説明

ドレーン用フィルター

【課題】本発明は、環境に対する負荷が低いとともに、施工性、力学特性などの要求特性に優れたドレーン用フィルターを提供せんとするものである。
【解決手段】本発明のドレーン用フィルターは、熱可塑性フィラメント不織布からなるドレーン用フィルターであって、該不織布が、脂肪族ポリエステルとポリアミドとのブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントを含むものであることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレーン用フィルターに関するものであり、ドレーン用フィルターが脂肪族ポリエステルとポリアミドとのブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントを含むものである。
【背景技術】
【0002】
バーチカルドレーン工法は、軟弱粘性土地盤の圧密促進を目的とした工法であり、バーチカルドレーン材を地盤中に打設し、その後に載荷盛土を施工することにより地盤中の水を速やかに地表面に排出し地盤の圧密強化を図るものである。その中で代表的な工法として、ドレーン材として砂を用いるサンドドレーン工法、ドレーン材として紙を用いるペーパードレーン工法などがある。しかし、ペーパードレーン工法は、ドレーン材に紙を使用しているため長時間水に浸しておくとその引張強度が低下し切断されるという問題が生じている。これを改善すべく、ペーパードレーンの材料が紙からプラスチックへと変わっており、現在ではほとんどのペーパードレーンがプラスチックボードドレーンへ変遷しているが、プラスチックドレーンを使用した場合、地盤改良後に実施するシールド工事時にドレーン材が刃口に絡みついたり、地盤掘削工事に支障をきたしたりするという問題がある。このような問題を解決するため、生分解性樹脂からなるボードドレーンが提案されている。例えば、特許文献1には、パルプ、木綿、麻などのセルロース系素材、羊毛、蚕糸などのタンパク質素材、ポリ乳酸などの自然分解性素材からなるネット状構造物と、これら自然分解性素材からなる紙または不織布との組み合わせからなる自然分解性ドレーンが開示されている。また、特許文献2には、板状芯材およびフィルター材がシート状に積層一体化または複合化したボードドレーンであり、構成材のすべてが生分解材であることを特徴としたボードドレーンが開示されている。さらには、特許文献3には、平行溝条が形成されたプレート状芯材およびシート状透水材が生分解性樹脂からなることを特徴とするドレーン材が開示されている。
【0003】
しかし、いずれの方法とも、ドレーン用フィルター材の強度、伸度、引裂強力などの力学的特性が十分ではなく、施工時あるいはドレーン材使用期間中にフィルター材が破損しやすいという問題がある。
【特許文献1】特開2004−245004号公報
【特許文献2】特開2004−100443号公報
【特許文献3】特開2002−266340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の背景に鑑み、従来のペーパードレーン、プラスチックボードドレーンに使用されていたフィルター材に代わるものとして、環境に対する負荷が低いとともに、施工性、力学特性などの要求特性に優れたドレーン用フィルターを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のドレーン用フィルターは、熱可塑性フィラメント不織布からなるドレーン用フィルターであって、該不織布が、脂肪族ポリエステルとポリアミドとのブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントを含むものであることを特徴とするものである。
かかる本発明のドレーン用フィルターの好ましい態様は、下記の通りである。すなわち、
(1)前記ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントの単繊維繊度が1〜8デシテックスであって、前記不織布の目付が20〜200g/mであり、かつ、不織布の目付と引張強度、破断伸度および引裂強力が次式(I)および(II)を満たすこと、
200≧Y×Z/X≧80・・・・・・(I)
T/X ≧ 0.9 ・・・・・・・・(II)
ただし、X:不織布目付(g/m)、Y:不織布の引張強力(N/5cm)、Z:不織布の引張伸度(%)、T:不織布の引裂強力
(2)透水係数が1.0×10−1cm/秒以上であること、
(3)前記ブレンドポリマーの脂肪族ポリエステル:ポリアミドの重量比率が50:50〜95:5であること、
(4)前記ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントの断面方向において、ポリアミド成分が平均単繊維繊度1×10−7〜1×10−3デシテックスで微分散していること、
(5)前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であり、前記ポリアミドがナイロン6であること、
(6)前記不織布を構成する熱可塑性フィラメント同士の熱接着が、不織布の全面積に対して5〜50%の範囲で部分的になされてなること、
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、環境負荷の低い原料である脂肪族ポリエステルを主たる成分の一つとして含みながら、引張強度、引張伸度、引裂強力などの力学特性に優れたドレーン用フィルターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、前記課題、つまり環境に対する負荷が低いとともに、施工性、力学特性などの要求特性に優れたドレーン用フィルターについて、鋭意検討し、ドレーン用フィルターを構成する不織布を、脂肪族ポリエステルとポリアミドという特定な組合せのブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントを用いて作ってみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0008】
本発明のドレーン用フィルターは、熱可塑性フィラメント不織布からなるものであり、かかる熱可塑性フィラメント不織布を構成する熱可塑性フィラメントとして、脂肪族ポリエステルとポリアミドがブレンドされたブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントを用いたところに特徴を有するものである。
【0009】
前記脂肪族ポリエステルは生分解性の脂肪族ポリエステルであれば特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートバリレート、あるいはこれらの共重合体や変成物を、単独またはブレンドして用いることができる。なかでも紡糸性、力学的特性が良好であり、かつ植物由来のデンプンからの合成が可能であるため環境影響が小さい、ポリ乳酸が最も好ましいものである。かかるポリ乳酸としては、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体(ステレオコンプレックスを含む)が好ましいものである。かかるポリ乳酸の重量平均分子量は5万〜30万が好ましく、より好ましくは10万〜30万である。重量平均分子量が5万を下回る場合は、繊維の強力が低くなる傾向があり、また、重量平均分子量が30万を越える場合は、粘度が高いためノズルから押し出したポリマーの曳糸性が乏しく、高速延伸ができにくくなり、究極的には未延伸状態になり、十分な繊維強度を得ることができない傾向がでてくる。
【0010】
また、本発明に用いる脂肪族ポリエステルは、分子鎖末端のカルボキシル基の一部、またはすべてが末端封鎖剤により末端封鎖されてなるものが好ましい。脂肪族ポリエステルの分子鎖末端のカルボキシル基の一部、またはすべてが末端封鎖されることにより、加水分解によるフィラメント、さらにはシートの強度低下が抑制される。末端封鎖剤の添加により脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端濃度を、0〜20当量/tonとすることが好ましく、0〜15当量/tonとすることがより好ましく、0〜10当量/tonとすることがさらに好ましい。ここで脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端濃度は、精秤したサンプルをo−クレゾール(水分5%)に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めることができる。
【0011】
本発明にて用いられる脂肪族ポリエステルの末端封鎖剤としては、何ら制限されるものではないが、カルボジイミド化合物や、イソシアヌル酸を基本骨格とするグリシジル変性化合物が好ましいものである。これら末端封鎖剤の添加量は、脂肪族ポリエステルに対して、0.05〜10wt%が好ましい範囲であり、0.1〜7wt%がさらに好ましい範囲である。
【0012】
本発明にて脂肪族ポリエステルの末端封鎖剤として用いられるカルボジイミド化合物としては、特に限定されるものではないが、モノカルボジイミド化合物が用いられる場合は、5%重量減少温度(以下、T5%と示す)が170℃以上のモノカルボジイミド化合物であることが好ましく、T5%が190℃以上のモノカルボジイミド化合物であることがより好ましい。モノカルボジイミド化合物のT5%が170℃未満の場合、モノカルボジイミド化合物が紡糸時に分解および/または気化し、糸切れの増加や製品品位の悪化が発生する傾向であり好ましくない方向である。さらにはモノカルボジイミド化合物が脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端に有効に反応、作用せず十分な耐加水分解性の向上効果を得られない傾向もあり好ましくない。なお、ここで5%重量減少温度とは、MACSCIENCE社製“TG−DTA2000S”TG−DTA測定機により、試料重量10mg程度、窒素雰囲気中にて昇温速度10℃/分として測定した時の、測定開始前の試料重量に対して重量が5%減量したときの温度として求めた温度である。
【0013】
本発明において末端封鎖剤として用いることのできるモノカルボジイミド化合物の例としては、例えば、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミドなどが挙げられる。末端封鎖剤として用いられるモノカルボジイミド化合物は、1種の単独使用であっても複数種の混合物であってもよいが、耐熱性および反応性や脂肪族ポリエステルとの親和性の点でN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(以下、TICと記す)が好ましく、複数種のモノカルボジイミド化合物を併用する場合は、末端封鎖剤として用いるモノカルボジイミド化合物の総量のうち50%以上がTICであることが好ましい。
【0014】
モノカルボジイミド化合物により末端カルボキシル基を封鎖する方法としては、脂肪族ポリエステルの溶融状態でモノカルボジイミド化合物を末端封鎖剤として適量反応させることで得ることができるが、脂肪族ポリエステルの高重合度化、残存低分子量物の抑制などの観点から、ポリマーの重合反応終了後にモノカルボジイミド化合物を添加、反応させることが好ましい。上記したモノカルボジイミド化合物と脂肪族ポリエステルとの混合、反応としては、例えば、重縮合反応終了直後の溶融状態の脂肪族ポリエステルにモノカルボジイミド化合物を添加し攪拌・反応させる方法、脂肪族ポリエステルのチップにモノカルボジイミド化合物を添加、混合した後に反応缶あるいはエクストルーダなどで混練、反応させる方法、エクストルーダで脂肪族ポリエステルに液状のモノカルボジイミド化合物を連続的に添加し、混練、反応させる方法、モノカルボジイミド化合物を高濃度含有させた脂肪族ポリエステルのマスターチップと脂肪族ポリエステルのホモチップとを混合したブレンドチップをエクストルーダなどで混練、反応させる方法などにより行うことができる。
【0015】
本発明において加水分解抑制剤として用いられるカルボジイミド化合物は、特に限定されるものではないが、ポリカルボジイミド化合物が用いられる場合は、下記化学式[化1]で表される4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、および下記化学式[化2]で表されるイソホロンジイソシアネート、および、下記化学式[化3]で表されるテトラメチルキシリレンジイソシアネートの少なくとも1種に由来し、分子中に2以上のカルボジイミド基を有し、かつそのイソシアネート末端がカルボン酸で封止されてなるポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
ポリカルボジイミド化合物は、上記化学式の[化1]で表される4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、HMDIと略記)、または、上記化学式の[化2]で表されるイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、または、上記化学式の[化3]で表されるテトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、TMXDIと略記)のいずれか1種に由来するカルボジイミド、もしくは上記化合物の2種混合物、又は3種混合物のいずれかの混合物に由来するカルボジイミドで、分子中に2以上のカルボジイミド基、好ましくは5以上のカルボジイミド基を有するものを主成分とする。なお、ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基の上限は20である。このようなカルボジイミドは、HMDI、またはIPDI、またはTMXDI、または上記化合物の2種混合物、または3種混合物を原料とする脱二酸化炭素反応を伴うカルボジイミド化反応により製造することができる。なお、これらの中でも、得られた繊維の力学的特性が優れているという点で、HMDIを50重量%以上含むカルボジイミドが好ましく、HMDIを80重量%以上含むカルボジイミドがより好ましい。
また、本発明において使用されるポリカルボジイミド化合物としては、脂肪族ポリエステル樹脂中に未反応のポリカルボジイミド化合物が存在しても、熱安定性に優れるために、フィラメント化する際の紡糸性悪化や刺激性ガスの発生を抑えることができることから、イソシアネート末端がカルボン酸を用いて末端を封止されたものであることが好ましい。かかるカルボン酸の中でも、好ましく用いられるものは、モノカルボン酸であり、例えばシクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、無水トリメリット酸、2−ナフトエ酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2−フル酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、メタクリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ケイ皮酸、グリセリン酸、アセト酢酸、ベンジル酸、アントラニル酸等が挙げられ、これらの中でも最も好ましいのはシクロヘキサンカルボン酸である。
なお、未反応のポリカルボジイミド化合物の熱劣化によって生じる熱分解ガスの発生量を減じるため、ポリカルボジイミド化合物の添加量を、カルボジイミド基当量として脂肪族ポリエステルのトータルカルボキシル基末端量の2倍当量以下に制御することが好ましい。かかるポリカルボジイミド化合物の添加量は、より好ましくはトータルカルボキシル基末端量の1.5倍当量以下であり、さらに好ましくは1.2倍当量以下である。
【0020】
本発明において、脂肪族ポリエステルの末端封鎖剤として用いられるイソシアヌル酸を基本骨格とするグリシジル変性化合物とは、下記化学式[化4]で表されるものである。
【0021】
【化4】

【0022】
(ここで、R〜Rのうち、少なくとも1つはグリシジルエーテル若しくはグリシジルエステルであり、残りは水素、炭素原子数1〜10のアルキル基、水酸基、アリル基等の官能基)
かかるグリシジル変性化合物としては、上記化学式[化4]で表される化合物であれば特に限定されるものではないが、上記化学式[化4]のRのうち、いずれか一つがグリシジル基、残る二つがアリル基であるジアリルモノグリシジルイソシアヌレートや、上記化学式[化4]のR〜Rのうち、いずれか二つがグリシジル基、残る一つがアリル基であるモノアリルジグリシジルイソシアヌレートや、上記化学式[化4]のR〜Rの全てがグリシジル基であるトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどが好ましく用いられる。
【0023】
なお、前記脂肪族ポリエステルには、結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、親水剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0024】
本発明において脂肪族ポリエステルとブレンドポリマーを構成するポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン12、あるいはこれらの共重合体や変性物を、単独またはブレンドして用いることができる。かかるポリアミドの選定にあたっては、脂肪族ポリエステルとの融点差の少ないものを選ぶことが好ましい。
【0025】
なお、かかるポリアミドには、結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、親水剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
本発明において最も好ましいブレンドポリマーは、脂肪族ポリエステルとして前述のポリ乳酸を使用し、ポリアミドとしてナイロン6を使用してなるものである。かかるナイロン6は融点が220℃とポリ乳酸の融点170℃に対し融点差が少なく、親和性も高く複合紡糸した場合の紡糸性がよいため特に好ましい。さらに、融点差が少ないため熱接着する際に一方のポリマーが過度に溶融することがなく、ドレーン用フィルターに要求される透水性能が損なわれない点からも好ましい。
【0026】
また本発明においてブレンドされる脂肪族ポリエステル:ポリアミドの重量比率は、50:50〜95:5の範囲が好ましく、さらに好ましくは55:45〜90:10であり、最も好ましくは、60:40〜85:15である。ポリアミドの重量比率が50を越えると、脂肪族ポリエステルをブレンド使用することによる環境影響を低くする効果が小さくなるばかりでなく、地盤改良後もフィルター材の自然分解が十分に進まないため、地盤改良後のシールド工事時にドレーン材が刃口に絡みついたり、地盤掘削工事に支障をきたしたりすることがあるため好ましくない方向である。またポリアミドの重量比率が5未満であれば、不織布の引張強度、引張伸度、引裂強力などの力学特性が不十分なものとなり、施工時およびドレーン材使用期間中にフィルターが破損し易くなるため好ましくない方向である。
【0027】
本発明におけるブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントは、その断面方向において、ポリアミドが平均単繊維繊度1×10−7〜1×10−3デシテックスで微分散してなることが好ましい。ポリアミドの平均単繊維繊度が上記範囲内で微分散していれば、不織布の引張強度、引張伸度、引裂強力が十分となり、また、脂肪族ポリエステル成分が生分解されやすくなる傾向があるので好ましい。かかる微分散したポリアミドの平均単繊維繊度は2×10−7〜5×10−4デシテックスの範囲であるのがより好ましく、9×10−7〜4×10−4デシテックスの範囲であるのが最も好ましい。
【0028】
なお、本発明におけるポリアミド成分の平均単繊維繊度は、以下の方法で求められる。すなわち、試料からランダムに小片サンプルを10個採取し、エポキシ樹脂に包埋して断面方向に超薄切片として切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM、例えば日立製H7100FA型)で、4万〜10万倍の倍率で写真を撮影する。各サンプルからポリアミド成分の断面積の大きさを20本ずつ、計200本測定して平均値を算出し、これを円形繊維の繊維径に換算し、ポリマーの密度で補正して求められるものである。なおTEM観察において、ポリアミドと脂肪族ポリエステルとが識別しにくい場合には、適宜試料を染色してもよい。
【0029】
本発明において、ポリアミドを脂肪族ポリエステル中に微分散させる方法としては、溶融混練押出機や静止混練器等によって混練することが好ましい。また混練性を高める方法として、ポリアミドと脂肪族ポリエステルの組み合わせも重要であり、組み合わせるポリマーの相溶性を最適化することが好ましい。かかる相溶性の指標として、ポリアミドと脂肪族ポリエステルの溶解度パラメーター(SP値)の差を、1〜9(MJ/m1/2とすることが好ましい。ここでSP値とは、(蒸発エネルギー/モル容積)1/2で定義される物質の凝集力を反映するパラメータであり、例えば「プラスチック・データブック」旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、189ページ等に記載されている。かかるポリアミドと脂肪族ポリエステルのSP値の差を1〜9(MJ/m1/2の範囲にすれば、ポリマー同士の相溶性が良くなるためポリアミドの分散性が良くなり、さらには紡糸安定性も向上する傾向となるため好ましい方向である。例えば、前述のポリ乳酸とナイロン6の組み合わせは、SP値の差が2(MJ/m1/2であり、相溶性の点からも好ましいものである。
【0030】
またさらに、かかるポリアミドとして、その溶融粘度が、脂肪族ポリエステルの溶融粘度より低くいものを選択して使用すると、剪断力によりポリアミドが変形しやすく、微分散しやすくなるので好ましい。
【0031】
上記ブレンドポリマーを熱可塑性フィラメント不織布の原料ポリマーとして用いるが、熱可塑性フィラメント不織布を後述するスパンボンド法で製造する場合には、ブレンドと紡糸を連続して行ってもよい。また、かかる熱可塑性フィラメント不織布には、かかるブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメント以外の熱可塑性フィラメントを含んでいてもよい。
【0032】
本発明における熱可塑性フィラメント不織布は、透水係数が1×10−1cm/秒以上であることが好ましい。かかる透水係数が1×10−1cm/秒より小さいと、ドレーン材の集水能力が不足する傾向にあるため好ましくない。なお、フィルターの透水係数はJIS A−1218 土の透水試験方法の定水位透水試験に準拠し、土の代わりにドレーン用フィルタ−を用い、ドレーン用フィルターの厚みと透水量の関係から求めることができる。なお、この際にはフィルターの厚みは、JIS L1908の押圧荷重2kPaの測定結果を用いた。
【0033】
また、本発明におけるブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントの単繊維繊度は1〜8デシテックスであることが好ましい。かかるフィラメントの単繊維繊度が1デシテックス未満である場合は、土中の微細粒子だけでなく透水もが繊維によって阻害されてしまうため、ドレーン材の集水性能が低下し、土壌を効果的に改質できなくなる傾向がでてくるため好ましくない。逆に、かかるフィラメントの単繊度が8デシテックスを越える場合、土中の微粒子が不織布を通過してしまうため、フィルターとして求められる性能、効果が十分に得られなくなる傾向がでてくるため好ましくない。
なお、ここでいう単繊維繊度は、試料からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡等で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値の0.01μmの位を四捨五入して算出した繊維径を、ポリマーの密度で補正し、小数点第一位を四捨五入して求められるものである。
またさらに、かかる熱可塑性フィラメントの断面形状は何ら制限されるものではなく、丸形、楕円型、中空丸形、扁平型、あるいはX形、Y形、多葉形等の異形、等が好ましく使用されるが、製造が簡便であり、タフティング時に針のダメージを受けにくい点から丸形形状が最も好ましいものである。
【0034】
本発明における熱可塑性フィラメント不織布の目付は、20〜200g/mであることが好ましい。かかる目付が20g/mを下回ると、単繊維繊度をある程度小さくしても繊維間空隙が大きくなり、細かな土の粒子が不織布を通過してしまうためフィルターとしての性能、効果が十分に得られなくなる傾向がでてくる。また、目付が200g/mを超えると、透水係数が小さくなるためドレーン材の集水性能が不足する傾向にあるばかりでなく、コスト高になる傾向となるため好ましくない。より好ましい不織布の目付は25〜150g/m、さらに好ましくは30〜100g/mの範囲である。
【0035】
ここで目付は以下の方法で求めるものである。すなわち、縦50cm×横50cmのサイズの試料を3個採取して各重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算、小数点以下第一位を四捨五入することで求めるものである。
【0036】
また、本発明における熱可塑性フィラメント不織布においては、該不織布の目付と該不織布の引張強力、該不織布の引張伸度および該不織布の引裂強力が、次式(I)および(II)をともに満たす関係にあることが好ましい。
【0037】
200≧Y×Z/X≧80・・・・・・(I)
T/X ≧ 0.9 ・・・・・・・(II)
ただし、X:不織布の目付(g/m)、Y:不織布の引張強力(N/5cm)、Z:不織布の引張伸度(%)、T:不織布の引裂強力(N)
上記式(I)において、より好ましい範囲は195≧Y×Z/X≧85、さらに好ましい範囲は190≧Y×Z/X≧90である。上記式(I)において、Y×Z/X≦200を満たさない場合は、不織布の強度は十分であるが、風合いが硬く、また、ドレーン用フィルターとしての性能が劣る傾向となるため好ましくない。また、上記式(I)において、Y×Z/X≧80を満たさない場合は、不織布の強度が不十分となるため好ましくない。
【0038】
上記式(II)において、より好ましい範囲はT/X ≧0.95、さらに好ましい範囲はT/X ≧ 1.0である。かかる目付と引裂強力が上記式(II)を満たさない場合、不織布の目付と引裂強力のバランスが不十分なものとなるため、施工時あるいはドレーン材使用期間中に不織布が破れやすくなる傾向となるため好ましくない。
【0039】
ここで、引張強力と引張伸度は以下の方法で求めるものである。すなわち、不織布の縦方向(シート長さ方向)および横方向(シート幅方向)のそれぞれについて、幅5cm×長さ30cmの試験片を10点採取する。試験片を定速伸長型引張試験機にて、つかみ間隔20cm、引張速度10±1cm/minで引張試験を実施し、破断するまでの最大荷重時の強さ(N)および最大荷重時の伸びをそれぞれ0.1N、1mmの位まで測定する。引張強力(N)については、ここで得られた最大荷重の強さを試験片の幅(5cm)で除し、小数点第二位を四捨五入して求める。引張伸度(%)については測定で得られた伸びを試験片長さ(20cm)で除し、小数点以下第二位を四捨五入して求める。つぎに、引張強力および引張伸度の縦方向、横方向それぞれの平均値を算出し、小数点第1位を四捨五入する。引張強力の縦方向および横方向のうち、いずれか値の大きい方をその不織布の引張強力(N/5cm)とし、これに対応する引張伸度(%)をその不織布の引張伸度(%)とする。また、不織布の目付は以下の方法で求めるものである。すなわち、縦50cm×横50cmのサイズの試料を3個採取して各重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算、小数点以下第一位を四捨五入することで求めるものである。また、引裂強力(N)は、本発明の不織布をJIS L1906(2000年度版)5.4 a)を参考とし、トラペゾイド法にてサイズ 5cm×25cmのサンプルに、短辺10cm、長辺15cmの等脚台形の印をつけ、この短辺の中央に短辺と直角に1cmの切れ目を入れ、つかみ幅5cm、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minとし、引き裂くときに示す最大荷重を0.1Nの位まで測定する。測定は縦方向、横方向でそれぞれ5点ずつ行い、それぞれの平均値を算出、小数点第1位を四捨五入し、縦方向、横方向のいずれか値の大きい方をその不織布の引裂強力とする。
【0040】
本発明において熱可塑性フィラメント不織布を構成する熱可塑性フィラメントは、脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することが好ましい。脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1wt%以上含有することにより、フィラメント表面の摩擦抵抗が小さくなり、エンボスロール および/またはカレンダーロールからの不織布の剥離性が向上し、安定した不織布の搬送が可能となり好ましいものである。また含有量を5.0wt%以下とすることにより、紡糸性の悪化も発生しにくい傾向であり好ましい。より好ましい含有量の範囲は0.3〜4.0wt%、さらに好ましい範囲は0.5〜2.0wt%である。なお、本発明においては、脂肪族ビスアミドまたはアルキル置換型の脂肪族モノアミドをそれぞれ単独で用いてもよいし、両者を併用して含有するものでもよい。
【0041】
本発明において用いられる脂肪族ビスアミドは特に制限されるものではないが、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、および芳香族系脂肪酸ビスアミド等であり、例えばメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスバルミチン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられ、これらを複数種類混合して使用してもよい。
【0042】
本発明において用いられるアルキル置換型の脂肪族モノアミドとしては、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置換した構造の化合物を示し、N−ラウリルラウリル酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド等が挙げられ、これらを複数種類混合して使用してもよい。
【0043】
脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを熱可塑性フィラメントに含有させるにあたっては、熱可塑性フィラメントの表面に付与する等の方法もあるが、原料となるブレンドポリマーに添加する方法が好ましい。脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを、紡糸するための原料となるブレンドポリマーに添加する方法は何ら制限されるものではないが、予め原料樹脂と添加する物質を加熱溶融混合したマスターチップを作製し、これを紡糸の際に原料樹脂に必要量添加して、添加物質量を調整する方法が最も好ましい。
【0044】
本発明においてドレーン用フィルターとして用いられる熱可塑性フィラメント不織布は、連続したフィラメントからなる長繊維不織布であり、生産効率が高く、かつ機械的強度や寸法安定性に優れる点から、スパンボンド法により得られる長繊維不織布が最も好ましい。
【0045】
かかるスパンボンド法とは、溶融した原料ポリマーをノズルより押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸してフィラメントとし、これを帯電開繊し移動コンベア上に堆積捕集させて繊維ウェブとし、この繊維ウェブを機械的絡合、熱接着、バインダー樹脂接着、あるいはこれらの方法を組み合わせることにより一体化してシートとする方法である。
【0046】
本発明においては原料ポリマーを溶融させる温度は、脂肪族ポリエステルの融点より30〜90℃高いことが好ましく、40〜80℃高いことがより好ましく、50〜70℃高いことが最も好ましい。かかる溶融温度と脂肪族ポリエステルの融点の差が30℃未満の場合は、原料の溶融粘度が高くなり過ぎ、紡糸性が不安定となる傾向であり、好ましくない方向である。また、かかる溶融温度と脂肪族ポリエステルの融点の差が90℃を超える場合は、特に脂肪族ポリエステルの熱分解が激しくなる傾向であり、好ましくない方向である。
【0047】
さらにフィラメントを吸引延伸する紡糸の速度は、1500〜6000m/minが好ましいものである。かかる紡糸速度が1500m/minを下回る場合は、延伸不足によりフィラメントの強度が不十分となる場合があり好ましくない。また、かかる紡糸速度が6000m/minを超える場合は、紡糸の安定性が悪くなる傾向であり、好ましくない。より好ましい紡糸速度の範囲は2000〜5000m/minである。
また繊維ウエブを一体化する方法としては、機械的絡合、熱接着、バインダー樹脂接着、あるいはこれらの方法を組み合わせたものが好ましい。本発明における機械的絡合とは、突起を有する針でフィラメント同士を絡めるニードルパンチ処理、あるいは柱状水流によりフィラメントを絡合させるウォータージェットパンチ処理が好ましいものである。
【0048】
かかるニードルパンチ処理の場合は、針密度20〜200回/cmで処理したものが好ましい。かかる針密度が20回/cmを下回る場合は、絡合が不十分で強度が低くなる傾向であり好ましくない。また、かかる針密度が200回/cmを超える場合は、絡合は十分となるが、フィラメントの損傷が激しく不織布の強度が低下する傾向となり好ましくない。より好ましい針密度は30〜150回/cmである。
【0049】
またウォータージェットパンチ処理の場合は、5〜20MPaの水圧で、表裏両面を、それぞれ1回以上処理することによって、絡合も適切に行われ、強度も十分な不織布を提供することができる。
【0050】
また、本発明において、熱接着による一体化は、繊維同士が接触点において互いに熱接着してなるもの、または熱接着が不織布の全面積に対して5〜50%の範囲で部分的に接着されているものが好ましい。かかる繊維同士を接触点において互いに熱接着させる方法としては、一対のフラットロールによる熱処理や、熱風を吹き付ける処理(エアースルー接着処理)が好ましいものである。また部分的に熱接着させる方法としては、一対のエンボスロールによる熱エンボス処理、またはエンボスロールとフラットロールによる熱エンボス処理が好ましいものである。また、かかる部分的な熱接着において、接着面積の割合が、不織布の全面積に対して5%未満である場合は、不織布の強度が不十分となる傾向があり、逆に50%を超える場合は、不織布の風合いが硬くなり過ぎる傾向があり、好ましくない。より好ましい部分的熱接着の割合は8〜30%である。さらにこれら熱接着の温度は、フィラメントを構成する脂肪族ポリエステルの融点より5〜70℃低いことが好ましく、10〜60℃低いことがより好ましい。すなわち、かかる熱接着の温度と脂肪族ポリエステルの融点の温度差が、5℃未満の場合は、熱接着が強くなり過ぎる傾向であり、逆に、70℃を上回る場合は、熱接着が不十分となる場合があり好ましくない。
このようにして製造されたドレーン用フィルターは、長手方向に平行溝条が形成されたプレート状芯材と貼り合わせて使用される。ドレーン用フィルターが芯材と貼り合わされたとき、芯材の溝状とフィルターの間に水通路が形成され、これを通じて地盤中の水が地表に排出される。芯材とドレーン用フィルターの貼り合わせ方法は特に限定されるものではなく、例えば熱接着や接着剤などの手段を用いることができる。
【実施例】
【0051】

以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
また、実施例で用いた評価法とその測定条件について以下に説明する。
【0053】
(1)ポリマーの溶融粘度(poise)
東洋精機製作所(株)製キャピラログラフ1Bにより、ポリマーの溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は10分とした。
【0054】
(2)融点(℃)
Perkin Elmer DSC−7を用いて2nd runでポリマーの溶融を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は20℃/分、サンプル量は10mgとした。
【0055】
(3)重量平均分子量
ポリ乳酸の重量平均分子量は以下の方法で求めた。試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とし、これをWaters社製ゲルパーミテーションクロマトグラフ(GPC)Waters2690を用いて、25℃で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。各試料につき3回の測定を行い、平均値を算出し、千の位を四捨五入してそれぞれの重量平均分子量とした。
【0056】
(4)単繊維繊度(デシテックス):
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡等で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値の0.01μmの位を四捨五入して算出した繊維径を、ポリマーの密度で補正し、小数点第一位を四捨五入して求めた。
【0057】
(5)目付(g/m):
不織布から縦50cm×横50cmのサイズの試料を3個採取して各重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算、小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
【0058】
(6)ポリアミド成分の分散状態(平均単繊維繊度:デシテックス)
不織布からランダムに小片サンプルを10個採取し、エポキシ樹脂に包埋して断面方向に切削して超薄切片として切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM:日立製H7100FA型)で、4万〜10万倍の倍率で写真を撮影した。各サンプルからポリアミド成分の断面積の大きさを20本ずつ、計200本測定してそれらの平均値を算出し、これを円形繊維の繊維径に換算し、ポリマーの密度で補正してポリアミド成分の単繊維繊度を求めた。なお、TEM観察において、ポリアミドと脂肪族ポリエステルとが識別しにくい場合には、適宜試料を染色した。
【0059】
(7)引張強力、引張伸度、引裂強力
(引張強力および引張伸度)
JIS L1906(2000年度版)の5.3.1を参考とし、サンプルサイズ5cm×30cm、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件でシート縦方向、横方向ともそれぞれ10点ずつの引張試験を行い、サンプルが破断した時の強力を引張強力、また最大荷重時のサンプルの伸びを1mm単位まで測定し、この伸び率(元の長さに対する伸びた長さ)を引張伸度とし、シート縦方向、横方向それぞれの平均値について小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
【0060】
このとき、縦方向、横方向の引張強力のうち、いずれか値の大きい方をその不織布の引張強力:Yとし、またYに対応する引張伸度をZとした。これらY、Zの値と前記(5)で測定した目付:Xとの関係を、前述の式(I)に適合するものか検証した。
【0061】
(引裂強力)
JIS L1906(2000年度版)5.4 a)を参考とし、トラペゾイド法にてサンプルサイズ 5cm×25cmに、短辺10cm、長辺15cmの等脚台形の印をつけ、この短辺の中央に短辺と直角に1cmの切れ目を入れ、つかみ幅5cm、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minで引き裂いたときに示す最大荷重を測定した。測定はシート縦方向、横方向ともそれぞれ5点ずつ行い、縦方向、横方向それぞれの平均値を小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
【0062】
このとき、縦方向、横方向の引裂強力のうち、値の大きい方をその不織布の引裂強力Tとした。このTと、前記(5)で測定した目付:Xとの関係を、前述の式(II)に適合するものか検証した。
【0063】
(実施例1)
溶融粘度570poise(240℃、剪断速度2432sec−1)、融点220℃のナイロン6(40重量%)、と重量平均分子量12万、溶融粘度300poise(240℃、剪断速度2432sec−1)、融点170℃のポリ(L−乳酸)(光学純度99.5%以上)(60重量%)を2軸押出混練機にて240℃で混練してブレンドポリマーチップを得た。
【0064】
このブレンドポリマーチップを原料とし、240℃で押出機にて原料を溶融し、紡糸温度240℃で丸形細孔より紡出した後、エジェクターにて紡糸速度2500m/minで紡糸し、公知の開繊装置により糸条を開繊して、移動コンベア上に捕集し得られたウェブを、圧着面積率が13%となるようなエンボスロールとフラットロールを用いて、ロール温度135℃、線圧50kg/cmの条件で熱接着し、単繊維繊度2.5デシテックス、目付30g/mの不織布を得た。
【0065】
(実施例2)
実施例1で使用したブレンドポリマーチップに、エチレンビスステアリン酸アミドを0.5wt%添加し、240℃で押出機にて溶融し、紡糸温度240℃で丸形細孔より紡出した後、エジェクターにて紡糸速度2800m/minで紡糸し、公知の開繊装置により糸条を開繊して、移動コンベア上に捕集し得られたウェブを、圧着面積率が16%となるようなエンボスロールとフラットロールを用いて、ロール温度140℃、線圧40kg/cmの条件で熱接着し、単繊維繊度2.3デシテックス、目付50g/mの不織布を得た。
【0066】
(実施例3)
実施例1と同様の条件で、ナイロン6:ポリ(L−乳酸)の重量比率のみを20:80に変更して、ブレンドチップを得た。このブレンドポリマーチップに、エチレンビスステアリン酸アミドを0.5wt%添加し、240℃で押出機にて原料を溶融し、紡糸温度245℃で丸形細孔より紡出した後、エジェクターにて紡糸速度3900m/minで紡糸し、公知の開繊装置により糸条を開繊して、移動コンベア上に捕集し得られたウェブを、圧着面積率が13%となるようなエンボスロールとフラットロールを用いて、ロール温度140℃、線圧50kg/cmの条件で熱接着し、単繊維繊度2.5デシテックス、目付90g/mの不織布を得た。
【0067】
(実施例4)
実施例1で使用したブレンドポリマーチップに、エチレンビスステアリン酸アミドを0.5wt%添加、さらにTICをポリ(L−乳酸)の含有量に対して1wt%添加し、240℃で押出機にて溶融し、紡糸温度245℃で丸形細孔より紡出した後、エジェクターにて紡糸速度2500m/minで紡糸し、公知の開繊装置により糸条を開繊して、移動コンベア上に捕集し得られたウェブを、圧着面積率が16%となるようなエンボスロールとフラットロールを用いて、ロール温度135℃、線圧50kg/cmの条件で熱接着し、単繊維繊度3デシテックス、目付110g/mの不織布を得た。
【0068】
(実施例5)
単繊維繊度5.0dtex、目付140g/mとなるように吐出量とネットコンベアーの移動速度を調整した以外は、実施例4と同様の条件で実施し、不織布を製造した。
【0069】
(比較例1)
実施例1記載のポリ乳酸樹脂を単成分で押出機により溶融し、紡糸温度を230℃とした以外は実施例2と同様の条件で不織布を製造し、単繊維繊度2.3dtex、目付50g/mのポリ乳酸単成分不織布を得た。
【0070】
(比較例2)
比較例1と同様にポリ乳酸樹脂を単成分で使用し、紡糸温度を230℃とした以外は実施例4と同様の条件で不織布を製造し、単繊維繊度2.8dtex、目付110g/mである不織布を得た。
【0071】
【表1】

【0072】
得られた長繊維不織布の特性は表1に示したとおりであるが、実施例1〜5の不織布はいずれも脂肪族ポリエステルであるポリ(L−乳酸)樹脂を含んでいるにも関わらず、引張強力、伸度、引裂強力とも優れた特性を示し、前記式(I)および(II)を満たすものであり、ドレーン用フィルターとして優れた特性を示すものであった。
これに対し、比較例1、2の不織布は力学特性が劣ったものであり、ドレーン用フィルターとして好ましい特性を有するものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性フィラメント不織布からなるドレーン用フィルターであって、該不織布が、脂肪族ポリエステルとポリアミドとのブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントを含むものであることを特徴とするドレーン用フィルター。
【請求項2】
前記ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントの単繊維繊度が1〜8デシテックスであって、前記不織布の目付が20〜200g/mであり、かつ、該不織布の目付、引張強度、破断伸度および引裂強力が次式(I)及び(II)を満たすことを特徴とする請求項1記載のドレーン用フィルター。
200≧Y×Z/X≧80・・・・・・(I)
T/X ≧ 0.9 ・・・・・・・・(II)
ただし、X:不織布目付(g/m)、Y:不織布の引張強力(N/5cm)、Z:不織布の引張伸度(%) T:不織布の引裂強力
【請求項3】
透水係数が1.0×10−1cm/秒以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のドレーン用フィルター。
【請求項4】
前記ブレンドポリマーの脂肪族ポリエステル:ポリアミドの重量比率が50:50〜95:5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドレーン用フィルター。
【請求項5】
前記ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントの断面において、ポリアミド成分が平均単繊維繊度1×10−7〜1×10−3デシテックスで微分散していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のドレーン用フィルター。
【請求項6】
前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であり、前記ポリアミドがナイロン6であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のドレーン用フィルター。
【請求項7】
前記不織布を構成する熱可塑性フィラメント同士が熱接着されており、該熱接着が不織布の全面積に対して5〜50%の範囲で部分的になされてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のドレーン用フィルター。

【公開番号】特開2008−14098(P2008−14098A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188940(P2006−188940)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】