説明

ドリル穿孔動作中に前進を規制するための装置

【課題】
【解決手段】
ハンドドリル(15)または自動製造機械と共に使用できる、ドリル穿孔動作中にドリルの前進を規制するための装置において、装置は、ストッパケージ(2a)とスピンドル(3)とを有するハウジングで、スピンドルはハウジング内に回転可能に且つ軸方向に移動可能に装着されるハウジングと、前進を規制するために配置され、軸方向に調整可能なストッパ(9)と、を備え、本発明は、ストッパケージ(2a)がチップを破壊するためのチップ破壊具(13)を備え、チップ破壊具(13)が、ハウジング側端部と自由端部とを有し、その自由端部が皿もみ部(12b)とほぼ接触するように工作物表面と略平行に且つ当該表面のすぐ近くにおいて外側から穴あけ工具(段付きドリルビット12)へ向けて略径方向に延びることにある。工作物の表面に対する損傷が本発明によって防止され、それにより、対応する表面の再仕上げが回避される。また、従来は各ドリル穿孔サイクル後に必要であった、穴あけ工具からのコイルチップの除去の手間が省かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリル穿孔動作中に前進を規制するための装置であって、ハンドドリルおよび数値制御自動製造機械のいずれと組み合わせても動作可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、例えば、回転可能に装着されたスピンドルが内部に同軸に配置されて成る円筒ハウジングを含んでおり、スピンドルは、駆動側端部と工具側端部とを有し、軸方向の移動が規制される。スピンドルの駆動側端部は、これがハンドドリルのドリルチャックに挟み込まれるように、または、自動製造機械の対応する受け部に挟み込まれるように構成される。スピンドルの工具側端部には雌ネジが設けられており、この雌ネジ内に適切な穴あけ工具を捩じ込むことができる。ドリルビットと皿もみ部とを組み合わせた段付きドリルビットとして知られるものが、穴あけ工具としてこの種の装置と共に使用される。穴あけ工具は、ハウジングに固定され、そして、側部開口を有するストッパケージによって取り囲まれ、ストッパケージはドリル穿孔動作の初めに工作物を支える。ドリル穿孔中に生成されるチップは、側部開口を通じてストッパケージから吐き出されるように意図されている。工作物へ向かう方向へのドリルの前進を規制するため、ハウジング内に調整可能ストッパが設けられる。このような装置は、皿もみ凹部を有する穴の形成において、再現可能な皿もみ深さを確保するために使用される。これに関連して、一方では、あまりにも深い皿もみ凹部によって不良品となる場合があり、他方では、あまりにも小さい深さの皿もみ凹部によって複雑な表面再仕上げが必要となる。
【0003】
前述した種類の装置の欠点は、対象となる工作物の表面が傷つきやすい場合に、機械加工される材料に応じて、生成されるチップが望ましくない副次的効果をもたらすという点である。この望ましくない効果は、特に皿もみ凹部のドリル穿孔中に流動チップが生成され、それが工具の周囲に巻き付き、それにより、コイル状チップすなわちチップコイルが生じることにある。この場合、チップコイルが穴あけ工具の周囲に巻回され、それにより、穴あけ工具の周囲に巻き付けられて回転する流動チップは、制御できない動きをし、そうすることで、引っかきにより、多かれ少なかれある程度で工作物の表面を損傷させる。このようにして生成される引っかき傷の除去には、かなりの程度の追加作業が必要となる。また、各ドリル穿孔サイクル後に、手でチップコイルを除去しなければならないため、動作シーケンスが中断される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本発明は、チップコイルによる工作物表面への損傷を確実に防止できるように前述した種類の装置を発展させるという目的に基づくものである。
【0005】
請求項1によれば、この目的は、ストッパケージがチップを破壊するためにハウジングに固定されたピンを備え、このピンが、ハウジング側端部と自由端部とを有し、その自由端部が皿もみ部とほぼ接触するように工作物表面と略平行に、そして、その表面の直近において外側から穴あけ工具(段付きドリルビット)へ向けて略径方向に延びるということによって達成される。
【0006】
本発明を有益に展開したものが従属請求項に示されている。工作物の表面に対する損傷が本発明によって防止され、それにより、対応する表面の再仕上げが回避される。また、従来は各ドリル穿孔サイクル後に必要であった、穴あけ工具からのコイルチップの除去の手間が省かれる。
【0007】
本発明を、明細書本文で更に詳しく説明すると共に、図面に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、一例としてハンドドリルと共に使用され、前進を規制するための既知の種類の装置1を示しており、装置1は、ハウジング2と、ハウジング内に回転可能に装着され、幅広部3aおよびシャンク部3bを有するスピンドル3とを備えている。下側ニードルベアリング4および上側ニードルベアリング5は、スピンドル3を装着する作用を有している。スピンドル3はその上側位置に置かれた状態で示されている。この位置では、スピンドル3上に配置された軸回り保持リング6が、ハウジングに固定されたニードルベアリング4の部分4aを支える。幅広部3aの下端は、スラストボールベアリング7を支える肩部を形成する。圧縮スプリング8は、その下端の部分においてハウジングに固定されたニードルベアリング4の部分4aによって支持されており、このスラストボールベアリング7に対して図の下側から作用する。ハウジング2の内側には、軸方向に調整可能なストッパ9が配置されている。圧縮スプリング8は、プレストレスの結果としてスピンドル3が図示の位置に確実に保持されるような寸法を有している。ハウジング2の下部はストッパケージ2aによって構成される。このストッパケージ2aは工作物10上に配置され、この工作物10は、他の工作物11と同時にドリル穿孔される。スピンドル3の下端に捩じ込まれる段付きドリルビット12は、穴あけ工具として作用する。ハウジングに取り付けられ、そして、ハウジング側端部および自由端部を有するピン13は、それが工作物10の表面と略平行に、そして、この表面の直近の位置において外側から穴あけ工具へ向けて略径方向に延びるように、ストッパケージ2a内に配置される。
【0009】
コーン14が段付きドリルビット12上に押し込まれ、これに固定されている。ドリルチャック16と圧縮空気接続部17とを有するハンドドリル15は装置1を駆動するよう働く。その後、工作物10,11に穴を形成する場合には、段付きドリルビット12を回転させた状態で、スピンドル3が、ハンドドリル15のハンドルによって圧縮スプリング8の力に抗して工作物10へ向けて前進される。これにより、ニードルベアリング5およびスラストボールベアリング7がスピンドル3の前進移動に追従する。スラストボールベアリング7がストッパ9に接触するとき、ストッパ9を使用して設定される前進の終端位置に達する。
【0010】
図2は、図1の装置1の図の下側部分を、ハウジング2と、ストッパケージ2aと、スピンドル3と、工作物10,11と、穴あけ工具12と、コーン14と、ピン13とを含む部分図で示している。段付きドリルビット12は、ドリル穿孔と同時に皿もみするように作用し、従って、ツイストドリル12aおよび皿もみ部12bを備えている。工作物10,11に皿穴を形成している間に生成されるチップによって生じる損傷を回避するために、本発明に係る装置1は、ピン13およびコーン14を備えている。この点に関して、ピン13はチップ破壊具の作用を有している。図示された本発明の実施形態において、ピン13は、適切なプラスチックから、例えばポリアミドから形成されており、これが工作物表面と略平行に、そして、この表面の直近の位置において外側から穴あけ工具12へ向けて略径方向に延びるように構成されている。このようにピン13を配置することにより、ドリル穿孔および皿もみ中に流れ出るように生成されるチップが繰り返し破壊され、それにより、それらの断片をストッパケージ2aから外側へと吐き出すことができ、コイル状のチップが生成されることが回避される。ピン13は、円錐形状を有しており、ストッパケージ内の対応する円錐形状の受け穴に圧入されて、ここで自己ロックにより確実に保持される。コーン14は、チップの断片がストッパケージ2aの上部に入り込むことを防止する。ツイストドリル12aの図示の位置15は、その開始位置を示している。
【0011】
図3は図2の装置を示しており、段付きドリルビット12は既にここまで前進しており、そのため、ツイストドリル12aは工作物10,11をドリル穿孔済みである。このプロセスにおいて、ピン13は既にチップ破壊具として作用しており、それにより、流れ出るように生成されたチップが小さい断片へと分割されている。これらの断片がストッパケージ2aから出るルートが矢印17により示されている。一連の特定の皿穴をドリル穿孔するように装置1を準備するため、これに適した段付きドリルビット12が挿入される。これに関連して、その都度、ピン13も交換される。段付きドリルビット12の図示の位置16で、段付きドリルビット12は、新たに挿入されたピン13と皿もみ部12bで丁度接触している。
【0012】
図4は図3の装置を示しており、ツイストドリル12aおよび皿もみ部12bを有する段付きドリルビット12が前進の最後の位置に達している。この位置18で、工作物10における皿もみ凹部を有する穴の形成が完成する。これに関連して、皿もみ深さは、図1のストッパ9によって設定される値に正確に一致する。図3の位置16から図4の位置18へと移動する際、ピン13の端部が離れる。皿もみ部12bと辛うじて接触することのない、新たに提供されたピン13の形状は、段付きドリルビット12が交換されるまで、すべての更なる穴のために維持される。段付きドリルビット12が交換された後にのみ、新たなピン13が再び挿入される。これにより、対象としている特定のケースのためにピンを特別に準備する必要はなくなり、むしろ、装置1の使用中に、ピン13の必要な形状が自動的に生み出される。
【0013】
図5は、ストッパケージ2aが、チップを破壊するための調整ネジ19を備えている、本発明の進展形態に係るストッパケージ2aの部分断面を示している。これに関連して、調整ネジ19を受ける雌ネジがストッパケージ2aの関連する場所に配置されている。調整ネジ19は、ネジ19の自由端と図4の位置18に対応する皿もみ部との間の空隙が最小となるように調整される。この調整もまた、異なる皿もみ直径を有する段付き皿もみ部が使用されるまでは変更する必要はない。
【0014】
工作物表面に対する損傷および動作シーケンスの中断は、本発明によって効果的に回避される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】前進を規制するための装置の断面図をハンドドリルと共に示している。
【図2】ドリル穿孔動作の初めにおける図1の装置の部分断面を示している。
【図3】ドリル穿孔動作中における図2の装置を示している。
【図4】ドリル穿孔動作の終りにおける図3の装置を示している。
【図5】ストッパケージ2aの部分断面を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストッパケージとスピンドルとを有するハウジングであって、前記スピンドルが前記ハウジング内に回転可能に且つ軸方向に移動可能に装着されるハウジングと、
ドリルの前進を規制するために配置され、軸方向に調整可能なストッパと
を備える、ドリル穿孔動作中に前進を規制するための装置において、
前記ストッパケージ(2a)はチップを破壊するためのチップ破壊具(13;19)を備え、前記チップ破壊具(13;19)は、ハウジング側端部と自由端部とを有し、前記自由端部が、皿もみ部(12b)と略接触するように、工作物の表面と略平行に、且つ、前記表面の直近の位置において外側から穴あけ工具(段付きドリルビット12)へ向けて略径方向に延びることを特徴とする装置。
【請求項2】
コーン(14)が段付きドリルビット(12)上に押し込まれ、これに固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記チップ破壊具(13;19)が前記ハウジングに固定されたピン(13)であることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記チップ破壊具(13;19)が調整ネジ(19)であることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−520605(P2009−520605A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546465(P2008−546465)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070070
【国際公開番号】WO2007/071757
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508186989)エアーバス ドイチュランド ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】