説明

ドラム式洗濯機

【課題】コンパクトで構成部品が少ない排水管路を備えたドラム式洗濯機を提供すること。
【解決手段】排水管路32は、中心軸が略水平方向に延びる円筒状をなすとともに、排水管路32の途中に設けた排水口32cを開閉する排水弁32dを有し、排水口32cより下流側の径大部32bには、略上方向に溢水管路34が接続される円筒状の溢水管路接続部33aを設けるとともに、略下方向に洗濯機本体28の外に排水するための外部排水管35が接続される円筒状の外部排水管接続部33bを設け、溢水管路接続部33aと外部排水管接続部33bは、その中心軸が排水管路32の中心軸と交差しない位置に排水管路32と一体に形成したドラム式洗濯機としたものであり、コンパクトで構成部品が少ない排水管路を備えたドラム式洗濯機を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯物を収容した回転ドラムを回転駆動して洗い、すすぎ、脱水の各工程を行うドラム式洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のドラム式洗濯機について図5を用いて説明する。ドラム式洗濯機1は、水槽3内に回転ドラム2を収容し、回転ドラム2の回転軸4を水槽3の背面に設けられた軸受6で軸支すると共に回転軸4にドラム駆動のモータ7を連結して構成されている。この水槽3は洗濯機本体8内に前上がりの状態に傾斜させて配設され、洗濯機本体8の底部に取り付けられた左右一対の防振ダンパー9によって、その重量が弾性支持されている。洗濯機本体8の前面には、回転ドラム2への洗濯物の出し入れを行う際に開閉する蓋体5が設けられている。
【0003】
ここで、洗い工程後に排水される水は、水槽3の底部に配設された排水管路10において、排水弁(図示せず)で開閉される排水口12から下流側の排水管にて左右に二股に分岐され、一方は外部排水管13へ、もう一方は溢水管路14へと連結されているドラム式洗濯機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、この排水口12が、水槽3でなく、洗濯機本体8の底部に配設されている例もあるが同様である。
【特許文献1】特開2005−137645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の洗濯機の構成では、構成要素が多く、また、特に洗濯機本体の底部に配設する場合において、防振ダンパーや制御基板、排水液中の糸屑等を回収する回収ボックスなどがあり、スペースが十分に確保できないため、必要以上に複雑な排水管路を構成する必要があった。その結果、管路抵抗の増加に伴う排水性能の悪化による泡立ち状態からの脱水立上がり性能の低下、また、部品点数の増加による組立て作業性の低下や修理サービス性の低下、更にコストアップになるなど、多くの課題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、コンパクトで構成部品が少ない排水管路を備えたドラム式洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明のドラム式洗濯機は、略有底円筒形に形成された回転ドラムと、前記回転ドラムを、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸方向が水平または水平方向から下向き傾斜となるようにして内部に配設する水槽と、前記水槽を弾性的に支持する洗濯機本体と、前記回転ドラムを回転駆動するモータと、前記水槽の底部に連通し前記水槽内の洗濯水を排水する排水管路と、前記水槽の底部より所定の高さの位置に接続され前記水槽内に前記所定高さ以上の洗濯水を前記排水管路に排水する溢水管路とを備え、前記排水管路は、中心軸が略水平方向に延びる円筒状をなすとともに、前記排水管路の途中に設けた排水口を開閉する排水弁を有し、前記排水口より下流側の隣接部には、略上方向に前記溢水管路が接続される円筒状の溢水管路接続部を設けるとともに、略下方向に前記洗濯機本体の外に排水するための外部排水管が接続される円筒状の外部排水管接続部を設け、前記溢水管路接続部と外部排水管接続部は、その中心軸が前記排水管路の中心軸と交差しない位置に前記排水管路と一体に形成したものである。
【0008】
これによって、排水口周辺に外部排水管と溢水管路がコンパクトに集約・接合され、少ない構成部品で省スペースにて構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排水口部に排水管路と溢水管路がコンパクトに集約・接合され、少ない構成部品でシンプル、省スペースにて構成することができるため、排水性能や溢水性能の悪化を招くことなく、また部品点数の増加による組立て作業性の悪化や修理サービス性の悪化、更にはコストアップしない、高品質で低コストのドラム式洗濯機を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、有底円筒形に形成された回転ドラムと、前記回転ドラムを、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸方向が水平または水平方向から下向き傾斜となるようにして内部に配設する水槽と、前記水槽を弾性的に支持する洗濯機本体と、前記回転ドラムを回転駆動するモータと、前記水槽の底部に連通し前記水槽内の洗濯水を排水する排水管路と、前記水槽の底部より所定の高さの位置に接続され前記水槽内に前記所定高さ以上の洗濯水を前記排水管路に排水する溢水管路とを備え、前記排水管路は、中心軸が略水平方向に延びる円筒状をなすとともに、前記排水管路の途中に設けた排水口を開閉する排水弁を有し、前記排水口より下流側の隣接部には、略上方向に前記溢水管路が接続される円筒状の溢水管路接続部を設けるとともに、略下方向に前記洗濯機本体の外に排水するための外部排水管が接続される円筒状の外部排水管接続部を設け、前記溢水管路接続部と外部排水管接続部は、その中心軸が前記排水管路の中心軸と交差しない位置に前記排水管路と一体に形成したことにより、排水口周辺部に排水管路と溢水管路がコンパクトに集約・接合され、少ない構成部品でシンプル、省スペースにて構成することができるため、排水性能や溢水性能の悪化を招くことなく、また部品点数の増加による組立て作業性の悪化や修理サービス性の悪化、更にはコストアップしない、高品質で低コストのドラム式洗濯機を実現できる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明において、溢水管路接続部と外部排水管接続部は、略同一径でその中心軸が略同一線上にあり、かつ、その内径部の少なくとも一部が、排水管路の開口部の下流側の隣接部の内径部とオーバーラップするように構成したことにより、シンプルな金型構造で排水管路を成型することができ、溢水管路接続部と外部排水管接続部が略同一径でその中心軸が略同一線上にあるため、溢水管路における管路抵抗も少なく、金型構造もシンプルになり、略水平方向にずらすことで排水弁に阻害されないで、溢水管路の断面積を確保し、十分な溢水流量を得ることができる。
【0012】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、溢水管路接続部および外部排水管接続部の内径部と、排水管路の開口部の下流側の隣接部の内径部とのオーバーラップ量は、その連接開口部の開口面積が、前記排水管路の開口部の開口面積より大きくなる寸法としたから、水槽内からの洗濯水を排水する排水管路の管路抵抗を少なくすることができ、排水管路の断面積を確保し、十分な溢水流量を得ることができる。
【0013】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明において、水槽の底部と排水管路の間に設けられ内部に収容されたフィルタにより排水された洗濯水中の異物や糸屑を回収する回収ボックスをさらに備え、前記回収ボックスは、前記排水管路と一体に形成したことにより、さらに少ない構成部品で、既述の効果を得ることができるので、さらに低コストのドラム式洗濯機を実現できる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1におけるドラム式洗濯機の断面図、図2および図3は、同ドラム式洗濯機における排水口周辺の部分構成図、図4は、同ドラム式洗濯機における排水口周辺の部分斜視図である。
【0016】
ドラム式洗濯機21は、水槽23内に回転ドラム22を収容し、回転ドラム22の回転軸24を水槽23の背面に設けられた軸受26で軸支すると共に回転軸24にドラム駆動のモータ27を連結して構成されている。この水槽23は洗濯機本体28内に前上がりの状態に傾斜させて配設され、洗濯機本体28の底部に取り付けられた左右一対の防振ダンパー29によって、その重量が弾性支持されている。また、洗濯機本体28の前面には、回転ドラム22への洗濯物の出し入れを行う際に開閉する蓋体25が設けられている。
【0017】
また、水槽23の底部23aには、蛇腹状のゴムホース30の一端が接続され、そのゴムホース30の他端は、内部にフィルタ(図示せず)を収容しそのフィルタにより排水された洗濯水中の異物や糸屑を回収する回収ボックス31の背面に一体に形成した回収ボックス流入口31aに接続されている。さらに回収ボックス31の側面には、中心軸が略水平方向(ドラム式洗濯機21の正面側から見て横方向)に延びた円筒状の排水管路32が接続されている。回収ボックス31と排水管路32は、一体に成型されている。
【0018】
排水管路32には、回収ボックス31に接続する径小部32aと、その反対側の径大部32bが設けられ、径小部32aと径大部32bの繋ぎ部分が排水口(排水管路32の開口部)32cをなしている。径大部32bの内部には、ゴム等成型された排水弁32dが設けられ、ギアドモータ(図示せず)の駆動により伸縮する。排水弁32dが延びた状態においては、図2に示すように、径小部32aと径大部32bの繋ぎ部分の排水口32cを閉塞する状態となっている。一方、排水弁32dが縮んだ状態においては、図3に示すように、径小部32aと径大部32bの繋ぎ部分の排水口32cは開放された状態となっている。
【0019】
一方、水槽23の前面部23bには、水槽23の底部23aより所定の高さ位置Aに、溢水管路34の一端が接続され、水槽23内に所定高さ以上の洗濯水が給水された場合、その溢れた洗濯水が溢水管路34に溢水され排水されるように構成している。
【0020】
さらに、排水管路32には、排水口32cの下流側の隣接部である径大部32bに、略上方向に円筒状に延びた溢水管路接続部33aと、略下方向に円筒状に延びた外部排水管接続部33bとが設けられている。溢水管路接続部33aには、溢水管路34の他端が接続され、外部排水管接続部33bには、洗濯機本体28の外に排水するための外部排水管35が接続されている。
【0021】
溢水管路接続部33aと外部排水管接続部33bとは、略同一径でその中心軸が略同一線上にあり、その中心軸が径大部32bの中心軸と交差しない位置で、かつ、その内径部の少なくとも一部が、径大部32bの内径部とオーバーラップするように構成している。この構成により、径大部32b内と、溢水管路接続部33aおよび外部排水管接続部33b内とが、連接開口部33cを介して連通するように構成している。なお、オーバーラップ量は、連接開口部33cの開口面積が、排水口32cの開口面積より大きくなる寸法としている。
【0022】
以上のように構成した排水管路32まわりの構成の動作、作用を説明する。使用者は、蓋体25を開き、洗濯物を回転ドラム22内に投入した後、再度蓋体25を閉じ、スタートボタン(図示せず)を操作することで一連の洗濯を開始させる。
【0023】
洗い工程が開始すると、給水弁(図示せず)が開放され、水槽23内に洗濯水が給水される。その際、万が一、給水弁の故障により、洗い行程の所定水位に達しても給水が停止しない場合が発生したとしても、水槽23の前面部23bに接続された溢水管路34から洗濯水が溢れ出ることで、水槽23の底部23aより所定の高さ以上に洗濯水が水槽内に溜まらないようにしている。この溢水管路34を介して溢れ出た水は、溢水管路接続部33bから真下の外部排水管接続部33bに流れ落ち、さらに外部排水管35へと流れ、洗濯機本体28の外に排水される。このとき、外部配水管接続部33aと溢水管路接続部33bが略同一径でその中心軸が略同一線上にあるため、管路抵抗が少なく、また、溢水管路接続部33aと外部排水管接続部33bとは、その中心軸が径大部32bの中心軸と交差しない位置にずれていることにより、排水口32cを閉塞した状態にある排水弁32dの側壁を流れることで管路抵抗が少なく、スムーズな排水が可能である。
【0024】
また、正常に給水が終了し、洗い工程が実行された後は、排水工程が実行される。この排水工程においては、ギアドモータ(図示せず)の駆動により排水弁32dが縮んだ状態となり、排水口32cが開放される。このように、排水口32cが開放されると、水槽32内の洗濯水は、ゴムホース30を介して回収ボックス31に流れ込み、フィルタにより排水された洗濯水中の異物や糸屑が回収された後、排水管路32の径小部32aに流れ込む。その後、排水口32cを通り、径大部32bから連接開口部33cを抜けて、外部配水管接続部33aへ流れ、外部排水管35へと流れ、洗濯機本体28の外に排水される。このとき、連接開口部33cの開口面積は、排水口32cの開口面積より大きくなるようにしているので、管路抵抗が少なく、スムーズな排水が可能である。
【0025】
以上の構成により、排水経路、溢水経路の管路抵抗も少なく、排水口の周辺部に各接続部をコンパクトに集約することができる。
【0026】
そして、排水管路32まわりの構成は、図4に示すように、比較的容易に一体成形とすることが可能であり、よって、更に少ない構成部品(低コスト)で、排水性能や溢水性能の悪化を招くことなく、また部品点数の増加による組立て作業性の悪化や修理サービス性の悪化、更にはコストアップしない、高品質で低コストのドラム式洗濯機を実現できる。
【0027】
なお、上記実施の形態1および2においては、水槽が洗濯機本体内に前上がりの状態に傾斜させて配設した構成で説明したが、水槽が洗濯機本体内に水平方向に配設した構成であっても、同等の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかるドラム式洗濯機は、シンプル・コンパクトな排水管路が構成できるため、洗濯機全般、脱水機などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の構成図
【図2】同ドラム式洗濯機における排水口周辺の部分構成図
【図3】同ドラム式洗濯機における排水口周辺の部分構成図
【図4】同ドラム式洗濯機における排水口周辺の部分斜視図
【図5】従来のドラム式洗濯機における構成図
【符号の説明】
【0030】
28 洗濯機本体
32 排水管路
32b 径大部
32c 排水口
32d 排水弁
33a 溢水管路接続部
33b 外部排水管接続部
34 溢水管路
35 外部排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒形に形成された回転ドラムと、前記回転ドラムを、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸方向が水平または水平方向から下向き傾斜となるようにして内部に配設する水槽と、前記水槽を弾性的に支持する洗濯機本体と、前記回転ドラムを回転駆動するモータと、前記水槽の底部に連通し前記水槽内の洗濯水を排水する排水管路と、前記水槽の底部より所定の高さの位置に接続され前記水槽内に前記所定高さ以上の洗濯水を前記排水管路に排水する溢水管路とを備え、前記排水管路は、中心軸が略水平方向に延びる円筒状をなすとともに、前記排水管路の途中に設けた排水口を開閉する排水弁を有し、前記排水口より下流側の隣接部には、略上方向に前記溢水管路が接続される円筒状の溢水管路接続部を設けるとともに、略下方向に前記洗濯機本体の外に排水するための外部排水管が接続される円筒状の外部排水管接続部を設け、前記溢水管路接続部と外部排水管接続部は、その中心軸が前記排水管路の中心軸と交差しない位置に前記排水管路と一体に形成したドラム式洗濯機。
【請求項2】
溢水管路接続部と外部排水管接続部は、略同一径でその中心軸が略同一線上にあり、かつ、その内径部の少なくとも一部が、排水管路の開口部の下流側の隣接部の内径部とオーバーラップするように構成した請求項1に記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
溢水管路接続部および外部排水管接続部の内径部と、排水管路の開口部の下流側の隣接部の内径部とのオーバーラップ量は、その連接開口部の開口面積が、前記排水管路の開口部の開口面積より大きくなる寸法とした請求項1または2に記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
水槽の底部と排水管路の間に設けられ内部に収容されたフィルタにより排水された洗濯水中の異物や糸屑を回収する回収ボックスをさらに備え、前記回収ボックスは、前記排水管路と一体に形成した請求項1〜3のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−82087(P2010−82087A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253131(P2008−253131)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】