ドラム缶掴み具
【課題】天井の低い貯蔵庫内においてもドラム缶を吊り出すことができるドラム缶掴み具を提供することである。
【解決手段】掴み具本体１２はフレーム部材１５を屈曲して中央部に谷部１６が形成され、その谷部１６には吊り手１７を有している。掴み具本体１２の両端部には、ドラム缶の端面周縁部を挟持するための挟持部１４を掴み具本体１２に連結するためのシャックル１３が設けられている。吊り手１７の位置が掴み具本体１２の両端部位置より下方の谷部１６となるので、ドラム缶掴み具１１を吊り下げる空間が狭い天井の低い貯蔵庫であってもドラム缶を吊り出すことが可能となる。
【解決手段】掴み具本体１２はフレーム部材１５を屈曲して中央部に谷部１６が形成され、その谷部１６には吊り手１７を有している。掴み具本体１２の両端部には、ドラム缶の端面周縁部を挟持するための挟持部１４を掴み具本体１２に連結するためのシャックル１３が設けられている。吊り手１７の位置が掴み具本体１２の両端部位置より下方の谷部１６となるので、ドラム缶掴み具１１を吊り下げる空間が狭い天井の低い貯蔵庫であってもドラム缶を吊り出すことが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ドラム缶を個別に吊り上げて運搬する場合に用いられるドラム缶掴み具に関する。
【背景技術】
【０００２】
例えば、原子力発電所や放射性物質取扱施設などで発生する放射能レベルの低い各種の固体廃棄物は、ドラム缶に詰めて廃棄物貯蔵庫（貯蔵庫）に貯蔵され、最終的に減容処理した後セメント等により固化した上、埋設処分される。通常、ドラム缶は貯蔵庫に４本ずつ３段積みにして保管され、ドラム缶のハンドリング性と保管時の安定性を確保するために各段の間にパレットと呼ばれる金属製の平台を挿入している。すなわち、貯蔵庫にドラム缶を収納するにあたっては、１つのパレットに４本のドラム缶を積載し、それを１組としてフォークリフトで運搬して貯蔵庫の奥から順番に３段重ねの複数列にして収納するようにしている。
【０００３】
このような貯蔵庫にドラム缶を収納した状態で大きな地震が発生したとすると、パレットからドラム缶が崩落したりパレットが傾いたりすることがある。その場合、崩落したドラム缶の全数について、ドラム缶を１本ずつ吊り出し、作業安全及び放射線安全を確保しつつ健全性を確認し、再度、積載して貯蔵庫に収納し直さなければならない。
【０００４】
ドラム缶を１本ずつ吊り出すものとしては、フォークリフトやクレーン等の吊上げ装置にドラム缶を吊り上げるために用いるドラム缶吊り具を取り付け、吊上げ装置によって吊り上げられる吊上げ枠上にクランプ装置を配備し、ドラム缶の耳部を上爪と下爪とで掴むようにしたものがある（例えば、特許文献１参照）。また、ビームの一端にドラム缶の端面周縁部の突起部に係合する第１の切欠き部を形成し、ビームの他端にはドラム缶の端面周縁部の突起部に係合する第２の切欠き部を備えビームの長手方向に摺動自在かつ所定位置でビームに固着する締着具を係合し、ビームにワイヤーロープあるいはチェーンを取り付けるための１個または複数個の吊り環を備え、ドラム缶を横吊りしてドラム缶内の油類を容易に取り出すことを可能にしたものがある（例えば、特許文献２参照）。
【特許文献１】特開２００３−４０５９３号公報
【特許文献２】実開平５−１２４７７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、貯蔵庫は天井が低く、特許文献１のものでは、クランプ装置を吊り下げる空間が必要となるので、崩落したドラム缶を吊り出すことが困難な場合がある。すなわち、貯蔵庫内において、ドラム缶が崩落した状態で微妙なバランスで安定している場合には、わずかな衝撃等でそのバランスが崩れ、ドラム缶が再崩落する可能性が高い。従って、このような状況下でドラム缶を１本ずつ吊り出すためには、他のドラム缶により加重されているドラム缶を後回しにし、他のドラム缶を加重しているドラム缶から吊り出す必要がある。そのためには、崩落した上部のドラム缶から吊り出すことが必要となるが、貯蔵庫は天井が低いので、クランプ装置を吊り下げる空間を確保するのが難しく、上部のドラム缶から吊り出すことは困難である。
【０００６】
また、特許文献２のものでは、棒状のビームの第１の切欠き部及びビームに固着される締着具の第２の切欠き部でドラム缶の端面周縁部の突起部を係合するので、ワイヤーロープやチェーンを短くすれば吊り下げる空間をあまり必要としないが、ドラム缶の吊り下げは、ドラム缶の端面周縁部の突起部に第１切欠き部を係合し、次に第２の切欠き部を係合して締着具をボルト締めして行うのでドラム缶の吊り下げ作業に時間がかかる。
【０００７】
本発明の目的は、天井の低い貯蔵庫内においてもドラム缶を吊り出すことができるドラム缶掴み具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１の発明に係わるドラム缶掴み具は、フレーム部材を屈曲して中央部に谷部を形成し前記谷部に吊り手を有した掴み具本体と、ドラム缶の端面周縁部を挟持するための挟持部と、前記掴み具本体の両端部に設けられ前記挟持部を前記掴み具本体に連結するためのシャックルとを備えたことを特徴とする。
【０００９】
請求項２の発明に係わるドラム缶掴み具は、請求項１の発明において、前記掴み具本体の両端部間の長さは、前記シャックルに挟持部を連結して前記ドラム缶の上下の端面周縁部をそれぞれ前記挟持部で挟持したときに前記ドラム缶を横吊りできる長さであることを特徴とする。
【００１０】
請求項３の発明に係わるドラム缶掴み具は、請求項１の発明において、前記掴み具本体の両端部間の長さは、前記シャックルに挟持部を連結して前記ドラム缶の上下いずれか一方の端面周縁部を前記挟持部で挟持したときに前記ドラム缶を縦吊りできる長さであることを特徴とする。
【００１１】
請求項４の発明に係わるドラム缶掴み具は、請求項１乃至３のいずれか１項の発明において、前記谷部の吊り手方向の長さは、前記掴み具本体の両端部間の長さより短く形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１２】
本発明によれば、掴み具本体は、フレーム部材を屈曲して中央部に谷部を形成し、その谷部に吊り手を設けてチェーンやワイヤーロープで吊すので、吊り手の位置が掴み具本体の両端部位置より下方となり、天井の低い貯蔵庫であってもドラム缶を吊り出すことができる。また、掴み具本体の両端部にシャックルを介して挟持部を連結し、挟持部にてドラム缶の端面周縁部を挟持するので、ドラム缶の把持を容易にしかも確実に行うことができる。
【００１３】
掴み具本体の両端部間の長さが、シャックルに挟持部を連結してドラム缶の上下の端面周縁部をそれぞれ挟持部で挟持したときにドラム缶を横吊りできる長さに形成したものを使用すれば、崩落した上部のドラム缶が横向きのドラム缶である場合には容易に横吊りできる。同様に、掴み具本体の両端部間の長さが、シャックルに挟持部を連結してドラム缶の上下いずれか一方の端面周縁部を挟持部で挟持したときにドラム缶を縦吊りできる長さに形成したものを使用すれば、崩落した上部のドラム缶が縦向きのドラム缶である場合には容易に縦吊りできる。
【００１４】
また、谷部の吊り手方向の長さ（谷の深さ）は、掴み具本体の両端部間の長さより短く形成しているので、ドラム缶を吊り下げた場合に谷部の吊り手が１８０°回転することがない。従って、天井との間の距離が短くても安定してドラム缶を吊り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
図１は本発明の実施の形態に係わるドラム缶掴み具の一例の構成図であり、図１（ａ）は正面図、図１（ｂ）はドラム缶掴み具の掴み具本体の平面図、図１（ｃ）はドラム缶掴み具のシャックルの正面図である。
【００１６】
ドラム缶掴み具１１は、掴み具本体１２の両端部にシャックル１３が設けられ、そのシャックル１３にドラム缶の端面周縁部を挟持するための挟持部１４が取り付けられている。掴み具本体１２はフレーム部材１５を屈曲して形成され中央部に谷部１６を有し、谷部１６には吊り手１７が設けられている。この吊り手１７から掴み具本体１２の両端部に向かって補強部１５ａが形成され、フレーム部材１５を補強している。掴み具本体１２の両端部には、挟持部１４を掴み具本体１２に連結するためのシャックル１３が、例えば溶接で取り付けられている。
【００１７】
掴み具本体１２の両端部のフレーム部材１５とシャックル１３とのなす角θは、挟持部１４でドラム缶の端面周縁部を挟持し吊り手１７にワイヤーロープやチェーンを掛けて吊り上げたときに、挟持部１４に作用する垂直方向の力と水平方向の力とを考慮して決められる。通常、角度θは６０°前後であり、５０°〜７０°の範囲とする。これにより、ドラム缶を持ち上げる垂直方向の力を確保するとともに、ドラム缶を挟持部１４で支えるための水平方向の力を確保する。
【００１８】
図２は挟持部１４の斜視図である。挟持部１４は、挟持片１８とフックレバー１９とが連結軸２０で連結され、フックレバー１９の取付部１９ａに取付金具が装着されてシャックル１３に取り付けられる。挟持片１８には固定爪１８ａとサポート部１８ｂとが形成されている。挟持片１８の固定爪１８ａは、フックレバー１９が連結軸２０を中心に回動したときフックレバー１９の駆動爪１９ｂとともにドラム缶の端面周縁部を挟持し、挟持片１８のサポート部１８ｂはドラム缶の表面と接触して挟持片１８を支持する。
【００１９】
無負荷状態では、挟持片１８の固定爪１８ａとフックレバー１９の駆動爪１９ｂとは、フックレバー１９に取り付けられた図示省略のバネにより接触しており、挟持片１８の固定爪１８ａとフックレバー１９の駆動爪１９ｂとでドラム缶の端面周縁部を挟持し、ドラム缶掴み具１１の吊り手１７が吊り下げられたとき、フックレバー１９の駆動爪１９ｂが連結軸２０を中心に挟持片１８の固定爪１８ａに挟持力を強める方向に回転する。従って、ドラム缶掴み具１１の吊り手１７の吊り下げにより、ドラム缶の端面周縁部の挟持力はより強固になる。
【００２０】
図３はドラム缶２１を縦方向に吊り下げた場合の外観図である。ドラム缶掴み具１１をドラム缶２１の上下いずれか一方の端面周縁部２４に装着し、ドラム缶掴み具１１を吊り下げ治具２２にチェーン２３で吊り下げる。この場合、ドラム缶掴み具１１の掴み具本体１２の両端部間の長さは、ドラム缶２１を縦吊りするのに適した長さとしている。ドラム缶２１を縦吊りするのに適した長さは、掴み具本体１２の両端部のシャックル１３に挟持部１４を連結して、縦方向としたドラム缶２１の端面周縁部２４を挟持部１４で挟持したときにドラム缶２１を縦吊りできる長さである。
【００２１】
まず、挟持部１４を縦方向のドラム缶２１の端面周縁部２４に装着する。具体的には、挟持片１８の固定爪１８ａとフックレバー１９の駆動爪１９ｂとでドラム缶２１の端面周縁部２４を挟む。前述したように、フックレバー１９に取り付けられたバネにより、挟持片１８の固定爪１８ａとフックレバー１９の駆動爪１９ｂとでドラム缶２１の端面周縁部２４を挟むことができる。この場合、挟持片１８のサポート部１８ｂはドラム缶の表面と接触して挟持片１８を支持することになる。
【００２２】
挟持部１４をドラム缶２１の端面周縁部２４に装着完了すると、ドラム缶掴み具１１を吊り下げ治具２２にチェーン２３で吊り下げる。ドラム缶掴み具１１が吊り下げられたとき、フックレバー１９の駆動爪１９ｂが連結軸２０を中心に挟持片１８の固定爪１８ａに挟持力を強める方向に回転するので、ドラム缶掴み具１１の吊り下げにより、ドラム缶の端面周縁部の挟持力はより強固になる。
【００２３】
ここで、掴み具本体１２の谷部１６の吊り手方向の長さ（谷の深さ）は、掴み具本体１２の両端部間の長さより短く形成している。これは、ドラム缶掴み具１１でドラム缶２１を吊り下げた場合に谷部１６の吊り手１７が１８０°回転することがないようにするためである。
【００２４】
以上の説明では、ドラム缶２１を縦方向に吊り下げた場合について説明したが、ドラム缶２１を横方向に吊り下げることも可能である。図４はドラム缶２１を横方向に吊り下げる場合のドラム缶掴み具の平面図である。図１に示したものに対し、ドラム缶掴み具１１の掴み具本体１２の両端部間の長さとしては、ドラム缶２１を横吊りするのに適した長さとしている。ドラム缶２１を横吊りするのに適した長さは、掴み具本体１２の両端部のシャックル１３に挟持部１４を連結して、横方向としたドラム缶２１の上下の端面周縁部２４をそれぞれ挟持部１４で挟持したときにドラム缶２１を横吊りできる長さである。
【００２５】
この場合も、ドラム缶掴み具１１でドラム缶２１を吊り下げた場合に谷部１６の吊り手１７が１８０°回転することがないようにするため、掴み具本体１２の谷部１６の吊り手方向の長さ（谷の深さ）は、掴み具本体１２の両端部間の長さより短く形成することになる。
【００２６】
図５はドラム缶２１を横方向に吊り下げた場合の外観図である。ドラム缶掴み具１１をドラム缶２１の上下の端面周縁部２４にそれぞれ装着し、ドラム缶掴み具１１を吊り下げ治具２２にチェーン２３で吊り下げる。この場合も、図３に示した縦吊りの場合と同様に、ドラム缶掴み具１１が吊り下げられたとき、フックレバー１９の駆動爪１９ｂが連結軸２０を中心に挟持片１８の固定爪１８ａに挟持力を強める方向に回転し、ドラム缶の端面周縁部の挟持力はより強固になる。
【００２７】
本発明の実施の形態によれば、ドラム缶掴み具１１の掴み具本体１２は、フレーム部材１５を屈曲して中央部に谷部１６を形成し、その谷部１６に吊り手１７を設けてチェーンやワイヤーロープで吊すので、吊り手１７の位置が掴み具本体１２の両端部位置より下方となる。従って、吊り出し位置が下方に設定できるので、天井の低い貯蔵庫であってもドラム缶２１を吊り出すことが可能となる。
【００２８】
また、ドラム缶掴み具１１の掴み具本体１２の両端部にはシャックル１３を溶接で取り付け、そのシャックル１３に挟持部１４を連結し、無負荷状態で固定爪１８ａと駆動爪１９ｂとがバネ力で接触している挟持部１４にてドラム缶２１の端面周縁部２４を挟持し、ドラム缶掴み具１１の吊り下げによりドラム缶２１の端面周縁部２４の挟持力をより強固にするので、ドラム缶２１の把持を容易にしかも確実に行うことができる。
【００２９】
また、ドラム缶掴み具１１の掴み具本体１２の長さを選択することにより、ドラム缶２１を横吊りまたは縦吊りできるので、崩落した上部のドラム缶が横向きあるいは縦向きのいずれであっても容易にドラム缶２１を吊り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００３０】
【図１】本発明の実施の形態に係わるドラム缶掴み具の一例の構成図。
【図２】本発明の実施の形態における挟持部の斜視図。
【図３】図１に示したドラム缶掴み具によりドラム缶を縦方向に吊り下げた場合の外観図。
【図４】本発明の実施の形態に係わるドラム缶掴み具の他の一例の構成図。
【図５】図４に示したドラム缶掴み具によりドラム缶を横方向に吊り下げた場合の外観図。
【符号の説明】
【００３１】
１１…ドラム缶掴み具、１２…掴み具本体、１３…シャックル、１４…挟持部、１５…フレーム部材、１５ａ…補強部、１６…谷部、１７…吊り手、１８…挟持片、１８ａ…固定爪、１８ｂ…サポート部、１９…フックレバー、１９ａ…取付部、１９ｂ…駆動爪、２０…連結軸、２１…ドラム缶、２２…吊り下げ治具、２３…チェーン、２４…端面周縁部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ドラム缶を個別に吊り上げて運搬する場合に用いられるドラム缶掴み具に関する。
【背景技術】
【０００２】
例えば、原子力発電所や放射性物質取扱施設などで発生する放射能レベルの低い各種の固体廃棄物は、ドラム缶に詰めて廃棄物貯蔵庫（貯蔵庫）に貯蔵され、最終的に減容処理した後セメント等により固化した上、埋設処分される。通常、ドラム缶は貯蔵庫に４本ずつ３段積みにして保管され、ドラム缶のハンドリング性と保管時の安定性を確保するために各段の間にパレットと呼ばれる金属製の平台を挿入している。すなわち、貯蔵庫にドラム缶を収納するにあたっては、１つのパレットに４本のドラム缶を積載し、それを１組としてフォークリフトで運搬して貯蔵庫の奥から順番に３段重ねの複数列にして収納するようにしている。
【０００３】
このような貯蔵庫にドラム缶を収納した状態で大きな地震が発生したとすると、パレットからドラム缶が崩落したりパレットが傾いたりすることがある。その場合、崩落したドラム缶の全数について、ドラム缶を１本ずつ吊り出し、作業安全及び放射線安全を確保しつつ健全性を確認し、再度、積載して貯蔵庫に収納し直さなければならない。
【０００４】
ドラム缶を１本ずつ吊り出すものとしては、フォークリフトやクレーン等の吊上げ装置にドラム缶を吊り上げるために用いるドラム缶吊り具を取り付け、吊上げ装置によって吊り上げられる吊上げ枠上にクランプ装置を配備し、ドラム缶の耳部を上爪と下爪とで掴むようにしたものがある（例えば、特許文献１参照）。また、ビームの一端にドラム缶の端面周縁部の突起部に係合する第１の切欠き部を形成し、ビームの他端にはドラム缶の端面周縁部の突起部に係合する第２の切欠き部を備えビームの長手方向に摺動自在かつ所定位置でビームに固着する締着具を係合し、ビームにワイヤーロープあるいはチェーンを取り付けるための１個または複数個の吊り環を備え、ドラム缶を横吊りしてドラム缶内の油類を容易に取り出すことを可能にしたものがある（例えば、特許文献２参照）。
【特許文献１】特開２００３−４０５９３号公報
【特許文献２】実開平５−１２４７７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、貯蔵庫は天井が低く、特許文献１のものでは、クランプ装置を吊り下げる空間が必要となるので、崩落したドラム缶を吊り出すことが困難な場合がある。すなわち、貯蔵庫内において、ドラム缶が崩落した状態で微妙なバランスで安定している場合には、わずかな衝撃等でそのバランスが崩れ、ドラム缶が再崩落する可能性が高い。従って、このような状況下でドラム缶を１本ずつ吊り出すためには、他のドラム缶により加重されているドラム缶を後回しにし、他のドラム缶を加重しているドラム缶から吊り出す必要がある。そのためには、崩落した上部のドラム缶から吊り出すことが必要となるが、貯蔵庫は天井が低いので、クランプ装置を吊り下げる空間を確保するのが難しく、上部のドラム缶から吊り出すことは困難である。
【０００６】
また、特許文献２のものでは、棒状のビームの第１の切欠き部及びビームに固着される締着具の第２の切欠き部でドラム缶の端面周縁部の突起部を係合するので、ワイヤーロープやチェーンを短くすれば吊り下げる空間をあまり必要としないが、ドラム缶の吊り下げは、ドラム缶の端面周縁部の突起部に第１切欠き部を係合し、次に第２の切欠き部を係合して締着具をボルト締めして行うのでドラム缶の吊り下げ作業に時間がかかる。
【０００７】
本発明の目的は、天井の低い貯蔵庫内においてもドラム缶を吊り出すことができるドラム缶掴み具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１の発明に係わるドラム缶掴み具は、フレーム部材を屈曲して中央部に谷部を形成し前記谷部に吊り手を有した掴み具本体と、ドラム缶の端面周縁部を挟持するための挟持部と、前記掴み具本体の両端部に設けられ前記挟持部を前記掴み具本体に連結するためのシャックルとを備えたことを特徴とする。
【０００９】
請求項２の発明に係わるドラム缶掴み具は、請求項１の発明において、前記掴み具本体の両端部間の長さは、前記シャックルに挟持部を連結して前記ドラム缶の上下の端面周縁部をそれぞれ前記挟持部で挟持したときに前記ドラム缶を横吊りできる長さであることを特徴とする。
【００１０】
請求項３の発明に係わるドラム缶掴み具は、請求項１の発明において、前記掴み具本体の両端部間の長さは、前記シャックルに挟持部を連結して前記ドラム缶の上下いずれか一方の端面周縁部を前記挟持部で挟持したときに前記ドラム缶を縦吊りできる長さであることを特徴とする。
【００１１】
請求項４の発明に係わるドラム缶掴み具は、請求項１乃至３のいずれか１項の発明において、前記谷部の吊り手方向の長さは、前記掴み具本体の両端部間の長さより短く形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１２】
本発明によれば、掴み具本体は、フレーム部材を屈曲して中央部に谷部を形成し、その谷部に吊り手を設けてチェーンやワイヤーロープで吊すので、吊り手の位置が掴み具本体の両端部位置より下方となり、天井の低い貯蔵庫であってもドラム缶を吊り出すことができる。また、掴み具本体の両端部にシャックルを介して挟持部を連結し、挟持部にてドラム缶の端面周縁部を挟持するので、ドラム缶の把持を容易にしかも確実に行うことができる。
【００１３】
掴み具本体の両端部間の長さが、シャックルに挟持部を連結してドラム缶の上下の端面周縁部をそれぞれ挟持部で挟持したときにドラム缶を横吊りできる長さに形成したものを使用すれば、崩落した上部のドラム缶が横向きのドラム缶である場合には容易に横吊りできる。同様に、掴み具本体の両端部間の長さが、シャックルに挟持部を連結してドラム缶の上下いずれか一方の端面周縁部を挟持部で挟持したときにドラム缶を縦吊りできる長さに形成したものを使用すれば、崩落した上部のドラム缶が縦向きのドラム缶である場合には容易に縦吊りできる。
【００１４】
また、谷部の吊り手方向の長さ（谷の深さ）は、掴み具本体の両端部間の長さより短く形成しているので、ドラム缶を吊り下げた場合に谷部の吊り手が１８０°回転することがない。従って、天井との間の距離が短くても安定してドラム缶を吊り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
図１は本発明の実施の形態に係わるドラム缶掴み具の一例の構成図であり、図１（ａ）は正面図、図１（ｂ）はドラム缶掴み具の掴み具本体の平面図、図１（ｃ）はドラム缶掴み具のシャックルの正面図である。
【００１６】
ドラム缶掴み具１１は、掴み具本体１２の両端部にシャックル１３が設けられ、そのシャックル１３にドラム缶の端面周縁部を挟持するための挟持部１４が取り付けられている。掴み具本体１２はフレーム部材１５を屈曲して形成され中央部に谷部１６を有し、谷部１６には吊り手１７が設けられている。この吊り手１７から掴み具本体１２の両端部に向かって補強部１５ａが形成され、フレーム部材１５を補強している。掴み具本体１２の両端部には、挟持部１４を掴み具本体１２に連結するためのシャックル１３が、例えば溶接で取り付けられている。
【００１７】
掴み具本体１２の両端部のフレーム部材１５とシャックル１３とのなす角θは、挟持部１４でドラム缶の端面周縁部を挟持し吊り手１７にワイヤーロープやチェーンを掛けて吊り上げたときに、挟持部１４に作用する垂直方向の力と水平方向の力とを考慮して決められる。通常、角度θは６０°前後であり、５０°〜７０°の範囲とする。これにより、ドラム缶を持ち上げる垂直方向の力を確保するとともに、ドラム缶を挟持部１４で支えるための水平方向の力を確保する。
【００１８】
図２は挟持部１４の斜視図である。挟持部１４は、挟持片１８とフックレバー１９とが連結軸２０で連結され、フックレバー１９の取付部１９ａに取付金具が装着されてシャックル１３に取り付けられる。挟持片１８には固定爪１８ａとサポート部１８ｂとが形成されている。挟持片１８の固定爪１８ａは、フックレバー１９が連結軸２０を中心に回動したときフックレバー１９の駆動爪１９ｂとともにドラム缶の端面周縁部を挟持し、挟持片１８のサポート部１８ｂはドラム缶の表面と接触して挟持片１８を支持する。
【００１９】
無負荷状態では、挟持片１８の固定爪１８ａとフックレバー１９の駆動爪１９ｂとは、フックレバー１９に取り付けられた図示省略のバネにより接触しており、挟持片１８の固定爪１８ａとフックレバー１９の駆動爪１９ｂとでドラム缶の端面周縁部を挟持し、ドラム缶掴み具１１の吊り手１７が吊り下げられたとき、フックレバー１９の駆動爪１９ｂが連結軸２０を中心に挟持片１８の固定爪１８ａに挟持力を強める方向に回転する。従って、ドラム缶掴み具１１の吊り手１７の吊り下げにより、ドラム缶の端面周縁部の挟持力はより強固になる。
【００２０】
図３はドラム缶２１を縦方向に吊り下げた場合の外観図である。ドラム缶掴み具１１をドラム缶２１の上下いずれか一方の端面周縁部２４に装着し、ドラム缶掴み具１１を吊り下げ治具２２にチェーン２３で吊り下げる。この場合、ドラム缶掴み具１１の掴み具本体１２の両端部間の長さは、ドラム缶２１を縦吊りするのに適した長さとしている。ドラム缶２１を縦吊りするのに適した長さは、掴み具本体１２の両端部のシャックル１３に挟持部１４を連結して、縦方向としたドラム缶２１の端面周縁部２４を挟持部１４で挟持したときにドラム缶２１を縦吊りできる長さである。
【００２１】
まず、挟持部１４を縦方向のドラム缶２１の端面周縁部２４に装着する。具体的には、挟持片１８の固定爪１８ａとフックレバー１９の駆動爪１９ｂとでドラム缶２１の端面周縁部２４を挟む。前述したように、フックレバー１９に取り付けられたバネにより、挟持片１８の固定爪１８ａとフックレバー１９の駆動爪１９ｂとでドラム缶２１の端面周縁部２４を挟むことができる。この場合、挟持片１８のサポート部１８ｂはドラム缶の表面と接触して挟持片１８を支持することになる。
【００２２】
挟持部１４をドラム缶２１の端面周縁部２４に装着完了すると、ドラム缶掴み具１１を吊り下げ治具２２にチェーン２３で吊り下げる。ドラム缶掴み具１１が吊り下げられたとき、フックレバー１９の駆動爪１９ｂが連結軸２０を中心に挟持片１８の固定爪１８ａに挟持力を強める方向に回転するので、ドラム缶掴み具１１の吊り下げにより、ドラム缶の端面周縁部の挟持力はより強固になる。
【００２３】
ここで、掴み具本体１２の谷部１６の吊り手方向の長さ（谷の深さ）は、掴み具本体１２の両端部間の長さより短く形成している。これは、ドラム缶掴み具１１でドラム缶２１を吊り下げた場合に谷部１６の吊り手１７が１８０°回転することがないようにするためである。
【００２４】
以上の説明では、ドラム缶２１を縦方向に吊り下げた場合について説明したが、ドラム缶２１を横方向に吊り下げることも可能である。図４はドラム缶２１を横方向に吊り下げる場合のドラム缶掴み具の平面図である。図１に示したものに対し、ドラム缶掴み具１１の掴み具本体１２の両端部間の長さとしては、ドラム缶２１を横吊りするのに適した長さとしている。ドラム缶２１を横吊りするのに適した長さは、掴み具本体１２の両端部のシャックル１３に挟持部１４を連結して、横方向としたドラム缶２１の上下の端面周縁部２４をそれぞれ挟持部１４で挟持したときにドラム缶２１を横吊りできる長さである。
【００２５】
この場合も、ドラム缶掴み具１１でドラム缶２１を吊り下げた場合に谷部１６の吊り手１７が１８０°回転することがないようにするため、掴み具本体１２の谷部１６の吊り手方向の長さ（谷の深さ）は、掴み具本体１２の両端部間の長さより短く形成することになる。
【００２６】
図５はドラム缶２１を横方向に吊り下げた場合の外観図である。ドラム缶掴み具１１をドラム缶２１の上下の端面周縁部２４にそれぞれ装着し、ドラム缶掴み具１１を吊り下げ治具２２にチェーン２３で吊り下げる。この場合も、図３に示した縦吊りの場合と同様に、ドラム缶掴み具１１が吊り下げられたとき、フックレバー１９の駆動爪１９ｂが連結軸２０を中心に挟持片１８の固定爪１８ａに挟持力を強める方向に回転し、ドラム缶の端面周縁部の挟持力はより強固になる。
【００２７】
本発明の実施の形態によれば、ドラム缶掴み具１１の掴み具本体１２は、フレーム部材１５を屈曲して中央部に谷部１６を形成し、その谷部１６に吊り手１７を設けてチェーンやワイヤーロープで吊すので、吊り手１７の位置が掴み具本体１２の両端部位置より下方となる。従って、吊り出し位置が下方に設定できるので、天井の低い貯蔵庫であってもドラム缶２１を吊り出すことが可能となる。
【００２８】
また、ドラム缶掴み具１１の掴み具本体１２の両端部にはシャックル１３を溶接で取り付け、そのシャックル１３に挟持部１４を連結し、無負荷状態で固定爪１８ａと駆動爪１９ｂとがバネ力で接触している挟持部１４にてドラム缶２１の端面周縁部２４を挟持し、ドラム缶掴み具１１の吊り下げによりドラム缶２１の端面周縁部２４の挟持力をより強固にするので、ドラム缶２１の把持を容易にしかも確実に行うことができる。
【００２９】
また、ドラム缶掴み具１１の掴み具本体１２の長さを選択することにより、ドラム缶２１を横吊りまたは縦吊りできるので、崩落した上部のドラム缶が横向きあるいは縦向きのいずれであっても容易にドラム缶２１を吊り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００３０】
【図１】本発明の実施の形態に係わるドラム缶掴み具の一例の構成図。
【図２】本発明の実施の形態における挟持部の斜視図。
【図３】図１に示したドラム缶掴み具によりドラム缶を縦方向に吊り下げた場合の外観図。
【図４】本発明の実施の形態に係わるドラム缶掴み具の他の一例の構成図。
【図５】図４に示したドラム缶掴み具によりドラム缶を横方向に吊り下げた場合の外観図。
【符号の説明】
【００３１】
１１…ドラム缶掴み具、１２…掴み具本体、１３…シャックル、１４…挟持部、１５…フレーム部材、１５ａ…補強部、１６…谷部、１７…吊り手、１８…挟持片、１８ａ…固定爪、１８ｂ…サポート部、１９…フックレバー、１９ａ…取付部、１９ｂ…駆動爪、２０…連結軸、２１…ドラム缶、２２…吊り下げ治具、２３…チェーン、２４…端面周縁部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
フレーム部材を屈曲して中央部に谷部を形成し前記谷部に吊り手を有した掴み具本体と、
ドラム缶の端面周縁部を挟持するための挟持部と、
前記掴み具本体の両端部に設けられ前記挟持部を前記掴み具本体に連結するためのシャックルとを備えたことを特徴とするドラム缶掴み具。
【請求項２】
前記掴み具本体の両端部間の長さは、前記シャックルに挟持部を連結して前記ドラム缶の上下の端面周縁部をそれぞれ前記挟持部で挟持したときに前記ドラム缶を横吊りできる長さであることを特徴とする請求項１記載のドラム缶掴み具。
【請求項３】
前記掴み具本体の両端部間の長さは、前記シャックルに挟持部を連結して前記ドラム缶の上下いずれか一方の端面周縁部を前記挟持部で挟持したときに前記ドラム缶を縦吊りできる長さであることを特徴とする請求項１記載のドラム缶掴み具。
【請求項４】
前記谷部の吊り手方向の長さは、前記掴み具本体の両端部間の長さより短く形成したことを特徴とする請求項１乃至３のいずれか１項に記載のドラム缶掴み具。
【請求項１】
フレーム部材を屈曲して中央部に谷部を形成し前記谷部に吊り手を有した掴み具本体と、
ドラム缶の端面周縁部を挟持するための挟持部と、
前記掴み具本体の両端部に設けられ前記挟持部を前記掴み具本体に連結するためのシャックルとを備えたことを特徴とするドラム缶掴み具。
【請求項２】
前記掴み具本体の両端部間の長さは、前記シャックルに挟持部を連結して前記ドラム缶の上下の端面周縁部をそれぞれ前記挟持部で挟持したときに前記ドラム缶を横吊りできる長さであることを特徴とする請求項１記載のドラム缶掴み具。
【請求項３】
前記掴み具本体の両端部間の長さは、前記シャックルに挟持部を連結して前記ドラム缶の上下いずれか一方の端面周縁部を前記挟持部で挟持したときに前記ドラム缶を縦吊りできる長さであることを特徴とする請求項１記載のドラム缶掴み具。
【請求項４】
前記谷部の吊り手方向の長さは、前記掴み具本体の両端部間の長さより短く形成したことを特徴とする請求項１乃至３のいずれか１項に記載のドラム缶掴み具。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１０−１００３５１（Ｐ２０１０−１００３５１Ａ）
【公開日】平成２２年５月６日（２０１０．５．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２７０６８７（Ｐ２００８−２７０６８７）
【出願日】平成２０年１０月２１日（２００８．１０．２１）
【出願人】（０００００３６８７）東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】（５９１１３０３１９）東電環境エンジニアリング株式会社 (27)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年５月６日（２０１０．５．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１０月２１日（２００８．１０．２１）
【出願人】（０００００３６８７）東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】（５９１１３０３１９）東電環境エンジニアリング株式会社 (27)
【Ｆターム（参考）】
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