説明

ドリンクホルダ

【課題】異物の混入を防ぐことで安全性を向上させ、比較的簡易な構成で安価に製造でき、しかも取り扱いが容易で壊れにくく耐久性にも優れたドリンクホルダ10を提供する。
【解決手段】トレイ部材20は、その底面をなす台座21上にドリンク容器の外周を囲む保持部22を立設してなり、ベース部材30は、座席40の略垂直な取付部位に装着される正面板31に、前記台座21を上下方向に回動可能に支持してなり、前記正面板31には、前記トレイ部材20の回動時における保持部22の軌跡と干渉しないで該保持部22を通過させる開口部33が設けられ、前記保持部22に、使用状態にある際に開口部33を塞ぐと共に、使用状態ないし収納状態に至る途中で開口部33の内縁と保持部22の外壁との間に生じる隙間を埋めるスペーサ27を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に設けられ、缶、コップ、紙パックやペットボトル等の各種のドリンク容器を保持するトレイ部材と、該トレイ部材を略水平な使用状態と略垂直な収納状態とに回動可能に支持するベース部材とを備えたドリンクホルダに関し、特に航空機、自動車、鉄道、船舶等の客室内に設置されている乗物用座席に適するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機等の座席に装備されるドリンクホルダとして、例えば特許文献1に開示されているように、座席の背凭れ後面に形成された凹所内に回動自在に枢着された飲料容器保持装置が知られている。この飲料容器保持装置は、飲料容器よりも大径の透孔を有する案内枠と、台座とを所定の間隔を保って相対させて一体に繋がるように形成した飲料容器受けを、座席背凭れの後面に形成された凹所内に回動自在に枢着して構成されていた。
【0003】
また、座席背凭れの後面等の取付部位に凹所を設ける必要のないドリンクホルダとしては、例えば特許文献2に開示されているように、ドリンク容器の転倒を可及的に防止すると共に、ドリンク容器が置かれた物品周囲にあるスペースの有効利用の向上を図ったドリンクホルダも知られている。
【0004】
このドリンクホルダは、第1の環状体と第2の環状体の何れか一方を基部から離間する方向へ回動させて枠体を構成し、その枠体内にドリンク容器を収容させると共に、第1の環状体と第2の環状体の何れか一方を基部側へ回動させることにより、リンク部材を介して他方の環状体を同時に基部側へ回動させ、これにより各環状体を収納させるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57−97737号公報
【特許文献2】登録実用新案第3029042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載された従来の技術のように、座席背凭れの後面等の取付部位に凹所を設ける構成では、特に航空機等の乗物用座席に適用する場合に、座席の凹所内に異物を残される事態を想定でき、かかる異物が乗物運行に支障を来たすような危険物である可能性も否定しきれない。そのため、安全面からドリンクホルダの収納時に余計な空間が存在することは望ましくなかった。
【0007】
また、前述した特許文献2に記載された従来の技術のように、座席背凭れの後面等の取付部位に凹所を設けない構成では、ドリンクホルダを収納したとしても、取付部位の外側表面に折り畳まれたものがそのまま剥き出し状態で露出する。従って、乗物用座席に適用する場合には、露出した構成の一部が乗客に引っ掛かるような事態も想定でき、安全面からドリンクホルダの収納時に引っ掛かる虞がある構成の一部が露出することは望ましくなかった。
【0008】
さらに、特許文献2に記載された従来の技術では、一対の環状体を連動させるリンク部材等と、部品点数が多くなり、組付け工数が増大し、コスト高になるばかりでなく、構造的にも華奢で脆弱なものとなり、不特定多数の人が利用する乗物用座席に適用するには不向きであるという問題もある。
【0009】
本発明は、以上の従来技術が有する問題点に着目してなされたものであり、使用時はドリンク容器を保持するための空間以外に異物が混入し得る余計な空間が生じることなく、収納時は引っ掛かる虞がある構成の一部が露出することもなく、異物を同時に収納することができず、安全性を向上させることができ、また、比較的簡易な構成で安価に製造でき、しかも取り扱いが容易で壊れにくく耐久性にも優れたドリンクホルダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]座席(40)に設けられ、各種のドリンク容器を保持するトレイ部材(20)と、該トレイ部材(20)を略水平な使用状態と略垂直な収納状態とに回動可能に支持するベース部材(30)とを備えたドリンクホルダ(10)において、
前記トレイ部材(20)は、その底面をなす台座(21)上にドリンク容器の外周を囲む保持部(22)を立設してなり、
前記ベース部材(30)は、座席(40)の略垂直な取付部位に装着される正面板(31)に、前記台座(21)を上下方向に回動可能に支持してなり、前記正面板(31)には、前記トレイ部材(20)の回動時における前記保持部(22)の軌跡と干渉しないで該保持部(22)を通過させる開口部(33)が設けられ、
前記保持部(22)に、前記使用状態にある際に前記開口部(33)を塞ぐと共に、前記使用状態ないし前記収納状態に至る途中で前記開口部(33)の内縁と保持部(22)の外壁との間に生じる隙間を埋めるスペーサ(27)を設けたことを特徴とするドリンクホルダ(10)。
【0011】
[2]前記保持部(22)は、前記ドリンク容器の外周を囲む周方向の一部が開放部分として切り欠かれた形状に設けられたことを特徴とする[1]に記載のドリンクホルダ(10)。
【0012】
[3]前記台座(21)および前記正面板(31)は、前記収納状態にある際に互いに平行に近接し合うように設定されたことを特徴とする[1]または[2]に記載のドリンクホルダ(10)。
【0013】
[4]前記トレイ部材(20)を、前記収納状態に拘束および拘束解除が可能なロック手段を備えたことを特徴とする[1],[2]または[3]に記載のドリンクホルダ(10)。
【0014】
[5]前記正面板(31)の裏側に、前記座席(40)の取付部位に埋設され、前記開口部(33)をその内側から閉じると共に、該開口部(33)を通過してきた前記保持部(22)および前記スペーサ(27)を収納する閉鎖空間を区画するインナーケース(34)を設けたことを特徴とする[1],[2],[3]または[4]に記載のドリンクホルダ(10)。
【0015】
[6]前記ベース部材(30)は、前記座席(40)の背凭れ(41)の後面に取り付けられることを特徴とする[1],[2],[3],[4]または[5]に記載のドリンクホルダ(10)。
【0016】
[7]前記座席(40)は、航空機用座席(40)であることを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5]または[6]に記載のドリンクホルダ(10)。
【0017】
前記本発明は次のように作用する。
前記[1]に記載のドリンクホルダ(10)によれば、座席(40)の略垂直な取付部位にベース部材(30)の正面板(31)が装着され、この正面板(31)に対してトレイ部材(20)の台座(21)が上下方向に回動可能に支持される。このような簡易な構成でトレイ部材(20)が略水平となる使用状態では、台座(21)上に載置したドリンク容器の側面は保持部(22)によって支持され、ドリンク容器を倒れないように保持することができる。
【0018】
前記正面板(31)には、前記トレイ部材(20)の回動時における保持部(22)の軌跡と干渉しないで該保持部(22)を通過させる開口部(33)が設けられており、トレイ部材(20)が使用状態から略垂直な収納状態に回動すると、保持部(22)は開口部(33)を通過して正面板(31)の裏側に収納される。ここで保持部(22)には、使用状態にある際に開口部(33)を塞ぐと共に、使用状態ないし収納状態に至る途中で開口部(33)の内縁と保持部(22)の外壁との間に生じる隙間を埋めるスペーサ(27)が設けられている。
【0019】
かかるスペーサ(27)によって、使用時に開口部(33)は塞がれるため、該開口部(33)の内部に異物を混入されることがなく、また、ドリンク容器を保持するための空間以外に異物が混入し得る余計な空間が保持部(22)の周囲に生じることもなく、該余計な空間に異物を置いたまま収納することができない。また、収納時には正面板(31)に台座(21)が重なり合うように回動し、台座(21)上の保持部(22)等の構成が外側に露出することがなく、平面的な台座(21)の裏面が取付部位を隠蔽する状態となる。
【0020】
前記[2]に記載のドリンクホルダ(10)によれば、前記保持部(22)は、ドリンク容器の外周を囲む周方向の一部が開放部分として切り欠かれた形状に設けられる。これにより、台座(21)上に残された異物を開放部分から容易に確認することができると共に、台座(21)上の異物を外部に容易に取り出すことができる。また、大きめのドリンク容器の外周の一部や取手を開放部分より外側に突出させた状態で保持することができ、台座(21)上の奥行きを極力抑えることが可能となる。
【0021】
前記[3]に記載のドリンクホルダ(10)によれば、前記台座(21)および前記正面板(31)は、収納状態にある際に互いに平行に近接し合うように設定されている。従って、これらの間(特に台座(21)上)に異物が残っている状態では、既定の収納状態まで回動させることができないから、異物の混入を防ぐだけでなく、台座(21)と正面板(31)の間における異物の存在を容易に検知することができる。
【0022】
前記[4]に記載のドリンクホルダ(10)によれば、前記トレイ部材(20)を、収納状態に拘束および拘束解除が可能なロック手段を備える。これにより、収納状態にあるトレイ部材(20)が不用意に使用状態に戻る動作を確実に防止することができる。なお、ロック手段に関しては、係脱する構成によって節度感を付与するのに限らず、磁石(35)等の磁力により拘束できるものとすれば、非常に簡易に構成することができる。
【0023】
前記[5]に記載のドリンクホルダ(10)によれば、前記正面板(31)の裏側に、座席(40)の取付部位に埋設され、前記開口部(33)をその内側から閉じると共に、該開口部(33)を通過してきた保持部(22)およびスペーサ(27)を収納する閉鎖空間を区画するインナーケース(34)を設ける。これにより、間違って異物が開口部(33)の内側に入ったとしても、異物はインナーケース(34)内に留まり座席(40)内部に侵入することはないため、異物を取り出す際に座席(40)を分解する必要がない。
【0024】
ここで特に、インナーケース(34)の閉鎖空間を保持部(22)の回動時の軌跡に合致した形状とすれば、トレイ部材(20)を使用状態から収納状態に回動する際に、保持部(22)に異物が付いていたとしても、異物がインナーケース(34)の内壁に干渉することで収納できない。よって、異物の混入を未然に防ぐことができる。
【0025】
以上のようなドリンクホルダ(10)は、例えば前記[6]に記載したように、座席(40)の背凭れ(41)の後面に取り付けると良い。かかる場合に座席(40)の着座感に何ら影響を及ぼす虞がなく、後方の座席(40)の乗客が自由に使用することができる。ここで座席(40)は、特に前記[7]に記載したように、航空機用座席(40)への適用が優れている。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るドリンクホルダによれば、使用時はドリンク容器を保持するための空間以外に異物が混入し得る余計な空間が生じることなく、収納時は引っ掛かる虞がある構成の一部が露出することもなく、異物も同時に収納することができず、安全性を向上させることができ、また、比較的簡易な構成で安価に製造でき、しかも取り扱いが容易で壊れにくく耐久性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る使用状態にあるドリンクホルダを前方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る使用状態にあるドリンクホルダを後方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る使用状態にあるドリンクホルダを分解して示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る使用状態にあるドリンクホルダを示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る使用状態にあるドリンクホルダを示す右側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る使用状態にあるドリンクホルダを示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る収納状態にあるドリンクホルダを前方から見た斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る収納状態にあるドリンクホルダを示す正面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る収納状態にあるドリンクホルダを示す右側面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る収納状態にあるドリンクホルダを示す平面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るドリンクホルダを取り付けた航空機用座席を後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1〜図11は、本発明の一実施の形態を示している。
図1〜図6は、本発明の実施の形態に係るドリンクホルダ10の使用状態をそれぞれ示すものであり、図7〜図10は、同ドリンクホルダ10の収納状態をそれぞれ示すものである。また、図11は、同ドリンクホルダ10を装備した航空機用座席を示す斜視図である。以下、ドリンクホルダ10を航空機の客室内に設置される航空機用座席に適用した場合を例に説明する。
【0029】
図1、図2は、本発明の実施の形態に係るドリンクホルダ10をそれぞれ前後から見た斜視図であり、図3は、同ドリンクホルダ10を分解して示す斜視図である。図1〜図3に示すように、ドリンクホルダ10は、缶、コップ、紙パックやペットボトル等の各種のドリンク容器を保持するトレイ部材20と、該トレイ部材20を略水平な使用状態と略垂直な収納状態とに回動可能に支持するベース部材30を備えている。
【0030】
前記トレイ部材20は、合成樹脂の成形品であり、その底面をなす台座21上にドリンク容器の外周を囲む保持部22を立設してなる。台座21は、四角形の平板状に成形され、その上側となる底面上に保持部22は一体成形されている。保持部22は、台座21上に載置したドリンク容器を所定高さで周回することで、ドリンク容器を倒れないように保持するものであるが、周方向の一部が開放部分として切り欠かれた形状に設けられている。
【0031】
詳しく言えば保持部22は、その前側と後側がそれぞれ開放部分として切り欠かれており、これらの開放部分を間にして左右に対向する円弧断面の形状に設けられている。左右に分かれた保持部22は、それぞれ前側の開放部分の端をなす前端縁より後方に向って同一高さのフランジ状の前側壁22aと、後半部分から後側の開放部分の端をなす後端縁にかけて高さが前側壁22aの2倍程度の後側壁22bとを有している。また、後側壁22bの後端縁よりさらに後方に向って連なり、左右で互いに平行に向き合う基端壁22cも一体に設けられている。
【0032】
このように左右一対となる保持部22で囲まれた空間が、台座21上にドリンク容器を保持するためのドリンク保持空間部23となっている。図3に示すように、前記各基端壁22cの後端縁には、略直角に交わるように両側に延出して、次述するベース部材30にある開口部33を塞ぐ後面壁24が一体に設けられている。また、台座21の基端縁に沿って、次述するベース部材30に回動可能に連結する回動部25が設けられている。この回動部25上に、前記基端壁22cの下端が位置するように一体に連結されている。
【0033】
前記ベース部材30も、合成樹脂の成形品であり、後述する座席40の略垂直な取付部位に装着される正面板31を有し、この正面板31に前記台座21を上下方向に回動可能に支持してなる。正面板31は、四角形の平板状に成形されているが、その上端縁と下端縁に所定幅で沿う上下の端縁部31a,31bが、それぞれ後方に一段凹んだ縦断面形状に一体成形されている。ここで上下の端縁部31a,31bを除いた前側に一段出っ張る略全域が基準面部31cをなしている。
【0034】
図3に示すように、前記基準面部31cの下側には、左右一対の軸受部32,32が前方に向って突設されており、各軸受部32の間に、前記台座21の回動部25が枢軸26を介して回動可能に連結されている。略垂直な正面板31に対して台座21は、略水平な使用状態(図1参照)と略垂直な収納状態(図7参照)とに、約90度の角度範囲で回動可能に支持されている。
【0035】
前記正面板31には、前記台座21の回動時における前記保持部22の軌跡と干渉しないで該保持部22を通過させる開口部33が設けられている。開口部33は、左右に分かれた一対保持部22に対応して、基準面部31cにおける左右両側に一定の間隔をおいた状態で一対設けられている。各開口部33の形状は、前記保持部22の軌跡上における最大断面形状と合致するものである。例えば開口部33の開口幅は、前記保持部22のうち最も外側に位置する前側壁22aと後側壁22bの境付近と、最も内側に位置する基端壁22cによって規定される。
【0036】
ここで前記保持部22の特に外側において、前側壁22aと後側壁22bの境付近から前記後面壁24の外側縁に至る軌跡上には、異物を収納できる隙間(内側に凹んだ空間)が生じることになる。そこで、前記保持部22に、このような隙間を埋めるためのスペーサ27を設けている。スペーサ27は、図3に示すような形状の合成樹脂の成形品であり、前記保持部22における後側壁22bと基端壁22cと後面壁24とに囲まれた隙間を埋めるように後からネジ止めされている。
【0037】
前記スペーサ27は、要するに前記台座21が使用状態にある際に前記開口部33を塞ぐと共に、前記台座21が使用状態ないし収納状態に至る途中で前記開口部33の内縁と保持部22の外壁との間に生じる隙間を埋めるための部材である。なお、前記保持部22に一体に設けた後面壁24は、スペーサ27の一部として保持部22に後付けするように構成しても良い。
【0038】
前記正面板31の裏側には、後述する座席40の取付部位に埋設され、前記開口部33をその内側から閉じると共に、該開口部33を通過してきた前記保持部22および前記スペーサ27を収納する閉鎖空間を区画するインナーケース34が設けられている。ここでインナーケース34内の閉鎖空間は、前記保持部22の回動時の軌跡に合致した形状に設定されている。すなわち、インナーケース34は、前記開口部33の横幅で前記回動部25を中心とする角度が約90度の扇形断面形状に設けられている。
【0039】
また、前記後面壁24の上端縁には、前記正面板31の裏側にて前記開口部33を通過不能な状態に出っ張り、前記台座21を使用状態に保持し得るストッパ28(図3参照)が設けられている。また、正面板31の基準面部31cにおける上部中央には、トレイ部材20を、前記収納状態に拘束および拘束解除が可能なロック手段が設けられている。このロック手段は、押圧すると円筒ケースの前方に出没し得る磁石35を備え、トレイ部材20における台座21の前端中央には、前記磁石35が着脱する金属片29が取り付けられている。なお、この種のロック手段の構成は一般的であるので詳細な説明は省略する。
【0040】
さらに、前記台座21および前記正面板31は、図7に示すように台座21が収納状態にある際に、互いに平行に近接し合うように設定されている。なお、正面板31の基準面部31cにおける中央には、各種プレートを装着するために底浅の矩形状に凹んだプレート装着部36が設けられている。以上のようなドリンクホルダ10は、図11に示すように、航空機用の座席40における背凭れ41の後面に取り付けられている。
【0041】
次に、本実施の形態に係るドリンクホルダ10の作用を説明する。
ドリンクホルダ10を使用しない時は、図7に示すように、トレイ部材20の台座21は略垂直な収納状態に起立している。かかる状態にある台座21は、ベース部材30における正面板31の基準面部31cに対して重なり合うように近接している。そのため、台座21上の保持部22等の構成が外側に露出することがなく、平面的な台座21の裏面が取付部位を隠蔽する状態となり、乗客の邪魔になることがない。
【0042】
このように、トレイ部材20が収納状態にある時は、正面板31にある磁石35に対して台座21にある金属片29が吸着されている。このような簡易な構成のロック手段によって、台座21を収納状態に確実に拘束することができ、台座21が不用意に前方に倒れることを防止することができる。なお、図7において、金属片29の裏側に位置する台座21の前端中央を押圧することにより、磁石35が没入して磁力による拘束を解除することができる。
【0043】
ドリンクホルダ10を使用する時は、前記ロック機構による拘束を解除した後、トレイ部材20の台座21を前方に引き倒すように略90度回動させる。かかる回動過程で台座21上の保持部22は、正面板31の開口部33を通りインナーケース34から引き出される。図1に示すように、台座21が略水平な使用状態になると、保持部22に連なる後面壁24のストッパ28(図3参照)が開口部33の上端縁内側に係合する。これにより、台座21を使用状態に強固に保持することができる。
【0044】
このような使用状態で、缶やカップ等の各種ドリンク容器を台座21上の保持部22で囲まれたドリンク保持空間部23に載置すれば、転倒する虞のない安定した状態に保持することができる。特に、前記保持部22の前側は開放部分として切り欠かれているため、この開放部分から台座21上に残された異物を容易に確認することができると共に、台座21上の異物を外部に容易に取り出すことができる。また、大きめのドリンク容器の外周の一部や容器の取手を、前記開放部分より外側に突出させた状態で保持することもできるため、台座21上の奥行きを極力抑えることが可能となる。
【0045】
ここで前記保持部22には、使用状態にある際に開口部33を塞ぐと共に、使用状態ないし収納状態に至る途中で開口部33の内縁と保持部22の外壁との間に生じる隙間を埋めるスペーサ27が設けられている。これにより、前記開口部33の内部に異物を混入される虞がなく、また、ドリンク容器を保持するための空間以外に異物が混入し得る余計な空間が保持部22の周囲に生じることもなく、該余計な空間に異物を置いたまま収納することもできない。
【0046】
トレイ部材20を収納状態に戻す時は、台座21の前端縁を掴んで上方に起立させるように略90度回動させる。かかる回動過程で台座21上の保持部22は、正面板31の開口部33を通過してインナーケース34内に収納される。ここでインナーケース34の閉鎖空間は、保持部22の回動時の軌跡に合致した形状であるため、トレイ部材20を使用状態から収納状態に回動する際に、保持部22に異物が付いていたとしても、異物がインナーケース34の内壁に干渉することで収納できない。
【0047】
従って、異物の混入を未然に防ぐことができる。また、間違って異物が開口部33の内側に入ったとしても、異物はインナーケース34内に留まり座席40内部に侵入することはないため、異物を取り出す際に座席40を分解する必要がない。さらに、前記台座21および前記正面板31の基準面部31cは、収納状態にある際に互いに平行に近接し合うように設定されている。従って、これらの間(特に台座21上)に異物が残る状態では、既定の収納状態まで回動させることができず、異物の混入を防ぐだけでなく、台座21と正面板31の間における異物の存在を容易に検知することができる。
【0048】
以上のようなドリンクホルダ10は、比較的簡易な構成で安価に製造することができ、しかも取り扱いが容易で壊れにくく耐久性にも優れる。従って、図11に示すように、航空機用の座席40の背凭れ41に取り付けると良い。かかる場合に座席40の着座感に何ら影響を及ぼす虞がなく、後方の座席の乗客が自由に使用することができる。
【0049】
なお、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、本実施の形態では航空機用座席に適用した例を説明したが、これに限られるものではなく、鉄道車両等の他の乗物の座席や一般家庭の椅子ないしソファ等に適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、特に航空機、自動車、鉄道、船舶等の客室内に設置される乗物用座席に取り付けるドリンクホルダとして適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10…ドリンクホルダ
20…トレイ部材
21…台座
22…保持部
22a…前側壁
22b…後側壁
22c…基端壁
23…ドリンク保持空間部
24…後面壁
25…回動部
26…枢軸
27…スペーサ
28…ストッパ
29…金属片
30…ベース部材
31…正面板
31a…下端縁部
31b…上端縁部
31c…基準面部
32…軸受部
33…開口部
34…インナーケース
35…磁石
40…座席
41…背凭れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に設けられ、各種のドリンク容器を保持するトレイ部材と、該トレイ部材を略水平な使用状態と略垂直な収納状態とに回動可能に支持するベース部材とを備えたドリンクホルダにおいて、
前記トレイ部材は、その底面をなす台座上にドリンク容器の外周を囲む保持部を立設してなり、
前記ベース部材は、座席の略垂直な取付部位に装着される正面板に、前記台座を上下方向に回動可能に支持してなり、前記正面板には、前記トレイ部材の回動時における前記保持部の軌跡と干渉しないで該保持部を通過させる開口部が設けられ、
前記保持部に、前記使用状態にある際に前記開口部を塞ぐと共に、前記使用状態ないし前記収納状態に至る途中で前記開口部の内縁と保持部の外壁との間に生じる隙間を埋めるスペーサを設けたことを特徴とするドリンクホルダ。
【請求項2】
前記保持部は、前記ドリンク容器の外周を囲む周方向の一部が開放部分として切り欠かれた形状に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のドリンクホルダ。
【請求項3】
前記台座および前記正面板は、前記収納状態にある際に互いに平行に近接し合うように設定されたことを特徴とする請求項1または2に記載のドリンクホルダ。
【請求項4】
前記トレイ部材を、前記収納状態に拘束および拘束解除が可能なロック手段を備えたことを特徴とする請求項1,2または3に記載のドリンクホルダ。
【請求項5】
前記正面板の裏側に、前記座席の取付部位に埋設され、前記開口部をその内側から閉じると共に、該開口部を通過してきた前記保持部および前記スペーサを収納する閉鎖空間を区画するインナーケースを設けたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載のドリンクホルダ。
【請求項6】
前記ベース部材は、前記座席の背凭れの後面に取り付けられることを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載のドリンクホルダ。
【請求項7】
前記座席は、航空機用座席であることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載のドリンクホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−210844(P2012−210844A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76601(P2011−76601)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(390010054)コイト電工株式会社 (136)
【Fターム(参考)】