説明

ナスの漬け物の製造方法

【課題】 漬け物によるナスの退色を有意に防止できるナスの漬け物の製造方法とナスの漬け物を提供する。
【解決手段】 生ナスを、黒米の抽出エキスを有効成分として含有してなるナスの漬け物用退色防止材に浸漬することによるナスの漬け物の製造方法としたものであり、前記黒米の抽出エキスは、ポリフェノール含量が15.0%以上、かつアントンアニン含量が5.0%以上であるのが良く、また、それによって得られるナスの漬け物とした。
【効果】 当該製造方法は、安全性及び経済性を備えており、それを用いることににより、ナスの退色が抑制されたナスの漬け物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナスの漬け物の製造方法とナスの漬け物に関する。詳細には、漬け物によるナスの退色を有意に防止できるナスの漬け物の製造方法とナスの漬け物に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜は調理することで食べやすくなり食味が向上する。しかしながら、野菜を切断すると組織が破壊され、成分に変化が生じたり、退色や褐変が起って外観が悪くなったりする。また、加熱調理によりテクスチャーが変化し、口腔内での食感が変わったり、色素が分解され退色してしまったりする。一般にナスの果皮に含まれる色素は不安定で、熱、光、pHなどにより、酸化、分解されやすく、容易に退色したり変色したりする。特に、惣菜などは中身の見える透明容器に入れられることが多く、長時間蛍光灯の光に曝されると、退色を生じ商品価値が著しく低下してしまうことになる。この退色は、消費者の購買意欲を減退させるなどの問題となる。
【0003】
生ナスが物理的損傷を受けたり、微生物の影響を受けたりすると、その部分の組織は退色するが、これは酵素的褐変によるものである。また、生のナスを切断したときの褐変現象も酵素的褐変によるものである。この酵素的褐変は、ポリフェノール酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)により、ナスに含まれるフェノール物質が酸化されるため退色することが知られている。
ナスの代表的な色素であるナスニンは、デルフィニジン系の色素で水溶性のため、そのまま煮炊きすると、ナスからこの色素が溶出してしまう。ところが、180℃前後まで食用油を加熱し「素揚げ」を行うことで、果肉を柔らかく食べやすくするために火を通すのと同時に、果皮に多く含まれるポリフェノールオキシダーゼを失活させることができ、一種の退色防止にも繋がっている。しかしながら、この方法では、加熱調理後の光による退色をほとんど防止できない。
【0004】
ナス特有の濃い紫色を生かすことが、ナスの調理の要点となり、ナスの漬け物にミョウバンや釘を入れるのもその例である。長時間の加熱を避けることも大切で、味噌汁の具にするときも、一応火の通ったところでなるべく早く味噌を入れて仕上げることが推奨されている(非特許文献1)。ナスの漬け物にミョウバンを入れることを応用し、ナスの退色を防止する手段として、生ナスをミョウバンに浸漬した後、フライ処理する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、ミョウバンを使用するとナスの色が紫色から濃紺色に変化し、ナス本来の色が失われてしまうため好ましくない。
その他、合成色素、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、青色1号、青色2号などを用いる方法も採用されているが、天然物を使用する方が好ましく、この天然物を使用するというのが近年の消費者の嗜好にも合致している。
【0005】
【特許文献1】特開平2―9338号公報
【非特許文献1】新編 日本食品事典、第374−375頁、発行所医歯薬出版(株)、1982年2月25日第1版発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記した従来技術が抱える問題点を踏まえ、安全性及び経済性を備えた、漬け物によるナスの退色を有意に防止できるナスの漬け物の製造方法とナスの漬け物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、生ナスを、黒米の抽出エキスを有効成分として含有してなるナスの漬け物用退色防止材に浸漬するナスの漬け物の製造方法に関する。本発明の第2の発明は、黒米の抽出エキスが、ポリフェノール含量が15.0%以上、かつアントシアニン含量が5.0%以上である黒米エキスである第1の発明に記載のナスの漬け物の製造方法であり、本発明の第3の発明は、 漬け物が、ぬか漬け、ぬかみそ漬け又はカラシ漬けである第1又は第2の発明に記載のナスの漬け物の製造方法に関する。更に、本発明の第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明に記載の製造方法により得られるナスの漬け物に関する。
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、生ナスを、黒米エキスを有効成分として含有するナスの退色防止材を用いてナスの漬け物を製造することにより、ぬか漬け、ぬかみそ漬け又はカラシ漬けといったナスの漬け物における退色防止に効果があることを確認できた。
【発明の効果】
【0009】
本発明のナスの退色防止材は、ポリフェノール含有物及び/又は米糠酵素分解物を含有している、例えば、調味液であり、生ナスをこの調味液に浸漬した後、加熱調理する、あるいは、浸漬したまま加熱調理することにより、ナスの退色が抑制され、かつ光照射後も退色を抑制することができる。更に、前記の調味液を用いることにより、加熱調理加工中、加熱調理加工後のナスの退色が抑制されたナス加工食品を得ることができる。また、加熱調理を行わないナスの漬け物における退色防止には、ポリフェノール含有物が、黒米エキスを有効成分として含有する物であるナスの漬け物用退色防止材が有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体的に説明する。
ナスは、ナス科の植物で、果皮の色は紫〜黒紫色、黄緑色、白色などがあるが、本発明では紫〜黒紫色のナスの退色を防止するのに特に好適である。果実の形態によって、丸形、卵形、長卵形、中長形、長形、大長形と分類され、各種の品種、産地があるが特に限定はない。
【0011】
ポリフェノールとは、紫黒米、黒米、赤米、黒豆、赤ぶどう、ブルーベリー、赤キャベツなどの色素成分、グレープフルーツの苦味成分、お茶の渋味成分、紅茶の色素成分、渋柿に含まれるタンニンなど、分子内にフェノール性水酸基を数個含む物質で、これらの化合物の総称である。
ポリフェノールは、モノマータイプとポリマータイプに大別できる。モノマータイプはフラボノイドといわれる化合物群、コーヒーなどに含まれるクロロゲン酸やフェルラ酸及びこれらの類縁化合物などが代表的なものである。一方、ポリマータイプはタンニンが挙げられる。タンニンは、縮合型タンニンと加水分解型タンニンに分類される。
イチゴ、赤キャベツ、赤ぶどう、紫イモやハイビスカスの花などの色素成分であるアントシアニン色素、ウコンの色素成分、グレープフルーツの苦味成分であるナリンギン、ビタミンPともいわれソバ、アズキ、ミカンなど多くの野菜や果実に含まれるルチンや温州ミカンに含まれるヘスペリジン、茶の渋味成分であるカテキン類、紅茶の色素などこれらの物質はすべてフラボノイドである。4000以上の化合物が知られているが、その大部分は配糖体として存在しており、茶などに含まれるカテキン類を除くと遊離の状態で存在することは少ない〔FFIジャーナル(FFI JOURNAL),Vol.209,No.5,p.441−446,2004年〕。
【0012】
本発明のナスの退色防止材は、ポリフェノール含有物及び/又は米糠酵素分解物を含有していることを特徴としている。ナスの退色防止には、ポリフェノールを多く含むものが非常に有効である。ポリフェノール含有物から効率よくポリフェノールを抽出することが重要である。ポリフェノールの中でも、アントシアニジンをアグリコンとする配糖体であるアントシアニンが特に好適である。
本発明におけるポリフェノール含有物とは、前記したポリフェノールを含むもの、例えば、ぶどう、紫黒米、黒米、赤米、黒豆、ローズマリー、カシス、ブルーベリー、エルダーベリー、ライチ、ザクロ、ビールエキス、カカオ、クロロゲン酸、ユーカリ、グリコシルルチン、ぶどう種子、クランベリー、大豆イソフラボン、ミント、松樹皮、月見草、グァバ葉、フキ、オリーブ、コーヒー豆、シソ、ルチン、ユズ、キウイ、バラ花びら、赤ショウガ、ビルベリー、ミリシトリン、リンゴポリフェノール、イソクエルシトリン、モノグルコシルヘスペリジン等が挙げられ、そのもの、若しくは果実を例にとれば圧搾して果汁としたものなどそれらの加工物も含まれる。加工物の形状に限定はなく、粒状、粉末状、ペースト状、液体等が挙げられる。ポリフェノール含有物の加工方法に特に限定はなく、例えば、黒米を臼等で細かく挽いて粉末化する方法が挙げられる。
ポリフェノール含有物のうち、ぶどう、黒米、黒豆、ローズマリー、カシス、ブルーベリー、エルダーベリー、ビール、ライチ種子、キウイ種子、ぶどう種子、赤ワイン、カカオ、が好適な例として挙げられる。更に、ワイン、果実酒などのポリフェノールを多く含む酒類でもよい。
特にナスに対する退色防止効果の大きい果汁は、カシス果汁、ブルーベリー果汁、ぶどう果汁の順であり、これらはポリフェノール含量が1,000mg/kg以上である。なお、黒豆の水抽出液では、アントシアニン含量が多いのに関わらずほとんど無色であり、ナスの退色防止に有効であることから、色素等の着色によるナスの退色防止ではなく、アントシアニンを含むポリフェノールが何らかの形で有効に働いているものと推定される。
【0013】
本発明における米糠とは、一般に赤糠(精米歩合約90%)、トラ糠(精米歩合約90〜80%)、白糠(精米歩合約80%以上)と呼ばれているいずれの糠でもよく、米の種類、品種に特に限定はない。本発明では、例えばアミラーゼ、プロテアーゼ等で米糠の酵素処理を行い、米糠酵素分解物としたものを用いればよい。
本発明に用いる米糠原料は、米糠そのものでもよいし、ヘキサンあるいはその他の溶剤で油脂成分を除いた脱脂米糠でもよい。米粒表層部にはタンパク質、ビタミン類、油脂類、無機物など多くの成分が豊富に存在し、これらの物質にもナスの退色防止効果が認められる物質を含有しているので、脱脂しない米糠が好ましい。ポリフェノール含有物と併用することにより、相乗的にナスの退色防止を行うことができる。
【0014】
前記したポリフェノール含有物及び/又は米糠酵素分解物を更に抽出物としてもよい。
抽出方法に特に限定はなく、熱水抽出法や有機溶媒(例えばエタノール)抽出法等が挙げられる。抽出条件は、作業効率等を勘案して適宜選択すればよく、必要に応じて酵素分解、濃縮、脱色、脱臭、乾燥等の処理を施すことも可能である。
本発明のナスの退色防止材の形態に特に限定はなく、例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状、乳液状、ペースト状等に調製し、生ナスを浸漬する際に、水や調味液等に分散させて使用すればよい。
【0015】
本発明のナスの退色防止材の使用方法の一例を以下に示す。
なお、本発明の「加熱調理」とは、焼く、煮る、蒸す、揚げるといった処理のことをいう。
まず、ナスの浸漬処理を行う。生ナスを、本発明のナスの退色防止材を含む浸漬液に接触させる。ナス全体が浸漬液にひたるようにするか、一部浸漬している量であれば、時々ナスの位置を変えて全体に満遍無く接触するようにすればよい。但し、浸漬時間が長くなると、ナスから色素が溶出してしまう場合もあるので、浸漬時間は30分から17時間程度が好ましい。例えば、5℃前後の温度で浸漬した場合には浸漬時間を長くし、25℃程度の温度で浸漬した場合には浸漬時間を約3〜6時間とすればよく、浸漬時間は適宜選択して行えばよい。浸漬終了後のナスは、浸漬液から取り出した後、速やかにナス表面に付着した浸漬液を拭き取り、短時間の加熱調理を行う。加熱温度は一般的な素揚げをするときの温度、160〜200℃で行えばよい。加熱時間は、例えば、180℃の場合には1〜5分程度が好ましい。加熱時間が短すぎるとナスが硬いままで柔らかくならないので、食感を確認しながら加熱時間を適宜選択するのが望ましい。また、このまま放冷すると、放冷時間に応じてナスの退色が促進されるので、加熱調理後速やかに冷却するのがより好ましい。この場合、5〜10℃程度に冷却されたナスの調味付けのための調味液に浸漬しておくと、調味付けを行いながらナスの冷却ができるので好都合である。
【0016】
一方、生ナスを浸漬液に浸漬したまま加熱調理することもナスの退色防止には有効である。
本発明のナスの退色防止材を含む浸漬液が沸騰してから生ナスを浸漬液に投入し、1〜10分程度煮沸する。これ以上の時間をかけて煮沸すると、熱によるナスの退色を促進させることになる。また、ナスを浸漬液に浸漬したまま加熱調理を行うと、ナスの温度が徐々に上昇し、浸漬液が沸騰温度に達するまでにナスに含まれるポリフェノールオキシダーゼが活性化され、加熱調理中にナスの退色が進行するので、必ず浸漬液が沸騰してから加熱調理することが重要である。この場合も、前記した素揚げをするときと同様に、加熱調理後速やかに冷却することによりナスの退色を防止することができる。
【0017】
本発明のナスの退色防止材の添加量は、ポリフェノール含有物及び/又は米糠酵素分解物由来成分の組成に応じて適宜設定すればよく、特に限定はない。使用するポリフェノール含有物の種類により、溶解度や退色防止効果が異なるため一概には決められないが、ナス1000部に対して乾物換算の重量比で0.1〜100部のナスの退色防止材の使用が好ましい。なお、ナスの退色防止材の添加濃度が高いほどナスの退色防止には顕著な効果を示す。
【0018】
ナス果皮の退色の程度を評価する方法としては、加熱調理後、光照射したナス果皮を、分光測色計を用いて測色(ヒュー、バリュー、クローマ)(Hue、Value、Chroma)することにより行った。分光測色計を用いて測色すると、マンセル表色系の3つの属性、すなわち色相(Hue)・明度(Value)・彩度(Chroma)として数値化される。
色相(Hue)は、色の質を区別する属性で、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、青(B)、及び紫(P)の5色が主要な色相とされている。色の循環移行性に従って環状を描いたものをマンセルの色相環と呼び、主要な5色相の間にPB(紫青)、RP(赤紫)といった中間色相を設け、色相の尺度を各々20種としそれぞれ1から10までの番号を付している。
色の明るさ暗さの度合いは明度(Value)と呼び、光のない無彩色の黒を最下部、その数値を0とし、その対照としての白色を最上部、10とし10段階に分けている。
彩度(Chroma)は「あざやかさ」の度合いを示す性質である。
ナスの色は個体差が大きく、退色防止に関する3属性の具体的な目標値を示すことは困難である。しかしながら、熱又は光により退色するとき、ナスの色相はマンセルの色相環の循環移行性に従って、紫(P)に近い色相から赤(R)に近い色相となる。例えば、マンセルの色相では5P−6P−7P−8P−9P−10Pの順に青みの紫色から徐々に赤色が強くなり、そこから更に1RP−2RP−3RP−4RP−5RP−6RP−7RP−8RP−9RP−10RPの順に赤色へと色相が変化する。また明度の値も退色に従って高くなる傾向がある。これら色相・明度に彩度を加えた三つの属性で特定の色が表現される。
本発明においては、色相がP(紫)の範囲内の値を示すとき、あるいは色相がより値の低いRP(赤紫)を示すとき、退色が防止されているものと評価できる。色相が近い場合は、更に明度の値を参照し、明度が低いものを退色が防止されているものと評価すればよい。
なお、光照射の条件は、例えば、照度13,000ルクス(lx)、20℃の条件下で3時間行えばよい。
本発明のナスの退色防止材を用いることにより、加熱調理加工中、加熱調理加工後のナスの退色が抑制された、ナスの煮びたし、ナスの天ぷらなどのナス加工食品を得ることができる。
【0019】
本発明のナスの退色防止材は、熱や光によるナスの退色を有意に防止できるものであるが、加熱調理を行わないナスの漬け物に対しても有用な退色防止材である。ナスの漬け物用退色防止材としては、ポリフェノール含有物のうち、黒米エキスを有効成分として含有することが好ましい。黒米エキスは、黒米(中国の陝西省漢中地方原産の古代米の一種であり、紫黒米、紫米とも呼ばれる)の抽出エキスであり、水に対する溶解性に優れたものが好ましく、紫黒色の粉末であり、水溶性である、黒米エキス−P、黒米エキス−PC〔ともにオリザ油化(株)製〕が好適な例として挙げられる。なお、黒米エキス−P、黒米エキス−PCのポリフェノール含量は15.0%以上、アントシアニン含量は5.0%以上が製品規格となっている。漬け物の種類としては、ぬか漬け、ぬかみそ漬け、カラシ漬けなどに適している。浅漬けに用いてもよいが、ぬか床を用いた発酵によるものに特に好適である。生ナスを、黒米エキスを例えば0.1w/w%含有する水溶液に浸漬した後、予め用意したぬか床に漬込めばよい。他の用途としては、ナスのサラダへの適用が挙げられる。
【0020】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
黒米エキス−P〔オリザ油化(株)製〕を0.1w/w%含有する水溶液100gを調製し、生ナス1本を投入し、室温で3時間浸漬後、ナス表面に付着した浸漬液を軽くふき取り、縦方向に半分に切断し、原材料として米ぬか、食塩、香辛料、香料、増粘多糖類からなる市販のぬか漬けの素〔エスビー食品(株)製〕に切り口を下にして、5℃で3日間漬込んだ(本発明1)。対照は、液には浸漬せずに、生ナスを縦方向に半分に切断し、同様にぬか漬けの素に漬込んだものとした(対照1)。それぞれについて、光安定性試験機PT−400NC〔(株)日本医化器械製作所製〕を使用して、照度13,000ルクス、20℃の条件下で3時間光照射を行い、光照射後のナス果皮の色度を測定した。色度の測定は、分光測色計であるスペクトロフォトメーター(SPECTROPHOTOMETER) CM−3500d〔ミノルタ(株)製〕で行った。結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1の結果より、やや黄(Y)の色相を帯びたものの、対照1よりも、本発明1(色相2.26 YR)の方がナスの退色は防止されていた。色相が同じYRなので、明度の値を比較すると、対照1が2.53に対し、本発明1は1.70と低く、退色が防止されていた。スーパーやコンビニエンスストアの棚に並んでいても見た目がよくなるので、本発明の黒米エキスを含有するナスの漬け物用退色防止材は有用であることがわかった。
【実施例2】
【0024】
小ナスを用いてナスのカラシ漬けを調製した。小ナス、すなわち小粒の生ナスを用いた以外は、実施例1と同様の条件で浸漬を行い、和ガラシを主体とした漬け床に3日間漬込んだ。得られたナスのカラシ漬けは、ナス果皮の色も鮮やかであり、カラシの色との相性もよく、見た目にもよいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
ポリフェノール含有物及び/又は米糠酵素分解物を含有する本発明のナスの退色防止材を用いることにより、特に光によるナスの退色を防止することができる。使用するポリフェノール含有物及び/又は米糠酵素分解物は、安全性、経済性を備えた素材であり、ナスの加熱調理加工中、加熱調理加工後の退色が抑制されたナス加工食品を得ることができ、また、特に黒米エキスを含有する退色防止材は、加熱調理を行わないナスの漬け物に対しても有用な退色防止材である。製品の品質劣化防止に貢献できるので、本発明は有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ナスを、黒米の抽出エキスを有効成分として含有してなるナスの漬け物用退色防止材に浸漬することを特徴とするナスの漬け物の製造方法。
【請求項2】
前記黒米の抽出エキスが、ポリフェノール含量が15.0%以上、かつアントシアニン含量が5.0%以上である黒米エキスである請求項1に記載のナスの漬け物の製造方法。
【請求項3】
前記漬け物が、ぬか漬け、ぬかみそ漬け又はカラシ漬けである請求項1又は2に記載のナスの漬け物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られるナスの漬け物。

【公開番号】特開2012−205602(P2012−205602A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172826(P2012−172826)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2007−153765(P2007−153765)の分割
【原出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(302026508)宝酒造株式会社 (38)
【Fターム(参考)】