説明

ドリー制御装置

【目的】 ドリーに搭載したカメラによる撮像の操作が容易に行なえる。
【構成】 ドリー制御部にはドリー移動により撮影可能な全範囲を示す情報を記憶する記憶装置34を有し、CPU35は操作者が入力装置32から入力したドリーつきカメラ37の位置移動指示に基づき変化する撮影可能範囲を算出して撮影可能な全範囲と共にディスプレイ31に表示し、ドリーの移動を指示する制御信号をドリーコントローラ38に出力する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カメラ位置を移動させるドリーに搭載したカメラにより撮像する撮像システムに接続され前記ドリーの駆動を制御するドリー制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、カメラのドリーの動作量をコンピュータを用いて指示するときにはカメラの動作する方向,速度,動作を続ける時間などをパラメータとして与える必要があった。また、動作する方向や速度が動作中に連続的に変化するような場合には更に多くのパラメータを与える必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の技術では、カメラのドリーの動作量を直接パラメータで与えるために実際の動作量を数値で把握する必要があり、感覚的な操作との間にギャップがある。また動作する方向や速度が連続的に変化する場合には更に多くのパラメータを与える必要があり、オペレータの作業量は増大し、正確に細かな操作を実現するためには熟練を必要としていた。
【0004】本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、カメラのドリーの操作を例えばコンピュータのディスプレイ上でポインティングデバイスで指示することによりカメラのドリーの動作を数値パラメータを使うことなく視覚的に行うことができるドリー制御装置の提供を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】このため、本発明に係るドリー制御装置は、撮影位置を移動させる駆動手段付きのドリーに搭載したカメラにより撮像する撮像システムに接続され前記ドリーの駆動を制御するドリー制御装置であって、前記撮像システムからのドリー現在位置情報を入力する情報入力手段と、前記ドリーの駆動により撮影可能な範囲の全体を示す情報を記憶する記憶手段と、前記撮影可能な範囲情報等を表示する表示手段と、操作者が前記表示手段の表示に基づき前記ドリーの駆動を指示入力する操作入力手段と、該操作入力手段への指示入力によるカメラ位置の上下左右前後の移動により変化する撮影可能な範囲を算出し前記表示手段に表示し、駆動制御信号を前記撮像システムに出力してドリーを駆動させる制御手段とを備えたことを特徴とする構成によって、前記の目的を達成しようとするものである。
【0006】
【作用】上記の構成により、記憶手段にドリーの駆動により撮影可能な範囲の全体を示す情報が記憶してあり、操作入力手段の操作により変化するカメラ位置、即ち撮影可能な範囲が表示手段に表示されるので、ドリーに搭載されたカメラによる撮像を表示手段を視ながらの操作により容易に行うことができる。
【0007】
【実施例】本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0008】図1は実施例によりカメラのドリー操作を行うときのディスプレイの画面例を示す模式図であり、図2は一実施例の処理の流れを示すフローチャートであり、図3は実施例の構成の要部を示すブロック図である。
【0009】(第1の実施例)図3のブロック構成図において、IOポート33、記憶装置34、AD/DAコンバータ36が接続されたCPU35があり、IOポート33を通してディスプレイ31、入力装置32が接続されている。また、CPU35はAD/DAコンバータ36を通してドリー付きカメラ37に接続されたドリーコントローラ38に接続され、アナログデータをやりとりする。
【0010】図2は本発明の処理の流れを示すフローチャートである。ステップS21においてドリーの可動範囲の設定を行い、ドリー付きカメラ37のドリーを上下左右前後に移動可能な位置まで動作させる。
【0011】この時入力装置32でドリー付きカメラ37をコントロールする指示を出し、その入力はIOポート33を通してCPU35に入力される。CPU35ではあらかじめ用意された変換手順によってドリーコントローラ38をコントロールするためのデータをAD/DAコンバータ36を通して出力する。AD/DAコンバータ36によってデータはアナログ信号に変換され、ドリーコントローラ38に入力される。ドリーコントローラ38は受け取ったデータをもとにドリー付きカメラ37を操作する。ドリーコントローラ38はドリーの現在位置を測定する機構(図示せず)を持ち、現在位置をADコンバータ36を通してCPU35にフィードバックする。
【0012】オペレータにより上下左右前後すべての方向の最大位置までの移動指令がなされたら、CPU35はその時のそれぞれの方向の最大位置のフィールドバックデータを各方向の最大位置として設定し記憶装置34に記憶する。
【0013】ステップS22において、ドリーの物理的可動範囲と図2の模式図に示すディスプレイ31上のドリー指示ウインドウ11のサイズ合わせを行う。
【0014】本実施例ではドリーの左右方向の動きをドリー指示ウインドウ11内での模擬カメラウインドウ12の左右の動きで、ドリーの上下方向の動きをドリー指示ウインドウ11内での模擬カメラウインドウ12の上下の動きで指示するので、S21で測定したドリー付きカメラ37のドリーの上下左右各方向の最大位置から計算されるドリー付きカメラ37の物理的な可動範囲を、あらかじめ設定されているディスプレイ31に表示されるドリー指示ウインドウのサイズと一致させ、一致させるために用いた変換比率を記憶装置34に記憶する。
【0015】ドリーの前後方向の動きは模擬カメラウインドウ12の大きさで指示するので、S21で設定したドリー付きカメラ37のドリーの前後方向の最大位置から計算されるドリー付きカメラ37の物理的な可動範囲を、あらかじめ決められている模擬カメラウインドウ12の最大の大きさとドリー付きカメラ37を最も後ろに下げたときの位置を、そして模擬カメラウインドウ12の最小の大きさとドリー付きカメラ37を最も前に動かしたときの位置を一致させる。
【0016】ステップS23においてドリーの移動の最大速度を設定する。
【0017】ステップS21においてドリーの操作を行った時にその移動速度を測定しておき、上下左右前後それぞれの動作の最大速度として設定し記憶装置34に記憶しておく。移動速度はドリーコントローラ38からフィードバックされる各方向の位置データを時間で微分することによって各方向の移動速度が得られる。
【0018】ステップS24においてディスプレイ31のドリー指示ウインドウ内を移動する模擬カメラウインドウの移動最大速度を設定する。
【0019】ステップS23において設定したドリーの最大移動速度がドリー指示ウインドウ11内での模擬カメラウインドウの最大移動速度となるように模擬カメラウインドウの最大移動速度を決定し、記憶装置34に記憶しておく。同時にドリーの移動速度とドリー指示ウインドウ上での模擬カメラウインドウの移動速度が同じになるような変換比率を計算し、記憶装置34に記憶しておく。
【0020】ステップS25においてドリーの実際の動作を決定するために図1に示すような画面を表示する。
【0021】11はドリーの実際の動作ウインドウであり、S21で決定したドリー可能範囲がこのドリー指示ウインドウ11の大きさと対応している。12が模擬カメラウインドウでこのウインドウのドリー指示ウインドウ内での位置が実際にドリー可能範囲内でのカメラの位置を示す。
【0022】ステップS26においてオペレータは模擬カメラウインドウ12をマウスなどのポインティングデバイス(図示せず)によってドリー指示ウインドウ11内を移動させることにより、ドリー付きカメラ37の上下左右方向のコントロールを決定する。また、模擬カメラウインドウ12の大きさをポインティングデバイスによって変化させることによってドリー付きカメラ37の前後方向のコントロールを決定する。
【0023】模擬カメラウインドウ12の位置と大きさおよび移動速度が実際のカメラの動きに反映され、模擬カメラウインドウの動きを13,14,15,16のように連続的に変化させるとドリー付きカメラ37は左下から中央上を経由して右下へと前方向へ移動しながら動くことになる。
【0024】ステップS27においてカメラをコントロールする上で物理的に不可能なコントロールを指示することがないように制限が加えられる。
【0025】図1に示す12の模擬カメラウインドウを11のドリー指示ウインドウの枠を越えて移動させようとしてもソフトウエア的に移動できないように制限が加えられ、その結果ドリー付きカメラ37を移動不可能な位置にまで移動させようとするコマンドは発行されない。カメラの前後方向の動きに対応する模擬カメラウインドウ12の大きさについても同様である。またオペレータが模擬カメラウインドウ12をS24で決定された速度を越えて移動させようとしてもソフトウエア的に移動できないように制限が加えられ、ドリー付きカメラ37をドリーのハードウエアの制限を越える速度で移動させるようなコマンドは発行されない。もちろんS24で決定された最高移動速度以下の移動速度であればその範囲内の移動速度は忠実にドリー付きカメラ37の移動速度に反映される。
【0026】ステップS28においてオペレータによる模擬カメラウインドウ12の動きと大きさを解析してドリーの制御データを数値化する。
【0027】ステップS29において制御データは実際には一定のクロックに同期してAD/DAコンバータ36からドリーコントローラ38に出力され、ドリー付きカメラ37を希望通りにコントロールする。
【0028】(第2の実施例)上記の第1の実施例ではドリー指示ウインドウは単純にカメラのドリーの可能な範囲を示すものであったが、第2の実施例は前記図3に示す構成を有して、そして図2のステップS21においてドリーの可動範囲の設定を行うときに前後方向で最も後ろにカメラを下げた状態のカメラからの映像を取り込んでおき、その映像を組み合わせてドリー指示ウインドウ全面に撮影可能なすべての視野を表示することにより、模擬カメラウインドウを移動させるときに何処まで移動させれば希望する映像が得られるか容易に推測できる。
【0029】また、実際に撮影される映像とディスプレイ31上の模擬カメラウインドウ12に囲まれる部分との一致がなされるように模擬カメラウインドウ12の大きさを調節することにより、前後方向のドリー量も視覚的に容易に決定することができる。
【0030】第2の実施例は、上記のような機能を付加することにより、更に容易にカメラをコントロールすることが可能となる。
【0031】(第3の実施例)上記実施例ではカメラのコントロールをディスプレイ31上の模擬カメラウインドウ11を動かすことによって実時間でコントロールしていたが、第3の実施例は単位時間をあらかじめ任意に決定し、模擬カメラウインドウに時間属性を付加して、その時点でカメラの位置を逐次保存していくことによってカメラの動きをあらかじめプログラミングすることができる。
【0032】第3の実施例は、上記の機能により、設定時とは別の時間にあらかじめ決定しておいたカメラの動作を行うことが可能となる。また、カメラの一定の動作パターンをあらかじめ設定しておくことにより、同じ動作を繰り返し行わせることが可能となる。
【0033】
【発明の効果】上記説明のように、本発明によれば、コンピュータのディスプレイ上で模擬カメラウインドウを移動するための簡単な操作でドリー付きカメラのドリーの操作を行うことができる。また、ドリー付きカメラの性能以上の距離および速度でカメラを操作することに対して規制が加えられているのでオペレータのミスにより異常なコンマンドをカメラにたいして発行することはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例によりカメラの操作をディスプレイ上で行う際の画面の一例を示す模式図である。
【図2】 本発明の一実施例の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】 本発明の一実施例の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
11 カメラの操作を画面上で行う際の撮影可能範囲全体を表すドリー指示ウインドウ
12 ドリー指示ウインドウ内を移動させ、実際に撮影する場所を決定する模擬カメラウインドウ
13,14,15,16 模擬カメラウインドウが移動することによって得られる画面の例
31 ディスプレイ
32 入力装置
33 IOポート
34 記憶装置
35 CPU
36 AD/DAコンバータ
37 ドリー付きカメラ
38 ドリーコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 撮影位置を移動させる駆動手段付きのドリーに搭載したカメラにより撮像する撮像システムに接続され前記ドリーの駆動を制御するドリー制御装置であって、前記撮像システムからのドリー現在位置情報を入力する情報入力手段と、前記ドリーの駆動により撮影可能な範囲の全体を示す情報を記憶する記憶手段と、前記撮影可能な範囲情報等を表示する表示手段と、操作者が前記表示手段の表示に基づき前記ドリーの駆動を指示入力する操作入力手段と、該操作入力手段への指示入力によるカメラ位置の上下左右前後の移動により変化する撮影可能な範囲を算出し前記表示手段に表示し、駆動制御信号を前記撮像システムに出力してドリーを駆動させる制御手段とを備えたことを特徴とするドリー制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平9−18765
【公開日】平成9年(1997)1月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−165940
【出願日】平成7年(1995)6月30日
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)