説明

ドーパミン神経伝達のモジュレーターとしての3,5−二置換フェニル−ピペリジン

本発明は、中枢神経系における障害に対して治療効果を有する化合物、具体的には式(1)の置換フェニルピペリジン(式中、Rは本明細書に定義する通りである)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なドーパミン神経伝達のモジュレーターに関し、さらに詳細には新規な二置換フェニル−ピペリジン、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーパミンは、脳における神経伝達物質である。1950年代のこの発見以来、脳におけるドーパミンの機能は熱心に調査されてきた。現在までに、ドーパミンは、運動、認知、感覚、情緒、及び自律機能(例えば、食欲、体温、睡眠の調節)を含めて、いくつかの脳機能面において必要不可欠であることが確立している。したがって、ドーパミン作動性機能の調節は、脳機能に影響を及ぼす広範囲の障害の治療において有益となり得る。実際に、中枢ドーパミン受容体において直接又は間接に作用する薬物は、神経学的障害及び精神障害、例えばパーキンソン病及び統合失調症の治療で一般的に使用されている。しかし、現在入手可能なドーパミン作動性薬剤には、重度な副作用がある場合がある。例えば、ドーパミンアンタゴニストは、運動副作用(錐体外路系副作用;EPS)と精神副作用(例えば、快感消失、不快、及び認知障害)の両方を誘発することが知られており、ドーパミンアゴニストは、ジスキネジア及び精神病を誘発することが知られている(Goodman and Gilman’s the Pharmacological Basis of Therapeutics,9th ed./McGraw−Hill,USA.Chapter 18,p407−416,Chapter 22,p509−512,p515−516)。
【0003】
ドーパミン作動性薬剤の有効性を高め、副作用を低減するために多くの研究者によって採用されている手法は、特定のドーパミン受容体サブタイプに選択性を有し、又は局所選択性を有する新規ドーパミン受容体リガンドを開発することである。脳のドーパミン系を介して作用するさらに別のクラスの化合物は、神経学的障害と精神障害の治療に有用であることが判明しているドーパミン作動性安定剤である(A.Ekesbo,PhD Thesis,Uppsala University,Sweden:ドーパミン作動性変性の機能的影響;新規ドーパミン作動系安定剤を用いた臨床/実験研究(Functional consequences of dopaminergic degeneration;clinical and experimental studies using a novel stabilizer of dopaminergic systems):Ekesboら、(−)−OSU6162はサルパーキンソン病モデルにおいてレボドパ誘発性ジスキネジアを抑制する((−)−OSU6162 inhibits levodopa−induced dyskinesias In a monkey model of Parkinson’s disease,Neuroreport,8,2567,1997;Tedroffら、ハンチントン病患者における(−)−OSU6162後の運動機能の長期的改善(Long− lasting improvement in motor function following(−)−OSU6162 in a patient with Huntington’s disease)、Neurology,22;53:1605−6,1999;Gefvert O.ら、(−)−OSU6162は、単回投与後の統合失調症治療作用の速やかな発現を誘発する((−)−OSU6162 induces a rapid onset of antipsychotic effect after a single dose.)、二重盲検プラセボ対照パイロット研究(A double−blind placebo−controlled pilot study)、Scandinavian Society for Psychopharmacology,41st Annual Meeting,Copenhagen Denmark Nordic Journal of Psychiatry 54/2 93−94,April 2000:Carlssonら、Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.,41,237,2001;Carlssonら、Current Medicinal Chemistry,11,267,2004)。
【0004】
ドーパミン−セロトニン系安定剤及び部分DA D受容体アゴニストと呼ばれる別のドーパミン作動性化合物は、最近発売された統合失調症治療薬化合物アリピプラゾールである(Burrisら、Pharm.Exp.Ther,vol.302,381,2002)。さらに、ドーパミン作動性安定剤と呼ばれる化合物は、国際公開第01/46145号、国際公開第01/46146号、Petterssonら、ACR16の開発、新しいクラスのドーパミン作動性安定剤(The development of ACR16.A new class of dopaminergic stabilizers)、Society for Neuroscience 32nd Annual Meeting、Abstract 2002,vol.28 part 1 1028、Orlando USA 2002;及びNybergら、新規ドーパミン安定剤ACR16の有効性及び忍容性、統合失調症患者における無作為化プラセボ対照上乗せ試験(Efficacy and tolerability of the new dopamine stabiliser ACR16 a randomised placebo−controlled add−on study in patients with schizophrenia)、12th BIENNIAL WINTER WORKSHOP ON SCHIZOPHRENIA,7−13 February 2004,Davos,Switzerlandに記載されている。
【0005】
国際公開第01/46145号、国際公開第01/46146号、Petterssonら、2002に記載されているドーパミン作動性安定剤に特徴的な典型的薬理作用は、1)哺乳類の脳の上行ドーパミン作動性投射路の端末領域におけるドーパミンの代謝回転の上昇;2)他の点では無処置のラットにおいて行動作用がなく、又は弱くしかないこと;及び3)ラットにおける覚醒剤又は精神異常発現性化合物によって誘発される行動作用の抑制に要約することができる。本発明では、これをドーパミン作動性安定剤プロファイルと呼ぶ。
【0006】
神経学的障害及び精神障害(特に、統合失調症治療薬及び抗うつ薬化合物)の治療で使用されている薬剤として有効な化合物の一部は、一般的にhERGチャネル(ヒトether−a−go−go関連遺伝子によってコードされた電位依存性カリウムチャネル)又はIKr(急速活性化遅延整流性カリウム電流)チャネルと呼ばれる心細胞の電気再分極に関与する心カリウムチャネルに望ましくない効果を及ぼす場合もあることが知られている。これらのチャネルを遮断する薬物は、心室性不整脈(トルサードドポワント、TdP)を誘発し、それ以外には健常な被験者において突然死を招く恐れがある。薬物が心再分極に望ましくない効果を及ぼすかもしれない兆候は、TdPの危険の代用マーカーとみなされる心電図のQT間隔の延長によって分かる。いくつかの薬物は、心不整脈に関連する許容できない副作用のため市場から引き上げられた(J.Cardiovasc.Electrophysiol.15,475,2004.;Eur.J.Pharm.,450,37,2002.;Cardiovascular Research,58,32,2003)。
【0007】
本発明は、症状がドーパミン作動性機能によって影響を受ける可能性があるCNS障害の哺乳類の治療であって、ドーパミン作動性安定剤プロファイルを有する新しいタイプの化合物の所定量を前記哺乳類に投与することを含む治療の分野に関する。さらに、化合物は、心カリウムチャネルにおいて低親和性を示し、重篤な心副作用の危険を低減する。
【0008】
先行技術に関する記載
置換4−(フェニル)−N−アルキル−ピペリジンのクラスに属する化合物は、以前に報告されている。これらの化合物の中には、CNSにおいて不活性であるものもあれば、セロトニン作動性薬理学的プロファイル、又は混合されたセロトニン作動性/ドーパミン作動性薬理学的プロファイルを示すものもあり、ドーパミン受容体に対して高親和性を有する完全又は部分ドーパミン受容体アゴニスト若しくはアンタゴニストであるものもある。
【0009】
いくつかの4−フェニルピペリジン誘導体は周知である。欧州特許第0369887号は、不安治療用の置換4−(メタ−トリフルオロメチルフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジンを開示する。国際公開第00/03713号は、置換1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジンを使用することによって、統合失調症及び他のドーパミン系機能障害の治療方法を開示する。
【0010】
Glennonら(米国特許第6,057,371号)は、シグマ受容体関連CNS障害の治療方法であって、アリール環において無置換又は一置換である、アリールピペリジンを含めて、アリールアミンの投与を含む方法を特許請求している。化合物は、シグマ受容体に対して高い結合親和性を示す。国際公開第91/095954号には、「高親和性」という用語は、Weberら、Prot.Natl.Acad.Sci.(USA)83:8784−8788)に記載されているH−DTGに対するアッセイで100nM未満のIC50を示す化合物を意味する意図されていることが記載されている。具体的には、国際公開第91/095954号は、「ある種のフェニルアルキル−アミン、アミノテトラリン、ピペラジン、ピペリジン、及び関連誘導体は、シグマ受容体に対して高結合性を有し、予想外なことには、PCP及びDA受容体には低結合性を有するという発見」に関連する組成物を開示する(11頁、33〜36行を参照のこと)。
【0011】
国際公開第91/095954号及び国際公開第93/00313号は共に、化合物がシグマ受容体に対して高結合親和性を有することを必要とし、化合物がシグマ受容体親和性がない時に薬理活性があることは開示していない。さらに、統合失調症患者においてシグマ受容体リガンドの特性を調査する臨床試験は、抗精神病活性についても、任意の他のCNS障害における活性についても証拠をもたらしていない。最も広範に試験された選択的シグマ受容体アンタゴニストの2つであるBW234U(Rimcazole)とBMY14802は共に、統合失調症患者での臨床試験に失敗した(Borisonら、1991、Psychopharmacol Bull 27(2):103−106;Gewirtzら、1994、Neuropsychopharmacology 10:37−40)。
【0012】
国際公開第97/23216号は、次式の4−置換ピペリジン類似体:
【化1】


(式中、R5は、OHから選択されてもよく、Ar1は、置換されていてもよい)を開示する。このような化合物を、とりわけNMDA受容体サブタイプの選択的遮断によってCNS外傷、精神病、及び神経変性障害を治療する上で使用する。
【0013】
米国特許第4485109号は、精神療法剤、具体的には抗うつ薬として使用されている次式の化合物:
【化2】


を開示する。
【0014】
欧州特許第1177792号は、とりわけ、具体的にはD4受容体リガンドとしてドーパミン作動性活性を有し、新奇性追求障害の治療に有用な次の構造をもつ化合物:
【化3】


を開示する。
【0015】
国際公開第98/51668号は、モノアミン神経伝達物質、すなわちドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリン、再取り込み阻害剤としての特性を有する次式の置換ピペリジン誘導体:
【化4】


を開示する。該化合物は、パーキンソニズム、うつ病、仮性認知症、肥満症、ナルコレプシー、薬物嗜癖及び/若しくは乱用、注意欠陥多動性障害、老年痴呆、又は記憶機能障害の治療に有用であるといわれている。
【0016】
さらに、式II(国際公開第01/46145号)及び式III(国際公開第01/46146号)の化合物は、ドーパミン作動性安定剤特性を有することが知られている。
【化5】

【0017】
式Iでは、
Xは、とりわけCHであり、Rは、OSOCF、OSOCH、SOR、SO、COR、CN、NO、CONHR、CF(ただし、XはCH又はCである)、F、CI、Br、I(式中、Rは、下記に指定する通りである)からなる群から選択され、
は、C〜Cアルキル、アリル、CHSCH、CHCHOCH、CHCHCHF、CHCF、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、又は
−(CH)−R(式中、Rは、下記に指定する通りである)からなる群から選択され、
は、C〜Cアルキル、CF、又はN(Rからなる群から選択され、
は、C〜Cシクロアルキル、2−テトラヒドロフラン、3−テトラヒドロフランからなる群から選択される。
【0018】
式IIでは、
Xは、とりわけCHであり、Rは、OSOCF、OSOCH、SOR、SO、COR、CN、NO、CONHR、CF、F、CI、Br、I(式中、Rは、下記に指定する通りである)、3−チオフェン、2−チオフェン、3−フラン、2−フランからなる群から選択され、
は、F、CI、Br、I、CN、CF、CH、OCH、OH、NHからなる群から選択され、
及びRは独立に、H又はC〜Cアルキルであり、
は、C〜Cアルキル、アリル、CHSCH、CHCHOCH、CHCHCHF、CHCF、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、又は−(CH)−Rからなる群から選択され、
は、C〜Cシクロアルキル、2−テトラヒドロフラン、3−テトラヒドロフランからなる群から選択され、
は、C〜Cアルキル、CF、又はN(Rからなる群から選択される。
【0019】
しかし、国際公開第01/46145号(式I)も国際公開第01/46146号(式II)も、本発明で開示されたフェニル環における3,5二置換の薬理データを開示していない。下記の構造は、国際公開第01/46146号の合成例として知られている(実施例44 4−[3−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル−]1−プロピルピペリジン)。
【化6】


さらに、国際公開第01/46145号(式I)にも国際公開第01/46146号(式II)にも、強力なドーパミン作動性安定剤を得る方法についての指導はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
新規な薬剤として有効な化合物、特に中枢神経系における障害の治療に有用な化合物で、ドーパミン作動性安定剤として増大させた効力を有する化合物が依然として求められている。このような薬剤として有効な化合物が、副作用の性質を、具体的には心不整脈に関して低減させていることも望ましい。
【0021】
本発明の目的は、新規な薬剤として有効な化合物、特に中枢神経系における障害の治療に有用な化合物であって、ドーパミン作動性安定剤として増大させた効力を有し(表1、第1欄を参照のこと)、hERGチャネルを遮断する性質が少ない(表1、第2欄を参照のこと)化合物を提供することである。これらの化合物は、副作用、具体的には心副作用を低減させたことに関して特に利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
驚くべきことに、本発明の3,5−二置換は、代替の置換パターン(例えば、4位がハロゲンである3,4−二置換)又は一置換(3位)に比べて効力及び有効性を改善する。さらに、本発明の化合物は、従来技術の化合物に比べて、hERGチャネルに対して低い親和性を示す。
【0023】
本発明による物質は、ラットにおいて生物学的に試験され、脳におけるドーパミン作動系に優先的に作用することが判明した。これらの物質は、脳における生化学的指標にドーパミンアンタゴニストの特徴的な性質を有する効果を及ぼす。しかし、本発明による物質は、広範な用量範囲にわたって自発運動に阻害効果を示さない。さらに、本発明による物質は、特に自発運動活性のベースラインが低い場合、わずかな行動活性化を誘発することができる。しかし、本発明の物質は、覚醒剤及び精神異常発現薬によって誘発される行動活性化を阻害する。
【0024】
本発明による物質は、Rapid ICEアッセイにおいてIC50で測定して、hERGチャネルを阻害する上で低い効力を示す(詳細については、実験のセクションを参照のこと)。これは、ヒトにおいてQT間隔延長及び不整脈の危険が低いことを示唆する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、新規な遊離塩基の形のピペリジン、又は薬剤として許容できる塩、前記化合物を含有する医薬用組成物、並びにドーパミン神経伝達物質である薬剤の製造及び療法における前記化合物の使用に関する。
【0026】
さらに正確には、本発明は、式1のピペリジン化合物:
【化7】


(式中、Rは、C〜Cアルキル、及びアリルからなる群から選択される);及び
その薬剤として許容できる塩に関する。
【0027】
特定の実施形態では、Rは、n−プロピル及びエチルからなる群から選択される。
【0028】
本発明のさらに別の態様は、治療上有効量の式1の化合物又はその薬剤として許容できる塩を中枢神経系障害のヒトを含めて、哺乳類に投与することによって、中枢神経系障害を治療する方法に関する。さらに、本発明は、治療上有効量の式1の化合物又はその薬剤として許容できる塩を前記障害のヒトを含めて、哺乳類に投与することによって、本明細書に列挙する任意の障害を治療する方法に関する。
【0029】
このような化合物のアリール環上に2つの置換基が一方は3位(メタ1)に、他方は5位(メタ2)に含まれると、ドーパミン神経伝達を調節する際にその効力が増大する。一置換又は3,4−二置換化合物に比べて、これらの3,5−二置換化合物の効力の前例のない増大は、表1に例示されている。
【0030】
さらに、本発明の3,5二置換は、これらの化合物のhERGカリウムチャネルへの効果を測定して(Rapid Ice)、心不整脈に関する副作用を低減することが分かっている。このような置換化合物の副作用の前例のない低減は、表1に例示されている。
【0031】
表1:本発明の化合物の、アンフェタミン誘発性自発運動亢進の低減(推定ED50値)、及びhERGイオンチャネルに対する親和性(IC50値)への効果。従来技術の比較例も含まれる。方法及び統計的計算については、添付の試験を参照のこと。
【0032】
【表1】


*本発明の化合物の、アンフェタミン誘発性自発運動亢進の低減への効果。従来技術の比較例も含まれる。方法及び統計的計算については、添付の試験を参照のこと。
【0033】
重要な観察は、フェニル環のメタ位1及びメタ位2にF及びSOCHの置換基が存在すると、一置換又は3,4二置換に比べて、ドーパミン作動性安定剤の有効性及び効力が改善される(例えば、国際公開第01/46145号の実施例6、及び国際公開第01/46146号の実施例9)が、hERGチャネルに対する親和性も低減する。このような結果は、通則として予想されることはなかったであろう。
【0034】
本発明の一目的は、新規な治療用化合物、さらに正確には、ヒトの脳を含めて、哺乳類の脳におけるドーパミン作動系の調節用の化合物を提供することである。好ましくは、このような化合物は、心カリウムチャネル阻害に関する副作用の低減をもたらす。
【0035】
本発明の別の目的は、経口投与後に治療効果を有する化合物を提供することである。
【0036】
好ましい置換構造は、
1−エチル−4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]ピペリジン
4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]−1−プロピルピペリジン
1−アリル−4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]ピペリジン
である。
【0037】
本発明による化合物及び組成物は、ドーパミン調節特性を有し、精神障害と神経学的疾患とを含めて、多数の中枢神経系障害を治療するのに有用である。特に、直接的又は間接的な原因のため、化合物及びその医薬用組成物をドーパミン作動系機能障害であるCNS障害の治療で使用することができる。
【0038】
本発明による化合物及び組成物を使用して、統合失調症及び統合失調症様障害、並びに薬物誘発性の精神病性障害及び双極性障害を含めて、すべての形の精神病を改善することができる。これらを、医原性及び非医原性の精神病及び幻覚症からなる群から選択された状態の治療で使用することもできる。
【0039】
うつ病及び強迫性疾患を含めて、気分障害及び不安障害を、本発明による化合物及び組成物で治療することもできる。
【0040】
ドーパミン作動系に調節効果を及ぼす化合物は、認知機能を改善するために、また加齢性、神経変性(例えば、認知症及び加齢性認知障害)、及び発達性(自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジルドラトゥーレット症候群など)の障害に関連する情緒障害の治療で、並びに脳傷害後に使用することもできる。このような脳傷害は、外傷性、炎症性、感染性、腫瘍性、血管性、低酸素性、又は代謝性の原因によって、或いは乱用物質、薬剤化合物、及び環境毒素からなる群から選択された外因性化学物質に対する毒性反応によって誘発される可能性がある。化合物及びその薬剤組成物は、睡眠障害、性的障害、摂食障害、肥満症、及び頭痛、並びに筋緊張亢進を特徴とする状態における他の疼痛からなる群から選択された状態の治療に有用である。これらを、アルツハイマー病又は関連認知症障害の治療で使用することもできる。
【0041】
本発明による化合物及び組成物を、通常は乳児期、幼児期、又は青年期に最初に診断される行動障害、及び衝動制御障害で使用することもできる。
【0042】
これらは、物質乱用障害、及び食物の誤用を特徴とする障害を治療するために使用することもできる。
【0043】
神経学的指標としては、化合物及びその組成物を使用して、パーキンソン病、(L−DOPA誘発性ジスキネジアを含めて)ジスキネジア、及び関連パーキンソン症候群における精神機能及び運動機能が改善されることが含まれる。これらを使用して、異なる起源のチック及び振戦を軽減することもできる。さらに、これらを使用して、筋緊張亢進を特徴とする状態における疼痛を緩和することができる。
【0044】
これらを、ハンチントン病、及び他の運動障害、並びに薬物誘発性運動障害の治療で使用することもできる。下肢静止不能及び関連障害、並びにナルコレプシーを、本発明による化合物で治療することもできる。
【0045】
本発明は、上記に示す式1の化合物(式中、Rは、C〜Cアルキル、及びアリルからなる群から選択される)、又はその薬剤として許容できる塩の、中枢神経系障害の治療用の薬剤として有効な製剤の製造における使用にも関する。中枢神経系障害は、上記に記載する障害の1つ又は複数とすることができる。使用の特定の実施形態では、Rは、n−プロピル及びエチルからなる群から選択される。
【0046】
本発明による化合物は、改善された効力を有するドーパミン作動性安定剤プロファイルを示すことが判明している(表1)。これらは、脳における生化学的指標にドーパミンアンタゴニストの特徴的な性質を有する効果を及ぼし、例えばドーパミン代謝物の濃度上昇を生じる。ラットにおいて、実施例1では、線条体において3,4ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)が、100μmol/kg s.c.において対照の318%に上昇する。実施例2では、DOPACが、100μmol/kg s.c.において292%に上昇する。
【0047】
本発明の化合物は、広範な用量範囲にわたって自発運動に効果を示さない(1〜100μmol/kg s.c)。
【0048】
場合によっては、特にベースライン活性が低い場合、これらはわずかな行動活性化を誘発することができる。行動活性化は限定され、直接的又は間接的ドーパミンアゴニストによって誘発される活性が大幅に上昇することにはならない。一方、好ましい物質は、直接的又は間接的ドーパミン作動性アゴニスト、すなわちd−アンフェタミン及び同類物によって誘発される活性の上昇を低減する(表1)。
【0049】
したがって、本発明の化合物は、式1及びIIの化合物に比べて、改善又は保持された効力を有するドーパミン作動性安定剤プロファイルを示す(表1)。さらに、特定の置換パターンは、HERGチャネルを阻害する上で効力を低減させた。
【0050】
非常に様々なCNS機能におけるドーパミンの関与、及びドーパミン系に作用する現在入手可能な薬剤の臨床上の欠点を考慮すると、本発明で提供された新規なクラスのドーパミン作動性モジュレーターは、CNSの機能障害に関連する複数の障害の治療において、有効性、及び副作用の低減の点から、現在知られているドーパミン作動性化合物より優れていることを実証することができる。
【0051】
本発明の化合物は、ラット肝臓ミクロソームにおいて、15分の代謝回転として測定された高代謝安定性(実施例1 5%、実施例2 0%)、及びラットにおいて、実施例2で例示された高経口バイオアベイラビリティ(約85%)を示すことも判明している。
【0052】
したがって、これらの化合物は、経口投与薬剤の調製に適している。従来技術において、行動、及び脳におけるドーパミン系にこのような効果を及ぼす化合物を得る方法についての指導はない。
【0053】
薬理
CNSにおけるドーパミン作動性神経伝達は、精神疾患及び神経学的疾患において妨害されているという証拠が有効である。多くの場合、例えば統合失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、双極性障害、及び認知症において、ドーパミン受容体においてアンタゴニズム又はアゴニズムに基づく薬物療法は、有用であるが、最適ではない。近年、有効性を改善し、副作用を低減する目的で、ドーパミン受容体サブタイプ(D1、D2、D3、D4、D5)用の新規な選択的化合物を見い出す上で多くの努力がなされてきた。
【0054】
本発明は、ドーパミン系との相互作用に基づく新規な治療薬のための別の原理を提供する。本発明は、その主要な特性として、脳におけるドーパミン作動系に安定化効果を及ぼす化合物を提供する。
【0055】
本発明で使用される動物モデルの説明
本発明による化合物は、ドーパミンD2受容体におけるアンタゴニストと同様な脳神経化学に効果を及ぼす(すなわち、皮質、線条体、及び辺縁系の脳領域におけるドーパミン代謝物DOPACの用量依存的増大)。本発明による化合物は、自発運動に阻害効果を全く示さず、又は限定してしか示さない。いくつかの条件下で、行動活性化を誘発することができる。行動活性化は限定され、直接的又は間接的ドーパミン受容体アゴニストによって誘発される活性が大幅に上昇することにはならない。しかし、好ましい物質は、間接的ドーパミン作動性アゴニストであるd−アンフェタミンによって誘発される活性の上昇を低減する。d−アンフェタミンを用いた治療後の活性の上昇は、ドーパミン系亢進の標準モデルである(表1)。このモデルにおいて、ドーパミン作動性神経伝達は、自発運動活性の大幅な上昇をもたらすのに十分に高い用量のd−アンフェタミンを全身投与することによって増大する。この活性亢進をアンタゴナイズする化合物の能力は、ドーパミン作動性安定剤プロファイルの一部分である抗ドーパミン作動性を反映する。さらに、d−アンフェタミン誘発性活性亢進のアンタゴニズムは、抗精神病活性の標準アッセイとして広く使用されている(Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapter 68、p793−795を参照のこと)。
【0056】
抗精神病活性の別の動物モデルは、グルタメートアンタゴニストMK−801の投与に基づく。グルタメートアンタゴニスト(すなわち、NMDAアンタゴニスト)は、ヒトにおいて精神病を誘発し(Psychopharmacology,4th Generation of progress Chapter 101,p.1205 and 1207を参照のこと)、動物において行動異常を誘発する恐れがある。したがって、統合失調症及び精神病状態に影響を及ぼす薬物の能力は、実験的に誘発された低グルタミン酸作動性状態に基づく行動モデルを用いて測定することができる。この研究では、NMDAアンタゴニストMK−801(0.7mg/kg i.p.)を使用して、ラットが異常な多動性行動を示す低グルタミン酸作動性状態を生成した。本発明の化合物は、MK−801によって誘発された行動異常を用量依存的に逆戻りさせる(表2を参照のこと)。
【0057】
脳のドーパミン作動系は、他の伝達物質系と強く相互作用することが知られている(Psychopharmacology、4th Generation of progress、Chapter 101、pages 1208−1209を参照のこと)。このような相互作用によって、グルタメートアンタゴニストMK−801によって誘発された行動異常へのドーパミン作動性安定剤の強力な効果が説明され得るものの、これらの異常は、主にドーパミン作動性伝達の変化に基づいたものでも、又はそれによって引き起こされたものでもない。
【0058】
表2:MK−801を前投与されたラットにおける、本発明の化合物の自発運動活性への効果(0.7mg/kg、i.p.、試験化合物の前に90分)。試験化合物を投与した直後に、動物を運動性計測器に入れ、投与後30〜60分間、自発運動活性を記録した(回数/30分±SEM)
【0059】
【表2】

【0060】
ドーパミン作動性安定剤の治療用途
主張された本発明は、その主要な特性として、脳におけるドーパミン作動系に安定化効果を及ぼす化合物を提供する。これらの化合物は、症状がドーパミン作動性機能の影響を受ける可能性があるCNS障害を治療する上で有用である。この主張を裏付けるものとしては、下記の参考文献を参照のこと。
*本出願人らは、統合失調症及び精神病を裏付けるものとして、Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapter 26,p.295−301);
*パーキンソン病(Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapter 26,p295,Chapter 1479−1482);
*不安障害(Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapter 21,p.227 and 237,Chapter 111,p.1317−1318 and 1320);
*気分障害(Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapter 80,p.921−928;及び
*物質乱用(Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapter 25,p.283 and 292,Chapter 66,p.759−760,Chapter 147,p.1725(Nisellら、「ラット側坐核における全身性ニコチン誘発性ドーパミン放出は、腹側被蓋野におけるニコチン受容体によって調節される(Systemic Nicotine−Induced Dopamine Release in the Rat Nucleus Accumbens is Regulated by Nicotinic receptors in the Ventral Tegmental Area)」;Synapse(1994)16:36−44も参照のこと)。Chapter 149,p.1745−1747 and 1751−1752)。ヒトによって乱用された薬物は、優先的に自由行動ラットの中脳辺縁系におけるシナプスドーパミン濃度を上昇させる。Di Chiaraら、Proc Natl Acad Sci USA 85、5274、1988。連合学習障害としての薬物嗜癖:側坐核シェル/拡張扁桃体ドーパミンの役割(Drug addiction as a disorder of associative learning.Role of nucleus accumbens shell/extended amygdala dopamine)Ann N.Y.Acad Sci 877,461,1999を記載する。
【0061】
これらの参考文献から分かるように、主張された病変は、ドーパミン作動性神経伝達に関連する疾患として当技術分野で認められている。
【0062】
さらに、ドーパミン作動性神経伝達との薬理学的相互作用は、ドーパミン作動性神経伝達における混乱によって直接引き起こされるとは一般的に考えられていない複数のCNS障害の治療に有用であると広く考えられている。例えば、運動機能においてドーパミンが関与するため、ハンチントン病及び他の運動障害の症状をドーパミン作動性剤で治療することができる(Psychopharmacology 4th Generation of progress,Chapter 26,p.295−301を参照のこと)。同様に、認知障害(Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapters 25,p.292,Chapter 120,p.1417及び1420,Chapter 123,p.1447、1452、及び1455−1457を参照のこと)、自閉症(Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapter 142,p.1653及び1661を参照のこと)、注意欠陥多動性障害(Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapter 141,p.1643及び1649−1650を参照のこと)、性的障害(Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapters 65,p.743−746、並びにChapter 22,p.245及び254を参照のこと)、及び摂食障害(Psychopharmacology 4th Generation of progress Chapters 137,p.1600,Chapter 138,p.1609−1610及び1612を参照のこと)をドーパミン作動性伝達を強化する作用剤で治療できることが知られている。したがって、上記の参考文献は、本発明の化合物がこのような疾患の治療に有用であるはずであるという主張を裏付ける。
【0063】
HERGチャネルの阻害が、致死的不整脈を含めて、重度の心副作用を誘発する恐れがあると広く認識されている(J.Cardiovasc.Electrophysiol.15,475,2004.;Ear.J.Pharm.,450,37,2002.;Cardiovascular Research,58,32,2003)。したがって、新規なCNS薬剤の開発では、HERGチャネルにおいて最小限の親和性を有し、広範な安全域をもたらす化合物が求められている。
【0064】
調製方法
本発明の化合物を、下記のスキーム1で概略するように調製することができる。
しかし、本発明はこれらの方法に限定されない。化合物は、従来技術で構造上関連する化合物について記載した通り調製することもできる。反応は、標準手順1,2に従って、又は実施例で記載した通り実施することができる。本出願で記載した方法の出発材料は、周知であり、又は市販の化学物質から通常の方法で容易に調製することができる。
【0065】
本発明の化合物を代替法、及び場合によってはより好都合な方式で得るために、上記に説明した個々の工程段階を異なる順序で行うことができ、且つ/又は経路全体で、個々の反応を異なる段階で行うことができる(すなわち、様々な中間体から特定の反応に関連する上記のものへの化学転換を行うことができる)ことを当業者は理解するだろう。
【0066】
【化8】


参考文献
1.包括的有機転換:官能基調製の手引き(Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations)
Richard C.Larock,22 October,1999 Wiley−VCH
ISBN:0471190314
2.マーチの応用有機化学:反応、機構、及び構造(March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure)、第5版
Michael B.Smith,Jerry March,January 15,2001 Wiley−Interscience
ISBN:0471585890
【0067】
本明細書では、C〜Cアルキルという用語は、1〜3個の炭素原子を含む任意の異性体のアルキルを意味する。様々な炭素部分は、以下の通り定義される。アルキルは、脂肪族炭化水素基を意味し、メチル、エチル、n−プロピルなどの非分枝の形を包含する。用語「アリル」という用語は、−CH−CH=CH基を意味する。
【0068】
本明細書では、「患者」という用語は、本発明による治療を必要とする個体を意味する。
【0069】
本明細書では、「治療」という用語は、疾患又は状態を治癒又は軽減するための治療と、疾患又は状態の発症を予防するための治療とを意味する。治療は、急性又は慢性の方式で行うことができる。
【0070】
有機酸と無機酸を両方使用して、本発明による化合物の非毒性の薬剤として許容できる酸付加塩を形成することができる。本発明の化合物の適切な酸付加塩としては、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩;脂肪族、脂環式、芳香族、若しくは複素環式カルボン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、サッカリン酸塩、アスコルビン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、ピルビン酸塩、パモ酸塩[すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトアート)]、リン酸塩、酸性リン酸塩、硫酸塩、又は重硫酸塩など、薬剤として許容できる塩で形成されたものが挙げられる。これらの塩は、当技術分野で周知の方法で容易に調製される。本発明の化合物は、例えば水和の形など、溶媒和及び非溶媒和の形で存在できることも理解されたい。
【0071】
本発明による化合物を含有する薬剤組成物は、薬剤製剤の生成又は製剤の投与を容易にするために使用される物質も含むことができる。このような物質は、当業者に周知であり、例えば薬剤として許容できるアジュバント、担体、及び防腐剤とすることができる。
【0072】
臨床業務では、本発明によって使用される化合物は、通常は、遊離塩基又は塩酸塩、乳酸塩、酢酸塩、スルファミン酸塩など、薬剤として許容できる非毒性酸付加塩である活性成分(医薬)を、薬剤として許容できる担体と共に含む薬剤製剤の形で、経口、直腸、経鼻、又は注射投与される。担体は、固体、半固体、又は液状製剤とすることができる。通常は、活性物質は、注射の場合、製剤の0.1〜99重量%、さらに詳細には製剤の0.5〜20重量%を構成し、経口投与に適した製剤の場合、0.2〜50重量%を構成する。
【0073】
経口適用の場合、本発明による化合物を含有する薬剤製剤を用量単位で生成するため、選択された化合物を、例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール;馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、又はアミロペクチンなどのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチンやポリビニル−ピロリジンなどの結合剤、及びステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ワックス、パラフィンなどの滑沢剤など、固体賦形剤と混合し、次いで錠剤に圧縮することができる。コーティングされた錠剤が必要である場合、上述したように調製されたコアに、例えばアラビアゴム、ゼラチン、タルカム、二酸化チタンなどを含有することができる濃縮糖液をコーティングすることができる。或いは、易揮発性有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解させた、当業者に周知のポリマーで、錠剤をコーティングすることができる。異なる活性物質又は異なる量の活性化合物を含有する錠剤を容易に識別するために、これらのコーティングに色素を添加することができる。
【0074】
軟質ゼラチンカプセル剤の製剤では、活性物質を例えば植物油又はポリエチレングリコールと混和することができる。硬質ゼラチンカプセル剤は、錠剤用の上記賦形剤、例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン(例えば、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、又はアミロペクチン)、セルロース誘導体、又はゼラチンを使用した活性物質の顆粒を含有することができる。液体又は半固体の薬物を硬質ゼラチンカプセル剤に充填することもできる。経口投与に適した錠剤及びカプセル剤の処方の例を下記に示す。
【0075】
錠剤I mg/錠剤
化合物 100
ラクトース Ph.Eur 182.75
クロスカルメロースナトリウム 12.0
トウモロコシデンプンペースト(5%w/vペースト)2.25
ステアリン酸マグネシウム 3.0
【0076】
錠剤II mg/錠剤
化合物 50
ラクトース Ph.Eur 223.75
クロスカルメロースナトリウム 6.0
トウモロコシデンプン 15.0
ポリビニルピロリドン(5%w/vペースト)2.25
ステアリン酸マグネシウム 3.0
【0077】
錠剤III mg/錠剤
化合物 1.0
ラクトース Ph.Eur 93.25
クロスカルメロースナトリウム 4.0
トウモロコシデンプンペースト(5%w/vペースト)0.75
ステアリン酸マグネシウム 1.0
【0078】
カプセル剤 mg/カプセル剤
化合物 10
ラクトース Ph.Eur 488.5
マグネシウム 1.5
【0079】
直腸適用の用量単位は、液体又は懸濁液とすることができ、活性物質を中性脂肪塩基との混合物として含む坐剤の形、又は活性物質を植物油若しくはパラフィン油との混合物として含むゼラチン直腸カプセル剤の形で調製することができる。経口適用向けの液状製剤は、シロップ又は懸濁液の形、例えば本明細書に記載する活性物質を約0.2%〜約20重量%含有し、残部は砂糖、及びエタノール、水、グリセロール、及びプロピレングリコールの混合物である液剤とすることができる。場合によっては、このような液状製剤は、着色剤、矯味剤、サッカリン、及び粘稠化剤としてカルボキシメチルセルロース、又は当業者に周知の他の賦形剤を含有することがある。
【0080】
注射による非経口適用向けの液剤は、活性物質の薬剤として許容できる水溶性塩の水溶液、好ましくは0.5%〜約10重量%の濃度の水溶液として調製することができる。これらの液剤は、安定化剤及び/又は緩衝剤も含有することができ、様々な用量単位のアンプルとして好都合に提供することができる。臨床で治療対象の患者への使用及び投与は、当業者には容易に明らかであろう。
【0081】
鼻腔内投与又は吸入投与の場合、本発明の化合物を液剤、乾燥粉末、又は懸濁剤の形で送達することができる。投与は、患者が圧迫し、又はポンプで送り込むポンプスプレー容器によって、或いは適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切な気体を用いて、加圧容器又はネブライザーからエアゾールスプレーを表出させることによって行うことができる。本発明の化合物を、担体物質(例えば、サッカリド)と組み合わせた微細化粉剤、又はマイクロスフェアとして、乾燥粉末吸入器で投与することもできる。吸入器、ポンプスプレー、又はエアゾールスプレーは、単回又は複数回の用量とすることができる。用量は、計量された量の活性化合物を送達させる弁で制御することができる。
【0082】
本発明の化合物は、放出制御製剤として投与することもできる。化合物は、一定の薬理活性を望ましい時間維持するのに必要とされる速度で放出される。このような剤形は、所定の時間中、体に薬物を供給し、したがって薬物レベルを、通常の非制御製剤より長い時間、治療域に維持する。化合物は、活性化合物の放出を目的とする放出制御製剤に処方することもできる。例えば、製剤のpH感受性によって、化合物の放出を消化器系の特定の領域に限定することができる。このような製剤は、当業者に周知である。
【0083】
治療対象の障害及び患者、並びに投与経路に応じて、組成物を様々な用量で投与することができる。投与は、効力と吸収性の関係、並びに投与頻度及び経路によっても異なる。このような用量を、1日1回、2回、3回、又はそれ以上投与することができる。本発明の化合物を、被験者に0.01mg〜500mg/体重(kg)/日の用量で投与することができるものの、治療対象の被験者の体重、性別、及び病変、治療対象の病状、並びに選択された特定の投与経路に応じて、必ず変更が行われる。しかし、ヒトにおける疾患治療のためには、0.1mg〜10mg/体重(kg)/日の範囲の用量レベルの単回投与又は分割投与を用いることが最も望ましい。或いは、0.1nM〜10μMの血中化合物濃度が得られるような用量レベルである。
【0084】
本明細書に記載の化学式又は名称はいずれも、すべての立体異性体、光学異性体、及びラセミ化合物、並びにその混合物を任意の比で包含するものである。様々な異性体は、当業者に周知の標準方法、例えばクロマトグラフィー又は分別晶出によって得ることができる。例えば、シス/トランス混合物を、立体選択的合成で個々の立体異性体に分割することができる。エナンチオマー又はジアステレオマーは、その混合物の分割、例えば分別晶出、分割、又はHPLCによって単離することができる。或いは、分割は、キラル試薬を用いた誘導体化によって実現することができる。立体異性体は、立体選択的合成によって、立体化学的に純粋な出発材料から立体化学的完全性の喪失を引き起こさない条件下で作製することができる。立体異性体はすべて、本発明の範囲内に包含される。
【0085】
本発明の化合物は、標準方法で任意の純度レベルに単離することができ、蒸留、再結晶、及びクロマトグラフィーなど、当業者に周知の通常の手段によって、精製を実施することができる。
【0086】
本発明を下記の実施例でさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するように意図されたものではない。
【0087】
(実施例1)
4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]−1−プロピルピペリジン
4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]ピペリジン(0.5g、1.94mmol)のアセトニトリル(5ml)溶液に、炭酸カリウム(0.53g、3.83mmol)、及び1−ヨードプロパン(0.189ml、1.94mmol)を添加し、混合物を、マイクロ波照射によって150℃で20分間で加熱した。混合物を周囲温度に冷却し、水(50ml)を添加した。水性残渣を酢酸エチル(3回×50ml)で抽出し、合わせた有機相を乾燥し、濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール、1:1)で精製して、表題化合物(0.27g、46%)を得た。アミンを塩酸塩に変換し、エタノール/ジエチルエーテルで再結晶した。M.p.187−189℃。MS m/z(相対強度、70 eV)299(M+、3)、271(15)、270(bp)、147(5)133(5)。
【0088】
(実施例2)
1−エチル−4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]ピペリジン
実施例1による調製:4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]ピペリジン(0.4g、1.55mmol)、アセトニトリル(5ml)、炭酸カリウム(0.42g、3.0mmol)、1−ヨードエタン(0.147ml、1.55mmol)。収量:0.28g(63%)。アミンを塩酸塩に変換し、エタノール/ジエチルエーテルから再結晶した。M.p.176−178℃。MS m/z(相対強度、70 eV)285(M+、15)、284(16)、271(16)、270(bp)、84(15).
【0089】
上記の実施例で使用された中間体の合成は、下記の調製に記載されている。
【0090】
調製1:
1−ブロモ−3−フルオロ−5−(メチルチオ)ベンゼン
1−ブロモ−3,5−ジフルオロベンゼン(5.0g、25.9mmol)のジメチルホルムアミド(40ml)液剤に、ナトリウムチオメチレート(1.81g、25.9mmol)を添加し、混合物を150℃に10分間加熱した。反応混合物を周囲温度にし、飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)でクエンチし、酢酸エチル(3回×100ml)で抽出した。合わせた有機相を乾燥し、真空下で濃縮して、純粋な表題化合物(3.84g)を得た。MS m/z(相対強度、70 eV)222(M+、100)、220(M+、100)、189(49)、187(50)、126(75)。
【0091】
調製2:
tert−ブチル4−[3−フルオロ−5−(メチルチオ)フェニル]−4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシレート
1−ブロモ−3−フルオロ−5−(メチルチオ)ベンゼン(3.7g、16.7mmol)の乾燥ジエチルエーテル(100ml)液剤に、窒素中、−78℃でn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、6.7ml、16.7mmol)を滴下した。混合物を−78℃で30分間撹拌し、次いで2分間−20℃にし、再び−78℃に冷却した。−78℃の得られた混合物に、4−Boc−1−ピペリドン(3.3g、16.7mmol)の乾燥ジエチルエーテル(50ml)溶液を滴下した。混合物を−78℃で10分間撹拌し、次いで周囲温度にした。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)でクエンチし、酢酸エチル(3回×100ml)で抽出した。合わせた有機相を乾燥し、濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(イソオクタン/酢酸エチル 2:1)で精製して、表題化合物(3.76g)を得た。MS m/z(相対強度、70 eV)341(M+、7)、285(11)、241(11)、196(4)、57(bp).
【0092】
調製3:
tert−ブチル−4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]−4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシレート
tert−ブチル4−[3−フルオロ−5−(メチルチオ)フェニル]−4−ヒドロキシピペリジン−l−カルボキシレート(3.66g、10.6mmol)の四塩化炭素(13ml)、アセトニトリル(13ml)、及び水(26ml)の溶液に、過ヨウ素酸ナトリウム(6.8g、31.8mmol)、及び三塩化ルテニウム(3mg、0,05mol%)を添加し、混合物を周囲温度で20分間撹拌した。水を添加し、生成物を酢酸エチル(3回×100ml)で抽出した。合わせた有機相を乾燥し、真空下で濃縮して、純粋な表題化合物(3.3g)を得た。MS m/z(相対強度、70 eV)373(M+、0)、273(25)、255(74)、133(28)、56(bp)。
【0093】
調製4:
4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン
tert−ブチル4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]−4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシレート(3.3g、8.8mmol)、及びポリリン酸(20ml)の混合物を120℃で3時間加熱した。混合物を氷に注ぎ、5M 水酸化ナトリウムで塩基性にした。混合物を酢酸エチル(3回×100ml)で抽出し、合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、蒸発させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(メタノール/酢酸エチル 1:1)で精製して、表題化合物(2.02g)を得た。MS m/z(相対強度、70 eV)255(M+、bp)、254(50)、251(87)、172(87)、146(53).
【0094】
調製5:
4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]ピペリジン
イソプロピルアルコール(60ml)中4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(2.02g、7.9mmol)、炭素担持パラジウム(0.56g)、及びギ酸(1.9ml)の混合物を、水素中、50psiで24時間水素化した。反応混合物をセライト床を用いて濾過し、濾液を濃縮し、蒸発乾固して、1.66gの粗生成物を得た。MS m/z(相対強度、70 eV)257(M+、bp)、256(80)、133(21)、69(25)56(99)。
【0095】
本発明による化合物を評価するために、下記の試験を用いた。
【0096】
In vivo試験:行動
Omnitech Digiscan分析装置に接続させた8台のDigiscan活性モニター(RXYZM(16)TAO、Omnitech Electronics、Columbus、OH、USA)、及びディジタルインターフェースボード(NB DIO−24、National Instruments、USA)を装備したApple Macintoshコンピュータを使用して、行動活性(behavioural activity)を測定した。活性モニターはそれぞれ、光ビームセンサーを装備した四角い金属フレーム(W×L 40×40cm)から構成された。行動活性の測定中、、ラットを透明なアクリルケージ(W×L×H、40×40×30cm)に入れ、そのケージを活性モニターに配置した。活性モニターはそれぞれ、3列の赤外光ビームセンサーを装備し、各列は16個のセンサーから構成された。2列をケージの前面と床の側面に沿って90度の角度で配置し、垂直の活性を測定するために3番目の列を床から10cm上方に配置した。光ビームセンサーを2.5cm間隔で配置した。活性モニターをそれぞれ、弱いハウスライト及びファンが入っている同一の音響及び光減衰ボックスにはめ込んだ。
【0097】
オブジェクト指向プログラミング(ラボビュー(登録商標)、National instruments、Austin、TX、USA)を使用して、コンピュータソフトウェアを作成した。
【0098】
動物の位置(水平重心、及び垂直の活性)を毎回表す各活性モニターの行動データは、サンプリング周波数25Hzで記録され、カスタム作成されたLABView(商標)アプリケーションを使用して収集された。各記録セッションのデータを保存し、移動距離に関して分析した。行動記録セッションはそれぞれ、試験化合物を注射して約4分後に始め、60分継続した。同様の行動記録手順を、薬物未投与ラット及び薬物を前投与されたラットに適用した。d−アンフェタミンを前投与されたラットには、活性モニターでの記録セッションの10分前に、用量1.5mg/kgでi.p.投与した。MK−801を前投与されたラットには、活性モニターでの記録セッションの90分前に、用量0.7mg/kgでi.p.投与した。結果は、任意の長さ単位での回数/60分間、又は回数/30分間で表されている。スチューデントのt検定で、対照群との統計比較を実施した。MK−801又はアンフェタミンを前投与された動物において、それぞれMK801又はd−アンフェタミンの対照と統計比較を行った。
【0099】
アンフェタミン誘発性自発運動亢進の低減のためのED50値を、カーブフィッティング法で算出する。大部分の化合物の場合、評価は、単独実験では用量範囲0、11、33、及び100μmol/kg s.c.で、別の実験では相補的用量について、アンフェタミンを前投与された動物16匹に基づく。計算は、1時間の測定の最後の45分間中の距離に基づいている。距離は、アンフェタミン対照に正規化し、最小二乗化により関数「目的−(目的−対照)/(1+(用量/ED50傾き)」に適合する。この4つのパラメータには制限がある:ED50>0、0.5<傾き<3、目的>対照0%。パラメータの信頼水準を推定するために、測定値毎に、適合をランダム均等分布二乗重み(0〜1)で100回繰り返す。提示されたED50範囲は、これらの値の95%をカバーする。
【0100】
In vivo試験:神経化学
行動活性セッション後、ラットを断頭し、及びその脳を速やかに摘出し、氷冷のペトリ皿に配置した。各ラットの辺縁前脳、線条体、前頭皮質、及び残りの半球部分を切り出し、凍結した。続いて、脳部分をそれぞれ、モノアミン及びその代謝物の含有量に関して分析した。
【0101】
HPLC分離及び電気化学検出によって、脳組織ホモジネート中のモノアミン伝達物質(NA(ノルアドレナリン)、DA(ドーパミン)、5−HT(セロトニン))、及びそのアミン(NM(ノルメタンフリン)、3−MT(3−メトキシチラミン))、及び酸(DOPAC(3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸)、5−HIAA(5−ヒドロキシインドール酢酸)、HVA(ホモバニリン酸))代謝物を定量する。
【0102】
分析方法は、アミン又は酸のために使用される2つのクロマトグラフィーによる分離に基づく。2台のクロマトグラフィー装置は、10ポート弁、及び2台の装置で同時注入するための2つのサンプルループを備えた一般的な自動注入装置を共有する。装置は両方とも、逆相カラム(Luna C18(2)、dp 3μm、50*2mm i.d.、Phenomenex)を装備し、電気化学検出は、ガラス状炭素電極(MF−1000、Bioanalytical Systems,Inc.)で2つの電位で実施される。T結線を経由して、カラム溶出液を検出セル、又は廃液に流す。これは、廃液又は検出器出口を遮断する2つのソレノイド弁で行われる。クロマトグラフィーの先端を検出器に到達させないことによって、よりよい検出条件が実現される。酸系向けの水性移動相(0.4ml/分)は、クエン酸14mM、クエン酸ナトリウム10mM、MeOH15%(v/v)、及びEDTA0.1mMを含有する。Ag/AgCl基準に対する検出電位は、0.45及び0.60Vである。アミン系向けの水性イオンペアリング移動相(0.5ml/分)は、クエン酸5mM、クエン酸ナトリウム10mM、MeOH 9%(v/v)、MeCN 10.5%(v/v)、デカンスルホン酸0.45mM、及びEDTA 0.1mMを含有する。Ag/AgCl基準に対する検出電位は、0.45及び0.65Vである。
【0103】
In vivo試験:経口バイオアベイラビリティ
実験は、動脈及び静脈カテーテルを埋没して24時間後に行う。n=3/群で、試験化合物を12.5μmol/kgで経口投与、又は静脈カテーテルを用いて、5μmol/kgで静脈投与する。次いで、試験化合物の投与後0、3、9、27、60、120、180、240、300、及び360分に、動脈血試料を8時間の間採取する。各ラットについて、経口バイオアベイラビリティを、静脈内投与後に得られたAUC(曲線下面積)に対する経口投与後に得られたAUCの比として算出した。パラメータAUCを次のように算出した。AUC:対数/線形台形法にて算出された血漿中濃度−時間ゼロから最終測定濃度(Clast)までの時間曲線。
【0104】
試験化合物のレベルを、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)によって測定する。(Hewlett−Packard 1100MSDシリーズ)。モジュールには、クォータナリポンプ装置、真空脱ガス装置、サーモスタット付きオートサンプラー、サーモスタット付きカラムコンパートメント、ダイオードアレイ検出器、及びAPI−ESスプレーチャンバが含まれる。データ処理は、HP ChemStation rev.A.06.03.システムで行った。機器の設定:MSDモード:選択イオンモニタリング(SIM)MSD極性:正 ガス温度:350℃ 乾燥ガス:13,0l/分 ネブライザーガス:50psig キャピラリー電圧:5000V フラグメンター電圧:70V 分析カラム:20℃でZorbax eclipse XDB−C8(4.6*150mm、5μm)。移動相は、酢酸(0.03%)(溶媒A)、及びアセトニトリル(溶媒B)であった。移動相の流量は0.8ml/分であった。溶出は、12%の溶媒B(定組成)で4.5分で始め、次いで4,5分かけて60%に線形増加させた。
【0105】
抽出手順:血漿試料(0.25〜0.5ml)を水を加えて1mlに希釈し、60pmol(100μl)内部標準(−)−OSU6241を添加した。25μlの飽和炭酸ナトリウム水溶液を添加することによって、pHを11に調整した。混合した後、試料を4mlのジクロロメタンで、20分間振盪することによって抽出した。遠心した後、有機層をより小さい試験管に移し、窒素気流中で蒸発乾固した。次いで、残渣を、120μlの移動相(酢酸(0.03%):アセトニトリル、95:5)に溶解し、LC−MS分析した(10μl注入)。各試料について、選択イオン(MH+)を監視し、(−)−OSU6241((3−[3−(エチルスルホニル)フェニル]−1−プロピルピペリジン)の場合、MH+296を監視した。
【0106】
適切な量の試験化合物をブランク血漿試料に添加することによって、1〜500pmolの範囲の標準曲線を作成する。
【0107】
In vitro試験:ラット肝臓ミクロソームにおける代謝安定性
小さい修正以外は、Forlin(1980)、クロフェンA50、3−メチルコラントレン、プレグネノロン−l6aq−カルボニトリル、及びフェノバルビタールの、異なる年齢及び性別のニジマス(salmo gairdneri)における肝ミクロソームシトクロムP−450依存性モノオキシゲナーゼ系への効果(Clophen A50,3−methylcholantrene,pregnenolone−l6aq−carbonitrile and Phenobarbital on the hepatic microsomal cytochrome P−450−dependent monooxygenaser system in rainbow trout,salmo garirdneri,of different age and sex)、Tox Appl Pharm.54(3)420−430に記載のように、ラット肝臓ミクロソームを単離した。小さい修正とは、例えば均質化する前に、0.15M KClを含む0.1M Na/K*PO緩衝剤(pH7.4)(緩衝剤1)の3mL/gの肝臓を添加し、ホモジネートを15分間ではなく20分間遠心し、上澄みを105,000gではなく100,000gで超遠心し、超遠心によるペレットを、緩衝剤1中87%のグリセロール(20%v/v)の肝臓1mL/gに再懸濁した。
【0108】
水で0.2又は1mMに希釈した試験物質1μL、及び20mg/mLのラット肝臓ミクロソーム10μLを、37℃の緩衝剤1 149μLと混合し、4.1mg/mLのNADPH 40μLを添加することにより、反応を開始した。加熱ブロック中、37℃で0又は15分間培養した後(LAB−LINE、MULTI−BLOK Heater又はlab4you、TS−100 Thermo振盪器、700rpm)、純粋なアセトニトリル100μLに添加により反応を止めた。次いで、10,000g、4℃で10分間遠心した後(Heraeus、Biofuge fresco)、ペレットを排除することによって、タンパク質沈殿物を除去した。HPLC−MS(Hewlett−Packard 1100MSDシリーズ)で、Zorbax SB−C18カラム(2.1*150mm、5μm)、移動相として0.03% ギ酸及びアセトニトリル(グラジエント)、又はZorbax Eclipse XDB−C18(3*75mm、3.5μm)、移動相として0.03%酢酸及びアセトニトリル(グラジエント)を用いて、試験化合物を分析した。15分の代謝回転を、15分後に消失した試験化合物の0分のレベルに対する割合(パーセントで表す)として、すなわち100*[0分間における試験化合物の濃度−15分における濃度]/0分間における濃度として算出した。
【0109】
肝ミクロソームの調製をForlin(1980)に記載されているように行った。肝ミクロソームの培養プロトコルは、Crespi & Stresser(2000)、及びRenwickら(2001)に記載されている。
【0110】
Crespi C L及びDM Stressser(2000)。代謝系薬物−薬物相互作用のための蛍光スクリーニング(Fluorometric screening for metabolism based drug−drug interactions)。J.Pharm.Tox.Meth.44.325−331
【0111】
Forlin L.(1980)クロフェンA50、3−メチルコラントレン、プレグネノロン−l6aq−カルボニトリル、及びフェノバルビタールの、異なる年齢及び性別のニジマス(salmo gairdneri)における肝ミクロソームシトクロムP−450依存性モノオキシゲナーゼ系への効果(Effects of Clophen A50,3−methyicholantrene,pregnenolone−l6aqcarbonitrile and Phenobarbital on the hepatic microsomal cytochrome P−450−dependent monooxygenaser system in rainbow trout,salmo gairdneri,of different age and sex)。Tox Appl Pharm.54(3)420−430
【0112】
Renwick,ABら、(2001)。2,5−ビス(トリフルオロメチル)−7−ベンジルオキシ−4−トリフルオロメチルクマリンのヒト肝CYPアイソフォームによる代謝:CYP3A4選択性の証拠(Metabolism of 2,5−bis(trifluoromethyl)−7−benzyloxy−4−trifluoromethylcoumarin by human hepatic CYP isoforms:evidence for selectivity towards CYP3A4)。Xenobiotica 31(4):187−204
【0113】
hERG親和性
hERG親和性の評価を、Rapid ICE(商標)(Quintiles Limited,Research Avenue South,Heriot−Watt University Research Park,Riccarton Edinburgh,Scotland)によって行った。Rapid ICE(商標)(急速イオンチャネル電気生理(Rapid Ion Channel Electrophysiology))は、PatchXpress 7000A装置(Axon Instruments)を利用した自動パッチクランプ分析装置である。Rapid ICE(商標)によって、HERG cDNAを安定的に形質移入されたHEK293細胞から記録されたHERGテール電流への、試験物質の効果が評価される。HERG電流を阻害する化合物は、ヒトにおける心筋活動電位、したがってQT間隔を延長することが分かった。
【0114】
HERG.T.HEK(HERG cDNAを安定的に形質移入されたHEK293細胞)を、ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)から入手した。これらの細胞をQuintilesの極低温記憶装置に保持し、培養下でも維持する。10%胎児ウシ血清、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウム、及び0.4mg/mlのジェネテシンを補充した最小必須培地中に、細胞を維持し、その培地を用いて継代した。Rapid ICE(商標)研究に使用するため、4mlの細胞を、ファルコン管に2.5×10 5/mlの密度で入れる。ファルコン管を、加湿しガスを充填した(5% CO2)インキュベータ中、37℃で保存し、細胞を2.5時間以内保存して使用する。実験をする直前に、これらの細胞を1000rpmで1分間遠心し、上澄みをデカンテーションし、細胞を1.5mlのエッペンドルフ管中、150μlの浴液に再懸濁する。
【0115】
試験を実施する前に、PatchXpress装置を、適切な細胞外液(浴)及び細胞内液(ピペット)で下塗りする。16ウェルのシールチップ(Sealchipl6、Aviva Biosciences Corp)を装置に入れ、細胞を浴液懸濁液中で調製する前に下塗りする。細胞エッペンドルフを指定した位置に入れる。手順は、細胞の粉砕及びシールチップの各ウェル(記録チャンバ)への分散で始める。PatchXpress装置は、通常のホールセルパッチクランプ法の一般原理に従う。高抵抗シールがパッチ電極と個々の細胞との間に形成され、電極チップ全体の膜が破壊され、ホールセルパッチクランプ配置が確立する。細胞の質が不良であると判断された場合、この時点で実験を終了することができ、必要なら、方法を別のシールシップで繰り返した。
【0116】
安定なパッチが実現されると、最初に細胞は−80mVでクランプされ、電圧−クランプモードで記録は始まる。標準電圧プロファイルは以下の通りである。−80mVから−50mV(200ms)、+20mV(4.8s)のステップ、−50mVへのステップ(5s)、次いで保持電位−80mVへのステップ。−80mVから試験コマンド(+20mV)へのステップでは、外向き電流が生じ(すなわち、電流が細胞から流れる)、試験コマンド(+20mV)から−50mVへのステップでは、テール電流が生じる(テール電流は、電流の経時的不活化を表す)。テール電流値を取り出す。値はそれぞれ、連続する4つの電圧パルスから記録された平均電流を表す。各細胞について、ビヒクル前投与に比べて残留電流(対照%)を算出することによって、試験物質の効果を決定する。
【0117】
IC50値(pM)又は他の効力マーカーを、濃度応答関係から推定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の化合物:
【化1】


[式中、Rは、C〜Cアルキル、及びアリルからなる群から選択される]、及びその薬剤として許容できる塩。
【請求項2】
Rがn−プロピル及びエチルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1−エチル−4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]ピペリジン
4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]−1−プロピルピペリジン
1−アリル−4−[3−フルオロ−5−(メチルスルホニル)フェニル]ピペリジン
を含む群から選択される、請求項1から2までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
中枢神経系障害の治療のための、請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
中枢神経系障害の治療用の、薬剤として有効な製剤の製造における、式1による化合物:
【化2】


[式中、Rは、C〜Cアルキル、及びアリルからなる群から選択される]、又はその薬剤として許容できる塩の使用。
【請求項6】
Rがn−プロピル及びエチルからなる群から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物、及び1つ又は複数の薬剤として許容できる担体又は希釈剤を含む薬剤組成物。
【請求項8】
中枢神経系障害の治療用の請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
パーキンソン病、パーキンソニズム、(L−DOPA誘発性ジスキネジアを含む)ジスキネジア、ジストニア、チック、振戦、及びハンチントン病からなる群から選択された運動障害の治療用の請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
医原性及び非医原性の精神病及び幻覚症からなる群から選択された状態の治療用の請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項11】
統合失調症及び統合失調症様障害、並びに双極性障害からなる群から選択された疾患の治療用の請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
気分障害及び不安障害、うつ病、及び強迫性疾患からなる群から選択された疾患の治療用の請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジルドラトゥーレット症候群からなる群から選択された神経発達障害、並びに認知症、及び加齢性認知障害からなる群から選択された神経変性疾患の治療用の請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項14】
睡眠障害、性的障害、摂食障害、肥満症、及び頭痛、並びに筋緊張亢進を特徴とする疾患における他の疼痛からなる群から選択された疾患の治療用の請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
運動機能、認知機能、及び関連情緒障害の改善、並びに外傷性、炎症性、感染性、腫瘍性、血管性、低酸素性、又は代謝性の原因によって誘発された脳傷害後、或いは乱用物質、薬剤化合物、環境毒素からなる群から選択される外因性化学物質に対する毒性反応によって誘発された脳傷害後の改善のための請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項16】
乱用物質に関連する障害の治療用の請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項17】
アルツハイマー病又は関連認知症障害の治療用の請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項18】
治療上有効量の請求項1から3までに記載の化合物を、このような中枢神経系障害の、ヒトを含めた哺乳類に投与することによって、中枢神経系障害を治療する方法。
【請求項19】
請求項7から17までの一以上の請求項に記載の障害を治療するための請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2009−511525(P2009−511525A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534935(P2008−534935)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009866
【国際公開番号】WO2007/042295
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508356445)エヌエスエイビー、フィリアル アヴ ノイロサーチ スウェーデン エービー、スヴェーリエ (10)
【Fターム(参考)】