽1の外胴内に設けられ、水平軸を中心に回転可能に設けられている。3は軸受けで、軸4を支える。5は駆動モータで、ドラム2を正転、停止、再回転(逆転を含む。)、また、間欠運転することができるよう制御される。ドラムの回転速度は、駆動モータにより調整でき、回転方向も任意に変えることができる。ドラムを再回転させる場合、正転、逆転のいずれも可能である。
【0015】
6は突起部で、ドラム2内に設けられ、被処理物がドラムの回転に沿うようになっている。
【0016】
図3は脱水回転中における被処理物7の状態を示している。被処理物7は、ドラム回転による遠心力を受けて、ドラムの外周に押し付けられ、突起部6に引っ掛かる状態にある。ドラムの回転によって、被処理物7中の水分が脱水されることとなる。
【0017】
図4は、ドラムを一旦停止した時における被処理物8の状態を示す図である。被処理物8は、重力の影響を受けて下方に崩れ、再回転させた時には被処理物の位置関係が変わることとなる。
【0018】
停止時間は、3秒であり、5回停止した場合であっても、5X3秒=15秒で全行程の18分に比べて短時間となる。したがって、停止時間が全行程の時間に与える影響はほとんどない。
【0019】
ここで、本発明の脱水処理方法及び脱水装置の実施例を示す。まず、比較対象例として、ドラムの回転状態を連続して18分間正転した場合の脱水後の平均水分率、最大水分率、最小水分率の結果を下記に示す。
【0020】
ここで、被処理物として、肌着63g/枚を23枚、及び、ストッキング63g/枚を26枚投入した。ドラムの全容量は、3.1kgであり、脱水ドラムの大きさは、φ600mmX400リットル、脱水回転数は250rpmとした。
【表1】

【0021】
次に、本発明の実施例1として、「正転を3分間した後に停止する」工程を6回繰り返した場合の脱水後の平均水分率、最大水分率、最小水分率の結果を下記に示す。
【表2】

【0022】
この実施例1の脱水時間と比較対象例の連続脱水する時間とは共に18分間であり同一時間である。
【0023】
しかし、実施例1では「停止」工程を入れたことにより、その都度、ドラムの内周の被処理物がその位置を変えることになる。このため、被処理物が重力の影響で下方に移動し、よりよく脱水されることがわかる。したがって、脱水後最小水分率は変わりがないが、最大水分率が下がり、全体としての水分率が低下する効果を得ることができた。
【実施例2】
【0024】
次に、実施例2として、「正転3分後停止する」「その後逆回転3分後、停止する」工程を繰り返した場合の脱水後の平均水分率、最大水分率、最小水分率の結果を下記に示す。
【表3】

【0025】
この実施例2では、脱水工程での回転方向を正転を停止した後、逆回転としていることにより、ドラムの内周の被処理物が逆回転のし始めにその位置を変えることにより、よりよく脱水されることがわかる。
脱水時間を実施例1の場合に比べて短縮したにもかかわらず、ほぼ同様の効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
ドラム回転式染色機の脱水を一旦止め、内部の被染物の内周、外周位置、及び折れ位置を変え、再度脱水することで、被処理物の脱水状態を均一にすることができる。脱水後、乾燥工程に移る場合にあっても時間の短縮が図れるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ドラム回転式染色機の全体を示す図
【図2】ドラム内の構造を示す図
【図3】ドラムを脱水回転している時の被処理物の状態を示す図
【図4】ドラムの回転を一旦停止した時の被処理物の状態を示す図
【符号の説明】
【0028】
1 染色槽
2 ドラム
3 軸受け
4 軸
5 駆動モータ
6 突起部
7 被処理物
8 被処理物



【特許請求の範囲】
【請求項1】
外胴内に水平軸を中心に回転可能に設けた内胴としてのドラムに、被染物などの被処理物を装填して回転駆動することにより脱水処理をするドラム回転式染色機における脱水方法において、ドラムの回転方向を正転し、停止させ、再回転(逆転を含む。)し、停止させ、被処理物の内周、外周又は折れ位置に変動をきたす工程を繰り返し、被処理物の平均水分率を低下させることを特徴とするドラム回転式染色機における被処理物の脱水方法。
【請求項2】
ドラム内の被処理物の脱水方法として、脱水工程の全体を約18分とし3分間隔毎に停止を6回程度組み入れて、順次、被処理物の内周、外周又は折れ位置に変動をきたすような工程を設け、被処理物の平均水分率を低下させることを特徴とする請求項1記載のドラム回転式染色機における被処理物の脱水方法。
【請求項3】
外胴内に水平軸を中心に回転可能に設けた内胴としてのドラムに、被染物などの被処理物を装填して回転駆動することにより脱水処理をするドラム回転式染色機において、被処理物をドラム内に設けた突起部に引っ掛かるようにしてドラムの回転に連動させ、ドラムを正転、停止、再回転(逆転を含む。)、停止するように駆動モータを制御し、被処理物の平均水分率を低下させることを特徴とするドラム回転式染色機における被処理物の脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−220663(P2008−220663A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63660(P2007−63660)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】