説明

ドリル

【課題】 ドリルの穴あけ加工による切屑が加工穴の縁に付着することを防止し、容易な穿孔作業により完全な加工穴を得る。
【解決手段】 ドリル先端部に小径部7を備えており、その小径部7と大径部3の間5の部分は切削方向に対して凹状に構成され大径部3の最外部の刃11は切削方向及び回転方向と同じ向きに突出した鋭角bの刃11を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削の穴あけ加工に使用されるドリルの改良に関して、特に被削材に切屑がばりとして付着し残ってしまうのを防止するようにしたドリルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルの先端部に小径部を形成したドリルでは、中心部に穴の開いたリング状の切屑が、加工された穴においてドリル抜け側の開口部分の縁にばりとして付着することを防止しようとしたものが提案されている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−54810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特開2001−54810号公報に記載された構造では、例えばアルミニウム形材等軟材の延性の大きな材料に穴あけ加工を行うと、その加工された穴において中心部に穴の開いたリング状の切屑がドリル抜け側の縁から切り離されずに付着していることがある。
【0004】
本発明は上記の課題を解決するために、ドリル1の先端部の大径部3と小径部7の間5をmが0より大きく大径部の直径の50%以内となるように構成することで、上記ばりの発生を防止するドリル構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載されている発明は、ドリル先端部に小径部7を備えており、その小径部7の直径dは大径部3の直径Dの15〜80%の大きさに設定され、小径部7の長さLは大径部3の直径Dの10〜200%の大きさに設定され、その小径部7と大径部3の間5の部分は切削方向に対して凹状、つまりmは0より大きく大径部の直径の50%以内となるように構成され、大径部3の最外部の刃11は切削方向及び回転方向と同じ向きに突出しており角度bは鋭角とし、その複数枚の刃11はドリル先端部から同じ距離、つまりh1とh2は同じになるように設定されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載されている発明は、小径部13と大径部17の間16の部分は切削方向に対して凹状、つまりm′は0より大きく大径部の直径の50%以内となるように構成され、大径部17の最外部の刃14と刃15は切削方向及び回転方向と同じ向きに突出しており角度bは鋭角とし、その複数枚の刃14と刃15はドリル先端部からh3の距離及びh4の距離をなすように設定されていることを特徴とする。
【0007】
上記構造を持つことにより、被削材に加工された穴を小径部が貫通する時にドリル大径部の最外部の突出した刃によって、リング状の切屑がドリル抜け側の穴の開口縁に付着する瞬間にリング状のばりを切削することでリング状のばり付着を防止する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、穴あけ加工を行ったときにリング状の切屑が開口部分にばりとして付着することなく、容易に完全なるばり付着無し穿孔作業を容易に実現できる効果がある。
【0009】
請求項1、請求項2に記載のドリルに請求項3に記載の高強度、高硬度の材質を使用し、表面処理コーティングを施したドリルを使用することにより、更に切屑のばり付着を防止する効果を向上させることが可能となり、また耐久性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜図5は本発明を実施するための最良の形態を示す図であって、ストレートシャンクドリルの例を示している。
【0011】
図1〜図5に示すとおり、ドリル1はシャンク2とそれ以外の溝4を有するボデー3からなり、ボデー3の先端部はボデー3自体の大径部3と小径部7の形状を有する。小径部7の直径dは大径部3の直径Dの15〜80%の大きさに設定され、小径部7の長さLは大径部の直径Dの10〜200%の大きさに設定されている。
【0012】
さらに、大径部3と小径部7の間には切削方向に対して凹状、つまりmは0より大きく大径部3の直径Dの50%以内となる溝状の刃10〜9〜5〜11を持ち、大径部の最外部の刃11は切削方向及び回転方向に突出しておりその角度bは鋭角をなす。
【0013】
また、6の部分は切削方向への送り抵抗及び回転抵抗を低減するために設ける。
【0014】
大径部3はマージン8を有しているが、小径部7つまり9の部分はマージンを有していない。
【0015】
ドリルの材質は高強度、高硬度の材質を使用し、表面処理コーティングを施すことにより、よりよい切削条件を得ることができる。
【実施例1】
【0016】
図1〜図5に示すとおり、ドリル1はシャンク2とそれ以外の溝4を有するボデー3からなり、ボデー3の先端部はボデー3自体の大径部3と小径部7の形状を有する。大径部3の直径Dは8.1mmのものを使用し、小径部7の直径dは4.8mmとした。小径部7の長さLは1.8mmに設定した。
【0017】
大径部3と小径部7の間には切削方向に対して凹状となるようmは0.3mmに設定した。大径部の最外部の刃11は切削方向及び回転方向に突出しておりその角度bは50°をなすように設定する。ねじれ角は28°先端角aは118°をなすように設定した。ドリル先端部から刃11までの距離、図5のh1とh2は同じであるように設定した。ドリルの材質は高速度鋼(ハイス鋼)を使用した。
【0018】
以上の条件のドリルを使用し、図6に示す直径Rが22mm、肉厚tが2mmのパイプ状のアルミニウム押出形材の穿孔加工を行った。穿孔加工は図6に示すように1つの側面のみ行った。
【0019】
切削条件は、ドリルの毎分の回転数は1400回転、ドリル1回転当りの軸方向への送り量は0.18mmとした。
【0020】
以上の条件で穿孔加工を行った結果、加工穴36箇所に対して切屑のばり付着は0箇所となり、切屑ばり付着率は0%となった。
【0021】
比較例として、図7のドリルにおいてd′は4.8mm、D′は8.1mm、ねじれ角は28°、先端角は118°の構造を持つ。ドリルの材質は高速度鋼(ハイス鋼)を使用した。また小径部と大径部の間12は切削方向に対して凹状になっていないドリルを使用し、図6に示す穿孔加工と同じように直径Rが22mm、肉厚tが2mmのパイプ状のアルミニウム押出形材の穿孔加工を行った。
【0022】
切削条件は、ドリルの毎分の回転数は1400回転、ドリル1回転当りの軸方向への送り量は0.18mmとした。この条件で穿孔加工を行った結果、加工穴36箇所に対して切屑のばり付着は5箇所となり、切屑ばり付着率は13.9%となった。
【0023】
このことから、本発明の実施例1のドリル1が優れていることが理解できる。
【実施例2】
【0024】
請求項2の条件を満足するドリル、図8のドリルにおいてドリル先端部から刃14までの距離はh3、ドリル先端部から刃15までの距離はh4であり、h3とh4にはdmの差がある。
【0025】
上記条件を満足するドリルで各寸法は、大径部17の直径D′′は8.1mm、小径部13の直径d′′は4.8mmとした。
【0026】
大径部17と小径部13の間16には切削方向に対して凹状となるようm′は0.3mmに設定した。大径部の最外部の刃14と刃15は切削方向及び回転方向に突出しておりその角度bは50°をなすように設定し、ねじれ角は28°先端角は118°をなすように設定した。ドリル先端部から刃14までの距離h3は3.0mm、ドリル先端部から刃15までの距離h4は3.3mmに設定した。ドリルの材質は高速度鋼(ハイス鋼)を使用した。
【0027】
以上の条件のドリルを使用し、図6に示す直径Rが22mm、肉厚tが2mmのパイプ状のアルミニウム押出形材の穿孔加工を行った。穿孔加工は図6に示すように1つの側面のみ行った。
【0028】
切削条件は、ドリルの毎分の回転数は1400回転、ドリル1回転当りの軸方向への送り量は0.18mmとした。この条件で穿孔加工を行った結果、加工穴36箇所に対して切屑のばり付着は0箇所となり、切屑ばり付着率は0%となった。
【0029】
この結果より、実施例1の比較例と比べて請求項2の構造をもつ実施例2のドリルが優れていることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係わるドリルの好ましい形態を示す構成説明図。
【図2】図1のX−X線に沿う断面図。
【図3】図5のY−Y線に沿う断面図。
【図4】図1の上側面図
【図5】図1のドリル先端部の拡大図
【図6】実施例の加工図
【図7】その他の例のドリルの図
【図8】請求項2のドリルの好ましい形態を示す構成説明図。
【符号の説明】
【0031】
1 ドリル
2 シャンク
3 大径部
4 溝
7 小径部
8 マージン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリル先端部に小径部を備えており、その小径部の直径は大径部の直径の15〜80%の大きさに設定され、小径部の長さは大径部の直径の10〜200%の大きさに設定され、そのドリルの小径部と大径部の間の部分は切削方向に対して凹状となるように構成され、その凹状の深さは0より大きく大径部の直径の50%以内となる凹状の形状をもち、大径部の最外部の刃は切削方向及び回転方向と同じ向きに突出しており角度は鋭角とし、その複数枚の刃はドリル先端部から同じ距離になるように設定されていることを特徴とするドリル。
【請求項2】
請求項1のドリルにおいて、ドリルの小径部と大径部の間の部分は切削方向に対して凹状となるように構成され、その凹状の深さは0より大きく大径部の直径の50%以内となる凹状の形状をもち、大径部の最外部の刃は切削方向及び回転方向と同じ向きに突出しており角度は鋭角とし、その複数枚の刃はドリル先端部から違う距離になるように設定されていることを特徴とするドリル。
【請求項3】
請求項1、請求項2のドリルにおいて、ドリルの材質は高強度、高硬度の材質を使用し、表面処理コーティングを施したドリル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−142452(P2006−142452A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338280(P2004−338280)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(594028233)本多金属工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】