説明

ドラム缶搬送用のパレット

【課題】ドラム缶の荷役作業を簡単かつ短時間で行うことを可能とし、さらに荷役作業に要する資材を減らすとともにリターナブルを実現すること。
【解決手段】単数又は複数のドラム缶を載せる下パレット3と、単数又は複数のドラム缶を下パレット3との間に挟持する上パレット5とを備えた一対のパレット1からなり、ドラム缶39を挟んで保持する下パレット3と上パレット5のシート材17,25の少なくとも一方は合成樹脂製又はゴム製の材料で形成され、下パレット3と上パレット5の側面には、下パレット3と上パレット5を互いに固定する紐又は金具が通される複数の引っ掛け部19,27が設けられ、下パレット3には、フォークリフトの爪が挿入可能な脚部が設けられてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム缶をコンテナ等に積み込んで搬送する際に用いるドラム缶搬送用のパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
化学工場向けの原料等、特殊な液体を収容したドラム缶等をコンテナ内に積み込んで輸送することがある。このような場合、例えば、複数のドラム缶を汎用のパレットの上に載せ、パレットごとフォークリフトでコンテナ内に搬送する作業が行われている。
【0003】
特許文献1には、ドラム缶を載せるパレットの上面に、ドラム缶の底の巻締部(円形の突起部)に対応して突出するガイドを設けることが開示されている。これによれば、ドラム缶の巻締部がガイドに位置決めされた状態でパレットの上に設置されるため、パレット上でドラム缶がずれるのを防ぐことができる。また、このような突起が上面と下面の両面に形成されたパレットを、1段目のドラム缶と2段目のドラム缶の間に介在させて積み上げることにより、複数段のドラム缶を安定させて保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−26353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、輸送時にはコンテナ内が揺れることがあるため、特許文献1のパレットを用いてドラム缶を積み上げただけでは、ドラム缶を安定して保持することができず、横揺れや荷崩れ等を起こしてドラム缶同士が接触することも考えられる。特に、特殊な液体等が収容されるドラム缶には、高い品質が求められるため、ドラム缶の表面に傷が付かないように表面を保護する必要があった。したがって、従来は、ドラム缶がパレットの上でずれないようにPPバンド(ポリプロピレン製のバンド)等でパレットとドラム缶を縛り付け、さらにそのドラム缶をコンテナ内で動かないように固定する作業が行われていた。
【0006】
ここで、従来のドラム缶の荷役作業について具体的に説明する。まず、1枚の汎用のパレットの上に複数(例えば4つ)のドラム缶を載せ、これらのドラム缶同士の隙間にダンボールシート等の緩衝材を挟む。そして、ドラム缶の頂部に取っ手がある場合は、その取っ手とパレットをPPバンドで縛りつけた後、ドラム缶同士をPPバンドで縛りつける。そして、ドラム缶を載せたパレットをストレッチフィルム包装機の上に載せ、ドラム缶とパレットをストレッチフィルムで複数回巻き付ける。このようにしてドラム缶とパレットを一体化したものをフォークリフトでコンテナ内に積み込む。
【0007】
コンテナ内に積み込まれたドラム缶は、輸送時の縦揺れでコンテナの床から浮き上がるのを防ぐため、ドラム缶の上に木材等の支持棒を載せ、その支持棒を下方、つまりドラム缶に押し付けるようにして、コンテナの内壁に支持棒をPPバンドで縛り付ける。さらに、横揺れによるドラム缶のずれを防ぐため、ドラム缶やパレットとコンテナの内壁との隙間にパレット等の緩衝材が設けられる。
【0008】
このように従来の荷役作業では、ダンボールシート等の緩衝材やPPバンド、ストレッチフィルム等、多くの資材が使用され、また、作業工程も多くなることから、荷役作業に多くの時間を要していた。また、これらの資材には再利用できないものが多く、廃棄物として処分するしかないため、経済的な問題も生じていた。
【0009】
本発明は、ドラム缶の荷役作業を簡単かつ短時間で行うことを可能とし、さらに荷役作業に要する資材を減らすとともにリターナブル(回収、再利用)が可能なドラム缶搬送用のパレットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、単数又は複数のドラム缶を載せる下パレットと、単数又は複数のドラム缶を下パレットとの間に挟持する上パレットとを備えた一対のパレットからなり、ドラム缶を挟んで保持する下パレットと上パレットの保持面の少なくとも一方は合成樹脂製又はゴム製の材料で形成され、下パレットと上パレットの側面には、下パレットと上パレットを互いに固定する紐又は金具が通される複数の引っ掛け部が設けられ、下パレットには、フォークリフトの爪が挿入可能な脚部が設けられてなることを特徴とする。
【0011】
このようにドラム缶を一対のパレットの間で挟持するようにすれば、両パレットにそれぞれ設けられた複数の引っ掛け部を利用してドラム缶を固縛することができるため、ドラム缶の固縛作業を効率的に行うことができる。また、一対のパレットの間に複数のドラム缶を挟持する場合、各ドラム缶の両端の少なくとも一方は合成樹脂製又はゴム製の材料で形成された保持面に押し付けられるため、保持面に対するドラム缶のずれを抑制することができ、ドラム缶同士の接触を防ぐことができる。さらに、ドラム缶の両端をそれぞれ一対のパレットの内側に配置し、ドラム缶がパレットからはみださないようにすることで他のパレットに挟持されたドラム缶との接触を防ぐことができる。このため、ドラム缶同士の隙間に緩衝材等を設ける必要がなく、また、ストレッチフィルム等でドラム缶の表面を覆う必要もないため、作業時に生じる廃材を削減することができる。
【0012】
また、一対のパレットでドラム缶を固縛する際には、例えば、バンドを所望の長さに調整して使用できるラッシングベルトや、ターンバックル、ワイヤ等を用いることができる。これらはいずれも回収して再利用することができるため、これらを用いることにより、廃材をさらに削減することができ、或いは、皆無にすることもできる。さらに、パレット自体は何度でも使用することができるため、リターナブルを実現することができる。
【0013】
また、下パレットには、フォークリフトの爪が挿入可能な脚部が設けられているため、フォークリフトでドラム缶をコンテナに搬送することができる。コンテナに積み込まれたドラム缶は、上パレットの引っ掛け部を利用することでコンテナの内壁に紐等で縛り付けることができるため、従来のように支持棒や緩衝材等を用いる必要がなく、コンテナ内での固定作業を効率良く行うことができる。
【0014】
また、本発明のパレットは、上パレットの側面に、上パレットと下パレットを重ね合わせたときに下パレットの側面を包囲する複数の枠材が設けられ、この複数の枠材は、下パレットの側面を包囲する方向と反対方向にも延在して形成されてなるものとする。
【0015】
このような枠材を設けることにより、コンテナ内でドラム缶を複数段に積み上げて輸送する際に、例えば2段目のドラム缶を挟持する下パレットを1段目のドラム缶を挟持する上パレットの上に重ねて配置した場合、下パレットの少なくとも脚部が上パレットの枠体の内側に収まり、位置決めがされる。このため、上パレットと下パレットのずれを防ぐことができ、段積みしたときの安定性を高めることができる。また、パレットは、使用後に、下パレット、上パレット、下パレットの順に積み上げられた状態で保管され、或いは回収されるが、各パレットは互いに枠体で支持された状態で積み上げられるため、保管時にずれることがなく、また、フォークリフト等で搬送しても崩れることがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ドラム缶の荷役作業を簡単かつ短時間で行うことができ、さらに荷役作業に要する資材を減らすとともにリターナブル(回収、再利用)が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るドラム缶搬送用のパレットの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の下パレットを下方から見た平面図である。
【図3】図1の上パレットを上方から見た平面図である。
【図4】図1のパレットの保管又は回収時の状態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るドラム缶搬送用のパレットを積み上げた状態で保管又は回収する状態を示す側面図である。
【図6】本発明に係るドラム缶搬送用のパレットにおいて、PPバンドでドラム缶を挟持する状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用してなるドラム缶搬送用のパレットの実施形態について図面を参照して具体的に説明する。なお、本実施形態において、ドラム缶とは、金属を主材料とする円筒状の容器(例えば、18リッタ以上400リッタ以下)を意味するが、取っ手の付いた所謂ペール缶等も含むものとし、内容物についても特に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態のパレットは、下パレットと上パレットから構成され、常に下パレットと上パレットがセットで使用される。下パレットの上に設置されたドラム缶の上に上パレットを載せ、下パレットと上パレットを互いに締め付けることにより、一対のパレットの間にドラム缶が保持されるようになっている。なお、本実施形態のパレットは、ドラム缶を1本から4本まで保持することができるようになっているが、以下の説明では4本を保持する例を説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のパレット1は、下パレット3と上パレット5から構成される。下パレット3は、外形が同じ大きさの正方形に形成された2枚の外枠7,9が、脚部11を挟んで積み重なるようにして形成される。脚部11は、外枠7,9の四隅を互いに接続する脚部11aと、四隅からそれぞれ外枠7,9の各辺に沿って順に設けられる脚部11b、11cから構成される。脚部11aと脚部11bの互いに対向する面には、これらの面と直交する方向(水平方向)に延在する円柱状のパイプ13の両端がそれぞれ接続されている。
【0021】
外枠7は、脚部11が接続される端面と反対側の端面が接地面となる。外枠9は、図2に示すように、十文字に交差する2本の補強材15a,15bによって補強されている。2本の補強材15a,15bの両端はそれぞれ外枠9の対向する辺に接続されている。補強材15a,15bの端面は、少なくとも外枠9の脚部11が接続される端面と反対側の端面と面一になるように形成されている。
【0022】
外枠9の脚部11が接続される端面と反対側の端面と、補強材15a,15bの端面には、外枠9と同じ大きさの正方形に形成されたゴム製のシート材17が貼り付けられている。シート材17は、ゴム製に限られず、合成樹脂等で形成することもできる。なお、外枠9及び補強材15の端面とシート材17との間には補強用の板材を設けるようにしてもよい。
【0023】
外枠9を形成する4つの側面には、それぞれ棒材を略U字状に折り曲げて形成される3つのフック19a,19b,19cが側面から突出して設けられている。各フック19は、外枠9の各側面の長手方向に沿って互いに等間隔で設けられている。
【0024】
一方、上パレット5は、図3に示すように、5本の補強材21によって補強された外枠23と、シート材25から構成される。外枠23は、外形が下パレット3の外枠7,9と同じ大きさの正方形に形成されている。補強材21は、4本の補強材21aと1本の補強材21bからなり、各補強材21aの両端はそれぞれ外枠23の隣り合う辺と接続されて菱形をなしており、その菱形の対角線上の頂点同士を渡して補強材21bが設けられている。5本の補強材21の端面は、少なくとも外枠23の一方の端面と面一になるように形成されている。
【0025】
外枠23の一方の端面、つまり外枠23と補強材21の端面同士が面一となる端面には、下パレット3と同じ大きさに形成された正方形のゴム製のシート材25が貼り付けられている。シート材25は、シート材17と同様、ゴム製に限られず、合成樹脂等で形成することもできる。また、シート材25は、正方形に限らず、補強材21a,21bの端面(ドラム缶と対向する面)と略同じ形状に形成されたものが、補強材21a,21bの端面に貼り付けられていてもよい。
【0026】
外枠23の4つの側面にはそれぞれ下パレット3と同じ構造を有する3つのフック27a,27b,27cが側面から突出して設けられている。各フック27は、外枠23の各側面の長手方向に沿って互いに等間隔で設けられている。
【0027】
外枠23の四隅には、それぞれリング状に形成された枠材29が取り付けられている。この枠材29は、棒材の両端同士を接続して矩形に形成され、その対向する一対の辺をそれぞれ略直角に折り曲げ、他の対向する一対の辺がそれぞれ外枠23の四隅で交わる2つの側面に当接する状態で外枠23に取り付けられている。枠材29は、外枠23の側面に当接する一対の辺がそれぞれ外枠23の両端面を超えて上下に延在するように取り付けられている。
【0028】
このようにして形成される各枠材29には、それぞれターンバックル31が接続されている。ターンバックル31は、雌ネジである胴部33にそれぞれアイボルト35とU字状に折り返した折り返しボルト37が螺合された構造となっており、枠材29にはアイボルト35が接続されている。
【0029】
次に、このようにして構成されるパレットの使用方法の一例について図面を参照して説明する。なお、以下の例では、4本のドラム缶を1つのパレット1で搬送する例を説明するが、4本のドラム缶はいずれも同じサイズであるものとする。
【0030】
先ず、下パレット3を所定位置に設置する。このとき下パレット3はシート材17が上向きの状態となっている。次に、設置された下パレット3のシート材17の上に、図1に示すように、4本のドラム缶39を載せる。ここで、ドラム缶39は、シート材17、つまり、下パレット3から外側にはみ出さないように設置する。こうすることで、例えば、コンテナ内において、他のパレット1に保持されたドラム缶との接触を防ぐことができる。シート材17に設置されたドラム缶39は、互いに所定の隙間を設けて配置される。
【0031】
次に、下パレット3の上に設置された4本のドラム缶39の上に、シート材25を下に向けた上パレット5を載せる(図1)。続いて、上パレット5の枠材29から吊り下げられた4本のターンバックル31の折り返しボルト37の先をそれぞれ下パレット3の四隅に設けられたパイプ13に引っ掛ける。そして、4本のターンバックル31の胴部35を交互に回していく。これにより、4本のドラム缶39は、下パレット3と上パレット5の両方から均等に押し付けられるため、両パレットの間にドラム缶39が保持される。このとき、ドラム缶39は、底板(地板)と天板(天蓋)の両方がそれぞれシート材17,25に押し付けられるため、シート材17,25との間の強い摩擦により横ずれが抑制される。
【0032】
次に、ドラム缶39を保持したパレット1をコンテナまで搬送する。ここで、下パレット3には、外枠7と外枠9との間にフォークポケットとなる空間が形成されているため、フォークリフトの2本のフォーク(爪)をそれぞれ脚部11bと脚部11cとの間に挿入することでドラム缶39をパレット1ごと持ち上げることができる。こうしてコンテナ内に搬送されたパレット1は、フォークリフトから降ろされ、コンテナ内の所定位置に設置される。
【0033】
続いて、コンテナ内に既に設置されているパレット1の上に、ドラム缶39を保持した別のパレット1が、フォークリフトにより積み上げられる。このとき、別のパレット1の下パレット3及び脚部11aは、既に設置されているパレット1の上パレット5の四隅に設けられた4つの枠材29の内側に案内されて積み上げられる。したがって、パレット1同士がずれた状態で積み上げられることがなく、また、輸送中の揺れや振動等によるパレット1間のずれを防ぐことができる。
【0034】
次に、コンテナ内に複数段(通常は2段)で積み上げられたパレット1のフック27又は枠材29とコンテナ内の床フックとの間をラッシングバンドやワイヤ等で繋ぐことにより、複数段のパレット1をコンテナ内に固定する。
【0035】
こうしてコンテナによって輸送されたドラム缶39は、目的地において、再びフォークリフトで1段ずつコンテナからパレット1ごと積み下ろされ、所定位置まで運ばれる。そして、パレット1のターンバックル31の胴部35を回転させて緩め、上パレット5を取り外した後、下パレット3からドラム缶39が積み下ろされる。
【0036】
ドラム缶39が積み下ろされたパレット1、つまり使用後のパレット1は、次に使用されるときまで所定の場所に保管されるか或いはコンテナ等で回収される。ここで、パレット1は、下パレット3と上パレット5が常にセットで使用されるため、保管又は回収時においてもセットで保管又は回収される。図4に示すように、パレット1は、下パレット3のシート材17と上パレット5のシート材25を互いに重ね合わせた状態で保管又は回収される。また、ターンバックル31は、折り返しボルト37を上パレット5のフック27に引っ掛けることにより、全体としてコンパクトに収めることができる。なお、折り返しボルト37は、フック27に代えて、下パレット3のフック19に引っ掛けるようにすれば、下パレット3と上パレット5を連結した状態で保管又は回収することもできる。
【0037】
さらに、このようにして重ね合わせたパレット1を複数段積み上げた状態で保管又は回収することもできる。図5にパレット1を複数段積み上げた状態の一例を示す。なお、図5は、下パレット3において、外枠7、脚部11b及びパイプ13を省略している。
【0038】
これによれば、上パレット5に設けられた枠材29によってさらにその上に積み上げられたパレット1が下から支持されるため、隣り合うパレット1間のずれを防ぐことができ、段積みする際の安定性を高めることができる。したがって、例えば、高く段積みされたパレット1の山ごとフォークリフト等で搬送しても崩れることがなく、またコンテナ等で搬送する際のずれを防ぐこともできる。
【0039】
ところで、上述した実施形態では、下パレット3と上パレット5をターンバックル31で互いに締め付ける例を説明したが、パレット間を締め付ける手段としては、ターンバックル31のような金具に限られず、例えば、PPバンドやラッシングベルト等の紐状の部材を用いることもできる。
【0040】
図6にドラム缶39を保持した下パレット3と上パレット5をラッシングベルト41で締め付ける例を示す。図6は、下パレット3において、外枠7、脚部11b及びパイプ13を省略している。このように紐状の部材を用いる場合、ターンバックル31のように枠材29とパイプ13を用いるのではなく、下パレット3のフック19と上パレット5のフック27を用いることで作業効率を高めることができる。例えば、図6では、下パレット3の側面と上パレット5の側面において、フック19bとフック27bにそれぞれラッシングベルト41を通して締め付けているが、このようにしても、下パレット3と上パレット5の間にドラム缶39を保持することができる。ラッシングベルト41は、荷締機を有しているため、調整した長さに固定することができ、PPバンドを用いるよりも作業性を高めることができる。また、PPバンドはリサイクルが難しいため廃材となるが、ラッシングベルト41は、繰り返し使用できるため、リターナブルを実現できる。また、フック19とフック27には、紐状の部材に限らず、ターンバックル31等、周知の金具を取り付けて締め付けることもできる。なお、フック19,27及びパイプ13、枠材29は、いずれも紐や金具等を通すための引っ掛け部として機能することから、ドラム缶39を保持する際にいずれを使用するかは、作業性等を考慮して適宜設定することができる。
【0041】
本実施形態では、下パレット3の各側面にそれぞれフック19a,19b,19cを設け、上パレット5の各側面にそれぞれフック27a,27b,27cを設けることにより、フック19aとフック27a、フック19bとフック27b、フック19cとフック27cがそれぞれパレットの各側面の長手方向に対して同じ位置に配置されている。このため、下パレット3と上パレット5を締め付ける作業において、各フックを容易に識別することができ、ラッシングベルト等を用いて作業する際の案内としての機能をもたせることができる。したがって、作業者はフックの位置を間違えることなく、ラッシングベルトやPPバンドをフックに通して締め付けることができ、作業性を高めることができる。なお、各フックの設置位置や設置数は、作業性を考慮して適宜設定することができる。
【0042】
本実施形態のパレット1では、下パレット3と上パレット5をラッシングベルト等で固縛する際に下パレット3と上パレット5にそれぞれ設けられた複数のフック19,27を適宜利用することができるため、取っ手がないドラム缶でも簡単にパレットに固縛することができ、また、取っ手があるドラム缶でも取っ手の位置の制限を受けることなく、簡単にパレットに固縛することができる。
【0043】
本実施形態によれば、各ドラム缶39の両端はそれぞれ摩擦抵抗の大きいシート材17,25に押し付けられるため、ドラム缶39の位置ずれを抑制することができ、ドラム缶39同士の接触による傷の発生を防ぐことができる。このため、ドラム缶39同士の隙間に緩衝材等を設ける必要がなく、また、ストレッチフィルム等でドラム缶39やパレットを巻き付ける必要もない。したがって、荷役作業の工程数を削減することができ、作業時間を大幅に短縮することができる。また、緩衝材やストレッチフィルム等が不要になることに加えて、両パレットをラッシングベルト41やターンバックル31等で締め付けるようにすれば、荷役作業における廃材をなくすことができるため、経済性を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態では、上パレット5の四隅に枠材29を設けているため、ドラム缶39を保持したパレット1を積み上げて輸送する際、パレット1間のずれを防ぐことができ、安定性を高めることができる。このため、ドラム缶をより安全な状態で輸送することが可能になる。加えて、使用後のパレット1は、下パレット3と上パレット5を交互に重ね合わせ、枠材29で互いに支持された状態で積み重ねられ、保管又は回収される。このため、積み重ねた状態のパレット1をフォークリフト等で搬送しても崩れることがなく、またコンテナ等で搬送する際のずれを防ぐこともできる。
【0045】
また、本実施形態では、下パレット3及び上パレット5をそれぞれ金属製の枠材と補強材を使用することで所望の強度を確保しており、軽量化とのバランスを考慮して設計がなされている。ここで、各パレットの外枠と補強材の配置については、予めドラム缶の大きさが決められている場合、ドラム缶の大きさや配置を考慮して決めることができる。例えば、下パレット3においては、図2に示すように、4本のドラム缶37の外周の4箇所が下パレット3の外枠9及び補強材15a,15bの上にそれぞれ掛るように設計することが好ましい。
【0046】
また、本実施形態のパレット1は、ドラム缶37を1本から4本まで保持できるように設計されているが、いずれの本数を設置する場合も、ドラム缶37の設置位置は、重心が下パレット3の略中央の位置になるように決められている。ここで、例えば、下パレット3のシート材17の代わりに、同じ形をした薄い補強用の鉄製の板材を設け、その板材の上に、特開昭62−26353号公報に記載されているドラム缶37の位置決め用の突起又は突条を設けるようにしてもよい。このようにすれば、シート材17を用いた場合と同様に、ドラム缶37のずれを防止することができ、かつ、下パレット3の強度を高めることができる。
【0047】
図2及び図3には、ドラム缶37の設置数が4個、3個、2個のときの設置位置をそれぞれ、X、Y、Zで表している。このようにドラム缶37を配置することで、フォークリフトやコンテナでドラム缶37を搬送する際のドラム缶37の傾きを抑制することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0049】
例えば、本実施形態では、上パレット5の枠材29にターンバックル31のアイボルト35を連結させる構造を採用するため、現場でターンバックル31が紛失するのを防ぐ効果を期待できるが、その反面、ターンバックル31が一旦取り付けられると、簡単には取り外しができなくなる。このため、ターンバックル31は、必要に応じて枠材29に取り付けて使用される。ターンバックル31がなくても、ラッシングベルト等の他の締結手段を用いることにより、何ら支障なくドラム缶39をパレットの間に保持することができるためである。
【0050】
また、本実施形態の下パレット3は、2枚の外枠7,9が脚部11を挟んで積み重なるようにして構成される例を説明したが、例えば、ドラム缶39が軽量で強度的な問題がない場合については、外枠7を省略することができる。また、ターンバックル31を使用しないことが明らかである場合、パイプ13や脚部11bについても省略することができる。このように下パレット3及び上パレット5については、強度や軽量化に加えて、現場における使い勝手などを考慮することにより、不要な部分を省き、構造を簡略化して軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 パレット
3 下パレット
5 上パレット
7,9,23 外枠
11 脚部
13 パイプ
15,21 補強材
17,25 シート材
19,27 フック
29 枠材
31 ターンバックル
39 ドラム缶
41 ラッシングベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数又は複数のドラム缶を載せる下パレットと、前記単数又は複数のドラム缶を前記下パレットとの間に挟持する上パレットとを備えた一対のパレットからなり、前記ドラム缶を挟んで保持する前記下パレットと前記上パレットの保持面の少なくとも一方は合成樹脂製又はゴム製の材料で形成され、前記下パレットと前記上パレットの側面には、前記下パレットと前記上パレットを互いに固定する紐又は金具が通される複数の引っ掛け部が設けられ、前記下パレットには、フォークリフトの爪が挿入可能な脚部が設けられてなるドラム缶搬送用のパレット。
【請求項2】
前記上パレットの前記側面には、前記上パレットと前記下パレットを重ね合わせたときに前記下パレットの側面を包囲する複数の枠材が設けられ、該複数の枠材は、前記下パレットの側面を包囲する方向と反対方向にも延在してなる請求項1に記載のドラム缶搬送用のパレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−246026(P2012−246026A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120208(P2011−120208)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000178011)山九株式会社 (48)
【Fターム(参考)】