説明

ナチュラルキラー細胞の増殖および活性の強化方法

ナチュラルキラー(NK)細胞をエクスビボ培養する方法が開示される。該方法は、NK細胞を含む細胞の集団を、少なくとも1つの増殖因子、ならびに、効果的な濃度、効果的な暴露時期および効果的な暴露継続期間のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することを含み、前記NK細胞を、前記少なくとも1つの増殖因子、ならびに、前記効果的な濃度、効果的な暴露時期および効果的な暴露継続期間の前記ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することにより、CD62Lの上昇した発現、上昇した遊走応答、上昇したホーミングおよびインビボ保持、より大きい増殖、増大した細胞傷害活性のうちの少なくとも1つがもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、ナチュラルキラー(NK)細胞のエクスビボ培養に関連し、より具体的には、しかし、限定ではなく、NK細胞の生長および/または機能性を、NK細胞の増殖をもたらすサイトカインとの組合せで当該細胞をニコチンアミドにより処理することによって高めるための組成物および方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー細胞(以降、これはまた「NK」細胞と略記される)は、免疫反応に関与するリンパ系細胞である。これらの細胞は様々な機能を有しており(とりわけ、腫瘍細胞、発ガン性形質転換を受けている細胞、および、他の異常な細胞を生体内において殺すこと)、また、生来的な免疫学的監視機構の重要な構成成分である。NK細胞を用いた養子免疫療法による臨床経験では、NK細胞集団を効果的かつ効率的に拡大培養し、同時に、それらの機能性(殺傷能、輸送、局在化、持続および増殖)をインビボにおいて維持し、また、強化さえするためのより良好な方法の必要性が強調されている。
【0003】
NK細胞は、表現型および機能の両方の点で、リンパ球の明確な集団を表す。NK細胞は、大きい顆粒リンパ球の形態学を有しており、特徴的なNK細胞表面受容体を発現し、TCR再編成と、T細胞、B細胞、単球および/またはマクロファージの細胞表面マーカーとの両方を有していない。NK細胞は、標的細胞にアポトーシスによる死を生じさせるタンパク質(パーフォリンおよびグランザイム)の小さい細胞質顆粒を放出することによって殺傷する。NK細胞は、MHCクラスI分子、MHCクラスI様分子、およびMHC非関連分子を巻き込む多数の阻害性受容体および活性化受容体を介して、潜在的な「標的」細胞と、健全な細胞とを識別する機構を有する(Caliguiri Blood、2008、112:461〜69)。阻害性のNK細胞受容体には、HLA−E(CD94/NKG2A);HLA−C(グループ1またはグループ2)、KIR2DL;KIR3DL(HLA−B Bw4)、および、HLA−A3+またはHLA−A4+のペプチドが含まれる。活性化するNK細胞受容体には、HLA−E(CD94/NKG2C);KIR2DS(HLA−C)およびKIR3DS(HLA−Bw4)が含まれる。他の受容体には、NK細胞受容体タンパク質−1(これはマウスではNK1.1と呼ばれる)、および、IgGのFc部分に対する低親和性受容体(FcγRIII;CD16)が含まれる。特異的なNK細胞活性化因子、すなわち、UL結合タンパク質(ULBP)、および、それらの潜在的な治療的使用が、米国特許出願公開第20090234699号(Cosman他)に詳しく記載される(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。「活性化」表面受容体および「阻害性」表面受容体により、NK細胞の細胞傷害活性が制御される。治療の検討のために重要であるが、NK細胞の阻害が、「活性化された」NK細胞による正常な宿主組織の破壊を防止するために必要であり、しかし、NK細胞における阻害性シグナル伝達の方が活性化シグナルよりも強いようである。
【0004】
無傷の骨髄がNK細胞の作製のために必要である。ヒト骨髄由来のNK細胞は、CD2+CD16+CD56+の表現型を有し、CD3を有しておらず、それにもかかわらず、T細胞受容体ζ鎖[ゼータ(ζ)−TCR]を含有する大きい顆粒リンパ球(LGL)である。NK細胞が、血液、脾臓、肝臓、肺、腸および脱落膜を含めて、様々なリンパ系組織および非リンパ系組織に見出され得る。NK細胞が、腫瘍では抗腫瘍活性を発揮しているかもしれないが、腫瘍において著しい数で見出されている。
【0005】
NK細胞は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞に対する自発的なMHC非拘束の細胞傷害活性を示し、ウイルス感染およびガン発達に対する抵抗性をインビボにおいて媒介する。したがって、NK細胞は先天性免疫の重要なエフェクター細胞を表す。加えて、NK細胞は、サイトカインを分泌することができること、また、適応免疫応答および造血を調節することができることを含めて、様々な他の機能を有する。NK細胞は、必要不可欠なインターフェロン−ガンマ(IFN−ガンマ)をいくつかの実験的動物モデルにおける感染の初期段階の期間中にもたらす。
【0006】
ほとんどのガンは、HLAに関連した特定可能な腫瘍特異的抗原を有しておらず、したがって、抗原特異的な細胞傷害性Tリンパ球によって殺すことができない。広範囲の様々なガン細胞がNK細胞傷害性に対して感受性であるので、ナチュラルキラー(NK)細胞の移植を、移植片対宿主病を恐れることなく、同種状況ではガン細胞に対して用いることができる。
【0007】
近年の研究では、NK細胞治療のこの潜在的可能性が強調されている。移植の動物モデルにおいて、ドナーのNK細胞は、非造血系組織に影響を及ぼすことなく、白血病細胞および宿主のリンパ球造血系細胞を溶解する。NK細胞は、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に結合する自己HLA分子によって阻害されるので、これらの知見は、NK細胞の活性化に有利であるHLA・KIRタイプ(HLA・KIRミスマッチ)を有する造血幹細胞移植片ドナーを選択するという臨床診療に至っており、したがって、抗白血病効果を促進させることが期待され得る。しかしながら、「最良」ドナーの選択は、2つ以上の潜在的ドナーを有する患者に限定され、また、NK細胞がリンパ系細胞を溶解する能力は一般に低く、予測困難である。自己免疫状態におけるNKの分布および機能の調査では、NK細胞集団の低下した数および機能性が多くの自己免疫疾患(例えば、SLE、シェーグレン症候群、硬化症、乾癬、RA、潰瘍大腸炎など)において示されている。したがって、NK細胞を用いた処置は、骨髄移植後の炎症性応答を媒介し得る潜在的に病原性の自己免疫T細胞を積極的に抑制し、これにより、自己免疫記憶T細胞の活性化を、臨床的寛解を維持し、かつ、GVH影響を防止するために抗原非特異的な様式で調節しているかもしれない。
【0008】
臨床使用のために、NK細胞は通常、白血球アフェレーシスによって患者またはドナーから採取される。しかしながら、低体重の患者については、最大のNK細胞用量が限定され、大きいNK細胞用量が得られるだけであるかもしれず、このことが小児をNK細胞治療のための最良の候補者にしている。重要なことは、NK細胞の総数および活性がウイルス感染および/またはガンでは実質的に低下するかもしれず、このことが、内因性NK細胞の活性化に基づく免疫療法を有効でないものにしている。さらに、不応性再発が細胞輸血における大きな合併症であり、多くの臨床プロトコルが白血球集団の反復注入を必要とする。
【0009】
これに関して、Verneris他(Brit J Hematol、2009、147:185〜91)は、臍帯血NK細胞の臨床使用についての見通しを検討して、近年、新鮮な臍帯血NK細胞集団は、さらなる操作が、その完全な機能的(細胞傷害性、運動性)潜在能力を発現するために必要であるかもしれないことを示している。様々な生物的応答修飾物質(具体的には、IL−2)を用いた全身的処置のとき、活性化されたNK細胞の数ならびにそれらの抗ウイルス活性および転移抑制活性が様々な組織で劇的に増大することが見出されている。この証拠に基づいて、IL−2(およびIL−15)とともにNK細胞の活性化および拡大を伴う治療方針が、受血者へのIL−2の同時投与と同様に試みられている。しかしながら、今日まで、結果は、注入されたNK細胞のほんの限定されたホーミングおよび一時的な生着を示すだけで、失望させるものであった。さらに、IL−2は毒性があり、臨床状況では細心の注意を払って使用されなければならない。
【0010】
NK細胞のエクスビボでの濃縮および増殖のための実現可能な臨床プロトコルを開発する試みにおいて、磁石による細胞選択技術で、常磁性のCD56マイクロビーズおよび細胞選別カラムを使用する細胞選択技術が、増殖研究を開始するために、CD3/56のNK T細胞(60.6±10.8%)およびCD3/56のNK T細胞(30.4±8.6%)の両方を含有するCD56集団を単離するために使用されている。組換えヒトIL−15に加えての組換えヒトIL−2またはIL−2の添加により、細胞拡大の相当の変動性が、ドナーに依存して、また、同じドナーが種々の場合に試験されたときにさえ認められた。選択され、生長させられたCD56細胞の低いE:T比率での細胞傷害性が、開始集団よりも有意に大きかったが、同じ条件のもとで2週間培養された非分離PBMCと同程度であった。新鮮な非選択PBMC培養物では、(IL−2との組合せでの)IL−15は、1:1のE:T比率で、IL−2単独よりも大きい殺傷性を誘導した。注目すべきことに、CD3+細胞が培養前に枯渇化されなかったので、CD3CD56NKT細胞の増殖が、CD3CD56NK細胞の増殖の2倍〜3倍であった。CD56/CD3細胞の中程度にすぎない増殖が生じただけであり、得られた細胞の大部分がCD56/CD3NKT細胞であった。
【0011】
異なる取り組みにおいて、ヒトCD3−CD56+NK細胞が、骨髄間質細胞および/または免疫細胞によって産生される様々なサイトカイン(例えば、c−kitリガンド、IL−2およびIL−15など)の存在下で培養されるBM由来のCD34+造血始原体細胞(HPC)から培養される。幹細胞因子をこれらの培養物に加えることは、CD3−CD56+細胞傷害性エフェクター細胞の分化に対する影響が全くなく、しかし、培養におけるそれらの増殖が大きく高められる。これらの細胞の大部分はCD2およびCD16を有していないが、ゼータ−TCRを発現する。末梢血に見出されるNK細胞と同様に、IL−15の存在下で成長させられた骨髄由来のCD2−CD16−CD56+NK細胞は、単球由来のサイトカインに応答して、IFN−ガンマの強力な産生者であることが見出された。IL−15は、CD3−CD56+NK細胞に分化するようにCD34+HPCを誘導することができ、KLはそれらの数を増幅することができる。しかしながら、NK細胞の収量が、CD34+細胞集団の中の潜在的なNK始原体の数が少ないことによって制限される。
【0012】
NK細胞を生長させるための他の方法が記載されている。Frias他(Exp Hematol、2008、36:61〜68)は、血清非含有培地を用いて間質細胞層上で臍帯血から選択されたNK始原体(CD7CD34LinCD56)を成長させ、これにより、SCF、IL−7、IL−15、FLおよびIL−2によるNK分化を誘導し、増大した数の細胞傷害性の培養NK細胞を産生させた。Harada他(Exp Hematol.、2004、32:614〜21)は、NK細胞をウィルムス腫瘍細胞株由来の細胞の上で成長させた。Waldmann他(米国特許出願公開第20070160578号)は、望まれないサイトカイン産生を低下させるために、IL−15/R−リガンド活性化因子の複合体を使用する培養における、全血、骨髄または脾臓の細胞からのNK細胞およびCD8−T細胞の高まった増殖を記載する。Campana他(米国特許出願公開第20090011498号)は、IL−15および4−1BBを発現し、かつ、MHC−IまたはMHC−IIの発現が弱いか、または存在しない白血病細胞の存在下において、NK細胞を移植のためにエクスビボで培養および活性化することを記載する。Childs他(米国特許出願公開第20090104170号)は、NK細胞を、IL−2の存在下、放射線照射されたEBV形質転換リンパ芽球様細胞との共培養によってエクスビボで増殖させ、また、活性化することを記載する。他の取り組みを使用して、Tsai(米国特許出願公開第20070048290号)は、研究適用および可能性のある治療適用のために、継続的なNK細胞株を、放射線照射された3T3由来OP−9S細胞との不死化NK始原体のエクスビボ培養によって造血幹細胞から産生させた。(上記参考文献のすべてが参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0013】
しかしながら、NK細胞培養のための確立された方法はまた、T細胞の増殖を支援し、そして、T細胞が枯渇化された後でさえ、残存するT細胞が典型的には、刺激後に数を増大させ、このことが、拡大された細胞集団の臨床使用を潜在的な移植片対宿主病のために不可能にする。このことはさらに、もう1回のT細胞枯渇化を輸血前に必要とし、そのため、準備手順を、時間および費用がかかり、かつ、相当のNK細胞喪失を常に生じさせるものにしている。
【0014】
拡大後のT細胞混入を減らすために、NK拡大プロトコルでは、精製されたCD56+CD3−細胞が、拡大培養において播種されるための最初の集団として使用され続けている。CD56+CD3−細胞の高度精製画分を得るためには、2工程の精製手順が必要である:CD56細胞の正の選択、その後、CD3+細胞の枯渇化、または、最初にCD3細胞の枯渇化、その後、CD56細胞の正の選択。しかしながら、この手順は費用がかかり、また、2回の精製サイクルの期間中に相当の細胞喪失を伴う。精製されたCD56+CD3−細胞を用いて開始される培養においてさえ、T細胞が混入するNK産物が依然として拡大される。
【0015】
サイトカインがNK細胞の拡大のためにだけ使用されるプロトコルでは、かなり控えめな効果が示され、また、相当の拡大を得るためには、さらなる刺激がサイトカインに加えて要求されることが示される(Korean J Lab Med、2009、29:89〜96;Koehl U他、Klin Padiatr、2005、217:345〜350)。放射線照射されたフィーダー細胞(例えば、末梢血単核細胞、エプスタイン・バールウイルス形質転換のリンパ芽球様系統(ABV−LCL)、K562骨髄性白血病細胞株で、膜結合型形態のインターロイキン−15と、共刺激分子4−1BBのためのリガンドとを発現させるために遺伝子改変されたもの)などが、さらなる刺激としてNK細胞の拡大のために一般に使用される。ほとんどのNK細胞拡大プロトコルでは、精製されたCD56+CD3−細胞が最初の集団として使用される一方で、いくつかのプロトコルでは、単核細胞が、放射線照射された間質または抗CD3抗体との組合せで最初の播種用集団として使用される(Blood、2008年3月15日、第111巻、第6号、3155頁〜3162頁)。拡大後、これらの培養物は、CD3+細胞およびCD3+CD56+細胞がひどく混入しており、したがって、CD56+CD3−細胞が注入前に精製される必要がある。
【0016】
Miller他(Blood、1992、80:2221〜2229)は、抗体被覆のプラスチックフラスコでのパンニングによってCD5およびCD8から枯渇化される精製されたCD14+細胞またはMNCとの組合せでCD56+CD3−細胞を含む、NK始原体および単球について濃縮された画分を使用する培養において18日で、NK細胞の30倍の拡大を得た。Ve’ronique Decot他(Experimental Hematology、2010、38:351〜362)は、単核細胞をT細胞およびB細胞から枯渇化することによって、放射線照射されたT細胞およびB細胞の上でのNK細胞の約20倍の拡大を報告し、枯渇化後の混入集団が主として単球であることを見出した。しかしながら、この培養モデルでは、拡大がサイトカインだけまたはフィーダー細胞だけの存在下では全く認められなかったので、フィーダー細胞およびサイトカインが、NK細胞の増幅を得るために必要であった。したがって、Millerとは対照的に、たとえ単球が播種用集団において濃縮されたとしても、NK細胞の拡大が、照射線照射されたT間質細胞およびB間質細胞の非存在下では全く認められなかった(Decot他、Exper Hematology、2010、38:351〜362)。
【0017】
それにもかかわらず、さらに、エクスビボ培養されたNK細胞は多くの場合、かなりの活性(例えば、細胞傷害性)を非関連の標的細胞に対して明らかにする一方で、より臨床的に関連した腫瘍細胞およびガン細胞に対する活性はインビトロおよびインビボの両方で多くの場合、失望させてきており、活性化を高めるための方法が提案されている。Zitvogel他(米国特許第6849452号)(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)は、誘発された樹状細胞と接触させることによるNK細胞のエクスビボ活性化またはインビボ活性化を教示する。他の研究者は、活性化の強化が、NK細胞を、MHC−I分子を有さず、かつ、IL−15を発現するために遺伝子改変された細胞とともに培養すること(Campana他、米国特許出願公開第2009011498号)によって、または、プロテアソーム阻害剤によるNK細胞レシピエントの前処理(Berg他、Cytotherapy、2009、11:341〜55)(この参考文献は参照によって本明細書中に組み込まれる)によってもたらされることを示唆している。しかしながら、これらのプロトコルのどれも、移植後の適切な宿主標的器官における生存および拡大(恒常性増殖)が可能である著しく拡大されたNK細胞集団をもたらしておらず、また、エクスビボ拡大されたNK細胞を用いた免疫治療は依然として、臨床プロトコルでの使用のために好適な、十分な数の高度に精製された機能的適確なNK細胞を得ることができないことによって制限される(Bachanova他、Canc Immunol.Immunother.、2010、59:739〜44;Guven、Karolinska Institute、2005;Schuster他、E.J.Immunology、2009、34:2981〜90;Bernardini他、Blood、2008、111:3626〜34を参照のこと)。したがって、単離されたNK細胞として、または、CD3+細胞からの単核細胞(枯渇化単核細胞または非枯渇化単核細胞のどちらであれ)の混合集団からNKをエクスビボで優先的に生長させるための簡略化された費用効果的な方法が求められている。
【0018】
ニコチンアミドが細胞の運命および機能を調節し得ることが示された(例えば、国際公開WO2003/062369、同WO2005/007799、同2005/007073、同WO2006/030442、同WO2007/063545および同WO2008/056368を参照のこと。これらのすべてが、本明細書により、それらの全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【発明の概要】
【0019】
臨床適用(例えば、白血病および他のガンのための細胞治療など)のためのより多数の治療適確なNK細胞がますます必要であることを考えると、臨床状況における使用のために好適なナチュラルキラー細胞の高まったエクスビボでの増殖および活性化のための改善および簡略化された費用効果的な方法が求められている。
【0020】
したがって、NK細胞をエクスビボ培養において拡大し、その機能性を注入後に高めることが、養子免疫療法におけるその臨床適用可能性にとって非常に重要である。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、ナチュラルキラー(NK)細胞をエクスビボ培養する方法が提供され、この場合、この方法は、NK細胞を含む細胞の集団を、少なくとも1つの増殖因子、ならびに、効果的な濃度、効果的な暴露時期および効果的な暴露継続期間のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することを含み、ただし、NK細胞を、少なくとも1つの増殖因子、ならびに、効果的な濃度、効果的な暴露時期および効果的な暴露継続期間のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することにより、下記の少なくとも1つがもたらされる:
(a)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、CD62Lの上昇した発現;
(b)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、上昇した遊走応答;
(c)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、上昇したホーミングおよびインビボ保持;
(d)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、より大きい増殖;および
(e)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、増大した細胞傷害活性。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態のさらに別の局面によれば、本発明の方法に従って培養されるNK細胞の集団が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態のさらに別の局面によれば、下記の少なくとも1つによって特徴づけられるNK細胞の集団が提供される:
(a)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、CD62Lの上昇した発現;
(b)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、上昇した遊走応答;
(c)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、上昇したホーミングおよびインビボ保持;
(d)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、より大きい増殖;
(e)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、増大した細胞傷害活性;
(f)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、CD3+細胞対CD56+/CD3−細胞の低下した比率。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態のなおさらに別の局面によれば、移植されたとき、高まったホーミング、生着および保持によって特徴づけられるNK細胞の集団が提供され、ただし、この場合、当該NK細胞集団の少なくとも15×10個を放射線照射されたSCIDマウス宿主に注入することにより、少なくとも25%のドナー由来のNK細胞が、免疫検出およびフローサイトメトリーによって検出されるように、注入後4日で宿主のリンパ組織においてもたらされる。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、NK細胞の集団はさらに、免疫検出およびフローサイトメトリーによって検出されるように、注入時において前記細胞集団の少なくとも30%におけるCD62Lの発現によって特徴づけられる。本発明のさらに他の実施形態によれば、NK細胞の集団はさらに、CD3+細胞対CD56+/CD3−細胞の比率が注入時において1:100以下であることによって特徴づけられる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態のなおさらに別の局面によれば、腫瘍成長をその必要性のある対象において阻害する方法であって、治療有効量の本発明のNK細胞の集団を当該対象に投与することを含む方法が提供される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態のなおさらに別の局面によれば、ウイルス感染症をその必要性のある対象において処置または防止する方法であって、治療有効量の本発明のNK細胞のエクスビボ培養された集団を当該対象に投与することを含む方法が提供される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、移植片対宿主病をその必要性のある対象において処置または防止する方法であって、治療有効量の本発明のNK細胞のエクスビボ培養された集団を当該対象に投与することを含む方法が提供される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、自己免疫性の疾患または状態をその必要性のある対象において処置または防止する方法であって、治療有効量の本発明のNK細胞のエクスビボ培養された集団を当該対象に投与することを含む方法が提供される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、白血病性の疾患または状態をその必要性のある対象において処置または防止する方法であって、治療有効量の本発明のNK細胞のエクスビボ培養された集団を当該対象に投与することを含む方法が提供される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、NK細胞の集団は宿主に対して自己由来または同種由来である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、投与することが、NK細胞集団の単回注入または反復注入によって行われる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、対象は、NK細胞集団を投与することに付随して少なくとも1つの増殖因子により処置されている。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記少なくとも1つの増殖因子は、IL−2、または、IL−2およびIL−15である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、エクスビボ培養されたNK細胞をエキソジーンにより形質導入する方法が提供され、この場合、この方法は、
(a)NK細胞の集団を本発明の方法に従ってエクスビボ培養すること;および
(b)NK細胞の培養された集団をエキソジーンにより形質導入すること
を含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの増殖因子がIL−2であり、暴露時期が、NK細胞を含む細胞の集団の播種からであり、暴露継続期間が約2週間〜約3週間であり、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の濃度が5mMである。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の効果的な濃度が、約0.5mM〜約50mM、または、約1.0mM〜約25mM、または、約2.5mM〜約10mM、あるいは、約2.5mM、約5.0mMまたは約7.5mMである。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、暴露時期が、播種から培養後の約5週間まで、または、播種後の約1時間から培養後の約3週間まで、または、播種後の約24時間から培養後の約3週間まで、または、播種後の約2日から培養後の約2週間まで、または、前記培養における前記NK細胞を含む細胞の集団の播種からである。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、暴露継続期間が、約2時間〜約5週間、または、約30時間〜約4週間、または、約2日〜約3週間、あるいは、約1週間、約2週間、約3週間、約1日、約2日、約3日、約5日、約10日、約12日、約15日、約17日または約20日である。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記NK細胞を含む細胞の集団が、臍帯血、骨髄および末梢血からなる群から選択される供給源から得られる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記NK細胞を含む細胞の集団は、NK細胞画分およびCD3+細胞画分を含む不均一な細胞集団である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、CD3+細胞画分は前記NK細胞画分よりも大きい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、NK細胞画分は前記CD3+細胞画分よりも大きい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記NK細胞を含む細胞の集団は、CD3+細胞が枯渇化された単核細胞集団または総有核細胞集団である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記NK細胞を含む細胞の集団は、CD3+細胞およびCD19+細胞が枯渇化された単核細胞集団または総有核細胞集団である。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記NK細胞を含む細胞の集団は、非選択のNK細胞集団である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、NK細胞はCD56+CD3−細胞を含む。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、NK細胞はCD56+CD16+CD3−細胞を含む。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記NK細胞を含む細胞の集団を培養することが、フィーダー層またはフィーダー細胞を伴うことなく行われる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの増殖因子は、SCF、FLT3、IL−2、IL−7、IL−15、IL−12およびIL−21からなる群から選択される増殖因子を含む。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの増殖因子は、IL−2、または、IL−2およびIL−15である。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの増殖因子はIL−2だけである。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、CD62Lの発現が、フローサイトメトリー、免疫検出、定量的cDNA増幅およびハイブリダイゼーションからなる群から選択される方法によって求められる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、CD62Lの発現が蛍光活性化細胞分取(FACS)によって求められる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、CD62Lの発現が、蛍光性の抗ヒトCD62Lモノクローナル抗体を使用して求められる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上昇した遊走応答が、移行アッセイまたは隙間閉鎖アッセイによって求められる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上昇した遊走応答が移行アッセイによって求められる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態によれば、移行が、SDF1による刺激に応答してアッセイされる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上昇したホーミングおよびインビボ保持がFACSによって求められ、注入後の標的器官におけるパーセント生着NK細胞として表される。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態によれば、標的器官が、脾臓、骨髄およびリンパ節からなる群から選択される。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ホーミングおよび生着が、NK細胞注入後の約1日から約2週間までで求められる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態によれば、増殖速度が、クローン産生アッセイ、機械的アッセイ、代謝アッセイおよび直接的増殖アッセイによって求められる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態によれば、増殖速度が、CD56+CD3−細胞百分率のFACS分析によって求められ、経時的な増大倍数として表される。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞傷害活性が、細胞殺傷アッセイを使用してアッセイされる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞殺傷アッセイの標的細胞が、ガン細胞株、初代ガン細胞、固形腫瘍細胞、白血病性細胞またはウイルス感染細胞である。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミド成分はニコチンアミドである。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミド成分はニコチンアミドのアナログまたは誘導体である。
【0068】
本発明の他の実施形態によれば、ニコチンアミドのアナログまたは誘導体は、置換ベンズアミド化合物、置換ニコチンアミド化合物、ニコチンチオアミド化合物、N−置換ニコチンアミド化合物、ニコチンチオアミド化合物、3−アセチルピリジンまたはニコチン酸ナトリウムである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0070】
【図1A】図1Aは、ニコチンアミドの非存在下(サイトカイン)またはニコチンアミドの増大する濃度(示されるように、0.5mM〜5mMの「NAM」)の存在下で培養した後における臍帯血由来の精製されたNK細胞画分の用量依存的増殖を示すヒストグラムである。培養を、CD56+表現型について免疫磁石ビーズで精製された臍帯血NK細胞を用いて開始し、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに3週間までの間維持した。図1Aは、14日培養したときのCD56+NK細胞の増殖(0日目(培養開始)に対する増大倍数または「細胞拡大」)を示す。コントロール(サイトカイン)と比較して、ニコチンアミド処理培養物のCD56+細胞成分における劇的な用量依存的増大が全培養期間を通して続くことに留意すること。
【図1B】図1Bは、ニコチンアミドの非存在下(サイトカイン)またはニコチンアミドの増大する濃度(示されるように、0.5mM〜5mMの「NAM」)の存在下で培養した後における臍帯血由来の精製されたNK細胞画分の用量依存的増殖を示すヒストグラムである。培養を、CD56+表現型について免疫磁石ビーズで精製された臍帯血NK細胞を用いて開始し、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに3週間までの間維持した。図1Bは、3週間の培養の後におけるCD56+NK細胞の増大倍数を示す。コントロール(サイトカイン)と比較して、ニコチンアミド処理培養物のCD56+細胞成分における劇的な用量依存的増大が全培養期間を通して続くことに留意すること。
【0071】
【図2A−2C】図2A−2Cは、ニコチンアミドの非存在下(サイトカイン)または存在下で維持される、臍帯血由来単核細胞画分全体を用いて開始された培養物において細胞表面マーカー(CD56、CD45、CD3)に従って分類された種々のリンパ球サブセットの割合を示すヒストグラムである。培養物を、増大する濃度(0.5mM〜5mM)のニコチンアミド(「NAM」)の存在下または非存在下、サイトカイン(Flt−3、IL−15およびIL−2を含む)とともに3週間維持し、表面マーカーに対する特異的抗体と反応させ、その後、特定の表現型についてFACSによって分析した。図2A=CD56+/CD45+細胞(NK細胞およびNK−T細胞);図2B=CD56+/CD3−(NK)細胞;図2C=CD3+/CD56−(T)細胞。ニコチンアミド処理培養物でのNK細胞集団(CD56+/CD45+およびCD56+/CD3−の表現型)における用量依存的増大およびTリンパ球集団(CD3+/CD56−の表現型)における付随する低下に留意すること。
【0072】
【図3】図3は、2.5mMのニコチンアミドの非存在下(サイトカイン)または存在下で培養した後における精製骨髄由来の精製されたCD56+細胞画分の増殖を示すヒストグラムである。培養を、免疫磁石ビーズで骨髄から精製されたCD56+細胞(NKおよびNK−T)を用いて開始し、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに、2.5mMのニコチンアミドの存在下(暗い陰影)または非存在下(サイトカイン、明るい陰影)で3週間までの間維持した。コントロール(サイトカイン、明るい陰影)と比較して、ニコチンアミド処理培養物のCD56+CD3−NK細胞成分における劇的増大が全培養期間を通して続くことに留意すること。
【0073】
【図4A−4B】図4A−4Bは、ニコチンアミドの非存在下(サイトカイン)または存在下で培養した後における、精製された骨髄CD56+細胞からの骨髄NK細胞対骨髄NKT細胞の増殖を示すヒストグラムである。培養を、免疫磁石ビーズで精製された骨髄由来のCD56+細胞を用いて開始し、2.5mMのニコチンアミドの存在下または非存在下で、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに3週間維持した。図4Aおよび図4Bは2つの独立した例示的実験の結果を表す。コントロール(サイトカイン)と比較して、播種細胞におけるNK細胞対NKT細胞の初期割合に関係なく、ニコチンアミド処理培養物のCD56+CD3−NK細胞(暗い陰影)の割合における劇的な増大およびCD56+CD3+NKT細胞成分(明るい陰影)の低下に留意すること。
【0074】
【図5】図5は、ニコチンアミドの非存在下(サイトカイン)または存在下で培養した後における、精製された骨髄CD56+細胞からのCD56+CD16+NK細胞表現型を呈示する細胞の増大した百分率を示すヒストグラムである。培養を、図4Aおよび図4Bにおいて記載されるような骨髄由来の免疫磁石精製されたCD56+細胞を用いて開始し、2.5mMのニコチンアミドの存在下または非存在下、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに3週間までの間維持した。14日(明るい陰影)でのCD56+CD16+NKの割合における増大が、コントロール(サイトカイン)におけるCD56+CD16+細胞画分の低下と比較して、ニコチンアミド処理培養物では21日(暗い陰影)でも依然として続くことに留意すること。
【0075】
【図6A−6C】図6A−6Cは、骨髄NK細胞サブセットおよび骨髄NKT細胞サブセットの増殖に対する、ニコチンアミドとの短期培養の影響を示すヒストグラムである。培養を、骨髄由来の免疫磁石精製されたCD56+細胞を用いて開始し、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに、ニコチンアミドの非存在下(サイトカイン)またはニコチンアミドの増大する濃度(「NAM」、1mM、2.5mMおよび5mM)の存在下で7日間維持し、表面マーカーに対する特異的抗体と反応させ、特定の表現型についてFACSによって分析した。図6AはCD56+CD3−NK細胞集団のパーセントをニコチンアミドの関数として表し、図6BはNKT細胞CD56+CD3+集団における低下を培養におけるニコチンアミドの関数として示し、図6CはCD56+CD16+NK細胞サブセットの増殖をニコチンアミドの関数として表す(いずれも、コントロール(サイトカイン)と比較して)。
【0076】
【図7】図7は、増大する濃度(1.0mM〜5mM)のニコチンアミドの存在下で3週間培養される精製された臍帯血由来のCD56+細胞の阻害性NK細胞CD56+/NKG2A+サブセットにおける低下を示すヒストグラムである。免疫磁石精製された臍帯血由来のCD56+細胞を、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに、増大する濃度(1.0mM〜5mM)のニコチンアミド(「NAM」)の存在下または非存在下(サイトカイン)で培養した。3週間後、細胞を表面マーカーに対する特異的抗体と反応させ、CD56+/NKG2A+の表現型についてFACSによって分析した。コントロール(サイトカイン)と比較して、ニコチンアミド処理培養物におけるCD56+NKG2A+細胞の劇的な低下により、ニコチンアミド暴露によるNK細胞の高まった活性化が示唆される。
【0077】
【図8A−8B】図8Aは、増大する濃度のニコチンアミドとともに培養される精製された臍帯血由来のNK細胞の高まった遊走能を示すヒストグラムである。免疫磁石精製された臍帯血由来のCD56+細胞を、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに、2.5mMまたは5mMのニコチンアミドの非存在下(サイトカイン)または存在下で培養した。2週間後、細胞を、Transwellアッセイにおいて250ng/mlのSDFに応答したエクスビボ遊走についてアッセイした。底部チャンバーにおける細胞をFACSによって計数した。コントロール(サイトカイン)と比較して、SDF(250ng/ml)の存在下(暗い陰影)および非存在下(明るい陰影)での高まった遊走により、ニコチンアミドによるNK細胞の高まった運動性および方向性をもった遊走が示唆される。図8Bは、2.5mMまたは5mMのニコチンアミドの存在下で3週間培養される臍帯血由来のCD56+細胞の表面における遊走受容体(CXCR4)、接着受容体(CD49e)および輸送受容体(CD62L)の発現における増大を示す表である。培養を、免疫磁石ビーズで精製された臍帯血由来のCD56+細胞を用いて開始し、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに、または、サイトカインおよびニコチンアミド(2.5mMおよび5mM)とともに維持した。3週間後、培養細胞を、指定された表面マーカーに対する特異的抗体と反応させ、その後、FACSによってモニターした。コントロール(サイトカインのみ)と比較して、ニコチンアミドの存在下で培養された細胞では、CXCR4およびCD62Lの劇的に高まった発現、ならびに、CD49eの上昇した発現に留意すること。
【0078】
【図9】図9は、増大する濃度のニコチンアミドとともに培養される臍帯血由来のCD56+細胞の高まった殺傷能を示すヒストグラムである。免疫磁石ビーズで精製された臍帯血由来のCD56+細胞を、2.5mMのニコチンアミドの存在下(暗い陰影)または非存在下(明るい陰影)、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに培養した。2週間後、FACScalibur分析は、すべての細胞がCD56+/CD3−の表現型を有することを示した。臍帯血NK細胞を、5:1、10:1および20:1のNK細胞対標的細胞(E:T)で、アッセイあたり5×10個のK562標的細胞を用いてエクスビボ殺傷能についてアッセイした。K562細胞の死をPI陽性のCFSE標識細胞の百分率としてFACSによってモニターした。コントロール(サイトカイン)、および、新鮮な、培養されていない臍帯血由来のCD56+細胞(陰影なし)と比較して、高まった標的細胞殺傷により、ニコチンアミドによるNK細胞殺傷能の高まった活性化が強く示唆される。
【0079】
【図10】図10は、ニコチンアミドとの3週間の培養にわたるヒト末梢血NK細胞の拡大を例示するヒストグラムである。新鮮なユニットの単核細胞画分のT細胞(CD3+またはCD3+CD19+)枯渇化[MidiMACS単離(MACS分離カラム、カタログ番号130−042−901)またはRosetteSepヒトCD3+細胞枯渇化カクテル(Stem Cell Technologies、RosestteSep、カタログ番号15661)]によって調製される末梢血NK細胞をFACS分析によって特徴づけし、示された濃度のニコチンアミド(NAM 2.5(明るい陰影)、および、NAM 5mM(暗い陰影))の存在下、VueLifeバッグで培養した。コントロール=サイトカインのみ(NAM 0、陰影なし)。培養培地は、MEMα、ヒト血清(10%v/v)およびサイトカイン(20ng/mlのIL−15および50ng/mlのIL−2、または、50ng/mlのIL−2のみ)を含有した。培養体積を1週間後および2週間後に2倍にし、細胞を、7日後、14日後および21日後、FACS分析のために計数し、染色した。サイトカインのみ(NAM 0)のコントロールは、時間とともに自己再生能を失う傾向を示す一方で、ニコチンアミドの存在下での大きく増大した拡大(0日目に対する増大倍数)に留意すること。
【0080】
【図11】図11は、3週間の培養にわたるヒト末梢血NK細胞に対するニコチンアミドおよび播種密度の影響を示すヒストグラムである。末梢血NK細胞を、図10において詳述されるような単核細胞のT細胞(CD3+またはCD3+CD19+)枯渇化によって調製し、2×10細胞/ml、5×10細胞/mlまたは10×10細胞/mlで、10mlをそれぞれの培養バッグに入れて播種した。その後、細胞を、示された濃度(NAM 2.5(明るい陰影)、および、NAM 5mM(暗い陰影))のニコチンアミド、または、サイトカインのみ(サイトカイン、陰影なし)の存在下で拡大した。NK細胞の増殖がニコチンアミドによって高まることがすべての播種密度で明白である。
【0081】
【図12】図12は、ヒト末梢血NK細胞の21日間の培養におけるCD56+CD3−NK細胞の百分率を示すヒストグラムである。末梢血NK細胞を、図10において詳述されるような単核細胞のT細胞(CD3+またはCD3+CD19+)枯渇化によって調製し、5×10細胞/mlで、10mlをそれぞれの培養バッグに入れて播種した。その後、細胞を、示された濃度(NAM 2.5、および、NAM 5mM)のニコチンアミド、または、サイトカインのみ(サイトカイン)の存在下で拡大した。NK細胞の百分率が培養において21日後のすべての群においてより大きかったとしても、ニコチンアミドにさらされた培養物では、NK百分率がコントロール培養物の場合よりも一層大きいことに留意すること。
【0082】
【図13A−13B】図13A−13Bは、ニコチンアミドにさらされたヒト末梢血NK細胞の培養物における遊走受容体CD62Lの増大した発現を示すヒストグラムである。末梢血NK細胞を、図10において詳述されるような単核細胞のT細胞(CD3+またはCD3+CD19+)枯渇化によって調製し、示された濃度(NAM 2.5、および、NAM 5mM)のニコチンアミド、または、サイトカインのみ(サイトカイン)の存在下で拡大した。7日後(13A)および14日後(13B)、培養細胞を、指定された表面マーカーに対する特異的抗体と反応させ、その後、FACSによってモニターした。コントロール(サイトカインのみ)と比較して、ニコチンアミドの存在下で培養された細胞では、CD62Lの発現が劇的に高まり、暴露継続期間とともに増大したことに留意すること。
【図13C】図13Cは、ニコチンアミドにさらされたヒト末梢血NK細胞の培養物における遊走受容体CD62Lの増大した発現を示すヒストグラムである。末梢血NK細胞を、図10において詳述されるような単核細胞のT細胞(CD3+またはCD3+CD19+)枯渇化によって調製し、示された濃度(NAM 2.5、および、NAM 5mM)のニコチンアミド、または、サイトカインのみ(サイトカイン)の存在下で拡大した。21日後(13C)、培養細胞を、指定された表面マーカーに対する特異的抗体と反応させ、その後、FACSによってモニターした。コントロール(サイトカインのみ)と比較して、ニコチンアミドの存在下で培養された細胞では、CD62Lの発現が劇的に高まり、暴露継続期間とともに増大したことに留意すること。
【0083】
【図14A−14B】図14A−14Bは、ニコチンアミドにさらされたヒト末梢血NK細胞の培養物における単球および顆粒球の増殖の阻害を示すヒストグラムである。末梢血NK細胞を、図10において詳述されるような単核細胞のT細胞(CD3+またはCD3+CD19+)枯渇化によって調製し、示された濃度(NAM 2.5、および、NAM 5mM)のニコチンアミド、または、サイトカインのみ(サイトカイン)の存在下で拡大した。2週間後、培養細胞を単球マーカーCD14(図14A)または顆粒球マーカーCD15(図14B)に対する特異的抗体と反応させ、その後、FACSによってモニターした。コントロール(サイトカインのみ)と比較して、ニコチンアミドの存在下で培養された細胞でのCD14+細胞またはCD15+細胞における劇的に高まった低下に留意すること。
【0084】
【図15A−15D】図15A−15Dは、ニコチンアミドにさらされたヒト末梢血NK細胞のニコチンアミドとともに培養されたNK細胞の高まった殺傷能を例示するヒストグラムである。末梢血NK細胞を、図10において詳述されるような単核細胞のCD3+枯渇化またはCD3+CD19+枯渇化によって調製し、示された濃度(NAM 2.5(明るい陰影)のニコチンアミド、および、NAM 5mM(暗い陰影))、または、サイトカインのみ(サイトカイン、陰影なし)の存在下で拡大した。末梢血NK細胞を、示されるように、K562またはBL2の標的細胞(15A)、初代二形質性白血病の標的細胞(15Bおよび15C)およびColo205結腸ガンの標的細胞(15D)を、1:1、2.5:1、5:1または10:1のNK細胞対標的細胞のE:T比率で用いてエクスビボ殺傷能についてアッセイした。細胞株の標的細胞の死をPI陽性およびCFSE陽性の二重標識細胞の百分率としてFACSによってモニターした。初代白血病の標的細胞の死をCFSE標識された標的細胞の百分率における低下としてFACSによってモニターした。培養されたコントロール(サイトカインのみ、NAM 0、陰影なし)、および、新鮮な、培養されていないNK細胞(コントロール、斜線)と比較して、高まった標的細胞殺傷により、ニコチンアミドによるNK細胞殺傷能の高まった活性化が強く示唆される。
【0085】
【図16】図16は、ニコチンアミドの存在下で拡大されたNK細胞の増大したインビボ機能性(ホーミングおよび生着)を示すヒストグラムである。末梢血NK細胞を、図10において詳述されるような単核細胞のCD3+枯渇化またはCD3+CD19+枯渇化によって調製し、示された濃度(2.5mM NAM、明るい陰影;5mM NAM、暗い陰影)のニコチンアミド、または、サイトカインのみ(NAM 0、陰影なし)の存在下で拡大した。培養において2週間〜3週間の後、それぞれの実験群からの15×10個のNK細胞を放射線照射(350Rad)NOD/SCIDマウスに注入した。マウスを注入後4日で屠殺し、脾臓、骨髄および末梢血からのサンプルをヒトNK(CD45+CD56+)細胞の生着について分析した。ニコチンアミドを伴うことなく培養されたNK細胞のインビボでのホーミング/保持/生着と比較して、ニコチンアミドとともに培養されたNK細胞の著しくより大きいインビボでのホーミング/保持/生着に留意すること。
【0086】
【図17】図17は、ニコチンアミドの非存在下(サイトカイン)または増大する濃度(NAM 1mM〜7.5mM)のニコチンアミドの存在下で培養されるときの、臍帯血由来のCD56+の精製されたNK細胞画分の用量依存的増殖を示すヒストグラムである。培養を、CD56+表現型について免疫磁石ビーズで精製された臍帯血NK細胞を用いて開始し、サイトカイン(Flt−3、IL−2およびIL−15を含む)とともに3週間までの間維持した。図17は、培養における7日(陰影なし)、14日(明るい陰影)および21日(暗い陰影)でのCD56+NK細胞の増殖(0日目(培養開始)に対する増大倍数)を示す。コントロール(サイトカイン)と比較して、ニコチンアミド処理培養物の拡大における劇的な用量依存的増大が全培養期間を通して続くことに留意すること。
【0087】
【図18A−18B】図18A−18Bは、部分的にCD3が枯渇化された末梢血を用いて開始され、ニコチンアミドの非存在下(サイトカイン、0 NAM、陰影なし)または存在下で維持される培養物におけるT(CD3+)細胞およびNKT(CD3+CD56+)細胞の増殖の阻害を示す。培養物を、増大する濃度(2.5、暗い陰影;5mM、明るい陰影;および7.5mM、非常に明るい陰影)のニコチンアミドの存在下または非存在下、サイトカイン(Flt−3、IL−15およびIL−2を含む)とともに3週間維持し、表面マーカー(56FITCおよび3APC)に対する特異的抗体と反応させ、特定の表現型についてFACSによって分析した(18B)。ニコチンアミドにさらされたNK培養物におけるCD3+T細胞およびCD3+CD56+NKT細胞の劇的な低下に留意すること。
【0088】
【図19A−19B】図19A−19Bは、ニコチンアミドによるCD62L輸送受容体発現の強化を示す。図19Aは、サイトカインのみのコントロール(0「NAM」、陰影なし)と比較して、2.5mM(明るい陰影)および5mM(暗い陰影)のニコチンアミドでの3週間の培養のためにさらされるIL−2との培養における活性化の前(非常に明るい陰影)および活性化の後での、末梢血から精製されたCD56+細胞の表面におけるCD62L輸送受容体発現レベルを示すヒストグラムである。図19Bは、(2.5mM〜7.5mMの)ニコチンアミドまたはコントロール(NAM 0)において3週間培養される精製された末梢血CD56+細胞の表面におけるCD62L発現のFACS分析である。コントロール(サイトカインのみ)と比較して、ニコチンアミドの存在下で培養された細胞におけるCD62Lの劇的に高まった発現に留意すること。
【0089】
【図20】図20は、CD3枯渇化、それに続いて、CD56+細胞の選択によって末梢血由来の単核細胞画分から精製されたCD56+細胞の増殖(増大倍数)に対するニコチンアミドの影響を示すヒストグラムである。精製されたCD56+細胞を、培養(ニコチンアミド(2.5mMおよび5mM)を伴って、または伴うことなく、IL−2、IL−15およびFlt−3)において、また、同じ血液ユニットからの末梢血単核細胞に由来する放射線照射された間質とともに播種した(Cyt+Irr、NAM 2.5+Irr、および、NAM 5+Irr)。放射線照射された末梢血細胞と、CD56+選択細胞との比率が10:1であった。コントロール(サイトカインのみ)と比較して、ニコチンアミドにより処理された場合における劇的に高まった増殖に留意すること。
【0090】
【図21】図21は、図20において記載されるように、サイトカインおよび放射線照射された間質細胞により処理された培養物におけるCD56+細胞の表面におけるCXCR4の発現に対するニコチンアミドの影響を示すヒストグラムである。
【0091】
【図22】図22は、図20において記載されるように、サイトカインおよび放射線照射された間質細胞により処理された培養物におけるCD56+細胞の表面におけるCD62Lの発現に対するニコチンアミドによる培養の影響を示すヒストグラムである。
【0092】
【図23】図23は、1:1、2.5:1および5:1のCD56+細胞対標的細胞のE:T比率における、K562標的細胞のCD56+細胞エクスビボ殺傷能に対するニコチンアミドとの培養の影響を示すヒストグラムである。標的細胞の死を、PI陽性のCFSE標識されたK562細胞の百分率としてFACSによってモニターした。コントロール(サイトカインのみ、NAM 0+Irr、陰影なし)と比較して、細胞が示された濃度(NAM 2.5+Irr、明るい陰影;NAM 5+Irr、暗い陰影)のニコチンアミドで培養された場合の高まった標的細胞殺傷により、放射線照射された細胞の影響に関連づけられない、ニコチンアミドによるNK細胞殺傷能の高まった活性化が強く示唆される。
【発明を実施するための形態】
【0093】
本発明は、ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を生長させ、一方、同時に、当該細胞の機能をエクスビボおよび/またはインビボにおいて維持または強化する方法に関する。1つの実施形態において、NK細胞をニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分ならびにNK細胞増殖因子とともにエクスビボ培養することにより、機能的なNK細胞の生長させられた集団を含み、ただし、CD3+細胞の増殖が阻害され、一方、NK細胞の増殖が優先的に高められる治療用のエクスビボ培養された細胞調製物として使用されるNK細胞集団の製造が容易になる。具体的にはこの点に関して、本発明は、機能的なNK細胞のロバストな集団を提供するために使用することができ、そのような集団は、ガンおよび他の疾患を処置するための細胞移植片における適用、および、細胞遺伝子治療のために使用され得る、遺伝子操作に好適なNK細胞の作製における適用のために使用することができる。さらなる、限定されない適用には、移植片対宿主病の処置(例えば、骨髄再建において)、同種由来および自己由来の養子免疫療法、自己免疫疾患の処置、感作剤と、NK細胞における遺伝子移入とを伴う混合療法が含まれ得る。本発明はさらに、輸血のために有用なNK細胞調製物、および、そのようなNK細胞調製物を調製するための製造物に関連する。
【0094】
本発明の原理および操作が、実施例および付随する説明を参照してより良く理解され得る。
【0095】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、または実施例において例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0096】
ナチュラルキラー細胞(以降、これはまた「NK」細胞と略記される)は、免疫反応に関与するリンパ系細胞である。これらの細胞は様々な機能を有しており(とりわけ、腫瘍細胞、発ガン性形質転換を受けている細胞、および、他の異常な細胞を生体内において殺すこと)、また、生来的な免疫学的監視機構の重要な構成成分である。NK細胞は、自発的なMHC非拘束の細胞傷害活性をウイルス感染細胞および腫瘍細胞に対して示し、ウイルス感染およびガン発達に対する抵抗性をインビボにおいて媒介する。したがって、NK細胞の数を効果的に増大させるための方法は、腫瘍の処置、および、腫瘍発生の潜在的起源であると見なされるウイルス感染細胞の排除のために有用であり得る。
【0097】
したがって、生長可能なNK細胞の数を効果的に拡大し、かつ、リンパ節にホーミングするそれらの機能および可能性、ならびに、それらの恒常的増殖を注入後のインビボにおいて高めるための臨床規格のプロトコル(例えば、間質層非含有、最小限のサイトカイン)を開発することにより、固形腫瘍、造血系悪性腫瘍、ウイルス性障害および自己免疫性障害などを処置するための、NK細胞を用いた養子免疫療法の成功が改善され得ると考えられる。
【0098】
本発明は、NK細胞を、培養期間中、本明細書中にさらに詳述されるように特定の濃度を超えるニコチンアミドにエクスビボで暴露することにより、機能適確なNK細胞の増殖および/または機能性が効果的に高められ、培養物のT細胞画分における著しい減少がもたらされるという発見に基づく。そのようなものとして、その1つの実施形態において、本発明は、機能的に成熟しているNK細胞の増殖および/または機能を、非NK細胞(例えば、CD3+)の増殖を同時に誘導することなく、エクスビボおよびインビトロにおいて効率的に誘導することができる臨床的に適切な培養条件を提供する。
【0099】
したがって、本発明の1つの実施形態の1つの局面によれば、ナチュラルキラー(NK)細胞をエクスビボ培養する方法が提供され、この場合、この方法は、NK細胞を含む細胞の集団を、少なくとも1つの増殖因子、ならびに、効果的な濃度、効果的な暴露時期および効果的な暴露継続期間のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することを含み、ただし、NK細胞を、少なくとも1つの増殖因子、ならびに、効果的な濃度、効果的な暴露時期および効果的な暴露継続期間のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することにより、下記の少なくとも1つがもたらされる:
(a)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、CD62Lの上昇した発現;
(b)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、上昇した遊走応答;
(c)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、上昇したホーミングおよびインビボ保持;
(d)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、より大きい増殖;および
(e)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、増大した細胞傷害活性。
【0100】
本明細書中で使用される場合、ナチュラルキラー(NK)細胞の用語は、生来的免疫応答に関与する大きい顆粒リンパ球を示す。機能的には、NK細胞は、細胞傷害活性を、様々なタンパク質(パーフォリンおよびグランザイムプロテアーゼを含む)を含有する細胞質顆粒のエキソサイトーシスにより様々な標的に対して示す。殺傷が、抗原への事前の感作を必要としない接触依存的な非貪食性プロセスで誘発される。ヒトのNK細胞が、細胞表面マーカーであるCD16およびCD56の存在、ならびに、T細胞受容体(CD3)の非存在によって特徴づけられる。ヒトの骨髄由来NK細胞はさらに、T細胞受容体ゼータ鎖[ゼータ(ζ)−TCR]をさらに含有するので、CD2+CD16+CD56+CD3−の表現型によって特徴づけられ、また、多くの場合、NKp46、NKp30またはNKp44によって特徴づけられる。非NK細胞、例えば、NKT細胞またはCD8NKTなどは、T細胞およびNK細胞の両方の特徴および細胞表面マーカーを有する。1つの実施形態において、本発明の方法は、成熟NK細胞を細胞の集団からエクスビボ生長させるために用いられる。本明細書中で使用される場合、用語「成熟NK細胞」は、特徴的な表面マーカーおよびNK細胞機能を有し、かつ、さらなる分化のための能力を有しない系譜決定されたNK細胞として定義される。本明細書中で使用される場合、成熟NK細胞には、CD56bright細胞(これは増殖し、多量のサイトカインを産生することができる)、CD56dim細胞(これは、ロバストな細胞傷害性を示す)、CD56brightCD94high細胞およびCD56dimCD94high細胞が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態において、NK始原体細胞、または、NK始原体細胞および成熟NK細胞の混合集団が生長させられる。CD56、CD3、CD16、CD94および他のマーカーの細胞表面発現を、例えば、FACS分析または免疫組織学的染色技術により明らかにすることができる。
【0101】
本明細書中で使用される場合、用語「始原体」は、1つまたは複数の成熟エフェクター細胞に分裂すること、および/あるいは、1つまたは複数の成熟エフェクター細胞への分化を受けることができる未成熟な細胞を示す。リンパ球始原体には、例えば、B細胞、T細胞およびNKの各系譜の成熟細胞を生じさせることができる多能性造血幹細胞が含まれる。B細胞系譜において(すなわち、成熟B細胞を生じさせる発達経路において)、始原体細胞にはまた、免疫グロブリン遺伝子の再編成および発現によって特徴づけられるプロB細胞およびプレB細胞が含まれる。T細胞およびNK細胞の系譜において、始原体細胞にはまた、骨髄由来の両能性のT/NK細胞始原体[例えば、CD34(+)CD45RA(hi)CD7(+)細胞およびCD34(+)CD45RA(hi)Lin(−)CD10(+)細胞]、同様にまた、胸腺内の始原体細胞(これには、二重陰性(CD4およびCD8に関して)および二重陽性の胸腺細胞(T細胞系譜)、ならびに、系譜決定されたNK細胞始原体が含まれる)が含まれる。造血始原体には、CD34+および初期始原体(例えば、CD133+細胞、CD34+CD38−細胞およびCD34+Lin−細胞など)が含まれる。
【0102】
本明細書中で使用される場合、用語「エクスビボ」は、細胞が生体から取り出され、当該生物の体外(例えば、試験管)で生長させられるプロセスを示す。本明細書中で使用される場合、用語「インビトロ」は、インビトロでのみ生長することが知られている細胞(例えば、様々な細胞株など)が培養されるプロセスを示す。
【0103】
NK細胞のエクスビボ拡大を、本発明のこの局面によれば、NK細胞に細胞増殖のための条件をエクスビボで与え、NK細胞をニコチンアミド成分とともにエクスビボ培養し、それにより、NK細胞の当該集団をエクスビボ生長させることによって行うことができる。
【0104】
本明細書中で使用される場合、「培養する」には、NK細胞の維持のために要求される化学的条件および物理的条件(例えば、温度、ガス)、ならびに、増殖因子を与えることが含まれる。1つの実施形態において、NK細胞を培養することには、NK細胞に増殖のための条件を与えることが含まれる。NK細胞の増殖を支援し得る化学的条件の例には、典型的には成長培地(すなわち、培養培地)で与えられる緩衝液、栄養分、血清、ビタミンおよび抗生物質、同様にまた、サイトカインおよび他の増殖因子が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、NK培養培地には、10%のFCSを含むMEMα、または、5%のヒト血清/LiforCell(登録商標)FBS代替物(Lifeblood Products)を含むCellGro SCGM(Cell Genix)が含まれる。本発明との使用のために好適な他の培地には、Glascow培地(Gibco、Carlbad、CA)、RPMI培地(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)またはDMEM(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)が含まれるが、これらに限定されない。これらの培養培地の多くがニコチンアミドをビタミン補充物として含有することに気づくであろう(例えば、MEMα(8.19μMのニコチンアミド)、RPMI(8.19μMのニコチンアミド)、DMEM(32.78μMのニコチンアミド)およびGlascow培地(16.39μMのニコチンアミド))。しかしながら、本発明の方法は、培地の処方に含まれる何らかのニコチンアミドおよび/またはニコチンアミド成分を補う外部添加されたニコチンアミド、あるいは、培地成分濃度の全体的調節に起因する外部添加されたニコチンアミドに関連する。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態によれば、NK細胞を増殖因子とともに培養することは、当該細胞に、栄養分と、少なくとも1つの増殖因子とを与えることを含む。いくつかの実施形態において、そのような少なくとも1つの増殖因子には、サイトカインおよび/またはケモカインが含まれ、例えば、幹細胞因子(SCF)、FLT3リガンド、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−12(IL−12)およびインターロイキン−21(IL−21)など(これらに限定されない)が含まれる。他のサイトカインおよび増殖因子の使用が意図される(例えば、IL−1、TNF−αなどの添加)。サイトカインおよび他の増殖因子が典型的には、0.5ng/mlから100ng/mlにまで及ぶ濃度で、または、1.0ng/mlから80ng/mlにまで及ぶ濃度で与えられ、より典型的には、5ng/mlから750ng/mlにまで及ぶ濃度で、さらにより典型的には、5.0ng/mlから50ng/mlにまで及ぶ濃度で与えられる(10倍までのそのような濃度が意図され得る)。サイトカインおよび他の増殖因子が、例えば、Perpo Tech,Inc.(Rocky Hill、NJ、USA)から市販されている。1つの実施形態において、上記少なくとも1つの増殖因子はIL−2である。別の実施形態において、上記増殖因子はIL−15である。さらに別の実施形態において、NK細胞がIL−2およびIL−15とともに培養される。
【0106】
さらに、新規なサイトカインが途切れることなく発見され、そのうちのいくつかは本発明のNK細胞増殖の方法において使用が見出されるかもしれないことが、これに関連して理解される。細胞がヒト対象に導入(または再導入)される適用については、血清非含有配合物、例えば、リンパ球培養のためのAIM V.(登録商標)血清非含有培地、または、MARROWMAX.(登録商標)骨髄培地などを使用することが多くの場合、好ましい。そのような培地配合物および補充物が商業的供給源から入手可能である(例えば、Invitrogen(GIBCO)(Carlsbad、Calif)など)。培養には、最適な生存性、増殖、機能性および/または生存を促進させるために、アミノ酸、抗生物質および/またはサイトカインが補充される。
【0107】
1つの実施形態によれば、細胞は、増殖因子ならびにニコチンアミドおよび/またはニコチンアミド成分とともに培養される。本明細書中で使用される場合、用語「ニコチンアミド成分」は、ニコチンアミド、同様にまた、NK細胞の増殖および/または活性化を効果的かつ優先的に高めることができる、ニコチンアミド、その誘導体、アナログおよび代謝産物に由来する生成物(例えば、NAD、NADHおよびNADPHなど)を示す。ニコチンアミドの誘導体、アナログおよび代謝産物を、本明細書中下記のように維持されるNK培養物に加えることによって、または、機能的アッセイ(例えば、殺傷アッセイおよび運動性アッセイ(実施例の節を参照のこと)など)によって、または、この分野では広く知られているハイ・スループット・アッセイのために設計される自動化されたスクリーニングプロトコルにおいて、培養におけるエクスビボNK増殖に対するそれらの影響についてスクリーニングし、評価することができる。
【0108】
本明細書中で使用される場合、表現「ニコチンアミドアナログ」は、上記アッセイまたは類似したアッセイにおいてニコチンアミドと同様に作用することが知られている分子であれば、どのようなものも示す。ニコチンアミドアナログの代表的な例には、限定されないが、ベンズアミド、ニコチンチオアミド(ニコチンアミドのチオールアナログ)、ニコチン酸およびα−アミノ−3−インドールプロピオン酸が含まれ得る。
【0109】
表現「ニコチンアミド誘導体」はさらに、ニコチンアミド自体の、または、ニコチンアミドのアナログの構造的誘導体であれば、どのようなものも示す。そのような誘導体の例には、限定されないが、置換されたベンズアミド化合物、置換されたニコチンアミド化合物およびニコチンチオアミド化合物、ならびに、N−置換されたニコチンアミド化合物およびニコチンチオアミド化合物、3−アセチルピリジンおよびニコチン酸ナトリウムが含まれる。本発明の1つの具体的な実施形態において、ニコチンアミド成分はニコチンアミドである。
【0110】
本明細書中で使用される場合、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の、表現「効果的な濃度」は、培養におけるニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への効果的な暴露継続期間にわたって、かつ、培養におけるニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への効果的な暴露時期で、培養されているNK細胞の集団に与えられるとき、当該NK細胞のCD62Lの上昇した発現、上昇した遊走応答、上昇したホーミングおよびインビボ保持、より大きい増殖および増大した細胞傷害活性のうちの1つまたは複数が、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴うことを除いて同一条件のもとで培養されたNK細胞と比較してもたらされるニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分のそのような濃度として定義される。本発明のいくつかの実施形態における使用のために好適なニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の濃度は典型的には、約0.5mM〜約50mM、約1.0mM〜約25mM、約2.5mM〜約10mM、約5.0mM〜約10mMの範囲である。下記の実施例I〜VIIは、ニコチンアミド成分(ニコチンアミド)の例示的な効果的な濃度が、増殖およびNK細胞の機能に対するニコチンアミドのこれらの濃度の影響に基づいて約0.5mM〜約10mMであり、典型的には2.5mMまたは5.0mMであることを明らかにする。本発明のいくつかの実施形態によれば、約0.5mM、約0.75mM、約1.0mM、約1.25mM、約1.5mM、約1.75mM、約2.0mM、約2.25mM、約2.5mM、約2.75mM、約3.0mM、約3.25mM、約3.5mM、約3.75mM、約4.0mM、約4.25mM、約4.5mM、約4.75mM、約5.0mM、約5.25mM、約5.5mM、約5.75mM、約6.0mM、約6.25mM、約6.5mM、約6.75mM、約7.0mM、約7.25mM、約7.5mM、約7.75mM、約8.0mM、約8.25mM、約8.5mM、約8.75mM、約9.0mM、約9.25mM、約9.5mM、約9.75mM、約10.0mM、約11.0mM、約12.0mM、約13.0mM、約14.0mM、約15.0mM、約16.0mM、約17.0mM、約18.0mMおよび約20.0mMの範囲(mM)におけるニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の濃度、ならびに、すべての効果的な中間の濃度が意図される。
【0111】
ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の効果的な濃度を、NKの増殖および/または活性の任意のアッセイに従って、例えば、下記の実施例I〜VIにおいて詳述されるような細胞培養プロトコルまたは細胞機能プロトコルに従って求めることができる。1つの実施形態によれば、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の効果的な濃度は、培養におけるその使用が、同じアッセイにおいて、かつ、類似する培養条件(ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への暴露継続期間、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への暴露時期)のもとで、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を有し、かつ、同じ臍帯血調製物、骨髄調製物または末梢血調製物から試験される「コントロール」培養と比較して、培養されているNK細胞の増殖および/または機能を「高める」か、あるいは、培養されているNK細胞の増殖および/または機能の正味の増大をもたらす濃度である。
【0112】
本明細書中で使用される場合、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分へのNK細胞の暴露の、表現「効果的な継続期間」は、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分が、培養されているNK細胞の集団に、効果的な濃度で、かつ、効果的な暴露時期で与えられるとき、当該NK細胞のCD62Lの上昇した発現、上昇した遊走応答、上昇したホーミングおよびインビボ保持、より大きい増殖および増大した細胞傷害活性のうちの1つまたは複数が、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴うことを除いて同一条件のもとで培養されたNK細胞と比較してもたらされるニコチンアミドに対する暴露のそのような継続期間として定義される。本発明のいくつかの実施形態における使用のために好適な、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分へのNK細胞集団の暴露継続期間は典型的には、約2時間〜約5週間、約30時間〜約4週間、約2日〜約3週間、約1週間、約2週間、約3週間の範囲である。下記の実施例I〜IVは、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への例示的に効果的な暴露継続期間が、増殖およびNK細胞の機能に対するニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への暴露の影響に基づいて約1週間〜約3週間であることを明らかにする。本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への暴露継続期間が、約1.0日、約2.0日、約2.5日、約3.0日、約3.5日、約4.0日、約4.5日、約5.0日、約6.0日、約7.0日、約8.0日、約9.0日、約10.0日、約11.0日、約12.0日、約13.0日、約14.0日、約15.0日、約16.0日、約17.0日、約18.0日、約19.0日、約20.0日、約21.0日、約25日、約30日、約35日であり、また、すべての効果的な中間の継続期間が意図される。ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への効果的な暴露継続期間を、NKの増殖および/または活性の任意のアッセイに従って、例えば、下記の実施例I〜VIにおいて詳述されるような細胞培養プロトコルまたは細胞機能プロトコルに従って求めることができる。
【0113】
ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分へのNK細胞集団の暴露は細胞培養の確立とともに開始され得るか、または、細胞培養期間中の任意の時間で、それどころか、NK細胞の使用(例えば、注入)の直前の短い継続期間にわたってでさえ、開始され得ることが理解される。本明細書中で使用される場合、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分へのNK細胞集団の、表現「効果的な暴露時期」は、NK集団の培養期間中において、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分が、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の効果的な濃度で、かつ、効果的な継続期間にわたってNK細胞の集団に与えられ、その結果、当該NK細胞のCD62Lの上昇した発現、上昇した遊走応答、上昇したホーミングおよびインビボ保持、より大きい増殖および増大した細胞傷害活性のうちの1つまたは複数が、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴うことを除いて同一条件のもとで培養されたNK細胞と比較してもたらされる時間として定義される。本発明のいくつかの実施形態のために好適な、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分へのNK細胞集団の暴露時期は典型的には、NK細胞の播種から培養後の約5時間まで、播種後の約1時間から培養後の約3週間まで、約24時間から培養後の約3週間まで、および、培養におけるNK細胞集団の播種時からである。本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分へのNK細胞の暴露時期は、播種時、細胞播種後の約2時間、細胞播種後の約12時間、細胞播種後の約24時間、細胞播種後の約2日、細胞播種後の約4日、細胞播種後の約7日、細胞播種後の約8.0日、約9.0日、約10.0日、約11.0日、約12.0日、約13.0日、約14.0日、約15.0日、約16.0日、約17.0日、約18.0日、約19.0日、約20.0日、約21.0日、約25日、約30日、約35日であり、また、すべての効果的な中間の時期が意図される。ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への効果的な暴露時期を、NKの増殖および/または活性の任意のアッセイに従って、例えば、本明細書中において、例えば、本明細書中下記の実施例I〜VIにおいて詳述されるような細胞培養プロトコルまたは細胞機能プロトコルに従って求めることができる。
【0114】
下記の実施例の節において詳述されるように、NK細胞集団を、少なくとも1つの増殖因子、ならびに、効果的な暴露時期で、効果的な暴露継続期間にわたって与えられる効果的な濃度のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することにより、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分での同一条件のもとで培養されたNK細胞と比較された場合、培養細胞の高まった増殖および/または高まったNK細胞機能の少なくとも1つがもたらされる。
【0115】
本明細書中で使用される場合、用語「生長」または用語「増殖」は、成長(例えば、細胞成長)、および、細胞数の増加を示す。生長および増殖は、本明細書中で使用される場合、インキュベーション期間の期間中に生じるNK細胞の増大した数に関連する。NK細胞の表現型を呈示する細胞のインビトロまたはインビボでの生長は、そのような細胞が、例えば、IL−2、および、エプスタイン・バールウイルス形質転換のリンパ芽球様系統などにより刺激された後における既知の現象である。
【0116】
この分野では広く知られている、細胞増殖についてのアッセイには、クローン産生アッセイ(このアッセイでは、細胞が低密度で播種され、成長させられる)、および、コロニー計数、機械的アッセイ[フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))、ヨウ化プロピジウム](これは細胞の数を機械的に測定する)、代謝アッセイ(例えば、テトラゾリウム塩(例えば、XTT、MTTなど)の取り込みなど)(これは生細胞の数を測定する)、直接の増殖アッセイ(例えば、BUdR、チミジンの取り込みなど)(これは成長中の集団のDNA合成を測定する)が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、本発明に従って効果的な濃度のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されるNK細胞の集団の細胞増殖が、培養におけるNK細胞播種後の所定の時間(例えば、約10時間、12時間、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、2ヶ月またはそれ以上)で測定され、当該集団のCD56+CD3−NK細胞画分を特定および定量するために抗CD56マーカーおよび抗CD3マーカーを使用してFACS分析によって求められる。NK細胞の増殖を、培養前の元のNK細胞画分と比較して、NK細胞の増大倍数(例えば、拡大または拡大倍数)として表すことができる。いくつかの実施形態において、本発明に従って効果的な濃度のニコチンアミドにさらされたNK細胞の集団は、当該NK細胞集団の増大倍数が、約5日、約7日、約12日、約14日、約18日、約21日、約25日、約30日またはそれ以上の培養の後では少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍、少なくとも250倍および少なくとも500倍またはそれ以上である。別の実施形態において、効果的な濃度のニコチンアミドにさらされたNK細胞の集団の拡大倍数は、FACS(商標)によって求められる場合、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴う同一条件で培養されたNK細胞の拡大倍数の少なくとも約1.2倍、約1.3倍、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍またはそれ以上である。
【0117】
本明細書中で使用される場合、用語「機能」または用語「NK細胞(の)機能」は、NK細胞に帰する生物学的機能であれば、どのようなものも示す。NK細胞機能の限定されない列挙には、例えば、細胞傷害性、アポトーシスの誘導、細胞運動性、方向づけられた遊走、サイトカインおよび他の細胞シグナルの応答、サイトカイン/ケモカインの産生および分泌、活性化細胞表面分子および阻害性細胞表面分子のインビトロでの発現、移植を受けた宿主における細胞のホーミングおよび生着(インビボ保持)、ならびに、疾患または疾患プロセスのインビボでの変化が含まれる。いくつかの実施形態において、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への暴露によって高められるNK細胞機能には、当該NK細胞のCD62L表面マーカーの上昇した発現、上昇した遊走応答、および、より大きい細胞傷害活性、ならびに、注入されたNK細胞の上昇したホーミングおよびインビボ保持のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0118】
移植における細胞のホーミング/生着および保持のために重要である接着分子および遊走分子(例えば、CD62L、CXCR−4およびCD49eなど)についてのアッセイが、この分野では広く知られている。細胞におけるCD62L発現を、例えば、フローサイトメトリー、免疫検出、定量的cDNA増幅およびハイブリダイゼーションなどによってアッセイすることができる。1つの実施形態において、CD62Lの発現が、細胞を蛍光標識された特異的な抗ヒトCD62Lモノクローナル抗体[例えば、CD62L PE、カタログ番号304806、BioLegend(San Diego、CA、USA)]にさらし、細胞を蛍光活性化細胞分取(FACS)によって分取することによってNK細胞の種々の集団において検出される。いくつかの実施形態において、効果的な濃度のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分にさらされたNK細胞の集団は、FACS(商標)によって求められるように、検出された細胞の少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%またはそれ以上がCD62Lを発現する。別の実施形態において、本発明に従ってニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分にさらされたNK細胞の集団は、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴う同一条件で培養されたNK細胞と比較されるとき、FACS(商標)によって求められるように、少なくとも約1.2倍、約1.3倍、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍またはそれ以上のCD62Lの発現を有する。
【0119】
細胞遊走についてのアッセイがこの分野では広く知られている。細胞の遊走を、例えば、移行アッセイまたは隙間閉鎖アッセイによってアッセイすることができる。移行アッセイ、例えば、ツー・チャンバー技術などでは、細胞が、バリア(例えば、フィルター)によって刺激から隔てられ、細胞の遊走が、元のところからの細胞の喪失、バリアを越えた細胞の蓄積、または、両方を特定の間隔で計数することによって検出される。隙間閉鎖アッセイでは、細胞が、目に見える隙間(刻み目をつけた寒天平板、円の周りなど)の周囲に置かれ、刺激とともにインキュベーションされる。刺激に対する応答における、細胞の運動性によって加えられる細胞間の空間の閉鎖が、細胞数測定、免疫検出、顕微鏡/形態計測学などを使用して可視化される。1つの実施形態において、NK細胞の種々の集団の遊走能が、SDF(250ng/ml)に対する応答での「Transwell」(商標)移行アッセイによって求められる。いくつかの実施形態において、本発明に従って効果的な濃度のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分にさらされたNK細胞の集団は、本明細書中に記載されるTranswellアッセイによって、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%および少なくとも80%またはそれ以上が遊走する。別の実施形態において、効果的な濃度のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分にさらされたNK細胞の集団は、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴う同一条件で培養されたNK細胞と比較されるとき、transwellアッセイによって求められるように、少なくとも約1.2倍、約1.3倍、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍またはそれ以上の遊走を有する。
【0120】
輸血または移植された細胞のホーミングおよびインビボ保持についてのアッセイがこの分野では広く知られている。本明細書中で使用される場合、用語「ホーミング」は、輸血または移植された細胞が宿主の標的器官に到達し、標的器官において生存することが可能であることを示す。例えば、NK細胞の標的器官はリンパ系組織が可能であり、肝細胞の標的器官は肝臓実質が可能であり、肺胞細胞の標的器官は肺実質が可能である。本明細書中で使用される場合、用語「インビボ保持」(これはまた、「生着」として知られている)は、輸血または移植された細胞が標的器官において増殖し、生存し続けることが可能であることを示す。移植されたNK細胞のホーミングおよびインビボ保持をアッセイするための動物モデルには、免疫欠損の小動物(例えば、SCIDマウスおよびIL2Rγnullマウスなど)が含まれるが、これらに限定されない。SCID−Huマウスモデルは、ヒト胎児の胸腺組織および肝臓組織または胎児BM組織が移植されたC.B−17scid/scid(SCID)マウスを用いており、移植されたヒトNK細胞の保持および治療能を評価するための適切なモデルを提供する。移植された細胞のホーミングおよびインビボ保持は、ヒト宿主対象においても同様に評価することができる。1つの実施形態において、ホーミングおよびインビボ保持が、例えば、本発明に従って効果的な濃度のニコチンアミドとともに培養された約15×10個、約15×10個、約15×10個、約15×10個またはそれ以上のヒトNK細胞が輸血され、輸血後の所定の時間(例えば、輸血後の約5時間、10時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月またはそれ以上)で屠殺される放射線照射されたNOD/SCIDマウスにおいてアッセイされる(下記の実施例VIを参照のこと)。マウスを屠殺したとき、脾臓、骨髄、末梢血および他の器官のサンプルが、ヒト特異的Abを使用してヒトNK細胞(CDS56+CD45+)の存在についてFACSによって評価される。インビボ保持率が、ドナーの表現型(例えば、ヒト細胞についてはCD45)を呈示する器官の細胞のパーセントとして表される。いくつかの実施形態において、本発明に従って効果的な濃度のニコチンアミドにさらされたNK細胞の集団が輸血された宿主マウスの標的器官(例えば、リンパ系組織、例えば、骨髄、脾臓、胸腺、リンパ節、GALTなど)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%および少なくとも80%またはそれ以上のホーミングおよびインビボ保持を有する。1つの具体的な実施形態において、本発明に従って効果的な濃度のニコチンアミドおよび/またはニコチンアミド成分とともに培養された15×10個のNK細胞が放射線照射のSCIDマウスに輸血され、ドナー特異的系譜(例えば、CD45+)を有する少なくとも25%のNK細胞が輸血後4日で宿主の脾臓において検出される。別の実施形態において、効果的な濃度のニコチンアミドにさらされたNK細胞の集団は、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴う同一条件で培養されたNK細胞のホーミングおよびインビボ保持と比較されるとき、FACS(商標)によって求められるように、少なくとも約1.2倍、約1.3倍、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍またはそれ以上のホーミングおよびインビボ保持を有する。
【0121】
本明細書中で使用される場合、用語「恒常的増殖」は、注入されたNK細胞の安定した数を長期間(好ましくは数ヶ月間または数年間)維持することができる、標的器官内または標的組織内における増殖を示す。
【0122】
現在、患者へのNK細胞の移植を伴う多くの臨床試験が、例えば、しかし、限定ではなく、白血病(NCT00799799およびNCT00303667)、血液学的悪性腫瘍(NCT00697671、NCT00354172および同00640796)、ASCT後(NCT00586703)、神経芽細胞腫(NCT00698009)、悪性メラノーマ(NCT00846833)、化学療法との混合治療(NCT00625729)、固形腫瘍(NCT00640796)および鼻咽頭ガン(NCT00717184)を含む様々な状態について、ならびに、多種多様な悪性腫瘍(NCT01105650)について実施中である。NK細胞治療についての現在の臨床試験および詳細なプロトコルの完全かつ現在の詳細なリストが、米国国立衛生研究所のHealth Clinical Trialのウエブサイトで入手可能である。
【0123】
細胞傷害性(「細胞殺傷」)についてのアッセイがこの分野では広く知られている。再指向殺傷アッセイにおいて使用される好適な標的細胞の例が、ガン細胞株、初代ガン細胞、固形腫瘍細胞、白血病性細胞またはウイルス感染細胞である。具体的には、K562細胞、BL−2細胞、colo250細胞および初代白血病性細胞を使用することができるが、数多くの他の細胞タイプのどれも使用することができ、また、この分野では広く知られている(例えば、Sivori他(1997)、J.Exp.Med.、186:1129〜1136;Vitale他(1998)、J.Exp.Med.、187:2065〜2072;Pessino他(1998)、J.Exp.Med.、188:953〜960;Neri他(2001)、Clin.Diag.Lab.Immun.、8:1131〜1135を参照のこと)。細胞殺傷が、細胞生存性アッセイ(例えば、色素排除、クロム放出、CFSE)、代謝アッセイ(例えば、テトラゾリウム塩)および直接的観察によって評価される。1つの実施形態において、NK細胞の種々の集団の細胞傷害能が、1:1、2.5:1、5:1または10:1のE:TでNK細胞にさらされた細胞におけるCFSE保持およびPI取り込みによって求められ、また、本発明に従って好適な濃度のニコチンアミドおよび/またはニコチンアミド成分にさらされたNK細胞の集団は、本明細書中に記載される色素排除によって測定されるように、標的細胞の少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%および少なくとも80%またはそれ以上を殺す。別の実施形態において、好適な濃度のニコチンアミドおよび/またはニコチンアミド成分にさらされたNK細胞の集団は、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴う同一条件で培養されたNK細胞と比較されるとき、色素排除アッセイによって求められるように、少なくとも約1.2倍、約1.3倍、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍またはそれ以上の殺傷能を有する。
【0124】
NK細胞を培養することが、フィーダー細胞またはフィーダー細胞層を伴って、あるいは伴うことなく行われ得る。フィーダー層非含有のエクスビボ培養が、NK細胞を含めて、培養細胞の臨床適用のために非常に好都合である。下記の実施例の節において詳述されるように、NK細胞のエクスビボ増殖および細胞機能の効果的な強化が、選択された、また、選択されていない臍帯血細胞および骨髄細胞に由来するフィーダー層非含有およびフィーダー細胞非含有の長期および短期のNK細胞培養物において認められた。したがって、1つの実施形態によれば、NK細胞の集団を培養することが、フィーダー層またはフィーダー細胞を伴うことなく行われる。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態によれば、また、下記の実施例の節において詳述されるように、NK細胞集団が、IL−2および5mMのニコチンアミドとともに培養され、ニコチンアミドへの暴露時期が、NK細胞を含む細胞の集団の播種からであり、暴露継続期間が約2週間〜約3週間であり、場合により2週間であり、場合により3週間である。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に従って効果的な濃度のニコチンアミドおよび/またはニコチンアミド成分にさらされたNK細胞の集団は、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴う同一条件で培養されたNK細胞と比較された場合、当該NK細胞のCD62L表面マーカーの上昇した発現、上昇した遊走応答、および、より大きい細胞傷害活性、ならびに、注入されたNK細胞の上昇したホーミングおよびインビボ保持のうちの少なくともいずれか2つ、場合によりいずれか3つ、場合によりいずれか4つ、場合により5つすべてを有することができる。1つの具体的な実施形態において、本発明に従って効果的な濃度のニコチンアミドおよび/またはニコチンアミド成分にさらされたNK細胞の集団は、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴う同一条件で培養されたNK細胞と比較された場合、より大きい増殖、上昇したCD62L発現、ならびに、注入されたNK細胞の上昇したホーミングおよびインビボ保持を有する。
【0127】
本明細書中において詳述されるように、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分への暴露によるNK細胞の増殖および細胞機能の強化が、フィーダー細胞の存在下でも同様に認められる。したがって、別の実施形態において、NK細胞がフィーダー細胞またはフィーダー層の存在下で培養される。典型的には、フィーダー層は、放射線照射された間質細胞、および、不死化された細胞株の細胞などを含む。NK細胞をフィーダー層上で、または、フィーダー細胞とともに培養するための方法が、例えば、Frias他(Exp Hematol、2008、36:61〜68)、Harada他(Exp Hematol、2004、32:614〜21)、Campana他(米国特許出願公開第20090011498号)、Childs他(米国特許出願公開第20090104170号)およびTsai他(米国特許出願公開第20070048290号)に詳しく記載される(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0128】
本発明のNK細胞は、そのような細胞を含む供給源であれば、どのようなものにも由来することができる。NK細胞が多くの組織において見出され、NK細胞を、例えば、リンパ節、脾臓、肝臓、肺、腸、脱落膜から得ることができ、また、iPS細胞または胚性幹細胞(ESC)からも得ることができる。典型的には、臍帯血、末梢血、動員末梢血および骨髄(これらは不均一なリンパ球細胞集団を含有する)が、研究使用および臨床使用のための非常に多数のNK細胞を提供するために使用される。したがって、本発明の1つの実施形態の1つの局面によれば、上記方法は、臍帯血、末梢血または骨髄の1つに由来するNK細胞の集団を培養することを含む。本明細書中において詳述されるように、リンパ球細胞タイプの割合における著しい違いが、種々の供給源から得られるNK細胞集団の間に見出されることが発見された。例えば、臍帯血から(免疫磁石単離によって)単離されたCD56+細胞には典型的には、CD56+CD3−のNK細胞が、骨髄または末梢血のCD56+画分よりも大きい割合で含まれ、CD56のNKマーカーおよびCD3のT細胞マーカーを共発現するNKT細胞(CD56+CD3+)が骨髄または末梢血のCD56+画分よりも少なく含まれる(本明細書中の実施例I〜IVを参照のこと)。したがって、特定の実施形態において、NK細胞が、NK細胞、CD3−細胞およびCD3+細胞を含む不均一な細胞集団から培養される。1つの実施形態において、CD3+画分が、骨髄、臍帯血または末梢血では典型的であるように、CD3−のNK細胞画分よりも大きい。さらに別の実施形態において、NK細胞集団はNK細胞について選択または濃縮される。いくつかの実施形態において、NK細胞を新鮮な細胞集団から生長させることができ、一方、他の実施形態では、NK細胞が、貯蔵された細胞集団(例えば、凍結保存され、解凍された細胞など)から、または、以前に培養された細胞集団から生長させられる。
【0129】
NK細胞には、臍帯血または末梢血または骨髄の単核細胞画分が付随する。1つの実施形態において、前記NK細胞を含む細胞の集団は、CD3+細胞、または、CD3+細胞およびCD19+細胞が枯渇化された単核細胞集団または総有核細胞集団である。別の実施形態において、前記NK細胞を含む細胞の集団は非選択のNK細胞集団である。さらに別の実施形態において、細胞はさらに選択され、NK細胞はCD56+CD16+CD3−細胞および/またはCD56+CD16−CD3−細胞を含む。NK細胞を表現型に従って選択するための方法(例えば、免疫検出およびFACS分析)が、本明細書中に、例えば、下記の方法の節において詳述される。
【0130】
最も一般的には、全血サンプルまたは骨髄サンプルが、リンパ球を培養培地(または緩衝液)に入れる前に細胞の集団を得るためにさらに処理される。例えば、血液サンプルまたは骨髄サンプルは、細胞の特定の定義された集団を濃縮するために、または精製するために、または単離するために処理することができる。用語「精製する」および用語「単離する」は、絶対的な純度を必要としない;むしろ、これらは、相対的な用語として意図される。したがって、例えば、精製されたリンパ球集団は、指定された細胞が、そのような細胞がその供給源組織に存在するよりも濃縮される集団である。実質的に純粋なリンパ球の調製物を、所望される細胞が、調製物に存在する総細胞の少なくとも50%を表すように濃縮することができる。特定の実施形態において、細胞の実質的に純粋な集団は、調製物における総細胞の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%またはそれ以上を表す。
【0131】
リンパ球を濃縮および単離するための方法がこの分野では広く知られており、適切な方法を、所望される集団に基づいて選択することができる。例えば、1つの取り組みにおいて、供給源材料が、赤血球を除くことによってリンパ球について濃縮される。その最も簡便な形態において、赤血球の除去は非凝固全血または骨髄の遠心分離を伴い得る。密度に基づいて、赤血球がリンパ球および他の細胞から分離される。その後、リンパ球富化画分を選択的に回収することができる。リンパ球およびそれらの始原体もまた、分離培地(例えば、様々な商業的供給源から入手可能である標準的なリンパ球分離培地(LSM)など)を使用する遠心分離によって濃縮することができる。代替的に、リンパ球/始原体を、アフィニティーに基づく様々な手順を使用して濃縮することができる。抗体媒介による数多くのアフィニティー調製方法がこの分野では知られている(例えば、抗体とコンジュゲート化された磁石ビーズなど)。リンパ球の濃縮はまた、望まれない細胞の負の選択を行うための市販の調製物(例えば、全リンパ球、T細胞またはNK細胞の濃縮のために配合されるFICOLL−HYPAQUE(商標)および他の密度勾配培地など)を使用して行うことができる。
【0132】
NK細胞を血液サンプル、骨髄サンプルまたは組織サンプルから選択する方法がこの分野では広く知られている(例えば、米国特許第5770387号(Litwin他)を参照のこと)(これはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。最も一般に使用されるのが、通常的には単核細胞の分画化の後でのCD56+細胞の単離および精製、そして、非NK細胞(例えば、CD3+、CD34+およびCD133+など)の枯渇化に基づくプロトコルである。2つ以上のプロトコルの組合せを、非NK混入物からのより大きい純度を有するNK細胞集団を提供するために用いることができる。NK細胞調製物の純度は、臨床適用のためには非常に重要である。これは、非NK細胞(例えば、T細胞およびNKT細胞など)は、抗原特異的な反応(例えば、GVHDなど)の一因であり、これにより、NK細胞移植の潜在的な利益を損なうからである。NK細胞を単離するための市販のキットには、一段階手順(例えば、CD56マイクロビーズ、および、CD56+、CD56+CD16+の単離キット、これらは、Miltenyi Biotec(Auburn、CA)から得られる)および多段階手順(CD3+の枯渇化または部分的枯渇化、あるいは、T細胞(例えば、OKT−3)、B細胞、幹細胞、樹状細胞、単球、顆粒球および赤血球系細胞を認識し、これらを除く非NK細胞抗体による枯渇化を含む)が含まれる。したがって、いくつかの実施形態において、NK細胞は、選択されたCD56+CD3−NK細胞集団、CD56+CD16+CD3−NK細胞集団、CD56+CD16−CD3−NK細胞集団または他の精製されたNK細胞集団である。しかしながら、臨床適用では典型的には、候補細胞集団の操作がより少ないことが有利であることが指摘されるであろう。
【0133】
1つの実施形態において、NK細胞は、短期間または長期間の培養によってエクスビボで生長させられる。実施例Iにおいて詳述されるように、NK細胞を7日間もの少ない期間または3週間もの多くの期間、本発明の方法に従って増殖因子ならびにニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することにより、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を伴うことを除いてサイトカインとともに培養された細胞と比較した場合、培養されたNK細胞の高まった優先的増殖および/または機能性がもたらされた。したがって、本発明のいくつかの実施形態において、NK細胞集団を培養することは、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、場合により10日間、場合により12日間、場合により14日間、場合により16日間、場合により18日間、場合により20日間、および、場合により21日間、あるいは、1週間、2週間または3週間、4週間、5週間、6週間またはそれ以上である。例示的な、限定されない培養継続期間は、実施例I〜IVにおいて詳述されるように、7日(1週間)および21日(3週間)である。
【0134】
NK細胞集団は、様々な方法およびデバイスを使用して培養することができる。培養装置の選択は通常、培養の規模および目的に基づく。細胞培養の規模拡大は好ましくは、専用デバイスの使用を伴う。臨床規格のNK細胞を大規模に製造するための装置が、例えば、Spanholtz他(PLoS ONE、2010、5:e9221)およびSutlu他(Cytotherapy、2010、Early Online 1〜12)に詳述される。
【0135】
Peled他(国際公開WO03/062369、これはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)は最近、CD34+細胞の生着能に対するニコチンアミド処理の劇的な効果を開示している。ニコチンアミドのこの効果が、培養において、また、最小限の細胞分裂または細胞分裂が行われないために十分なインキュベーションの短い継続期間にわたって増殖する細胞に関して両方で認められている。したがって、エクスビボ培養におけるNK細胞の増殖を高めることが本発明の重要な目標である一方で、数分、数時間および1日などの期間にわたるニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分へのNK細胞の短期エクスビボ暴露が想定される。増殖のためには十分でない期間にわたるニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分へのNK細胞のそのような短期暴露は潜在的には、例えば、NK細胞の機能性(細胞傷害性、遊走能、細胞表面分子の発現および生着能など)を高めることができる。ニコチンアミドによる短期処理を、新鮮な細胞、凍結保存・解凍後の細胞、培養中の細胞、精製細胞および混合細胞集団などに施すことができる。1つの実施形態において、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分によるそのような短期処理がNK細胞の使用(移植、注入など)の直前に施される。
【0136】
本発明者らは驚くべきことに、NK(CD56+)細胞および非NK細胞(例えば、T(CD3+)細胞、NKT(CD56+CD3+)細胞など)を含む混合細胞集団の、培養培地における効果的な濃度のニコチンアミドの存在下での培養が、NK細胞の増殖、成長および機能性を高めるだけでなく、同じ培地における非NK細胞(例えば、T細胞およびNKT細胞)の増殖および成長を阻害することを認めている(本明細書中における実施例Vを参照のこと)。したがって、本発明の1つの実施形態において、NK細胞およびCD3+細胞の不均一な集団を効果的な濃度のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することにより、他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較した場合、CD3+細胞対CD56+CD3−細胞の低下した比率を有するNK細胞の集団がもたらされる。さらに別の実施形態において、NK細胞およびCD3+細胞の不均一な集団を本発明の方法に従って効果的な濃度のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することにより、他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較した場合、CD14+細胞およびCD15+細胞の低下した数を有するNK細胞の集団がもたらされる。
【0137】
NK細胞集団をエクスビボ培養するための本明細書中上記で記載される方法は、とりわけ、NK細胞の培養された集団をもたらすことができる。
【0138】
したがって、さらに本発明の1つの局面によれば、他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、CD62Lの上昇した発現、上昇した遊走応答、上昇したホーミングおよびインビボ保持、より大きい増殖、増大した細胞傷害活性、ならびに、CD3+細胞対CD56+/CD3−細胞の低下した比率のうちの1つによって特徴づけられるNK細胞の集団が提供される。いくつかの実施形態において、NK細胞の集団は、他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、CD62Lの上昇した発現、上昇した遊走応答、上昇したホーミングおよびインビボ保持、より大きい増殖、増大した細胞傷害活性、ならびに、CD3+細胞対CD56+/CD3−細胞の低下した比率のうちの少なくともいずれか2つ、少なくともいずれか3つ、少なくともいずれか4つ、少なくともいずれか5つ、または、6つすべてによって特徴づけられる。
【0139】
実施例IVにおいて、本発明者らは、本発明の方法に従って調製されるNK集団が、標的器官(例えば、脾臓、骨髄および末梢血)における局在化およびインビボ保持によって明らかにされるように、増大したインビボでの機能的能力を有することを示している。したがって、本発明のいくつかの実施形態の具体的局面において、移植されたとき、高まったホーミング、生着およびインビボ保持によって特徴づけられるNK細胞の集団が提供され、ただし、この場合、当該NK細胞集団の少なくとも15×10個を放射線照射された宿主(例えば、SCIDマウス)に注入することにより、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%および少なくとも90%またはそれ以上のドナー由来のNK細胞が、免疫検出およびフローサイトメトリーによって検出されるように、注入後4日で宿主のリンパ系組織においてもたらされる。1つの実施形態において、当該NK集団の少なくとも15×10個の細胞を注入することにより、少なくとも25%のドナー由来のNK細胞が、免疫検出およびフローサイトメトリーによって検出されるように、注入後4日で宿主のリンパ系組織においてもたらされる。
【0140】
さらなる関連した判定基準が、NK集団を特徴づけるために適用されるかもしれない。したがって、さらに別の実施形態において、本発明のNK集団はさらに、フローサイトメトリーおよび免疫検出によって検出されるように、宿主への注入時における細胞集団の少なくとも30%におけるCD62Lの発現によって特徴づけられる。なおさらに別の実施形態において、NK細胞集団はさらに、CD3+細胞による混入から生じる純粋度に従って特徴づけられ得る(例えば、CD3+細胞対CD56+/CD3−細胞の比率が注入時において1:100以下であるNK細胞集団)。
【0141】
本発明の関連において、治療用のNK細胞集団は、ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分を含有する培養培地と一緒に提供され、培養培地から単離され、かつ、医薬的に許容され得るキャリアと組み合わされ得ることが理解されるであろう。したがって、本発明の細胞集団は、医薬的に許容され得るキャリアまたは希釈剤(例えば、無菌の生理的食塩水および緩衝剤水溶液など)において投与することができる。そのようなキャリアおよび希釈剤の使用はこの分野では広く知られている。
【0142】
本発明のこの局面の1つの具体的な実施形態において、NK細胞集団は、効果的な量のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の存在下でエクスビボ培養されたNK細胞の集団と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む。なおさらに別の実施形態において、エクスビボ培養された集団は、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分において増殖因子とともに培養されたNK細胞の集団と比較されたとき、活性化され、かつ、標的細胞に対する増大した細胞傷害能を有するNK細胞を含む。
【0143】
ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分がNK細胞の増殖および機能性を維持させ得ることはさらに、様々な技術的適用において使用することができる。
【0144】
本発明のさらなる局面によれば、NK細胞を保存する方法が提供される。1つの実施形態において、この方法は、NK細胞を下記工程の少なくとも1つにおいて取り扱うことによって行われる:効果的な量のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の存在下における収集、単離および/または貯蔵。
【0145】
本発明のなおさらにさらなる局面によれば、NK細胞回収/培養バッグが提供される。本発明の細胞回収/培養バッグには、効果的な量のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分が補われる。
【0146】
本発明によれば、NK細胞の分離緩衝液および/または洗浄緩衝液もまた提供される。分離緩衝液および/または洗浄緩衝液には、効果的な量のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分が補われる。
【0147】
下記においてさらに詳述されるように、NK細胞は遺伝子改変され得る。
【0148】
エクスビボ遺伝子治療において、細胞が患者から取り出され、そして、培養されながら、インビトロで処理される。一般には、機能的な代替遺伝子が、必要に応じて適切な遺伝子送達ビヒクル/方法(トランスフェクション、形質導入、相同的組換えなど)および発現システムにより細胞に導入され、その後、改変された細胞が培養され、宿主/患者に戻される。これらの遺伝子再移植細胞は、トランスフェクションされた遺伝物質をその場において発現することが示されている。
【0149】
したがって、さらに本発明の局面によれば、エクスビボ培養されたNK細胞をエキソジーンにより形質導入する方法が提供される。この方法は、本発明のこの局面によれば、(a)NK細胞の集団を本発明のNK細胞培養の方法に従って培養することによってNK細胞の集団をエクスビボ培養すること、および、(b)NK細胞の培養された集団の細胞をエキソジーンにより形質導入することによって行われる。工程(a)および工程(b)の順序は逆になり得ることが理解されるであろう。培養されたNK細胞の形質導入のための方法がこの分野では知られており、例えば、エクスビボ改変されたNK細胞の使用がCampana他(米国特許出願公開第20090011498号)によって開示されている。
【0150】
したがって、本発明の培養細胞は、遺伝子産物を発現させるために改変することができる。本明細書中で使用される場合、表現「遺伝子産物」は、タンパク質、ペプチドおよび機能的RNA分子を示す。一般には、核酸分子によってコードされる遺伝子産物は、対象に供給されることになる所望される遺伝子産物である。そのような遺伝子産物の例には、レシピエント対象の細胞によって通常的に産生されるタンパク質、ペプチド、糖タンパク質およびリポタンパク質が含まれる。代替的に、コードされた遺伝子産物は、所望される遺伝子産物の細胞による発現を誘導するものである(例えば、導入された遺伝物質は、対象に供給されることになる遺伝子産物の転写を誘導する転写因子をコードする)。例えば、NK細胞は、細胞表面分子、あるいは、NK細胞の機能を強化または調節することができる細胞内遺伝子産物、例えば、サイトカイン、接着分子、活性化受容体および/または阻害性受容体などを発現させるために改変することができる。
【0151】
真核生物細胞のトランスフェクションのための好適なベクター、構築物およびプロトコルの説明が、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel,F.M.他(編)、Greene Publishing Associates(1989)、第9.2節、および、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Sambrook他、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)、例えば、第16.41節〜第16.55,9節、または、他の標準的な実験室マニュアルに見出され得る。
【0152】
本明細書中上記で詳しく議論されるように、NK細胞のエクスビボ生長をNK細胞の移植または埋め込みにおいて都合よく利用することができる。したがって、本発明の別の局面によれば、NK細胞をレシピエントに移植するか、または埋め込む方法が提供される。本発明のこの局面による方法は、(a)NK細胞の集団を本発明の方法に従って増殖因子ならびに効果的な濃度のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともにエクスビボ培養し、治療量の前記培養されたNK細胞を前記対象に投与することによって行われる。
【0153】
ドナーおよびレシピエントは、同じ個体または異なる個体(例えば、同種の個体)であり得る。したがって、NK細胞の集団は対象に対して自己由来または同種由来であり得る。同種移植が実施されるとき、この分野では広く知られているように、移植体拒絶および/または移植片対宿主病を軽減するための治療療法が着手され得る。そのような治療療法が現在、ヒトの治療では実施される。最も進化した治療療法が、Slavin S.他による刊行物(例えば、J Clin Immunol(2002)、22:64、および、J Hematother Stem Cell Res(2002)、11:265)、Gur H.他による刊行物(Blood(2002)、99:4174)、および、Martelli MF他による刊行物(Semin Hematol(2002)、39:48)に開示される(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0154】
1つの実施形態によれば、NK細胞集団の移植は、対象において疾患を処置または防止するためである。
【0155】
本発明の1つの実施形態のさらに別の実施形態によれば、腫瘍成長をその必要性のある対象において阻害する方法が提供される。本発明のこの局面による方法は、治療有効量の本発明のNK細胞の集団を前記対象に投与することによって行われる。
【0156】
「処置する」または「処置」には、疾患の症状、合併症または生化学的徴候の発症を防止するか、または遅延させ、それにより、症状を緩和するか、あるいは、疾患、状態または障害(例えば、ガン、転移ガンまたは転移性固形腫瘍)のさらなる発達を停止させるか、または阻害するために、本発明の、濃縮、活性化または培養されたNK細胞組成物またはNK細胞集団を投与することが含まれるが、これに限定されない。処置は、予防的、すなわち、(疾患の発症を防止するために、または遅延させるために、あるいは、その臨床症状または不顕性症状の発現を防止するために)補助的あり得るか、あるいは、疾患が発現した後における症状の治療的な抑制または緩和であり得る。
【0157】
1つの実施形態において、NK細胞集団が、ガン(例えば、固形腫瘍または悪性腫瘍など)を軽減または排除するために、あるいは、その発生または再発を防止するために効果的な量で投与される。「固形腫瘍を軽減または排除するために、あるいは、その発生または再発を防止するために効果的な量」、または、「過剰増殖性障害を軽減または排除するために、あるいは、その発生または再発を防止するために効果的な量」は、患者の試験データ、生存データ、腫瘍マーカーレベルの上昇または抑制、遺伝子プロフィルまたは環境要因に対する暴露に基づく低下した感受性によって測定されるような、腫瘍疾患状態または過剰増殖性障害について処置した後における患者の結果または生存を改善する治療組成物の量を示す。「ガン成長を阻害する」は、腫瘍のサイズまたは生存性または細胞数を低下させることを示す。「ガン」、「悪性腫瘍」、「固形腫瘍」または「過剰増殖性障害」は同義的用語として使用され、細胞の制御されない異常な増殖、冒された細胞が局所的に、または、血流およびリンパ系を介して身体の他の部分に伝播(すなわち、転移)し得ること、同様にまた、数多くの特徴的な構造的特徴および/または分子的特徴の何らかによって特徴づけられる数多くの疾患のどれも示す。「ガン性」または「悪性細胞」または「固形腫瘍細胞」は、特定の構造的性質を有し、分化することを失い、かつ、侵入および転移することができる細胞として理解される。「ガン」は、ガン腫および肉腫を含めて、哺乳動物において見出されるすべてのタイプのガンまたは新生物または悪性腫瘍を示す。例として、乳房、肺、非小細胞肺、胃、脳、頭部および頸部、髄芽細胞腫、骨、肝臓、結腸、尿生殖器、膀胱、尿路、腎臓、精巣、子宮、卵巣、子宮頸部、前立腺、メラノーマ、中皮腫、肉腫のガンが挙げられる(DeVita他(編)、2001、Cancer Principles and Practice of Oncology、第6版(Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、Pa)を参照のこと。この参考文献は、すべての目的のためにその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0158】
「ガン関連(の)」は、対象細胞における悪性腫瘍の発生に対する、核酸およびその発現またはその欠乏、あるいは、タンパク質およびその活性もしくはレベルまたはその欠乏の関係を示す。例えば、ガンには、正常な健康細胞では発現しないか、または、より低いレベルで発現する特定の遺伝子の発現が付随し得る。逆に、ガン関連の遺伝子は、悪性細胞において(または、形質転換を受けている細胞において)発現しない遺伝子、または、悪性細胞において、正常な健康細胞で発現するよりも低いレベルで発現する遺伝子である。
【0159】
「過剰増殖性疾患」は、細胞が、正常な組織成長よりも急速に増殖する疾患または障害であれば、どのようなものも示す。したがって、過剰増殖細胞は、正常な細胞よりも急速に増殖し続ける細胞である。
【0160】
「進行ガン」は、原発性腫瘍部位にもはや局在化していないガン、または、アメリカ癌合同委員会(AJCC)に従ってIII期またはIV期であるガンを意味する。
【0161】
「十分に寛容される」は、処置の結果として生じ、処置の決定に影響を及ぼすと考えられる健康状態における有害な変化がないことを示す。
【0162】
「転移性」は、免疫欠損マウスの乳房脂肪パッドおよび/または循環に注入されたとき、二次的な腫瘍病変を、免疫欠損マウスの肺、肝臓、骨または脳において確立することができる腫瘍細胞(例えば、ヒトの固形腫瘍または尿生殖器悪性腫瘍)を示す。
【0163】
「固形腫瘍」には、肉腫、メラノーマ、ガン腫または他の固形腫瘍ガンが含まれるが、これらに限定されない。「肉腫」は、胚性結合組織のような物質から成り、かつ、原線維性物質または均一な物質に埋め込まれる密充填された細胞から一般には構成される腫瘍を示す。肉腫には、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、Abemethy肉腫、脂肪肉腫(adipose sarcoma)、脂肪肉腫(liposarcoma)、胞巣状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫、絨毛ガン、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉種、巨細胞肉腫、顆粒球肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素沈着性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球肉腫、イェンセン肉腫、カポジ肉腫、クプファー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫肉腫、傍骨肉腫、細網肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫および毛細血管拡張性肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0164】
「メラノーマ」は、皮膚および他の器官のメラニン形成細胞系から生じる腫瘍を示す。メラノーマには、例えば、末端黒子型黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91メラノーマ、ハーディング・パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫および表在性拡大型黒色腫が含まれる。
【0165】
「ガン腫」は、周囲組織に浸潤し、転移物を生じさせる傾向がある上皮細胞から成る悪性の新成長を示す。例示的なガン腫には、例えば、腺房細胞腺ガン、小葉ガン、腺様嚢胞ガン(adenocystic carcinoma)、腺様嚢胞ガン(adenoid cystic carcinoma)、腺様ガン、副腎皮質のガン、肺胞ガン、肺胞細胞ガン、基底細胞ガン(basal cell carcinoma)、基底細胞ガン(carcinoma basocellulare)、基底細胞様ガン、基底扁平細胞ガン、細気管支肺胞上皮ガン、細気管支ガン、鰓原性ガン、脳様ガン、胆管細胞ガン、絨毛ガン、膠様ガン、コメドガン、子宮体ガン、篩状ガン、鎧状ガン、皮膚ガン、円柱ガン、円柱細胞ガン、管ガン、硬性ガン、胎児性ガン、脳様ガン、類表皮ガン、腺上皮ガン、外方成長ガン、潰瘍ガン、線維ガン、ゼラチン状ガン、粘液性ガン、巨細胞ガン(giant cell carcinoma)、巨細胞ガン(carcinoma gigantocellulare)、腺ガン、顆粒膜細胞ガン、毛母ガン、血様ガン、肝細胞ガン、ヒュルトレ細胞ガン、硝子状ガン、副腎様ガン、乳児胎児性ガン、上皮内ガン(carcinoma in situ)、上皮内ガン(intraepithelial carcinoma)、表皮内ガン、クロムペッヘルガン、クルチツキー細胞ガン、大細胞ガン、レンズ状ガン(lenticular carcinoma)、レンズ状ガン(carcinoma lenticulare)、脂肪腫様ガン、リンパ上皮性ガン、髄様ガン(carcinoma medullare)、髄様ガン(medullary carcinoma)、黒色ガン、軟性ガン、粘液性ガン、粘液分泌ガン、粘液細胞ガン、粘表皮ガン、粘液ガン(carcinoma mucosum)、粘液ガン(mucous carcinoma)、粘液腫様ガン、鼻咽頭ガン、燕麦細胞ガン、骨化生ガン、類骨ガン、乳頭状ガン、門脈周囲ガン、侵入前ガン、有棘細胞ガン、髄質様ガン、腎臓の腎細胞ガン、予備細胞ガン、肉腫様ガン、シュナイダーガン、硬性ガン、陰嚢ガン、印環細胞ガン、単純ガン、小細胞ガン、バレイショ状ガン、球状細胞ガン、紡錘形細胞ガン、海綿様ガン、扁平上皮ガン(squamous carcinoma)、扁平上皮ガン(squamous cell carcinoma)、数珠様ガン、毛細血管拡張性ガン(carcinoma telangiectaticum)、毛細血管拡張性ガン(carcinoma telangiectodes)、移行上皮細胞ガン、結節ガン(carcinoma tuberosum)、結節ガン(tuberous carcinoma)、いぼ状ガンおよび絨毛ガンが含まれる。
【0166】
「白血病」は血液形成器官の進行性悪性疾患を示し、一般には、血液および骨髄における白血球およびそれらの前駆体の誤った増殖および発達によって特徴づけられる。白血病は一般に、(1)疾患の継続期間および特性、すなわち、急性または慢性;(2)関与する細胞のタイプ、すなわち、骨髄系(骨髄性)、リンパ系(リンパ性)または単球性;および(3)血液中の異常な細胞の数における増大または非増大、すなわち、白血病性または非白血性(亜白血性)に基づいて分類される。白血病には、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、無白血球性白血病、好塩基球性白血病、芽球性白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、胚白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、毛様細胞性白血病、血芽球性白血病(hemoblastic leukemia)、血芽球性白血病(hemocytoblastic leukemia)、組織球性白血病、幹細胞性白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病(lymphatic leukemia)、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病(lymphocytic leukemia)、リンパ球性白血病(lymphogenous leukemia)、リンパ性白血病(lymphoid leukemia)、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞性白血病、巨核芽球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄性顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、プラズマ細胞性白血病、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞性白血病、亜白血性白血病および未分化細胞白血病が含まれる。さらなるガンには、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳ガン、卵巣ガン、肺ガン、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺ガン、原発性脳腫瘍、胃ガン、結腸ガン、悪性膵臓インスラノーマ、悪性カルチノイド、膀胱ガン、前悪性皮膚病変、精巣ガン、リンパ腫、甲状腺ガン、神経芽腫、食道ガン、尿生殖路ガン、悪性高カルシウム血症、子宮頸ガン、子宮内膜ガン、副腎皮質ガンおよび前立腺ガンが含まれる。
【0167】
本発明のこの局面の別の具体的な実施形態において、上記方法は、前記対象への造血細胞移植、造血始原体細胞移植または造血幹細胞移植と同時に、またはその後で、またはその前に行われる。さらにさらなる実施形態において、対象は、輸血されたNK細胞のインビボ機能をさらに高める感作剤または強化剤(例えば、プロテアソーム阻害剤、IL−2、IL−15など)により同時に処置されている(詳細については、例えば、米国特許出願公開第20090104170号(Childs他)を参照のこと)。
【0168】
自己免疫患者におけるNK細胞の低下した数および機能性がこれまでに認められており、このことは、様々な自己免疫性の疾患および状態におけるNK細胞治療の可能性を示している(Schleinitz他、Immunology、2010、131:451〜58、また、FrenchおよびYokohama、Arthrit Res Ther、2004、6:8〜14を参照のこと)。したがって、本発明のなおさらに別の実施形態において、自己免疫性の疾患または状態をその必要性のある対象において処置する方法が提供される。本発明のこの局面による方法は、治療有効量の本発明のNK細胞の集団を前記対象に投与することによって行われる。
【0169】
本発明の方法によって処置され得る自己免疫性疾患には、心臓血管疾患、リウマチ様疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝疾患、神経学的疾患、筋疾患、腎疾患、生殖関連疾患、結合組織疾患および全身性疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0170】
自己免疫性心臓血管疾患の例には、アテローム性動脈硬化、心筋梗塞、血栓症、ヴェーゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、川崎症候群、抗第VIII因子自己免疫疾患、壊死性小血管血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ−ストラウス症候群、寡免疫巣状壊死性糸球体腎炎および半月体性糸球体腎炎、抗リン脂質症候群、抗体誘導心不全、血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、シャーガス病における心臓自己免疫、および、抗ヘルパーTリンパ球自己免疫が含まれるが、これらに限定されない。
【0171】
自己免疫性リウマチ様疾患の例には、リウマチ様関節炎および強直性脊椎炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0172】
自己免疫性腺疾患の例には、膵臓疾患、I型糖尿病、甲状腺疾患、グレーヴズ病、甲状腺炎、自発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫性抗精子不妊症、自己免疫性前立腺炎およびI型自己免疫性多腺性症候群が含まれるが、これらに限定されない。疾患には、膵臓の自己免疫疾患、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺疾患、グレーヴズ病、自発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫性抗精子不妊症、自己免疫性前立腺炎およびI型自己免疫性多腺性症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0173】
自己免疫性胃腸疾患の例には、慢性炎症性腸疾患、セリアック病、大腸炎、回腸炎およびクローン病が含まれるが、これらに限定されない。
【0174】
自己免疫性皮膚疾患の例には、自己免疫性水疱性皮膚疾患(例えば、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡および落葉性天疱瘡など、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。
【0175】
自己免疫性肝疾患の例には、肝炎、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変および自己免疫性肝炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
自己免疫性神経学的疾患の例には、多発性硬化症、アルツハイマー病、重症筋無力症、ニューロパチー、運動ニューロパチー;ギラン−バレー症候群および自己免疫性ニューロパチー、筋無力症、ランバート−イートン無筋力症症候群;腫瘍随伴性神経学疾患、小脳萎縮症、腫瘍随伴性の小脳萎縮症およびスティッフマン症候群;腫瘍非随伴性スティッフマン症候群、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シドナム舞踏病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群および自己免疫性多内分泌腺症;異常免疫ニューロパチー;後天性神経性筋硬直症、先天性多発性関節拘縮症、神経炎、視神経炎および神経変性疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
自己免疫性筋疾患の例には、筋炎、自己免疫性筋炎および原発性シェーグレン症候群および平滑筋自己免疫疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
自己免疫性腎疾患の例には、腎炎および自己免疫性間質性腎炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0179】
生殖関連の自己免疫性疾患の例には、繰り返される胎児喪失が含まれるが、これに限定されない。
【0180】
自己免疫性結合組織疾患の例には、耳疾患、自己免疫性耳疾患、および、内耳の自己免疫疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0181】
自己免疫性全身性疾患の例には、全身性エリテマトーデスおよび全身性硬化症が含まれるが、これらに限定されない。
【0182】
本発明のさらに別の実施形態において、ウイルス感染症をその必要性のある対象において阻害する方法が提供される。本発明のこの局面による方法は、(a)NK細胞の集団をNK細胞の増殖因子および効果的な濃度のニコチンアミドとともにエクスビボ培養すること(ただし、前記効果的な濃度のニコチンアミドにより、前記NK細胞の増殖が、前記濃度のニコチンアミドを伴うことなく増殖因子とともに培養された細胞の前記集団と比較した場合、高められる)、および、(b)治療的量の前記培養されたNK細胞を前記対象に投与することによって行われる。本発明のNK細胞またはNK細胞組成物による処置のために好適なウイルス感染症には、HIV、リンパ脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルスおよびパラインフルエンザウイルス、肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、非A非B型などを含む)、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、タイラーウイルスおよびHSV−1が含まれるが、これらに限定されない。本発明のNK細胞またはNK細胞調整物による処置のために好適な他の感染性疾患には、寄生虫感染症(例えば、プラスモジウム感染症、リーシュマニア感染症およびトキシプラズマ感染症など)および細菌感染症(例えば、ミコバクテリアおよびリステリアなど)が含まれるが、これらに限定されない(ウイルス性疾患、細菌性疾患および原虫性疾患の処置におけるNK細胞の総説については、Zucchini他、Exp Rev Anti−Infect Ther、2008、6:867〜85を参照のこと。そのような参考文献は本書とともに参照によって組み込まれる)。
【0183】
造血細胞の移植はこれまで、様々な遺伝性疾患または悪性疾患のための最上の処置になっている。しかしながら、造血細胞の組成物は多くの場合、移植片対宿主病の一因となるTリンパ球が多い。血液学的悪性腫瘍に苦しむ患者は多くの場合、NK細胞の数および機能が不十分であるので、造血細胞移植と一緒でのNK細胞の外因性投与が現在、高まった長期生着および移植片対宿主病の防止のために研究中である。したがって、本発明のさらに別の実施形態において、移植片対宿主病をその必要性のある対象において処置または防止する方法が提供される。したがって、本発明のなおさらに別の実施形態において、自己免疫性の疾患または状態をその必要性のある対象において処置する方法が提供される。本発明のこの局面による方法は、治療量の本発明のNK細胞の集団を前記対象に投与することによって行われる。
【0184】
NK細胞を用いた処置、ならびに、NK細胞集団およびHSC細胞集団を用いた混合処置のための臨床プロトコルが、この分野では広く知られている。例えば、最近の報告では、NK細胞の注入は安全であり、GVHDをレシピエントにおいて引き起こさないことが立証されている。1つのそのようなプロトコルは、骨髄機能除去、IL−2により活性化されたNK濃縮(非NK枯渇化)HLAミスマッチ臍帯血の注入、その後、HSC再増殖のための2倍の臍帯血注入を伴う[Miller他、Blood、2006、108:3111(アブストラクト)を参照のこと]。著者らは、臍帯血HSCと一緒でのNK細胞の移植により、HSCの改善された長期生着がもたらされたことを報告した。
【0185】
処置療法
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの局面によれば、医薬的に許容され得るキャリアと一緒に配合される、疾患(例えば、転移ガン、固形腫瘍、自己免疫疾患、過剰増殖性障害またはウイルス感染症)を処置するためのNK細胞集団を含む医薬組成物が提供される。いくつかの組成物は、多数(例えば、2つ以上)の本発明のNK細胞集団の組合せを含む。
【0186】
予防的適用において、医薬組成物または医薬品が、過剰増殖性疾患または固形腫瘍の再発の危険性を排除または軽減するために、あるいは、疾患の重篤度を和らげるために、あるいは、疾患発達期間中に現れる疾患の生化学的症状、組織学的症状および/または行動的症状、その合併症および中間的な病理学的表現型を含めて、疾患の発症を遅らせるために十分な量で、疾患または状態に罹りやすいか、あるいは、他の場合にはその危険性がある患者に投与される。治療的適用において、組成物または医薬品が、疾患の発達におけるその合併症および中間的な病理学的表現型を含めて、疾患の症状(生化学的、組織学的および/または行動的)を治癒させるために、あるいは、少なくとも部分的に停止させるために十分な量で、そのような疾患が疑われるか、または、そのような疾患に既に苦しんでいる患者に投与される。治療的処置または予防的処置を達成するために適切な量が、治療効果的用量または予防効果的用量として定義される。予防的療法および治療的療法の両方において、薬剤が通常、十分な抗増殖応答が達成されるまで数回の投薬で投与される。典型的には、抗増殖応答がモニターされ、そして、抗増殖応答が弱まり始めるならば、反復した投薬が与えられる。
【0187】
効果的な投薬量
本明細書中に記載される疾患(例えば、転移ガン、固形腫瘍または過剰増殖性障害)を処置するためのNK細胞集団の組成物の効果的な用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトまたは動物であるか、施される他の薬物治療、および、処置が予防的または治療的であるかを含めて、多くの異なる要因に依存して変化する。通常、患者はヒトであり、しかし、非ヒト哺乳動物(遺伝子組換え哺乳動物を含む)もまた処置することができる。処置投薬量は、安全性および効力を最適化するために力価測定する必要がある。
【0188】
治療的なNK細胞集団が投与される場合、投薬量は、患者あたり約1×10個のNK細胞から約1×10個のNK細胞にまで及ぶ。NK細胞集団が投与される場合、投薬量は、レシピエントの体重1キログラムあたり約1×10個のNK細胞から約1×10個のNK細胞にまで及ぶか、または、投薬量は、レシピエントの体重1キログラムあたり約5×10個のNK細胞から約1×10個のNK細胞にまで及ぶ。例示的な処置療法は、2週間毎につき1回、または、1ヶ月に1回、または、3ヶ月〜6ヶ月毎に1回での投与を伴う。いくつかの方法において、2つ以上のNK細胞集団が同時に投与され、そのような場合、投与されるそれぞれのNK細胞集団の投薬量は、示された範囲の範囲内である。NK細胞集団の多数回の投与を行うことができる。それぞれの投与の間隔は、毎週、毎月または毎年が可能である。間隔はまた、患者におけるNK細胞集団の血中レベルを測定することによって示されるように不定期であることも可能である。代替的に、NK細胞集団は持続放出配合物として投与することができ、そのような場合、より少ない頻度での投与が要求される。投薬量および頻度は、患者におけるNK細胞集団の半減期に依存して変化する。投薬量および投与頻度は、処置が予防的または治療的であるかに依存して変化し得る。予防的適用では、比較的少ない投薬量が長期間にわたって比較的少ない頻度の間隔で投与される。一部の患者はその後の生涯にわたって処置を受け続ける。治療的適用では、比較的短い間隔での比較的大きい用量が、疾患の進行が軽減または停止されるまで、また、好ましくは、患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで要求されることがある。その後、患者には予防的療法を施すことができる。
【0189】
投与経路
疾患(例えば、転移ガン、固形腫瘍または過剰増殖性障害)を処置するための治療的なNK細胞集団の組成物は、静脈内、小胞内、クモ膜下腔内、非経口、局所的、皮下、経口、鼻腔内、動脈内、頭蓋内、腹腔内または筋肉内の手段によって投与することができる。予防剤/補助剤として、または、疾患の処置のために、治療的なNK細胞集団は、過剰増殖性障害もしくは固形腫瘍(例えば、尿生殖器悪性腫瘍)、および/または、治療的処置を標的とする。免疫原性薬剤を投与する最も典型的な経路が皮下であるが、他の経路も同等に効果的であり得る。その次の最も一般的な経路が筋肉内注射である。このタイプの注射は最も典型的には、腕または脚の筋肉に行われる。いくつかの方法において、薬剤が、沈着物が蓄積している特定の組織に直接に注入される(例えば、頭蓋内注射)。筋肉内注射または静脈内注入がNK細胞集団の投与のために好ましい。いくつかの方法において、特定の治療的なNK細胞集団が嚢内に直接に注入される。
【0190】
配合物
疾患(例えば、転移ガン、固形腫瘍、ウイルス感染症または過剰増殖性障害)を処置するためのNK細胞集団の組成物。
【0191】
疾患(例えば、転移ガン、固形腫瘍または過剰増殖性障害)を処置するための治療的なNK細胞集団の組成物は多くの場合、活性な治療剤、すなわち、本発明のNK細胞集団、および、様々な他の医薬的に許容され得る成分を含む医薬組成物として投与される。例えば、Alfonso R Gennaro(編)、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(以前のRemington’s Pharmaceutical Sciences)、第20版(Lippincott、Williams&Wilkins、2003)を参照のこと(これはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。好ましい形態は、意図された投与様式および治療的適用に依存する。組成物はまた、所望される配合物に依存して、医薬的に許容され得る非毒性のキャリアまたは希釈剤を含むことができ、これらは、動物またはヒトに投与されるための医薬組成物を配合するために一般に使用されるビヒクルとして定義される。希釈剤は、組合せの生物学活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の一例が、10%の熱不活化ヒトAB血清または10%の自己血清を含有するX−vivo20培地(Cambrex Bio Science、Walkersville、Md.)である。そのような希釈剤のさらなる例が、蒸留水、生理学的なリン酸塩緩衝化生理的食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液およびハンクス溶液である。加えて、医薬組成物または配合物はまた、他のキャリア、補助剤、または、非毒性で、非治療的な非免疫原性安定剤などを含むことができる。
【0192】
医薬組成物はまた、大きい、ゆっくり代謝される高分子を含むことができる:例えば、タンパク質、多糖(例えば、キトサン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えば、ラテックスより機能化されたSepharose(商標)、アガロースおよびセルロースなど)など)、ポリマー状アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および、脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソームなど)など。加えて、これらのキャリアは、免疫刺激剤(すなわち、アジュバント)として機能することができる。
【0193】
非経口投与のために、本発明の組成物は、無菌の液体(例えば、水、オイル、生理的食塩水、グリセロールまたはエタノールなど)であり得る医薬用キャリアを伴う生理学的に許容され得る希釈剤における物質の溶液または懸濁物の注射可能な投薬物として投与することができる。加えて、補助物質、例えば、湿潤化剤または乳化剤、界面活性剤およびpH緩衝化物質などを組成物に存在させることができる。医薬組成物の他の成分が、石油起源、動物起源、植物起源または合成起源のものである(例えば、ピーナッツ油、ダイズ油および鉱油)。一般に、グリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど)が、特に注射可能な溶液については好ましい液体キャリアである。治療的なNK細胞集団は、有効成分の持続した放出を可能にするような様式で配合され得るデポー剤注射またはインプラント調製物の形態で投与することができる。例示的な組成物は治療的なNK細胞集団を5mg/mlで含み、50mM L−ヒスチジン、150mM NaClからなる水性緩衝液において配合され、HClによりpH6.0に調節される。
【0194】
典型的には、組成物は、液体の溶液または懸濁物のどちらであれ、注射剤として調製される;注射に先立つ液体ビヒクルにおける溶解または懸濁のために好適な固体形態物もまた調製することができる。調製物はまた、上記で議論されるように、リポソームまたはマイクロ粒子(例えば、強化されたアジュバント効果のためのポリラクチド、ポリグリコリドまたはコポリマーなど)において乳化またはカプセル化することができる。Langer、Science、249:1527、1990;Hanes、Advanced Drug Delivery Reviews、28:97〜119、1997(これらはそれらの全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。本発明の薬剤は、有効成分の持続した放出またはパルス的放出を可能にするような様式で配合され得るデポー剤注射またはインプラント調製物の形態で投与することができる。他の投与様式のために好適なさらなる配合物には、経口配合物、鼻腔内配合物および肺用配合物、坐薬、ならびに、経皮適用が含まれる。
【0195】
坐薬のために、結合剤およびキャリアには、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが含まれる;そのような坐薬を、有効成分を0.5%〜10%(好ましくは1%〜2%)の範囲で含有する混合物から形成することができる。経口配合物は賦形剤を含む(例えば、医薬規格のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロースおよび炭酸マグネシウムなど)。これらの組成物は、溶液、懸濁物、錠剤、ピル、カプセル、持続放出配合物または粉末の形態を取り、10%〜95%の有効成分(好ましくは25%〜70%)を含有する。
【0196】
医薬組成物は一般に、患者への投与のために好適な形態での治療的NK細胞集団の組成物を含む。医薬組成物は一般に、無菌かつ実質的に等張性として、また、米国食品医薬品局のすべての優良製造基準(GMP)規則に完全に準拠して配合される。
【0197】
毒性
好ましくは、本明細書中に記載されるNK細胞集団の組成物の治療効果的な用量は、実質的な毒性を引き起こすことなく、治療上の利益を提供する。
【0198】
本明細書中に記載される治療的なNK細胞集団の毒性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)またはLD100(集団の100%に対して致死的な用量)を求めることによって、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって求めることができる。毒性影響と、治療効果との用量比が、治療指数である。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用について毒性を示さない投薬量範囲を定める際に使用することができる。本明細書中に記載される治療的なNK細胞集団の投薬量は好ましくは、毒性をほとんど有しないか、または全く有しない効果的な用量を含む循環濃度の範囲の範囲内にある。投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変化させることができる。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、The Pharmacological Basis Of Therapeutics(第1章、1975)を参照のこと;これはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0199】
キット
本発明の範囲に同様に含まれるものが、本発明の組成物(例えば、治療的NK細胞集団)と、使用のための説明書とを含むキットである。キットはさらに、少なくとも1つのさらなる試薬、あるいは、本発明の1つまたは複数のさらなるヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体とは異なる抗原におけるエピトープに結合する相補的活性を有するヒト抗体)を含有することができる。キットは典型的には、キットの内容物の意図された使用を示すラベルを含む。ラベルの用語には、キットに関して、または、キットとともに供給されるか、あるいは、他の場合にはキットに付随する文書または記録物であれば、どのようなものも含まれる。
【0200】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0201】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。この用語は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0202】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0203】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0204】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0205】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0206】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0207】
本明細書で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、または、逆向きにすること、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0208】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0209】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0210】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0211】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique」by Freshney,Wiley−Liss,N.Y.(1994),Third Edition;「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);利用可能な免疫アッセイ法は、特許と科学文献に広範囲にわたって記載されており、例えば:米国特許の第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらの文献の全ては、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0212】
材料および実験手順
臍帯血サンプル
細胞を、(インフォームドコンセントが得られた)正常な満期分娩の後の臍帯血から得た。サンプルを分娩後24時間以内に集め、凍結した。簡単に記載すると、臍帯血を分娩後の胎盤から重力によって集め、白血球富化画分を密度勾配遠心分離によって分離し、細胞をDMSO(10%)と混合し、その後、−80℃で凍結した。使用前に、細胞を、2.5%のヒト血清アルブミン(HSA)(Bayer Corp.、Elkhart、IN、USA)を含有するデキストラン緩衝液(Sigma、St.Louis、MO、USA)において解凍し、凍結保護剤を除いた。
【0213】
BMおよび末梢血のサンプル
骨髄(BM)細胞および末梢血(PB)細胞をFicoll−Hypaque勾配(1.077g/mL;Sigma)に重層し、800xgで30分間遠心分離した。境界層における単核細胞を集め、0.5%のHSAを含有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)(Biological Industries、イスラエル)で3回洗浄した
【0214】
CD56+細胞の濃縮
臍帯血(CB)細胞、骨髄(BM)細胞または抹消血(PB)細胞をFicoll−Hypaque勾配(1.077g/mL;Sigma)に重層し、800xgで30分間遠心分離して、単核細胞を分離した。境界層における単核細胞を集め、0.5%のHSAを含有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)(Biological Industries、イスラエル)で3回洗浄した。CD56+細胞を精製するために、単核細胞画分を、「MiniMACSまたはCliniMACS CD56始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して2回の免疫磁石ビーズ分離に供した。簡単に記載すると、CD56+細胞をCD56+特異的な磁石免疫ビーズと反応させ、磁石分離器を用いて分離し、洗浄によって非結合細胞から精製した。このようにして得られたCD56+集団の純度は、フローサイトメトリーによって評価された場合、およそ92%である。
【0215】
場合により、細胞はFicoll−Hypaque勾配で分離されるのでなく、0.5%のHSAを含有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)(Biological Industries)で3回洗浄される(「総単核画分」)。最後の洗浄において、細胞を50μg/mlのrHu−DNAseと10分間インキュベーションした。CD56+細胞を精製するために、細胞を、「MidiMACS CD56始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して2回の免疫磁石ビーズ分離に供した。このようにして得られたCD56+集団の純度は、フローサイトメトリーによって評価された場合、およそ92%である。
【0216】
場合により、骨髄細胞は、CD133+細胞またはCD34+細胞が、「MidiMACSまたはCliniMACS CD133細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を使用して免疫磁石ビーズ分離によって枯渇化され、その後、CD133−またはCD34陰性の画分が、細胞を、「MidiMACSまたはCliniMACS CD56始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して2回の免疫磁石ビーズ分離に供することによってNK細胞についてさらに濃縮される。
【0217】
CD56+CD3−細胞の濃縮
臍帯血(CB)細胞、骨髄(BM)細胞または抹消血(PB)細胞をFicoll−Hypaque勾配(1.077g/mL;Sigma)に重層し、800xgで30分間遠心分離して、単核細胞を分離した。境界層における単核細胞を集め、0.5%のHSAを含有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)(Biological Industries、イスラエル)で3回洗浄した。CD56+CD3−細胞を精製するために、単核細胞画分を、「MiniMACSまたはCliniMACS CD56始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して免疫磁石ビーズ分離に供した。簡単に記載すると、CD56+細胞をCD56+特異的な磁石免疫ビーズと反応させ、磁石分離器を用いて分離し、洗浄によって非結合細胞から精製した。精製されたCD56+細胞画分を、「MiniMACSまたはCliniMACS CD3始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して、さらなる免疫磁石ビーズ分離に供した。簡単に記載すると、CD56+細胞をCD3+特異的な磁石免疫ビーズと反応させ、磁石分離器を用いて分離し、CD56+CD3−細胞を非結合細胞画分において回収する。このようにして得られたCD56+CD3−集団の純度は、フローサイトメトリーによって評価された場合、およそ85%〜97%である。
【0218】
場合により、細胞はFicoll−Hypaque勾配で分離されるのではなく、0.5%のHSAを含有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)(Biological Industries)で3回洗浄される(「総単核画分」)。最後の洗浄において、細胞を50μg/mlのrHu−DNAseと10分間インキュベーションした。CD56+細胞を精製するために、細胞を、「MidiMACS CD56始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して2回の免疫磁石ビーズ分離に供する。このようにして得られたCD56+集団の純度は、フローサイトメトリーによって評価された場合、およそ92%である。CD56+CD3−細胞を精製するために、細胞を、「MiniMACSまたはCliniMACS CD56始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して免疫磁石ビーズ分離に供する。簡単に記載すると、CD56+細胞をCD56+特異的な磁石免疫ビーズと反応させ、磁石分離器を用いて分離し、洗浄によって非結合細胞から精製する。精製されたCD56+細胞画分を、「MiniMACSまたはCliniMACS CD3始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して、さらなる免疫磁石ビーズ分離に供した。簡単に記載すると、CD56+細胞をCD3+特異的な磁石免疫ビーズと反応させ、磁石分離器を用いて分離し、CD56+CD3−細胞を非結合細胞画分において回収する。このようにして得られたCD56+CD3−集団の純度は、フローサイトメトリーによって評価された場合、およそ85%〜97%である。
【0219】
場合により、骨髄細胞は、CD133+細胞またはCD34+細胞が、「MidiMACSまたはCliniMACS CD133細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を使用して免疫磁石ビーズ分離によって枯渇化され、その後、CD133−またはCD34陰性の画分が、細胞を、「MidiMACSまたはCliniMACS CD56始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して2回の免疫磁石ビーズ分離に供することによってNK細胞についてさらに濃縮される。CD56+CD3−細胞を精製するために、CD133−またはCD34陰性の画分を、「MiniMACSまたはCliniMACS CD56始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して免疫磁石ビーズ分離に供した。簡単に記載すると、CD56+細胞をCD56+特異的な磁石免疫ビーズと反応させ、磁石分離器を用いて分離し、洗浄によって非結合細胞から精製する。精製されたCD56+細胞画分を、「MiniMACSまたはCliniMACS CD3始原体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を製造者の推奨法に従って使用して、さらなる免疫磁石ビーズ分離に供した。簡単に記載すると、CD56+細胞をCD3+特異的な磁石免疫ビーズと反応させ、磁石分離器を用いて分離し、CD56+CD3−細胞を非結合細胞画分において回収する。このようにして得られたCD56+CD3−集団の純度は、フローサイトメトリーによって評価された場合、およそ85%〜97%である。
【0220】
培養前におけるCD3+細胞またはCD3+CD19+細胞の枯渇化
枯渇化手順のために、臍帯血(CB)細胞、骨髄(BM)細胞または抹消血(PB)細胞から得られる総有核細胞をFicoll−Hypaque勾配(1.077g/mL;Sigma)に重層し、800xgで30分間遠心分離して、単核細胞を分離した。境界層における細胞を集め、0.5%のHSAを含有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)(Biological Industries、イスラエル)で3回洗浄した。場合により、細胞はFicoll−Hypaque勾配で分離されるのではなく、0.5%のHSAを含有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)(Biological Industries)で3回洗浄される(「総単核画分」)。CD3細胞を、CD3細胞単離キット(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を使用して枯渇化し、CD3陰性細胞画分全体を培養した。場合により、CD19細胞もまた、CD19細胞単離キット(Miltenyi Biotec Bergisch、Gladbach、ドイツ)を使用して枯渇化し、CD3/CD19陰性(CD3/CD19枯渇化)細胞画分を培養した。場合により、RosetteSepヒトCD3+細胞枯渇化カクテル(Stem Cell Technologies、RosestteSep、カタログ番号15661)をCD3枯渇化のために使用し、CD3陰性細胞画分全体を培養した。陰性枯渇後、細胞を計数し、FACS分析によって特徴づけた。
【0221】
エクスビボ培養:
1.総単核細胞画分を、0.5〜2×10細胞/mlの濃度で、培養バッグ(American Fluoroseal Co.、Gaithersburg、MD、USA)、T−フラスコまたは24ウエルプレートにおいて、OKT−3(10〜50ng/ml)を伴って、または伴うことなく、ニコチンアミド(0.5〜10mM)を伴って、または伴うことなく、下記のヒト組換えサイトカインを含有する、10%のFCSを含むMEMα、または、5%〜10%のヒト血清/LiforCell(登録商標)FBS代替物(Lifeblood Products)を含むCellGro SCGM(Cell Genix)において培養した:インターロイキン−2(IL−2)(5〜50ng/ml)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン7(IL7)、インターロイキン21(IL21)、FLT−3またはSCFあるいはFLT3およびSCF(Perpo Tech,Inc.、Rocky Hill、NJ、USA)。インキュベーションを空気における5%COの加湿雰囲気において37℃で行った。OKT−3が培養で使用されたとき、培養物を5日後〜7日後に遠心分離し、細胞を、OKT−3を除く同じ培地により再懸濁した。すべての培養物には、毎週または週に2回、ニコチンアミドを伴って、または伴うことなく増殖因子を含有する同じ体積の新鮮な培地が加えられる。計数のために、細胞をトリパンブルーにより染色した。様々な時点で、サンプルを採取して、NK細胞、CD56+CD3−細胞、CD56+CD3+細胞、CD34+CD56+細胞、CD56+CD16+細胞および/またはCD56+NKG2A細胞の相対的割合をアッセイした。細胞形態学を、メイ−グリュンワルド/ギムザ溶液により染色されたサイトスピン(Shandon、Pittsburgh、PA、USA)調製塗沫標本で求めた。
【0222】
2.総有核細胞または総単核細胞から得られる、あるいは、CD34+細胞またはCD133+細胞から枯渇化された画分から得られる精製されたCD56+細胞またはCD56+CD3−細胞を、1〜100×10細胞/mlの濃度で、培養バッグ、T−フラスコまたは24ウエルプレートにおいて、ニコチンアミドを伴って、または伴うことなく、下記のヒト組換えサイトカインを含有するMEMα/10%FCS、または、CellGro SCGM(Cell Genix)/5%ヒト血清/LiforCell(登録商標)FBS代替物(Lifeblood Products)において培養した:インターロイキン−2(IL−2)(5〜50ng/ml)、インターロイキン−15(IL−15)、FLT−3またはSCF、あるいは、FLT3およびSCF、あるいは、IL−2およびIL−15、あるいは、IL−2のみ(Perpo Tech,Inc.、Rocky Hill、NJ、USA)。インキュベーションを空気における5%COの加湿雰囲気において37℃で行った。培養物には、毎週または週に2回、ニコチンアミドを伴って、または伴うことなく増殖因子を含有する同じ体積の新鮮な培地が加えられた。最終的には、培養には、IL−2、ならびに/または、IL−2およびIL−15が週に1回または数回補充され得る。培養されている細胞の数を推定するために、細胞サンプルを計数のためにトリパンブルーにより染色した。様々な時点で、サンプルをFACS分析のために採取して、NK細胞、CD56+CD3−細胞、CD56+CD3+細胞、CD34+CD56+細胞、CD56+CD16+細胞および/またはCD56+NKG2A細胞の相対的割合をアッセイした。
【0223】
3.PB、BMおよびCBから得られるCD3+枯渇化またはCD3+/CD19+枯渇化の単核細胞画分を、1〜1000×10細胞/mlの濃度で、培養バッグ、T−フラスコまたは24ウエルプレートにおいて、ニコチンアミドを伴って、または伴うことなく、下記のヒト組換えサイトカインを含有するMEMα/10%FCS、または、CellGro SCGM(Cell Genix)/5%ヒト血清/LiforCell(登録商標)FBS代替物(Lifeblood Products)において培養した:FLT−3またはSCF、あるいは、FLT3およびSCF(5〜50ng/ml)(Perpo Tech,Inc.、Rocky Hill、NJ、USA)を伴って、または伴うことなく、インターロイキン−2(IL−2)または/およびインターロイキン−15(IL−15)(すべての組合せ)。インキュベーションを空気における5%COの加湿雰囲気において37℃で行った。培養物には、毎週または週に2回、ニコチンアミドを伴って、または伴うことなく増殖因子を含有する同じ体積の新鮮な培地が加えられた。培養には、その後、IL−2、ならびに/または、IL−2およびIL−15が週に1回または数回補充された。培養されている細胞の数を推定するために、細胞サンプルをトリパンブルーによる染色の後で計数した。様々な時点で、サンプルをFACS分析のために採取して、NK細胞、CD56+CD3−細胞、CD56+CD3+細胞、CD34+CD56+細胞、CD56+CD16+細胞および/またはCD56+NKG2A細胞の相対的割合をアッセイする。
【0224】
4.PB細胞、BM細胞およびCB細胞から得られる総単核細胞画分、総有核細胞または総単核細胞からの、または、CD34+またはCD133+から枯渇化された画分からの精製されたCD56+細胞またはCD56+CD3−細胞、および、CD3+枯渇化またはCD3+/CD19+枯渇化の単核細胞画分もまた、1〜10000×10細胞/mlで、バイオリアクター(例えば、GE Wave Bioreactorバッグ、または、Gas Permeable Culturewareフラスコ(Wilson Wolf))において培養することができる。培養培地は、ニコチンアミドとともに、MEMα、ヒト血清(10%v/v)、20ng/mlのIL−2、場合により50ng/mlのIL−2、場合によりIL−15を含有した。培養物には、毎週または週に2回、ニコチンアミドを伴って、または伴うことなく増殖因子を含有する同じ体積の新鮮な培地が加えられた。培養には、その後、IL−2、ならびに/または、IL−2およびIL−15が週に1回または数回補充された。細胞を、1週間後、2週間後および3週間後に計数し、FACS分析のために染色した。
【0225】
放射線照射された間質とのNK細胞培養
PB、BMおよびCBから得られる総単核細胞画分からのNK細胞、総有核細胞または総単核細胞からの、または、CD34+細胞またはCD133+細胞から枯渇化された画分からの精製されたCD56+細胞またはCD56+CD3−細胞、あるいは、CD3+枯渇化またはCD3+/CD19+枯渇化の単核細胞画分を、放射線照射された間質とともに培養することができる。放射線照射された間質(フィーダー細胞)を調製するために、単核細胞に3000radの放射線照射を行った。CD56またはCD56+CD3−の選択あるいはCD3枯渇化の後、細胞を、本明細書中上記で記載されるように計数し、FACS分析によって特徴づけた。細胞を、ニコチンアミドを伴って、または伴うことなく、放射線照射された間質を伴って、または伴うことなく、20×10細胞/mlの放射線照射細胞の濃度で、本明細書中上記で記載されるように培養した。
【0226】
FACS分析
FACS分析のために、細胞を下記の蛍光性抗体により染色した:CD15 FITC(カタログ番号332778)、CD14 FITC(カタログ番号345784)、CD3 APC(カタログ番号345767)(すべてが、Becton Dickinson(San Jose、CA、USA)から得られる)、CD62L PE(カタログ番号304806)(これはBioLegend(San Diego、CA、USA)から得られる)、CD56 FITC(カタログ番号11−0569−42、これはeBioscience(San Diego、CA、USA)から得られる)、および、CD45 PE(カタログ番号R7807、これはDako(Glostrup、デンマーク)から得られる)。
【0227】
NK細胞はまた、CXCR4、KIR3、DL1/2、DL2/2、DL1、NKG2A、NKG2C、NKG2D、TRAIL、Fc−ガンマ受容体IIIb、NKp44、NKp30、NKp46、Fas−L、L−セレクチン、フィコエリトリン、IL−2受容体γ鎖(CD16)、VLA−5α鎖およびCD8によっても特徴づけられた。
【0228】
0日目に播種されたNK細胞の数の計算
0日目でのNK細胞の数を計算するために、0日目に播種されたNK細胞の総数に、0日目にFACSによって測定されるCD56+/CD3−細胞のパーセントを乗じた。
【0229】
培養されているNK細胞数の計算、ならびに、播種後7日、14日および21日での増大倍数
7日目、14日目および21日目における細胞の総数を求めるために、細胞カウント数/mlに培養培地の体積を乗じた。培養されているNK細胞の数を求めるために、培養されている細胞の総数に、7日目、14日目または21日目にFACSにより測定されるCD56+/CD3−細胞のパーセントを乗じた。拡大倍数を見積もるために、7日目、14日目および21日目におけるNK細胞の総数を、0日目に培養において播種されたNK細胞の総数によって除算した。
【0230】
表面抗原分析
細胞を、1%のBSAを含有するPBS溶液により洗浄し、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)とコンジュゲート化された抗体あるいはアロフィコシアニン(APC)により染色した(4℃で30分間)。その後、細胞を上記緩衝液で洗浄し、FACScalibur(登録商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson、San Jose、CA、USA)を使用して分析した。細胞を1000細胞/秒までの割合で通過させ、488nmまたは661nmのアルゴンレーザービームを励起用光源として使用した。10個の細胞の放射を、対数増幅を使用して測定し、CellQuestソフトウエア(Becton Dickinson)を使用して分析した。FITCコンジュゲート化、PEコンジュゲート化およびAPCコンジュゲート化のイソ型コントロール抗体により染色された細胞を使用して、バックグラウンド蛍光を求めた。
【0231】
NK細胞の機能性の測定
「殺傷」アッセイ:NK細胞(エフェクター細胞=E)をK562またはBL2(標的細胞=T)あるいは二形質性白血病細胞と種々のE対T比(E:T)で一緒にする。PBSにおけるBL2またはK562あるいは二形質性白血病細胞の標的細胞を1ng/mlのCFSE(Invitrogen)により37℃で15分間標識した。子ウシ血清を細胞に15分間加え、その後、細胞をRPMI培地において洗浄し、再懸濁した。100μLの二形質性白血病細胞、BL2細胞またはK562細胞をウエルあたり5×10細胞の濃度で96丸底プレートに入れた。100μLの非染色NK細胞を、1:1、2.5:1、5:1、10:1または20:1のE:T比で、二形質性白血病細胞、BL2細胞またはK562細胞に加えた(示されるように、それぞれ、5×10細胞/ウエル、1.25×10細胞/ウエル、2.5×10細胞/ウエル、5×10細胞/ウエルおよび1×10細胞/ウエル)。その後の2時間〜48時間の間で、細胞株における標的細胞(例えば、K562およびBL−2など)の殺傷を、プロピジウム−ヨウ素(PI)陽性(死)のCFSE標識細胞の百分率としてFACSによって求めた。初代白血病細胞の殺傷を、NK細胞とのそれらの培養の後で培養液に留まったCFSE染色細胞の数をFACSにより計数することによって求めた。より少ない数のCFSE+細胞により、より大きい殺傷レベルが示される。
【0232】
走化性(「遊走」)アッセイ:ヒトNK細胞の遊走応答(走化性)を、Transwell遊走アッセイ(Costar、Cambridge、MA;6.5mmの直径、5μmの細孔サイズ)によってアッセイした。簡単に記載すると、2×10個のNK細胞を含有する100μLの走化性緩衝液(RPMI1640、1%FCS)を上部チャンバーに加え、そして、250ng/mlの間質由来因子CXCL12(「SDF−1」)(R&D Systems)を伴うか、または伴わない0.5mLの走化性緩衝液を底部チャンバーに加えた。「トランスウエル」の底部チャンバーに4時間以内に遊走する細胞を、FACScalibur(Becton Dickinson Immunocytometry Systems)を使用して60秒間計数した。
【0233】
「インビボ」でのホーミングおよび生着:
NK細胞を、上記で記載されるように、2.5mMまたは5.0mMのニコチンアミドを用いて、または用いることなく拡大した。培養において2週間〜3週間の後、類似する数(15×10個)の細胞を放射線照射(350Rad)されたNOD/SCIDマウスに注入した。マウスを注入後4日で屠殺した。脾臓、骨髄および末梢血を、ヒトNK(CD45+CD56+)細胞を内因性細胞から区別するために、免疫磁石ビーズを使用してヒトNK(CD45+CD56+)細胞のホーミングおよび生着について分析した。生着が、抗ヒト特異的抗体を使用して、組織において特定されるマウス内因性細胞の総数からの、移植された系譜(CD45+CD56+)を有するNK細胞の%として表される。
【0234】
NK細胞表面におけるCD62L発現のアッセイ
培養を、免疫磁石ビーズにより精製され、ニコチンアミド(2.5mM、5mMおよび7.5mM)を伴って、または伴うことなくサイトカイン(IL−2およびIL−15を含む)により活性化された末梢血由来のCD56+細胞を用いて開始した。NK細胞を、培養における活性化の前、および、ニコチンアミドとの3週間のインキュベーションの後、指定された表面マーカー(例えば、CD62L)に対する特異的抗体により染色し、その後、FACSによってモニターした。
【0235】
結果
実施例I:ニコチンアミドはNK細胞のエクスビボ生長を高める
NK細胞のエクスビボ成長に対する添加ニコチンアミドの影響を評価するために、臍帯血細胞または骨髄細胞を、フィーダー細胞またはフィーダー層を伴うことなく、増殖因子(サイトカイン)および増大する濃度のニコチンアミドとともにインキュベーションし、NK細胞画分および非NK(例えば、CD3+)細胞画分を種々の時点で測定した。
【0236】
臍帯血由来のCD56+細胞は、CD56+CD3−のNK細胞集団に富むことが見出されたが、比較的少数のCD56+CD3+のNKT細胞を含有する。精製された臍帯血NK細胞(CD56+)を、IL−2およびIL−15の存在下、ニコチンアミドとともにインキュベーションしたとき、NK細胞の著しく高まった増殖が、培養の14日もの初期において、また、試験されたすべての濃度で明白であった。図1Aは、14日における2.5mMのニコチンアミドによるNK細胞の増殖が、増殖因子(「サイトカイン」)(IL−2およびIL−15を含む)だけとともにインキュベーションされた細胞の増殖の4倍を超え、5mMのニコチンアミドではさらに一層大きかったことを示す。より広い範囲のニコチンアミド濃度が試験されたとき(図1B)、0.5mMから5mMまでのニコチンアミドのすべての濃度による3週間の培養はNK細胞の増殖を高め、増殖因子(「サイトカイン」)(IL−2およびIL−15を含む)だけとともにインキュベーションされた同じ細胞の増殖の最大で2.5倍であったことが見出された。
【0237】
ニコチンアミドはまた、混在した非選択の臍帯血単核細胞集団からのNK細胞の増殖を高めることができた。非選択の臍帯血単核細胞の培養物には、0.5mM、1mM、2.5mMおよび5mMのニコチンアミドを伴って、または伴うことなく、10ng/mlのFlt−3、20ng/mlのインターロイキン−15(IL−15)、5ng/mlのインターロイキン−2(IL−2)が補充された。エクスビボでのNK細胞の増殖に対するニコチンアミドの特異的な影響をさらに評価するために、生長細胞の分析を、増大する濃度のニコチンアミドを伴うか、または伴うことなく培養において3週間後に行った。図2Aおよび図2Bは、単核画分からのCD56+/CD45+細胞およびCD56+/CD3−NK細胞の培養における増殖の明らかに用量依存的なニコチンアミド誘導による強化を示す。図2Cは、CD3+CD56−T細胞の成長が、これもまた用量依存的様式であるが、ニコチンアミド処理培養において阻害されたことを明瞭に示しており、一方、ニコチンアミドを伴わないコントロール培養で成長させたCD3+細胞はNK細胞よりも数が多かった。したがって、NK細胞およびCD3+(例えば、TおよびNKT)細胞の混合細胞集団をニコチンアミドとともに培養することにより、NK細胞区分のさらなる増強がもたらされ、一方、ニコチンアミドを伴わない、サイトカインのみによる培養はNK細胞の増殖をほとんど支援せず、むしろ、CD3+細胞の増殖を高める。
【0238】
骨髄細胞および末梢血細胞は、CD56+CD3+のNKT細胞集団およびCD56+CD3−のNK細胞集団の両方を含有するCD56+細胞の不均一な集団を含有することが見出された。骨髄由来NK細胞の増殖が、ニコチンアミドとのインキュベーションによって同様に高められた。接種された骨髄由来の精製されたCD56+細胞の特徴づけにより、約20%〜60%の細胞がNKT細胞の表現型(CD56+CD3+)を呈示し、40%〜80%がNK細胞の表現型(CD56+CD3−)を呈示することが示される(種々のBMサンプルの間で変動する)。したがって、BM由来のCD56+細胞は、NK細胞およびNKT細胞の混合集団を含む。増殖因子(「サイトカイン」)(FLT3、IL−2およびIL−15を含む)だけとともにインキュベーションされた骨髄由来のCD56+細胞におけるNK細胞の増殖は、培養において14日後、ほとんど増大しなかったが、増殖因子および2.5mMのニコチンアミドとともにインキュベーションされたCD56+細胞におけるNK細胞の増殖は、14日の培養(増大倍数=8)と、21日の培養(増大倍数=12)との間で50%増大した(図3)。21日における培養細胞のCD56+CD3−サブセットおよびCD56+CD3+サブセットのさらなる分析では、CD56+CD3−NK細胞がニコチンアミド処理培養ではCD56+CD3+NKT細胞を圧倒的に上回り(80%を超え)、一方、増殖因子(「サイトカイン」)(FLT3、IL−2およびIL−15を含む)だけとともにインキュベーションされた骨髄由来のCD56+細胞は主としてNKT細胞(CD56+CD3+)であり、NK細胞(CD56+CD3−)でなかったことが明らかにされた(図4Aおよび図4B)。したがって、不均一なNK+NKTの細胞集団の、ニコチンアミドとの培養は、NKT細胞の最小限の増殖を伴って、NK細胞区分のさらなる生長および濃縮をもたらし、一方、ニコチンアミドを伴わない、サイトカインのみとの培養はNK細胞の優先的な増殖を支援しない。
【0239】
CD56+CD16+の細胞傷害性NK細胞集団は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)が可能であることが明らかにされている。培養において14日後および21日後での、2.5mMのニコチンアミドを伴って、または伴うことなく、増殖因子とともに培養された骨髄CD56+細胞由来のCD56+CD16+細胞の分析では、増殖因子(「サイトカイン」)(FLT3、IL−2およびIL−15を含む)だけとともにインキュベーションされた骨髄由来のCD56+細胞を上回る、CD56+CD16+の表現型を呈示するNK細胞の割合における著しい増大が明らかにされた(図5を参照のこと)。
【0240】
骨髄由来のCD56+細胞が、増殖因子(「サイトカイン」)(FLT3、IL−2およびIL−15を含む)およびニコチンアミドとともに7日間、エクスビボ培養されたとき、CD56+CD3−NK細胞サブセットの増殖の強化(図6A)およびCD56+CD3+NKT細胞の低下した増殖(図6B)が、1mM、2.5mMおよび5mMのニコチンアミドにおいて明白であった。7日におけるCD56+CD16+NK細胞の増殖は、2.5mMおよび5mMのニコチンアミドにより最も高められた(図6C)。
【0241】
ニコチンアミドおよび培養された末梢血NK細胞の自己再生能:
末梢血単核細胞が、CD3+集団またはCD3+/CD19+集団の枯渇化に供されるとき、NK細胞が濃縮された集団が得られ、これは2%〜10%のNK細胞を含み、播種された細胞の大部分が骨髄系の細胞系譜に属する。しかしながら、ニコチンアミドとの培養において2週間〜3週間の後、培養されている細胞の90%超がNK(CD56+CD3−)細胞であった。
【0242】
図10は、規模拡大された培養(培養バッグにおける10mlの体積)において、サイトカイン(IL−2、または、IL−2+IL−15)の存在下での3週間の培養期間の期間中における末梢血NK(T細胞枯渇化)細胞の拡大を例示する。拡大が、培養において最初の7日の期間中はすべての群でより遅かった。14日後および21日後、NKの拡大が、ニコチンアミドを伴うことなく成長させられたコントロール培養(NAM 0)と比較して、2.5mMおよび5mMの両方のニコチンアミドにより処理された培養において著しくより大きかった。興味深いことに、ニコチンアミドとともに成長させられたNK細胞は14日目から21日目まで増殖し続け、一方、NAMを伴うことなく処理されたNK細胞は増殖を停止した。
【0243】
培養が所与の範囲の播種密度とともに開始されたとき(2×10個、5×10個および10×10個の細胞が播種されたとき)、CD56+CD3−NK細胞の増殖の非常に大きい強化が、21日後、2.5mMおよび5mMの両方で認められた(図11)。播種後21日におけるNK細胞培養物のFACS分析では、2.5mMおよび5mMの両方でのニコチンアミドを伴う培養の、NK(CD56+/CD3−)集団についての明瞭な利点が示される。NK細胞の百分率がたとえ、すべての群で増大したとしても、ニコチンアミドにより処理された培養物における非NK細胞画分は、ニコチンアミドを伴わないコントロール培養物と比較して、より小さいことに留意すること(図12)。
【0244】
ニコチンアミド濃度および臍帯血由来の精製されたCD56+NK細胞の拡大
臍帯血由来のNK細胞画分(これはCD56+表現型について免疫磁石ビーズで精製されていた)が、最大で3週間、サイトカイン(FLT3、IL−2およびIL−15を含む)だけ(サイトカイン)とともに、または、増大する濃度(NAM 1mMから7.5mMまで)のニコチンアミドの存在下で培養されたとき、試験されたニコチンアミドのすべての濃度が、サイトカインのみのコントロールと比較して、臍帯血由来のNK細胞においてNKの増幅を高めることにおいて効果的であることが認められた(図17を参照のこと)。コントロール(サイトカイン)と比較して、全培養期間を通して続く、ニコチンアミドにさらされた培養物の拡大における用量依存的増大に留意すること。したがって、NK細胞増殖のニコチンアミド増強は、長期間と同様に、短期間のエクスビボNK培養のために効果的であり、フィーダー層またはフィーダー細胞を必要とせず、所与の範囲のニコチンアミド濃度にわたって明らかであり、かつ、どちらのNKリッチ物も、すなわち、NK細胞および非NK細胞(CD3+、T細胞、NKT細胞など)の混合物、または、非常に不均一な単核細胞集団を供給源として使用することができる(これらは様々な開始細胞集団(例えば、末梢血、臍帯血)から得られ、すべてが、治療的使用のための非常に多数のNK細胞を提供するために重要である)。
【0245】
実施例II−ニコチンアミドへのエクスビボ暴露はNK細胞の機能を高める
NK細胞が阻害性刺激および活性化刺激の両方に対する応答によって特徴づけられ、また、効果的であり、それにもかかわらず、特異的な細胞傷害性を有する機能的NK細胞の産生が、エクスビボNK細胞培養のどのような検討にとっても非常に重要である。NK細胞の機能に対するニコチンアミドの影響を細胞マーカーに対するその影響によって評価し、走化性「Transwell」遊走アッセイおよび標的細胞「殺傷」アッセイを使用して試験した。阻害性NK細胞画分および活性化NK細胞画分の存在率における変化を検出するために、精製された臍帯血由来のCD56+細胞を、1mM、2.5mMおよび5mMのニコチンアミドを伴って、または伴うことなく、増殖因子[10ng/mlのFlt−3、20ng/mlのインターロイキン−15(IL−15)および5ng/mlのインターロイキン−2(IL−2)]とともにウエルにおいて培養した。3週間の培養の後、NK細胞の中の阻害性CD56+NKG2A細胞画分の存在率における著しい用量依存的減少が、増殖因子(FLT3、IL−2およびIL−15を含む)だけとともにインキュベーションされた臍帯血由来のNK細胞と比較した場合、すべてのニコチンアミド濃度で検出された(図7)。このことは、ニコチンアミドによるNK細胞の高まった活性化を示唆している。
【0246】
機能適格なNK細胞をそれらの走化性および細胞傷害能によって特徴づけることができる。NK細胞の機能に対するニコチンアミドの影響を評価するために、インビトロでの遊走アッセイ(走化性)および殺傷アッセイ(細胞傷害性)を行った。
【0247】
増殖因子および2.5mMまたは5mMのニコチンアミドとともに培養された、免疫磁石精製された臍帯血由来のCD56+細胞の、250ng/mlのSDF刺激に対する応答における遊走が、増殖因子だけとともに培養されたCD56+細胞の遊走と比較して非常に高められた(図8A)。加えて、ニコチンアミドとともに培養されたCD56+細胞は、高まった運動性をSDF刺激の非存在下で示した。
【0248】
機能的に関連づけられる細胞表面受容体に対するニコチンアミドの影響を調べた。培養された臍帯血由来のNK細胞における遊走受容体(CXCR4)、接着受容体(CD49e)および輸送受容体(CD62L)の発現を、特異的抗体およびFACS分析を使用して分析したとき、コントロール(サイトカインのみ)と比較して、ニコチンアミドの存在下で培養された細胞におけるCXCR4およびCD62Lの強く高まった発現、ならびに、CD49eの上昇した発現(図8B)により、骨髄、リンパ系器官および他の器官に遊走およびホーミングするニコチンアミド処理細胞の増大した能力が示唆され、また、ニコチンアミドとともに培養されたNK細胞の優れたインビボでのホーミングおよび活性が予想され得る。
【0249】
ニコチンアミドの存在下で培養されるT細胞枯渇化(CD3枯渇化またはCD3/CD19枯渇化)された末梢血NK細胞集団の表面における輸送受容体(CD62L)の発現が分析されたとき、コントロール細胞(サイトカイン)と比較して、この受容体の上昇した発現が認められた。2.5mMおよび5mMの両方のニコチンアミドにおいて、NK細胞の中のCD62L陽性細胞の増大した百分率が、培養において7日後(図13A)、14日後(図13B)および21日後(図13C)に認められ、一方、サイトカインのみのコントロールにおける、CD62Lを発現するNK細胞のパーセントが、培養において7日後の20%から、21日後の10%未満にまで低下した。
【0250】
図20は、IL−2との培養における活性化の前における、末梢血由来の免疫ビーズ精製されたCD56+細胞でのCD62L輸送受容体発現のレベル、IL−2による活性化の後でのCD62L発現のレベルにおける劇的な減少、ならびに、IL−2および増大する濃度のニコチンアミド(2.5mM〜7.5mM)との培養における活性化の後でのCD62Lの発現における顕著な増大を示す。培養を、免疫磁石ビーズ精製された末梢血由来のCD56+細胞を用いて開始し、サイトカインのみ(IL−2およびIL−15を含む)の存在下(図20の欄「0」を参照のこと)、または、サイトカイン+ニコチンアミド(2.5mM、5mMおよび7.5mM)の存在下で維持した。培養前、および、培養において3週間後、NK細胞を特異的なCD62L抗体により染色し、その後、FACSによってモニターした。コントロール(サイトカインのみ、「0」)と比較して、ニコチンアミドの存在下で培養された細胞におけるCD62Lの劇的に高まった発現に留意すること。挿入図はFACSデータであり、CD56の分布に対してプロットされるCD62Lの分布を示す。
【0251】
CFSE標識されたK562標的細胞を使用してアッセイされるNK細胞の殺傷能を、ニコチンアミドを伴うか、または伴うことなく増殖因子とともに培養された臍帯血由来のCD56+細胞について評価した。1:5、1:10および1:20のNK細胞対標的のE:T比率において、増殖因子およびニコチンアミドとともに培養された臍帯血由来のNK細胞の殺傷(細胞傷害)能は、増殖因子のみにおいて培養された同じ数の細胞の殺傷(細胞傷害)能よりもはるかに大きかった(図9)。新鮮な非培養細胞は殺傷能をほとんど示さなかった。
【0252】
末梢血NK細胞の殺傷能を、CFSE標識されたK562標的細胞およびBL2標的細胞を使用してアッセイし、2.5mMまたは5.0mMのニコチンアミドを伴うか、または伴うことなく増殖因子とともに3週間培養された末梢血由来のCD56+細胞について評価した。標的細胞の死を、PI陽性のCFSE標識細胞の百分率としてFACSによってモニターした。1:1から10:1までのNK細胞対標的のE:T比率において、増殖因子およびニコチンアミドとともに培養される拡大された末梢血由来のNK細胞の殺傷(細胞傷害)能は、増殖因子のみにおいて培養される同じ数の細胞の殺傷(細胞傷害)能よりもはるかに大きかった(図15A)。
【0253】
末梢血由来の拡大されたNK細胞の細胞傷害能もまた、ヒト初代二形質性白血病細胞(90%超の細胞がCD3+のT細胞である)を標的細胞として使用して明らかにされた。図15Bおよび図15Cは、2名の別個のドナー(ドナーAおよびドナーB)のNK細胞を使用する24時間後の結果を示す。結果は、ニコチンアミドとともに培養することによるNK細胞の殺傷能の増大した活性化を示している。殺傷能がドナーA由来の培養されたNKコントロール細胞において何ら認められないことは、NK細胞に対するニコチンアミドの強い活性化効果をさらに示すものである。
【0254】
重要な治療標的である固形腫瘍細胞に対する、ニコチンアミドとともに拡大された末梢血由来のNK細胞の細胞傷害能が、colo205結腸直腸腺ガン細胞株の細胞を標的細胞として使用して明らかにされた。図15Dは、試験されたE:T比率(1:1〜10:1)のすべてにおいて、5mMのニコチンアミドを用いたNK細胞の培養による増大した殺傷能を示す。
【0255】
まとめると、これらの結果は、ニコチンアミドへのCD56+細胞の暴露は、NK細胞の増殖を、具体的にはCD56+CD62L細胞集団の増殖を増大させるだけでなく、ニコチンアミドの存在下で生長させられた細胞は、ニコチンアミドを伴うことなく、増殖因子だけとともに培養された類似する細胞よりも大きい運動性、方向づけられた遊走および細胞傷害能を有することを示している。さらに、本明細書中に示される結果は、ニコチンアミドが、NK細胞の増殖および機能性を高めるために効果的であることを示している(この場合、NK細胞は、精製されたNK細胞または総単核細胞画分に由来するNK細胞であるかにかかわらず、また、様々な供給源(例えば、末梢血、骨髄または臍帯血など)に由来する)。
【0256】
実施例III−フィーダー細胞とともに培養されたNK細胞の増殖に対するニコチンアミドの影響
NK細胞はまた、フィーダー細胞とともに培養することができる。NK細胞の増殖および機能性に対するニコチンアミドの影響を末梢血単核細胞(PBMC)フィーダー細胞との共培養において評価した。
【0257】
一般に、フィーダー細胞との培養は下記のように行われる:NK含有細胞集団(例えば、臍帯血、末梢血、骨髄)が、放射線照射された同種由来または自己由来のPBMCフィーダー細胞の存在下、10:1〜100:1のフィーダー:培養細胞の比率で、FLT3、IL−2および/またはIL−15を含むサイトカインと、増大する濃度のニコチンアミド(0.5mM〜10mM)との組合せとともに培養される。培養は2週間〜5週間維持され、フィーダー細胞培養におけるニコチンアミドの影響が、NKおよび非NKの細胞およびサブセット(例えば、CD56+、CD3+、CD56+CD3−、CD56+CD16+)の分布、ならびに、NK細胞の機能(例えば、走化性、細胞傷害性)に基づいて評価される。フィーダー細胞培養においてニコチンアミドとともに培養されたNK細胞の増大した増殖および機能性により、培養におけるNK細胞の生長のためのニコチンアミドのさらなる有用性が示される。
【0258】
フィーダー細胞を伴うNK細胞培養に対するニコチンアミドの影響を評価するために、末梢血NK細胞画分を、ニコチンアミドを伴うか、または伴わない、放射線照射された間質細胞との共培養において拡大し、拡大倍数、表面マーカー(CD56、CXCR4)および機能的成績についてアッセイした。
【0259】
末梢血由来の単核細胞画分をCD3枯渇化し、その後、免疫ビーズ精製によってCD56+細胞について選択した。同じ血液ユニットからの単核細胞の一部が、放射線照射された単核細胞を提供するために常に保持され、3000radで放射線照射された。CD56+NK細胞を、放射線照射された末梢血由来の単核細胞画分と一緒に、10:1の放射線照射末梢血単核細胞対CD56選択細胞の比率で播種した。培養には、ニコチンアミド(2.5mMおよび5mM)を伴って、または伴うことなく、IL−2、IL−15およびFlt−3が補充された。
【0260】
放射線照射されたフィーダー細胞との培養において21日後、ニコチンアミド補充の培養に対する明瞭な利点が認められた。2.5mMおよび5mMの両方のニコチンアミドの存在下で培養されたNK細胞の21日目での増大倍数が、0日目に対して、コントロール(サイトカイン+放射線照射単核細胞)の増大倍数の少なくとも4倍であった(図20を参照のこと)。放射線照射単核細胞とのNK細胞の共培養は、ニコチンアミドの存在下ではまた、表面マーカーの発現における顕著な増大をもたらした:CXCR4(図21を参照のこと)およびCD62L(図22を参照のこと)。したがって、ニコチンアミドとともに拡大されたNK細胞は、放射線照射単核細胞およびサイトカインの存下では、高まった遊走能(CXCR4)および輸送能(CD62L)が明らかにされた。
【0261】
拡大されたNK細胞がK562標的細胞のエクスビボ殺傷能についてアッセイされたとき、増大した細胞傷害能が、5:1、2.5:1および1:1のNK細胞対標的細胞において認められた(図23を参照のこと)。標的細胞の死が、PI陽性のCFSE標識細胞の百分率としてFACSによってモニターされた。コントロール(サイトカインのみ)と比較して、増大した標的細胞殺傷能は、ニコチンアミドおよび放射線照射単核細胞との培養によるNK細胞の殺傷能の高まった活性化を強く示唆する。したがって、増殖および機能性の同じ強化が、NK細胞が、さらなるフィーダー細胞を伴って、または伴うことなくニコチンアミドの存在下で培養されたときに認められた。
【0262】
まとめると、これらの結果は、ニコチンアミドにより処理されたNK細胞培養物において認められる効果は明確であり、NK細胞をフィーダー細胞とともに培養することの効果よりも大きいことを示している。NK細胞を、フィーダー細胞を伴って、または伴うことなくニコチンアミドとともに培養することにより、NK細胞の増大したエクスビボ増殖がもたらされただけでなく、拡大されたNK細胞の高まった機能的能力(例えば、CD62LおよびCXCR4の発現)がもたらされた。これらは、NK細胞を用いた移植のために、また、NK細胞を用いた養子免疫療法処置の臨床効力のために重要である。
【0263】
実施例IV−CD3−枯渇化またはCD3CD19−枯渇化のMNCを用いて開始されたNK細胞培養における非NK細胞の増殖に対するニコチンアミドの影響
NK細胞を培養において拡大するための方法は、臨床状況での使用のためには、混入する非NK細胞もまた細胞培養条件に起因して増殖することがないように、NK細胞集団について幾分か特異的でなければならない。非NK細胞に対するニコチンアミドの影響を、2.5mM、5mMおよび7.5mMのニコチンアミドにさらされたNK細胞培養における単球集団および顆粒球集団をモニターすることによって評価した。
【0264】
図14Aおよび図14Bは、混入する単球細胞(CD14+、図14A)および顆粒球細胞(CD15+、図14B)の百分率をNAM非処理培養におけるそれらの百分率と比較した場合、ニコチンアミドにより処理された14日のNK細胞培養において低下させることにおけるニコチンアミドの影響を例示する。驚くべきことに、ニコチンアミドとのNK細胞の培養は、14日の培養においてCD14およびCD16の増殖の50%超の抑制をもたらした。
【0265】
CD56+の精製された抹消血NK細胞を用いて開始され、ニコチンアミドの非存在下(サイトカイン、「NAM 0」)または存在下(NAM 2.5、NAM 5.0)で維持された培養物に存在する種々のリンパ球サブセット(これらは細胞表面マーカー(CD56、CD3)に従って分類される)の割合が開始後3週間でアッセイされたとき、非NK細胞(例えば、CD3+のT細胞およびCD3+CD56+のNKT細胞など)の割合における減少が、増大するニコチンアミド濃度とともに認められた(図18および図18B(挿入図)を参照のこと)。ニコチンアミドとともに培養されたNK細胞は、ニコチンアミドにさらされないNK細胞よりも大きい効率でCD3+細胞を阻害した。培養を、増大する濃度(2.5mM〜7.5mM)のニコチンアミドを伴って、または伴うことなくサイトカイン(Flt−3、IL−15およびIL−2を含む)とともに3週間維持し、表面マーカーに対する特異的抗体と反応させ、その後、特定の表現型についてFACSによって分析した。
【0266】
CD14細胞およびCD15細胞(これらは多くの場合、移植片対宿主病に関連する;NKT細胞およびT細胞)からの混入のこの低下は、移植前の広範なT細胞枯渇化、単球枯渇化および顆粒球枯渇化の必要性を軽減させ得るので、また、移植片対宿主病および関連した合併症を宿主においてさらに低下させ得るので、NK細胞を培養において拡大するためのどのような臨床的有用なプロトコルであれ、その臨床的有用なプロトコルの重要な側面であり得る。
【0267】
実施例V−精製された造血幹細胞/始原体細胞を用いて開始される培養におけるNKの増殖および機能に対するニコチンアミドの影響
造血由来細胞におけるNK細胞の増殖および機能性のニコチンアミド強化を、ニコチンアミド処理された造血細胞集団を培養においてニコチンアミドおよび適切な増殖因子にさらにさらすことによって評価することができる。
【0268】
培養が、精製された造血幹細胞および/または始原体細胞(例えば、CD34+細胞またはCD133+細胞)を用いて開始され、その後、培養には、増大する濃度のニコチンアミド(0.5mM〜10mM)を伴って、または伴うことなく、TPO、FLT3、SCFおよび/またはIL7および/またはIL15を含むサイトカインの組合せが1週間または2週間補充される。この期間の後、培養には、増大する濃度のニコチンアミド(0.5mM〜10mM)を伴って、または伴うことなく、FLT3、IL7、IL15、IL21および/またはIL−2を含むサイトカインの組合せがさらなる期間(例えば、2週間〜3週間)補充される。培養された造血由来NK細胞の増殖および機能性に対するニコチンアミドの影響を評価するために、NKおよび非NKの細胞およびサブセット(例えば、CD56+、CD3+、CD56+CD3−、CD56+CD16+)の分布、ならびに、NK細胞の機能(例えば、走化性、細胞傷害性)が、培養された細胞集団においてモニターされる。
【0269】
実施例VI−ニコチンアミド培養されたNK細胞の生着および治療能
ニコチンアミドの存在下で拡大されたNK細胞を、NK細胞を生体宿主に移植した後のインビボにおける標的器官への局在化および標的器官内への生着について試験した。
【0270】
放射線照射(350Rad)されたNOD/SCIDマウスが、ニコチンアミドを伴って(NAM、2.5mM、および、NAM、5mM)、または伴うことなく(NAM 0)、最大で3週間維持されたヒト抹消血NK(T細胞枯渇化)培養からの15×10個の細胞を受けた。マウスを注入後4日で屠殺したとき、脾臓、骨髄および抹消血のサンプルを、ヒト特異的Abを使用してヒトNK細胞(CD56+CD45+)の存在についてFACSによって評価した。図16は、ニコチンアミドとともに拡大されたNK細胞の、適切な標的組織への増大した局在化および生着を示す(示された器官から得られる総NK細胞の百分率として表される)。ニコチンアミドのより高い濃度により、より強い影響が明らかにされる。したがって、ニコチンアミドとのNK細胞の培養はNK細胞の数を増大させるだけでなく、標的器官(例えば、脾臓、骨髄および抹消血)内への局在化および生着によって明らかにされるように、NK細胞のインビボでの機能的能力を増大させるために役立つ。
【0271】
さらなる研究において、新鮮な非培養のヒトNK細胞またはCD56+細胞と同様に、培養されたヒトNK細胞またはCD56+細胞の輸血を、準最適な移植、および、マウスまたはそれらの一部分の子孫におけるその後の非生着を達成するために意図される用量の範囲にわたって行うことができる。ヒトNK細胞のホーミングおよび保持を、例えば、ヒトのCD45抗原またはCD45CD56抗原に従って、移植後4時間および最大で4週間で評価することができる。準最適な用量を使用して、ニコチンアミド培養のNK細胞を投与することができ、レシピエントのPB、BMおよびリンパ器官におけるホーミングおよび保持に対する影響を記録することができ、そして、ニコチンアミドを伴うことなく(サイトカインのみで)培養されたNK細胞、または、新鮮なNK細胞のホーミングおよび保持と比較することができる。
【0272】
ニコチンアミドとともに培養されたNK細胞のインビボ抗腫瘍能を、数多くの動物腫瘍モデル(例えば、骨髄性白血病(K562)、バーキットリンパ腫(BL−2)、ヒト膵臓ガン(BxPC−3およびPanc−1)、ヒト乳ガンおよび結腸直腸ガンの異種移植片など)を使用して評価することができる。異種移植された固形腫瘍の成長が、本発明のNK細胞集団を注入した後の種々の時点でモニターされる。異種移植された腫瘍の転移能もまた、NK細胞注入後に評価される。白血病および骨髄異形成症候群のモデルに対するNK細胞の影響を、マウス1kgあたり1×10個、1×10個、1×10個、1×10個、1×10個、1×10個またはそれ以上の培養NK細胞の注入を使用して直接に評価することができ、あるいは、造血始原体、骨髄および幹細胞などと一緒に注入されたときにはアブレーション後の骨髄再増殖の効率を改善することについて評価することができる。
【0273】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0274】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
【0275】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルキラー(NK)細胞をエクスビボ培養する方法であって、該方法は、NK細胞を含む細胞の集団を、少なくとも1つの増殖因子、ならびに、効果的な濃度、効果的な暴露時期および効果的な暴露継続期間のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することを含み、ただし、前記NK細胞を、前記少なくとも1つの増殖因子、ならびに、前記効果的な濃度、効果的な暴露時期および効果的な暴露継続期間の前記ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養することにより、下記の少なくとも1つがもたらされる、方法:
(a)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、CD62Lの上昇した発現;
(b)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、上昇した遊走応答;
(c)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、上昇したホーミングおよびインビボ保持;
(d)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、より大きい増殖;および
(e)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞と比較して、増大した細胞傷害活性。
【請求項2】
前記少なくとも1つの増殖因子がIL−2であり、前記暴露時期が、前記NK細胞を含む細胞の集団の播種からであり、前記暴露継続期間が約2週間〜約3週間であり、前記ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の前記濃度が5mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の前記効果的な濃度が、約0.5mM〜約50mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の前記効果的な濃度が、約1.0mM〜約25mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の前記効果的な濃度が、約2.5mM〜約10mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の前記効果的な濃度が、約2.5mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の前記効果的な濃度が、約5.0mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分の前記効果的な濃度が、約7.5mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記暴露時期が、前記培養における前記NK細胞を含む細胞の集団の播種からである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記暴露継続期間が、約2時間〜約5週間である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記暴露継続期間が、約30時間〜約4週間である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記暴露継続期間が、約2日〜約3週間である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記暴露継続期間が、約1週間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記暴露継続期間が、約2週間である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記暴露継続期間が、約3週間である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記NK細胞を含む細胞の集団が、臍帯血、骨髄および末梢血からなる群から選択される供給源から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記NK細胞を含む細胞の集団は、NK細胞画分およびCD3+細胞画分を含む不均一な細胞集団である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記CD3+細胞画分は前記NK細胞画分よりも大きい、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記NK細胞画分は前記CD3+細胞画分よりも大きい、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記NK細胞を含む細胞の集団は、CD3+細胞が枯渇化された単核細胞集団または総有核細胞集団である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記NK細胞を含む細胞の集団は、CD3+細胞およびCD19+細胞が枯渇化された単核細胞集団または総有核細胞集団である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記NK細胞を含む細胞の集団は、非選択のNK細胞集団である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記NK細胞はCD56+CD3−細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記NK細胞はCD56+CD16+CD3−細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記NK細胞を含む細胞の集団を培養することが、フィーダー層またはフィーダー細胞を伴うことなく行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの増殖因子は、SCF、FLT3、IL−2、IL−7、IL−15、IL−12およびIL−21からなる群から選択される増殖因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの増殖因子は、IL−2、または、IL−2およびIL−15である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの増殖因子はIL−2だけである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記CD62Lの発現が、フローサイトメトリー、免疫検出、定量的cDNA増幅およびハイブリダイゼーションからなる群から選択される方法によって求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記CD62Lの発現が蛍光活性化細胞分取(FACS)によって求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記CD62Lの発現が、蛍光性の抗ヒトCD62Lモノクローナル抗体を使用して求められる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記上昇した遊走応答が、移行アッセイまたは隙間閉鎖アッセイによって求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記上昇した遊走応答が移行アッセイによって求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記移行が、SDF1による刺激に応答してアッセイされる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記上昇したホーミングおよびインビボ保持がFACSによって求められ、注入後の標的器官におけるパーセント生着NK細胞として表される、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記標的器官が、脾臓、骨髄およびリンパ節からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ホーミングおよび生着が、NK細胞注入後の約1日から約2週間までで求められる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記増殖速度が、クローン産生アッセイ、機械的アッセイ、代謝アッセイおよび直接的増殖アッセイによって求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記増殖速度が、CD56+CD3−細胞百分率のFACS分析によって求められ、経時的な増大倍数として表される、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞傷害活性が、細胞殺傷アッセイを使用してアッセイされる、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞殺傷アッセイの標的細胞が、ガン細胞株、初代ガン細胞、固形腫瘍細胞、白血病性細胞またはウイルス感染細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項1〜41のいずれかに記載の方法に従って培養されたNK細胞の集団。
【請求項43】
下記の少なくとも1つによって特徴づけられるNK細胞の集団:
(a)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、CD62Lの上昇した発現;
(b)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、上昇した遊走応答;
(c)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、上昇したホーミングおよびインビボ保持;
(d)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、より大きい増殖;
(e)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、増大した細胞傷害活性;
(f)他の点では同一の培養条件のもと、0.1mM未満のニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分とともに培養されたNK細胞の集団と比較して、CD3+細胞対CD56+/CD3−細胞の低下した比率。
【請求項44】
移植されたとき、高まったホーミング、生着および保持によって特徴づけられるNK細胞の集団であって、前記NK細胞集団の少なくとも15×10個を放射線照射されたSCIDマウス宿主に注入することにより、少なくとも25%のドナー由来のNK細胞が、免疫検出およびフローサイトメトリーによって検出されるように、注入後4日で宿主のリンパ組織においてもたらされる、NK細胞の集団。
【請求項45】
免疫検出およびフローサイトメトリーによって検出されるように、注入時において前記細胞集団の少なくとも30%におけるCD62Lの発現によってさらに特徴づけられる、請求項44に記載のNK細胞の集団。
【請求項46】
CD3+細胞対CD56+/CD3−細胞の比率が注入時において1:100以下であることによってさらに特徴づけられる、請求項44に記載のNK細胞の集団。
【請求項47】
腫瘍成長をその必要性のある対象において阻害する方法であって、治療有効量の請求項42〜46のいずれかに記載のNK細胞の集団を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項48】
前記NK細胞の集団は前記対象に対して自己由来である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記NK細胞の集団は前記対象に対して同種由来である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記投与することが、前記NK細胞集団の単回注入によって行われる、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記投与することが、前記NK細胞集団の反復注入によって行われる、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記対象は、前記NK細胞集団を投与することに付随して少なくとも1つの増殖因子により処置されている、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1つの増殖因子は、IL−2、または、IL−2およびIL−15である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ウイルス感染症をその必要性のある対象において処置または防止する方法であって、治療有効量の請求項42〜46のいずれかに記載のNK細胞のエクスビボ培養された集団を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項55】
前記NK細胞の集団は前記対象に対して自己由来である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記NK細胞の集団は前記対象に対して同種由来である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記投与することが、前記NK細胞集団の単回注入によって行われる、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記投与することが、前記NK細胞集団の反復注入によって行われる、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記対象は、前記NK細胞集団を投与することに付随して少なくとも1つの増殖因子により処置されている、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの増殖因子は、IL−2、または、IL−2およびIL−15である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
移植片対宿主病をその必要性のある対象において処置または防止する方法であって、治療有効量の請求項42〜46のいずれかに記載のNK細胞のエクスビボ培養された集団を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項62】
前記NK細胞の集団は前記対象に対して自己由来である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記NK細胞の集団は前記対象に対して同種由来である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記投与することが、前記NK細胞集団の単回注入によって行われる、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記投与することが、前記NK細胞集団の反復注入によって行われる、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記対象は、前記NK細胞集団を投与することに付随して少なくとも1つの増殖因子により処置されている、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
前記少なくとも1つの増殖因子は、IL−2、または、IL−2およびIL−15である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記対象は、前記NK細胞集団を投与することに付随して造血細胞移植を受けている、請求項61に記載の方法。
【請求項69】
自己免疫性の疾患または状態をその必要性のある対象において処置または防止する方法であって、治療有効量の請求項42〜46のいずれかに記載のNK細胞のエクスビボ培養された集団を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項70】
前記NK細胞の集団は前記対象に対して自己由来である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記NK細胞の集団は前記対象に対して同種由来である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記投与することが、前記NK細胞集団の単回注入によって行われる、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記投与することが、前記NK細胞集団の反復注入によって行われる、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記対象は、前記NK細胞集団を投与することに付随して少なくとも1つの増殖因子により処置されている、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
前記少なくとも1つの増殖因子は、IL−2、または、IL−2およびIL−15である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
白血病性の疾患または状態をその必要性のある対象において処置または防止する方法であって、治療有効量の請求項42〜46のいずれかに記載のNK細胞のエクスビボ培養された集団を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項77】
前記NK細胞の集団は前記対象に対して自己由来である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記NK細胞の集団は前記対象に対して同種由来である、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記投与することが、前記NK細胞集団の単回注入によって行われる、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記投与することが、前記NK細胞集団の反復注入によって行われる、請求項76に記載の方法。
【請求項81】
前記対象は、前記NK細胞集団を投与することに付随して少なくとも1つの増殖因子により処置されている、請求項76に記載の方法。
【請求項82】
前記少なくとも1つの増殖因子は、IL−2、または、IL−2およびIL−15である、請求項76に記載の方法。
【請求項83】
前記対象は、前記NK細胞集団を投与することに付随して造血細胞移植を受けている、請求項76に記載の方法。
【請求項84】
エクスビボ培養されたNK細胞をエキソジーンにより形質導入する方法であって、
(a)NK細胞の集団を請求項1〜41のいずれかに記載の方法に従ってエクスビボ培養すること;および
(b)前記NK細胞の培養された集団をエキソジーンにより形質導入すること
を含む方法。
【請求項85】
前記ニコチンアミドおよび/または他のニコチンアミド成分はニコチンアミドである、請求項1〜84のいずれかに記載の集団または方法。
【請求項86】
前記ニコチンアミド成分はニコチンアミドのアナログまたは誘導体である、請求項1〜84のいずれかに記載の集団または方法。
【請求項87】
前記ニコチンアミドのアナログまたは誘導体は、置換ベンズアミド化合物、置換ニコチンアミド化合物、ニコチンチオアミド化合物、N−置換ニコチンアミド化合物、ニコチンチオアミド化合物、3−アセチルピリジンまたはニコチン酸ナトリウムである、請求項86に記載の集団または方法。

【図12】
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【図13A−13B】
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【図13C】
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【図14A−14B】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2A−2C】
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【図3】
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【図4A−4B】
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【図5】
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【図6A−6C】
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【図7】
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【図8A−8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図15A−15D】
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【図16】
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【図17】
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【図18A−18B】
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【図19A−19B】
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【図23】
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【公表番号】特表2013−515497(P2013−515497A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546556(P2012−546556)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/IL2010/001091
【国際公開番号】WO2011/080740
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(501127637)ガミダ セル リミテッド (6)
【Fターム(参考)】