説明

ドーピングされた半導体材料の層を製造する方法、及び装置

本発明は、ドーピングされた半導体材料で構成される層を基板に対して堆積する方法、及び上記方法を実施する装置に関するものである。上記方法によると、ドーピングされた半導体材料は、少なくとも1つの半導体複合材料及び少なくとも1つのドーピング材料を含む。上記方法は、蒸発源を用いて(複数の)半導体材料及び(複数の)ドーピング材料の混合物を気化させ、その結果、上記基板に対して上記混合物を堆積することからなっている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ドーピングされた半導体材料の層、特に有機発光ダイオードの層を堆積により基板に対して製造する方法、及びドーピングされた半導体材料が少なくとも1つの半導体複合材料及び少なくとも1つのドーピング材料を含む処理を行う装置に関するものである。
【0002】
〔背景技術〕
このタイプのドーピングされた層は、例えば有機発光ダイオード(OLEDs)に設けられてもよい。これに関連して、異なるタイプのドーピングされた層との相違を見分ける必要がある。電荷キャリア輸送層は、強いドナー化合物あるいは強いアクセプタ化合物でドーピングされる。電子あるいは正孔に関するこれらの層の相当に高い導電率は、複合材料とドーピング材料との間での電荷の移動により実現される。これは、定義される(defined)明るさのために要求される動作電圧がより低くなるという点において、有機発光ダイオードの電気的特性を改善する。結果として起こる広範囲のさらに別のメリットは、例えば電極からのより好ましい電荷キャリアの注入である。そして、このことは、より広範囲の材料が電極の製造に適するということを意味する。その上、この方法でドーピングされた層の厚さは、輸送層においてデバイスの性能に悪い影響を及ぼす抵抗損のないような広い範囲内で変更されてもよい。例えば、層の厚さは、デバイスにおいて生成される光が、干渉による強め合いにより、デバイスの外で好ましく連結されるような方法で選択されてもよい。
【0003】
このタイプのドーピングされた層に関して、1:1から1:100までのモル濃度が、よく選択される。ドーピングされた有機半導体層は、例えば有機太陽電池あるいは有機TFT等の他の有機デバイスにおいても用いられる。このタイプのドーピングされた層は、例えば、モル比が50:1である4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリ−フェニルアミン(m-MTDATA)及びテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)の混合物で構成されてもよい。このタイプのドーピングされた層の異なる形は、例えばモル比が8:1であるバソフェナントロリン(BPhen)及びセシウムで構成されてもよい。
【0004】
さらに別のタイプのドーピングは、複合材料に混合される発光不純物を供給する(Tang et al., J. Appl. Phys. 65, 3610(1989))。その結果、この混合物は、有機発光ダイオードにおける発光層を形成する。このタイプのドーピングされた層は、一般に、より高い蛍光量子収率(luminescence quantum yield)を有し、放射された光のスペクトルに影響を及ぼすことを可能にする。1:2から1:1000までのドーピング濃度(Doping concentrations)は、このタイプのドーピングされた層に関して頻繁に選択される。例として、このタイプのドーピングされた発光層は、質量比が5:1である4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン(TCTA)及びファクトリス(factris)(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)で構成されてもよい。
【0005】
バルクヘテロ接合として知られている混合された層は、電荷キャリアへの光変換に関するより高い量子収率を達成するために、有機太陽電池において用いられる(Gebeyehu et al., Solar Energ. Mater. Solar Cells 79, 81(2003))。
【0006】
有機材料における光の吸収により、最初に非常に高い結合エネルギーを備える電子−正孔対が形成される。それ故に、一般的に周知であるように、純物質においては、この励起子を結合されていない電荷キャリアにすることは困難である。従って、ドナー型材料及びアクセプタ型材料の混合物が用いられる。この場合、励起子は、ドナーからアクセプタまでの電荷の移動により分けられる。1:1から1:10までのドーピング濃度は、このタイプのドーピングされた層に関してよく選択される。例として、このタイプのドーピングされた層は、モル比が2:1であるフタロシアニン亜鉛及びフラーレンC60で構成されてもよい。
【0007】
最後に、文献は、混合されたドーピング層が有機デバイスの安定性を増すために用いられてもよいということを報告する(Shi et al., Appl. Phys. Lett. 70. 1665(1997))。2つ以上の要素で構成する混合物は、ドーピングされた半導体層のいくつかの応用に関しても有効である(US 6,312,836 B1、US 6,287,712を参照)。
【0008】
ドーピングされた有機半導体層を製造する場合、有機物質は、気体相に変換され、その結果、堆積する。原理として、有機物質は、液体相あるいは固体相のいずれか一方から気体相へ変化する。前者の事例において、それは、蒸発及び気化として知られている。また、後者の事例において、それは、昇華として知られている。容易に読むことができるように、以下に示す文(text)は、これらの専門用語を同義で用いており、それらは固体相あるいは液体相の両方からの気体あるいは蒸気の形成を達成することを意図している。
【0009】
今まで、ドーピングされた有機体層は、蒸着(coevaporation)により製造されていた。この事例において、複合材料及びドーピング材料は、各々の蒸発源(蒸発器)に導入され、高真空条件下において同じ時間で昇華される。2つの蒸発源からの蒸気は、基板に対して堆積する。形成される層の定義された混合比は、選択された蒸発速度、蒸発源の放射特性(the radiation emission characteristics)及び構成の幾何学の関数として導き出せる。
【0010】
この方法は、多数の欠点を有している。同質のドーピングを達成するために、蒸発源の蒸発速度が、全体の蒸発処理を通じて非常に正確に制御される必要がある。その上、蒸発源の放射特性及び構成は、複合材料及び不純物の流れる速度の比が、基板の全体の表面を介して一定であるように存在しなければならない。これは、大きなベース面積を備える基板に関して、特に相当な大きな困難を伴うことが確実である。その上、蒸発装置を設計する場合、各々のドーピングされた層の不純物に関する追加の蒸発器を設ける必要がある。特に、このタイプの装置の維持経費は、相当増大する。最後に、蒸発器を動作させる制御技師に対しての経費が相当増大する。
【0011】
発光層の複合材料及び発光不純物(emitter dopant)が、1つの蒸発源の助力で気体相に共に変換され、その結果、基板に対して堆積する。これにより、発光層が有機材料、即ち複合材料及び発光不純物を含むドーピングされた層から製造されるという周知の方法がある。このタイプの処理は、例えば、公報EP 1 156 536 A2において開示されている。類似の処理は、公報EP 1 454 736 A2において説明されている。この周知の処理において、堆積する有機材料は、非昇華性の(non-sublimable)無機材料と混合され、凝縮されたペレットを形成するために共に圧縮される。非昇華性の無機材料は、凝縮されたペレットにおける温度を制御するために用いられる。その結果、気化の間に供給される熱が、主としてペレットの上部の面に集められる。ところが、ペレットの底面が、上部の面の温度より低い少なくとも100℃の温度で保たれる。公報US 2003/0180457 A1は、高純度材料のエレクトロルミネッセンス層で発光要素を製造する処理を述べている。発光層の複合材料及び放射される不純物は、共通の蒸発源の助力で同様に堆積する。
【0012】
〔本発明〕
本発明の目的は、ドーピングされた半導体材料の層、特に有機発光ダイオードに関する層を堆積により基板に対して製造する方法を提供することである。これにより、従来技術の欠点は解決する。
【0013】
この目的は、独立請求項1の特徴を有する方法により達成される。
【0014】
本発明の有効な構成は、従属請求項の内容を形成する。
【0015】
本発明は、ドーピングされた半導体材料の層を堆積により基板に製造する方法であり、上記ドーピングされた半導体材料は、少なくとも1つの半導体複合材料及び少なくとも1つのドーピング材料を含んでいる。そして、上記少なくとも1つの半導体複合材料及び上記少なくとも1つのドーピング材料の混合物は、蒸発源の助力で気体相に変換され、その結果、基板に対して堆積する。また、2つあるいはそれ以上の材料の混合物を使用することも可能である。
【0016】
提供された方法は、ドーピングされた層の製造を単純化する。複合材料及び不純物の分子の流れにおける特性は、両方の材料が同一の蒸発源から昇華/気化するので、同様に構成されてもよい。気化速度の比率は、制御するために温度のみが必要であるので、実質的には時間に無関係である。その上、処理を行うために用いられる蒸発器の装置の設計を単純化することが可能である。少なくとも1つの蒸発源に必要とされる経費は、蒸発器の据付の計画及び作業から除去される。そして、ドーピングされた半導体層、特に有機発光ダイオード等の有機体層を備えた素子を製造する。
【0017】
上記処理は、様々な処理の構成との組み合わせにおいて用いられてもよい。例えば、熱エネルギーの供給による気化に加えて、レーザ光パルス及び分子線エピタキシーの機能を設けることも可能である。
【0018】
〔好ましい典型的な実施形態の記述〕
本発明は、典型的な実施形態に基づいて、以下に示すより多くの詳細な記述で説明される。
【0019】
真空条件下の加熱気化が、ドーピングされた半導体材料の層を製造するために用いられる場合、蒸発する材料は、セラミック、ガラス、金属あるいは類似の物質から作られた坩堝に導入される。それから坩堝は加熱され、その結果、蒸発する材料は、気体相に変換される。適切な昇華速度は、固体あるいは液体相の結合エネルギーに依存し、異なる温度で確立される。例として、不純物F4-TCNQは、ちょうど120℃で蒸発することが可能である。しかし、フラーレンC60は、400℃でのみ蒸発することが可能である。
【0020】
意外にも、材料の混合物が、時間と独立した流速の比率で蒸発することが可能であるということも発見されている。多数の典型的な実施形態は、以下に述べる。
【0021】
〔典型的な実施形態1〕
典型的な実施形態において、含まれる材料の昇華/気化温度は、約50℃未満の差であり、好ましくは約20℃未満の差である。これに関連して、昇華温度は、複合材料及び不純物が同一の表面積を備える2つの直接に隣接した分離源から蒸発する蒸発器において、所望のドーピング濃度を設定することを必要とする温度を意味すると解釈される。気化は、温度で活性化される処理であるので、気化速度は、温度が上昇すると相当増大する。従って、坩堝における2つの異なる材料の混合物が、時間と独立した流速の比率では混合物の同時に昇華/気化を引き起さないというおそれがある。もっと正確に言えば、この事例においてより揮発性が高い(more volatile)要素はより速く気体相に変わるが、より揮発性が低い(less volatile)要素は、他の要素が完全に消費された後も単独で坩堝に残っているおそれがある。
【0022】
ここで、要素は、それが他の要素の気化/昇華温度より高い気化/昇華温度を有する場合、他の要素より揮発性が低くなる。
【0023】
ドーピングされた材料を製造する場合に発見される動作は、より揮発性を高くする要素である固体の表面積、即ちより低い昇華/気化温度を備える要素が、最初のより速い昇華/気化により減らされる。その結果、昇華/気化速度が、より揮発性の低い要素の昇華/気化速度に関して安定した比率になるまで低下するという事実により説明される。
【0024】
いくつかの事例において、これらの昇華温度が約50℃未満の差、好ましくは約20℃未満の差で異なるような方法で、複合材料及び不純物を選択することは不可能であるかもしれない。これは、複合材料あるいは不純物の種類が制限された材料の範囲内でのみ実現し得る場合の事例として定義されてもよい。その上、複合材料あるいは不純物の色、酸化還元電位あるいは蛍光量子収率等の特性が要求される。これらの事例において、さらに別の手段は、複合材料及び不純物の気化速度の割合が、時間の経過を介して一定であることを確実にするために設けられてもよい。これに関連した他の重要な要因は、複合材料が、昇華温度で固体(sold)あるいは液体の形にあるか否か、及びそれらが混合される場合に複合材料及び不純物の間で化学反応が起こるか否かである。
【0025】
これにより、本発明の範囲を制限すること無く、昇華は、化合物Mの分子の流れΦ
Φ = ρ(r,α)・σA・νexp(-Hsub/kT)
として表される温度で活性化される処理と解釈されてもよい。ここで、Hsubは材料の昇華エンタルピー、kはボルツマン定数、Tは温度、νは単位1/sで表現される一定の速度、σは気化される材料全体の表面での材料の面積密度、Aは表面積である。係数ρ(r,α)は坩堝の基準(the crucible normal)に関する距離及び角度に対する流れの依存性、即ち蒸発器の特性である。
【0026】
純物質に関して、面積密度σは純物質の面積密度σと等しく、面積Aは純物質の面積と等しい。複数の材料の同質な混合物に関して、材料M1の面積密度は、混合物における材料M1の割合xに従って減らされる:σ=xσ。その結果、面積Aは、混合物の面積である。
【0027】
純物質の昇華エンタルピーHsubは、上記純物質の昇華エンタルピーHsubと等しい。混合物における材料Mの昇華エンタルピーは、上記の値Hsubから相当逸脱してもよい。これは、混合物のタイプと、混合物のM及び他の構成物質の間における相互作用の形とに依存している。混合物が、気化される様々な材料の大きな結晶子を含む場合、分子Mは、同一タイプの他の分子Mによりほぼ囲まれている。そして、昇華エンタルピーの近似値は、純物質の値Hsubに対応している。非常に小さな結晶子を備える非常に細かい混合物(very fine mixture)あるいは分子の完全に密接な混合物(completely intimate mixture)の事例においては、分子Mが混合物における他のタイプの分子とすぐにでも相互作用するので、化合物Mの昇華エンタルピーは、純物質の値Hsubとは異なっていてもよい。非常に強い相互作用の事例においては、昇華エンタルピーは、非常に高いレベルに達していてもよい。これは、例えば、分子Mが有機塩を形成している混合物の他の分子に電荷の移動を行う場合の事例である。
【0028】
本発明による処理において、ただ1つの坩堝から昇華中の定義された位置での分子の流れの比率が検討されている。従って、係数ρ(r,α)は、上記坩堝における全ての材料に関して同一であり、それ故に、比率の形成から除去される。従って、この係数は、更なる検討を必要としない。
【0029】
坩堝における2つの材料M1及びM2の流れの定義された比率ΦM1/ΦM2を得るためには、変数σM1及びσM2と変数Hsub1及びHsub2とに影響される。対照的に、温度は坩堝の温度であり、それ故に上記坩堝における全ての材料に関して等しい。
【0030】
材料の面積密度σは、坩堝充填物の表面に配置される分子Mの数を、全体の坩堝充填物の面積で割った値として定義される。面積密度を変えることに関する様々な考えられる選択肢がある。1つの選択肢は、気化される混合物において過度に揮発性の要素の部分を減らすことにあり、この方法において、減らされた面積密度により定義された温度での分子の流れを減らす。
【0031】
上記段落において述べられた典型的な実施形態の1つの実施例において、22mgのテトラセン及び4.3mgのテトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(F4-TCNQ)は、最初の分量として導入され、セラミックの坩堝を備える蒸発器に共に配置される。140℃での混合物の昇華は、5e−8S/cmより大きい導電率を備える450nm厚の層を製造する。気化動作の最後に、より低い導電率を備える50nmの厚さの層が、さらに形成される。比較のために、純粋な形におけるテトラセンあるいはF4-TCNQの昇華の事例において、昇華温度はそれぞれ140℃あるいは130℃である。
【0032】
〔典型的な実施形態2〕
上記の混合物における過度に揮発性の高い要素の分子の流れを低下させるさらに別の選択は、例えば混合物を圧縮することにより行われる。上記圧縮は、例えば赤外分光法(infrared spectroscopy)において、KBrペレットを製造するために用いられるように、標準の圧縮装置において行われてもよい。この事例において、より揮発性の高い要素の分子の割合は、好ましくは50%あるいはそれより低く、より好ましくは10%あるいはそれより低い。そのプレス作業は、混合物中の全ての隙間を圧縮する。それ故に、より揮発性の高い要素は、現段階で表面にある分子の範囲においてのみ昇華されてもよい。この事例において、混合物は昇華前あるいは昇華後に液体相に変わらないとみなされる。より揮発性の高い要素が、より揮発性の低い要素に固定して含まれるので、より揮発性の高い要素は、より揮発性の低い要素の昇華の結果として、その分子の表面に同時に達する。この方法において、より揮発性の高い要素の流れは、混合物における混合比及びより揮発性の低い要素の流れから決定される。特に、分子の流れの比率は、混合物の混合比に対応する。
【0033】
上述した典型的な実施形態の1つの実施例において、4.4gのナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)及び0.12gのロイコクリスタルバイオレット(LCV)は、光の無い時に室温で混合され、ボールミルにおいて製粉される。そして、少しすみれ色の粉末が得られる。LCVは、それがNTCDA等の電子受容複合材料(an electron-accepting matrix)に導入される場合に、非可逆の(irreversible)酸化によりクリスタルバイオレット(CV)陽イオンに変換される。この反応は、光の無い時に室温において非常に低速で行われる。それ故に、製粉により製造された粉末は、LCVの少ない部分のみがCVを形成するため、反応したNTCDAを備えたLCVの混合物である。
【0034】
粉末のいくらかは、1cmの直径及び1mmの高さを備えたペレットを形成するために、圧縮機において5トンの圧力で3分間圧縮される。そして、同質の濃青色の外見を備えた固体が得られる。青色は、必ずしもLCVからCVへのさらに別の酸化のためではなく、むしろ、形成されたペレットの高い透明度及び既に形成されたCV陽イオンの吸収性に関連付けられた一体化のためである。しかし、ペレット(the tablet)において既に酸化させたLCVの量は、本発明による処理に全く関与しない。
【0035】
得られたペレットの4分の1は、セラミックの坩堝を備えた商業上利用可能な蒸発器に導入され、約190℃で高真空下の基板に対して堆積する。前の実施形態において、LCVは、ちょうど150℃で昇華する非常に揮発性高いの物質であると判明している。しかし、用いられる190℃の昇華温度は、NTCDAの実験による値に対応している。形成される層は、ハロゲンランプからの光で照射される。これは、ドーピング処理の活性化を引き起す。そして、形成される層の導電率は、常に測定される。
【0036】
第1のステップにおいて、厚さ1μmの全体の層は、最初の300nmにおいて1e−5S/cmより大きく、残りの層の厚さに関しては1e−6S/cmより大きく製造された導電率を有して堆積する。ドーピングされないNTCDAで構成する層は、1e−8S/cm未満の導電率を有している。ペレットの気化の間に形成された層が同質のドーピングを有しているということは、このことから断定されてもよい。
【0037】
第2のステップにおいて、さらに別の厚さ600nmの層が堆積し、その上、導電率は1e−6S/cmより大きい。最後に、より低い導電率を有したさらに別の200nmの層は、最後にペレットが完全に気化するまで堆積する。1:50のドーピング比を備えた蒸着により製造されるLCV:NTCDAの実施例に関して、新たな層の導電率は、約5e−5S/cmである。
【0038】
〔典型的な実施形態3〕
さらに別の典型的な実施形態において、不純物の揮発性が化学結合により非常に低くなることが可能であるように、化学反応は、複合材料とドーピング材料との間で起こる。例えば、イオン結合が形成される場合、気化は、まず電荷の元の場所への移動による中性分子の形成を要求し、その後、これらの中性分子を用いて気体相に変わる。この事例において、実質的な昇華温度で利用可能なエネルギーよりも、はるかに高いエネルギーが一般的に要求される。
【0039】
この事例において、複合材料及びドーピング材料が、緩やかな撹拌によってのみ混合される。結果として、複合材料及び不純物の微細構造は、化学反応が結晶粒度の小さな範囲でのみ起こるように維持される。一方では、化学反応が抑制され、他方では、十分に同質の混合が達成されてもよいような方法において、複合材料(matrix)及び不純物の結晶粒度を選択することが可能である。
【0040】
混合物の昇華温度と化学結合の強度との間の依存関係は、より揮発性の高い要素の昇華温度を増すために、さらに慎重に用いられてもよい。これは、より揮発性の低い要素の昇華温度での熱エネルギーが、既に2つの要素の間での化学結合を壊すのに十分である場合の事例である。ドナー及びアクセプタの形における要素の混合物の事例においては、2つの要素が一部の電荷の移動のみを行う場合、あるいは複合材料に関するイオン化エネルギー及び電子親和力が、あまりにも離れていない場合であってもよい。電荷の移動の度合は、赤外分光法により測定されてもよい。イオン化エネルギー及び電子親和力は、含まれる要素の酸化還元電位の助力で共により接近していてもよい。
【0041】
任意の事例において、2つの要素が、使用前に、例えばボールミルにおけるジョイントミル製粉(joint milling)あるいはすり鉢により余すところなく混合されることは有効である。その上、昇華温度の前に液体になり、それ故に、2つの要素の間での化学反応を容易にする材料が、より揮発性の低い材料として選択されることも可能である。
【0042】
比較例において、44.9mgのm-MTDATA及び15.5mgのF4-TCNQは、最初の分量として導入され、すり鉢において5分間集中的に混合される。これは、深緑の粉末を形成する。最初の重さに基づいて、この粉末は、1:1の比における2つの要素の化学量論的な混合物で構成される。上記混合物は、昇華が観測されること無く、真空チャンバにおいて400℃まで加熱される。
【0043】
さらに別の比較例において、0.88mgのm-MTDATA及び6.4mgのF4-TCNQは、最初の分量として導入され、混合される。最初の計量された量に基づいて、混合物は、50:1のm-MTDATA:F4-TCNQの分子混合比を有している。上記混合物は、真空チャンバにおいて、193℃で気化される。形成された層は、1e−9S/cm未満の導電率を有し、それ故に、ドーピングされない。
【0044】
蒸着により製造されるドーピング比が50:1であるp型ドーピングを施された(p-doped)m-MTDATAに関しては、対照的に、導電率は約1e−5S/cmである。複合材料から不純物への完全な電荷の移動が起こっている。
【0045】
〔典型的な実施形態4〕
さらに別の典型的な実施形態において、最初にそれらの気化温度未満で液体相に変わる2つの材料の混合物が製造される。混合物の1つの材料のみが、少なくとも他の材料が固体相のままである間に、蒸発温度未満で液体相に変えることも可能である。その結果、蒸発は、例えば溶液、乳状液、あるいは分散液から行われる。この事例において、複合材料及びドーピング材料の適切に選択すると、蒸発速度の一定の比率を達成すること、及び同様に所望のドーピングされた層を達成することが可能である。本発明の特に有効な構成において、材料は、融解物における共沸混合物の形である。
【0046】
この典型的な実施形態を行う場合、95mgのTPD及び13.5mgのF4-TCNQは、最初の分量として蒸発器の坩堝に導入され、セラミックのすり鉢において共に粉にされる。結果として生じる粉末は、蒸発器の坩堝に入れられ、最初は150℃に加熱される。この事例において、ドーピングされた層が基板に対して既に堆積していることが観測される。約3分後に150℃で蒸発器は冷却される。蒸発器の坩堝の検査は、TPD:F4-TCNQの混合物が融解しているということを明らかにする。
【0047】
第2のステップにおいて、蒸発器は150℃に加熱される。基板に対して形成される層の導電率は測定される。7分の前段階の後で、1e−8S/cm以上の増大した導電率を備えたドーピングされた層は、材料が消費されるまで形成される。
【0048】
この記述及び請求項において開示された本発明の特徴は、両方とも個々に、及びその様々な実施形態における本発明の実施に関する任意の所望の組み合わせにおいて、重要なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーピングされた電荷キャリア輸送半導体材料の電荷キャリア輸送層を堆積により基板に対して製造する方法であり、
上記ドーピングされた電荷キャリア輸送半導体材料が、少なくとも1つの半導体複合材料及び少なくとも1つのドーピング材料を含み、
電荷の移動に関して上記半導体複合材料の導電率が増加し、
上記半導体複合材料と上記ドーピング材料との混合物が、蒸発源の助力で気体に変換され、その後、上記基板に対して堆積することを特徴とする方法。
【請求項2】
比較的少ない揮発量の半導体複合材料は、上記少なくとも1つのドーピング材料の揮発量が上記少なくとも1つの半導体複合材料の揮発量よりも多くなるように、上記少なくとも1つの半導体複合材料として用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
比較的多い揮発量の半導体複合材料は、上記少なくとも1つのドーピング材料の揮発量が上記少なくとも1つの半導体複合材料の揮発量よりも少なくなるように、上記少なくとも1つの半導体複合材料として用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記少なくとも1つの半導体複合材料の気化/昇華温度と上記少なくとも1つのドーピング材料の気化/昇華温度とは、約50℃未満の差、好ましくは約20℃未満の差で異なっていることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
上記少なくとも1つの半導体複合材料と上記少なくとも1つのドーピング材料との混合物の中で、より高い揮発性の材料のモル比は、約50%未満、好ましくは約20%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記複合材料及び/または上記ドーピング材料は、液体相から気化することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記混合物は、固体相から昇華することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
固体の上記混合物は、圧縮された材料の形状で蒸発源に導入されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記少なくとも1つの半導体複合材料及び/または上記少なくとも1つのドーピング材料は、上記蒸発源に導入される前に製粉されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記少なくとも1つの半導体複合材料の少なくともいくらか及び上記少なくとも1つのドーピング材料の少なくともいくらかは、反応生成物を形成するための蒸発源の中で互いに化学的に反応し、
その結果、上記少なくとも1つの半導体複合材料及び/または上記少なくとも1つのドーピング材料の揮発性は変化し、
上記反応生成物が、上記蒸発源の中で、上記少なくとも1つの半導体複合材料及び上記少なくとも1つのドーピング材料に変換され、
その結果、上記少なくとも1つの半導体複合材料及び上記少なくとも1つのドーピング材料が気体状になり、
その後、上記少なくとも1つの半導体複合材料及び上記少なくとも1つのドーピング材料が、上記基板に対して堆積することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記少なくとも1つの半導体複合材料の揮発量と上記少なくとも1つのドーピング材料の揮発量とは、互いに接近していることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記少なくとも1つの半導体複合材料が上記蒸発源の中で気体相に変換される速度の比率及び上記少なくとも1つのドーピング材料が気体相に変換される速度は、実質的に一定に保たれることを特徴とする請求項1または請求項4〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
上記混合物は、熱エネルギーの供給により上記蒸発源の中で上記気体相に変換されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
上記混合物は、照射されるレーザ光パルスにより上記蒸発源の中で上記気体相に変換されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
上記少なくとも1つの半導体複合材料と上記少なくとも1つのドーピング材料との混合物は、分子線エピタキシーにより堆積することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−516376(P2008−516376A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533869(P2007−533869)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001761
【国際公開番号】WO2006/037300
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(503180100)ノヴァレッド・アクチエンゲゼルシャフト (47)
【Fターム(参考)】