説明

ドラム式洗濯機

【課題】開閉蓋と回転ドラムの開口端とが異なった角度で傾斜した条件下で、開閉蓋、水槽開口端間を周方向に均等な形態で耐久性に優れた窓パッキングによってシールできるようにする。
【解決手段】回転ドラム2を、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸20が水平方向から下向き傾斜となるよう水槽3内に設置し、洗濯物を回転ドラム2に収容しモータ6で駆動することにより洗濯工程、すすぎ工程、脱水工程の少なくとも1つが行えるようにし、洗濯物の出し入れ口12の開閉蓋5は、閉じ状態で、回転軸20に直角な開口端2aと異なった角度で傾斜するように設け、水槽3の開口端3aは,回転ドラム2の開口端2aよりも前部側に突出して閉じた開閉蓋5とほぼ平行な傾斜にて対向し、開閉蓋5および水槽3の開口端3あの間を前後端13a、13b同士がほぼ平行な環状の窓パッキング13にてシールするようにし、上記の目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底円筒形に形成された回転ドラムを、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸方向が水平方向から下向き傾斜となるようにして水槽内に設置し、洗濯機筐体の前部に設けた開閉蓋を開いて洗濯物を回転ドラムに収容しモータで回転ドラムを駆動することにより洗濯工程、すすぎ工程、脱水工程の少なくとも1つが行えるドラム式洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなドラム式洗濯機で、開閉蓋や洗濯機筐体の前面部を、回転ドラムの開口端とは異なる角度で傾斜させたものが既に知られている(例えば、特許文献1参照)。このものは、回転ドラムはその回転特性上、回転軸線まわりに対称であることが必須で、開口端が回転軸線に直角な傾斜になるのに対し、開閉蓋を回転ドラムの開口端と異なった傾斜角とすることで、回転ドラムの開口端の傾斜に応じた開閉蓋や洗濯機筐体の前面部の下部の張り出しが抑制され、かつ、開いた開閉蓋の閉じ方向への自重のかかりが少なくなるとしている。一方、特許文献1に記載されたドラム式洗濯機は、異なった角度で傾斜する開閉蓋と水槽の開口端との間をシールするのに、それらの傾斜角の違いに応じた側面視テーパ形の間隔に見合った側面視形状をした環状の窓パッキングを用いている。
【特許文献1】特開2000−342880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、回転ドラムは、特に、高速回転する脱水時に、洗濯物の片寄りが主因となって水槽後部への片持ち軸受け部を中心として開口端側が振れ回るいわゆる摺りこぎ運動をしやすい。このような回転ドラムの運動に影響されてサスペンション機構によってフローティング支持された水槽は回転ドラムの振れ側に移動する振れ動きが周方向に連続する。このような回転ドラムの振れ回りや水槽の振れ動きは強く振動的で、かつ、振れ量は開口端で最大となる。この水槽の開口端の大きく強い振れ動きは開閉蓋との間をシールする環状の窓パッキングに伝わり、停止した開閉蓋との間でパッキングに圧迫や径方向の変形力を周方向に変位しながら振動的に複合して与えることになる。
【0004】
このため、特許文献1に記載の環状の窓パッキングのように、側面視テーパ形で断面形状、各断面部のボリュームが周方向に不同であると、前記のような振動的な外力を受けた時に生じる各種の変形、復元、応力、慣性といったことが不均一になり、負荷がボリュームの大きな局部に増幅して集中し早期損傷、早期破損の原因になる。
【0005】
本発明の主たる目的は、閉じ状態の開閉蓋と回転ドラムの開口端とが異なった角度で傾斜している条件下で、前記開閉蓋と水槽の開口端との間を周方向に断面およびボリュームがほぼ均等で耐久性に優れた環状の窓パッキングによってシールできるドラム式洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係るドラム式洗濯機は、有底円筒形に形成された回転ドラムを、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸方向が水平方向から下向き傾斜となるようにして水槽内に設置し、洗濯機筐体の前部に設けた開閉蓋を開いて洗濯物を回転ドラムに収容しモータで回転ドラムを駆動することにより洗濯工程、すすぎ工程、脱水工程の少なくとも1つが行えるドラム式洗濯機において、前記開閉蓋は、閉じ状態で、前記回転ドラムの回転軸に直角な開口端と異なった角度で傾斜するように設けられ
、前記水槽の開口端は、前記回転ドラムの開口端よりも前部側に突出して前記閉じた開閉蓋とほぼ平行な傾斜にて対向し、これら開閉蓋および水槽の開口端の間を前後端同士がほぼ平行な環状の窓パッキングにてシールするようにしたことを特徴としている。
【0007】
このような構成では、開閉蓋は洗濯物を回転ドラムに収容した後に閉じることにより、回転ドラムを回転させることで洗濯工程、すすぎ工程、脱水工程の少なくとも1つを行うのに、洗浄水、すすぎ水、脱水の飛沫などを外部に漏れ出るのを水槽の開口端との間をシールする環状の窓パッキングとの間で阻止する。この閉じた開閉蓋は回転ドラムの開口端と異なった角度で傾斜した関係となり、傾斜を持つことにより、洗濯物の出し入れ、洗濯、すすぎ、脱水に好適な十分な傾斜を持たせた回転ドラム内の外部からの透視や、開閉蓋を設けた出し入れ口を通じた回転ドラムに対する洗濯物の出し入れが特に不便にならないようにしながら、傾斜を抑えられる。また、開閉蓋と回転ドラムの開口端とは前記のような傾斜角度に違いを持ちながら、水槽の開口端は開閉蓋と平行な傾斜を有してそれらの間を前後端が平行な環状の窓パッキングによってシールできるようにするので、窓パッキングは断面形状および各断面部のボリュームが周方向に均等なものでよくなる。
【0008】
それには、前記開閉蓋は、回転ドラムの開口端と、垂直面との間の角度で傾斜していることを特徴とするのが好適でとなる。
【0009】
この場合において、前記洗濯機筐体は、前面がほぼ垂直に形成されたことを特徴とすることができる。
【0010】
このような構成では、上記に加え、さらに、開閉蓋が、回転ドラムの開口端と垂直面との間の角度で傾斜していることが、開閉蓋の回転ドラムの開口端との角度差を抑えられるのに併せ、洗濯機筐体のほぼ垂直な前面との角度差をも抑えて、垂直な洗濯機筐体前面に対する飛び出しまたはおよび窪みの量を抑えられる。
【0011】
上記において、さらに、前記水槽は、その胴部の前部側に前記回転ドラムの開口端とほぼ平行に内径側に向く肩部を有し、この肩部から前記閉じた開閉蓋とほぼ平行な位置まで周方向に異なる高さとした立ち上がり壁を有して開口端を形成し、この立ち上がり壁の立ち上がり端部に前記窓パッキングの後端部を装着したことを特徴とすることができる。
【0012】
このような構成では、上記に加え、さらに、水槽が胴部前部側で回転ドラムの開口端とほぼ平行に内径側に向く肩部を設けて回転ドラムの胴部側の必要前部域を覆って回転する回転ドラムに対する外部からの安全を図りながら、水槽の開口端を前記肩部からの周方向に高さが異なった立ち上がり壁により開閉蓋とほぼ平行にして前後端が平行な窓パッキングを開閉蓋とのシールのために必要なバックアップ位置にて支持することができる。
【0013】
上記において、さらに、前記肩部と立ち上がり壁とがなす周方向段差部に、その段差範囲内にほぼ収まる嵩の錘を取り付けたことを特徴とすることができる。
【0014】
このような構成では、上記に加え、さらに、錘は水槽の振動を受けてその振動エネルギを分散して減衰するために用いられるが、水槽の最も動きの大きい前端部となる、前記肩部と立ち上がり壁とがなす周方向段差部に設けることで、振動の抑制効率を高められるし、錘がほぼ段差部内に収まる嵩であることにより、錘が水槽と共に窓パッキングを変形させながら振動的に移動するときの窓パッキングとの相対移動によっても、窓パッキングと干渉するのを回避することができる。特に、段差が大きくなる部分ではそこに設ける錘の嵩を段差に見合って大きくして問題がなく周方向の単位長さに対する重量を高められる。
【0015】
上記において、さらに、前記水槽の開口端と前記回転ドラムの開口端との隙間は、それ
らの傾斜角度差に見合った側面視幅を有する環状覆い部材で覆うようにしたことを特徴とすることができる。
【0016】
このような構成では、上記に加え、さらに、水槽の開口端と回転ドラムの開口端との隙間を覆う環状の覆い部材が、水槽および回転ドラムの開口端間の角度差に見合った側面視幅を有して、側面視テーパ形となっていることにより、水槽および回転ドラムの開口端間が前記角度差によって側面視テーパ形をなした隙間を過不足なく塞いで覆うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のドラム式洗濯機によれば、回転ドラムの開口端と異なった角度で傾斜する開閉蓋と、前記回転ドラムを収容した水槽の開口端との間をシールして、洗浄水、すすぎ水、脱水の飛沫などを外部に漏れ出るのを阻止する環状の窓パッキングが、開閉蓋と水槽の開口端とをほぼ平行にしたことで、前後端同士がほぼ平行な形態にて前記シールができ、窓パッキングはその断面形状および各断面部のボリュームが周方向に均等なものとなるので、振れ動く水槽の開口端と停止している開閉蓋との間で圧迫や変形力を周方向の変位を伴い繰り返し受けるときの負荷が周方向に均等化して局部に増幅して集中することはなく、早期に損傷したり破損したりせず長寿命化が実現する。
【0018】
上記に加え、さらに、開閉蓋は、回転ドラムの開口端と、垂直面との間の角度で傾斜していることで、洗濯物の出し入れ、洗濯、すすぎ、脱水に好適な十分な傾斜を持たせた回転ドラム内の外部からの透視や、開閉蓋を設けた出し入れ口を通じた回転ドラムに対する洗濯物の出し入れが特に不便にならないようにしながら、傾斜を抑えられるので使用に便利である。
【0019】
上記に加え、さらに、開閉蓋が、回転ドラムの開口端と垂直面との間の角度で傾斜して、回転ドラムの開口端との角度差および洗濯機筐体のほぼ垂直な前面との角度差を共に抑えられ、後者によって、垂直な洗濯機筐体前面、従って洗濯機筐体を前面同士が揃うようにビルトインした家具をも含む垂直な前面に対する飛び出しまたはおよび窪みの量を抑えられるので、体裁がよくなる。
【0020】
上記に加え、さらに、水槽は胴部前部側で内径側に向く肩部により回転ドラムの胴部側の必要前部域を回転ドラムの開口端とほぼ平行に無駄スペースなく覆って回転する回転ドラムに対する外部からの安全を図りながら、肩部からの周方向に高さが異なる立ち上がり壁によって開口端を開閉蓋とほぼ平行にし、かつ前後端が平行な窓パッキングを開閉蓋とのシールのために必要なバックアップ位置にて支持し、必要最小限のボリュームとした窓パッキングにて十分なシールを確保することができる。
【0021】
上記に加え、さらに、錘は水槽の最も動きの大きい肩部と立ち上がり壁とがなす周方向段差部に設けて振動の抑制効率を高めながら、錘は段差部内にほぼ収まる嵩として水槽と共に振動的に移動するときの窓パッキングとの相対移動時に窓パッキングと干渉しそれを損傷させるようなことがない。特に、段差が大きくなる部分ではそこに設ける錘の嵩を段差に見合って大きくして問題がなく周方向の単位長さに対する重量を高め、振動の抑制効果を高められる。
【0022】
上記に加え、さらに、水槽の開口端と回転ドラムの開口端との隙間を覆う環状の覆い部材が側面視テーパ形となって、水槽および回転ドラムの開口端間が前記角度差によって側面視テーパ形をなした隙間を過不足なく塞ぎ覆うので、覆い部材の材料に無駄なく洗濯物が水槽および回転ドラムの開口端間に挟み込まれるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯機につき図1〜図7を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載の内容を限定するものではない。
【0024】
図1、図2に示す本実施の形態のドラム式洗濯機1は、図1に示すように、有底円筒形に形成された回転ドラム2を、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸20の方向が水平方向から下向き傾斜となるようにして、サスペンションによりフローティング支持した水槽3内に設置し、洗濯機筐体4の前部に設けた開閉蓋5を開いて洗濯物を回転ドラム2に収容しモータ6で回転ドラム2を駆動することにより洗濯工程、すすぎ工程、脱水工程の少なくとも1つが行える。開閉蓋5は図1〜図3に示すように、洗濯物を外部から透視する透明なガラス板11を嵌め付けた窓7を有した蓋本体8と、この蓋本体8の前面に当てがわれた前域または周辺を残した必要透視域を透明とした蓋カバー9とからなっている。蓋本体8は、蓋枠8aがポリプロピレンで成形され、裏枠8bがさらに耐薬品性が高いポリプロピレンで成形されて、ガラス板11をその周辺部で挟み込み、図3に示すようにねじ66によりねじ固定している。蓋カバー9は透明なABSで成形されたものとしている。
【0025】
ところで、本実施の形態のドラム式洗濯機1は、閉じた開閉蓋5は図1に示すように、回転ドラム2の開口端2aと異なった角度で後部側に傾斜、従って後傾した関係とし、開閉蓋5が傾斜を持つことにより、洗濯物の出し入れ、洗濯、すすぎ、脱水に好適な十分な傾斜を持たせた回転ドラム2内の外部からの透視や、開閉蓋5設けた出し入れ口12を通じた回転ドラム2に対する洗濯物の出し入れが特に不便にならないようにする。このために、水槽3の開口端3aと閉じた開閉蓋5との間をシールする環状の蓋パッキング13が、特許文献1に記載の環状の窓パッキングのように、側面視テーパ形で断面形状、各断面部のボリュームが周方向に不同になるのでは、水槽3の開口端3aで特に大きくなる振動的な外力を受けた時の負荷がボリュームの大きな局部に増幅して集中し早期損傷、早期破損の原因になる。
【0026】
これに対応すべく、開閉蓋5と水槽3の開口端3aとの間を周方向に断面およびボリュームがほぼ均等で耐久性に優れた環状の窓パッキング13によってシールできるようにするのに、開閉蓋5が、閉じ状態で、図1に示すように、回転ドラム2の回転軸20に直角な開口端2aと異なった角度で傾斜する関係において、水槽3の開口端3aは、回転ドラム2の開口端2aよりも前部側に突出して閉じた開閉蓋5とほぼ平行な傾斜にて対向し、これら開閉蓋5および水槽3の開口端3aの間を前後端13a、13b同士がほぼ平行な環状の窓パッキング13にてシールするようにしている。これにより、開閉蓋5は洗濯物を回転ドラム2に収容した後に閉じることにより、回転ドラム2を回転させることで洗濯工程、すすぎ工程、脱水工程の少なくとも1つを行うのに、洗浄水、すすぎ水、脱水の飛沫などを外部に漏れ出るのを、水槽3の開口端3aとの間をシールする環状の窓パッキング13との間で阻止することができる。また、開閉蓋5と回転ドラム2の開口端2aとは前記のような傾斜角度に違いによる特長を持ちながら、水槽3の開口端3aは開閉蓋5と平行な傾斜を有してそれらの間を前後端13a、13bが平行な環状の窓パッキング13によって前記シールができるようにするので、窓パッキング13は断面形状および各断面部のボリュームが周方向に均等なものでよくなる。
【0027】
以上の結果、回転ドラム2の開口端2aと異なった角度で傾斜する開閉蓋5と、回転ドラム2を収容した水槽3の開口端3aとの間をシールして、洗浄水、すすぎ水、脱水の飛沫などを外部に漏れ出るのを阻止する環状の窓パッキング13が、開閉蓋5と水槽3の開口端3aとをほぼ平行にしたことで、前後端13a、13b同士がほぼ平行な形態にて前記シールができ、窓パッキング13はその断面形状および各断面部のボリュームが周方向
に均等なものとなるので、振れ動く水槽3の開口端3aと停止している開閉蓋5との間で圧迫や変形力を周方向の変位を伴い繰り返し受けるときの負荷が周方向に均等化して局部に増幅して集中することはなく、早期に損傷したり破損したりせず長寿命化が実現する。
【0028】
ここで、上記前後端13a、13bは、開閉蓋5との圧接端と水槽3の開口端3aへの装着端を意味し、後端13bは水槽3の開口端3a外周の環状凹部3bに弾性的に装着されて凹部3b前面側の内向きフランジ3cの前面に着座する装着座部13b1をなし、前端13aは開閉蓋5の蓋本体8背面の内周側の連続した環状面5aに圧着する圧着リップ13a1および蓋本体8の窓7の内周に密嵌するシールリップ13a2をほぼ直角断面の二股状に形成している。蓋パッキング13全体としては前記装着座部13b1のフランジ3cの幅方向ほぼ中央位置とシールリップ13a1、13a2の二股状連結部との間を繋ぎ部13cで繋いだ形態とするのに併せ、繋ぎ部13cが、装着座部13b1の立ち上がり径に対し二股状連結部への繋がり径を小さくしたことを利用した、装着座部13b1から断面M字状をなして前部側へやや外方斜め向きになるよう一方の足部が立ち上がったM字部13c1と、このM字部13c1の非立ち上がり側他方の端部からの前部側に折り返して前記二股状連結部にシールリップ13a2に開閉蓋5の軸線14と平行に繋がる折り返し部13c2とを有したものとし、閉じた開閉蓋5と水槽3の開口端3aにおけるフランジ3cとの間で蓋パッキング13が必用なシール圧を自身の弾性により発揮して、しかも、M字部13c1が静止した開閉蓋5に圧接した前端13a2側に対する水槽3の開口端3aへ装着された後端13bの水槽3の開口端3aと共に振れ動くことに柔軟に対応する弾性緩衝部として働くようにしている。
【0029】
ところで、開閉蓋5は、図1に示すように、回転ドラム2の開口端2aと、垂直面との間の角度で傾斜していることになるが、洗濯機筐体4は、前面4aがほぼ垂直に形成されたものとしている。これにより、開閉蓋5が、回転ドラム2の開口端2aと垂直面との間の角度で傾斜していることが、開閉蓋5の回転ドラム2の開口端2aとの角度差を抑えられるのに併せ、洗濯機筐体4のほぼ垂直な前面4aとの角度差をも抑えて、垂直な洗濯機筐体前面4aに対する飛び出しまたはおよび窪みの量を抑えられる。これは、洗濯機筐体4を前面同士が揃うようにビルトインした図1に仮想線で一部を示すような各種の家具14をも含む垂直な前面に対する傾斜による飛び出しまたはおよび窪みの量を抑えられるので、家具および機器双方の体裁がよくなる。
【0030】
また、図示する例では、水槽3は、その胴部31の前部側に回転ドラム2の開口端2aとほぼ平行に内径側に向く肩部32を有し、この肩部32から閉じた開閉蓋5とほぼ平行な位置まで周方向に異なる高さとした立ち上がり壁33を有して開口端3aを形成し、この立ち上がり壁33の立ち上がり端部に窓パッキング13の後端部13bを装着している。これにより、水槽3が胴部31前部側で回転ドラム2の開口端2aとほぼ平行に内径側に向く肩部32を設けて回転ドラム2の胴部21側の必要前部域を覆って回転する回転ドラム2に対する外部からの安全を図りながら、水槽3の開口端3aを肩部32からの周方向に高さが異なった立ち上がり壁33により開閉蓋5とほぼ平行にして前後端13a、13bが平行な窓パッキング13を開閉蓋5とのシールのために必要なバックアップ位置を、前記M字部13cを有した形態などにて満足し支持することができ、必要最小限のボリュームとした窓パッキング13にて十分なシールを確保することができる。
【0031】
さらに、肩部32と立ち上がり壁33とがなす周方向段差部34に、その段差範囲内にほぼ収まる嵩の錘15を図1、図5に示すようにねじ16により肩部32上の図1、図7に示す複数のボス部32aにねじ止めするなどして取り付けてある。このような錘15は、水槽3の振動を受けてその振動エネルギを分散して減衰するために用いられるが、水槽3の最も動きの大きい前端部3aとなる、肩部32と立ち上がり壁33とがなす周方向段差部34に設けたことで、振動の抑制効率を高められる。また、錘15が段差部34内に
ほぼ収まる嵩であることにより、錘15が水槽3と共に窓パッキング13を変形させながら振動的に移動するときの窓パッキング13との相対移動によっても、窓パッキング13と干渉するのを回避することができ、窓パッキング13を損傷させるようなことがない。特に、段差部34の段差が大きくなる上部などではそこに設ける錘15の嵩を段差に見合って大きくして問題がなく周方向の単位長さに対する重量を高めて、振動の抑制効果を高められる。この錘15を設けた水槽3の肩部32の内側を通じ水槽3の外部から錘15を取り付ける肩部32のボス部32aを避けて配管された図1、図7に示す注水管30を通じて、図1に示す覆い部材17の注水口40を介し回転ドラム2内に仮想線で示すように噴射し洗濯物、特に衣類に効果的に注水できるようにしている。
【0032】
また、水槽3の開口端3aと回転ドラム2の開口端2aとの隙間は、それらの傾斜角度差に見合った側面視幅を有する環状覆い部材17で覆うようにしている。これにより、水槽3の開口端3aと回転ドラム2の開口端2aとの隙間Sを覆う環状の覆い部材17が、水槽3および回転ドラム2の開口端2a、3a間の角度差に見合った側面視幅を有して、側面視テーパ形となっていることにより、水槽3および回転ドラム2の開口端2a、3a間が前記角度差によって側面視テーパ形をなした隙間を過不足なく塞いで覆うことができ、覆い部材17の材料に無駄なく洗濯物が水槽3および回転ドラム2の開口端2a、3a間に挟み込まれるのを防止することができる。
【0033】
なお、回転ドラム2のその胴部21の前部に内径側に向く肩部22を有して胴部21よりも小径の開口端を形成することで、洗濯やすすぎに必要な水深を確保できるようにしているのに対し、水槽3の肩部32は、立ち上がり壁33の立ち上がり端から内径側に延びる前記フランジ3cの内週に、回転ドラム2の開口端2aと一定の隙間を保って対向する内周壁35を有した一部で二重周壁を構成する開口端3aとしている。これにより、開口端2a、3a間の隙間幅が周方向で違って、場所によって大きな隙間幅となるのを回避している。また、覆い部材17の前端は、水槽3の開口端3aの内周近くで開口端3aよりも前部側に若干突出して、水槽3の開口端3aの内周を回転ドラム2の開口端2a近くまでを覆い、かつ、その覆い部の内径が回転ドラム2の開口端2aの内径よりも小さくなるようにしてある。覆い部材17は水槽3の肩部32の内側面に形成したボス部32aにねじ18によってねじ止めしてある。
【0034】
さらに詳述すると、出し入れ口12は、図1、図2に示すような洗濯機筐体4の前面4aの上下部分を除く範囲を形成する金属製のボディーパネル41に形成している。このボディーパネル41を一枚板から成形するのでは、既述のようにほぼ垂直な前面4aに対し開閉蓋5を内側に傾斜させて設ける場合、開閉蓋5が出し入れ口12を閉じる閉じ域およびそのまわりの図1、図6に示すような環状域42が、その下部から上部に向けて、図1に示すようにボディーパネル41がなす前面4aから深く入り込んだ凹底部となり、上部域が深絞り加工部になってしまう。それでは、洗濯機筐体4および開閉蓋5の支持に必要な強度を満足する厚さを持ったボディーパネル41の成形が難しくコスト高になる。これに対応するのに、本実施の形態では、ボディーパネル41は、前記環状域42に対応する環状のボディーパネル41bとその周辺の枠状のボディーパネル41aとに分割して形成し一体化するようにしている。これにより、ボディーパネル41は、絞り度が半減して容易かつ低コストに加工できるボディーパネル41a、41bの組み合わせによって得られる。
【0035】
これらボディーパネル41a、41bの一体化は各種溶接、かしめ、鋲止め、ねじ止めなど、どのようにもできるが、図示例ではスポット溶接部43にて一体化している。この一体化のために、環状のボディーパネル41bは、内周に前記蓋パッキング15と圧接するように後部側に向く環状膨らみ部41b1を前部側に溝をなして形成し、この環状膨らみ部から周辺に平坦に延びた後上部側で大きな曲面をなし下部側で屈曲して立ち上がる外
周壁41b2を持ち、この外周壁41b2の前端に外向きのフランジ部41b3を形成したものとし、枠状のボディーパネル41aは洗濯機筐体4の前面4a形成域に環状域42の外周部に対応する凹陥周壁41a1を形成し、この凹陥周壁41a1の後端縁に前記フランジ部41b3に後方から当てがう内向きのフランジ部41a2を形成したものとし、これらフランジ部41a3、41a2の重なり部を前記スポット溶接部43が示す周方向複数個所でのスポット溶接に供するようにしている。
【0036】
ここで、環状なボディーパネル41bの左右一方の側に図6に示すヒンジユニット51を前部側から当てがいねじ52によりねじ止めして取り付け、このヒンジユニット51によって開閉蓋5を開閉できるように支持し、他方の側に図3に示す開閉蓋5の係合片5aをロック窓53aに受入れてロックし開閉蓋5を閉じ状態に係止する、蓋閉じ検知スイッチ付きの蓋ロック部53、およびこれのロックを解除する蓋開きボタン54を前部側から当てがいねじ55、56によってそれぞれねじ止めし装備している。これらヒンジユニット51は特開2005−143794号公報などで、蓋ロック部53および蓋開きボタン54は特開2005−137508号公報などでそれぞれ知られたものでよく、ここでは特に詳述しない。
【0037】
さらに、枠状のボディーパネル41aは、図6に示すように、洗濯機筐体4の前面4aを形成する矩形部は周壁41a3を有した浅いボックス型で、このボックス型の上部に環状の凹陥周壁41a2が前記環状域42の幅寸法程度で丸く張り出した形状をなし、環状のボディーパネル41bは厚く、枠条のボディーパネル41aは薄くした板厚の組み合わせで、それらボディーパネル41a、41bの前記重ねスポット溶接構造および立体形状が合わさって必要強度を満足し、面積の大きなボディーパネル41aの板厚を薄くできた分だけ洗濯機筐体4が軽量化し低コスト化する。
【0038】
また、ボディーパネル41の前記ヒンジユニット51、蓋ロック部53および蓋開きボタン54を装備する環状域42は、図3に示すように蓋開きボタン54を除き、樹脂製の環状なカバーパネル44で覆って外装し、カバーパネル44を図1、図3に示すようにねじ45により環状のボディーパネル41bに周方向複数個所でねじ止めしている。これにより、カバーパネル44を前部側に外すと、ボディーパネル41に装備したヒンジユニット51、蓋ロック部53および蓋開きボタン54が露出させられるので、それらの補修や交換のメンテナンスができる。
【0039】
さらに、洗濯機筐体4の前面4aは、ボディーパネル41aと、その上部および天板57間を塞ぐ樹脂製のトップマークユニット58と、ボディーパネル41aの下部を着脱できるように塞ぐ樹脂製の開閉パネル59とで形成し、トップマークユニット58は、スタート、停止のスイッチキー61や各種モードの設定操作部62、液晶表示部63、表示ランプなどを配置した操作面としている。ここに、カバーパネル44およびトップマークユニット58は共に樹脂成形品であって、互いが上下に隣接し合う対向面44a、58aは共に表面に直角をなして続くように成形でき、それらを図1、図2に示すように隙間なく突き合わせられる。これによって、洗濯機筐体4の前面4aの上部を形成する横長な樹脂面に、これに上部が食い込んだ形で中央側に向け後部側に傾斜した樹脂面が隙間なく異なった色で連続した特異な外観としながら、このように連続したカバーパネル44およびトップマークユニット58の、材質の違う金属製のボディーパネル41aとの対向面44b、58bが、開閉パネル59の対向面59aと共に、ボディーパネル41aの側周壁41a3や凹陥周壁41a1と隣接し合うのに、それら側周壁41a3や凹陥周壁41a1を曲げ加工したことによる丸みを持ったコーナ部が隙間をなす突き合わせ部をなして、それらの表面の存在、独立性を強調する外観構成を実現している。
【0040】
カバーパネル44およびトップマークユニット58の突き合わせは、トップマークユニ
ット58がボディーパネル41aの凹陥周壁41a2の前端に被さって実現している。また、この被さり構造は、ボディーパネル41aの上部にトップマークユニット58を前部側から嵌め付けて装着し、ボディーパネル41aの側周壁41a3の前端に被さるようにして実現している。従って、ボディーパネル41aの取り外しは、トップマークユニット58の取り外しを優先して行わないとできない。これに対応してトップマークユニット58は、ボディーパネル41aの側周壁41a3とその外側に設けた洗濯機筐体4側の固定壁64間に上下壁58a、58aを前部から嵌め込み、それら上下壁58a、58aに外向きに形成した逆止突起58cを、上下壁58a、58bの弾性を利用して、側周壁41a3および固定壁64に形成した係止孔65に弾性係合させることで抜け止し、この抜けどめ力に打ち勝つ取り外し力にてボディーパネル41aを簡単に取り外せるようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0041】
回転ドラムを傾斜して設置したドラム式洗濯機で、回転ドラムの開口端と開閉蓋とが異なった角度で傾斜していても、開閉蓋および水槽の開口端との間をシールする蓋パッキングを、その前後端間が平行で、周方向に断面および断面ボリュームがほぼ均等な、耐久性の高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯機の内部構造を示す断面図である。
【図2】同ドラム式洗濯機の正面側から見た外観の斜視図である。
【図3】同ドラム式洗濯機の出し入れ口を持ったボディーパネル出し入れ口を開いた状態の開閉蓋とをヒンジユニットで連結した状態で示す一部斜視図である。
【図4】同ドラム式洗濯機の開閉蓋を取り外した状態で示す要部の正面図である。
【図5】同ドラム洗濯機の水槽の、肩部と、肩部内周から立ち上がって水槽の開口端を形成し窓パッキングの後端を装着する立ち上がり壁と、がなす段差部を利用して錘を設けた部分を示す正面図である。
【図6】同ドラム洗濯機のボディーパネルの組み合わせ構造を示す正面図である。
【図7】同ドラム式洗濯機の水槽の開口端に窓パッキンを装着した状態で錘を取り外して示した斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 洗濯機本体
2 回転ドラム
2a 開口端
3 水槽
3a 開口端
4 洗濯機筐体
4a 前面
5 開閉蓋
6 モータ
7 窓
13 窓パッキング
13a 前端
13b 後端
15 錘
16 ねじ
20 回転軸
31 胴部
32 肩部
33 立ち上がり壁
34 段差部
44 カバーパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒形に形成された回転ドラムを、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸方向が水平方向から下向き傾斜となるようにして水槽内に設置し、洗濯機筐体の前部に設けた開閉蓋を開いて洗濯物を回転ドラムに収容しモータで回転ドラムを駆動することにより洗濯工程、すすぎ工程、脱水工程の少なくとも1つが行えるドラム式洗濯機において、
前記開閉蓋は、閉じ状態で、前記回転ドラムの回転軸に直角な開口端と異なった角度で傾斜するように設けられ、前記水槽の開口端は、前記回転ドラムの開口端よりも前部側に突出して前記閉じた開閉蓋とほぼ平行な傾斜にて対向し、これら開閉蓋および水槽の開口端の間を前後端同士がほぼ平行な環状の窓パッキングにてシールするようにしたことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
前記開閉蓋は、回転ドラムの開口端と、垂直面との間の角度で傾斜していることを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項3】
前記洗濯機筐体は、前面がほぼ垂直に形成されたことを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
前記水槽は、その胴部の前部側に前記回転ドラムの開口端とほぼ平行に内径側に向く肩部を有し、この肩部から前記閉じた開閉蓋とほぼ平行な位置まで周方向に異なる高さとした立ち上がり壁を有して開口端を形成し、この立ち上がり壁の立ち上がり端部に前記窓パッキングの後端部を装着したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
前記肩部と立ち上がり壁とがなす周方向段差部に、その段差範囲内にほぼ収まる嵩の錘を取り付けたことを特徴とする請求項4に記載のドラム式洗濯機。
【請求項6】
前記水槽の開口端と前記回転ドラムの開口端との隙間は、それらの傾斜角度差に見合った側面視幅を有する環状覆い部材で覆うようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−94262(P2010−94262A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267196(P2008−267196)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】