説明

ナス属(SOLANUMGENUS)植物からの水溶性抽出物での炎症及び皮膚の光損傷の治療及び/又は予防、並びに皮膚の光防護

【課題】ナス属の植物からの水溶性抽出物を含有する、炎症及び皮膚の光損傷を予防及び治療するための医薬組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、ナス属の植物からの水溶性抽出物を含有する、炎症及び皮膚の光損傷を予防及び治療するための医薬組成物に関する。組成物は光防護効果も有し、化粧用組成物として用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年5月12日出願の台湾出願第100116659号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ナス属の植物からの水溶性抽出物を含有する、炎症及び皮膚の光損傷を予防及び処置するための医薬組成物に関する。組成物は光防護効果も有し、化粧用組成物として用いることもできる。
【背景技術】
【0003】
好気性生物においては、好気性呼吸において酸素が利用され、それによって活性酸素種(ROS)及びフリーラジカルが生成される。紫外線(UV)、電離放射線、及びある種の薬物療法又は生体異物も、ROS及びフリーラジカルの生成を刺激する。ROS及びフリーラジカルは不安定であるため、細胞内の成分(例えば、DNA、タンパク質、及び脂質など)と反応する可能性があり、それによって細胞及び組織に対して酸化的損傷をもたらす。
【0004】
一般的に、生物体における抗酸化酵素は細胞及び組織を酸化的損傷から保護するための相互作用性のネットワークを形成する。酸化ストレスは、ROS及びフリーラジカルが細胞又は組織の相互作用性のネットワークによって提供される抗酸化能力を超えた場合に形成する。酸化ストレスは炎症及び光損傷の病理過程において重要な役割を果たすことが報告されている(Simon R.ら(2010年)、Free radical biology & Medicine、49巻、1603〜1616頁;Afaq F.ら(2006年)、Experimentla Dematology、15巻、678〜684頁)。
【0005】
炎症は、細胞又は組織の、病原及び外部のストレス性の刺激に対する防御反応である。炎症の間、損傷部位の細胞又は組織は、NF−kBによって特定の遺伝子の発現を刺激し、引き続きケモカインの発現が増大し、それによって損傷部位に多核白血球、単球、マクロファージ、及び肥満細胞の蓄積がもたらされる(即ち、浸潤)。動員されたマクロファージは、病原体の表面上に発現されたリポ多糖(LPS)によって活性化される。活性化されたマクロファージは炎症誘発性遺伝子(シクロオキシゲナーゼ−2遺伝子、COX−2、及び誘導性一酸化窒素合成酵素遺伝子iNOSを含む)の発現を誘発して炎症反応を強化する。さらに、活性化されたマクロファージはROS及びフリーラジカルを放出して病原体を死滅させる。しかし、炎症反応が長期化すると、ROS及びフリーラジカルの過剰の蓄積により酸化ストレス及び損傷となり、それによって慢性の炎症がもたらされ、最終的に慢性疾患又は癌の可能性が助長される。
【0006】
光損傷は、生物体の皮膚が紫外線(とりわけ、B紫外線、UV−B)に曝露された場合に生じ、それにより、皮膚の損傷となる。UV照射に曝露されると、皮膚細胞におけるROS及びフリーラジカルの蓄積が加速し、皮膚細胞に対する酸化ストレスが増大し、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現を誘発し、それによって酸化的光損傷がもたらされる。酸化的光損傷の症状には、末梢血管拡張、表皮の非薄化、コラーゲン線維及び弾性線維の低減、乾燥、しわの形成、炎症細胞の浸潤、皮膚の早期老化、及び皮膚の病理学的変化が含まれる。
【0007】
近年、植物由来の植物化学物質又は植物化学予防薬が、抗酸化性の、抗炎症性の性質を有し、光損傷を改善することが証明されている。植物化学物質の例には、緑茶ポリフェノール(GTP)、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、ゲニステイン、リスベラトロール、クルクミン、アピゲニン、リコピンなどが含まれる(Adhami V.M.ら(2008年)、Photochem.Photobiol.、84巻、489〜500頁)。植物化学物質は、望ましくない副作用がなく、臨床適用により安全であることが証明されており、医学研究の分野で注目を集めている。
【0008】
ナス属の植物には、トゲハリナスビ(Solanum undatum)と同義のソラナム・インカナムL(Solanum incanum L.)、ソラナム・インカナム・ルイズ及びパブ(Solanum incanum Ruiz.&Pav.)、ソラナム・コアグランス・フォルスカル(Solanum coagulans Forsskal;英語でビターアップル)、ソラナム・インディクム(Solanum indicum)、イヌホオズキ(Solanum nigrum)(中国語でロンクイ(Long kui);英語でブラック・ナイトシェード(black nightshade))、ソラナム・カプシカストルム(Solanum capsicastrum)(英語でフォールス・エルサレム・チェリー(false jerusalem cherry))、ソラナム・キサントカルパム(Solanum xanthocarpum)、ナス(Solanum melongena)、ソラナム・コアグランス(Solanum coagulans)、バレイショ(Solanum tuberosum)、ソラナム・ソドメウム(Solanum sodomeum)(オーストラリアにおけるソドムのリンゴ(apple of Sodom))、ソラナム・ツブロサム(Solanum tubburosum)、ソラナム・アキュレアストルム(Solanum aculeastrum)、ロベイラ(Solanum lycocarpum)、ソラナム・カシナム(Solanum khasianum)、ソラナム・スアベオレンズ(Solanum suaveolens)、ソラナム・ウポロ(Solanum uporo)、ソラナム・アブチロイデス(Solanum abutiloides)、ソラナム・コキネウム(Solanum coccineum)、ソラナム・ウングイクラタム(Solanum unguiculatum)、ソラナム・ロブスツム(Solanum robustum)、ソラナム・アングイヴィ(Solanum anguivi)、ソラナム・プラタニフォリウム(Solanum platanifolium)、ツノナス(Solanum mammosum)などが含まれる。ナス属からステロイドアルカロイドを抽出することができ、通常ソラソニン及びソラマージンが含まれることが知られている。
【0009】
本発明の発明者らに発行された米国特許第7,078,063B2号は、少なくとも60重量%のソラソニン及びソラマージンを含むナス属の植物、とりわけソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物、並びに水溶性抽出物を調製するための方法を開示している。この特許はその全文が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0010】
前述の米国特許において、本発明者らは、水溶性抽出物が腫瘍/癌細胞(特に肝臓腫瘍細胞、肺癌細胞、及び乳癌細胞)の増殖を阻害することができることを見出した。本発明において、本発明者らは、意外にも、この水溶性抽出物は、炎症及び皮膚の光損傷を効果的に治癒させ、及び/又は予防することを見出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、第1の態様によると、本発明は、皮膚の光損傷を予防及び処置するための医薬組成物であって、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
第2の態様において、本発明は、皮膚の光損傷を予防及び処置するための方法であって、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物をこのような処置を必要とする対象に適用することを含む方法を提供する。
【0013】
第3の態様において、本発明は、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物の、皮膚の光損傷を予防及び処置するための薬物の製造における使用に関する。
【0014】
第4の態様において、本発明は、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物を含む化粧用組成物を提供する。
【0015】
第5の態様において、本発明は、炎症を予防及び処置するための医薬組成物であって、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
第6の態様において、本発明は、炎症を予防及び処置するための方法であって、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物をこのような処置を必要とする対象に適用することを含む方法を提供する。
【0017】
第7の態様において、本発明は、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物の、炎症を予防及び処置するための薬物の製造における使用に関する。
【0018】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照にし、以下の本発明の好ましい実施形態の詳しい記載において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】LPS誘発性炎症反応後のRAW264.7細胞におけるCOX−2発現を示すウエスタンブロットを示す図である。正常コントロール群における細胞はLPS及びナス属の植物からの水溶性抽出物で処置せず、病理コントロール群における細胞はLPS100ng/mLで処置した。実験群1〜6は、LPS100ng/mLとともに様々な濃度(0.01、0.05、0.1、0.5、1、及び5μg/mL)の水溶性抽出物で処置した。
【図2】UV−B照射6週後の、正常コントロール群、病理コントロール群、並びに実験群1及び2各々におけるHRS/J無毛マウスの背部皮膚の経表皮水分喪失量(TEWL)を示す図である。正常コントロール群におけるHRS/J無毛マウスには、UV−B照射及び水溶性抽出物を含めたいかなる処置も与えなかった。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物で処置しなかった。実験群1において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムL溶液で処置した。実験群2において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。
【図3】実験期間60週後のHRS/J無毛マウスの背部皮膚組織からの、NF−kB、COX−2、及びiNOSの発現を示すウエスタンブロットを示す図である。正常コントロール群におけるHRS/J無毛マウスには、UV−B照射及び水溶性抽出物を含めたいかなる処置も与えなかった。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物で処置しなかった。実験群2において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。
【図4】最初のUV−B照射後60週の終わりの、HRS/J無毛マウスからの背部皮膚組織上のNF−kB発現の免疫組織化学を示す図である。正常コントロール群におけるHRS/J無毛マウスには、UV−B照射及び水溶性抽出物を含めたいかなる処置も与えなかった。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物で処置しなかった。実験群2において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。
【図5】60週の実験期間の終わりの、HRS/J無毛マウスからの背部皮膚組織のトルイジンブルー染色を示す図である。正常コントロール群におけるHRS/J無毛マウスには、UV−B照射及び水溶性抽出物を含めたいかなる処置も与えなかった。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物で処置しなかった。実験群2において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。矢印は浸潤した肥満細胞の場所を示す。
【図6】60週の実験期間後の、正常コントロール群、病理コントロール群、及び実験群2におけるHRS/J無毛マウスの背部皮膚組織からの肥満細胞の平均数を示す棒グラフである。正常コントロール群におけるHRS/J無毛マウスには、UV−B照射及び水溶性抽出物を含めたいかなる処置も与えなかった。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物で処置しなかった。実験群2において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。「*」は実験群2と正常コントロール群との間でp<0.05であったことを示している。「***」は実験群2と病理コントロール群との間でp<0.01であったことを示している。「###」は病理コントロール群と正常コントロール群との間でp<0.001であったことを示している。
【図7】60週の実験期間の間の様々な時間点で形成されたHRS/Jマウスにおける腫瘍の平均数を示すプロットである。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射によって誘発される光損傷を有し、水溶性抽出物で処置しなかった。実験群1におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムL溶液で処置した。実験群2において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。「*」は実験群2と病理コントロール群との間でp<0.05であったことを示している。「**」は実験群2と病理コントロール群との間でp<0.01であったことを示している。
【図8】60週の実験期間の間の様々な時間点のHRS/J無毛マウスにおける腫瘍の平均サイズを示すプロットである。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射によって誘発された光損傷を有し、水溶性抽出物で処置しなかった。実験群1におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムL溶液で処置した。実験群2におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムL溶液で処置した。「#」は実験群1と病理コントロール群との間でp<0.05であったことを示している。「##」は実験群1と病理コントロール群との間でp<0.01であったことを示している。「###」は実験群1と病理コントロール群との間でp<0.001であったことを示している。「**」は実験群2と病理コントロール群との間でp<0.01であったことを示している。「***」は実験群2と病理コントロール群との間でp<0.001であったことを示している。
【図9】60週の実験期間後のHRS/J無毛マウスに対するピンチ試験における回復時間を示す棒グラフである。正常コントロール群におけるHRS/J無毛マウスには、UV−B照射及び水溶性抽出物を含めたいかなる処置も与えなかった。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物で処置しなかった。実験群2において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。「***」は実験群2と病理コントロール群との間でp<0.001であったことを示している。「###」は病理コントロール群と正常コントロール群との間でp<0.001であったことを示している。
【図10】レゾルシン−フクシン溶液、ワイゲルト鉄ヘマトキシリン、及びヴァンギーソン溶液で染色した背部皮膚組織の弾性線維を示す画像である。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射によって誘発される光損傷を有し、水溶性抽出物で処置しなかった。実験群2において、HRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。矢印は弾性線維の変性の位置を示す。
【図11】実験期間にわたるHRS/J無毛マウスにおける腫瘍の平均数を示す図である。トレチノイン群において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、AIROLバニシングクリームで処置した。ソラナム・インカナムLゲル群において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。
【図12】実験期間にわたる経表皮水分喪失量(TEWL)を示すグラフである。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物で処置しなかった。トレチノイン群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射に曝露し、AIROLバニシングクリームで処置した。ソラナム・インカナムLゲル群において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。「*」はトレチノイン群とソラナム・インカナムLゲル群との間でp<0.05であったことを示している。
【図13】実験期間にわたるHRS/J無毛マウスからの背部皮膚の水分含量を示すグラフである。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはUV−B照射によって誘発される光損傷を有し、水溶性抽出物で処置しなかった。トレチノイン群において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、AIROLバニシングクリームで処置した。ソラナム・インカナムLゲル群において、HRS/J無毛マウスをUV−B照射に曝露し、水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルで処置した。「*」はトレチノイン群とソラナム・インカナムLゲル群との間でp<0.05であったことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
あらゆる先行技術の出版物を本明細書に参照する場合、このような参照は、台湾又はあらゆる他国において、出版物が当技術分野における共通の一般知識の一部分を形成することを承認することにならないことを理解されたい。
【0021】
本明細書の目的では、「含む(comprising)」の語は「それだけには限定されないが含む(including)」ことを意味し、「含む(comprises)」、「含有する(contain)」の語、及びこれらの変形は対応する意味を有することが明らかに理解されよう。
【0022】
別段の規定がなければ、本明細書で用いる技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術分野における技術者が通常理解する意味を有する。当業者であれば、本発明を実践する上で用いることができる、本明細書に記載するものに類似し、又は同等である多くの方法及び材料を認識されよう。実際、本発明は、記載する方法及び材料に決して限定されない。明確にするために、本明細書において以下の定義を用いる。
【0023】
本発明は、ナス属の植物からの水溶性抽出物を含む、炎症を予防及び処置するための医薬組成物を提供する。水溶性抽出物はソラマージン及びソラソニンを含む。水溶性抽出物がソラマージン及びソラソニンを少なくとも60重量%含むのが好ましく、ソラマージン及びソラソニンを60重量%〜90重量%含むのがより好ましい。
【0024】
水溶性抽出物を調製するためのプロセスは、米国特許第7,078,063B2号において開示されており、以下のステップ:
(a)水溶液が得られるように、ナス属の植物の植物材料を、pH値3〜5の酸性水溶液を用いた抽出処理にかけるステップと、
(b)沈澱物が形成するように、ステップ(a)において得られた水溶液のpH値を塩基でpH8〜10に調節するステップと、
(c)乾燥生成物が得られるように、ステップ(b)において形成した沈澱物を水で洗浄し、引き続き乾燥するステップと、
(d)クロロホルム−アルコール混合液が形成するように、ステップ(c)において得た乾燥生成物をクロロホルムと混合し、引き続き適切な量の100%アルコールを加えるステップと、
(e)クロロホルムベースの層と非クロロホルムベースの層とを含有する混合液が得られるように、ステップ(d)において形成したクロロホルム−アルコールを、予め決定された水/アルコール比を有する水/アルコール溶液と混合するステップと、
(f)ステップ(e)において得た混合液からクロロホルムベースの層を除去し、引き続き適切な量の水を加えるステップと、
(g)ステップ(f)の得られた混合液から上清を得、引き続き上清を乾燥するステップ(得られた乾燥生成物を水中に直接溶解して黄色がかった澄明で透明な水溶液を形成することができる)とを含む。
【0025】
ナス属の植物の水溶性抽出物が、ナス属の植物の少なくとも、果実、根、茎、及び葉から得られるのが好ましい。ナス属の植物は予備処理において刻まれている。本発明の好ましい一実施形態において、ステップ(a)において用いる植物材料は、ナス属の植物の果実である。
【0026】
本発明者らは、ある種の因子が前述のプロセスを用いて得た水溶性抽出物におけるソラソニン及びソラマージンの含量及び比率に影響を及ぼし得ることを見出した。これらの因子には、ナス属の植物の種、及び抽出プロセスにおいて用いる植物の部分(単数又は複数)、並びに用いるアルコール及び塩基のタイプが含まれる。したがって、当業者であれば、好適な操作条件と組み合わせて、適切な植物の種を選択することによって、所望の水溶性抽出物を調製することができる。
【0027】
水溶性抽出物が、ソラナム・インカナムL、ソラナム・インディクム、イヌホオズキ、ソラナム・カプシカストルム、ソラナム・キサントカルパム、ナス、ソラナム・コアグランス、バレイショ、ソラナム・ソドメウム、ソラナム・ツブロサム、ソラナム・アキュレアストルム、ロベイラ、ソラナム・カシナム、ソラナム・スアベオレンズ、ソラナム・ウポロ、ソラナム・アブチロイデス、ソラナム・コキネウム、ソラナム・ウングイクラタム、ソラナム・ロブスツム、ソラナム・アングイヴィ、ソラナム・プラタニフォリウム、及びツノナスからなる群から選択されるナス属の植物から得られるのが好ましい。本発明の好ましい一実施形態において、水溶性抽出物はソラナム・インカナムLから得られる。
【0028】
予備実験において、in vitroのデータは、ナス属からの水溶性抽出物はLPSによって誘発される炎症反応を阻害することができることを示している。また、UV−B誘発性の炎症を有する無毛マウスをナス属からの水溶性抽出物で処置した後、肥満細胞の浸潤及び炎症反応の軽減とともに、その皮膚組織上のNF−kB、COX−2、及びiNOSの発現が顕著に低減することも証明されている。
【0029】
したがって、本発明は、炎症を予防及び処置するための方法であって、水溶性抽出物又は医薬組成物をそのような処置を必要とする対象に適用することを含む方法を提供する。
【0030】
本発明が提供する前述の医薬組成物の投与経路は、それだけには限定されないが、経口、局所、及び非経口の経路を含む。
【0031】
本発明が提供する医薬組成物は、当業者にはよく知られている技術を用いて、経口剤形に調合することができる。経口剤形の例には、それだけには限定されないが、無菌の散剤、錠剤、トローチ剤、菓子錠剤、ペレット剤、カプセル剤、分散可能な散剤又は顆粒剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー剤などが含まれる。
【0032】
本発明の医薬組成物は、薬物製造技術において広く用いられる薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。
【0033】
薬学的に許容される担体は、溶媒、バッファー、乳化剤、懸濁化剤、分解剤、崩壊剤、分散剤、結合剤、賦形剤、安定化剤、キレート化剤、保存剤、湿潤剤、滑沢剤、希釈剤、吸収遅延剤、リポソーム、甘味剤、香味剤、着色剤などを含めた1つ又は複数の試薬を含む。薬学的に許容される担体の選択及び量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0034】
薬学的に許容される担体は、例えば、水、通常の食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、グルコース含有溶液、アルコール(例えば、エタノール、プロパンジオール、グリコール、マンニトールなど)を含有する水溶液、油(例えば、ピーナツ油、オリーブ油、ゴマ油、ヒマシ油、綿実油、ダイズ油など)、グリセロール、有機溶媒、及びリポソームを含めた1つ又は複数の試薬を含む。本発明の一実施形態において、溶媒は水である。
【0035】
本発明による医薬組成物を、当業者にはよく知られている技術を用いて、それだけには限定されないが、外用剤、発泡錠剤、坐剤などを含む、局所投与に適する剤形に調合することができる。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態において、水溶性抽出物を、当技術分野においてよく知られており、一般的に用いられている基剤と混合することによって、本発明の医薬組成物をゲル形態の外用剤に調合する。
【0037】
本発明において、適切な基剤は、1つ又は複数の以下の添加剤:水、アルコール、グリコール、炭化水素(例えば、ワセリン及び白色ワセリン)、ロウ(例えば、パラフィン及び黄ロウ)、保存剤、抗酸化剤、界面活性剤、吸収増強剤、安定化剤、ゲル化剤(例えば、carbopol(登録商標)974P、微結晶性セルロース、及びカルボキシメチルセルロース)、活性化剤、湿潤剤、匂い吸収剤、芳香剤、pH調節剤、キレート化剤、乳化剤、密封剤、軟化剤、増粘剤、可溶化剤、浸透増強剤、抗刺激剤、着色剤、並びに噴射剤を含むことができる。これらの添加剤の選択及び量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0038】
本医薬組成物を投与する投与量及び頻度は以下の因子:処置する疾患の重症度、投与経路、並びに処置する対象の体重、年齢、身体状態、及び反応に応じて変化させることができる。例えば、本発明にしたがって局所投与するための医薬組成物の1日量は、病変面積1cmあたり10〜20mg、1日あたり1回から6回であってよい。経口投与のための本医薬組成物の投与量は、1〜30mg/kg、1日1回〜4回であってよい。
【0039】
ナス属の植物からの水溶性抽出物は、無毛マウスに対するUV−B誘発性の皮膚の光損傷によって誘発される皮膚の病理学的変化を軽減することが証明されている。さらに、これは皮膚の弾性及び日光弾力線維症を効果的に改善し、同時に水分保持能力を維持することができる。
【0040】
したがって、本発明は、上記に記載した通り、ナス属の植物からの水溶性抽出物を含む、皮膚の光損傷を処置及び/又は予防するための医薬組成物を提供する。本発明はまた、前述の水溶性抽出物又は医薬組成物を、そのような処置を必要とする対象に適用することを含む、皮膚の光損傷を予防及び処置するための方法を提供する。
【0041】
本発明において、「皮膚の光損傷」の語は、皮膚を太陽光又はUV光線(特に、UV−B)に曝露することによって引き起こされる皮膚の損傷を示す。皮膚の光損傷には、それだけには限定されないが、皮膚の菲薄化、皮膚萎縮、コラーゲン線維及び弾性線維の低減、弾力線維症、皮膚の弾性の低減、乾燥、しわの形成、炎症細胞の浸潤、皮膚の早期老化、血管の変化(例えば、びまん性紅斑、斑状出血、又は毛細血管拡張)、色素の変化(例えば、黒子、そばかす、色素沈着低下、又は色素沈着過剰)、面皰、嚢胞、並びに皮膚の病理学的変化が含まれる。
【0042】
本発明によると、投与経路、投与量、及び薬学的に許容される担体は、炎症を予防及び処置するための医薬組成物において用いられるものと同様である。本発明の好ましい一実施形態において、医薬組成物を、皮膚上に投与するための局所形態に調合する。
【0043】
水溶性抽出物は皮膚の光損傷を予防/保護することから、水溶性抽出物を化粧用成分として用いて化粧用組成物を調製することができることが予想できる。
【0044】
したがって、本発明は、上記に記載した通り、水溶性抽出物を含む、光防護効果を有する化粧用組成物を提供する。
【0045】
本発明において、「光防護」の語は、太陽又は紫外線によって引き起こされる、有害な臨床効果、組織学的効果、及び免疫学的効果を阻止又は軽減することを示す。これらの効果には、急性反応(例えば、紅斑及び炎症)並びに慢性効果(例えば、弾力線維症及びしわの形成)が含まれる。
【0046】
本発明によると、化粧用組成物は、化粧品製造技術において広く用いられている化粧用に許容される補助剤をさらに含む。
【0047】
許容される補助剤は、溶媒、ゲル化剤、活性化剤、保存剤、抗酸化剤、スクリーニング剤、キレート化剤、界面活性剤、着色剤、増粘剤、充填剤、芳香剤、及び匂い吸収剤を含めた1つ又は複数の試薬を含む。これら添加剤の選択及び量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0048】
本発明が提供する化粧用組成物は、当業者にはよく知られている技術を用いて、スキンケア製品、ヘアケア製品、又はメーキャップ製品の形態に調製することができる。この形態には、それだけには限定されないが、水溶液、エマルジョン、ゲル、軟膏、クリーム、マスク、パッチ、粉末、エアロゾル、スプレー、ローション、日焼け止め、及び他の身体清浄製品が含まれる。
【0049】
本発明の化粧用組成物は、以下の薬剤:ホワイトニング剤、湿潤剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、にきび抑制剤、鎮痒剤、過剰角質溶解防止剤、乾癬治療薬、老化防止剤、抗しわ剤、抗脂漏剤、セルフタニング剤、及び創傷治癒剤とともに用いることができる。これら薬剤の選択及び量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【実施例】
【0050】
実験材料
1.ソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物及び水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムL溶液の調製
米国特許第7,078,063B2号の例1において開示されている手順に基づいてソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物を調製した。詳しくは、ソラナム・インカナムLの熟した果実500gをすりつぶし、引き続き純水1000mlを加えた。得られた混合水溶液に、99.5%酢酸を滴下添加してpH値を4.0に調節し、引き続き室温で12時間振盪した。混合水溶液を遠心分離することによって上清を得、それに33%NHOH塩基性溶液を滴下添加して上清のpH値を9.0に調節し、沈澱物を形成した。4500rpmで遠心分離を行うことによって(Beckman Coulter、Avanti J−25、JA−14 Rotor)沈澱物を得、沈澱物を水で洗浄し、引き続き4500rpmで遠心分離することによってその中に存在する残余の塩基性溶液を除去した。このようにして得た沈澱物を蒸留水中に懸濁し、凍結乾燥にかけて(Virtis、Freezemobile 12ES)乾燥粉末5gを得た。
【0051】
乾燥粉末2gを、試薬用クロロホルム50ml中に溶解し、引き続き100%メタノール40mlを加え、振盪して均一な懸濁液を形成した。4500rpmで遠心分離し、又はろ過することによって上清を得た。メタノール:水(1:1)溶液70mlを上清に加え、十分に混和した。得られた混合液を12000rpmで10分間遠心分離した。得られた上清を取り出し、それに蒸留水120mlを加え、十分に振盪した。一方、上清は不透明になった。上清を12000rpmで10分間さらに遠心分離して沈澱物を除去した。得られた上清を55℃減圧下で減圧濃縮にかけてメタノールを除去し、引き続き凍結乾燥して水溶性抽出物の乾燥粉末を得た。
【0052】
水溶性抽出物を滅菌水中に溶解して、以下に記載する実験においてさらに用いるためのソラナム・インカナムL溶液を得た。
【0053】
2.水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルの調製
ゲル化剤として用いられたものであり、Lubrizol Advanced Material,Inc.、KY40258、米国から市販されているcarbopol(登録商標)974P 4gを純水50g中に溶解し、引き続きプロピレングリコール30g、及び「実験材料」の下の「1.ソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物及び水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムL溶液の調製」のセクションから得た水溶性抽出物の乾燥粉末7gを逐次的に添加し、十分に混和した。混合液を50℃〜60℃の温度の加熱容器中20分間加熱し、引き続き室温で冷却した。冷却した混合液にトリエンタノールアミン(trienthanolamine)を加えてpHを7.0±0.5に調節した。引き続き混合液の全重量が100gに到達するまで水を加え、それによって水溶性抽出物7%(w/w)を含有するゲル(以降、ソラナム・インカナムLゲルと呼ぶ)を得た。
【0054】
3.動物モデル
HRS/J無毛マウス(6〜8週齢、体重20〜22g)を、Jackson Laboratory(Bar Harbor、米国)から購入した。マウスを12時間/12時間の明/暗サイクル、温度21〜22℃、及び湿度30〜70%の室内に維持した。食餌及び水は十分であり、マウスはいつでも摂取できた。動物実験は全て、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の実験動物のケア及び使用のためのガイド(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals of National Institute of Health(NIH))にしたがって行った。
【0055】
全般的方法
1.タンパク質生成物の分析
本発明におけるタンパク質の分析に、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)及びウエスタンブロットを用いた。SDS−PAGE及びウエスタンブロット用の装置及び試薬は以下の通りである。
a.垂直式電気泳動システム(Hoefer SE6000、GE Healthcare)をSDS−PAGE分析に用いた。
b.ポリビンビリデンジフルオリド(polyvinvylidene difluoride)膜(PVDF、Millipore)及び半乾燥の吸い取り紙(Hoefer TE70X、GE Healthcare)をタンパク質の移動に用いた。
c.ウエスタンブロット法において用いた1次抗体及び2次抗体を表1に列挙する。
d.Immobilion TM Western Chemiluminescent HRP Substrate(Millipore、カタログ番号WBKLS0500)を用いた化学発光染色によってタンパク質を可視化し、引き続きオートラジオグラフィーフィルム(Kodak Biomax、Kodak、カタログ番号1788207)上で検出した。
【表1】

【0056】
2.炎症及び光損傷の誘発
各HRS/Jマウスの背部皮膚を、週3回14週間UV−B照射に曝露して炎症反応及び光損傷を誘発した。UV−B照射は、6×8W T−8M UV−Bランプ(312nm)を装着したBLX−312紫外線架橋剤(BIO−LINK、Viber Lourmat、フランス)を用いて行った。各曝露に対するUV−B照射の1回の線量、1週間のUV−B線量(線量/週)、及び累積線量を表2に列挙する。
【表2】

【0057】
3.組織切片
組織(室温で収集)を、少なくとも12時間、PBS中4%パラホルアルデヒド(paraforaldehyde)中で固定し、引き続きエタノールで脱水した。脱水した組織をパラフィン中に包埋し、スライスして縦方向の切片を得た。
【0058】
4.統計分析
結果を、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として示す。統計上のデータ分析は全て、スチューデントのt検定(両側)によって行った。p<0.05を統計的に有意とみなす。
【0059】
(例1)
ソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物のin vitroの抗炎症効果の評価
リポ多糖(LPS)誘導性炎症に供したマウスマクロファージ細胞系RAW264.7を用いて、ソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物の抗炎症効果を決定した。
【0060】
実験手順
RAW264.7細胞(アメリカ培養細胞系統保存機関、ATCCから購入、TIB−71)を、10%ウシ胎児血清(FBS)、4mM L−グルタミン、及び4.5g/Lグルコースを含む(ピルビン酸ナトリウムを含まない)ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(HyClone SH30022.01、Logan、Utah、米国)中、1×10細胞/ウエルの密度で接種し(6ウエルプレート)、37℃、5%COのインキュベーター中でインキュベートした。細胞を3群:正常コントロール群、病理コントロール群、並びに実験群(実験群1、2、3、4、5、及び6)に分割した。インキュベート72時間後、病理コントロール群を、LPS(大腸菌(Escherichia coli)血清型0111:B4、Sigma)100ng/mLを含有する新鮮DMEM培地中のインキュベートに変更し、実験群をLPS100ng/mL、並びに「実験材料」の下の「1.ソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物及び水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムL溶液の調製」のセクションから得た水溶性抽出物の様々な濃度を含有する新鮮DMEM培地中でインキュベートした。実験群1、2、3、4、5、及び6に対する水溶性抽出物の濃度は、それぞれ0.01、0.05、0.1、0.5、1、及び5μg/mLであった。正常コントロール群は、10%FBS、4mM L−グルタミン、及び4.5g/Lグルコースを含む(ピルビン酸ナトリウムを含まない)DMEM中で依然としてインキュベートした。
【0061】
インキュベート(37℃、5%COのインキュベーター中)24時間後、各ウエルの培地を除去し、引き続き100μL T−PER試薬(PIERCEより購入)を加え、混和して細胞混合液を得た。細胞混合液を遠心管中に配置し、5分間振盪し、引き続き30分間氷上で冷却した。引き続き、細胞混合液を4℃、14000rpmで10分間遠心分離し、さらなる分析用のタンパク質試料として上清を回収した。
【0062】
得られたタンパク質試料を、「全般的方法」の下の「1.タンパク質生成物の分析」のセクションに記載されている方法を用いて、COX−2ウエスタンブロット分析にかけた。内部コントロールとしてβ−アクチンを用いた。
【0063】
結果
図1は、RAW264.7細胞におけるCOX−2発現を示すウエスタンブロットである。図1に示す通り、COX−2発現は、正常コントロール群と比べた場合、病理コントロール群において著しく増大し、RAW264.7細胞においてLPSによる炎症の誘発が上首尾であったことを示している。病理コントロール群と比べた場合、実験群1〜6においてCOX−2の発現の低下が観察され、発現の低下は、より高濃度の水溶性抽出物を加えた場合により明らかである。これらのデータは、ソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物はin vitroでLPS誘発性の炎症を阻害することができ、水溶性抽出物の抗炎症反応に対する効果は用量依存性であることを実証している。
【0064】
(例2)
ソラナム・インカナムL溶液及びソラナム・インカナムLゲルのUV−B誘導性炎症を有する無毛マウスに対する治療効果の評価
実験手順
HRS/J無毛マウスを、正常コントロール群、病理コントロール群、並びに2つの実験群(即ち、実験群1及び2)(n=4/群)に無作為にグループ分けした。正常コントロール群におけるHRS/J無毛マウスはいかなるUV−B照射も与えなかった。病理コントロール群及び2つの実験群におけるマウスは、「全般的方法」の下の「2.炎症及び光損傷の誘発」のセクションに記載した通りの手順を用いて炎症を誘発した。
【0065】
UV−B照射の開始から始めて、実験群1におけるHRS/Jマウスに、「実験材料」の下の「1.ソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物及び水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムL溶液の調製」のセクションに記載されている通りに調製した、ソラナム・インカナムL溶液を経口投与した。これらのマウスに、14週間(wk)の期間の間、1日1回(1500mg/kg)、週7回、ソラナム・インカナムL溶液を投与し、60週間連続して観察した(即ち、実験期間60週)。実験群2における各HRS/J無毛マウスのUV−B曝露した背部皮膚上に、「実験材料」の下の「2.水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルの調製」のセクションから得たソラナム・インカナムLゲルを適用した。ゲルを、14週間の期間の間、1日1回(投与量:1cmあたりゲル10〜20mg)、週5回適用し、60週間観察した。正常コントロール群及び病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスは、ソラナム・インカナムL溶液でもソラナム・インカナムLゲルでも処置しなかった。
【0066】
UV−B照射6週後、HRS−J無毛マウスを、以下に列挙するアイテムA及びBに対して分析した。さらに、背部皮膚組織を、60週の実験期間後、外科はさみを用いて、正常コントロール群、病理コントロール群、及び実験群2におけるマウスから回収した。これらの組織を、以下に列挙するアイテムCからEに対して分析した。
【0067】
A.臨床徴候の診断
UV−B照射6週後、HRS/J無毛マウスを、あらゆる炎症の徴候、例えば、掻痒、発赤などに対して観察した。
【0068】
B.経表皮水分喪失量(TEWL)の分析
UV−B照射6週後、各群からの各HRS/J無毛マウスの背部皮膚上で、蒸発計(Tewameter TM201R、Courage&Khazaka、Cologne、ドイツ)を用いてTEWLを評価した。
【0069】
C.NF−kB、COX−2、及びiNOSのウエスタンブロット分析
皮膚組織0.5gを、T−PER組織タンパク質抽出試薬(Thermo Scientific、カタログ番号78510)に加え、引き続きホモジナイザー(Biospec Productsから購入)によって組織を破壊した。十分にホモジナイズした生成物を、4℃で10時間、15000rpmで遠心分離した。上清を、タンパク質分析用に回収した。
【0070】
単離したタンパク質をさらに用いて、「全般的方法」の下の「1.タンパク質生成物の分析」のセクションにおいて記載した手順にしたがって、ウエスタンブロット分析によってNF−kB、COX−2、及びiNOSを検出した。GAPDHを内部コントロールとして用いた。
【0071】
D.NF−kBの免疫組織化学染色
皮膚組織を、「全般的方法」の下の「3.組織切片」のセクションにおいて記載した手順を用いて、厚さ6μmに切断した。この組織切片に、1次抗体ウサギ抗NF−kBモノクローナル抗体及びビオチンとコンジュゲートしたロバ抗ウサギIgG抗体(DarkoCytomation)を用いて免疫組織化学染色を行った。染色した組織を100倍から400倍の倍率の下、光学顕微鏡(Olympus BX51、日本)下で検査し、デジタルカメラ(Olympus、DP50、日本)を用いて写真撮影した。
【0072】
E.肥満細胞の組織化学染色
皮膚組織を、「全般的方法」の下の「3.組織切片」のセクションにおいて記載した手順を用いて、厚さ6μmに切断した。この組織切片に、トルイジンブルー(Sigma、カタログ番号T3260)で組織化学染色を行った。染色した組織切片を100倍から400倍の倍率で、光学顕微鏡下で検査し、デジタルカメラ(Olympus、DP50、日本)で写真撮影した。組織切片5個を無作為に選択し、各組織切片において無作為に観察視野10個を計数することによって、肥満細胞数の定量化を行った。データを、平均値±SEM(p<0.05を統計的に有意とする)として示す。
【0073】
結果
A.臨床徴候の診断
病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスは、正常コントロール群に比べて炎症の症状を示し、UV−B照射はHRS/J無毛マウスにおける炎症反応を上首尾に誘発したことを示唆していた。実験群1及び2は、病理コントロール群に比べた場合、炎症反応において有意な低減を示した。これらのデータは、ソラナム・インカナムL溶液及びソラナム・インカナムLゲルには抗炎症効果があることを示唆している。
【0074】
B.経表皮水分喪失量(TEWL)の分析
図2は、正常コントロール群、病理群、並びに実験群1及び2におけるHRS/J無毛マウスの背部皮膚のTEWLの結果を示すグラフである。病理群からのHRS/J無毛マウスは、正常コントロール群に比べてTEWLレベルの増大を示した。これは、UV−B照射はHRS/J無毛マウスにおいてTEWLを誘発し、角質層のバリア機能を損傷したことを示している。実験群1及び2からのHRS/J無毛マウスは、病理コントロール群に比べた場合TEWLにおける著しい低下を示した。全体で、これらのデータは、ソラナム・インカナムL溶液及びソラナム・インカナムLゲルが角質層の損傷及びUV−B照射によって引き起こされる炎症を改善することができることを示唆している。
【0075】
C.NF−kB、COX−2、及びiNOSのウエスタンブロット分析
図3は、正常コントロール群、病理群、及び実験群2におけるHRS/J無毛マウスからの背部皮膚のNF−kB、COX−2、及びiNOSのウエスタンブロット分析である。病理コントロール群からの皮膚組織は、正常コントロール群に比べてNF−kB、COX−2、及びiNOSの発現の増大を示し、UV−B照射はHRS/J無毛マウスにおける炎症反応を誘発することを示唆していた。病理コントロール群と比べた場合、実験群2において、NF−kB、COX−2、及びiNOSレベルの著しい低減が観察された。全体で、これらのデータは、ソラナム・インカナムLゲルには抗炎症効果があることを示唆している。
【0076】
D.NF−kBの免疫組織化学染色
図4は、HRS/J無毛マウスから得た背部皮膚組織に対するNF−kB発現の免疫組織化学染色を示す。図4において示す通り、病理コントロール群は、正常コントロール群に比べてNF−kBにおける発現レベルの増大を示し、UV−B照射はHRS/J無毛マウスにおいて炎症反応を誘発することを示唆していた。ソラナム・インカナムLゲルをHRS/J無毛マウスに適用すると、実験群2におけるように、NF−kBの発現は、病理コントロール群に比べた場合、有意な低減を示した。全体で、これらのデータは、本発明のソラナム・インカナムLゲルには抗炎症効果があることを示唆している。
【0077】
E.肥満細胞の組織化学染色
図5は、HRS/J無毛マウスの背部皮膚組織から得た肥満細胞の組織化学染色を示す。図5において示す通り、トルイジンブルー染色は、病理コントロール群からの背部皮膚組織における広範囲にわたる肥満細胞の浸潤を明らかにしていた。この現象は、正常コントロール群において、見かけ上明白ではなかった。明らかに、肥満細胞の浸潤は、病理コントロール群に比べて、実験群2において著しく低減した。
【0078】
正常コントロール群、病理群、及び実験群2の各々における肥満細胞数の比較を図6に示す。実験群2は、病理コントロール群に比べた場合、肥満細胞数の有意な低減を示した。これらのデータは、ソラナム・インカナムLゲルは、HRS/J無毛マウスにおいてUV−B照射によって誘発される炎症効果を改善することを示唆している。
【0079】
(例3)
UV−B誘発性の光損傷を有する無毛マウスに対する、ソラナム・インカナムL溶液及びソラナム・インカナムLゲルの治療効果の評価
実験手順
HRS/J無毛マウスを、正常コントロール群、病理コントロール群、並びに2つの実験群(即ち、実験群1及び2)に無作為にグループ分けした(n=4/群)。正常コントロール群におけるHRS/J無毛マウスには、いかなるUV−B照射処置も与えなかった。「全般的方法」の下の「2.炎症及び光損傷の誘発」のセクションに記載した通り、病理コントロール群及び2つの実験群からのマウスに炎症を誘発した。
【0080】
UV−B照射の開始から始めて、実験群1におけるHRS/Jマウスにソラナム・インカナムL溶液を経口投与したが、この溶液は「実験材料」の下の「1.ソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物及び水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムL溶液の調製」のセクションにおいて記載した通りに調製した。これらのマウスに、ソラナム・インカナムL溶液を、14週の期間の間、1日1回(1500mg/kg)、週7回投与し、60週間連続して観察した(即ち、実験期間60週)。実験群2において、「実験材料」の下の「2.水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルの調製」のセクションにしたがって調製したソラナム・インカナムLゲルを、UV−B照射を行ったマウスの背部皮膚に適用した。ゲルは、14週の期間の間、1日1回(投与量:1cmあたりゲル10〜20mg)、週5回適用し、60週間観察した。正常コントロール群及び病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスは、ソラナム・インカナムL溶液でもソラナム・インカナムLゲルでも処置しなかった。
【0081】
60週の実験期間の間の26、35、38、41、52、56、及び60週の終わりに、病理コントロール群並びに実験群1及び2におけるHRS/J無毛マウスからの背部皮膚に、アイテムA(以下を参照されたい)における分析を行った。さらに、60週の実験期間の後、正常コントロール群、病理コントロール群、及び実験群2におけるHRS/J無毛マウスから得た背部皮膚を、以下に記載するアイテムBにおける分析を行った。病理コントロール群及び実験群2からのマウスの背部皮膚組織は、外科はさみを用いて得たものであり、以下に記載するアイテムCにおける分析を行った。
【0082】
A.皮膚腫瘍の形成の分析
病理コントロール群並びに実験群1及び2からのHRS/J無毛マウスの背部皮膚上の腫瘍数を、肉眼によって観察した。腫瘍サイズを、デジタルノギス(Mitutoyo、NTD15P−6”CX)を用いて記録した。腫瘍数及び腫瘍体積に対するデータを、平均値±SEMとして示す(p<0.05を統計的に有意とする)。
【0083】
B.皮膚の弾性の評価
皮膚の弾性を、K. Tsukaharaら(2005年)、Biolo.Pharm.Bull.、28巻(12)、2302〜2307頁に言及されているピンチ試験を参照することによって評価した。簡潔に述べると、正常コントロール群、病理コントロール群、及び実験群2からのHRS/J無毛マウスをプラットホーム上に配置した。マウス身体の中心線の背部皮膚をできるだけ多く上向きにつまみ(マウスを持ち上げずに)、次いで離した。つまんだ皮膚がもとの状態に跳ね返る回復時間を測定した。
【0084】
C.弾性線維の組織化学染色
60週の実験期間の後、病理コントロール群及び実験群2におけるHRS/J無毛マウスから得た皮膚組織を、「全般的方法」の下の「3.組織切片」のセクションにおいて記載した手順を用いて、厚さ6μmに切断した。組織切片を、レゾルシン−フクシン溶液、ワイゲルト鉄ヘマトキシリン、及びヴァンギーソン溶液(全てMuto Pure Chemicals Co.,Ltdより購入)で染色した。染色した組織を、100倍〜400倍の倍率の光学顕微鏡下で観察し、デジタルカメラ(Olympus DP50、日本)で記録した。
【0085】
結果
A.皮膚腫瘍形成の分析
60週の実験期間の経過にわたる腫瘍数を図7に示す。60週の実験期間の経過にわたる腫瘍サイズの測定を図8に示す。
【0086】
図7及び図8に示す通り、38週に、病理コントロール群からのHRS/J無毛マウスの背部皮膚は、腫瘍の発達の加速を示した。それとは反対に、60週の実験期間の間、実験群1及び2において腫瘍数及び腫瘍サイズのより緩慢な増大が観察された。これらのデータは、ソラナム・インカナムL溶液及びソラナム・インカナムLゲルは、UV−B照射によって引き起こされる光損傷を改善し、光損傷によって引き起こされる皮膚の病理学的変化を軽減することができることを示唆している。
【0087】
B.皮膚の弾性の評価
正常コントロール群、病理コントロール群、及び実験群2からのHRS/J無毛マウスに対して、60週の実験期間の後、ピンチ試験を行った。図9に示す通り、病理コントロール群においてより長い回復時間が必要とされるので、病理コントロール群は、正常コントロール群に比べて弾性の低減を示し、UV−B曝露はHRS/J無毛マウスにおいて光損傷を誘発することを示唆していた。ソラナム・インカナムLゲルを実験群2における無毛マウスの背部皮膚に適用すると、病理コントロール群に比べて皮膚の弾性が大幅に増大した。これらの実験からのデータは、ソラナム・インカナムLゲルはUV−Bによって引き起こされる光損傷を軽減し、皮膚の弾性を改善することができることを示唆している。
【0088】
C.弾性線維の組織化学染色
図10に示す通り、病理コントロール群において、弾性線維の変性の出現が著しく増大した。一方、実験群2における無毛マウスの背部皮膚にソラナム・インカナムLゲルを適用すると、弾性線維の変性の出現は減少し、線維は長く、そのままであり続けた。これらの実験からのデータは、本発明のソラナム・インカナムLゲルは、UV−B曝露によって引き起こされる光損傷を軽減し、太陽光の弾力線維症を改善することができることを示唆している。
【0089】
全体で、上記の実験からのデータは、ソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物は光損傷を予防し、光損傷によって引き起こされる皮膚上の病理学的変化を改善することができることを支持している。
【0090】
(例4)
UV−B誘発性光損傷の予防に対するソラナム・インカナムLゲルとトレチノインとの効果の比較
実験手順
HRS/J無毛マウスを、病理コントロール群、トレチノイン群、及びソラナム・インカナムLゲル群に無作為にグループ化した(n=5/群)。各群からのHRS/J無毛マウスに対する光損傷の誘発を、「全般的方法」の下の「2.炎症及び光損傷の誘発」のセクションにしたがって行った。
【0091】
UV−B照射の開始から始まり、トレチノイン群におけるHRS/JマウスにAIROLバニシングクリームを適用した(光損傷を処置するための従来の有効成分であるトレチノインを0.05%含有する、局所投与量:1cmあたりAIROLバニシングクリーム10mgから20mg)。このクリームを、14週間、1日1回、週5回適用し、35週間連続して観察した(即ち、実験期間35週)。ソラナム・インカナムLゲル群におけるHRS/J無毛マウスの背部皮膚に、「実験材料」の下の「2.水溶性抽出物を含有するソラナム・インカナムLゲルの調製」のセクションから得たソラナム・インカナムLゲルを適用した。このゲルを、14週の期間の間、1日1回(投与量:1cmあたりゲル10〜20mg)、週5回適用し、35週間観察した。病理コントロール群におけるHRS/J無毛マウスは水溶性抽出物で処置しなかった。
【0092】
トレチノイン群及びソラナム・インカナムLゲル群からのマウスの背部皮膚上の腫瘍数を、例3のアイテムA(皮膚腫瘍形成の分析)において言及した方法に基づいて、0週(即ち、UV−B照射に対する曝露の前)、並びに35週の実験期間の間の2、7、12、17、22、27、及び32週の終わりに定量した。さらに、病理コントロール群、トレチノイン群、及びソラナム・インカナムLゲル群からのHRS/J無毛マウスを、例2のアイテムB(経表皮水分喪失量の分析)において言及した通りに分析にかけ、0週、並びに35週の実験期間の間の5、10、15、20、25、及び30週の終わりにアイテムAにしたがって分析にかけた。
【0093】
A.皮膚中の水分含量の試験
皮膚中の水分含量の決定を、蒸発計(Tewameter TM 201R、Courage&Khazaka、Cologne、ドイツ)を用いて検査した。
【0094】
(1)皮膚腫瘍形成の分析
図11に示す通り、17週目に、トレチノイン群は、平均腫瘍数における劇的な増大を示した。それとは反対に、ソラナム・インカナムLゲル群からのHRS/J無毛マウスは、平均腫瘍数における緩慢な増大を示した。これらのデータは、本発明のソラナム・インカナムLゲルは、トレチノイン群と比べた場合、UV−Bによって引き起こされる光損傷をより効果的に改善することができ、皮膚の病理学的変化を軽減することを示唆している。
【0095】
(2)経表皮水分喪失量(TEWL)の評価
図12に示す通り、35週の実験期間の間、病理群及びトレチノイン群と比べると、ソラナム・インカナムLゲル群におけるTEWL率は低かった。詳しくは、35週の実験期間の間の20、25、及び30週の終わりに、病理コントロール群とソラナム・インカナムLゲル群との間のTEWLに統計的な有意差が存在した(p<0.05)。これらのデータは、本発明のソラナム・インカナムLゲルは、UV−B照射によって引き起こされる光損傷を効果的に軽減し、光損傷によって引き起こされる角質層に対する損傷を改善することができることを示唆している。
【0096】
(3)皮膚中の水分含量の評価
各群(病理コントロール群、トレチニオン(tretinion)群、及びソラナム・インカナムLゲル群)からのHRS/J無毛マウスの背部皮膚における水分含量を、35週の実験期間にわたって様々な時間点で決定した。図13に示す通り、ソラナム・インカナムLゲルで処置したマウスは、病理コントロール群及びトレチニオン群に比べた場合、より高い皮膚の水分含量を有していた。詳しくは、25週の終わりに、ソラナム・インカナムLゲルで処置したマウスは、病理群又はトレチノイン群に比べて統計的に有意な水分含量を示した。これらのデータは、本発明のソラナム・インカナムLゲルは、UV−Bによって引き起こされる光損傷を軽減するのにより効果的であり、トレチニオン処置よりも皮膚の水分の喪失を改善することを示唆している。
【0097】
全体で、本発明の水溶性抽出物は、光損傷の予防、光損傷によって引き起こされる病理学的変化の改善、及び水分保持能力の維持を、しばしば光損傷の処置及び予防に臨床的に用いられるもの(例えば、トレチニオン)よりも効果的に示すことが証明された。
【0098】
本明細書において引用される全ての特許及び参考文献、並びにそれらに記載されている参照は、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる。抵触の場合には、本明細書が、定義を含めて優勢であろう。
【0099】
本発明を、最も実際的で好ましい実施形態とみなされるものに関連して記載してきたが、本発明は開示する実施形態に限定されず、最も幅広い解釈及び同等の取決めの精神及び範囲内に含まれる様々な取決めを網羅するものと理解される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の光損傷を予防及び治療するための医薬組成物であって、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス(solanum)属の植物からの水溶性抽出物を特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記水溶性抽出物が少なくとも60重量%のソラマージン及びソラソニンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記水溶性抽出物が60重量%〜90重量%のソラマージン及びソラソニンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記皮膚の光損傷が以下の症状:皮膚の菲薄化、皮膚萎縮、コラーゲン線維及び弾性線維の低減、弾力線維症、皮膚の弾性の低減、乾燥、しわの形成、炎症細胞の浸潤、皮膚の早期老化、血管の変化、色素の変化、面皰、嚢胞及び皮膚の病理学的変化の1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
経口剤形において適用される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
局所剤形において適用される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物を特徴とする化粧用組成物。
【請求項8】
前記水溶性抽出物が少なくとも60重量%のソラマージン及びソラソニンを含むことを特徴とする、請求項7に記載の化粧用組成物。
【請求項9】
前記水溶性抽出物が60重量%〜90重量%のソラマージン及びソラソニンを含むことを特徴とする、請求項7に記載の化粧用組成物。
【請求項10】
溶媒、ゲル化剤、活性化剤、保存剤、抗酸化剤、スクリーニング剤、キレート化剤、界面活性剤、着色剤、増粘剤、充填剤、芳香剤、及び匂い吸収剤からなる群から選択される化粧用に許容される補助剤をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の化粧用組成物。
【請求項11】
炎症を予防及び治療するための医薬組成物であって、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物を特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
前記水溶性抽出物が少なくとも60重量%のソラマージン及びソラソニンを含むことを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記水溶性抽出物が60重量%〜90重量%のソラマージン及びソラソニンを含むことを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
経口剤形において適用される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
局所剤形において適用される、請求項11に記載の医薬組成物。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−236815(P2012−236815A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−30071(P2012−30071)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(503315263)徳英生物科技股▲分▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】