ドラム式鍋による食材の炒め方法及び炒め機
【課題】食材の仕上がりへの影響を抑制することのできるドラム式鍋による食材の炒め方法及び炒め機を提供する。
【解決手段】横型のドラム式鍋3内に掻取り羽根5を備え、掻取り羽根5を回転させてドラム式鍋3内の食材の攪拌並びにドラム面3aに付着した食材を掻き取るドラム式鍋3による食材の炒め方法であって、掻取り羽根5を、ドラム面3aに羽根面5aが沿うようにセットして回転させ、掻取り羽根5を回転させて食材を下方から上方へ移動させると共に、掻取り羽根5の回転上昇と共に食材が羽根面5aを滑り乗り越えてドラム面3aの下部側で落下を行わせて落下距離を減少させることを特徴とする。
【解決手段】横型のドラム式鍋3内に掻取り羽根5を備え、掻取り羽根5を回転させてドラム式鍋3内の食材の攪拌並びにドラム面3aに付着した食材を掻き取るドラム式鍋3による食材の炒め方法であって、掻取り羽根5を、ドラム面3aに羽根面5aが沿うようにセットして回転させ、掻取り羽根5を回転させて食材を下方から上方へ移動させると共に、掻取り羽根5の回転上昇と共に食材が羽根面5aを滑り乗り越えてドラム面3aの下部側で落下を行わせて落下距離を減少させることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャーハンや焼きそば等の食材を炒めるために供するドラム式鍋による食材の炒め方法及び炒め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の炒め方法及び炒め機としては、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
この従来の炒め方法は、回転ドラム式鍋及び掻取り羽根を回転させて食材を下方から上方へ移動させると共に、該上方で食材を落下させる行程と、回転ドラム式鍋の回転を停止させ、掻取り羽根を回転させて停止中の回転ドラム式鍋の上方内面に付着した食材を掻き落とす行程とを備えたものである。
【0004】
このような炒め方法により、回転ドラム式鍋内面の食材の焦げ付きなどの付着を防止することができる等の効果を得ることができる。
【0005】
しかし、かかる炒め方法では、食材が上方へ移動してから下方へ落下するため、食材の仕上がりに影響し、特に壊れ易い食材には適用し難いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3169362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、食材が上方へ移動してから下方へ落下するため、食材の仕上がりに影響する点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、食材の仕上がりへの影響を抑制するため、横型のドラム式鍋内に掻取り羽根を備え、前記ドラム式鍋を加熱しつつ前記掻取り羽根を回転させて前記ドラム式鍋内の食材の攪拌並びに該ドラム式鍋内面に付着した食材を掻き取るドラム式鍋による食材の炒め方法であって、前記掻取り羽根を、前記ドラム式鍋内面に羽根面が沿うようにセットして回転させ、該掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えドラム式鍋内面の下部側で落下を行わせて落下距離を減少させることをドラム式鍋による食材の炒め方法の特徴とする。
【0009】
また、横型のドラム式鍋の内面に掻取り羽根を備え、前記ドラム式鍋を加熱しつつ前記掻取り羽根を回転させて前記ドラム式鍋内の食材の攪拌並びに該鍋内面に付着した食材を掻き落とすドラム式食材炒め機であって、前記掻取り羽根を前記横型のドラム式鍋の内面に羽根面が沿うようにセットし、該掻取り羽根を回転させて前記食材を下方から上方へ移動させると共に、該掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えドラム式鍋内面の下部側で落下を行わせて落下距離を減少させることをドラム式食材炒め機の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のドラム式鍋による食材の炒め方法及び炒め機は、上記構成であるから、食材の落下が抑制され、食材の仕上がりへの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ドラム式食材炒め機のドラム直交方向の断面図である。(実施例1)
【図2】ドラム式食材炒め機のドラム軸に沿った断面図である。(実施例1)
【図3】掻取り羽根平面図である。(実施例1)
【図4】回転ドラム式鍋の炒め機を示した正面図である。(参考例)
【図5】回転ドラム式鍋の炒め機の側面図である。(参考例)
【図6】回転ドラム式鍋の炒め機の要部を示した拡大垂直断面図である。(参考例)
【図7】連続炒め機の断面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0012】
食材の仕上がりへの影響を抑制するという目的を、掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えドラム式鍋内面の下部側で落下を行わせて落下距離を減少させることで実現した。
【実施例1】
【0013】
図1は、ドラム式食材炒め機のドラム直交方向の断面図、図2は、ドラム式食材炒め機のドラム軸に沿った断面図、図3は、掻取り羽根平面図である。
【0014】
図1〜図3のように、ドラム式食材炒め機1は、横型のドラム式鍋3の内面に掻取り羽根5を備え、ドラム式鍋3を加熱しつつ回転させ、掻取り羽根5を回転させてドラム式鍋内の食材の攪拌並びに該鍋内面に付着した食材を掻き落とす。
【0015】
ドラム式鍋3は、円筒形に形成され、一端に食材の投入、取り出し用の開口部7が形成され、後述の参考例のように回転駆動可能且つ加熱可能に構成されている。なお、開口部7は、両端に形成して一方を投入用、他方を取り出し用として構成することもできる。
【0016】
掻取り羽根5は、掻き取り軸11に取り付けられている。掻き取り軸11は、ドラム式鍋3内面であるドラム面3aに沿って旋回する支持部11aを備えている。掻取り羽根5は、支持部11aに取り付けられたブラケット13により取り付けられている。ブラケット13の先端には、取り付け部材15が軸17により回転自在に支持されている。
【0017】
取り付け部材15に、例えばフッ素樹脂等で形成された羽根尖端部19が支持され、この羽根尖端部19の基部側にステンレス製のカバー21の先端側が覆うように取り付けられて、羽根尖端部19及びカバー21が取り付け部材15にボルト20により締結固定され、羽根の主体が構成されている。カバー21の基端側は、支持部11aの外周部に至っている。したがって、掻取り羽根5の羽根尖端部19及びカバー21は、ドラム式鍋3のドラム面3aから掻き取り軸11の支持部11aに至って、幅Lが大きく形成され、食材を流すようにガイドする。この場合、幅Lは、ドラム面3aに沿った円弧上の長さで表している。
【0018】
ブラケット13には、スプリング23が支持され、取り付け部材15に弾接し、取り付け部材15を軸17回りに付勢している。この付勢により取り付け部材を介し掻取り羽根5の羽根尖端部19がドラム式鍋3のドラム面3aに弾接する。
【0019】
掻取り羽根5の羽根尖端部19がドラム式鍋3のドラム面3aに弾接する点を通る接線と羽根尖端部19とのなす角度αは、本実施例において30°或いは30°前後、例えば35°に設定され、ドラム式鍋3のドラム面3aに羽根面5aが沿うようにセットされ、羽根面5aのドラム面3aに接触しない方の端点と同点のドラム式鍋3のドラム面3aへの垂直投影点との高低差を低くすることができる。但し、羽根面5aとドラム式鍋3のドラム面3aとの高低差を低くすることができればよく、角度αは、60°〜30°の範囲で選択することができる。
【0020】
掻取り羽根5が回転角270°近辺に至ると、羽根面5aの面に沿った延長線は、ドラム式鍋3のドラム面3aの下部側で掻取り羽根5が位置する側の半円弧部Sの範囲内に指向する。実施例では、図1のように240°付近から半円弧部Sの範囲内に指向している。実際は、食事種類等で滑り始める回転角は異なり、この滑り始める回転角の範囲は、240°〜280°となる。また、滑り易い食材の場合、角度αが大きく60°等であっても、掻取り羽根5が回転角270°近辺に至ると、滑り始める。
【0021】
食材が掻取り羽根5上を滑った後は、その回転方向後縁からドラム面3a上へ落下する。即ち、羽根面5aの回転方向における端縁とドラム面3aの落下点の間を食材は自由落下する。落下点の範囲は、羽根面5aの面に沿った延長線が交差するドラム面3a上の点と羽根面5aの回転方向後縁から垂下させた垂直線が交差するドラム面3a上の点との間となる。この自由落下の高低差が食材の混合と食材が受ける衝撃の主要因子であり、この高低差を食材及び調理種類に応じて適度に調整することが重要である。
【0022】
この自由落下距離は羽根幅Lが0の場合は0となり、羽根を長くすると落下距離は長くなるが、ある点を越えると逆に減少し、対向するドラム面3aに掻取り羽根5の幅が達した場合に再び0となる。
【0023】
従って、掻取り羽根5の幅Lにより自由落下距離は変る。
【0024】
なお、回転角270°は、掻取り羽根5の回転角を意味するが、角度270°は、掻き取り軸11が図1において直上位置OからP、Qと回転し、Rに至った状態を示す。
【0025】
掻取り羽根5の回転方向の後部側には、移動する食材の流れを調整するガイド棒25が備えられている。ガイド棒25は、長尺棒25a及び短尺棒25bが交互に支持部11aに沿って配置され、ブラケット13に固定されている。なお、ガイド棒25を全て均一長さに形成することもできる。
【0026】
長尺棒25a及び短尺棒25bは、図2のようにドラム式鍋3の開口部7側に傾斜して指向し、それぞれ段階的な折れ形状に形成されている。なお、ガイド棒25は、食材によっては省略しても良く、チャーハンや豆腐が食材であるときは省略する。但し、投入されたごはん(炊飯された米)がパラパラしておらず、粘着性を有する場合は、ガイド棒25等を採用し、結着物の分割と反転落下が必要となる。
【0027】
このドラム式食材炒め機1は、後述する参考例と同様な羽根駆動装置とドラム駆動装置と加熱装置を備え、羽根駆動装置により掻き取り軸11を駆動し、掻取り羽根5をドラム式鍋3のドラム面3aに沿ってドラム軸周りに回転させる。また、ドラム駆動装置により、ドラム式鍋3をドラム軸周りに回転させる。ドラム式鍋3の回転方向は、掻取り羽根5の回転方向と逆方向である。
【0028】
但し、ドラム式鍋3の回転方向を掻取り羽根5の回転方向に一致させ、或いは回転させない構成にすることもできる。
【0029】
加熱装置は、ドラム式鍋3を加熱する。加熱の熱源は、ガスに限らず、電気、蒸気、電磁誘導等を適宜選択することができる。
[ドラム式鍋による食材の炒め方法]
ドラム式鍋3内に開口部7から食材、例えば焼きそば用の麺を投入する。
【0030】
羽根駆動装置により掻き取り軸11を駆動し、掻取り羽根5をドラム式鍋3のドラム面3aに沿ってドラム軸周りに回転させる。
【0031】
このとき、ドラム式鍋3は、加熱装置により加熱され、ドラム駆動装置により、掻取り羽根5の回転方向と逆方向に回転駆動される。
【0032】
こうして、掻取り羽根5を回転させて麺を下方から上方へ移動させると共に、掻取り羽根5の回転上昇と共に麺が羽根面5aを滑り乗り越えてドラム式鍋3のドラム面3aの下部側で掻取り羽根5が位置する側の半円弧部S上に流れるように移動する。なお、ドラム式鍋3のドラム面3aの下部側で掻取り羽根5が位置する反対側の半円弧部上に食材が多少落下することも許容するものである。
【0033】
角度αを30°或いは30°前後に設定した本実施例では、殆ど落下という衝撃を伴う現象はなく、半円弧部Sの上端であるほぼ水平位置(回転角270°)に掻き取り軸11が至った時に、麺が、掻取り羽根5の羽根面5a上を滑るように流れ始め、一端ガイド棒25にかかりながら、ガイド棒25のガイド作用により開口部7側へ偏向され、ドラム式鍋3のドラム面3a上に至ることができる。すなわち、掻取り羽根5からの食材の落下を、ドラム式鍋3の下部側で行わせることができる。
【0034】
炒め調理時、ドラム式鍋3は、反開口部7側が低くなるように傾斜調整される。この場合に、ガイド棒25のガイド作用が有効に働く。
【0035】
また、ドラム式鍋3の逆転により、加熱調理しながら麺と掻取り羽根5との相対速度を増大させ、慣性などによっても麺が掻取り羽根5上を滑り乗り越え易くなる。
【0036】
このように、掻取り羽根5の回転により上方へ移動し且つ下方へ流れて戻る動作により食材である麺を反転、混合しながらドラム式鍋3のドラム面3aに接触させ、加熱調理することができる。
【0037】
すなわち、特殊な羽根形状の採用により、掻取り羽根5の上昇回転位置に対する食材の落下開始点を下げると共に、落下時の衝撃および、食材と空気との接触を極小化した。
【0038】
更に、掻取り羽根5によるドラム面3aの掻取り回数を増やし、食材の保形成と品温上昇及び焦げ付き防止の問題を同時に解決できた。
【0039】
・食材の落下点を下げる(掻取り羽根をドラムに対し鋭角にセット)
即ち、掻取り羽根5の形状を、羽根5が進行方向に動く時、羽根5が食材を保持する角度設定から、食材が羽根5を乗り越え易い角度設定に変更し、羽根表面を滑り落ちるようになった。
【0040】
・落下のかなりの部分は羽根上を滑らせる
更に、ドラム式鍋3と掻取り羽根5の回転方向を向かい合わせに変更し、ドラム式鍋3上の食材と掻取り羽根5の相対速度を大きくつけ、食材は慣性にもよって、掻取り羽根5を簡単に乗り越え易くした。このため、落下開始位置が低くなり、羽根面5aを滑る間の抵抗もあり、自由落下の落差が小さくなり、従来よりもかなり小さな衝撃でドラム面3aに落下し、食材の混合と食材の被加熱部位を変更する事ができた。
【0041】
このようにして食材が羽根面5aからドラム面3aへ落下する距離が大幅に短縮されるので、空気との接触も少なくなり、水の蒸発による温度低下も極小化される。
【0042】
・掻取り回数の大幅増加
一方、このように食材への衝撃を少なくした状態で、掻取り羽根5はドラム式鍋3のドラム面3aを従来に比べ高速で掻取り、掻取り回数が大幅(数倍)に増加する。(羽根14rpm、ドラム7 rpmで同方向回転は、7rpm、対向回転は21 rpmで掻取る。)このようにして、掻取りによる焦げ付きの防止と食材の損損傷の防止が同時に達成された。
【0043】
・焼ソバなどの麺状食材の炒め
掻取り羽根5の形状は食材に応じて選択する。焼ソバなどの形状の場合は、上記のようなガイド棒25を櫛状に付けたものが食材流下時の反転・混合上好適である。掻取り羽根5を滑り降りてきた麺状の食材は、この適当な間隔を置いたガイド棒25に引っかかり、動きを停止した後、運動方向を変えて落下する(反転)。場所により、(実施例では、1個おきに) ガイド棒25の長さを変えることにより落下のタイミングをずらし、混合を促進する。更にドラム式鍋3は、内食材の軸方向の混合を促進するため、若干斜め方向にセットされている。
【0044】
掻取り羽根5の形状をフッ素樹脂の平板等、ドラム式鍋3のドラム面3aと接触しても傷をつけない材質とし、スプリング23で押し付け密着性を高めると共に、その後ろ側にステンレスのカバー21(平板)を設置し、一体の掻取り羽根5を形成させ、ドラム式鍋3のドラム面3aに対する接触角度を鋭角とするとともに、羽根5の回転方向をドラム式鍋3の回転方向と反対とし、相互の対向回転により羽根5がドラム面3aを掻き取るようにセットした。
【0045】
このようにすると、掻取り羽根5によりドラム面3aを持ち上げられた食材は270°付近で羽根5の平板面上を滑り落ち、羽根平板面の端より空中を落下し0度付近のドラム面3aに着地する。この時、落下直前、櫛形(曲がった複数の棒)により滑り方向に変化が与えられ、食材の反転・混合がおき、ドラム面3aには、新たに形成された食材の面が接触する。
【0046】
このようにして、羽根5よりの落下により食材を反転・混合しながらドラム面3aと接触させ炒め調理を行うことができる。
【0047】
従来の方式に比べ、この方式の利点は、食材が空中を落下する距離が僅少であるため、落下による食材の痛みが非常に少ない点がある。また、空気との接触も僅少となるため、落下中に空気との接触混合で生ずる、食材からの水の蒸発、食材の温度低下を少なくでき、炒め感の増加、品温を高めることができる。更に、ドラムと羽根を対向して回転させることにより壁面の掻取り回数を大幅に増やすことができ、焦げ付きを防止できる。更に焦げ付き防止効果により、壁温を従来の200-220℃より200-240℃まであげることができるようになり、更に、炒め感の増加、品温を高めることが可能となった。
・羽根の幅Lによる混合と衝撃の調整
羽根5の幅Lを短くすると、滑り落ちた食材の落下位置はQ-Rの角度の高い位置となり、落下したドラム面3aは最低部(180度)に比べ高い位置となり、食材の空間落下距離が短くなり、受ける衝撃が少なくなる。反面、落下による反転混合の効果が少なくなるので、幅Lは調理アイテムに応じて適宜選択すると良い。
【0048】
以上、本発明実施例の特徴は、以下の点にある。
(1)食材落下開始点を下げる。
(2)羽根5上を滑らせることで減速させると共に、自由落下距離を少なくする、
(3)ドラム面3aの落下位置が高い位置になる。
(4)ドラム式鍋3と羽根5との回転方向が反対なので、落下した食材が羽根5と反対方向120度位にまで運ばれ、伝熱面積を広げる効果もある。この点、従来の方法の範囲は180〜300度であったのに対し120〜270度に加熱ゾーンが広がる。
[参考例]
図4〜図6は、この発明の参考例にかかり、図4は、回転ドラム式鍋の炒め機を示した正面図、図5は、回転ドラム式鍋の炒め機の側面図、図6は、回転ドラム式鍋の炒め機の要部を示した拡大垂直断面図である。
【0049】
図4〜図6のように、横型の回転ドラム式鍋101は、正面側端部に先細テーパ部101aによって縮径された開口部101bを形成し、背面側に椀状の底部101cを形成し、外胴102内にこれと隙間を設けて同心に配置し、後述の駆動手段103である第1駆動装置103Aによって軸回りに回転するようにしてある。
【0050】
前記第1駆動装置103Aは、外胴102の後部に設けられたボックス104内に設置された電動機105と、この電動機105の回転をウオーム106を介して前記ボックス104の側面板に固定した軸受107に支持されて回転する可動ブラケット108の端部にキー結合されたウオームホイール109に伝達し、前記可動ブラケット108の突出端部108aを前記回転ドラム式鍋101の底部101c外面に熔着した外部ブラケット101dと連結することで、前記回転ドラム式鍋101を所望速度で回転するようにしている。
【0051】
前記外胴102は、回転ドラム式鍋101の前後方向の軸方向と直交する左,右傾動軸110によって、左,右脚111の上部に上下方向に傾動可能に軸支し、右方の脚111に公知の手動式の傾動操作機構112を設け、そのハンドル112aの回動操作により、回転ドラム式鍋101及び駆動手段103を内装したボックス104とを共に前下がりに傾動するようにしてある。
【0052】
前記回転ドラム式鍋101の下方には3〜4列など左右複数列のガスバーナ113を回転ドラム式鍋101の軸方向に沿って配置し、前記ガスバーナ113は外胴102に固定し、バルブ(図示省略)を介してガス供給源に接続してある。
【0053】
前述した構成は、駆動手段103を除いては、従来の回転ドラム式炒め機とほぼ同様であるが、本発明の参考例の炒め機は、図3に示すように、回転ドラム式鍋101内部に軸中心を一致させた回転軸114が、前記底部101cの中心部を貫通してメタル軸受け114aに支持されて回転可能に片側支持(後部支持)によって装着されると共に、前記回転軸114の端部は前記駆動手段103内装のボックス104に取付けられた前記可動ブラケット108の中心孔108bに取付けたメタル軸受108cを貫通し、前記ボックス104内に突出し、ボックス104内部に設置された第2駆動装置103Bと連結される。なお、本発明では変形例として回転ドラム式鍋101の開口部101bに着脱自在の蓋部材を取付け、前記片側支持の回転軸114を前後側で両側支持とする構造とし、大型の回転ドラム式鍋101に適応させることができる。
【0054】
前記第2駆動装置103Bは電動機115からの出力を減速機115aに連結したチエーン116を介して前記回転軸114の後端部114bに取付けたチエーンスプロケト117に伝達され、前記回転軸114が回転するようになっている。
【0055】
前記回転ドラム式鍋101の内部に貫通した回転軸114は、底部101cの近傍で軸方向がクランク状に折り曲げられ、折り曲げ水平軸114c部分には所定の間隔で、複数の掻取り羽根118が取り付けられている。前記掻取り羽根118は、前記回転ドラム式鍋101の内面と圧接する偏平な板状の食材の掻取り部118aと、この掻取り部118aの上端中央に取付けた取付杆118bと、この取付杆118bが嵌合する前記折り曲げ水平軸114c部分に一端が固着された中空の連結杆118cとからなり、両者は前記連結杆118cの中空内に配設されたコイルばね119を介して軸方向の伸縮が可能になっており、前記コイルばね119によって、前記掻取り部118aが前記回転ドラム式鍋101の内面と圧接するようになっている。
【0056】
また、前記掻取り羽根118の掻取り部118aを回転ドラム式鍋101の軸線と平行に、長手(前後)方向を一線状に揃えて配設してもよいが、回転ドラム式鍋101の軸線と掻取り部118aの関係を少しの角度で交叉した捩じれの状態にさせることによって、回転軸114の回転と併せて食材に送りを与えることが可能となる。一方、互いの掻取り部118aの先端側と後端側とが互いに重複するような位置関係の状態に配設することが好ましい。
【0057】
そして、本願発明実施例1のドラム式食材炒め機1が、参考例の回転ドラム式鍋による食材炒め機に、横型のドラム式鍋3が、同回転ドラム式鍋101に、掻取り羽根5が、同掻取り羽根118に、掻き取り軸11が、同回転軸114に、支持部11aが、同折り曲げ水平軸114cにそれぞれ対応する。また、ドラム駆動装置が、第1駆動装置103Aに、羽根駆動装置が、第2駆動装置103Bに、加熱装置が、ガスバーナ113にそれぞれ対応する。この場合、第1駆動装置103Aは、ドラム式鍋3を逆方向に回転させるように駆動される。
【0058】
したがって、上記のように、本願発明実施例のドラム式鍋3も、参考例と同様に加熱しながら回転させ、掻き取り軸11を回転駆動することができる。ドラム式鍋3を掻取り羽根5に対し逆方向に回転させることができる。
【0059】
図7は、連続炒め機の断面図である。
【0060】
本願発明のドラム式食材炒め機は、連続炒め機27として構成することもできる。
【0061】
連続炒め機27は、図示しないローラ上にドラム式鍋3Aの底部両側が支持され、ローラの駆動によりドラム軸周りに回転する。ドラム式鍋3Aには、食材投入用の開口部として食材投入口7a、食材取り出し用の開口部として食材取り出し口7bが備えられている。ドラム式鍋3A全体は、ドラム軸が食材取り出し口7b側へ若干傾斜するように配置設定されている。
【0062】
掻き取り軸11Aは、ドラム軸芯上に配置され、図外のモータにより回転駆動される。掻き取り軸11Aに支持した掻取り羽根5Aを、上記掻取り羽根5の構成とすることで、連続炒め機27として構成することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ドラム式食材炒め機
3、3A ドラム式鍋
3a ドラム面(ドラム式鍋内面)
5、5A 掻取り羽根
7 開口部
7b 食材取り出し口(開口部)
25 ガイド棒
27 連続炒め機(ドラム式食材炒め機)
S 半円弧部
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャーハンや焼きそば等の食材を炒めるために供するドラム式鍋による食材の炒め方法及び炒め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の炒め方法及び炒め機としては、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
この従来の炒め方法は、回転ドラム式鍋及び掻取り羽根を回転させて食材を下方から上方へ移動させると共に、該上方で食材を落下させる行程と、回転ドラム式鍋の回転を停止させ、掻取り羽根を回転させて停止中の回転ドラム式鍋の上方内面に付着した食材を掻き落とす行程とを備えたものである。
【0004】
このような炒め方法により、回転ドラム式鍋内面の食材の焦げ付きなどの付着を防止することができる等の効果を得ることができる。
【0005】
しかし、かかる炒め方法では、食材が上方へ移動してから下方へ落下するため、食材の仕上がりに影響し、特に壊れ易い食材には適用し難いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3169362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、食材が上方へ移動してから下方へ落下するため、食材の仕上がりに影響する点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、食材の仕上がりへの影響を抑制するため、横型のドラム式鍋内に掻取り羽根を備え、前記ドラム式鍋を加熱しつつ前記掻取り羽根を回転させて前記ドラム式鍋内の食材の攪拌並びに該ドラム式鍋内面に付着した食材を掻き取るドラム式鍋による食材の炒め方法であって、前記掻取り羽根を、前記ドラム式鍋内面に羽根面が沿うようにセットして回転させ、該掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えドラム式鍋内面の下部側で落下を行わせて落下距離を減少させることをドラム式鍋による食材の炒め方法の特徴とする。
【0009】
また、横型のドラム式鍋の内面に掻取り羽根を備え、前記ドラム式鍋を加熱しつつ前記掻取り羽根を回転させて前記ドラム式鍋内の食材の攪拌並びに該鍋内面に付着した食材を掻き落とすドラム式食材炒め機であって、前記掻取り羽根を前記横型のドラム式鍋の内面に羽根面が沿うようにセットし、該掻取り羽根を回転させて前記食材を下方から上方へ移動させると共に、該掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えドラム式鍋内面の下部側で落下を行わせて落下距離を減少させることをドラム式食材炒め機の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のドラム式鍋による食材の炒め方法及び炒め機は、上記構成であるから、食材の落下が抑制され、食材の仕上がりへの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ドラム式食材炒め機のドラム直交方向の断面図である。(実施例1)
【図2】ドラム式食材炒め機のドラム軸に沿った断面図である。(実施例1)
【図3】掻取り羽根平面図である。(実施例1)
【図4】回転ドラム式鍋の炒め機を示した正面図である。(参考例)
【図5】回転ドラム式鍋の炒め機の側面図である。(参考例)
【図6】回転ドラム式鍋の炒め機の要部を示した拡大垂直断面図である。(参考例)
【図7】連続炒め機の断面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0012】
食材の仕上がりへの影響を抑制するという目的を、掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えドラム式鍋内面の下部側で落下を行わせて落下距離を減少させることで実現した。
【実施例1】
【0013】
図1は、ドラム式食材炒め機のドラム直交方向の断面図、図2は、ドラム式食材炒め機のドラム軸に沿った断面図、図3は、掻取り羽根平面図である。
【0014】
図1〜図3のように、ドラム式食材炒め機1は、横型のドラム式鍋3の内面に掻取り羽根5を備え、ドラム式鍋3を加熱しつつ回転させ、掻取り羽根5を回転させてドラム式鍋内の食材の攪拌並びに該鍋内面に付着した食材を掻き落とす。
【0015】
ドラム式鍋3は、円筒形に形成され、一端に食材の投入、取り出し用の開口部7が形成され、後述の参考例のように回転駆動可能且つ加熱可能に構成されている。なお、開口部7は、両端に形成して一方を投入用、他方を取り出し用として構成することもできる。
【0016】
掻取り羽根5は、掻き取り軸11に取り付けられている。掻き取り軸11は、ドラム式鍋3内面であるドラム面3aに沿って旋回する支持部11aを備えている。掻取り羽根5は、支持部11aに取り付けられたブラケット13により取り付けられている。ブラケット13の先端には、取り付け部材15が軸17により回転自在に支持されている。
【0017】
取り付け部材15に、例えばフッ素樹脂等で形成された羽根尖端部19が支持され、この羽根尖端部19の基部側にステンレス製のカバー21の先端側が覆うように取り付けられて、羽根尖端部19及びカバー21が取り付け部材15にボルト20により締結固定され、羽根の主体が構成されている。カバー21の基端側は、支持部11aの外周部に至っている。したがって、掻取り羽根5の羽根尖端部19及びカバー21は、ドラム式鍋3のドラム面3aから掻き取り軸11の支持部11aに至って、幅Lが大きく形成され、食材を流すようにガイドする。この場合、幅Lは、ドラム面3aに沿った円弧上の長さで表している。
【0018】
ブラケット13には、スプリング23が支持され、取り付け部材15に弾接し、取り付け部材15を軸17回りに付勢している。この付勢により取り付け部材を介し掻取り羽根5の羽根尖端部19がドラム式鍋3のドラム面3aに弾接する。
【0019】
掻取り羽根5の羽根尖端部19がドラム式鍋3のドラム面3aに弾接する点を通る接線と羽根尖端部19とのなす角度αは、本実施例において30°或いは30°前後、例えば35°に設定され、ドラム式鍋3のドラム面3aに羽根面5aが沿うようにセットされ、羽根面5aのドラム面3aに接触しない方の端点と同点のドラム式鍋3のドラム面3aへの垂直投影点との高低差を低くすることができる。但し、羽根面5aとドラム式鍋3のドラム面3aとの高低差を低くすることができればよく、角度αは、60°〜30°の範囲で選択することができる。
【0020】
掻取り羽根5が回転角270°近辺に至ると、羽根面5aの面に沿った延長線は、ドラム式鍋3のドラム面3aの下部側で掻取り羽根5が位置する側の半円弧部Sの範囲内に指向する。実施例では、図1のように240°付近から半円弧部Sの範囲内に指向している。実際は、食事種類等で滑り始める回転角は異なり、この滑り始める回転角の範囲は、240°〜280°となる。また、滑り易い食材の場合、角度αが大きく60°等であっても、掻取り羽根5が回転角270°近辺に至ると、滑り始める。
【0021】
食材が掻取り羽根5上を滑った後は、その回転方向後縁からドラム面3a上へ落下する。即ち、羽根面5aの回転方向における端縁とドラム面3aの落下点の間を食材は自由落下する。落下点の範囲は、羽根面5aの面に沿った延長線が交差するドラム面3a上の点と羽根面5aの回転方向後縁から垂下させた垂直線が交差するドラム面3a上の点との間となる。この自由落下の高低差が食材の混合と食材が受ける衝撃の主要因子であり、この高低差を食材及び調理種類に応じて適度に調整することが重要である。
【0022】
この自由落下距離は羽根幅Lが0の場合は0となり、羽根を長くすると落下距離は長くなるが、ある点を越えると逆に減少し、対向するドラム面3aに掻取り羽根5の幅が達した場合に再び0となる。
【0023】
従って、掻取り羽根5の幅Lにより自由落下距離は変る。
【0024】
なお、回転角270°は、掻取り羽根5の回転角を意味するが、角度270°は、掻き取り軸11が図1において直上位置OからP、Qと回転し、Rに至った状態を示す。
【0025】
掻取り羽根5の回転方向の後部側には、移動する食材の流れを調整するガイド棒25が備えられている。ガイド棒25は、長尺棒25a及び短尺棒25bが交互に支持部11aに沿って配置され、ブラケット13に固定されている。なお、ガイド棒25を全て均一長さに形成することもできる。
【0026】
長尺棒25a及び短尺棒25bは、図2のようにドラム式鍋3の開口部7側に傾斜して指向し、それぞれ段階的な折れ形状に形成されている。なお、ガイド棒25は、食材によっては省略しても良く、チャーハンや豆腐が食材であるときは省略する。但し、投入されたごはん(炊飯された米)がパラパラしておらず、粘着性を有する場合は、ガイド棒25等を採用し、結着物の分割と反転落下が必要となる。
【0027】
このドラム式食材炒め機1は、後述する参考例と同様な羽根駆動装置とドラム駆動装置と加熱装置を備え、羽根駆動装置により掻き取り軸11を駆動し、掻取り羽根5をドラム式鍋3のドラム面3aに沿ってドラム軸周りに回転させる。また、ドラム駆動装置により、ドラム式鍋3をドラム軸周りに回転させる。ドラム式鍋3の回転方向は、掻取り羽根5の回転方向と逆方向である。
【0028】
但し、ドラム式鍋3の回転方向を掻取り羽根5の回転方向に一致させ、或いは回転させない構成にすることもできる。
【0029】
加熱装置は、ドラム式鍋3を加熱する。加熱の熱源は、ガスに限らず、電気、蒸気、電磁誘導等を適宜選択することができる。
[ドラム式鍋による食材の炒め方法]
ドラム式鍋3内に開口部7から食材、例えば焼きそば用の麺を投入する。
【0030】
羽根駆動装置により掻き取り軸11を駆動し、掻取り羽根5をドラム式鍋3のドラム面3aに沿ってドラム軸周りに回転させる。
【0031】
このとき、ドラム式鍋3は、加熱装置により加熱され、ドラム駆動装置により、掻取り羽根5の回転方向と逆方向に回転駆動される。
【0032】
こうして、掻取り羽根5を回転させて麺を下方から上方へ移動させると共に、掻取り羽根5の回転上昇と共に麺が羽根面5aを滑り乗り越えてドラム式鍋3のドラム面3aの下部側で掻取り羽根5が位置する側の半円弧部S上に流れるように移動する。なお、ドラム式鍋3のドラム面3aの下部側で掻取り羽根5が位置する反対側の半円弧部上に食材が多少落下することも許容するものである。
【0033】
角度αを30°或いは30°前後に設定した本実施例では、殆ど落下という衝撃を伴う現象はなく、半円弧部Sの上端であるほぼ水平位置(回転角270°)に掻き取り軸11が至った時に、麺が、掻取り羽根5の羽根面5a上を滑るように流れ始め、一端ガイド棒25にかかりながら、ガイド棒25のガイド作用により開口部7側へ偏向され、ドラム式鍋3のドラム面3a上に至ることができる。すなわち、掻取り羽根5からの食材の落下を、ドラム式鍋3の下部側で行わせることができる。
【0034】
炒め調理時、ドラム式鍋3は、反開口部7側が低くなるように傾斜調整される。この場合に、ガイド棒25のガイド作用が有効に働く。
【0035】
また、ドラム式鍋3の逆転により、加熱調理しながら麺と掻取り羽根5との相対速度を増大させ、慣性などによっても麺が掻取り羽根5上を滑り乗り越え易くなる。
【0036】
このように、掻取り羽根5の回転により上方へ移動し且つ下方へ流れて戻る動作により食材である麺を反転、混合しながらドラム式鍋3のドラム面3aに接触させ、加熱調理することができる。
【0037】
すなわち、特殊な羽根形状の採用により、掻取り羽根5の上昇回転位置に対する食材の落下開始点を下げると共に、落下時の衝撃および、食材と空気との接触を極小化した。
【0038】
更に、掻取り羽根5によるドラム面3aの掻取り回数を増やし、食材の保形成と品温上昇及び焦げ付き防止の問題を同時に解決できた。
【0039】
・食材の落下点を下げる(掻取り羽根をドラムに対し鋭角にセット)
即ち、掻取り羽根5の形状を、羽根5が進行方向に動く時、羽根5が食材を保持する角度設定から、食材が羽根5を乗り越え易い角度設定に変更し、羽根表面を滑り落ちるようになった。
【0040】
・落下のかなりの部分は羽根上を滑らせる
更に、ドラム式鍋3と掻取り羽根5の回転方向を向かい合わせに変更し、ドラム式鍋3上の食材と掻取り羽根5の相対速度を大きくつけ、食材は慣性にもよって、掻取り羽根5を簡単に乗り越え易くした。このため、落下開始位置が低くなり、羽根面5aを滑る間の抵抗もあり、自由落下の落差が小さくなり、従来よりもかなり小さな衝撃でドラム面3aに落下し、食材の混合と食材の被加熱部位を変更する事ができた。
【0041】
このようにして食材が羽根面5aからドラム面3aへ落下する距離が大幅に短縮されるので、空気との接触も少なくなり、水の蒸発による温度低下も極小化される。
【0042】
・掻取り回数の大幅増加
一方、このように食材への衝撃を少なくした状態で、掻取り羽根5はドラム式鍋3のドラム面3aを従来に比べ高速で掻取り、掻取り回数が大幅(数倍)に増加する。(羽根14rpm、ドラム7 rpmで同方向回転は、7rpm、対向回転は21 rpmで掻取る。)このようにして、掻取りによる焦げ付きの防止と食材の損損傷の防止が同時に達成された。
【0043】
・焼ソバなどの麺状食材の炒め
掻取り羽根5の形状は食材に応じて選択する。焼ソバなどの形状の場合は、上記のようなガイド棒25を櫛状に付けたものが食材流下時の反転・混合上好適である。掻取り羽根5を滑り降りてきた麺状の食材は、この適当な間隔を置いたガイド棒25に引っかかり、動きを停止した後、運動方向を変えて落下する(反転)。場所により、(実施例では、1個おきに) ガイド棒25の長さを変えることにより落下のタイミングをずらし、混合を促進する。更にドラム式鍋3は、内食材の軸方向の混合を促進するため、若干斜め方向にセットされている。
【0044】
掻取り羽根5の形状をフッ素樹脂の平板等、ドラム式鍋3のドラム面3aと接触しても傷をつけない材質とし、スプリング23で押し付け密着性を高めると共に、その後ろ側にステンレスのカバー21(平板)を設置し、一体の掻取り羽根5を形成させ、ドラム式鍋3のドラム面3aに対する接触角度を鋭角とするとともに、羽根5の回転方向をドラム式鍋3の回転方向と反対とし、相互の対向回転により羽根5がドラム面3aを掻き取るようにセットした。
【0045】
このようにすると、掻取り羽根5によりドラム面3aを持ち上げられた食材は270°付近で羽根5の平板面上を滑り落ち、羽根平板面の端より空中を落下し0度付近のドラム面3aに着地する。この時、落下直前、櫛形(曲がった複数の棒)により滑り方向に変化が与えられ、食材の反転・混合がおき、ドラム面3aには、新たに形成された食材の面が接触する。
【0046】
このようにして、羽根5よりの落下により食材を反転・混合しながらドラム面3aと接触させ炒め調理を行うことができる。
【0047】
従来の方式に比べ、この方式の利点は、食材が空中を落下する距離が僅少であるため、落下による食材の痛みが非常に少ない点がある。また、空気との接触も僅少となるため、落下中に空気との接触混合で生ずる、食材からの水の蒸発、食材の温度低下を少なくでき、炒め感の増加、品温を高めることができる。更に、ドラムと羽根を対向して回転させることにより壁面の掻取り回数を大幅に増やすことができ、焦げ付きを防止できる。更に焦げ付き防止効果により、壁温を従来の200-220℃より200-240℃まであげることができるようになり、更に、炒め感の増加、品温を高めることが可能となった。
・羽根の幅Lによる混合と衝撃の調整
羽根5の幅Lを短くすると、滑り落ちた食材の落下位置はQ-Rの角度の高い位置となり、落下したドラム面3aは最低部(180度)に比べ高い位置となり、食材の空間落下距離が短くなり、受ける衝撃が少なくなる。反面、落下による反転混合の効果が少なくなるので、幅Lは調理アイテムに応じて適宜選択すると良い。
【0048】
以上、本発明実施例の特徴は、以下の点にある。
(1)食材落下開始点を下げる。
(2)羽根5上を滑らせることで減速させると共に、自由落下距離を少なくする、
(3)ドラム面3aの落下位置が高い位置になる。
(4)ドラム式鍋3と羽根5との回転方向が反対なので、落下した食材が羽根5と反対方向120度位にまで運ばれ、伝熱面積を広げる効果もある。この点、従来の方法の範囲は180〜300度であったのに対し120〜270度に加熱ゾーンが広がる。
[参考例]
図4〜図6は、この発明の参考例にかかり、図4は、回転ドラム式鍋の炒め機を示した正面図、図5は、回転ドラム式鍋の炒め機の側面図、図6は、回転ドラム式鍋の炒め機の要部を示した拡大垂直断面図である。
【0049】
図4〜図6のように、横型の回転ドラム式鍋101は、正面側端部に先細テーパ部101aによって縮径された開口部101bを形成し、背面側に椀状の底部101cを形成し、外胴102内にこれと隙間を設けて同心に配置し、後述の駆動手段103である第1駆動装置103Aによって軸回りに回転するようにしてある。
【0050】
前記第1駆動装置103Aは、外胴102の後部に設けられたボックス104内に設置された電動機105と、この電動機105の回転をウオーム106を介して前記ボックス104の側面板に固定した軸受107に支持されて回転する可動ブラケット108の端部にキー結合されたウオームホイール109に伝達し、前記可動ブラケット108の突出端部108aを前記回転ドラム式鍋101の底部101c外面に熔着した外部ブラケット101dと連結することで、前記回転ドラム式鍋101を所望速度で回転するようにしている。
【0051】
前記外胴102は、回転ドラム式鍋101の前後方向の軸方向と直交する左,右傾動軸110によって、左,右脚111の上部に上下方向に傾動可能に軸支し、右方の脚111に公知の手動式の傾動操作機構112を設け、そのハンドル112aの回動操作により、回転ドラム式鍋101及び駆動手段103を内装したボックス104とを共に前下がりに傾動するようにしてある。
【0052】
前記回転ドラム式鍋101の下方には3〜4列など左右複数列のガスバーナ113を回転ドラム式鍋101の軸方向に沿って配置し、前記ガスバーナ113は外胴102に固定し、バルブ(図示省略)を介してガス供給源に接続してある。
【0053】
前述した構成は、駆動手段103を除いては、従来の回転ドラム式炒め機とほぼ同様であるが、本発明の参考例の炒め機は、図3に示すように、回転ドラム式鍋101内部に軸中心を一致させた回転軸114が、前記底部101cの中心部を貫通してメタル軸受け114aに支持されて回転可能に片側支持(後部支持)によって装着されると共に、前記回転軸114の端部は前記駆動手段103内装のボックス104に取付けられた前記可動ブラケット108の中心孔108bに取付けたメタル軸受108cを貫通し、前記ボックス104内に突出し、ボックス104内部に設置された第2駆動装置103Bと連結される。なお、本発明では変形例として回転ドラム式鍋101の開口部101bに着脱自在の蓋部材を取付け、前記片側支持の回転軸114を前後側で両側支持とする構造とし、大型の回転ドラム式鍋101に適応させることができる。
【0054】
前記第2駆動装置103Bは電動機115からの出力を減速機115aに連結したチエーン116を介して前記回転軸114の後端部114bに取付けたチエーンスプロケト117に伝達され、前記回転軸114が回転するようになっている。
【0055】
前記回転ドラム式鍋101の内部に貫通した回転軸114は、底部101cの近傍で軸方向がクランク状に折り曲げられ、折り曲げ水平軸114c部分には所定の間隔で、複数の掻取り羽根118が取り付けられている。前記掻取り羽根118は、前記回転ドラム式鍋101の内面と圧接する偏平な板状の食材の掻取り部118aと、この掻取り部118aの上端中央に取付けた取付杆118bと、この取付杆118bが嵌合する前記折り曲げ水平軸114c部分に一端が固着された中空の連結杆118cとからなり、両者は前記連結杆118cの中空内に配設されたコイルばね119を介して軸方向の伸縮が可能になっており、前記コイルばね119によって、前記掻取り部118aが前記回転ドラム式鍋101の内面と圧接するようになっている。
【0056】
また、前記掻取り羽根118の掻取り部118aを回転ドラム式鍋101の軸線と平行に、長手(前後)方向を一線状に揃えて配設してもよいが、回転ドラム式鍋101の軸線と掻取り部118aの関係を少しの角度で交叉した捩じれの状態にさせることによって、回転軸114の回転と併せて食材に送りを与えることが可能となる。一方、互いの掻取り部118aの先端側と後端側とが互いに重複するような位置関係の状態に配設することが好ましい。
【0057】
そして、本願発明実施例1のドラム式食材炒め機1が、参考例の回転ドラム式鍋による食材炒め機に、横型のドラム式鍋3が、同回転ドラム式鍋101に、掻取り羽根5が、同掻取り羽根118に、掻き取り軸11が、同回転軸114に、支持部11aが、同折り曲げ水平軸114cにそれぞれ対応する。また、ドラム駆動装置が、第1駆動装置103Aに、羽根駆動装置が、第2駆動装置103Bに、加熱装置が、ガスバーナ113にそれぞれ対応する。この場合、第1駆動装置103Aは、ドラム式鍋3を逆方向に回転させるように駆動される。
【0058】
したがって、上記のように、本願発明実施例のドラム式鍋3も、参考例と同様に加熱しながら回転させ、掻き取り軸11を回転駆動することができる。ドラム式鍋3を掻取り羽根5に対し逆方向に回転させることができる。
【0059】
図7は、連続炒め機の断面図である。
【0060】
本願発明のドラム式食材炒め機は、連続炒め機27として構成することもできる。
【0061】
連続炒め機27は、図示しないローラ上にドラム式鍋3Aの底部両側が支持され、ローラの駆動によりドラム軸周りに回転する。ドラム式鍋3Aには、食材投入用の開口部として食材投入口7a、食材取り出し用の開口部として食材取り出し口7bが備えられている。ドラム式鍋3A全体は、ドラム軸が食材取り出し口7b側へ若干傾斜するように配置設定されている。
【0062】
掻き取り軸11Aは、ドラム軸芯上に配置され、図外のモータにより回転駆動される。掻き取り軸11Aに支持した掻取り羽根5Aを、上記掻取り羽根5の構成とすることで、連続炒め機27として構成することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ドラム式食材炒め機
3、3A ドラム式鍋
3a ドラム面(ドラム式鍋内面)
5、5A 掻取り羽根
7 開口部
7b 食材取り出し口(開口部)
25 ガイド棒
27 連続炒め機(ドラム式食材炒め機)
S 半円弧部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横型のドラム式鍋内に掻取り羽根を備え、前記掻取り羽根を回転させて前記ドラム式鍋内の食材の攪拌並びに該ドラム式鍋内面に付着した食材を掻き取るドラム式鍋による食材の炒め方法であって、
前記掻取り羽根を、前記ドラム式鍋内面に羽根面が沿うようにセットして回転させ、該掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えドラム式鍋内面の下部側で落下を行わせて落下距離を減少させる、
ことを特徴とするドラム式鍋による食材の炒め方法。
【請求項2】
請求項1記載のドラム式鍋による食材の炒め方法であって、
前記掻取り羽根のセットにより回転角240°〜280°付近で食材の羽根面上への移動を開始させる、
ことを特徴とするドラム式鍋による食材の炒め方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のドラム式鍋による食材の炒め方法であって、
前記掻取り羽根のセットにより、該掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えてドラム式鍋内面の下部側で前記掻取り羽根が位置する側の半円弧部上に流れる、
ことを特徴とするドラム式鍋による食材の炒め方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載のドラム式鍋による食材の炒め方法であって、
前記ドラム式鍋を、加熱しながら前記掻取り羽根の回転方向とは逆方向へ回転させる、
ことを特徴とするドラム式鍋による食材の炒め方法。
【請求項5】
横型のドラム式鍋の内面に掻取り羽根を備え、前記掻取り羽根を回転させて前記ドラム式鍋内の食材の攪拌並びに該鍋内面に付着した食材を掻き落とすドラム式食材炒め機であって、
前記掻取り羽根を前記横型のドラム式鍋の内面に羽根面が沿うようにセットし、
該掻取り羽根を回転させて前記食材を下方から上方へ移動させると共に、該掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えドラム式鍋内面の下部側で落下を行わせて落下距離を減少させる、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項6】
請求項5記載のドラム式食材炒め機であって、
前記掻取り羽根の回転角270°付近で食材の羽根面上の移動を開始させるように前記セットを行った、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項7】
請求項5又は6記載のドラム式食材炒め機であって、
前記ドラム式鍋の内面に対する前記掻取り羽根の羽根面のなす角度αを30°又は30°前後に設定した、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか1項記載のドラム式食材炒め機であって、
前記掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えてドラム式鍋内面の下部側で前記掻取り羽根が位置する側の半円弧部上に流れるように前記セットを行った、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか1項記載のドラム式食材炒め機であって、
前記ドラム式鍋を、前記掻取り羽根の回転方向とは逆方向へ回転させるドラム駆動装置を備えた、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項10】
請求項5〜9の何れか1項記載のドラム式食材炒め機であって、
前記掻取り羽根の回転方向の後部側に前記移動する食材の流れを調整するガイド棒を備えた、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項11】
請求項10記載のドラム式食材炒め機であって、
前記ガイド棒は、前記ドラム式鍋の食材取り出し用の開口部側に指向している、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項1】
横型のドラム式鍋内に掻取り羽根を備え、前記掻取り羽根を回転させて前記ドラム式鍋内の食材の攪拌並びに該ドラム式鍋内面に付着した食材を掻き取るドラム式鍋による食材の炒め方法であって、
前記掻取り羽根を、前記ドラム式鍋内面に羽根面が沿うようにセットして回転させ、該掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えドラム式鍋内面の下部側で落下を行わせて落下距離を減少させる、
ことを特徴とするドラム式鍋による食材の炒め方法。
【請求項2】
請求項1記載のドラム式鍋による食材の炒め方法であって、
前記掻取り羽根のセットにより回転角240°〜280°付近で食材の羽根面上への移動を開始させる、
ことを特徴とするドラム式鍋による食材の炒め方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のドラム式鍋による食材の炒め方法であって、
前記掻取り羽根のセットにより、該掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えてドラム式鍋内面の下部側で前記掻取り羽根が位置する側の半円弧部上に流れる、
ことを特徴とするドラム式鍋による食材の炒め方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載のドラム式鍋による食材の炒め方法であって、
前記ドラム式鍋を、加熱しながら前記掻取り羽根の回転方向とは逆方向へ回転させる、
ことを特徴とするドラム式鍋による食材の炒め方法。
【請求項5】
横型のドラム式鍋の内面に掻取り羽根を備え、前記掻取り羽根を回転させて前記ドラム式鍋内の食材の攪拌並びに該鍋内面に付着した食材を掻き落とすドラム式食材炒め機であって、
前記掻取り羽根を前記横型のドラム式鍋の内面に羽根面が沿うようにセットし、
該掻取り羽根を回転させて前記食材を下方から上方へ移動させると共に、該掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えドラム式鍋内面の下部側で落下を行わせて落下距離を減少させる、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項6】
請求項5記載のドラム式食材炒め機であって、
前記掻取り羽根の回転角270°付近で食材の羽根面上の移動を開始させるように前記セットを行った、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項7】
請求項5又は6記載のドラム式食材炒め機であって、
前記ドラム式鍋の内面に対する前記掻取り羽根の羽根面のなす角度αを30°又は30°前後に設定した、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか1項記載のドラム式食材炒め機であって、
前記掻取り羽根の回転上昇と共に食材が羽根面を滑り乗り越えてドラム式鍋内面の下部側で前記掻取り羽根が位置する側の半円弧部上に流れるように前記セットを行った、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか1項記載のドラム式食材炒め機であって、
前記ドラム式鍋を、前記掻取り羽根の回転方向とは逆方向へ回転させるドラム駆動装置を備えた、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項10】
請求項5〜9の何れか1項記載のドラム式食材炒め機であって、
前記掻取り羽根の回転方向の後部側に前記移動する食材の流れを調整するガイド棒を備えた、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【請求項11】
請求項10記載のドラム式食材炒め機であって、
前記ガイド棒は、前記ドラム式鍋の食材取り出し用の開口部側に指向している、
ことを特徴とするドラム式食材炒め機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−42880(P2013−42880A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181967(P2011−181967)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 〔博覧会名〕 2011国際食品工業展 〔主催者名〕 社団法人 日本食品機械工業会 〔開催日〕 2011年6月7日から2011年6月10日
【出願人】(500148592)株式会社カジワラ (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 〔博覧会名〕 2011国際食品工業展 〔主催者名〕 社団法人 日本食品機械工業会 〔開催日〕 2011年6月7日から2011年6月10日
【出願人】(500148592)株式会社カジワラ (6)
【Fターム(参考)】
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