説明

ドレナージチューブ挿入具

【課題】内視鏡の挿入部の処置具挿通チャンネルを挿通させることなく、挿入部をガイド部材として使用してドレナージチューブを所望の狭窄部位に挿入して留置することができるドレナージチューブ挿入具を提供する。
【解決手段】内視鏡の挿入部14に先端側からドレナージチューブ52を被嵌させておき、挿入部14を体腔内の目的の狭窄部位まで挿入する。そして、プッシャーチューブ54を挿入部14に側面側から被嵌し、挿入部14をガイド部材としてドレナージチューブ52をプッシャーチューブ54で挿入部14の先端から押し出して狭窄部位に挿入する。
プッシャーチューブ54には、挿入部14の側面から被嵌するための切込みぶ86が形成されており、その切込み部86を挿通させて挿入部14をプッシャーチューブ54の管腔84内に挿入させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドレナージチューブ挿入具に係り、特に胆道や膵管にドレナージチューブを挿入して留置するためのドレナージチューブ挿入具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胆道内に溜まった胆汁や、膵管内に溜まった膵液を十二指腸に排出するため、胆道や膵管の狭窄部位にドレナージチューブを挿入して留置することが行われている。ドレナージチューブを胆道や膵管に留置する手技として、例えば、側視内視鏡の挿入部を十二指腸のファーター乳頭の近傍まで挿入しておき、挿入部の処置具挿通チャンネルにガイドワイヤを挿通させてガイドワイヤをファーター乳頭から胆道内又は膵管内に挿入する。そして、ガイドワイヤをガイドにしてガイドチューブを胆道内又は膵管内に挿入する。この後、ガイドチューブにドレナージチューブを被嵌し、ガイドチューブをガイドとしてプッシャーチューブによりドレナージチューブを押し込み、胆道内又は膵管内の狭窄部位にドレナージチューブを挿入して留置するようにしている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−142985号公報
【特許文献2】特開2003−320021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では挿入部が細径化され、胆道や膵管などの細径の管腔内にでも直接挿入部を挿入することができる内視鏡が開発されており、そのような内視鏡においては、処置具挿通チャンネルの内径も小さく、ガイドチューブを処置具挿通チャンネル内に挿通させて胆道や膵管内に挿入する従来の手技を用いることはできない。また、内視鏡の挿入部は、ドレナージチューブをガイドするガイドチューブとして使用することも可能な太さまで細径化されている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、内視鏡の挿入部の処置具挿通チャンネルを挿通させることなく、挿入部をガイド部材として使用してドレナージチューブを所望の狭窄部位に挿入して留置することができるドレナージチューブ挿入具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、第1の発明は、ドレナージチューブ及び該ドレナージチューブを押し込むプッシャーチューブを内視鏡の挿入部の外周にスライド可能に被嵌させ、プッシャーチューブによりドレナージチューブを前記挿入部の先端から押し出して体腔内の所定の管腔内にドレナージチューブを挿入するドレナージチューブ挿入具であって、前記プッシャーチューブの側壁部に長手軸方向に沿って切込みを形成し、該切込みに前記挿入部の側面を挿通させて前記プッシャーチューブを前記挿入部の外周に被嵌することを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、内視鏡の挿入部を外周をガイドとして使用してドレナージチューブをプッシャーチューブで押して目的の狭窄部位に挿入することができる。また、内視鏡の構成上、プッシャーチューブを挿入部の基端側から被嵌することはできないが、プッシャーチューブに形成された切込みによって、プッシャーチューブを挿入部の先端側から被嵌することなく、挿入部の側面から被嵌することができる。従って、挿入部を体腔内に挿入した後でもプッシャーチューブを挿入部に被嵌することができ、挿入部の体腔内の所定部位への挿入操作をプッシャーチューブが阻害する不具合もない。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記長手軸方向に直交する方向の前記切込みの幅は前記挿入部の直径よりも小さいことを特徴としている。本発明によれば、プッシャーチューブが挿入部から容易に外れないようにするためである。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記ドレナージチューブは可撓性を有することを特徴としている。
【0010】
第4の発明は、第1、第2、又は第3の発明において、前記ドレナージチューブの基端部に、外周側に突出した操作部が形成されたことを特徴としている。本発明によれば、操作部を把持してドレナージチューブを押し込むことができる。
【0011】
第5の発明は、第1〜第4のうちのいずれか1に記載の発明において、前記プッシャーチューブの長手軸方向の所定範囲において、前記切込みを螺旋状に形成するしたことを特徴としている。本発明によれば、切込みを螺旋状に形成することによってプッシャーチューブが内視鏡の挿入部から外れ難くなり、挿入部の湾曲部分などでプッシャーチューブが外れてしまう不具合を確実に防止することができる。
【0012】
第6の発明は、第1〜第4のうちのいずれか1に記載の発明において、前記切込みにファスナーを形成し、該ファスナーにより前記切込みを開閉可能にすることを特徴としている。本発明によれば、プッシャーチューブを内視鏡の挿入部に被嵌させた後、ファスナーによって切込みを閉塞することによってプッシャーチューブが挿入部から外れ難くなり、挿入部の湾曲部分などでプッシャーチューブが外れてしまう不具合を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内視鏡の挿入部の処置具挿通チャンネルを挿通させることなく、挿入部をガイド部材として使用してドレナージチューブを所望の狭窄部位に挿入して留置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るドレナージチューブ挿入具及び本発明に係るドレナージが適用される内視鏡の一実施の形態を示した全体図
【図2】挿入部の先端面を示した正面図
【図3】ドレナージチューブの一実施の形態を示した縦断面図
【図4】プッシャーチューブの一実施の形態を示した図
【図5】本発明に係るドレナージチューブ挿入具を使用する際の手順の説明に使用した説明図
【図6】プッシャーチューブの変形例を示したプッシャーチューブ先端部の斜視図
【図7】プッシャーチューブの変形例を示したプッシャーチューブ先端部の斜視図
【図8】プッシャーチューブの切込み部にファスナーを設けた形態を示したプッシャーチューブ先端部の斜視図
【図9】図8における9−9矢視断面図
【図10】スライダーの斜視図
【図11】(A)はスライダーの正面図、(B)は(A)におけるB−B矢視断面図、(C)は(A)におけるC−C断面図
【図12】(A)はマウスピースの縦断面図、(B)はマウスピースの正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0016】
図1は本発明に係るドレナージチューブ挿入具及び本発明に係るドレナージが適用される内視鏡の一実施の形態を示した全体図である。同図の内視鏡10は、主として胆道又は膵管(膵胆管系)の内腔を観察する胆道鏡として用いられる内視鏡であり、操作部12と、操作部12に連設され体腔内に挿入される挿入部14と、操作部12から延出されたユニバーサルケーブル16とを備えている。施術時において内視鏡10は、ユニバーサルケーブル16により不図示の画像処理プロセッサ、光源装置、送気送水装置、及び、吸引装置に接続されて使用される。
【0017】
操作部12は、施術者が把持して各種操作を行う部分であり、回転操作されるアングルノブ18、20、押下操作される送気送水ボタン24、吸引ボタン26、シャッターボタン28等の各種ボタンを備えている。また、操作部12は、挿入部14内を挿通する処置具挿通チャンネルに各種処置具を挿入するための処置具挿入部30(開口)を備えている。
【0018】
挿入部14は、操作部側から順に可撓性を有する軟性部32と、アングルノブ18、20の操作によって上下方向及び左右方向に湾曲する湾曲部34と、硬質の先端部36とにより構成されている。
【0019】
挿入部14の先端面38には、図2に示すように、処置具導出口40、観察窓42、照明窓44、44、送気送水口46が設けられている。
【0020】
処置具導出口40は、挿入部14内を挿通する処置具挿通チャンネルを通じて操作部12の処置具挿入部30に連通されており、処置具挿入部30から処置具を挿入すると、その処置具が処置具挿通チャンネルを挿通して処置具導出口40から導出されるようになっている。また、処置具挿通チャンネルは吸引チャンネルにも連結されており、操作部12の吸引ボタン26を押すと、ユニバーサルケーブル16に接続された吸引装置からの吸引力により、血液、粘液等を処置具導出口40から吸い込むことができるようになっている。
【0021】
観察窓42は、先端部36に内蔵されている撮像装置(観察手段)のレンズの一部、又は、保護部材等として先端面38に配置されている。撮像装置は、レンズや撮像素子を備えており、観察窓42を介して取り込まれた被写体光がレンズにより撮像素子の撮像面に結像され、撮像面に結像された被写体の画像が撮像素子により光電変換されて画像信号として取得される。撮像装置により撮像された画像は、ユニバーサルケーブル16に接続された画像処理プロセッサに画像信号として取り込まれ、所要の画像処理が施されてモニタに表示されるようになっている。これによって施術者は挿入部14を挿入した体腔内の画像をモニタで観察することができるようになっている。また、操作部12のシャッターボタン28を押すと、そのときに撮像装置で撮像された画像が画像処理プロセッサにおいて記録保存されるようになっている。
【0022】
照明窓44は、背後にライトガイドの光出射部が配置されており、ユニバーサルケーブル16に接続された光源装置からそのライトガイドを通じて供給される照明光を出射する。この照明窓44から出射される照明光により、撮像装置で撮像する観察対象が照明される。
【0023】
送気送水口46は、挿入部14内を挿通する送気送水チャンネルに連通されており、ユニバーサルケーブル16に接続された送気送水装置から送気送水チャンネルを介して供給された洗浄水やガスを観察窓42に向けて噴射する。この送気送水口46から噴射される洗浄水やガスによって、観察窓42の洗浄(及び乾燥)が行われる。操作部12の送気送水ボタン24に設けられた孔を塞ぐと、送気送水口46から観察窓42に向けてガスが噴射され、送気送水ボタン24を押すと、送気送水口46から観察窓42に向けて洗浄水が噴射されるようになっている。
【0024】
一方、本発明に係るドレナージチューブ挿入具50は、ドレナージチューブ52とプッシャーチューブ54とから構成されている。ドレナージチューブ52は胆道又は膵管の狭窄部位に留置することによって胆汁や膵液の流路を確保し、胆汁や膵液が適切に十二指腸に排出されるようにするものであり、プッシャーチューブ54は、ドレナージチューブ52を目的の狭窄部位に押し込むためのものである。
【0025】
これらのドレナージチューブ52及びプッシャーチューブ54は、ドレナージチューブ52を胆道内又は膵管内の狭窄部位に留置する際には、挿入部14の外周に被嵌され、挿入部14をガイド部材としてプッシャーチューブ54によりドレナージチューブ52を押して、挿入部14の先端側からドレナージチューブ52を押し出して目的の狭窄部位に押し込み、留置ささせるようになっている。ドレナージチューブ52は、挿入部14の先端側から挿入部14の外周に被嵌し、プッシャーチューブ54は、後述のように挿入部14の側面側から押し込んで挿入部14の外周に被嵌することができるようになっている。
【0026】
図3は、ドレナージチューブ52を長手軸に沿って切断した断面を示した縦断面図である。同図に示すようにドレナージチューブ52は、周知のように可撓性を有する略円筒状のチューブ本体60を備え、チューブ本体60は長手軸方向に貫通する管腔62を有している。チューブ本体60の外周面には、先端側と基端側の各々に、フラップ状の係止部64、64、66、66が、チューブ本体60の中央部に向けて斜めに突き出すようにして形成されている。
【0027】
このドレナージチューブ52を目的の狭窄部位に留置する際には、内視鏡10の挿入部14をその先端側からドレナージチューブ52の管腔62内に挿入して、挿入部14の外周にドレナージチューブ52を被嵌する。これによって、ドレナージチューブ52を挿入部14に対して長手軸方向にスライド可能に支持された状態に配備する。
【0028】
なお、ドレナージチューブ52は、図3で示した構成のものに限らず、周知の他の構成のものでもあってもよい。
【0029】
図4は、プッシャーチューブ54の構成を示す図であり、同図(A)は、プッシャーチューブ54を長手軸に沿って切断した断面を示した縦断面図であり、同図(B)は、プッシャーチューブ54の下面側を示した平面図(プッシャーチューブ54を同図(A)の矢印B方向に見た平面図)であり、同図(C)は、同図(A)におけるC−C矢視断面図(横断面図)である。
【0030】
これらの図に示すようにプッシャーチューブ54は、可撓性を有する略円筒状のチューブ本体80を備え、チューブ本体80は長手軸方向に貫通する管腔84を有している。チューブ本体80の基端側には、後方斜め上に向けて突出する操作部82がチューブ本体80から延設されている。
【0031】
また、チューブ本体80及び操作部82の下部(側壁部)には、先端(前端)から基端(後端)まで長手軸方向に沿って切り込まれた切込み部86が形成されている。すなわち、同図(C)に示すようにチューブ本体80の断面がC字状となるように切込み部86が形成されて内部の管腔84と外部とが連通されている。そして、操作部82において切込み部86の幅(長手軸と直交する方向の開口幅)が後端に向かって徐々に拡大されている。尚、切込み部86の幅は挿入部14の直径よりも小さい。
【0032】
上記のように挿入部14に被嵌したドレナージチューブ52を挿入部14の先端側から押し出して目的の狭窄部位に留置する際には、ドレナージチューブ52よりも基端側にプッシャーチューブ54(チューブ本体80)を挿入部14の外周に被嵌する。これによってプッシャーチューブ54を挿入部14に対して長手軸方向にスライド可能に支持された状態に配備し、プッシャーチューブ54によってドレナージチューブ52を前方に押し進めることができる状態にする。
【0033】
プッシャーチューブ54を挿入部14の外周に被嵌する際には、プッシャーチューブ54の切込み部86を挿入部14の側面に対向させ、プッシャーチューブ54を挿入部14に向けて押し込む。これによって、ドレナージチューブ52が変形して切込み部86が挿入部14の側面を挿通可能な幅(挿入部14の直径に相当する幅)まで拡がり、挿入部14が切込み部86を挿通して管腔84内に入り込むようになっている。なお、プッシャーチューブ54の先端部のみを最初に挿入部14に被嵌させ、徐々に後方に向けて被嵌させていくと容易にプッシャーチューブ54の全体を挿入部14に被嵌させることができる。
【0034】
これによれば、プッシャーチューブ54を挿入部14の外周に被嵌する際に、プッシャーチューブ54を挿入部14の先端から被嵌させる必要はなく、挿入部14を患者の体腔内に挿入した後であっても、挿入部14の側面からプッシャーチューブ54を被嵌させることができるようになっている。
【0035】
このようにして、ドレナージチューブ52とプッシャーチューブ54とを挿入部14の外周に被嵌した後、プッシャーチューブ54の操作部82を把持してプッシャーチューブ54を前方に押し込んでいくと、プッシャーチューブ54の先端部がドレナージチューブ52の基端部に当接して、挿入部14をガイドにしてドレナージチューブ52が前方に押し進められ、最終的にドレナージチューブ52が挿入部14の先端から前方に押し出されるようになっている。
【0036】
次に上記ドレナージチューブ挿入具50を使用して胆道内又は膵管内へのドレナージチューブの留置を行う際の手順の一例について説明する。内視鏡10の挿入部14を患者の体腔内に挿入する前に、まず、挿入部14にドレナージチューブ52を被嵌させておく。このときドレナージチューブ52は、挿入部14の基端側に留置しておくことが望ましい。続いて、挿入部14を患者の口から挿入して、挿入部14の先端を十二指腸のファーター乳頭の開口から胆道内又は膵管内に挿入する(図5のような状態)。このとき、内視鏡10の処置具挿通チャンネルを使用して処置具導出口40から導出させてガイドワイヤ90(図5参照)を挿入部14よりも先に胆道内又は膵管内に挿置しておき、ガイドワイヤ90にガイドさせて挿入部14を胆道内又は膵管内に挿入するようにしてもよい。
【0037】
続いて、挿入部14の先端部36の撮像装置により撮影される観察画像をモニタで観察しながら、プッシャーチューブ54を留置する狭窄部位まで、挿入部14の先端を押し進めて、挿入部14をその状態で保持する。なお、必ずしも挿入部14を胆道内又は膵管内に挿入する必要はなく、ガイドワイヤを胆道内又は膵管内に挿置した状態で、挿入部14の先端面38を十二指腸内でファーター乳頭に対向させた状態で保持して以下の作業を行ってもよい。
【0038】
次に、挿入部14の外周に被嵌されているドレナージチューブ52よりも基端側において、挿入部14の側面側からプッシャーチューブ54の切込み部86を押し込んで、プッシャーチューブ54を挿入部14の外周に被嵌させる。続いて、プッシャーチューブ54を挿入部14にガイドさせながら前方に押し進めて、ドレナージチューブ52を挿入部14にガイドさせながらプッシャーチューブ54で前方に押し進める。そして、図5のようにドレナージチューブ52を挿入部14の先端から前方に押し出して、狭窄部位にドレナージチューブ52を挿入させる。以上の作業によってドレナージチューブ52を所望の狭窄部位に留置することができる。なお、プッシャーチューブ54の全体を挿入部14に被嵌させてからプッシャーチューブ54を体腔内に押し進めるのではなく、挿入部14の体腔外に露呈している余長部分においてプッシャーチューブ54を先端を挿入部14に被嵌させ、プッシャーチューブ54を挿入部14の先端側に押し進めながらプッシャーチューブ54を先端側から基端側に徐々に挿入部14に被嵌させ、挿入部14に被嵌させた部分から徐々に体腔内に挿入させるようにすればよい。挿入部14の体腔外に露呈している部分がプッシャーチューブ54の長さ以上の場合いは、プッシャーチューブ54の全体を挿入部14に被嵌させてから体腔内にすることも可能である。
【0039】
以上、上記実施の形態では、ドレナージチューブを胆道又は膵管の管腔内に留置するドレナージチューブ挿入具として説明したが、本発明は、胆道、膵管以外の部位の管腔内にドレナージチューブを留置するドレナージチューブ挿入具においても適用できる。
【0040】
次に、プッシャーチューブ54の変形例について説明する。上記実施の形態のプッシャーチューブ54では、図4等のようにチューブ本体80に対して切込み部86が先端から基端まで長手軸方向に沿って直線状に切り込まれて形成されていたが、図6に示すように、チューブ本体80の基端から先端側の所定位置までは上記実施の形態と同様に、切込み部86(切込み)をチューブ本体80の側壁部に対して長手軸方向に直線状に形成した直線状切込み範囲100を設け、直線状切込み範囲100よりも先端側に切込み部86をチューブ本体80の側壁部に対して螺旋状に形成した螺旋状切込み範囲102を設けるようにしてもよい。同図では、螺旋状切込み範囲102における切込み部86は、チューブ本体80の側壁部の周りを略1周半分回転(長手軸周りに略450度の回転)しているが、螺旋状切込み範囲102において切込み部86がチューブ本体80の側壁部の周りを回転する回転数はこれに限らず、所望の回転数とすることができ、又、1回転未満とすることもできる。
【0041】
これによれば、プッシャーチューブ54(チューブ本体80)を内視鏡10の挿入部14の外周に被嵌する際には、螺旋状切込み範囲102の先端の切きみ部86を挿入部14に向けて押し込み、プッシャーチューブ54の先端部を挿入部14に被嵌させた後、プッシャーチューブ54を回転させながら挿入部14に向ける切込み部86の位置を螺旋状切込み範囲102の基端側へと徐々に移行させながら挿入部14に押し込んでいく。これによって、プッシャーチューブ54の螺旋状切込み範囲102を挿入部14に被嵌させることができる。螺旋状切込み範囲102の全体を挿入部14に被嵌させた後は、上記実施の形態と同様に直線状切込み範囲100の切込みを挿入部14に向けて押し込むことによって、プッシャーチューブ54の直線状切込み範囲100を挿入部14に被嵌させることができる。このようにして挿入部14に被嵌したプッシャーチューブ54の螺旋状切込み範囲102では、プッシャーチューブ54を一方向に引っ張るだけでは挿入部14から外れることがないため、挿入部14の湾曲部分などでプッシャーチューブ54(特に先端部)が挿入部14から外れてしまうという不測の事態が確実に防止されるようになる。
【0042】
また、切込み部86は、図7に示すような形態でもよい。同図に示す形態では、チューブ本体80の基端から先端側の所定位置までは上記実施の形態と同様に、切込み部86をチューブ本体80の側壁部に対して長手軸方向に直線状に形成した直線状切込み範囲110が設けられ、直線状切込み範囲110よりも先端側に切込み部86をチューブ本体80の側壁部に対して螺旋状に形成した螺旋状切込み範囲112が設けられている。この螺旋状切込み範囲112での切込み部86はチューブ本体80の側壁部の周りを略半周分回転(長手軸周りに略180度の回転)する。そして、螺旋状切込み範囲112よりも先端側に切込み部86をチューブ本体80の側壁部に対して長手軸方向に直線状に形成した直線状切込み範囲114が設けられている。この直線状切込み範囲114での切込み部86の位置は、直線状切込み範囲110の切込み部86が形成される側壁部の位置に対して反対側(長手軸周りに180度回転した位置)に形成されている。
【0043】
これによれば、プッシャーチューブ54の螺旋状切込み範囲112は、上記螺旋状切込み範囲102と同様にして挿入部14に被嵌させることができ、プッシャーチューブ54の直線状切込み範囲110、114は、上記直線状切込み範囲100と同様にして挿入部14に被嵌させることができる。そして、挿入部14に被嵌したプッシャーチューブ54の螺旋状切込み範囲112が挿入部14から外れ難くなっているため、挿入部14の湾曲部分などでプッシャーチューブ54(特に先端部)が挿入部14から外れてしまうという不測の事態が確実に防止されるようになる。
【0044】
なお、図6、図7に示した螺旋状切込み範囲102、112は、特定の1箇所に設ける場合に限らず、所望の箇所に設けることができ、また、複数箇所に設けることができる。更に、各螺旋状切込み範囲での切込み部86のチューブ本体80の側壁部に対する回転数(長手軸周りの回転数(回転角度))も任意の値に決めることができる。また、螺旋状切込み範囲102、112では、直線状切込み範囲100、110、114と比較して、切込み部86からチューブ本体80の内部の管腔84に挿入することが容易ではないため、螺旋状切込み範囲102、112での切込み部86の横幅を直線状切込み範囲100、110、114での切込み部86の横幅よりも大きくすると好適である。
【0045】
図8、図9は、プッシャーチューブ54の切込み部86にファスナー(開閉可能な留め具)を設けた形態を示し、図8はプッシャーチューブ54の先端部の斜視図であり、図9は、図8における9−9矢視断面図(横断面図)である。これらの図に示す形態では、チューブ本体80の切込み部86の対向する面の一方にプッシャーチューブ54の長手軸方向に延びる凸部120が形成されている。この凸部120の基端部分には先端部分よりも幅が狭くなるくびれ部が形成されている。一方、切込み部86の凸部120が形成される面と対向する面には凸部120と略同様の断面形状を有する凹部122が形成されている。これらの凸部120と凹部122により切込み部86にファスナーが構成されており、凸部120と凹部122を嵌合させることにより、切込み部86が閉塞されるようになっている。
【0046】
また、チューブ本体80の外周面には、切込み部86の両側に切込み部86に沿ってガイド部124A、124Bが突出形成されており、そのガイド部124A、124Bに上記凸部120と凹部122とからファスナーを開閉するためのスライダー130がスライド可能に係合するようになっている。
【0047】
スライダー130は、図8中の実線及び図9中の破線で示されており、また、図10にスライダー130のみの斜視図、図11(A)にスライダー130の平面図、図11(B)、(C)の各々に図11(A)のB−B矢視断面図、C−C矢視断面図が示されている。
【0048】
これらの図に示すようにスライダー130略直方体状のスライダー本体132にプッシャーチューブ54(チューブ本体80)のガイド部124A、124Bの各々に係合する係合溝134A、134Bが一つの端面(挿入側端面132A)から反対側の端面(送出側端面132B)まで貫通形成されている。これらの係合溝134A、134Bは、挿入側では仕切り柱136により2つに溝に分離されており、送出側で1つの係合溝138に結合されている。プッシャーチューブ54の先端側からガイド部124A、124Bの各々をスライダー130の挿入側端面132Aから係合溝134A、134Bに挿入し、スライダー130をプッシャーチューブ54の基端側にスライドさせていくと、送出側の係合溝138において、切込み部86の凸部120と凹部122とが嵌合して閉塞され、その状態でスライダー130の送出側端面132Bから送出されるようになっている。
【0049】
なお、図8のようにプッシャーチューブ54の先端部に切込み部86の凸部120、凹部122、及びガイド部124A、124Bの構成を有する導入部140A、140Bを長手軸方向に突出形成して、スライダー130の係合溝134A、134Bの各々に導入部140A、140Bを挿入し易いようにしてもよいが、導入部140A、140Bは必ずしも設けなくてもよい。
【0050】
以上のようにプッシャーチューブ54の切込み部86にファスナーを設けた形態によれば、プッシャチューブ54(チューブ本体80)を内視鏡10の挿入部14の外周に被嵌する際には、切込み部86のファスナーを開鎖した状態で、切込み部86を挿入部14に向けて押し込み、少なくともプッシャーチューブ54の先端側を挿入部14に被嵌させる。そして、スライダー130の挿入側端面132A側から係合溝134A、134Bの各々にプッシャーチューブ54の先端のガイド部124A、124Bを挿入させて、スライダー130をガイド部124A、124Bに沿って基端側にスライドさせていく。これによって、プッシャーチューブ54の挿入部14に被嵌された部分の切込み部86が閉塞される。プッシャーチューブ54の基端側まで挿入部16に被嵌させてスライダー130をプッシャーチューブ54の基端までスライドさせれば、プッシャーチューブ54の切込み部86全体が閉塞される。このようにして挿入部14に被嵌したプッシャーチューブ54は、切込み部86がファスナーにより閉塞されているため、挿入部14の湾曲部分などでプッシャーチューブ54が挿入部14から外れてしまうという不測の事態が確実に防止されるようになる。
【0051】
なお、上記のスライダ−130の代わりに、図12に示すようにマウスピース150の内視鏡の挿通孔152に上記スライダー130と同様の構成のスライダー部154を形成するようにしてもよい。図12(A)はマウスピース150の縦断面図であり、図12(B)はマウスピース150の正面図である。これらの図においてスライダー部154のスライダー130と同一構成要素には同一符号を付しており、説明を省略する。
【0052】
これによれば、マウスピース150の挿通孔152を通して内視鏡10の挿入部14を患者の体腔内に挿入した後、プッシャーチューブ54を挿入部14に被嵌させて挿入部14に沿って体腔内に押し進めて行く際に、プッシャーチューブ54のガイド部124A、124の各々をマウスピース150のスライダー部154の係合溝134A、134Bに係合させて通過させることによって、プッシャーチューブ54の切込み部86を閉塞した状態で体腔内に挿入することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…内視鏡、12…操作部、14…挿入部、16…ユニバーサルケーブル、18、20…アングルノブ、24…送気送水ボタン、26…吸引ボタン、28…シャッターボタン、30…処置具挿入部、32…軟性部、34…湾曲部、36…先端部、38…先端面、40…処置具導出口、42…観察窓、44…照明窓、46…送気送水口、50…ドレナージチューブ挿入具、52…ドレナージチューブ、54…プッシャーチューブ、60、80…チューブ本体、62、84…管腔、64、66…係止部、82…操作部、90…ガイドワイヤ、100、110、114…直線状切込み範囲、102、112…螺旋状切込み範囲、120…凸部、122…凹部、124A、124B…ガイド部、130…スライダ−

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレナージチューブ及び該ドレナージチューブを押し込むプッシャーチューブを内視鏡の挿入部の外周にスライド可能に被嵌させ、プッシャーチューブによりドレナージチューブを前記挿入部の先端から押し出して体腔内の所定の管腔内にドレナージチューブを挿入するドレナージチューブ挿入具であって、
前記プッシャーチューブの側壁部に長手軸方向に沿って切込みを形成し、該切込みに前記挿入部の側面を挿通させて前記プッシャーチューブを前記挿入部の外周に被嵌することを特徴とするドレナージチューブ挿入具。
【請求項2】
前記長手軸方向に直交する方向の前記切込みの幅は前記挿入部の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のドレナージチューブ挿入具。
【請求項3】
前記ドレナージチューブは可撓性を有することを特徴とする請求項1、又は2に記載のドレナージチューブ挿入具。
【請求項4】
前記ドレナージチューブの基端部に、外周側に突出した操作部が形成されたことを特徴とする請求項1、2、又は3に記載のドレナージチューブ挿入具。
【請求項5】
前記プッシャーチューブの長手軸方向の所定範囲において、前記切込みを螺旋状に形成したことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1に記載のドレナージチューブ挿入具。
【請求項6】
前記切込みにファスナーを形成し、該ファスナーにより前記切込みを開閉可能にしたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1に記載のドレナージチューブ挿入具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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