説明

ドラム式洗濯機

【課題】洗濯とは別に槽洗浄コース等を運転する時間と電力を不要にする。
【解決手段】水槽3内に回転可能に設けられたドラム4と、前記ドラムを回転駆動するモータ9と、前記水槽に給水する給水装置10と、前記水槽内の洗濯水を排水する排水装置22と、前記水槽の内面を洗う槽洗浄装置15と、洗い、すすぎ、脱水の各工程を制御する制御手段23とを備え、前記制御手段は、前記ドラム内に洗濯物が入れられている洗濯中に、前記槽洗浄装置により前記水槽の内面を洗うようにしたことにより、洗濯中に水槽3の内面に付着した汚れを洗い流すことができ、水槽3の内面を清浄に保つことができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の洗濯物を洗うドラム式洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドラム式洗濯機は、回転可能なドラムを収容する水槽内に洗剤を溶解させた洗濯水を溜め、ドラムに投入された洗濯物を洗濯水で濡らしながらドラムを回転させて、濡れた洗濯物をドラム内の上方から下方へ落下させる、所謂叩き洗いによって洗濯がおこなわれるようにしている。このとき、水槽内に溜められた洗濯水は、ドラムの回転によってドラムとの隙間を上方へ持ち上げられるため、洗濯水中の汚れや洗剤の一部がドラムの外面および水槽の内面に付着する。
【0003】
水槽内面の上部に付着した汚れや洗剤は、洗い工程を含めた以降の洗濯工程中で、洗い流されることがなく、洗濯後も付着した状態となる。したがって、これらの付着した汚れや洗剤は、時間の経過とともに雑菌やカビ等が発生する原因となり、また、異臭の原因となる。
【0004】
そこで、ドラムの高速回転時に、ドラムの外周面に直接当たるように給水し、飛散した水で水槽内面の汚れを洗い流すようにすることが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図9は、特許文献1に記載された従来のドラム式洗濯機の概略構成図である。上面に開閉自在な上蓋51を設けた筐体52内に水槽53を設け、水槽53内に回転可能なドラム54を設けている。衣類等の洗濯物は、上蓋51を開きドラム54の開口部(図示せず)からドラム54内に投入される。洗濯水は、給水弁55から給水ホース56を経て給水口57よりドラム54の外面に当たりながら注水され、所定量の洗濯水が水槽53の底部に溜められる。
【0006】
水槽53の内面およびドラム54の外周面を洗浄する槽洗浄時は、給水弁55を開いて給水口57から給水するとともに、ドラム54を脱水時と同じ回転数で高速回転させる。水槽53内で給水とドラム54の高速回転をおこなうことにより、給水された水をドラム54の回転で飛散させて、水槽53の内面に衝突させる。この水の衝突により、水槽53の内面やドラム54の外周面に付着している洗剤や汚れが除去されるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−122292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、洗濯コースの終了後に槽の洗浄がおこなわれるため、槽洗浄コース等を運転する時間と電力が、洗濯とは別に必要になるという問題があった。また、洗濯機が使用されていないときに槽洗浄をおこなうときは、槽洗浄コース等を運転する操作が必要であり、使い勝手が悪いという問題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、洗濯中に、水槽の内面に付着した汚れを洗い流して清浄に保つことができるドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明のドラム式洗濯機は、水槽内に回転可能に設けられたドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記水槽に給水する給水装置と、前記水槽内の洗濯水を排水する排水装置と、前記水槽の内面を洗う槽洗浄装置と、洗い、すすぎ、脱水の各工程を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記ドラム内に洗濯物が入れられている洗濯中に、前記槽洗浄装置により前記水槽の内面を洗うようにしたものである。
【0011】
これによって、水槽の内面に付着する汚れを洗濯中に洗い流すことができ、水槽の内面を清浄に保つことができるとともに、洗濯とは別に槽洗浄コース等を運転する時間と電力を不要にし、槽洗浄コース等を操作する不便を解消することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のドラム式洗濯機は、水槽の内面に付着した汚れを洗濯中に除去し、清浄にすることができるとともに、洗濯とは別に槽洗浄コース等の運転を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の概略構成図
【図2】同ドラム式洗濯機のドラムの前面側から見た要部断面図
【図3】同ドラム式洗濯機の噴出口の構成図
【図4】同ドラム式洗濯機の他の例の噴出口の構成図
【図5】同ドラム式洗濯機の要部断面図
【図6】同ドラム式洗濯機の動作を示すタイムチャート
【図7】本発明の実施の形態2におけるドラム式洗濯機の動作を示すタイムチャート
【図8】本発明の実施の形態3におけるドラム式洗濯機の要部断面図
【図9】従来のドラム式洗濯機の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、筐体内に弾性支持された水槽と、前記水槽内に回転可能に設けられたドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記水槽に給水する給水装置と、前記水槽内の洗濯水を排水する排水装置と、前記水槽の内面を洗う槽洗浄装置と、洗い、すすぎ、脱水の各工程を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記ドラム内に洗濯物が入れられている洗濯中に、前記槽洗浄装置により前記水槽の内面を洗うようにしたことにより、洗濯中に水槽の内面に付着した汚れを洗い流すことができ、水槽の内面を清浄に保つことができるとともに、洗濯とは別に槽洗浄コース等を運転する時間と電力を不要にし、槽洗浄コース等を操作する不便を解消することができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御手段は、洗い工程で洗濯物から洗剤と汚れを含んだ洗濯水を除去する中間脱水工程と、前記洗い工程に続いてすすぎ工程を実行し、前記中間脱水工程と、前記すすぎ工程の少なくともいずれかの工程で、槽洗浄装置による槽洗浄動作を実行するようにしたことにより、中間脱水工程の槽洗浄動作では、ドラムの高速回転によって洗濯物から洗濯水が脱水され、洗剤と汚れを含んだ洗濯水が水槽内へ飛散した後に、水槽の内面を洗浄することができ、水槽の内面に付着して間のない汚れを効果的に除去することができる。また、すすぎ工程の槽洗浄動作では、注水時に水槽の内面を洗浄することによって、ドラムの高速回転によって洗濯物から洗剤と汚れを含んだ洗濯水が水槽内へ飛散した後に、水槽の内面を洗浄することができるとともに、水槽の内面を洗浄した洗浄水を、すすぎ水を溜める前に水槽から排出することができ、すすぎ効果を高めることができる。
【0016】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の制御手段は、洗い工程で洗濯物から洗剤と汚れを含んだ洗濯水を除去する中間脱水工程を実行し、前記中間脱水工程において、ドラムの回転数が設定最高回転数に到達し、モータの通電を停止してから前記ドラムの回転が停止するまでの間に、槽洗浄装置による槽洗浄動作を実行するようにしたことにより、ドラムの高速回転によって洗濯物から洗濯水が脱水され、洗剤と汚れを含んだ洗濯水が水槽内へ飛散した後に、水槽の内面を洗浄することができ、水槽の内面に付着した汚れを効果的に除去することができる。また、ドラムの回転にともなう運動エネルギーの一部に、注水による制動力を作用させることができ、回転速度の低下を速めて次のすすぎ工程へ迅速に移行することができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明の制御手段は、洗い工程後にすすぎ工程を複数回実行し、最終のすすぎ工程の注水時に、槽洗浄装置による槽洗浄動作を実行するようにしたことにより、洗い工程から最終のすすぎ工程の直前までに付着した汚れを、洗濯の最後に実行される最終すすぎ工程時に注水される水によって洗い流すことができ、効果的に水槽の汚れを洗浄することができる。
【0018】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明の制御手段は、洗い工程後にすすぎ工程を複数回実行し、前記すすぎ工程の間に実行する中間脱水工程時に、槽洗浄装置による槽洗浄動作を実行するようにしたことにより、ドラムの高速回転によって洗濯物をすすいだ洗濯水が水槽内へ飛散した後に、水槽の内面を洗浄することができ、水槽の汚れを効果的に除去することができる。
【0019】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明の制御手段は、槽洗浄装置による槽洗浄動作時に排水装置を開放し、水槽の内面を洗浄した洗浄水を排出した後、すすぎ水を注水するようにしたことにより、水槽を洗浄した洗浄水に含まれる汚れ等が、すすぎ工程で洗濯物に付着することがなく、洗濯中の槽洗浄を実現することができ、洗濯とは別に槽洗浄コース等を運転する時間と電力を不要にし、槽洗浄コース等を操作する不便を解消することができる。
【0020】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明の槽洗浄装置は、一端を水槽に接続した給水路と、前記給水路を通して水を前記水槽内に注水する噴出口とを有し、前記噴出口から前記水槽内に注水し、前記水槽の内面を洗浄するようにしたことにより、ドラムの外周上面に向けて注水した水は、ドラムの外周上面に衝突して水槽の内面に跳ね返り、水槽内面の取れにくい部分に付着した汚れを洗い流すことができる。
【0021】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、ドラム内に乾燥用空気を供給する送風手段と、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を制御する制御手段を設け、前記ドラム内で洗濯物を乾燥させる乾燥機能を備えたことにより、洗濯した洗濯物を続けて乾燥させた場合でも、乾燥運転を実行する前に水槽の内面に付着した洗剤や汚れを除去することができ、乾燥運転によって汚れ物質の固着を防止することができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるドラム式洗濯機の概略構成図、図2は、同ドラム式洗濯機のドラムの前面側から見た噴出口の位置を示す要部断面図、図3は、同ドラム式洗濯機の噴出口の構成図、図4は、同ドラム式洗濯機の他の例の噴出口の構成図、図5は、同ドラム式洗濯機の要部断面図、図6は、同ドラム式洗濯機の動作を示すタイムチャートである。
【0024】
図1〜図6において、筐体1内にダンパ2等で弾性支持した水槽3が設けられている。水槽3内には有底円筒状のドラム4が回転可能に設けられ、その回転軸4aは角度θ(例えば、5〜20度)で前上がりに傾斜している。ドラム4の内周側面には回転軸4a方向であるドラム4の回転中心に向かって内方へ突出させた複数のバッフル5と、水槽3内と連通する多数の小孔6が設けられ、前面側には衣類等の洗濯物を出し入れする開口部7が設けられている。開口部7の周囲には、ドラム4が回転する際に洗濯物の偏り等によって発生する振動を低減するためのバランサ8が設けてあり、開口部7を取り囲むように環状に形成している。
【0025】
水槽3の後面にドラム4を回転駆動するモータ9が取り付けられている。モータ9はブラシレス直流モータで構成され、インバータ制御によって回転速度が自在に変化させることができるようになっている。
【0026】
水槽3内に洗濯水を給水する給水装置としての給水弁10は、給水路11中に設けた洗剤を投入する洗剤投入ケース12を通して注水口13から水槽3内に給水し、水槽3内に供給された洗濯水は小孔6からドラム4内に流入する。注水口13は、給水路11aの一端を水槽3の上部に接続した出口部に設けられ、ドラム4の後面側で水槽3内と連通している。
【0027】
洗剤投入ケース12と水槽3を連通する給水路11aに分岐弁14を設けている、給水弁10から給水路11を通して水槽3内に供給される洗濯水は、洗剤投入ケース12の下流側に設けた分岐弁14によって水槽3と連通する給水路11aが切り替えられ、注水口13と噴出口15aのいずれか一方から水槽3内に供給される。
【0028】
噴出口15aは、ドラム4の回転軸4aを通る略鉛直線イ上に設けられ、この鉛直線イ上に位置するドラム4の外周上面の頂部4bに対向するように水槽3に設けてあり、槽洗浄装置15を構成している。噴出口15aは、ドラム4の前面から後面までの深さ方向に対して、前面側に設けた開口部7寄りに配設されるとともに、ドラム4の外周上面に向かって注水するように設けられている。
【0029】
槽洗浄装置15は、給水弁10と連通接続した給水路11の一端を洗剤投入ケース12を介して水槽3に接続し、この給水路11を通して噴出口15aから水槽3内に水を注水する。注水された水は、ドラム4の外周上面の頂部4bを中心に衝突して、水槽3の内面上部の前方(ロ部)へ反射するように形成している(矢印ハ)。噴出口15aが水槽3の内面上部の前方(ロ部)に近い位置に配設しているため、水槽3内面の水がかかりにくいロ部に付着している洗剤や汚れを勢いよく洗い流すことができる。
【0030】
また、噴出口15aは、小孔15bを横並び状に複数個設け、図2に示すように、小孔15bの並び方向を、ドラムの4の回転軸4aを通る鉛直線イと略直交する方向、すなわち、ドラム4の開口部7側から見て左右方向に配設している。図4は、噴出口15aの他の例を示したもので、細長いスリット15c状に形成し、スリット15cの長手方向を、ドラム4の回転軸4aを通る鉛直線イと略直交する方向、すなわち、ドラム4の開口部7側から見て左右方向に配設している。
【0031】
なお、噴出口15aは、小孔15bまたはスリット15cのいずれであっても、ドラム4の外周面に沿って円弧状に設けると、ドラム4の外周面までの距離を略同等にすることができ、衝突した水を水槽3の内面上部の前方(ロ部)へ均等に反射させることができる。なお、槽洗浄装置15は、給水弁10から給水される洗濯水を、洗剤投入ケース12を経由せずに噴出口15aへ導くようにしてもよい。
【0032】
水槽3内の洗濯水は、循環水路16に設けた循環ポンプ17によってドラム4内へ循環させることができる。水槽3の底部に循環水路16と連通した洗濯水を吸い込む吸い込み部18を設け、ドラム4の前面側に設けた開口部7の下部に、ドラム4内に向けて洗濯水が吐出されるように吐出部19を設けている。
【0033】
循環水路16には、循環ポンプ17の上流側、すなわち、吸い込み部18と循環ポンプ17の間に開閉弁20を設けている。また、吸い込み部18と開閉弁20の間の循環水路16に排水路21を接続し、排水路21には排水装置としての排水弁22を設け、水槽3内の洗濯水を機外へ排水可能に構成している。
【0034】
循環ポンプ17を駆動して、水槽3内の洗濯水を吐出部19からドラム4内に吐出させるときは、排水弁22を閉じて開閉弁20を開くことによって、水槽3内の洗濯水を吸い込み部18から循環水路16内に吸い込み、吐出部19からドラム4内に吐出し循環させることができる。
【0035】
筐体1内に設けた制御手段23は、モータ9、給水弁10、分岐弁14、循環ポンプ17、開閉弁20、排水弁22等を駆動し、洗い、すすぎ、脱水等の各工程を制御する。
【0036】
なお、筐体1の前面に設けた開閉自在な扉24を開くことにより、ドラム4の前面側に設けた開口部7から洗濯物を出し入れすることができる。
【0037】
以上のように構成されたドラム式洗濯機について、以下その動作、作用を説明する。洗濯工程は、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程を含み、これらの工程が順次実行される。乾燥機能を備えたドラム式洗濯乾燥機の場合は、脱水工程に続けて乾燥工程を実行し、洗った洗濯物をドラム4内で乾燥させることが可能である。
【0038】
筐体1の前面側に開閉自在に設けた扉24を開いて開口部7からドラム4内に洗濯物を投入し、筐体1の上面前部に設けた操作部25の電源スイッチ(図示せず)をオンし、スタートスイッチ(図示せず)を操作して運転を開始すると、ドラム4内に投入された洗濯物の量を検知する布量検知手段(図示せず)によって洗濯物の量が検知され、洗濯物の量に応じて設定された所定量の水が給水される。
【0039】
給水弁10から給水路11を通って洗剤投入ケース12に入った洗濯水は、洗剤投入ケース12の中の洗剤を溶かして給水路11aから注水口13側に切り替えられた分岐弁14を通り、ドラム4の後面側に設けられた注水口13から水槽3内に供給される。水槽3内に供給された洗濯水は小孔6からドラム4内に流入する。このとき、開閉弁20と排水弁22は閉じられている。
【0040】
注水時は、例えば、20rpm程度の低速でドラム4を回転駆動し、投入された洗濯物を水槽3内に供給され洗濯水で濡らす。所定量の洗濯水が供給されると、給水弁10と分岐弁14が閉じられる。ドラム4は、モータ9によって洗濯物が叩き洗いされる回転数、例えば、45rpmで正逆回転駆動するとともに、循環ポンプ17を駆動し、水槽3の底部に溜まった洗剤の溶解した洗濯水を吸い込み部18から循環水路16に吸い込んで、吐出部19からドラム4内に向けて吐出し、洗い工程を実行する。
【0041】
洗い工程で攪拌動作がおこなわれているときは、汚れを含んだ洗濯水は、ドラム4の回転とともに水槽3の上部まで持ち上げられ、水槽3の内面に付着した状態となる。攪拌動作が終了すると、開閉弁20を閉じるとともに排水弁22を開いて、水槽3内の洗濯水が排出される。
【0042】
洗い工程の排水に続いて行われる中間脱水では、排水弁22を開いた状態のままとし、ドラム4の回転数を段階的に上昇させていく。本実施の形態では、先ず、50rpm程度にドラム4を回転させ、洗濯物がドラム4の中で偏っていないことを確認した後、100rpmまで上昇させて所定時間維持した後、さらに400rpmまで上昇させて高速で回転させる。
【0043】
ドラム4の回転数を400rpmで一旦維持した後、さらに900rpmまでドラム4の回転数を上昇させる。中間脱水で設定された最高回転数に到達するとモータ9への通電を停止し、惰性回転により徐々に回転数が低下していく。ドラム4が高速で回転すると、洗濯物に含まれている洗剤や汚れを含んだ洗濯水は、遠心力によって小孔6から水槽3内に飛散する。
【0044】
このとき、分岐弁14を噴出口15a側へ切り替えるとともに、給水弁10を開いて清浄な水を、給水路11から洗剤投入ケース12、給水路11a、分岐弁14を経て噴出口15aから注水する。噴出口15aから注水した水はドラム4の外周上面に衝突し、跳ね返った水によって水槽3の内面上部の前方に付着した洗剤や汚れが洗い流され、水槽3の内面を洗い流した洗浄水は、開かれている排水弁22から排水路21を経て機外へ排出される。
【0045】
ドラム4の回転が停止した後、すすぎ工程に進む。すすぎ工程は複数回(例えば2回)おこなわれ、最初のすすぎ1工程は、洗い工程と同様に、注水、攪拌および排水の3つの工程から構成されている。注水工程は、給水弁10を開状態とし、分岐弁14は、噴出口15aに水が導かれるように開かれ、噴出口15aからドラム4の上部に注水される。
【0046】
ドラム4は20rpm程度の低速で回転している。噴出口15aから回転しているドラム4の上面前部に水が注水され、ドラム4の上面前部に衝突した水は、水槽3の内面上部の前方へ跳ね返り、洗い工程で水槽3の内面上部に付着した洗剤や汚れが洗い流される。洗剤や汚れを洗い流した水は、開かれている排水弁22から機外へ排出される。
【0047】
所定時間T1経過後、分岐弁14を注水口13側に切り替えるとともに、排水弁22を閉じ、注水口13から水槽3内に所定量のすすぎ水が溜められるまで注水をおこなう。分岐弁14を、噴出口15a側から注水口13側に切り替えるまでの所定時間T1、すなわち、噴出口15aからドラム4の上面前部に注水する槽洗浄動作時間は、洗濯物の汚れの程度や、洗い工程時の泡立ちの程度等に応じて調整することが好ましい。
【0048】
例えば、水槽3内の洗濯水の濁度等を検知する濁度検知手段(図示せず)等を設け、洗濯水の濁度に応じて予め設定された時間で切り替えることが可能であり、水槽3の内面上部に付着する洗剤や汚れの程度に応じて効果的に洗い流すことができる。
【0049】
次の攪拌工程では、洗い工程時の攪拌工程と同様に、排水弁22、分岐弁14および給水弁10は閉じられ、ドラム4は約45rpmで正転、反転の動作を繰り返して洗濯物のすすぎをおこなう。攪拌工程では、開閉弁20を開いて循環ポンプ17を動作させ、水槽3の底部に溜まった洗濯水を循環水路16を通して吐出口19から吐出させることによって、すすぎ効果を高めることができる。
【0050】
次の排水工程で水槽3内の洗濯水を排出し、すすぎ1工程が終了する。次のすすぎ2工程との間で中間脱水がおこなわれる。すすぎ1工程とすすぎ2工程間の中間脱水工程は、洗い工程の排水後におこなわれた中間脱水工程と同様に、排水弁22、分岐弁14、給水弁10が設定され、同様の槽洗浄動作がおこなわれる。また、ドラム4も同様の回転駆動
がおこなわれる。
【0051】
中間脱水終了後、すすぎ2工程がおこなわれ、すすぎ1工程と同様に、注水、撹拌、排水の各工程が同様の動作で順次実行され、注水工程では、最初に噴出口15aから注水されるように分岐弁14を開放し、噴出口15aからドラム4の上部に注水して槽洗浄動作をおこなう。
【0052】
噴出口15aから20rpm程度の低速で回転しているドラム4の上面前部に衝突した水は、水槽3の内面上部の前方へ跳ね返り、水槽3の内面上部前方の、取れにくい部分に付着している汚れを洗い流すことができる。
【0053】
槽洗浄装置15により、給水装置である給水弁10によって噴出口15aから水槽3内に注水し、水槽3の内面を洗浄する槽洗浄動作は、本実施の形態では、洗い工程の排水工程に続いて行われる中間脱水工程と、洗い工程の中間脱水工程に続いて実行されるすすぎ1工程の注水工程と、すすぎ1工程とすすぎ2工程の間に行われる中間脱水工程と、すすぎ工程の中間脱水工程に続いて実行されるすすぎ2工程の注水工程でおこなう例を示したが、少なくともいずれか1つの工程で実行するものであればよい。また、複数の工程で実行するようにしてもよい。
【0054】
以上のように、本実施の形態においては、筐体1内に弾性支持された水槽3と、水槽3内に回転可能に設けられたドラム4と、ドラム4を回転駆動するモータ9と、水槽3に給水する給水装置10と、水槽3内の洗濯水を排水する排水装置22と、水槽3の内面を洗う槽洗浄装置15と、洗い、すすぎ、脱水の各工程を制御する制御手段23とを備え、制御手段23は、ドラム4内に洗濯物が入れられている洗濯中に、槽洗浄装置15により水槽3の内面を洗うようにしたものであり、洗濯によって水槽3の内面に付着した汚れを、洗濯中に洗い流すことができ、水槽3の内面を清浄に保つことができるとともに、洗濯とは別に槽洗浄コース等を運転する時間と電力を不要にし、槽洗浄コース等を操作する不便を解消することができる。
【0055】
また、制御手段23は、洗い工程で洗濯物から洗剤と汚れを含んだ洗濯水を除去する中間脱水工程と、洗い工程に続いてすすぎ工程を実行し、中間脱水工程と、すすぎ工程の少なくともいずれかの工程で、槽洗浄装置15による槽洗浄動作を実行するようにしたものであり、中間脱水工程の槽洗浄動作では、ドラム4の高速回転によって洗濯物から洗剤と汚れを含んだ洗濯水が水槽3内へ飛散した後に、水槽3の内面を洗浄することができ、付着して間のない汚れを効果的に除去することができる。また、すすぎ工程の槽洗浄動作では、注水時に水槽3の内面を洗浄することによって、ドラム4の高速回転によって洗濯物から洗剤と汚れを含んだ洗濯水が水槽3内へ飛散した後に、水槽3の内面を洗浄することができるとともに、水槽3の内面を洗浄した洗浄水を、すすぎ水を溜める前に水槽3から排出することができ、すすぎ効果を高めることができる。
【0056】
また、制御手段23は、洗い工程後にすすぎ工程を複数回実行し、最終のすすぎ工程の注水時に、槽洗浄装置15による槽洗浄動作を実行するようにしたものであり、洗い工程から最終のすすぎ工程の直前までに付着した汚れを、洗濯の最後に実行される最終すすぎ工程時に注水される水によって洗い流すことができ、効果的に水槽3の汚れを洗浄することができる。
【0057】
また、制御手段23は、洗い工程後にすすぎ工程を複数回実行し、すすぎ工程の間に実行する中間脱水工程時に噴出口15aから注水し、槽洗浄装置15による槽洗浄動作を実行するようにしたものであり、ドラム4の高速回転によって洗濯物をすすいだ洗濯水が水槽3内へ飛散した後に、水槽3の内面を洗浄することができ、水槽3の汚れを効果的に除
去することができる。また、高速で回転している状態のドラム4に注水した水を衝突させることができ、水槽3の内面上部への跳ね返りが強くなって、水槽3の内面上部に付着した汚れを効果的に洗い流すことができる。
【0058】
また、制御手段23は、槽洗浄装置15による槽洗浄動作時に排水装置22を開放し、水槽3の内面を洗浄した洗浄水を排出した後、すすぎ工程で洗濯物をすすぐ水を注水するようにしたものであり、水槽3を洗浄した洗浄水に含まれる汚れ等が、すすぎ工程で洗濯物に付着することがなく、洗濯中の槽洗浄を実現することができ、洗濯とは別に槽洗浄コース等を運転する時間と電力を不要にし、槽洗浄コース等を操作する不便を解消することができる。
【0059】
なお、本実施の形態のドラム式洗濯機において、制御手段23により、洗い、すすぎ、脱水の各工程に加えて、乾燥工程を制御するように構成するとともに、ドラム4内に乾燥用空気を供給する送風手段(図示せず)を設け、ドラム4内で洗濯した洗濯物を引き続き乾燥させる乾燥機能を備えたものであり、洗濯した洗濯物を続けて乾燥させた場合でも、乾燥運転を実行する前に水槽3の内面に付着した洗剤や汚れを除去することができ、乾燥運転による水槽3内の温度上昇によって汚れ物質の固着を防止することができる。
【0060】
送風手段は送風ファンによって構成され、ドラム4内へ乾燥用空気を送風する。送風ファンによって送風する乾燥用空気は、ヒータ等で加熱し、衣類等の洗濯物の乾燥に適した温風にする。また、乾燥運転は、洗濯した洗濯物をドラム4内で引き続き乾燥させることができるほか、乾燥のみの運転も可能である。乾燥のみをおこなう場合は、洗濯運転中に槽洗浄がおこなわれており、水槽3が清浄化されている状態で乾燥運転をおこなうことができる。
【0061】
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施の形態におけるドラム式洗濯機の動作を示すタイムチャートである。本実施の形態の特徴は、中間脱水工程において、ドラム4の回転数が設定最高回転数に到達し、モータ9の通電を停止してからドラム4の回転が停止するまでの間に、槽洗浄装置15によって噴出口15aから注水し、水槽3の内面を洗浄する槽洗浄動作をおこなうようにしたものである。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0062】
洗い工程の排水に続いて行われる中間脱水工程と、洗い工程後に複数回実行されるすすぎ工程の間に実行する中間脱水工程時において、実施の形態1と同様に、排水弁22を開いた状態のままとし、ドラム4の回転数を段階的に上昇させていく。先ず、50rpm程度にドラム4を回転させ、洗濯物がドラム4の中で偏っていないことを確認した後、100rpmまで上昇させて所定時間維持した後、さらに400rpmまで上昇させて高速で回転させる。
【0063】
ドラム4の回転数を400rpmで一旦維持した後、さらに900rpmまでドラム4の回転数を上昇させる。中間脱水工程で設定された最高回転数に到達すると、モータ9への通電を停止し、惰性回転により徐々に回転数が低下していく。ドラム4が高速で回転すると、洗濯物に含まれている洗剤や汚れを含んだ洗濯水は、遠心力によって小孔6から水槽3内に飛散する。
【0064】
ドラム4の回転数が設定最高回転数である900rpmに到達すると、モータ9の通電を停止するとともに、分岐弁14が噴出口15a側へ切り替えられる。これにより、給水弁10が開いて清浄な水が、給水路11から洗剤投入ケース12、給水路11a、分岐弁14を経て噴出口15aから注水される。
【0065】
噴出口15aから注水した水はドラム4の外周上面に衝突し、跳ね返った水によって水槽3の内面上部の前方に付着した洗剤や汚れを洗い流され、水槽3の内面を洗い流した洗浄水は、開かれている排水弁22から排水路21を経て機外へ排出される。
【0066】
したがって、ドラム4の高速回転によって洗濯物から洗剤と汚れを含んだ洗濯水が水槽3内へ飛散した後に、水槽3の内面を洗浄することができ、汚れを効果的に除去することができる。
【0067】
また、モータ9への通電を停止した後に、噴出口15aから注水するようにしているので、ドラム4の回転にともなう運動エネルギーの一部に注水による制動力が作用し、噴出口15aから注水を開始してから回転速度の低下が速められた時間Δtで、ドラム4の回転が停止し、次のすすぎ工程へ迅速に移行することができる。
【0068】
また、複数回実行されるすすぎ1工程とすすぎ2工程の間に実行する中間脱水工程時においても同様に、モータ9の通電を停止した後に噴出口15aから注水し、槽洗浄動作がおこなわれるようにしている。
【0069】
なお、槽洗浄動作は、洗い工程の排水に続いて行われる中間脱水工程と、洗い工程後に複数回実行されるすすぎ工程の間に実行する中間脱水工程のいずれにおいても実行するようにしているが、いずれか一方で実行するようにしてもよい。
【0070】
(実施の形態3)
図8は、本発明の第3の実施の形態におけるドラム式洗濯機の要部断面図である。本実施の形態の特徴は、噴出口15aから注水した水が、ドラム4の外周上面に当たる入水角度∠Aを、ドラム4の外周面の傾斜角度∠B以下となるように設定したものである。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0071】
ドラム式洗濯機は、洗濯物の出し入れを容易におこなうことができ、かつ、少量の水で洗濯することができるように、ドラム4の回転軸4aを角度θ(例えば、5〜20度)で前上がりに傾斜させている。このため、水平軸に対するドラム4の外周面の傾斜角度∠Bよりも大きな入水角度で水がドラム4に当たっても、跳ね返った水を洗い流したい水槽3の前面上部(ロ部)に到達させることができない。
【0072】
本実施の形態は、ドラム4の回転軸4aを前上がりに傾斜させた構成において、噴出口15aから注水した水によって水槽3の前面上部(ロ部)を的確に洗浄することができるように、噴出口15aから注水した水(矢印ハ)がドラム4の外周上面に当たる入水角度∠Aを、ドラム4の外周面の傾斜角度∠B以下としたものであり、ドラム4の外周上面に衝突した水を、水槽3内面の上部前方へ的確に跳ね返すことができ、水槽3の内面上部の前方に付着した汚れを効果的に洗い流すことができる。
【0073】
なお、入水角度とは、図8に示すように、噴出口15aから注水した水の進行方向と、ドラム4の奥行き方向の外周上面との間で形成される角度のことである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかるドラム式洗濯機は、水槽の内面に付着した汚れを洗濯中に除去し、清浄にすることができるとともに、洗濯とは別に槽洗浄コース等の運転を不要にすることができるので、ドラム式洗濯機として有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 筐体
3 水槽
4 ドラム
9 モータ
10 給水弁(給水装置)
11 給水路
15 槽洗浄装置
15a 噴出口
22 排水弁(排水装置)
23 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に弾性支持された水槽と、前記水槽内に回転可能に設けられたドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記水槽に給水する給水装置と、前記水槽内の洗濯水を排水する排水装置と、前記水槽の内面を洗う槽洗浄装置と、洗い、すすぎ、脱水の各工程を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記ドラム内に洗濯物が入れられている洗濯中に、前記槽洗浄装置により前記水槽の内面を洗うようにしたドラム式洗濯機。
【請求項2】
制御手段は、洗い工程で洗濯物から洗剤と汚れを含んだ洗濯水を除去する中間脱水工程と、前記洗い工程に続いてすすぎ工程を実行し、前記中間脱水工程と、前記すすぎ工程の少なくともいずれかの工程で、槽洗浄装置による槽洗浄動作を実行するようにした請求項1記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
制御手段は、洗い工程で洗濯物から洗剤と汚れを含んだ洗濯水を除去する中間脱水工程を実行し、前記中間脱水工程において、ドラムの回転数が設定最高回転数に到達し、モータの通電を停止してから前記ドラムの回転が停止するまでの間に、槽洗浄装置による槽洗浄動作を実行するようにした請求項1または2記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
制御手段は、洗い工程後にすすぎ工程を複数回実行し、最終のすすぎ工程の注水時に、槽洗浄装置による槽洗浄動作を実行するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
制御手段は、洗い工程後にすすぎ工程を複数回実行し、前記すすぎ工程の間に実行する中間脱水工程時に、槽洗浄装置による槽洗浄動作を実行するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項6】
制御手段は、槽洗浄装置による槽洗浄動作時に排水装置を開放し、水槽の内面を洗浄した洗浄水を排出した後、すすぎ水を注水するようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項7】
槽洗浄装置は、一端を水槽に接続した給水路と、前記給水路を通して水を前記水槽内に注水する噴出口とを有し、前記噴出口から前記水槽内に注水し、前記水槽の内面を洗浄するようにした請求項1〜6のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項8】
ドラム内に乾燥用空気を供給する送風手段と、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を制御する制御手段を設け、前記ドラム内で洗濯物を乾燥させる乾燥機能を備えた請求項1〜7のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−85799(P2013−85799A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230490(P2011−230490)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】