説明

ドリルホルダ

【課題】 表面層が設けられた対象物を、装着したドリルで穿孔するのと同時に、表面層を必要最小限に除去し、対象物の表面から確実に穿孔長を確保することが可能なドリルホルダを提供する。
【解決手段】 ドリルホルダ2は、穿孔機1として、先端部10bに設けられたドリル挿入穴3に、ドリル4を装着し、ドリル駆動部5からの回転力を伝達させるように組み付けられるものである。ドリルホルダ2の先端部10bには、ドリル挿入穴3から突出するドリル4の回転軸Pと、略直交する平坦面12が形成される。さらに、ドリルホルダ2の先端部10bには、平坦面12から基端部10a側に向って切欠かれることによって、平坦面12の縁端12aに形成される切れ刃14とヒール15とが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物を穿孔するドリルを装着するドリルホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート製などの構造物のスラブ下面に設備を吊設する場合、あるいは壁面から設備を突設させる場合などでは、所定の位置に打ち込み式等のあと施工アンカーを設けることで、設置する設備等を保持する方法が行われている。このようなあと施工アンカーは、予めドリルでアンカー孔を穿孔し、アンカー孔に挿入、定着させることで、保持能力を発揮する。つまり、あと施工アンカーに必要な保持能力を付与させるためには、所定の穿孔長のアンカー孔をドリルで確実に穿孔する必要がある。このため、ドリルのシャンク基部に鍔部材を螺着した鍔部材付きドリル構造で、鍔部材を弾性材からなる固縛体で不回動に取着し、固縛体の筒状部を鍔部材の筒部拡径面に被冠圧着させる鍔部材付きドリル構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような鍔部材付きドリル構造においては、鍔部材から突出するドリルの長さを所定の長さにしておけば、ドリルで穿孔し、鍔部材が穿孔表面に当接することで、鍔部材から突出するドリルの長さに従って、穿孔長を確定させることができる。
【特許文献1】実用新案登録第2511050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、構造物の表面にウレタン吹付けなどの表面層が設けられている場合、このような部分に上述の鍔部材付きドリル構造でアンカー孔を穿孔しても、鍔部材は、構造物の表面に当接するのではなく、構造物の表面を覆う表面層に当接してしまう。仮に表面層の厚さを考慮して、鍔部材から突出するドリルの長さを決定したとしても、表面層の厚さ自体が不確定な場合が多く、また表面層の表面は平滑でない場合が多いので、正確な穿孔長を確保することは難しい。また、予め穿孔する位置の表面層を除去する方法では、多数のアンカーを施工する際には、作業者の負担を増大させ、また必要以上に表面層を除去してしまい、構造物の品質を低下させてしまう恐れもあった。
【0004】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、表面層が設けられた対象物を、装着したドリルで穿孔するのと同時に、表面層を必要最小限に除去し、対象物の表面から確実に穿孔長を確保することが可能なドリルホルダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、ドリルを装着可能なドリル挿入穴が先端部に設けられ、装着した前記ドリルにドリル駆動部からの回転力を伝達させるドリルホルダであって、前記先端部には、前記ドリル挿入穴から突出する前記ドリルの回転軸と、略直交する平坦面が形成されるとともに、該平坦面から基端側に向って切欠かれた溝によって、前記平坦面の縁端に形成される切れ刃が設けられることを特徴としている。
【0006】
この発明に係るドリルホルダによれば、ドリル挿入穴に装着したドリルが回転することによって穿孔するとともに、先端部の平坦面に設けられた切れ刃が回転することによって、穿孔する対象物の表面層を削り取り、除去することができる。構造物の表面層を除去する範囲は、ドリルホルダの回転半径によるので、必要最小限の範囲において、定形的に、除去することが可能である。また、対象物の表面層を除去した上で、対象物の表面に先端部の平坦面を当接させることができるので、先端部から突出するドリルの長さに従って、確実に穿孔長を確保することができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のドリルホルダにおいて、前記切れ刃は、前記ドリル挿入穴の内周面と略等しい位置まで達することを特徴としている。
この発明に係るドリルホルダによれば、対象物の表面層を、ドリルで穿孔される範囲の外側の部分において、切れ刃によって確実に除去することができる。このため、除去されなかった表面層、あるいは表面層の切り屑が対象物の表面と当接する先端部の平坦面との間に介在してしまい、穿孔長が不足してしまうことを防止することができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のドリルホルダにおいて、前記切れ刃の形状は略円形であり、前記平坦面の前記縁端に前記切れ刃と連続して形成されるヒールは略直線であることを特徴としている。
この発明に係るドリルホルダによれば、回転することで、装着されたドリルによって対象物が穿孔されるとともに、切れ刃で表面層を削り取ることができる。この際、削り取られた表面層の切り屑は、平坦面から基端側へ切欠かれた溝に収容される、あるいは切れ刃に連続して形成される平坦面の縁端のヒールに従って、回転半径方向外側に排出される。表面層を削り取る切れ刃が略円形であること、効率的に表面層を削り取るとともに、削り取られた表面層の切り屑は、ヒールが略直線に形成されていることで、大きく開口された溝に収容されるとともに、回転半径外側に排出され、表面層を除去することによるドリルホルダの回転抵抗を最小限度に抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、ドリルによって穿孔するのと同時に、対象物の表面層を除去することができるので、効率的にかつ正確に穿孔長を確保することができる。また、表面層の除去範囲は、ドリルホルダの回転半径に従って最小限度とすることができ、表面層の必要以上の除去による構造物の品質の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第一の実施形態)
図1から図10は、この発明に係る第一の実施形態を示している。図1に穿孔機1の斜視図を示す。図2にドリルホルダ2の側面図、図3に正面図、図4に断面図を示す。また、図5にドリル4の側面図、図6に正面図を示す。さらに、図7にはアタッチメント6の側面図を示す。また、図8から図10には、穿孔機1によって構造物28を穿孔する作業状況図を示す。
【0011】
図1に示すように、穿孔機1は、ドリルホルダ2と、ドリルホルダ2のドリル挿入穴3に挿入、装着されたドリル4と、ドリル4の回転力を発生させるドリル駆動部5と、ドリルホルダ2とドリル駆動部5とを連結させるアタッチメント6とを備えている。
【0012】
図5、図6に示すように、ドリル4は、略円柱状の部材で、先端部7aが錐体状に形成される軸体7と、軸体7の側面7bから先端部7aにかけて設けられ、軸体7よりも高強度の材質で形成される刃体8とを備えている。また、軸体7の基端部7cの側面7bには、略半円状に突設する係合突部9が設けられている。
【0013】
図2、図3に示すように、ドリルホルダ2は、略円柱状のホルダ本体10と、ホルダ本体10の基端部10aから、ホルダ本体10の中心軸である回転軸Pと同軸となるように突設するシャンク11とで構成される。シャンク11は、先端部11aから基端部11bにかけて縮径するテーパ状に形成された部材である。また、ホルダ本体10の先端部10bには、回転軸Pと略直交する平坦面12が形成され、その中心には、回転軸Pと同軸となるように、ドリル挿入穴3が設けられる。ドリル挿入穴3は、ドリル4の軸体7が挿入可能な外径を有すると共に、ドリル4の係合突部9が挿入可能な係合溝3aが設けられている。また、図3に示すように、ホルダ本体10の先端部10bには、平坦面12から基端部10a側へ切欠かれた溝13によって、平坦面12に形成された縁端12aで、切れ刃14とヒール15とが設けられる。切れ刃14は、ドリルホルダ2が回転方向Rに回転した際に、回転方向Rと反対側に位置し、対象となる物を切削する範囲であり、ヒール15は、回転方向Rに位置し、切れ刃14で切削された切削物が排出される部分である。図3に示すように、切れ刃14は略円形となっていて、終端部14aはドリル挿入穴3の内周面3bと略等しい位置まで達している。また、切れ刃14の終端部14aから連続して形成されるヒール15は、略直線となっている。さらに、切れ刃14及びヒール15は、回転軸Pに対して点対称となるように、2箇所設けられている。
【0014】
さらに、図2に示すように、ドリルホルダ2のホルダ本体10には、ドリル挿入穴3にドリル4を挿入した際に、ドリル4の引き抜き、回転を規制する規制手段16が設けられている。規制手段16は、ホルダ本体10の側面10cからドリル挿入穴3に貫通する貫通孔17に没入する係合ボール18と、ホルダ本体10の側面10cを覆うバネ19と、バネ19の基端部19aを係止する係止リング20及びOリング21とで構成されている。バネ19は、ホルダ本体10の縮径された中間部10dに設けられていて、先端部19bは、ホルダ本体10の先端部10bと中間部10dとの段差10eに係止される。Oリング21は、ゴムで形成されたリング状の部材で、ホルダ本体10の基端部10aの側面10cに形成された溝10fに嵌合されている。また、係止リング20は、ホルダ本体10の中間部10dに嵌合されていて、係止リング20とOリング21とが当接することによって、バネ19の基端部19aを係止可能としている。図2及び図2におけるA−A断面を表わす図4に示すとおり、係合ボール18の直径は、ホルダ本体10の側面10cからドリル挿入穴3の内周面3bまでの距離と略等しく設定されている。また、貫通孔17は、ホルダ本体10の側面10cからドリル挿入穴3に向って縮径するテーパ状の形状を有している。より詳しくは、貫通孔17は、係合ボール18を没入させた際に、係合ボール18の一端18aがドリル挿入穴3の内周面3bと略等しくなる位置で、係合ボール18が保持されるようなテーパ形状に設定されている。このような係合ボール18は、バネ19で外部から拘束されることによって、貫通孔17の内部に収容されている。また、貫通孔17の回転軸P方向の位置は、ドリル挿入穴3にドリル4を挿入し、ドリル挿入穴3の終端3cにドリル4の軸体7の基端部7cが当接した際に、ドリル4の係合突部9よりも僅かにドリル本体10の先端部10b側に位置するように設定されている。
【0015】
図7に示すように、アタッチメント6は、略円柱状のアタッチメント本体22と、アタッチメント本体22の基端部22aから、アタッチメント本体22の中心軸である回転軸Pと同軸となるように突設されるシャンク23とで構成される。アタッチメント本体22の先端部22bには、回転軸Pと同軸になるように、ホルダ挿入穴24が設けられている。また、アタッチメント本体22の側面22cには、貫通孔25が設けられている。ホルダ挿入穴24は、ドリルホルダ2のシャンク11のテーパ形状に対応していて、ドリルホルダ2のシャンク11を挿入した際に、基端部11bが貫通孔25の内部にまで達してシャンク11にホルダ挿入穴24が嵌合するように設定されている。また、シャンク23には、ドリル駆動部5に係合可能な係合凹部26が設けられている。また、図1に示すドリル駆動部5は、ドリル駆動部5に装着したアタッチメント6を介して、ドリルホルダ2及びドリル4を回転させるものであって、モータ(不図示)や電源部(不図示)を備え、また操作者によって操作するための操作部(不図示)、把持部(不図示)などを備えている。
【0016】
次に、このドリルホルダ2及びドリルホルダ2を装着した穿孔機1の作用について説明する。まず、図1、図8に示すように、穿孔機1を組み付ける。ドリル駆動部5にアタッチメント6のシャンク23を挿入し、シャンク23の係合凹部26によって互いを係合する。また、アタッチメント6のホルダ挿入穴24にドリルホルダ2のシャンク11を挿入する。アタッチメント6のホルダ挿入穴24と、ドリルホルダ2のシャンク11とは対応するテーパ形状を有しているので、摩擦によって互いを係止させることができる。さらに、ドリルホルダ2のドリル挿入穴3にドリル4を挿入する。図3、図8に示すように、ドリル4の軸体7がドリル挿入穴3に挿入されると共に、係合突部9は係合溝3aに挿入される。ドリル4は、ドリル挿入穴3の終端3cに軸体7の基端部7cが当接するまで挿入されるが、その直前において、ドリル4の係合突部9とドリルホルダ2の規制手段16の係合ボール18とが当接する。この状態で、ドリル4にバネ19が弾性変形可能な適度な貫入力を与えることで、係合ボール18は、係合突部9によってホルダ本体10の側面10c側に弾性的に変位し、係合突部9が通過後に、バネ19によって、弾性的に元の位置に戻される。このため、ドリル挿入穴3の終端3cまで挿入されたドリル4は、係合突部9が再び係合ボール18を弾性的に変位させる程度の引き抜き力が与えられなければ、引き抜かれない構造となっている。つまり、規制手段16によって、ドリル4はドリルホルダ2に容易に着脱可能であるとともに、脱落しないようにドリルホルダ2に保持される。
【0017】
また、図8に示すように、ドリル4は、ドリルホルダ2のドリル挿入穴3に挿入される挿入部4aと、ドリルホルダ2の平坦面12から突出する突出部4bとに分けられる。挿入部4aの長さはドリルホルダ2のドリル挿入穴3の深さによって決定され、突出部4bの長さは穿孔する深さによって決定される。このため、選択されるドリル4の全長は、計画される穿孔長とドリルホルダ2のドリル挿入穴3の深さによって決定する。以上によって、組み付けられた穿孔機1によって、表面層27が設けられた構造物28に所定の深さのアンカー孔29を穿孔し、あと施工アンカー(不図示)を定着させる場合について説明する。ここで、構造物28は、あと施工アンカー(不図示)を定着させることが可能な高強度の例えばコンクリート製であり、表面層27は構造物28の外装で、構造物28の防食などを目的として設けられる例えばウレタン層などである。ウレタン層などのような表面層27は吹き付けによって施される場合が多く、その厚さは例えば15mm〜30mmと不定な厚さであるとともに、表面27aは平坦でない場合が多い。
【0018】
図8に示すように、所定の穿孔長を確保可能なように、ドリル4の突出部4bの長さが設定されて組み付けられた穿孔機1によって、所定の位置にドリル4の先端をセットし、構造物28の表面28aに略垂直となるようにして、ドリル駆動部5を駆動し回転させて、穿孔を開始する。ドリル4の刃体8が構造物28の表面28aに達すると、刃体8によって構造物28は穿孔される。刃体8は軸体7の側面7bから先端部7aにかけて設けられているので、軸体7の直径よりも僅かに大となるアンカー孔29が形成される。この際、ドリル4には回転方向Rの反対方向Qに回転反力が発生するが、ドリル4の係合突部9がドリルホルダ2のドリル挿入穴3の係合溝3aに係止されているので、回転反力に抵抗して、ドリル4はドリルホルダ2とともに回転方向Rに回転することができる。そして、穿孔が進むに従って、ドリル4と共に回転するドリルホルダ2の平坦面12が、表面層27の表面27aに当接する。
【0019】
図10に示すように、平坦面12で表面層27の表面27aに当接したドリルホルダ2は引き続き回転する。この際、平坦面12には切れ刃14が設けられているので、切れ刃14が回転することによって、表面層27が削り取られる。さらに、削り取られた表面層27の切り屑27bは、溝13の内部に収容される、あるいは切れ刃14の回転によって、押し出され、ヒール15に従い、ドリルホルダ2の回転半径方向外側へ排出される。この際、切れ刃14の形状が略円形であるので、効率的に表面層27を削り取ることができる。さらに、ヒール15の形状が略直線であるので、切り屑27bは大きく開口した溝13に効率的に収容できるとともに、回転半径外側に排出され、表面層27の切削及び切り屑27bの排出によって、ドリルホルダ2の回転抵抗が増大するのを最小限度に抑えることができる。このようにして、図9に示すように、ドリル4で構造物28を穿孔するとともに、ドリルホルダ2の切れ刃14によって表面層27を削り取る作業は、ドリルホルダ2の平坦面12が構造物28の表面28aに当接するまで行われ、穿孔が完了する。これにより、ドリル4の突出部4bの長さに従い、構造物28に正確にアンカー孔29を穿孔することができる。ここで、切れ刃14は、終端部14aがドリル挿入穴3の内周面3bと略等しい位置まで達しているので、ドリル4で穿孔されたアンカー孔29の範囲まで、表面層27を削り取ることができる。このため、構造物28の表面28aとドリルホルダ2の平坦面12との間に、表面層27、あるいはその切り屑27bが介在してしまい、アンカー孔29の穿孔長が不足してしまうのを防ぐことができる。
【0020】
以上のようにして、ドリル4で構造物28にアンカー孔29を穿孔するのと同時に、ドリルホルダ2の切れ刃14によって、表面層27を除去することができる。このため、表面層27の厚さ、表面27aの平坦性に関係無く、平坦面12が構造物28の表面28aに当接することによって、アンカー孔29の正確な穿孔長を確保することができる。また、表面層27の除去範囲はドリルホルダ2の回転半径に従って、定形的かつ最小限度とすることができ、必要以上に表面層27の除去してしまうことによる構造物の品質の低下を防止することができる。また、ドリルホルダ2とドリル4とを一体とせずに、着脱自在とすることで、穿孔に伴って損耗の早いドリル部分を交換可能とすることができるので、経済的である。また、ドリル4を着脱自在とすることは、穿孔する対象物の材質及び強度、穿孔の径及び深さなどに対応してドリルを選定することができて、作業の効率性を高めることとなる。このような、ドリルホルダ2は、表面層27が設けられた構造物28で、特に構造物28の部材厚が薄く、穿孔長に厳しい制限がある場合などに非常に有効であり、効率的に表面層27を除去し、正確な穿孔長で穿孔させるものである。
【0021】
(第二の実施形態)
図11から図14は、この発明の第二の実施形態を示している。図11にこの実施形態のドリルホルダ30にドリル31が装着された側面図を示す。また、図12及び図13に、図11におけるB−B断面図、図14に、図11におけるC−C断面図を示す。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0022】
図11に示すように、ドリルホルダ30に装着されたドリル31は、先端部31aに形成された先端刃32a及びらせん状に形成された刃体32bを有する刃部32と、軸体33とで構成される。先端刃32aは、刃部32の他の部分よりも高強度の材質で形成されている。また、刃部32の基端部32cは、ドリル31をドリルホルダ30のドリル挿入穴3に挿入し、ドリル挿入穴3の終端3cにドリル31の軸体33の基端部33aが当接した際に、ドリルホルダ30の平坦面12と略等しい位置となるように設定されている。このようなドリル31は、回転方向Rに回転することによって、先端刃31aで穿孔するとともに、穿孔によって発生する穿孔屑を、刃体32bのらせん形状に従って基端部32cに排出させるものである。
【0023】
また、図11及び図12に示すように、ドリルホルダ30は、規制手段16を有するとともに、第二の規制手段として側溝34が設けられている。側溝34は、ドリル31をドリルホルダ30のドリル挿入穴3に挿入し、ドリル31の軸体33の基端部33aがドリル挿入穴3の終端3cに当接された際に、ドリル31の回転方向Rと反対方向Q側に、ドリル31の係合突部9に隣接して位置し、ドリル挿入穴3の係合溝3aと連通している。このため、図13及び図14に示すように、ドリル31をドリルホルダ30のドリル挿入穴3に完全に挿入した後、Q方向に回転させれば、ドリルホルダ30の側溝34とドリル31の係合突部9とによって、ドリル31は回転軸Pの方向に係止されるようになる。また、図11に示すようにドリルホルダ30はシャンク35を備えている。また、シャンク35には係合凹部36が設けられていて、ドリル駆動部(不図示)に直接装着することが可能となっている。
【0024】
次に、この実施形態のドリルホルダ30の作用について説明する。図11に示すように、ドリルホルダ30にドリル31を装着し、ドリルホルダ30のシャンク35をドリル駆動部(不図示)に係合凹部36を係合させて装着すれば、ドリル駆動部(不図示)の駆動によって、ドリルホルダ30及びドリル31とが回転方向Rに回転する。この状態で、構造物(不図示)の所定の位置にドリル31の先端部31aをセットすれば、先端刃32aによって穿孔が開始される。この際、ドリル31は、回転方向Rに回転して穿孔するのに伴って、回転方向Rと反対方向Qに回転反力が発生するとともに、刃体32bのらせん形状に従ってS方向に引き抜き力が発生する。しかし、図11、図14に示すように、ドリル31は、係合突部9によってドリルホルダ30の側溝34にQ方向及びS方向に係止されているので、ドリル31はドリルホルダ30に装着され保持されたまま、穿孔を行うことができる。さらに、引き続き穿孔を継続すれば、第一の実施形態と同様、ドリルホルダ30の平坦面12及び切れ刃14によって、表面層(不図示)を除去した上で、穿孔長を正確に確保することができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0026】
なお、ドリルホルダ2、30に装着されるものとして、ドリル4、31を挙げたが、これに限るものではない。少なくとも、ドリル駆動部から伝達される回転力あるいは軸力によって、対象物を穿孔、破砕等するために、ドリルホルダに装着される工具であれば良く、対象物の材質、強度、作業内容に従って、様々な種類を選定可能である。また、ドリルホルダ2、30において、ドリル4、31を装着するための規制手段16及び第二の規制手段として側溝34を記載したが、これに限るものではない。少なくとも、ドリルの動作によって発生する回転反力、回転軸方向の引き抜き力に抵抗して、ドリルが装着された状態を保持できる機構であれば良く、例えば、ねじ機構によるもの、あるいはドリルの軸体を締め付ける機構のものなどでも良い。また、第一の実施形態では、ドリルホルダ2をアタッチメント6を介してドリル駆動部5に装着するものとし、第二の実施形態では、ドリルホルダ30を直接ドリル駆動部(不図示)に装着するものとしたがいずれの方法でも良い。少なくとも、ドリルを装着したドリルホルダに、ドリル駆動部で駆動される回転力あるいは軸力が伝達され、把持される機構が備えられていれば良い。さらに、ドリルホルダ2において、切れ刃14は2箇所設けられるものとしたが、これに限るものではない。少なくとも、ドリルホルダ2の平坦面12に1箇所以上設けられていれば良く、好ましくは回転軸Pに対して点対称であることで、偏心力の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第一の実施形態の穿孔機の斜視図である。
【図2】この発明の第一の実施形態のドリルホルダの側面図である。
【図3】この発明の第一の実施形態のドリルホルダの正面図である。
【図4】この発明の第一の実施形態のドリルホルダの断面図である。
【図5】この発明の第一の実施形態のドリルの側面図である。
【図6】この発明の第一の実施形態のドリルの正面図である。
【図7】この発明の第一の実施形態のアタッチメントの側面図である。
【図8】この発明の第一の実施形態の穿孔機の作業状況を示す側面図である。
【図9】この発明の第一の実施形態の穿孔機の作業状況を示す側面図である。
【図10】この発明の第一の実施形態の穿孔機の作業状況を示す正面図である。
【図11】この発明の第二の実施形態のドリルホルダとドリルを組み付けた側面図である。
【図12】この発明の第二の実施形態のドリルホルダとドリルを組み付けた断面図である。
【図13】この発明の第二の実施形態のドリルホルダとドリルを組み付けた断面図である。
【図14】この発明の第二の実施形態のドリルホルダとドリルを組み付けた断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 穿孔機
2、30 ドリルホルダ
3 ドリル挿入穴
3b 内周面
4、31 ドリル
5 ドリル駆動部
10 ホルダ本体
10a 基端部
10b 先端部
12 平坦面
12a 縁端
13 溝
14 切れ刃
14a 終端部
15 ヒール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルを装着可能なドリル挿入穴が先端部に設けられ、装着した前記ドリルにドリル駆動部からの回転力を伝達させるドリルホルダであって、
前記先端部には、前記ドリル挿入穴から突出する前記ドリルの回転軸と、略直交する平坦面が形成されるとともに、該平坦面から基端側に向って切欠かれた溝によって、前記平坦面の縁端に形成される切れ刃が設けられることを特徴とするドリルホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載のドリルホルダにおいて、
前記切れ刃は、前記ドリル挿入穴の内周面と略等しい位置まで達することを特徴とするドリルホルダ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のドリルホルダにおいて、
前記切れ刃の形状は略円形であり、前記平坦面の前記縁端に前記切れ刃と連続して形成されるヒールは略直線であることを特徴とするドリルホルダ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−346755(P2006−346755A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172168(P2005−172168)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(390022389)サンコーテクノ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】