説明

ドレーン材打設用ケーシング

【課題】ドレーン材を放射状に維持し、効率的に打設することが可能なドレーン材打設用ケーシングを提供する。
【解決手段】十字状の断面形のドレーン材1を内挿して地中に打設するドレーン材打設用ケーシング3であり、十字状の断面形を呈し、上下を開放した十字状筒体30と、十字状筒体30の4箇所の角部に軸方向に沿って固定した補強板体40と、を備え、十字状の断面形のドレーン材1を十字状筒体30に内挿し、地中に打設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土中に垂直に設置しておき、周囲の地表面を圧密する際に、あるいは地震時の液状化に際して、地中の間隙中を絞りだすために使用するドレーン材を地中に打設するドレーン材打設用ケーシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドレーン材は、地中に垂直に設置して水路を形成する帯状の部材であり、こうしたドレーン材を地中に設置したら周囲の地盤には地上に載荷して加圧し、その結果地下水を絞りだして沈下を促進させるものである。あるいは、地震時の急激な振動によって絞り出された過剰間隙水を地上に逃すためにも使用される。
【0003】
そうした用途のために、各種の合成樹脂製のドレーン材が開発されている。従来のドレーン材は1枚の帯状の板体である。そのため1枚のドレーン材の受け持つ計算上の有効範囲がきわめて小さいため、従来の帯状ドレーン材に変えて放射状のドレーン材が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−31503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような放射状のドレーン材は、十字状の断面形を呈しており、従来の断面円形の鋼管ではドレーン材を放射状に維持することができず、地下水を絞りだして沈下を促進させことが困難で、かつ、地震時の急激な振動によって絞り出された過剰間隙水を地上に逃すことも困難である。
【0006】
しかも、従来の断面円形の鋼管では周囲摩擦抵抗及び底面支圧抵抗が大きく、その分打設装置が大型化し、打設効率が低下するなどの問題があった。
【0007】
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、ドレーン材を放射状に維持し、効率的に打設することが可能なドレーン材打設用ケーシングを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0009】
請求項1に記載の発明は、十字状の断面形のドレーン材を内挿して地中に打設するドレーン材打設用ケーシングであり、
十字状の断面形を呈し、上下を開放した十字状筒体と、
前記十字状筒体の4箇所の角部に軸方向に沿って固定した補強板体と、
を備え、
前記十字状の断面形のドレーン材を前記十字状筒体に内挿し、地中に打設することを特徴とするドレーン材打設用ケーシングである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記十字状筒体の下開放端部に、打設時の支圧抵抗を軽減するテーパ面を形成したことを特徴とする請求項1に記載のドレーン材打設用ケーシングである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記十字状筒体の角部に固定した補強板体により空間部を形成し、
前記空間部に、地中に水を噴射するジェットパイプを挿入可能にしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドレーン材打設用ケーシングである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記ドレーン材は、打設方向先端部にアンカープレートを備え、
前記アンカープレートは、一対のプレートを支持軸で連結し、
前記十字状筒体の下開放端を塞ぐ状態から折り畳み可能したことを特徴とする請求項1に記載のドレーン材打設用ケーシングである。
【発明の効果】
【0013】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0014】
請求項1に記載の発明では、十字状の断面形のドレーン材を十字状筒体に内挿し、地中に打設することで、周囲摩擦抵抗及び底面支圧抵抗が小さく、その分打設装置が小型化し、効率的に打設することが可能である。しかも、ドレーン材を放射状に維持して地中に打設することで、地下水を絞りだして沈下を促進させ、かつ、地震時の急激な振動によって絞り出された過剰間隙水を地上に逃すことが可能である。
【0015】
請求項2に記載の発明では、十字状筒体の下開放端部に、打設時の支圧抵抗を軽減するテーパ面を形成したことで、ドレーン材を放射状に維持して短時間に円滑に打設することが可能である。
【0016】
請求項3に記載の発明では、前記十字状筒体の角部に固定した補強板体により空間部を形成し、空間部に、地中に水を噴射するジェットパイプを挿入可能にしたことで、ジェットパイプを確実に支持し、ジェットパイプを用いて打設することが可能である。
【0017】
請求項4に記載の発明では、アンカープレートは、一対のプレートを支持軸で連結し、十字状筒体の下開放端を塞ぐ状態から折り畳み可能したことで、アンカープレートの加工が容易で、材料ロスがなく、しかも輸送が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】透水翼板の斜視図である。
【図2】透水翼板の折り畳み状態の平面図である。
【図3】透水翼板の打ち込み状態の平面図である。
【図4】ドレーン材打設用ケーシングの平面図である。
【図5】ドレーン材打設用ケーシングの側面図である。
【図6】ドレーン材打設用ケーシングの下開放端部の側面図である。
【図7】アンカープレートを説明する図である。
【図8】施工フロー図である。
【図9】打設装置を示す図である。
【図10】ケーシング圧入装置である。
【図11】ケーシング圧入装置の押し込みローラの駆動を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明のドレーン材打設用ケーシングの実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0020】
[ドレーン材の構成]
まず、この実施の形態に用いるドレーン材を、図1乃至図3に基づき説明する。図1は透水翼板の斜視図、図2は透水翼板の折り畳み状態の平面図、図3は透水翼板の打ち込み状態の平面図である。
【0021】
ドレーン材1は、4枚の透水翼板2によって構成される。透水翼板2は、芯材21と、その周囲を包囲する被覆材22とによって構成される。芯材21は、充分な長さを有する帯状の合成樹脂板であり、凹部や凸部を形成して水路21aを確保してある。
【0022】
芯材21は適度の剛性を有する合成樹脂製品であるが、長さが充分にあるために巻き取りや適度の曲線の形成は充分可能である。この芯材21の周囲を包囲する被覆材22は、織布、不織布、格子網など、合成樹脂で作成したネットであり、袋状に形成されている。この被覆材22が水路21aの周囲を包囲して、地中においてその透水路としての機能を長く確保する。
【0023】
翼板2の被覆材22は、その長手方向の一方の縁部に折り曲げ縁23を有する。被覆材22の折り曲げ縁23の内部には芯材21が封入されていないから、剛性はない。
以上のような構造の翼板2を複数枚の平行に位置させ、各折り曲げ縁23を集めて相互に接合する。
【0024】
その結果、ドレーン材1は、1直線を中心として4枚の透水翼板2が折り曲げ自在の状態で放射状に配置されることになる。これがこの実施の形態に用いられるドレーン材1であり、透水翼板2を4枚集めることで断面が十文字状のドレーン材を構成することができる。
【0025】
[ドレーン材打設用ケーシングの構成]
次に、この実施の形態のドレーン材打設用ケーシングを、図4乃至図7に基づき説明する。図4はドレーン材打設用ケーシングの平面図、図5はドレーン材打設用ケーシングの側面図、図6はドレーン材打設用ケーシングの下開放端部の側面図、図7はアンカープレートを説明する図である。
【0026】
この実施の形態のドレーン材打設用ケーシング3は、十字状の断面形のドレーン材1を内挿して地中に打設する構成であり、十字状の断面形を呈し、上下を開放した十字状筒体30と、十字状筒体30の4箇所の角部に軸方向に沿って固定した補強板体40とを備える。
【0027】
十字状筒体30は、L形鋼31を4枚対向して配置し、鋼板32によって連結して構成され、十字状の断面形を呈することで十字状の断面形のドレーン材1を内挿する挿入空間33を有する。
【0028】
補強板体40は、鋼板で構成され、十字状筒体30の4箇所の角部に軸方向に沿って固定することで、十字状筒体30を補強する。また、十字状筒体30の角部に固定した補強板体40により空間部34が形成され、この空間部34に、地中に水を噴射するジェットパイプ41を挿入可能にしている。この空間部34にジェットパイプ41を挿入することで、十字状筒体30によってジェットパイプ41を確実に支持し、ジェットパイプ41を用いて打設することが可能である。
【0029】
十字状筒体30は、上開放端部30aと、下開放端部30bを有し、下開放端部30bは、L形鋼31に打設時の支圧抵抗を軽減するテーパ面31aを形成している。このテーパ面31aの角度θは、十字状筒体30の軸方向に対して直交する平面L1に対して10度から30度が打設時の支圧抵抗を軽減し、かつドレーン材1を取り付けるアンカープレート42を保持する点で好ましい。
【0030】
ドレーン材1は、打設時に打設方向先端部にアンカープレート42を備える。このアンカープレート42は、一対のプレート42aを支持軸42bで連結し、十字状筒体30の下開放端を塞ぐ状態から折り畳み可能しており、アンカープレート42の加工が容易で、材料ロスがなく、しかも輸送が容易である。一対のプレート42aのうち一方のプレート42aにドレーン材取付バー42cを固定する。
【0031】
この実施の形態では、十字状の断面形のドレーン材1を十字状筒体30の挿入空間33に内挿し、打設装置を用いて地中に打設することで、周囲摩擦抵抗及び底面支圧抵抗が小さく、その分打設装置が小型化し、効率的に打設することが可能である。しかも、ドレーン材1を放射状に維持して地中に打設することで、地下水を絞りだして沈下を促進させ、かつ、地震時の急激な振動によって絞り出された過剰間隙水を地上に逃すことが可能である。打設装置としては、従来のものが用いられ、例えばクレーンを用いた装置などを用いることができる。打設方法もドレーン材打設用ケーシング3を用いたバイブハンマ、圧入方法などが可能である。
[ドレーン材打設用ケーシングを用いたドレーン材の打設]
【0032】
次に、ドレーン材の打設を、図8乃至図11に基づいて説明する。図8は施工フロー図、図9は打設装置を示す図、図10はケーシング圧入装置、図11はケーシング圧入装置の押し込みローラの駆動を示す図である。ドレーン材1は適度の可撓性を有するから、そのまま地中へ押し込むことはできない。したがって、ドレーン材打設用ケーシング3によって周囲を保護した状態で地中に押し込む。
【0033】
(ドレーン材取付及びアンカープレート装着)
打設装置50の巻き取り装置51にロール状に巻かれた状態のドレーン材1を、ドレーン材打設用ケーシング3の十字状筒体30の上方で十文字状にし、このドレーン材1を十字状筒体30の上開放端部30aから挿入空間33に挿入して下開放端部30bまで通す。そして、十字状筒体30の下開放端部30bから突出するドレーン材1の打設方向先端部にアンカープレート42を装着し、打設位置に正確にセットする(図8(a))。アンカープレート42の装着は、プレート42aのドレーン材取付バー42cにドレーン材1の打設方向先端部を係止する。
【0034】
(打設)
打設装置50は、ケーシング圧入装置52を備える。このケーシング圧入装置52は、対向する位置に押し込みローラ52aを有する。この押し込みローラ52aは、十字状筒体30の補強板体40に圧接し、駆動装置52bによって押し込みローラ52aを押し込み方向に回転する。このように、押し込みローラ52aによってドレーン材打設用ケーシング3ごと地中に垂直に押し込むと、ロール状に巻き取られたドレーン材1は、十文字状に展開し、その先端を引っ張られて順次地中に引き込まれる(図8(b))。その際に、硬質層がある場合には、空間部34にジェットパイプ41を挿入することで、地中に水を噴射して打設する。
【0035】
(引き抜き)
押し込みローラ52aは、十字状筒体30の補強板体40に圧接しており、駆動装置52bによって押し込みローラ52aを引き抜き方向に回転する。このように押し込みローラ52aによってドレーン材打設用ケーシング3を引き抜くと、十文字状に展開したドレーン材1は地中に残る(図8(c))。
【0036】
(切断)
ドレーン材打設用ケーシング3を引き抜くことで、十文字状に展開したドレーン材1が地表面より上に出ることになり、この地表面より上に出ているドレーン材1を切断する(図8(d))。
【0037】
(キャップ装着)
ドレーン材1を切断した部分に土砂の浸入を防止するキャップ60を装着することで、ドレーン材1の打設が完了する(図8(e))。
【0038】
[ドレーン材打設用ケーシングを用いる打設の効果]
ドレーン材打設用ケーシング3は、十字状筒体30を有しており、十字状の断面形のドレーン材1を十字状筒体30に内挿し、十字状筒体30の補強板体40に押し込みローラ52aを圧接し、押し込みローラ52aを押し込み方向に回転することで、ドレーン材打設用ケーシング3ごと地中に垂直に押し込むと、ロール状に巻き取られたドレーン材1は、十文字状に展開し、その先端を引っ張られて順次地中に引き込まれることで、ドレーン材1を放射状に維持して打設することが可能である。
【0039】
したがって、ドレーン材1を地中に挿入した後の平面形状は、従来のような一文字ではなく、十文字その他所望本数の放射線状に位置することになり、従来の一文字状のドレーン材と比較してきわめて大きい直径のドレーンウエルとして評価することができる。
【0040】
また、ドレーン材1は放射状に広がった形状を呈するから、横断方向の折れ曲がりに対する抵抗を大きく、圧密沈下によっても折れ曲がる可能性が小さく、長く水路を確保することができ、地下水を絞りだして沈下を促進させ、かつ、地震時の急激な振動によって絞り出された過剰間隙水を地上に逃すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、周囲の地表面を圧密する際に、あるいは地震時の液状化に際して、地中の間隙中を絞りだすために使用するドレーン材を地中に打設するドレーン材打設用ケーシングに適用でき、ドレーン材を放射状に維持し、効率的に打設することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ドレーン材
3 ドレーン材打設用ケーシング
2 透水翼板
21 芯材
22 被覆材
30 十字状筒体
30a 上開放端部
30b 下開放端部
31 L形鋼
31a テーパ面
32 鋼板
33 挿入空間
40 補強板体
41 ジェットパイプ
42 アンカープレート
42a プレート
42b 支持軸
42c ドレーン材取付バー





【特許請求の範囲】
【請求項1】
十字状の断面形のドレーン材を内挿して地中に打設するドレーン材打設用ケーシングであり、
十字状の断面形を呈し、上下を開放した十字状筒体と、
前記十字状筒体の4箇所の角部に軸方向に沿って固定した補強板体と、
を備え、
前記十字状の断面形のドレーン材を前記十字状筒体に内挿し、地中に打設することを特徴とするドレーン材打設用ケーシング。
【請求項2】
前記十字状筒体の下開放端部に、打設時の支圧抵抗を軽減するテーパ面を形成したことを特徴とする請求項1に記載のドレーン材打設用ケーシング。
【請求項3】
前記十字状筒体の角部に固定した補強板体により空間部を形成し、
前記空間部に、地中に水を噴射するジェットパイプを挿入可能にしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドレーン材打設用ケーシング。
【請求項4】
前記ドレーン材は、打設方向先端部にアンカープレートを備え、
前記アンカープレートは、一対のプレートを支持軸で連結し、
前記十字状筒体の下開放端を塞ぐ状態から折り畳み可能したことを特徴とする請求項1に記載のドレーン材打設用ケーシング。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−14897(P2013−14897A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147165(P2011−147165)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(500131985)サントップエンジニア株式会社 (5)
【出願人】(511161339)
【出願人】(511161340)
【Fターム(参考)】