説明

ドーム屋根構築用の空気膜体構造

【課題】 空気圧を受けてドーム屋根を形成する可撓膜体の張力と強度を補完し、所定形状の確保と維持を図り、偏りや変形の防止を図るドーム屋根構築用の空気膜体構造を提供する。
【解決手段】 ドーム屋根を形成するための可撓膜体5のすそ部における立ち上り角度が水平方向に対して斜め上方に15度〜18度である截頭円錐形状に形成し、該可撓膜体5の截頭円錐頂部の高さは仕上りドーム屋根形状の高さよりも高く設定して形成し、この可撓膜体5の上面に設置するテンションテープ3は、伸びが抑制された部材を用いて可撓膜体5に沿う截頭円錐形状上面の双曲線長さ寸法に横断的及び縦断的に交叉させて配置形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水や石油等の液体、低温液化ガス、消化ガス、粉体、粒状物などの各種貯蔵物を貯蔵する貯槽等構築物の上部を被覆するドーム(以下、本発明でいうドームとは球面、曲面、多面体等各種形状のものを含む)屋根等を構築するエアードーム工法における空気圧を受けてドーム屋根を構築する空気膜体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯槽等構築物の上部を被覆するドーム屋根を構築するエアードーム工法について、図9に基づいて説明する。
貯槽101は、平底円形の底版103と、この底版103の外周縁近傍に立設した円筒形状の側壁104と、この側壁104の上部を被覆する欠球殻形状のドーム屋根102とで形成する。これらの底版103、側壁104、及びドーム屋根102は、コンクリート構造又は金属構造、或いはコンクリート構造と金属構造などを組合せて形成する。
このドーム屋根102を施工するために、貯槽101の上部を被覆する可撓膜体105の周縁を側壁104の上端部に気密に固着し、送風機106を利用してこの可撓膜体105の下部に空気を導入して緊張させ、この緊張した可撓膜体105の上部にモルタル、コンクリートなどの屋根部材を施工する構築方法である。この可撓膜体105は、繊維織物に樹脂材料等をコーティングした可撓性を有する膜材が用いられている。
【0003】
上記ドーム屋根を構築するエアードーム工法に関する発明には、特許第3081980号公報「空気膜構造」がある。この発明は、空気圧を加えてドーム形状に貯槽等上部を被覆する可撓性膜体において、可撓性膜体の側面製作形状を、直線又は曲線、もしくは直線と曲線を組合せた形状とするとともに、所定加圧時の所望ドーム形状を基準にして、天頂部及び外周部がその基準より下に位置にするか、もしくはその基準より天頂部が上で外周部が下に位置する形状に形成するようにしたものである。
【0004】
また、可撓膜体の上面に設けるテンションテープに関する発明には、特許第2826784号公報「空気膜構造とその空気膜で形成したドーム屋根」がある。この発明は、貯槽等の構造物の上部を被覆する空気膜において、該空気膜に合成樹脂繊維材で形成した補強バンド、つまりテンションテープを配置したものである。
【0005】
さらに、可撓膜体及びその上面に設ける補強バンドに関する発明には、特開平10−331421号公報「コンクリート製ドーム屋根構築用の空気膜」がある。この発明は、構造物内の空気圧で展張させたドーム形状膜材上にコンクリートを打設してドーム形状のコンクリート屋根を構築する空気膜において、該ドーム形状膜材は樹脂材料等をコーティングしたバイアス織りの繊維織物でドームの平面直径方向に沿った帯形状の複数の膜材片同士の両側を接合し、この膜材上に補強バンドを配設してドーム形状に形成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3081980号公報
【特許文献2】特許第2826784号公報
【特許文献3】特開平10−331421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ドーム屋根を構築するエアードーム工法に関する従来の特許第3081980号公報「空気膜構造」の発明は、所定の空気圧を受けた状態で、所望のドーム形状が得られるように、可撓性膜体の側面製作形状を直線や曲線を組合せ、天頂部及び外周部の位置を配慮した可撓性膜体の空気膜構造であるが、所定形状を得るために圧力を高くして空気膜を無理に膨らませることがあるため、空気膜の強度を確保することが難しかった。
【0008】
また、上記特許第2826784号公報「空気膜構造とその空気膜で形成したドーム屋根」の発明は、膜材の補強や変形の抑制を図り安全かつ美観に優れたド−ム屋根を構築するために、空気膜の上面に合成樹脂繊維材で形成した補強バンド、つまりテンションテープを配置したものであるが、補強バンドの製作と配置が難しかった。
【0009】
さらにまた、上記特開平10−331421号公報「コンクリート製ドーム屋根構築用の空気膜」の発明は、膜材と膜材片の構造、及び補強バンドの配置を考慮したものであるが、均一な形状を保持する大きい径のドーム屋根には適していなかった。
【0010】
この発明の目的は、上述のような従来技術の可撓膜体ドーム屋根が有する問題点に鑑みてなされたもので、空気圧を受けてドーム屋根を形成する可撓膜体の張力と強度を補完し、所定形状の確保と維持を図り、かつ偏りや変形の防止を図るドーム屋根構築用の空気膜体構造を提供するものである。

【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載のドーム屋根構築用の空気膜体構造は、ドーム屋根を形成するための可撓膜体のすそ部における立ち上り角度が水平方向に対して斜め上方に15度〜18度である截頭円錐形状に形成し、該可撓膜体の截頭円錐頂部の高さは仕上りドーム屋根形状の高さよりも高く設定して形成し、この可撓膜体の上面に設置するテンションテープは、伸びが抑制された部材を用いて可撓膜体に沿う截頭円錐形状上面の双曲線長さ寸法に横断的及び縦断的に交叉させて配置形成したものである。
【0012】
請求項2記載のドーム屋根構築用の空気膜体構造は、ドーム屋根を形成するための可撓膜体をすそ部における立ち上り角度が水平方向に対して斜め上方に15度〜18度である截頭円錐形状に形成し、該可撓膜体の截頭円錐頂部の高さは所定ドーム高さよりも高く設定して形成し、この可撓膜体の上面に設置するテンションテープは、伸びのない部材を用いて欠球形状で所定ドーム形状の円弧長さ寸法に横断的及び縦断的に交叉させて配置形成したものである。
【0013】
請求項3記載のドーム屋根構築用の空気膜体構造は、上記請求項1又は2記載のテンションテープを、可撓膜体に発生する張力を補完する格子状のベーステープであるAパターンテンションテープと、このAパターンテンションテープから45度傾斜し可撓膜体のすそ部付近の周辺の膨らみを押えて矯正する45度テープからなるBパターンテンションテープと、天頂部を通りドーム高さを押えて保持するクロステープよりなるCパターンテンションテープとで構成し、上記BパターンテンションテープとCパターンテンションテープは一体化し上記Aパターンテンションテープとで2体のテンションテープに形成したものである。
【0014】
請求項4記載のドーム屋根構築用の空気膜体構造は、上記請求項1及び3記載のテンションテープに予張を与えてテンションテープ相互の交点の位置をマーキングして縫製止めし、さらにテンションテープの先端部に輪止めを設け、この輪止めに円周方向に沿う周囲ロープを挿通し一体化して形成したものである。

【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のドーム屋根構築用の空気膜体構造は、ドーム屋根を形成するための可撓膜体のすそ部における立ち上り角度が水平方向に対して斜め上方に15度〜18度である截頭円錐形状に形成し、該可撓膜体の截頭円錐頂部の高さは仕上りドーム屋根形状の高さよりも高く設定して形成し、この可撓膜体の上面に設置するテンションテープは、伸びが抑制された部材を用いて可撓膜体に沿う截頭円錐形状上面の双曲線長さ寸法に横断的及び縦断的に交叉させて配置形成したので、テンションテープは可撓膜体に追従し伸びて張力を発生するため、可撓膜体のすそ部付近の外周部の膨らみを抑えるとともに可撓膜体の張力を補完し、可撓膜体が変形しない所定のドーム形状を得ることができる。
【0016】
請求項2記載のドーム屋根構築用の空気膜体構造は、ドーム屋根を形成するための可撓膜体をすそ部における立ち上り角度が水平方向に対して斜め上方に15度〜18度である截頭円錐形状に形成し、該可撓膜体の截頭円錐頂部の高さは所定ドーム高さよりも高く設定して形成し、この可撓膜体の上面に設置するテンションテープは、伸びのない部材を用いて欠球形状で所定ドーム形状の円弧長さ寸法に横断的及び縦断的に交叉させて配置形成したので、可撓膜体の外周部の膨らみを抑制して所定ドーム形状を保持でき、伸びのないテンションテープを適正に配置することで可撓膜体の張力を補完し、可撓膜体の膨らみを平均に押え、可撓膜体が変形しない所定のドーム形状保持ができる。
【0017】
請求項3記載のドーム屋根構築用の空気膜体構造は、上記請求項1又は2記載のテンションテープを、可撓膜体に発生する張力を補完する格子状のベーステープであるAパターンテンションテープと、このAパターンテンションテープから45度傾斜し可撓膜体のすそ部付近の周辺の膨らみを押えて矯正する45度テープからなるBパターンテンションテープと、天頂部を通りドーム高さを押えて保持するクロステープよりなるCパターンテンションテープとで構成し、上記BパターンテンションテープとCパターンテンションテープは一体化し上記Aパターンテンションテープとで2体のテンションテープに形成したので、テンションテープの製作及び固定プレートへの取付け作業が簡単にできる。また、テンションテープの配設位置にずれを生じることなく適正に配置ができ、可撓膜体の張力を補完し、所定形状が保持できる。このように、テンションテープを適正に配置することにより、可撓膜体の張力抑制、形状維持が図られるため、可撓膜体の膨らみを適正に確保することができ、圧力上昇への安全性、信頼性が向上する。
【0018】
請求項4記載のドーム屋根構築用の空気膜体構造は、上記請求項1及び3記載のテンションテープに予張を与えてテンションテープ相互の交点の位置をマーキングして縫製止めし、さらにテンションテープの先端部に輪止めを設け、この輪止めに円周方向に沿う周囲ロープを挿通し一体化して形成したので、テンションテープ相互の交点間隔を正確に確保し、テンションテープを適性確実に可撓膜体の上面に配置することができ、絡み付いてもつれることがなく、順繰りにドーム屋根周囲に沿って容易に展開させることができるため、空気圧を受ける可撓膜体の信頼性が向上する。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】可撓膜体の空気圧による膨張状況とテンションテープの配置状況を示す正面説明図である。
【図2】可撓膜体の製作形状を示す説明図で、(a)はその正面図、(b)はその平面図である。
【図3】可撓膜体のテンションテープの配置状況を示す全体平面説明図である。
【図4】截頭円錐形状の可撓膜体の上面に配置する格子状のベーステープであるAパターンテンションテープを示す説明図で、(a)はその概略斜視図、(b)はその概略平面図である。
【図5】截頭円錐形状の可撓膜体の上面に配置するテンションテープで、45度傾斜テープであるBパターンテンションテープ3Bと屋根中心を通るクロステープであるCパターンテンションテープ3Cとを一体化ものを示す説明図で、(a)はその概略斜視図、(b)はその概略平面図である。
【図6】伸びのない部材で形成したAパターンのテンションテープの配置事例を欠球形状に製作する場合の格子状のベーステープを示す説明図で、(a)はその概略斜視図、(b)はその概略平面図である。
【図7】欠球形状に製作するテンションテープのBパターン45度傾斜のクロステープとCパターン屋根中心を通るクロステープを示す説明図で、(a)はその概略斜視図、(b)はその概略平面図である。
【図8】テンションテープの部分説明図である。
【図9】ドーム屋根を構築するエアードーム工法を説明する側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係るドーム屋根構築用の空気膜体構造の実施形態を、図1乃至図8に基づいて説明する。
図1は、空気圧による可撓膜体5の膨張状況と、テンションテープ3の配置状況を示す。
貯槽の円筒側壁4の直径Dはドーム屋根の直径Dに相当し、実線で示すドーム屋根の所定形状Sは中心点Oとする半径dの円弧とする。
可撓膜体5の製作時の全体形状は、平面円形の天頂部膜体1と外周コーン状の環状部膜体2とで截頭円錐形状Mに製作した場合を示す。
この可撓膜体5は伸びが大きく、縦方向と横方向の伸び率が異なり、横方向の伸びが縦方向の伸びに比べて20〜30%大きい。その為、可撓膜体5を所定ドーム形状より小さいドーム形状の大きさで製作し、空気圧で昇圧しモルタル施工時の高い内圧力にすると、図1の二点鎖線で示すように外周部位が所定ドーム形状よりも膨らみ天頂部が扁平となる形状、つまりおわん形状Hとなり所定のドーム形状を得ることが難しい。そこで、可撓膜体5は予め截頭円錐形状Mで設計、製作をするが、強度を確保し形状を所定ドーム形状に矯正して整えるために図3〜図7で示す3種ABC各パターンのテンションテープを可撓膜体5の上面に横断的及び縦断的に交叉させて配置して、実線Sで示す所定ドーム形状を形成する。
【0021】
図2(a)は可撓膜体5の正面図、図2(b)はその平面図であり、図1に示す可撓膜体5の製作形状を示し、空気圧による膨張状況を示す。
ドーム屋根を形成するための可撓膜体5のすそ部における立ち上り角度は、水平方向から斜め上方に向けて傾斜する角度、つまりすそ部における立ち上り角度αを15度〜18度とし、頭を切り取った形状の截頭円錐形状Mとし、可撓膜体5のセンター高さは仕上がりドーム屋根形状の高さ、つまり所定ドーム高さよりも高く設定して形成する。
図2(b)に示すように、平面円形の天頂部膜体1と扇形状の環状部膜体2とで截頭円錐形状Mに形成する可撓膜体5は、テンションテープを配設しない状態で高い空気圧を与えて図2(a)の二点鎖線Sで示す所定のドーム形状を得ることは難しく、通常は破線Hで示すように外周部が膨らんで天頂部が扁平となっておわん形状となる。そこで、所定のドーム形状を得るために空気圧を上げた際に膨張する可撓膜体の張力不足分を補い、つまり張力を補完し、かつ形状を整え保持するために後述するテンションテープを配設する。
【0022】
図3は、可撓膜体5の上面に設けるテンションテープ3の配置状況を示す全体平面説明図である。
可撓膜体5の上面に、格子状のベーステープであるAパターンテンションテープ3Aと45度傾斜テープであるBパターンテンションテープ3Bと屋根中心を通るクロステープであるCパターンテンションテープ3Cとをそれぞれ配設する。
このA,B,C各パターンテンションテープ3A、3B、3Cを可撓膜体5の上面に適正に配置することで、空気圧を高めた時に可撓膜体5が必要とする張力を補助、つまり張力を補完し、可撓膜体5のすそ部付近の外周部の膨らみを押えて抑制し所定ドーム形状を保持する。
【0023】
図3に示すように、ABC各パターンのテンションテープ3A、3B、3Cを組合せることにより、可撓膜体5の発生張力を抑制し、変形のない所定のドーム形状が確保でき、安全性及び信頼性が向上する。
また、可撓膜体5の上面に配置するテンションテープ3は、図4(a)、(b)又は 図6(a)、(b)に示すAパターンテンションテープ3Aを一体作り、図5(a)、(b) 又は図7(a)、(b)に示すBパターンテンションテープ3BとCパターンテンションテープ3Cを組合せたB、Cパターンテンションテープを別個に製作したので、工場での製作が簡単容易となり、現場取付けの作業も容易に作業性良くできる。
テンションテープ3の配置と取付けの手順は、次のように行う。
先ず、可撓膜体5を吊り込んで貯槽の上部周縁に取付け、100pa(パスカル)程度の低圧の空気圧を与えて可撓膜体5の上面で作業者が作業出来る程度の緊張状態に保持する。
次いで、可撓膜体5上面へテンションテープ3の吊り込み、展開、配置、固定を順次行うが、まず初めに格子状のベーステープであるAパターンテンションテープ3Aを吊り込み展開し所定の位置に配列し、続いて45度傾斜テープであるBパターンテンションテープ3Bと屋根中心を通るクロステープであるCパターンテンションテープ3Cとを一体化したものを吊り込み展開し、上記Aパターンテンションテープ3Aの上にかぶせて所定の位置に配列し、このA及びB+Cの各パターンテンションテープの先端を側壁上端部に固定する。
その後に、空気圧を1,800pa以上に上げて可撓膜体5を膨張させ、上記テンションテープ3に抑制された所定ドーム屋根形状に保持する。
【0024】
伸びを抑制した部材で形成したABC各パターンのテンションテープ3の配置事例について、図4(a)、(b)及び図5(a)、(b)に基づいて説明する。
テンションテープ3は、可撓膜体5が高い空気圧を受けて膨らんだ場合、膜体に追従し伸びて張力を発生するため、可撓膜体5の製作形状に合わせた截頭円錐形状上面の双曲線と同じ長さ寸法に形成する。
ABC各パターンのテンションテープ3は、強靭な引張り強度を有する合成樹脂繊維材、例えば伸びを抑制した高密度のポリエステル樹脂繊維を織込んだ材料で厚さ3〜6ミリメートル程度の部材を使用し、断面矩形の平帯形状、或いは断面扁平楕円形状の紐状のテープ等で形成する。このような厚手の繊維材料からなるテンションテープ3は、交差部が厚くならないように3本以上重なって交差しないように配慮する。
【0025】
図4(a)、(b)は、截頭円錐形状に製作するテンションテープの3A1パターン格子状のベーステープを示す説明図である。
3A1パターン格子状のベーステープは、図示例では截頭円錐形状の可撓膜体5の上面に、直交格子状に縦横8本ずつ合計16本を配置した場合を示すが、ドーム屋根の直径の大きさに対応して20本、24本、・・・と増加させて可撓膜体5に発生する張力を補完するようにする。
【0026】
図5(a)、(b)は、截頭円錐形状に製作するテンションテープの3B1パターン45度傾斜のクロステープと3C1パターン屋根中心を通るクロステープを示す説明図である。
3B1パターン45度傾斜テープは、図示例では截頭円錐形状の可撓膜体5の上面に、四方向に合計8本配置した場合を示すが、ドーム屋根の直径の大きさや内圧力に対応して、貯槽の外周端より2本(合計8本)、3本(合計12本)、4本(合計16本)、・・・と増加させ、3A1パターン格子状の本数と同数まで増加して膨らみを押え形状を整えるようにする。
屋根中心を通る3C1パターンクロステープは、図示例では円錐形状の可撓膜体5の上面に、中心で90度に直交する2本を配置した場合を示すが、ドーム屋根の直径が大きい場合は中心で45度に交差させバランスを保つように4本を設け、天頂部の高さを抑制し、所定のドーム高さを保持する。
なお、3B1パターン45度傾斜テープと3C1パターン屋根中心を通るクロステープは、製作時に一体化し、設置作業時にバランス良く位置合わせをし易くする。
【0027】
伸びのない部材で形成したABC各パターンのテンションテープ3の配置事例について、図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)に基づいて説明する。
テンションテープ3は、可撓膜体5が高い空気圧を受けて膨らんでも伸びが殆んどないため、欠球形状で所定ドーム形状の円弧長さ寸法に形成する。
強靭な引張り強度を有する金属性や合成樹脂性の部材、例えば伸びのないワイヤや繊維材を使用し、断面矩形の平帯形状、或いは断面扁平楕円形状の紐状のテープ等で形成する。このような厚手の材料からなるテンションテープ3は、交差部が厚くならないように3本以上重なって交差しないように配慮する。
【0028】
図6(a)、(b)は、欠球形状に製作するテンションテープ3のうち3A2パターン格子状のベーステープを示す説明図である。
3A2パターン格子状のベーステープは、図示例では欠球形状の可撓膜体5の上面に、直交格子状に縦横8本ずつ合計16本を配置した場合を示すが、ドーム屋根の直径の大きさに対応して20本、24本、・・・と増加させて可撓膜体5に発生する張力を補完するようにする。
【0029】
図7(a)、(b)は、欠球形状に製作するテンションテープ3の3B2パターン45度傾斜テープと、屋根中心を通る3C2パターンクロステープを示す説明図である。
3B2パターン45度傾斜テープは、図示例では欠球形状の可撓膜体5の上面に、四方向に合計8本配置した場合を示すが、ドーム屋根の直径の大きさや内圧力に対応して、貯槽の外周端より2本(合計8本)、3本(合計12本)、4本(合計16本)、・・・と増加させ、3A2パターン格子状の本数と同数まで増加して膨らみを押え形状を整えるようにする。
屋根中心を通るC2パターンクロステープは、図示例では欠球形状の可撓膜体5の上面に、中心で90度に直交する2本を配置した場合を示すが、ドーム屋根の直径が大きい場合は中心で45度に交差させバランスを保つように4本を設け、天頂部の高さを抑制し、所定のドーム高さを保持する。
なお、3B2パターン45度傾斜テープと3C2パターン屋根中心を通るクロステープは、製作時に一体化し、設置作業時にバランス良く位置合わせをし易くする。
【0030】
図8は、テンションテープ3の部分説明図である。
テンションテープ3は、次のように寸法を定めて、あらかじめ工場で一体に製作しておく。
所定のドーム形状にした際のテンションテープ3の配置間隔a,b、及びテンションテープ3相互の交点、つまり交差部6を算出し、テンションテープ3に予め5〜10kgGの引張り荷重、つまり予張を与えてたるみを取り、所定位置の各交差部6をマーキングする。また、テープ周端部にテープ位置番号を記載する。Aパターン及びB+Cパターンごとに、マーキングした交差部6を斜めに1本又はクロスで縫製止めする。殊にCパターンクロステープの天頂部の交差部は、中心位置を安定化させるためクロスの2本縫いとする。
このテンションテープ3の周縁部7に輪止め8を設け、その輪止め8に周囲ロープ9を挿通しておく。
なお、設置後の昇圧時にテンションテープ3が所定以上に曲った場合には、交差部6の縫製糸目をカッターで切断してテープの直線を確保し、無理な張力を受けないようにする。
このように、テンションテープ3の端縁を輪止め8として周囲ロープ9を設けることにより、テンションテープ3の配設作業時に、テンションテープ3が絡み付いてもつれることがなく、順繰りにドーム屋根周囲に沿って容易に展開させることができる。
なお、このテンションテープ3の周縁部7の先に設けた周囲ロープ9は、テンションテープ3配列時に切断し撤去する。

【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、水や石油等の液体、低温液化ガス、消化ガス、粉体、粒状物などの各種貯蔵物を貯蔵する種々の貯槽等構築物について、その上部を被覆するドーム屋根の可撓膜体及びテンションテープに広範囲に適用することができる。

【符号の説明】
【0032】
1 天頂部膜体
2 環状部膜体
3 テンションテープ
4 側壁
5 可撓膜体
6 交差部
7 周縁部
8 輪止め
9 周囲ロープ

101 貯槽
102 ドーム屋根
103 底版
104 側壁
105 可撓膜体
106 送風機



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム屋根を形成するための可撓膜体のすそ部における立ち上り角度が水平方向に対して斜め上方に15度〜18度である截頭円錐形状に形成し、該可撓膜体の截頭円錐頂部の高さは仕上りドーム屋根形状の高さよりも高く設定して形成し、この可撓膜体の上面に設置するテンションテープは、伸びが抑制された部材を用いて可撓膜体に沿う截頭円錐形状上面の双曲線長さ寸法に横断的及び縦断的に交叉させて配置形成したことを特徴とするドーム屋根構築用の空気膜体構造。

【請求項2】
ドーム屋根を形成するための可撓膜体をすそ部における立ち上り角度が水平方向に対して斜め上方に15度〜18度である截頭円錐形状に形成し、該可撓膜体の截頭円錐頂部の高さは所定ドーム高さよりも高く設定して形成し、この可撓膜体の上面に設置するテンションテープは、伸びのない部材を用いて欠球形状で所定ドーム形状の円弧長さ寸法に横断的及び縦断的に交叉させて配置形成したことを特徴とするドーム屋根構築用の空気膜体構造。

【請求項3】
上記請求項1又は2記載のテンションテープを、可撓膜体に発生する張力を補完する格子状のベーステープであるAパターンテンションテープと、このAパターンテンションテープから45度傾斜し可撓膜体のすそ部付近の周辺の膨らみを押えて矯正する45度テープからなるBパターンテンションテープと、天頂部を通りドーム高さを押えて保持するクロステープよりなるCパターンテンションテープとで構成し、上記BパターンテンションテープとCパターンテンションテープは一体化し上記Aパターンテンションテープとで2体のテンションテープに形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のドーム屋根構築用の空気膜体構造。

【請求項4】
上記テンションテープに予張を与えてテンションテープ相互の交点の位置をマーキングして縫製止めし、さらにテンションテープの先端部に輪止めを設け、この輪止めに円周方向に沿う周囲ロープを挿通し一体化して形成したことを特徴とする請求項1及び3記載のドーム屋根構築用の空気膜体構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−137328(P2011−137328A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297595(P2009−297595)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】