説明

ドレープ成形方法

【課題】プリプレグ積層体を曲げるに際し、シワやボイドの無い良質な成形体を得るためのドレープ成形方法を提供する。
【解決手段】平板状に積層したプリプレグ積層体を、所望の型上で横断面に屈曲部を有する柱状に賦形した後に加熱硬化させるドレープ成形方法であって、プリプレグに使用しているマトリックス樹脂の40℃における粘度が1500Pa・s以上30000Pa・s以下で、かつ該プリプレグ積層体を50℃以上100℃以下に加熱した後、真空脱気法を用いて3分以上25分以下の時間をかけて所望の型に賦形した後に加熱硬化させることを特徴とするドレープ成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状に積層したプリプレグ積層体を、所望の型上で横断面に少なくとも一つの屈曲部を有する柱状に賦形した後に加熱硬化させるドレープ成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料(以下、FRPと略することもある)は比強度、比剛性に優れることから航空宇宙産業から一般産業用途特まで幅広く用いられている。特に補強繊維に炭素繊維を用いた炭素繊維強化複合材料(以下、CFRPと略することもある)は、特に軽量で強度、剛性に優れることから民間航空機に代表されるように航空産業に広く用いられ、近年、特に主翼や胴体など大型で長尺の部材にも用いられている。
【0003】
長尺で横断面が屈曲部を有する大型部材の成形方法としては、プリプレグを一枚ずつ型に沿わせて積層し、成形するハンドレイアップ法や、未硬化状態のプリプレグを積層し、得られた積層体を金型などに置き、全体をバッグフィルムで覆い、全体を加熱または室温で真空脱気して成形を行い、金型などの形状に賦形した後に加熱硬化させる真空脱気ドレープ成形法(以下単にドレープ成形と略することもある)(例えば、特許文献1、2参照)が採用されている。前者のハンドレイアップ方では、糸乱れの無い均一な厚みを有する成形体が得られるが、積層に時間がかかりコストアップの要因となっている。一方、後者のドレープ成形法では、積層に時間がかからずコストアップの要因は解消されるが、ドレープ成形時にシワが発生し、積層体を所定の形状に賦形することが困難であるか、賦形したとしても得られた積層体はシワやボイドが生じ良質な積層体とならないことが多かった。
【特許文献1】特開平6−071763号公報
【特許文献2】特開平6−071742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、プリプレグ積層体を曲げるに際し、シワやボイドの無い良質な成形体を得るためのドレープ成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のドレープ成形方法は上記目的を達成するために次の構成を有する。すなわち、
平板状に積層したプリプレグ積層体を、所望の型上で横断面に屈曲部を有する柱状に賦形した後に加熱硬化させるドレープ成形方法であって、プリプレグに使用しているマトリックス樹脂の40℃における粘度が1500Pa・s以上30000Pa・s以下で、かつ該プリプレグ積層体を50℃以上100℃以下に加熱した後、真空脱気法を用いて3分以上25分以下の時間をかけて所望の型に賦形した後に加熱硬化させることを特徴とするドレープ成形方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、プリプレグ積層体を曲げることにより、横断面に少なくとも一つの屈曲部を有する柱状の部材を所望の型に賦形した後に加熱硬化させるドレープ成形方法において、シワやボイドの無い良質な成形体が得られ、物性向上および大幅な成形コストダウンを可能にする効果をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、平板状に積層したプリプレグ積層体を、所望の型上で横断面に少なくとも一つの屈曲部を有する柱状の部材を所望の型に賦形した後に加熱硬化させるドレープ成形方法に適用するものである。本発明に用いるプリプレグとは、一般に先進複合材料として用いられている強化繊維に樹脂を含浸した状態のものを言う。
【0008】
プリプレグの強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、高強度ポリエチレン繊維等が用いられる。なかでも強度と剛性に優れる炭素繊維(以下CFと略することもある)が好ましく用いられる。
【0009】
プリプレグのマトリックス樹脂は特に限定されないが、熱により硬化する熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。熱硬化性樹脂としては、具体的には、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂および尿素樹脂などが挙げられる。これらの中で、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂およびこれらの樹脂の混合物は、高い力学特性を有し、好ましく用いられる。特に、エポキシ樹脂は部材に必要とされる力学特性とプリプレグの製造工程で必要とされる粘度やタックとのバランスが良く好ましく用いられる。
【0010】
エポキシ樹脂としては、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物が用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノール化合物とジシクロペンタジエンの共重合体を原料とするエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、およびこれらの樹脂の組み合わせが好適に用いられる。
【0011】
特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる、もしくは、これらを組み合わせて得られるエポキシ樹脂を好ましくは5から50重量部と、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を好ましくは50から95重量部含むエポキシ樹脂は、力学物性と取り扱い性のバランスに優れており、特に好ましく用いられる。
【0012】
エポキシ樹脂と組み合わせて用いられる硬化剤としては、例えば、芳香族アミン、脂肪族アミン、カルボン無水物およびルイス酸錯体などが挙げられる。またこれらの硬化剤は、硬化活性を高めるために適当な硬化助剤を組み合わせて用いることができる。エポキシ樹脂に硬化助剤を組み合わせる場合の好ましい例としては、ジシアンジアミドに、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1、1−ジメチル尿素(DCMU)などの尿素誘導体を硬化助剤として組み合わせる例、芳香族アミンに酸フッ化ホウ素エチルアミン錯体を硬化助剤として組み合わせる例、およびカルボン酸無水物やノボラック樹脂に3級アミンを硬化助剤として組み合わせる例などが挙げられる。
【0013】
硬化後のマトリックス樹脂においては、溶解し粒子を形成していない熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂に含んでいても良い。このような熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有するものが挙げられる。特に、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミドおよびポリイミドからなる群から選ばれた1種以上の樹脂が好ましく用いられる。熱可塑性樹脂を混合させるときは、エポキシ樹脂100重量部に対して熱可塑性樹脂を好ましくは1から20重量部混合させることにより、エポキシ樹脂に適度な粘弾性や力学特性を与えることができる。
【0014】
また、プリプレグの表面に微粒子を含有した樹脂の層がさらに存在していると、プリプレグを積層硬化した後に層間に微粒子が存在する層が形成され、耐衝撃性などの硬化がさらに付与されより好ましい。使用する微粒子は特に限定されないが、ポリアミド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンおよびポリアラミドからなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる微粒子が好ましく用いられる。
【0015】
プリプレグの形態としては高性能な特性が要求される分野においては強化繊維を一方向に引き揃えたいわゆるUD(Uni Directional)プリプレグが好ましいが、用途によっては強化繊維が織物状であるプリプレグの使用も可能である。
【0016】
本発明において、プリプレグは平板状に積層したのち、所望の型上で横断面に少なくとも一つの屈曲部を有する柱状に賦形される。UDプリプレグを用いる場合のプリプレグ積層体の積層構成は、擬似等方をはじめとする様々な積層構成を取りうる。また、織物プリプレグを用いる場合のプリプレグ積層体においても積層構成は特に限定されない。用途によっては、UDプリプレグと織物プリプレグを規則的にあるいは不規則に積層したプリプレグ積層体を使用しても良い。UDプリプレグを用いて積層するに際して、“はり”等の長尺物の長手方向に配列させた0度層の厚み5mm以下に対して少なくとも1層の10度から90度、好ましくは30度以上90度以下の角度に配列させた繊維層を存在させる積層構成が、所望の型上で屈曲部を有する柱状に賦形する時に0度層の繊維間広がりを抑制するために好ましい。
【0017】
プリプレグ積層体の厚みは3mm以上100mm以下さらには5mm以上50mm以下の範囲が、部材としての剛性や強度を容易に確保することができて好ましい。
【0018】
ドレープ成形は、様々な横断面の形状に適用可能であるが、具体的にはL字形、凹形、I形、扇形、半楕円形、Z形等が挙げられ、L字形、凹形、I形は特に頻繁に用いられる。また、これらを組み合わせた形状も好ましく用いられ、例えば、図4のように平板12と2つのL字形柱体13を組み合わせた形状、図5のように2枚の平板12と2つの凹形柱体14を組み合わせた形状、図6のように平板12とZ形柱体15と凹形柱体14とを組み合わせた形状などが挙げられる。いずれも組み合わせる平板および柱状体のうちどれか一つの柱状体の横断面に少なくとも一つの屈曲部を有している。
【0019】
ドレープ成形においては、平板状に積層したプリプレグ積層体を、所望の型上で屈曲部を有する形状に賦形するために必要な圧力源としては、閉ざされた系の中に空気を除くことによる真空圧、外部からの気体による加圧、また液体の重力および外部からの加圧の併用などが適用できる。液体を加熱しておけば加熱下での加圧となる。これらの中で、最も簡便に行える成形方法として加熱下における真空脱気法が挙げられる。
【0020】
真空脱気法にてドレープ成形する場合、以下の方法で行うことが好ましい。図1により説明すると、まず、治具4を箱1底面の中央におき、プリプレグ積層体5を治具4の上に載せ、箱1を含めた全体をバッグフィルム6で覆い、箱1の壁にバッグフィルム6の端を装着して、箱1内の空気を抜く形で積層体を治具4に賦形する(賦形後の状態が図3である)。この箱全体をオーブンなどの中に入れ、加熱すると賦形時に積層したプリプレグ間の滑りが良好になりシワができにくくなり好ましい。このとき、箱1の壁の高さを、治具上に載せたプリプレグ積層体の高さの半分以上の高さにすると、プリプレグ積層体にシワが発生しにくくなるため好ましい。
【0021】
そして本発明者らは、このドレープ成形において、シワやボイドの無い良質な成形体を得られる条件について鋭意検討したところ、賦形に有する時間、賦形時のプリプレグ積層体の温度、マトリックス樹脂の粘度が特定の範囲内であると良質な成形体を得られることを見出したのである。
【0022】
シワやボイドの無い良質な成形体を得るためには、真空脱気法を用いて3分以上25分以下の時間をかけて賦形することが重要である。この理由についてはまだ完全には解明されていないが、賦形に有する時間が25分以下であると樹脂がプリプレグから流れ出ないため、シワやボイドの無い良質な成形体が得られるものと考えられる。賦形時間は短いほど樹脂が流れ出しにくく、20分以下が特に好ましいが、あまりに短すぎるとプリプレグ積層体が完全に型に沿わず、成形圧力ムラによりボイドが発生することがあるため、3分以上とすることが重要である。また、25分を超える賦形時間であると、樹脂がフローしてプリプレグから流れ出してしまい、樹脂不足によってボイドが発生することがある。
【0023】
賦形時のプリプレグ積層体の温度は50℃以上100℃以下が好ましく、60℃以上80℃以下であるとより好ましい。賦形時のプリプレグの温度が50℃を下回るとプリプレグ間のすべりが発生せずにシワが発生し、100℃を超えると賦形時に樹脂がフローしてプリプレグから流れ出てしまうことがある。
【0024】
また、プリプレグに使用しているマトリックスの樹脂の粘度を測定し、該マトリックス樹脂の40℃における樹脂粘度は、1500Pa・s以上30000Pa・s以下であるものが好ましい。樹脂粘度が30000Pa・sを超えるとプリプレグ間のすべり性が低下してシワが発生する場合があり、1500Pa・s未満であると賦型時に樹脂がフローしてプリプレグから流れ出てしまうことがある。なお、樹脂粘度はレオメトリックス社製DSR−200または同等の性能を有する測定機器により、シェア速度10rad/秒の条件下で、25mm直径の2枚のディスクプレートを用い、ディスクプレート間隔1.0mmにて、40℃から80℃まで2℃/分の昇温速度で温度を上昇させながら測定した値である。
【実施例】
【0025】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
【0026】
(実施例1)
a.粒子の作製
4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタンを含有するポリアミド(エムザベルケ社製“グリルアミド(登録商標、以下同じ)”−TR55)90重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製“jER(登録商標、以下同じ)”828)8重量部および硬化剤(富士化成工業(株)製“トーマイド(登録商標、以下同じ)”#296)2重量部をクロロホルム300重量部とメタノール100重量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を塗装用のスプレーガンを用いて霧状にして、よく攪拌した3000重量部のn−ヘキサンの壁面に向かって吹き付けて溶質を析出させた。析出した固体を濾別し、n−ヘキサンでよく洗浄した後、100℃24時間の真空乾燥を行い透明ポリアミドの粒子を得た。
b.樹脂組成物の調整
下記原料を混練しエポキシ樹脂組成物を得て、これを一次樹脂とした。まず、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物にポリエーテルスルホンを加熱下溶解し、70℃まで冷却後、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを分散させた。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(ELM434、住友化学工業(株)製)85.0部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、“jER(登録商標)”828)15.0部
ポリエーテルスルホン(PES5003P、住友化学工業(株)製) 12.3部
3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化(株)製) 36.0部
c.プリプレグの作製
(b)で調整した一次樹脂をリバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布量が45.1g/mになるよう塗布して一次樹脂フィルムを作製した。
【0027】
次に、一方向に引き揃えた炭素繊維(“トレカ”(登録商標)T800SC−24K−10E(東レ(株)製)を両側から、前記の一次樹脂フィルムで挟み、加熱加圧して樹脂を含浸させた。さらにその両側にaで作製した粒子を6g/m散布し、離型紙で挟んだ後に加熱加圧した。このようにして、炭素繊維目付190g/m、炭素繊維含有量55.6%のプリプレグを得た。
d.樹脂の粘度測定
(b)で調整した一次樹脂を、レオメトリックス社製DSR−200または同等の性能を有する測定機器により、シェア速度10rad/秒の条件下で、25mm直径の2枚のディスクプレートを用い、ディスクプレート間隔1.0mmにて、40℃から80℃まで2℃/分の昇温速度で温度を上昇させながら、各温度での粘度を測定した。
e.プリプレグのカットと積層
(c)で作製したプリプレグを、長手方向を0度とし、0度材として幅5cm、長さ50cmに8枚カットした。同様に長手方向を0度とし、45度材、―45度材、90度材をそれぞれやはり幅5cm、長さ50cmにそれぞれ8枚カットした。これら計32枚のプリプレグを[45/90/−45/0]4s(sは鏡面対称を示す)の積層構成に積層した。
f.ドレープ成形
(e)で積層した積層体を図1に示すように型にのせた。図1はこのドレープ成形装置について、治具の長手方向に対して垂直な断面図であり、図2は治具の長手方向の断面図である。ドレープ成型用のステンレス製の箱1の壁に穴をあけ、箱内の空気を抜きやすくするため穴全体を不織布2で壁の内側から多い、耐熱テープ3で不織布を打ち壁に貼り付けた。治具4を箱の壁に対して均等な間隔に置きそこを両面テープで固定した後、プリプレグ積層体5を治具上に置いた。プリプレグ積層体の位置は治具に対して均等な間隔とした。プリプレグ積層体のバッグフィルム6側にピールプライ7をのせた。プリプレグ積層基材体の上面の高さは箱1の高さと同一とした。箱1の上から全体を袋状のバッグフィルム6で覆い、フィルムの端を両面テープ8にて箱の壁外側に空気が漏れないように貼り付けた。箱の穴の空いてある部分をパイプ9で溶接し、その先端を耐圧ゴム管10で接続し耐圧ゴム管を介して真空ポンプ11につないだ。そこで、バッグフィルムがプリプレグ積層体の近くまで来るよう箱内の空気を真空ポンプにて抜いた(この状態が図1である)。そのままの状態で箱全体を60℃に加熱された乾燥器内に1時間加熱後、再び箱内の空気を真空ポンプにて抜きドレープ成型を行った。このとき真空ポンプのリークバルブを調整して20分間で真空圧がかかるように徐々に真空をひいていった。積層基材がジグの形状に沿い、ドレープ成形が終了した状態が図3である。乾燥器から箱を取り出し、真空状態を解除して室温まで冷却した。この賦形された積層基材をジグから取り出し、シート材を取り除いた後、賦形された積層機材を再度ジグ上にのせ、通常のオートクレーブ成形法を用い、0.6MPaの圧力下、180℃2時間の硬化条件にて成形体を作製した。できあがった成形板を長手方向に対し垂直にダイヤモンドカッターで切断し、シワの有無を観察したところ、シワは見られなかった。また、切断面をバフ研磨し顕微鏡観察を行ったところ、ボイドは確認されなかった。
【0028】
(実施例2)
真空脱気の時間を5分、賦形時の温度を80℃に変更した以外は全て実施例1と同様にしてドレープ成形を行った。得られた成形品をやはり実施例1と同様にダイヤモンドカッターで切断してバフ研磨し、シワとボイドの有無を確認した。
【0029】
(比較例1)
真空脱気の時間を1分に変更した以外は全て実施例1と同様にしてドレープ成形を行った。得られた成形品をやはり実施例1と同様にダイヤモンドカッターで切断してバフ研磨し、シワとボイドの有無を確認した。
【0030】
(比較例2)
真空脱気の時間を30分に変更した以外は全て実施例1と同様にしてドレープ成形を行った。得られた成形品をやはり実施例1と同様にダイヤモンドカッターで切断してバフ研磨し、シワとボイドの有無を確認した。
【0031】
(比較例3)
一次樹脂の組成を、
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(ELM434、住友化学工業(株)製)85.0部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、“YD(登録商標)”128)15.0部
ポリエーテルスルホン(PES5003P、住友化学工業(株)製) 16.0部
3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化(株)製) 36.0部
に変更した以外は全て実施例1と同様にしてドレープ成形を行った。得られた成形品をやはり実施例1と同様にダイヤモンドカッターで切断してバフ研磨し、シワとボイドの有無を確認した。
【0032】
(比較例4)
賦型時の温度を40℃に変更した以外は全て実施例1と同様にしてドレープ成形を行った。得られた成形品をやはり実施例1と同様にダイヤモンドカッターで切断してバフ研磨し、シワとボイドの有無を確認した。得られた結果を表1に示す。
【0033】
実施例1と比較例1、2との比較から、真空脱気の時間が3分未満もしくは25分を超えるとボイドが発生することが分かる。
【0034】
実施例1と比較例3との比較から、真空脱気の時間と賦型時の温度が同じでも、40℃における樹脂粘度が30000Pa・sを超えるとシワが発生することが分かる。
【0035】
実施例2と比較例4との比較から、賦形時の温度が50℃未満の場合はシワが発生することが分かる。
【0036】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施態様に係るドレープ成形法に使用する成形装置の治具の長手方向に対して垂直な方向の断面図である。
【図2】本発明の一実施態様に係るドレープ成形法に使用する成形装置の治具の長手方向の断面図である。
【図3】本発明の一実施態様に係るドレープ成形法により賦形後の治具の長手方向に対して垂直な方向の断面図である。
【図4】本発明の一実施態様に係るドレープ成形法により得られた柱状体を組み合わせた成形体の断面形状の一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施態様に係るドレープ成形法により得られた柱状体を組み合わせた成形体の断面形状の別の一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施態様に係るドレープ成形法により得られた柱状体を組み合わせた成形体の断面形状のさらに別の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1:ドレープ成型用のステンレス製の箱
2:不織布
3:耐熱テープ
4:治具
5:プリプレグ積層体
6:バッグフィルム
7:ピールプライ
8:両面テープ
9:パイプ
10:耐圧ゴム管
11:真空ポンプ
12:平板
13:L形柱体
14:凹形柱体
15:Z形柱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状に積層したプリプレグ積層体を、所望の型上で横断面に屈曲部を有する柱状に賦形した後に加熱硬化させるドレープ成形方法であって、プリプレグに使用しているマトリックス樹脂の40℃における粘度が1500Pa・s以上30000Pa・s以下で、かつ該プリプレグ積層体を50℃以上100℃以下に加熱した後、真空脱気法を用いて3分以上25分以下の時間をかけて所望の型に賦形した後に加熱硬化させることを特徴とするドレープ成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−220392(P2009−220392A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67223(P2008−67223)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】