ドラム缶パレット一時持ち上げ治具。

【課題】ドラム缶を搭載するためのパレットを一時的に持ち上げて、崩落危険箇所のドラム缶の位置を修正し易くできるドラム缶パレット一時持上げ治具を提供することである。
【解決手段】フォークリフトのフォークに代えてリフトブラケットに着脱可能に取り付けられる持ち上げ治具本体１２の取付部１３には、リフトブラケットに取り付けられるための爪部１５ａ、１５ｂを有し、持ち上げ治具本体１２の取付部１３の反対側には、持ち上げ治具本体１２がリフトブラケットに取り付けられた状態のときに、前方に突出してドラム缶を搭載したパレットを一時的に持ち上げるための差し込み平板１４を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複数個のドラム缶を搭載したパレットを多段に積み重ねて貯蔵庫に収納したパレットを一時的に持ち上げるドラム缶パレット一時持ち上げ治具に関する。
【背景技術】
【０００２】
例えば、原子力発電所や放射性物質取扱施設などで発生する放射能レベルの低い各種の固体廃棄物は、ドラム缶に詰めて廃棄物貯蔵庫（貯蔵庫）に貯蔵され、最終的に減容処理した後セメント等により固化した上、埋設処分される。通常、ドラム缶は貯蔵庫に４本ずつ３段積みにして保管され、ドラム缶のハンドリング性と保管時の安定性を確保するために各段の間にパレットと呼ばれる金属製の平台を挿入している。貯蔵庫にドラム缶を収納するにあたっては、１つのパレットに４本のドラム缶を積載し、それを１組としてフォークリフトで運搬して貯蔵庫の奥から順番に３段重ねの複数列にして収納するようにしている。
【０００３】
このような貯蔵庫にドラム缶を収納した状態で大きな地震が発生したとすると、パレットからドラム缶が崩落したりパレットが傾いたりすることがある。その場合、崩落したドラム缶の全数について、ドラム缶を１本ずつ吊り出し、作業安全及び放射線安全を確保しつつ健全性を確認し、再度、積載して貯蔵庫に収納し直さなければならない。
【０００４】
ドラム缶を１本ずつ吊り出すものとしては、フォークリフトやクレーン等の吊上げ装置にドラム缶を吊り上げるために用いるドラム缶吊り具を取り付け、吊上げ装置によって吊り上げられる吊上げ枠上にクランプ装置を配備し、ドラム缶の耳部を上爪と下爪とで掴むようにしたものがある（例えば、特許文献１参照）。また、ビームの一端にドラム缶の端面周縁部の突起部に係合する第１の切欠き部を形成し、ビームの他端にはドラム缶の端面周縁部の突起部に係合する第２の切欠き部を備えビームの長手方向に摺動自在かつ所定位置でビームに固着する締着具を係合し、ビームにワイヤロープあるいはチェーンを取り付けるための１個または複数個の吊り環を備え、ドラム缶を横吊りしてドラム缶内の油類を容易に取り出すことを可能にしたものがある（例えば、特許文献２参照）。
【特許文献１】特開２００３−４０５９３号公報
【特許文献２】実開平５−１２４７７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、特許文献１や特許文献２のものではドラム缶を吊り出すことはできるが、ドラム缶を搭載したパレットを一時的に持ち上げることはできない。ドラム缶が崩落した状態で微妙なバランスで安定している場合には、わずかな衝撃等でそのバランスが崩れドラム缶が再崩落する可能性が高い。また、手前に傾いているドラム缶も多々あり、再崩落の際に作業者側に崩落する危険もある。また、再崩落の際にはドラム缶の内容物が貯蔵庫内に飛散し、内包している放射性物質を作業者が体内に取り込んでしまう可能性もある。従って、このような状況下で、ドラム缶を吊り出すためには、他のドラム缶により加重されているドラム缶を後回しにし、他のドラム缶を加重しているドラム缶から吊り出す必要がある。また、パレットを一時的に持ち上げてドラム缶の位置を修正し、ドラム缶による加重を軽減することが要請される。
【０００６】
本発明の目的は、ドラム缶を搭載するためのパレットを一時的に持ち上げて、崩落危険箇所のドラム缶の位置を修正し易くできるドラム缶パレット一時持上げ治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
請求項１の発明に係わるドラム缶パレット一時持ち上げ治具は、フォークリフトのフォークが取り付けられるリフトブラケットに前記フォークに代えて着脱可能に取り付けられる持ち上げ治具本体と、前記持ち上げ治具本体の前記リフトブラケット側に形成され前記持ち上げ治具本体を前記リフトブラケットに取り付けるための取付部と、前記持ち上げ治具本体の前記取付部の反対側に形成され前記持ち上げ治具本体が前記リフトブラケットに取り付けられた状態のときに前方に突出してパレットに搭載されたドラム缶の間隙に挿入され前記ドラム缶を搭載したパレットを一時的に持ち上げるための差し込み平板とを備えたことを特徴とする。
【０００８】
請求項２の発明に係わるドラム缶パレット一時持ち上げ治具は、請求項１の発明において、前記差し込み平板は、前方の突出方向が短辺の台形に形成されたことを特徴とする。
【０００９】
請求項３の発明に係わるドラム缶パレット一時持ち上げ治具は、請求項１または請求項２の発明において、前記差し込み平板に軽量化を図るための孔が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、フォークリフトのフォークが取り付けられるリフトブラケットに、フォークに代えて、ドラム缶パレット一時持ち上げ治具を取り付け、そのドラム缶パレット一時持ち上げ治具の差し込み平板で、ドラム缶を搭載したパレットを一時的に持ち上げて、ドラム缶の位置を修正するので、ドラム缶の吊り出し作業の際にドラム缶が再崩落することを防止しつつドラム缶の吊り出し作業ができる。
【００１１】
また、ドラム缶パレット一時持ち上げ治具の差し込み平板は、前方の突出方向が短辺の台形に形成されているので、ドラム缶の間隙に挿入され易く作業性が向上する。また、差し込み平板には、軽量化を図るための孔が形成されているので、フォークリフトによる駆動源の負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
図１は本発明の実施の形態に係わるドラム缶パレット一時持ち上げ治具の平面図、図２はフォークリフトの一例を示す外観構成図、図３は本発明の実施の形態に係わるドラム缶パレット一時持ち上げ治具をフォークリフトのフォークに代えてフォークリフトに取り付けた場合の外観構成図である。
【００１３】
図１に示すように、ドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１の持ち上げ治具本体１２は、フォークリフトに取り付けられる取付部１３と、ドラム缶を搭載したパレットを一時的に持ち上げるための差し込み平板１４とからなる。取付部１３は、フォークリフトのフォークが取り付けられるリフトブラケットに係止する爪部１５ａ、１５ｂを有し、この爪部１５ａ、１５ｂにてリフトブラケットに着脱可能に取り付けられる。これにより、持ち上げ治具本体１２はフォークリフトのリフトブラケットに取り付けられる。
【００１４】
差し込み平板１４は、持ち上げ治具本体１２の取付部１３の反対側に設けられ、持ち上げ治具本体１２の取付部１３がリフトブラケットに取り付けられた状態のときに前方に突出して、パレットに搭載されたドラム缶の間隙に挿入される。差し込み平板１４は、前方の突出方向が短辺の台形に形成されているので、ドラム缶の間隙に挿入されやすい。
【００１５】
差し込み平板１４はリフトブラケットの上下方向の駆動により上下方向に移動し、例えば、リフトブラケットの上方向の駆動によりパレットを一時的に持ち上げる。このパレットの持ち上げにより、ドラム缶を搭載したパレットの傾きを是正したり、ドラム缶の位置やパレットの位置の修正を行う。差し込み平板１４はリフトブラケットで駆動されるものであることから、軽量化を図るための孔１６が形成されており、フォークリフトのリフトブラケットによる上下方向の駆動源の負担を軽減できるようにしている。
【００１６】
図２に示すように、フォークリフト１７は、リフトブラケット１８ａ、１８ｂに一対のフォーク１９ａ、１９ｂが取り付けられ、荷物の集荷の場所に走行して、フォーク１９ａ、１９ｂを上下方向に移動させてフォーク１９ａ、１９ｂに荷物を搭載する。そして、別の保管場所まで走行して荷物を運び、リフトブラケット１８ａ、１８ｂの昇降動作によりフォーク１９ａ、１９ｂを上下方向に移動させて荷物を積層する。
【００１７】
このようなフォークリフト１７のフォーク１９ａ、１９ｂに代えて、図１に示したドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１をリフトブラケット１８ａ、１８ｂに装着する。図３に示すように、ドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１の取付部１３がフォークリフト１７のリフトブラケット１８ａ、１８ｂに取り付けられた状態のときに、ドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１の差し込み平板１４がリフトブラケット１８ａ、１８ｂの上部位置から前方に突出する位置となる。フォークリフト１７のリフトブラケット１８ａ、１８ｂは上下に移動可能となっており、ドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１も上下に移動可能となる。これにより、ドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１の差し込み平板１４はパレットに搭載されたドラム缶の間隙に挿入される。
【００１８】
図４は、貯蔵庫内に収納したドラム缶の一例の外観図である。図４では、４本のドラム缶２１を搭載したパレット２０を３段積みした場合を示している。また、整然と整頓して段積みされた場合を示している。パレット２０は金属製の平台であり、その側面にはフォークリフト１７のフォーク１９ａ、１９ｂが挿入されるフォーク挿入孔２２が設けられている。このフォーク挿入孔２２にフォークリフト１７のフォーク１９ａ、１９ｂが挿入されて、１つのパレット２０の単位でフォークリフト１７により運搬や段積みが行われる。
【００１９】
通常時においては、図４に示したように、貯蔵庫内においては４本のドラム缶２１を搭載したパレット２０が３段積みされて収納されている。このようなドラム缶を貯蔵庫内に収納した状態で大きな地震が発生したとすると、パレット２０からドラム缶が崩落したりパレット２０が傾いたりすることがある。
【００２０】
図５はパレット２０からドラム缶２１が位置ずれした場合の一例の説明図であり、ドラム缶２１ａが所定のパレット２０ａからずれて２つのパレット２０ａ、２０ｂに跨って搭載され、上部にはパレット２０ｃが搭載されている場合を示している。図５に示す状態では、ドラム缶２１ａはパレット２０ａ、２０ｂと上部のパレット２０ｃとで挟まれているので、ドラム缶２１ａだけに力を加えてドラム缶２１ａを移動させることは困難である。
【００２１】
そこで、フォークリフトのフォークに代えて、図３に示すように、ドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１をリフトブラケット１８ａ、１８ｂに装着する。そして、図５に示すように、差し込み平板１４をドラム缶２１の隙間に挿入して、リフトブラケット１８ａ、１８ｂを駆動して差し込み平板１４を矢印Ｆ１方向に移動させ、ドラム缶２１ａの上部のパレット２１ｃを一時的に持ち上げる。これにより、ドラム缶２１ａは上部のパレット２１ｃからの荷重を受けることがなくなるので、ドラム缶２１ａを矢印Ｆ２方向に移動させて元のパレット２０ａの位置に戻す。そして、ドラム缶２１ａを元のパレット２０ａの位置に戻した後に手前側のパレット２０ｂを矢印Ｆ３方向に移動させて撤去する。
【００２２】
このように、位置ずれを起こしているドラム缶２１ａを整列させる場合に、ドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１を用いて、位置ずれを起こしているドラム缶２１ａに加重を加えているパレットを一時的に持ち上げてドラム缶の位置を修正する。従って、崩落したドラム缶の整理整頓の作業を効率的に行うことができる。
【００２３】
図６はパレット２０が傾いている場合に傾きを是正する場合の一例の説明図であり、図６（ａ）は下段のパレット２０が潰れて上段のパレット２０Ａが傾いている場合の斜視図、図６（ｂ）は傾いているパレット２０Ａの傾きを是正した場合の斜視図である。図６（ａ）に示すように、パレット２０Ａが傾いている状態では、フォークリフト１７のフォーク１９ａ、１９ｂをパレット２０Ａのフォーク挿入孔２２に挿入するとができない。従って、フォークリフト１７でパレット２０Ａを昇降したり運搬したりすることができない。
【００２４】
そこで、図６（ｂ）に示すように、別のフォークリフト１７にドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１を装着し、図６（ｂ）に示すように、差し込み平板１４を挿入して、差し込み平板１４を矢印Ｆ１方向に移動させ、パレット２１Ａの下方に傾いている部分を一時的に持ち上げる。これにより、パレット２１Ａの傾きを是正し、パレット２１Ａをほぼ水平位置に保ち、通常のフォークリフト１７のフォーク１９ａ、１９ｂをフォーク挿入孔２２に挿入する。そして、そのフォークリフト１７でパレット２０Ａを持ち上げて、別の場所に運搬し再配置する。
【００２５】
このように、傾いているパレット２０の傾きをドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１を用いて是正し、通常のフォークリフト１７の操作でそのパレット２０の昇降や運搬を行えるので、崩落したドラム缶の整理整頓の作業を効率的に行うことができる。
【００２６】
本発明の実施の形態によれば、ドラム缶を搭載するためのパレット２０をドラム缶パレット一時持ち上げ治具１１を用いて一時的に持ち上げることができるので、ドラム缶にかかる加重を一時的に除去したり、パレットの傾きを一時的に是正できる。これにより、ドラム缶の位置を容易に元の位置に戻すことができ、また、パレット２０を通常のフォークリフト１７で昇降や運搬が可能となる。従って、崩落したドラム缶の吊り出し作業の際にドラム缶が再崩落することを防止しつつドラム缶の吊り出し作業が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】本発明の実施の形態に係わるドラム缶パレット一時持ち上げ治具の平面図。
【図２】フォークリフトの一例を示す外観構成図。
【図３】本発明の実施の形態に係わるドラム缶パレット一時持ち上げ治具をフォークリフトのフォークに代えてフォークリフトに取り付けた場合の外観構成図。
【図４】貯蔵庫内に収納したドラム缶の一例の外観図。
【図５】パレットからドラム缶が位置ずれした場合の一例の説明図。
【図６】パレットが傾いている場合に傾きを是正する場合の一例の説明図。
【符号の説明】
【００２８】
１１…ドラム缶パレット一時持ち上げ治具、１２…持ち上げ治具本体、１３…取付部、１４…差し込み平板、１５…爪部、１６…孔、１７…フォークリフト、１８…リフトブラケット、１９…フォーク、２０…パレット、２１…ドラム缶、２２…フォーク挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項１】
フォークリフトのフォークが取り付けられるリフトブラケットに前記フォークに代えて着脱可能に取り付けられる持ち上げ治具本体と、
前記持ち上げ治具本体の前記リフトブラケット側に形成され前記持ち上げ治具本体を前記リフトブラケットに取り付けるための取付部と、
前記持ち上げ治具本体の前記取付部の反対側に形成され前記持ち上げ治具本体が前記リフトブラケットに取り付けられた状態のときに前方に突出してパレットに搭載されたドラム缶の間隙に挿入され前記ドラム缶を搭載したパレットを一時的に持ち上げるための差し込み平板とを備えたことを特徴とするドラム缶パレット一時持ち上げ治具。
【請求項２】
前記差し込み平板は、前方の突出方向が短辺の台形に形成されたことを特徴とする請求項１記載のドラム缶パレット一時持ち上げ治具。
【請求項３】
前記差し込み平板に軽量化を図るための孔が形成されたことを特徴とする請求項１または２記載のドラム缶パレット一時持ち上げ治具。

【図１】