説明

ドリップ吸収シート用空洞含有フィルム

【課題】 隠蔽性に優れると共に、フィルムに配合した無機フィラーが脱落することがなく、衛生上、外観上の問題のない、空洞含有フィルムを提供する。
【解決手段】 不織布と貼り合わせてドリップ吸収シートとして用いる空洞含有フィルムであって、上記空洞含有フィルムは、ポリオレフィン系樹脂基材層(A)と、該ポリオレフィン系樹脂基材層(A)の片面または両面に少なくとも表面層(B)を積層した後、延伸してなり、且つ、上記ポリオレフィン系樹脂基材層(A)が、ポリオレフィン系樹脂75〜90質量%、無機フィラー10〜25質量%(ただし、これら2者の合計は100質量%である。)を含有し、上記表面層(B)が、無機フィラーを含有しないものである空洞含有フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリップ吸収用シートに好適な延伸フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スーパーマーケットなどの生鮮食料品売り場では、刺身や生肉類は少量ずつトレーに取り分けて、陳列・販売されている。このような販売形式では、商品が長時間放置される場合があり、この際、食品から発生する血汁(ドリップ)はトレーに溜まり、見栄えを悪くし、消費者の購入意欲を減退させるだけでなく、商品の劣化をも促進させるといった問題があった。
【0003】
そこで、上述のような販売形式を採用する場合には、通常、食品の下にドリップを吸収するためのドリップ吸収シートが敷かれている。このドリップ吸収シートには、不織布などの吸収体が単体で用いられており、食品から発生したドリップを吸収体内に保持することで、トレー内にドリップが溜まるのを防いでいる。しかしながら、ドリップが吸収体内に保持されていても、その色までを封じ込めることはできず、外観の向上効果は十分なものではなかった。また、ドリップと食品とは依然として接触した状態であるため、食品の劣化抑制効果も低かった。
【0004】
上記問題を解決する手段として、不織布などの吸収体の表面に開孔フィルムを貼り合わせたタイプの吸収シートや、表面層と吸水樹脂層とを共押出した吸収シートなどが考案、使用されている(特許文献1〜6)。
【0005】
上記吸収体に貼り合わせるフィルムに要求される特性としては、第一に隠蔽性が挙げられる。ドリップ吸収シートにおいて、隠蔽性は、外部からドリップを視認しにくくさせるために不可欠な特性である。フィルムに隠蔽性を付与する手段としては、顔料として二酸化チタンや炭酸カルシウム等のフィラーを添加することが一般的に採用されている(特許文献7)。
【特許文献1】特開2002−302182号公報
【特許文献2】特開平9−86569号公報
【特許文献3】特開2003−267455号公報
【特許文献4】特開2001−278358号公報
【特許文献5】特開2000−300227号公報
【特許文献6】特開平8−25538号公報
【特許文献7】特開平11−227126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような無機フィラーは、フィルム表面から脱落し易く、脱落した無機フィラーは、フィルムの製造工程では、フィルムと接触するロール(延伸ロール、冷却ロールなど)を汚してしまい、フィルムの連続製造を妨げるといった問題を生じる。また、上記フィルムをドリップ吸収シートに使用する場合には、フィルムから脱落したフィラーが食品に付着してしまい、衛生上、外観上の観点からも好ましくない。しかしながら、ドリップの隠蔽性を確保するためには無機フィラーの添加は不可欠であり、更なる改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、隠蔽性に優れると共に、フィルムに配合した無機フィラーが脱落することがなく、衛生上、外観上の問題のない、空洞含有フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し得た本発明の空洞含有フィルムとは、不織布と貼り合わせてドリップ吸収シートとして用いるフィルムであって、ポリオレフィン系樹脂基材層(A)と、該ポリオレフィン系樹脂基材層(A)の片面または両面に少なくとも表面層(B)を積層した後、延伸してなり、且つ、上記ポリオレフィン系樹脂基材層(A)が、ポリオレフィン系樹脂75〜90質量%、無機フィラー10〜25質量%(ただし、これら2者の合計は100質量%である。)を含有し、上記表面層(B)が、無機フィラーを含有しないものであるところに要旨を有するものである。
【0009】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、不織布などの吸収体と貼り合わせるフィルムが、ドリップ吸収シートに隠蔽性を付与する基材層と、この基材層を覆う表面層とを有する構成とすれば、シートの隠蔽性を低下させることなく、且つ、無機フィラーの脱落による商品価値の低下も防止し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
前記ポリオレフィン系樹脂基材層(A)が、さらに芳香族系炭化水素樹脂5〜10質量%(ただし、前記ポリオレフィン系樹脂、無機フィラーおよび芳香族系炭化水素樹脂の合計は100質量%である)含むものであるのが好ましい。
【0011】
上記ポリオレフィン系樹脂としてはポリプロピレン、上記芳香族系炭化水素樹脂としてはポリスチレンを用いるものであるのが好ましい。
【0012】
上記表面層(B)は、上記基材層(A)に含まれるポリオレフィン系樹脂と同じかまたは異なるポリオレフィン系樹脂を主成分として含有するものであるのが望ましい。
【0013】
フィルムの隠蔽性を確保する観点からは、上記無機フィラーが、炭酸カルシウムおよび二酸化チタンを含むものであることが推奨される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空洞含有フィルムは、隠蔽性に優れると共に、フィルムに配合した無機フィラーの脱落による不良が生じ難いため、製造工程においても、また製品としての使用時にも衛生上、外観上に問題のない、ドリップ吸収シートに好適なフィルムである。さらに、本発明の空洞含有フィルムをドリップ吸収シートの構成要素として用いることで、ドリップの隠蔽性に優れるのはもちろんのこと、ドリップと食品との接触も防止できるため、食品の劣化を抑制することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のドリップ吸収シート用空洞含有フィルムとは、不織布と貼り合わせてドリップ吸収シートとして用いるものであって、上記空洞含有フィルムが、ポリオレフィン系樹脂基材層(A)と、該ポリオレフィン系樹脂基材層(A)の片面または両面に表面層(B)を積層した後、延伸してなり、且つ、上記ポリオレフィン系樹脂基材層(A)が、ポリオレフィン系樹脂75〜90質量%、無機フィラー10〜25質量%(ただし、これら2者の合計は100質量%である。)を含有し、上記表面層(B)が、無機フィラーを含有しないものであるところに特徴を有するものである。
【0016】
まず、本発明のドリップ吸収シート用空洞含有フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂基材層(A)(以下、「基材層(A)」という場合がある)について説明する。
【0017】
本発明にかかるポリオレフィン系樹脂基材層(A)の基材樹脂であるポリオレフィン系樹脂としては、ドリップ吸収シートの機能を発現できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリブテン‐1、ポリ4‐メチルペンテン‐1、ポリブタジエンなどが挙げられる。これらの中でも、機械的強度に優れ、成形加工が容易であることから、ポリプロピレンを用いるのが好ましい。上記ポリプロピレンの種類については限定されず、ホモポリマー、あるいは、エチレンなどとのコポリマーのいずれであってもよい。
【0018】
上記ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)としては0.1〜100g/10分であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜20g/10分、さらに好ましくは1.0〜10g/10分である。MFRが、上記範囲に満たない場合には、ポリオレフィン系樹脂の流動性が乏しくフィルムの製造が困難となる場合がある。一方、上記範囲を超える場合には、フィルム強度が小さくなり、ハンドリングの点で不都合が起こり易くなるため好ましくない。
【0019】
上記ポリオレフィン系樹脂の配合量は、ポリオレフィン系樹脂と後述の無機フィラーの合計を100質量%としたときに、75質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは77質量%以上、さらに好ましくは78質量%以上であり、90質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。ポリオレフィン系樹脂の含有量が少ない場合には、フィルム強度が小さくなり、ハンドリングの点で不都合が起こり易く、多すぎる場合には、空洞部分の量が少なくなって隠蔽性が低下するからである。
【0020】
上記ポリオレフィン系樹脂層には無機フィラーを配合する。無機フィラーの配合量は10質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは17質量%以上であり、25質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは24質量%以下であり、さらに好ましくは22質量%以下である。
【0021】
本発明において無機フィラーは、フィルムを着色すること、フィルムに入射した光を散乱および/または吸収してフィルムに隠蔽性を与えることに加えて、フィルム中に空洞を形成することでもドリップの視認性低下に寄与するものである。後述するように、本発明のフィルムは、原料となる樹脂を溶融押出してフィルム形状とした後、これを延伸して得られるものである。この際、上記無機フィラーは、溶融押出フィルム中に微分散した形態となっているため、このフィルムを延伸することで、ポリオレフィン系樹脂−無機フィラー界面に微細な空洞が形成される。このようにしてフィルム中に形成された空洞は、フィルムに入射した光を散乱させるため、光線透過率の低下に寄与する。
【0022】
したがって、無機フィラーの配合量が少ない場合には、着色などによる隠蔽性効果が不十分となることに加えて、空洞も形成されにくくなるため、入射光の散乱による光線透過率の低下効果も得られ難くなる。一方、配合量が多すぎると、フィルム自体の価格が上昇するのはもちろんのこと、空洞が多数生じることで却ってフィルムの透明性が向上したり、製膜が困難となる傾向がある。
【0023】
本発明で使用可能な無機フィラーは、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、タルク、クレー、硫酸バリウムなどが挙げられ、これらの中でも、二酸化チタン、炭酸カルシウムは隠蔽性向上効果に優れるため好ましい。
【0024】
上記ポリオレフィン系樹脂層には、芳香族系炭化水素樹脂を添加してもよい。芳香族系炭化水素樹脂としては、例えば、ポリスチレン、石油樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリスチレンを使用するのが好ましい。ポリスチレンは、フィルムにパール調の光沢を付与することができるのに加えて、安価であり、燃えやすく、また燃焼に際しても有毒ガスを発生しないからである。
【0025】
上記芳香族系炭化水素樹脂の配合量は、5質量%以上、10質量%以下(ただし、前記ポリオレフィン系樹脂、無機フィラーおよび芳香族系炭化水素樹脂の合計は100質量%である)とするのが好ましい。なお、芳香族系炭化水素樹脂を配合する場合の上記ポリオレフィン系樹脂の配合量は60〜80質量%(より好ましくは65〜78質量%、更に好ましくは60〜77質量%)であるのが好ましく、無機フィラーの配合量は10〜25質量%(より好ましくは15〜20質量%、更に好ましくは16〜19質量%)とするのが好ましい。
【0026】
本発明の空洞含有フィルムは、上記ポリオレフィン系樹脂層(A)の表面(片面または両面)に表面層(B)を有するものである。ここで、表面層(B)は、無機フィラーを含有しないものであるのが好ましい。上述したように、表面層(B)は、基材層(A)の表面(片面または両面)に設けて、基材層(A)から無機フィラーが脱落して、フィルム製造工程や、ドリップ吸収シートとしての使用時における不良の発生を防ぐものである。したがって、表面層(B)に無機フィラーが含有されている場合には、表面層(B)を設けることの意義が希薄になってしまうからである。
【0027】
上記表面層(B)は、その主成分がポリオレフィン系樹脂であるのが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、上記基材層(A)で例示したものと同様のものが使用できる。また、表面層(B)は上記基材層(A)と同様であっても、異なるものであってもよい。尚、表面層(B)における、ポリオレフィン系樹脂の割合は、70〜100質量%であるのが好ましい。
【0028】
表面層(B)に含まれるポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、プロピレン‐エチレンランダム共重合体、プロピレン‐エチレン‐ブテンランダム共重合体、プロピレン‐ブテンランダム共重合体などが挙げられる。これらの樹脂の配合量は30質量以下とするのが好ましく、より好ましくは20%質量以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、好ましくは5質量%以上である。
【0029】
さらに、本発明の空洞含有フィルムには、上記基材層(A)および表面層(B)に加えて、フィルムに諸特性を付与するための層を設けてもよく、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール等のガスバリア性樹脂層などを設けることももちろん可能である。
【0030】
上述の各層(基材層(A)、表面層(B)、その他の層)を形成する樹脂には、必要に応じて各層の特性を阻害しない範囲で、各種添加材、充填材、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤等を添加することができる。また、必要に応じて、その他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム類、炭化水素樹脂、石油樹脂等を配合してもよい。
【0031】
本発明の空洞含有フィルムの厚みは、その用途や使用方法に応じて適宜決定すればよい。尚、一般的な包装材料としてのポリオレフィン系フィルムの厚みは10〜200μm程度であるが、機械的強度やハンドリング性の観点からは、20〜150μm程度とするのが好ましい。ただし、本発明の延伸フィルムが上記基材層(A)および表面層(B)以外の層を有する場合、上記基材層(A)および表面層(B)の合計厚みがフィルム全体厚みの80〜95%を占めることが好ましい。基材層(A)の厚みが薄い場合には、隠蔽性を確保するために多量の無機フィラーを配合しなければならず、結果としてフィルムの低比重化ができず、一方、表面層(B)の厚みが薄い場合には、上記基材層(A)に配合した無機フィラーの脱落を防止する効果が得られ難くなる傾向があるからである。尚、基材層(A)は表面層(B)よりも厚くすることが推奨される。
【0032】
また、本発明の空洞含有フィルムの空洞含有率は15〜60%であるのが望ましく、より望ましくは20〜50%であり、さらに望ましくは25〜40%である。フィルムの空洞含有率が上記範囲内であれば、入射光の散乱効果が得られやすいからである。
【0033】
尚、上記空洞含有率は、延伸前のフィルム密度と、延伸後のフィルム密度から下記式により算出することができる。
【0034】
【数1】

*JIS K7130の規定による。
【0035】
本発明の空洞含有フィルムは、熱風乾燥機中、120℃で5分間保持したときの熱収縮率が7%以下であることが望ましい。より好ましくは6%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。熱収縮率が上記値を超える場合には、後述するように、本発明の空洞含有フィルムを不織布などの吸収体と熱接合により一体化する際に、フィルムが収縮し、加工が困難となる場合があるからである。
【0036】
本発明の空洞含有フィルムの製造方法については特に制限されず、従来公知の方法で製造することができる。例えば、積層する樹脂層の数に応じた押出し機を用いてTダイ法やインフレーション法等で原料となる樹脂を溶融・押出してフィルム化し、積層した後、冷却ロール法、水冷法又は空冷法で冷却して未延伸フィルムを得る。次いで、この未延伸フィルムを所定の温度に加熱して、2軸延伸を行う。この際の延伸方法についても特に限定はなく、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法、チューブラ延伸法等を採用することができる。ただし、フィルムの機械的強度を高める観点からは、少なくとも1軸方向に3倍以上延伸するのが好ましい。
【0037】
空洞含有フィルムの印刷性やラミネート性等を向上させるためには、表面処理を行うことも望ましい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等の方法が例示でき、特に制限はない。上記例示の方法の中でも、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理は、連続処理が可能であり、フィルム製造時の巻き取り工程前に容易に実施できるため好ましい。
【0038】
本発明の空洞含有フィルムは、不織布などの吸収体と貼り合わせてドリップ吸収用シートとして使用することができる。この際、使用可能な不織布(吸収体)は、特に限定されず、吸収体として従来公知のものはいずれも使用可能である。また、上記吸収体は、不織布を構成する繊維間に吸水性樹脂を含有するものであってもよい。
【0039】
上記空洞含有フィルムと吸収体(不織布)とを貼り合わせる方法については特に制限されず、接着剤や溶剤による接合、ヒートシール、超音波接合、高周波接合などの熱接合などの方法が挙げられる。尚、ドリップ吸収用シートが食品と直接接触するものである点からは、ヒートシールが推奨される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは、全て本発明の技術的範囲に包含される。本実施例で用いた測定方法は以下の通りである。
【0041】
〔見かけ比重〕
下記製造例により得られたフィルム(ポリオレフィン系から280mm×400mmのフィルム片を切り出し、化学天秤にて重さを測定した後、ダイヤルゲージを用いて厚みを測定し、得られた結果を基に下記式から、見かけ比重を算出した。
見かけ比重(g/cm3)=重さ(g)/(面積(cm2)×厚み(μm))
【0042】
〔熱収縮率〕
フィルムの流れ方向(MD)、および流れ方向と直交する方向(TD)のそれぞれから、20mm×250mmの試験片を切り出し、試験片の長辺の中央部に150mm間隔で標線を付け、熱風乾燥機〔タバイ製作所製:HPS−22型〕中、120℃で5分間保持した後、ルーペを使用して標線間の距離を0.1mmまで読み取り、下式に従って熱収縮率を算出した。
【0043】
【数2】

1:加熱前の標線間の距離
2:加熱後の標線間の距離
【0044】
〔空洞含有率〕
空洞含有率は、延伸前のフィルム密度および延伸後のフィルム密度から下記式により算出した。
【0045】
【数3】

*JIS K7130の規定による。
【0046】
〔全光線透過率〕
下記製造例により得られたフィルムから40mm×40mmの試験片を3枚採取し、直読積分式ヘイズメーター(東洋精機製作所製)を用い、JIS K7105(5.5 光線透過率及び全光線透過率)に準じて全光線透過率を測定した。
【0047】
〔3次元平均粗さ〕
(株)小阪研究所社製の3次元微細形状測定器(ET−30HK)を使用し、カットオフ80μm、ドライブスピード100μm/秒の条件で、下記製造例により得られたフィルムの3次元平均粗さを測定した。
【0048】
〔光沢度〕
下記製造例により得られたフィルムから100mm×100mmの試料を3枚採取し、光沢計(日本電色工業株式会社製,VG−2000型)を用い、JIS K7105に準じて光沢度(45℃)を測定した。
【0049】
〔無機フィラーの脱落の程度〕
フィルム製膜時において、横延伸後の巻取り工程で、一番目に通過させるゴム製ニップロール(ガイドロール)の脱落フィラーによる汚れの程度を下記基準に従って目視で評価した。尚、評価は、製膜開始から4時間後に行った。
○ : 生産を継続することが十分可能なレベル
△ : 生産を継続することがある程度可能なレベル
× : 生産を継続することが困難なレベル
【0050】
〔製造例〕
フィルム1
表1に示す配合組成に従ってフィルムを作成した。ポリオレフィン系樹脂基材層(A)は、押出機で、ポリプロピレン単独重合体:65質量部(住友化学工業株式会社製,商品名「FS2054G8」,MFR=2.5g/10分)、炭酸カルシウム含有マスターバッチ:30質量部(ポリプロピレン25%、ポリスチレン25%〔日本ポリスチレン株式会社製,商品名「G450X」〕、炭酸カルシウム50%〔白石カルシウム株式会社製,商品名「PO‐150B‐10」〕)、二酸化チタンマスターバッチ:5質量部(ポリプロピレン40%、二酸化チタン60%〔大日精化工業株式会社製,商品名「PPM(F)7862White」〕)を混合した後、250℃の樹脂温度で溶融押出しし、上記押出機とは異なる押出機で、表面層(B)の原料樹脂、ポリプロピレン単独重合体:90質量部(MFR=2.5g/10分)、プロピレン−エチレンランダム共重合体:10質量部(住友化学工業株式会社製,「S131」,MFR=3g/10分、エチレン成分5%)を混合した後、260℃の樹脂温度にて溶融押出しし、Tダイ内で、上記基材層(A)の両面に表面層(B)が存在するように積層し、これを40℃の冷却ロールにて冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、得られた未延伸シートを120℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、テンター延伸機に導入し、160℃で予熱した後、130℃にて横方向に9.5倍の延伸を行い、150℃で熱セット行い、フィルムワインダーにより巻き取って空洞含有フィルム(フィルム1)を得た。得られたフィルムの厚みは、29μmであった。
【0051】
フィルム2
表面層(B)を設けなかったこと以外は、上記フィルム1と同様にして空洞含有フィルム(フィルム2)を得た。得られたフィルムの厚みは、30μmであった。
【0052】
フィルム3
ポリオレフィン系樹脂基材層(A)の原料樹脂としてポリプロピレン単独重合体(MFR=2.5g/10分)95質量部、二酸化チタンマスターバッチ(ポリプロピレン40%、二酸化チタン60%)5質量部を用いたことと、表面層(B)を設けなかったこと以外は上記フィルム1と同様にして空洞含有フィルム(フィルム3)を得た。得られたフィルムの厚みは、30μmであった。
【0053】
フィルム4
ポリオレフィン系樹脂基材層(A)の原料樹脂をポリプロピレン単独重合体(MFR=2.5g/10分)100質量部としたこと、表面層を設けなかったこと以外は上記フィルム1と同様にして空洞含有フィルム(フィルム4)を得た。得られたフィルムの厚みは、30μmであった。
【0054】
上記評価方法にしたがってフィルム1〜4の特性を評価した。フィルムの配合組成および評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
フィルム1は、基材層(A)に含まれる無機フィラーの脱落が少ないため、フィルムの連続製造が可能であり、作業性に優れるものであった。また、全光線透過率も低いため、優れた隠蔽性を有すると共に、衛生面、外観性に優れたドリップ吸収用シートに好適な空洞含有フィルムであることがわかる。
【0057】
フィルム2は、表面層(B)を設けなかったため基材層(A)からの無機フィラーの脱落が多く、フィルムの製造操業性に劣るものであった。尚、全光線透過率は低く抑えられており、ドリップの隠蔽性は備えているものの、光沢度が低く、ドリップ吸収シートに用いることは、衛生上、外観上にも好ましくないフィルムであった。
【0058】
フィルム3は、無機フィラーの配合量を減量し、表面層(B)を設けなかった例である。フィルム2に比べて無機フィラーの脱落の程度は低いが、ドリップ吸収シートに用いるには不適なものであった。
【0059】
フィルム4は、上記フィルム2,3と同様表面層(B)を設けなかった例であるが、基材層(A)に無機フィラーを添加しなかったため、フィルムの製造工程で問題を生じることはなかった。しかしながら、無機フィラーを含有していないため隠蔽性に劣り、ドリップ吸収シートには不適なものであった。
【0060】
フィルム1〜4より明らかなように、本発明の規定を満たす空洞含有フィルムは、無機フィラーを含有していても、無機フィラーの脱落による不良発生が抑制性されているため、優れた隠蔽性を有するとともに、衛生面にも問題がなく、吸収体に貼り合わせて用いるドリップ吸収シートに好適な空洞含有フィルムであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の空洞含有フィルムは、不織布等吸収体に貼り合わせて、魚肉や生肉類など血汁(ドリップ)の発生する食品の下に敷き、ドリップによる商品品質の悪化を防止し、見栄えを改善するのに有効なドリップ吸収用シートに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と貼り合わせてドリップ吸収シートとして用いる空洞含有フィルムであって、
上記空洞含有フィルムは、ポリオレフィン系樹脂基材層(A)と、該ポリオレフィン系樹脂基材層(A)の片面または両面に少なくとも表面層(B)を積層した後、延伸してなり、且つ、
上記ポリオレフィン系樹脂基材層(A)が、ポリオレフィン系樹脂75〜90質量%、無機フィラー10〜25質量%(ただし、これら2者の合計は100質量%である。)を含有し、
上記表面層(B)が、無機フィラーを含有しないものであることを特徴とする空洞含有フィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂基材層(A)が、さらに芳香族系炭化水素樹脂5〜10質量%(ただし、前記ポリオレフィン系樹脂、無機フィラーおよび芳香族系炭化水素樹脂の合計は100質量%である)含むものである請求項1に記載の空洞含有フィルム。
【請求項3】
上記ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン、上記芳香族系炭化水素樹脂としてポリスチレンを用いるものである請求項1または2に記載の空洞含有フィルム。
【請求項4】
上記表面層(B)は、上記基材層(A)に含まれるポリオレフィン系樹脂と同じかまたは異なるポリオレフィン系樹脂を主成分として含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の空洞含有フィルム。
【請求項5】
上記無機フィラーが、炭酸カルシウムおよび二酸化チタンを含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の空洞含有フィルム。

【公開番号】特開2006−62152(P2006−62152A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245805(P2004−245805)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】