説明

ドーナツシュガー及びその製造方法

【課題】「泣き」及び付着感を改善したドーナツシュガー及びその製造方法及びこのドーナツシュガーを使用した食品を提供すること。
【解決手段】300μm以下150μmを超える画分と150μm以下の画分との比が3:7〜5:5である粒度構成を有する粉末糖類を油脂で被覆したドーナツシュガーである。また、前記ドーナツシュガーを使用した食品である。また、粒度の異なる粉末糖類を混合し、該混合物に油脂を混合し、さらに必要に応じて澱粉などの副資材を混合した後、冷却することを特徴とする請求項1に記載のドーナツシュガーの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーナツシュガー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツシュガーは、ドーナツ類、パン類又は菓子類などの表面にふりかけてその外観や風味を改善するために使用されている。
ドーナツシュガーは粉末糖類を主原料とするため、吸湿性が強く時間が経過するにしたがって水飴状になる「泣き」といわれる現象を起こし商品価値を損なうという問題点があった。
この「泣き」を改善するため、以下のように様々な提案がされている。
(1)融点の異なる2種類以上の油脂の不均一な混合物の層を有する粉末糖類を主成分として、該粉末糖類100質量部に対し該混合物が1〜15質量部存在するドーナツシュガー(例えば特許文献1参照)。
(2)芯物質としての糖類粉状体と、融点40℃以上の脂質粉状体とを含む被覆粉末糖類であって、芯物質としての前記糖類粉状体に被覆剤として前記脂質粉状体を接触・衝突させて前記糖類粉状体の表面に脂質粉状体を付着・被覆してなる吸湿性の改善された粉末糖類(例えば特許文献2参照)。
(3)100質量部の粉末糖類と液化した1〜15質量部の油脂とを混合し、次いで風温20〜40℃の気流式冷却機によって冷却することを特徴とするドーナツシュガーの製造方法(例えば特許文献3参照)。
(4)芯物質としての糖類粉状体の表面に、融点が常温よりも高い油脂よりなる脂質層が形成され、この脂質層の表面に脂質の外層が形成されてなる粉末糖類(例えば特許文献4参照)。
(5)ぶどう糖、デキストリン、および融点が各々45〜55℃と55〜65℃の異なる範囲にあり、かつ両者の融点の差が5℃以上である2種の油脂の均一混合物から成るコーティングシュガー組成物(例えば特許文献5参照)。
(6)粉糖類の粒子表面に、融点が50℃以上の油脂からなる被覆層を設け、かつ該被覆層の外層部に、25℃において液状を呈する油脂を付着させたことを特徴とする被覆粉糖類(例えば特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−98354号公報
【特許文献2】特開昭63−313599号公報
【特許文献3】特開平3−58748号公報
【特許文献4】特開平3−277237号公報
【特許文献5】特開平9−201166号公報
【特許文献6】特開平11−56290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、「泣き」及び付着感を改善したドーナツシュガー及びその製造方法及びこのドーナツシュガーを使用した食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、粉末糖類の粒度に着目し、従来提案されてきた粉末糖類と併用する油脂類の融点や被覆方法ではなく、粉末糖類の粒度を調整する方法により「泣き」及び付着感を改善したドーナツシュガーを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、300μm以下150μmを超える画分と150μm以下の画分との比が3:7〜5:5である粒度構成を有する粉末糖類を油脂で被覆したドーナツシュガーである。
また、前記ドーナツシュガーを使用した食品である。
また、粒度の異なる粉末糖類を混合し、該混合物に油脂を混合し、さらに必要に応じて澱粉などの副資材を混合することを特徴とする請求項1に記載のドーナツシュガーの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のドーナツシュガーは、「泣き」防止及び付着感に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用する粉末糖類は、粒度が300μm以下150μmを超える画分と150μm以下の画分との比が3:7〜5:5であればその種類は特に限定されない。
例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラフィノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、多糖類を分解して得られるデキストリン、グリコーゲン、イヌリン、セルロース、ペクチン、植物ガム等の多糖類などを挙げることができる。
本発明において300μm以下150μmを超える画分とは、目開き300μmの篩を通過して目開き150μmの篩上に残る画分をいい、150μm以下の画分とは、目開き150μmの篩を通過する画分をいう。
前記画分の比が3:7〜5:5とは、300μm以下150μmを超える画分(以下粗画分ともいう)が30質量部で150μm以下の画分(以下細画分ともいう)が70質量部の粒度構成から粗画分の比率が増加して粗画分が50質量部で細画分が50質量部である範囲をいう。
よって、本発明の粉末糖類は、粗画分と細画分にそれぞれ粒度分布のピークを持つ。
粗画分の比率が30質量部未満であると付着感は良いが、残存性に劣り、粗画分の比率が50質量部を超えると残存性は向上するが付着感が劣る。
従来のドーナツシュガーでは粉末糖類は、粒度分布の幅が狭いことが好ましいとされてきた。
例えば、前記特許文献1及び特許文献3には、「粉末糖類の粒度については特に制限はないが、好ましくは200〜10メッシュの範囲でよい。又粒度分布はできるだけ狭く調整したものが均一なドーナツシュガーを得るために好ましい。」との記載がある。
また、前記特許文献4には、「糖類粉状体の粒度については200〜10メッシュの範囲のものが好ましく、また、粒度分布はできるだけ狭く調整した均一のものが望ましい。」との記載がある。
本願発明者らは、このような技術常識にとらわれず、粒度分布において2つのピークをもつ粉末糖類を使用すれば「泣き」を防止でき付着感も向上することを見出したのである。
【0008】
本発明において使用する油脂は従来のドーナツシュガーに使用されている油脂であれば特に限定なく使用することができ、好ましくは融点の異なった2種類の油脂の使用である。
高融点油脂として、融点が55℃以上65℃以下の油脂、低融点油脂としては30℃以上40℃以下の油脂を使用することがさらに好ましい。
2種類の異なる融点の油脂を使用することにより「泣き」の防止と付着性及び口溶けを向上させることができる。
油脂の使用量は、粉末糖類100質量部に対し6質量部以上12質量部以下であれば粉糖類を十分に被覆できるので好ましい。
また、高融点油脂と低融点油脂の比率は、高融点油脂100質量部に対し50質量部以上200質量部以下が「泣き」の防止と付着性の向上の面で好ましい。
【0009】
本発明のドーナツシュガーの製造方法は、従来の油脂で被覆するドーナツシュガーの製造方法であれば特に限定なく使用できる。
一例として、以下の方法を挙げることができる。
(1)粒度の異なる2種の糖類を混合機に投入し混合する。
このとき混合機を加温して糖類を60℃程度まで温める。
(2)融点の異なる油脂を加熱溶解したものを前記混合機に投入し混合する。
高融点油脂の融点が55℃以上65℃以下である油脂を使用する場合は70℃程度にして加熱溶解しておく。
(3)必要に応じて澱粉その他の資材を投入し混合する。
(4)混合機から取り出す。
(5)取り出したシュガーを気流式冷却機により冷却し製品とする。もしくは、8時間以上静置することで自然冷却したものを、20メッシュ程度の篩を通し製品とする。
【0010】
本発明のドーナツシュガーには、必要に応じて従来のドーナツシュガーに使用されている副資材を使用することができる。
例えば、澱粉、コーヒー粉末、粉末調味料、ココアパウダー、きな粉、果汁粉末、香料、シナモン、粉末香辛料等を挙げることができる。
本発明のドーナツシュガーは、使用方法に特に限定はなく、従来のドーナツシュガーと同様に使用できる。
本発明のドーナツシュガーが使用できる食品として、例えば、ドーナツ類、パン類、クッキー、スポンジケーキなどの菓子類、米菓子類などを挙げることができる。
【実施例】
【0011】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜3、比較例1〜2]粉末糖類の粒度構成
(1)表1に示す粒度の異なる2種の糖類をケミカルミキサーに投入し約800rpmの回転数で5分間混合して60℃程度まで温め混合した。
尚、ケミカルミキサーには電気ヒーターを設置し、ミキサーを温めておき、混合中も温めた状態で使用した。
(2)表1に示す融点60℃の硬化油と融点34℃のショートニングを予め70℃に加熱して溶解しておき、前記ケミカルミキサーに投入し加温した状態で約800rpmの回転数で5分間混合し粉糖に油脂を被覆した。
表中、高融点油脂は融点60℃の硬化油、低融点油脂は融点34℃のショートニングである。
(3)ケミカルミキサーへの加温を止めて、表1に示す量のホワイトコーンスターチを投入し約800rpmの回転数で5分間混合した。
(4)ケミカルミキサーから前記油脂被覆した粉糖を袋に取り出し放冷して粗熱がとれた後に封をした。
(5)16時間静置後、20メッシュの篩を通しドーナツシュガーを得た。
【0012】
[付着量の試験]
付着量の測定は以下の方法で行った。
(1)ポリエチレン製の袋にドーナツシュガーを100g入れた。
(2)フライ後粗熱をとり芯温が35℃程度となったイーストドーナツ(約45gのリングドーナツ)を1個袋に入れた。
(3)袋を閉じ10回振り、イーストドーナツにドーナツシュガーをまぶした。
(4)袋に残ったドーナツシュガーの質量を測定した。
(5)前記袋に残ったドーナツシュガーの質量より付着した質量を算出した。
(6)これを5個のイーストドーナツについて行い、イーストドーナツ1個当りのドーナツシュガー付着量の平均値を算出した。
結果を表2に示す。
【0013】
[付着感の評価試験]
ドーナツシュガーの付着感の評価を以下の方法で行った。
前記付着量の試験によりドーナツシュガーを付着させたイーストドーナツのドーナツシュガーの見た目の付着感を10名のパネラーにより以下の基準で評価した。
5点 ドーナツの表面が見えない程、見た目が白く沢山シュガーがついて見え非常に良い
4点 ドーナツの表面が僅かに見えるが、見た目が白くシュガーが多くついて見え良い
3点 ドーナツの表面が適度に見える状態で、白っぽく見えて普通
2点
ドーナツの表面が目立ち、白っぽさが少なく見え劣る
1点
ドーナツがシュガーで殆ど被覆されておらず、白色がまばらであり非常に劣る
結果を10名の評価の平均点として表2に示す。
【0014】
[泣きの評価試験]
ドーナツシュガーの「泣き」の評価を以下の方法で行った。
前記付着量の試験によりドーナツシュガーを付着させたイーストドーナツをポリエチレン製の袋に入れて密封した。袋に入れたイーストドーナツを35℃、相対湿度70%の発酵室で16時間保管したものを、10名のパネラーにより以下の基準でシュガーの残存性(「泣き」にくさ)を目視で判定した。
5点 シュガーの潮解が少なく、見た目の白さも残っており非常に良い
4点 シュガーの潮解が比較的少なく、見た目の白さも残っており良い
3点 シュガーの潮解があり、見た目の白さが僅かに残っており普通
2点 シュガーが潮解し水飴状となり、ドーナツ表面のべたつきがあり劣る
1点 シュガーが完全に潮解し、ドーナツ表面のべたつきがあり、シュガーの白さがなく非常に劣る
結果を10名の評価の平均点として表2に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
上記試験により粗画分と細画分との比が3:7〜5:5であるものは、シュガーの付着感、残存性、泣きにくさを総合的に評価した場合、ドーナツシュガーとして優れていることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
300μm以下150μmを超える画分と150μm以下の画分との比が3:7〜5:5である粒度構成を有する粉末糖類を油脂で被覆したドーナツシュガー。
【請求項2】
請求項1に記載のドーナツシュガーを使用した食品。
【請求項3】
粒度の異なる粉末糖類を混合し、該混合物に油脂を混合し、さらに必要に応じて澱粉などの副資材を混合した後、冷却することを特徴とする請求項1に記載のドーナツシュガーの製造方法。


【公開番号】特開2011−87491(P2011−87491A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242319(P2009−242319)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】