説明

ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球または未分化骨髄性細胞を含むワクチン

本発明は、ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球または未分化骨髄性細胞(Immature myeloid cells;以下、IMC)を含む免疫治療及び予防用ワクチンに関するもので、具体的には、ナチュラルキラーT細胞リガンドと同時に糖脂質の一種であるα−ガラクトシルセラミド(alpha−galactosylceramide;以下、αGalCer)が積載された単核球またはIMCを含む免疫治療及び予防用ワクチンに関するものである。本発明の組成物である単核球またはIMCが樹状細胞に比べて得やすく、ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球またはIMCの免疫化は、有意な水準の細胞毒性Tリンパ球反応を誘導するのみならず、悪性腫瘍の予防及び治療効果があるので抗癌免疫治療剤として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球または未分化骨髄性細胞(Immature myeloid cells;IMC)を含む免疫治療及び予防用ワクチンに関するもので、より詳細には、ナチュラルキラーT細胞リガンドでもあり糖脂質の一種であるα−ガラクトシルセラミド(alpha−galactosylceramide;以下、αGalCer)が積載された単核球またはIMCを含む免疫治療及び予防用ワクチンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、医学の発達によって癌患者の生存率が増加しているが、変化する環境的要因と平均寿命の増加などによって癌発生の頻度も増加している。現在まで癌を治療するため多くの研究が進行されていて、癌に対する新しい薬剤と治療法が開発されていて癌患者等の治療効果が非常に向上してきている。しかし、悪性腫瘍の場合、微細手術療法と放射線治療の発達、化学療法のような新しい治療剤の開発によってもその治療効果が制限的であり、非特異的抗癌効果による副作用及び癌の再発などの限界点がある。これを補うために、現在活発に使用されたり開発されたりしている治療法が免疫療法である。腫瘍特異的毒性(tumor−specific toxicity)を誘導することによって、全身毒性による副作用を減らし、癌及び癌抗原に対する能動的な記憶反応を確立することによって、既存の癌治療法を補うことができる特徴があるからである。
【0003】
抗原提示細胞を用いた抗癌免疫細胞ワクチンは、効果的にCD8+T細胞とCD4+T細胞を活性化することができるので、優秀な抗癌効果を示す。現在、抗原提示細胞ワクチンで最も多く使用される細胞は、樹状細胞(Dendritic cells)で抗原を捕食してエフェクタ−細胞に強い共刺激(costimulatory signal)とともに伝達してくれるので効率的にエフェクタ−細胞を活性化して強い免疫反応を誘導する。実際の臨床的に樹状細胞を用いた細胞治療剤は、まず、患者の骨髄や末梢血液から樹状細胞あるいはその前駆体である単核球を分離して大量増殖及び分化させた後、抗原を加えて活性化させて再び患者に注入する方法を使用する。体内に注入された樹状細胞は、特異的な抗原情報をT細胞に伝達してそれを活性化させて抗原特異的な免疫反応を効果的に誘導するようになる。このような長所があるにもかかわらず血液とリンパ組織から直接的に得ることができる樹状細胞の数が極めて少数で分離するのが難しく、単核球から分化させる場合、数日間体外で培養しなければならないので、樹状細胞を用いた細胞免疫治療剤開発の障害になっている。したがって、これを改善するか代替するのに値する他の細胞免疫治療剤の開発が切望されている。
【0004】
不変性ナチュラルキラーT細胞(iNKT cell)が多くの免疫反応及び免疫病理現象を総括する中枢的な役割を担当するということが、最近の研究を通じてよく知られている。一方、リガンドで活性化になった不変性ナチュラルキラーT細胞は、樹状細胞だけではなくT、B及びナチュラルキラー細胞の活性化を誘導することができ、不変性ナチュラルキラーT細胞のリガンドであるα−ガラクトシルセラミド(以下、αGalCer)を注入するとナチュラルキラー細胞とT細胞の活性化を通じて抗癌免疫を起こすことが報告された(Moodycliffe AM等,Nat Immunol,2000年,第1巻,p.521−525)。前記ナチュラルキラーT細胞は、自家抗原及び外来抗原に対する反応を管理して、自家免疫または免疫反応を誘導するかどうかを決定すると報告されたことがある(Kronenberg M,Annu Rev Immunol,2005年,第23巻,p.877−900;Park SH & Bendelac A,Nature,2000年,第406巻,p.788−792)。
【0005】
α−ガラクトシルセラミド(αGalCer)は、元々海綿動物から抽出された糖脂質で、Vα14+T細胞受容体(TCR)を有している不変性ナチュラルキラーT細胞のリガンドで、抗原提示細胞(antigen presenting cell,APC)表面に存在するCD1d分子によってNKT細胞に提示されることが知られている(Kawano等,Science,1997年,第278巻,p.1626)。ナチュラルキラーT細胞リガンドによってナチュラルキラーT細胞が活性化になると、多量のIFN−γ及びIL−4を含む多くのサイトカインを生産し、これは特定疾病または感染に対する免疫反応を調節することができる(Chen等,J Immunol,1997年,第159巻,p.2240;Wilson等,Proc Natl Acad Sci USA,2003年,第100巻,p.10913)。
【0006】
一般人の場合とは異なり癌患者の場合、血液及び骨髄、そして癌組織において非活性化大食細胞、顆粒球、非活性化樹状細胞、単核球及び分化初期の骨髄性細胞を含む未分化骨髄性細胞(IMC)が増殖して存在することが報告されている。そればかりでなく、癌細胞が移植された動物の血液、骨髄、脾臓、癌組織においても、IMCが有意に増加している。マウスモデルにおいてIMCは、細胞表面に特徴的にCD11bとGr−1を一緒に発現している。健康なマウスの血液と脾臓からCD11b/Gr−1細胞が4%以内の少数存在し、これはCD11b/Gr−1細胞は大食細胞、樹状細胞の前駆体なので適切なサイトカインが存在する環境では、成熟した大食細胞、顆粒球、樹状細胞に分化することができるからである。しかし、癌患者の場合、癌細胞が分泌する要素(IL−6、IL−10、VEGF、GM−CSFなど)などによって、CD11b/Gr−1細胞がそれ以上分化することができずに蓄積されている。IMCは、癌患者の血液に多く蓄積されているので多量の細胞を得ることが容易で、樹状細胞ワクチンの製作などの目的に単核球を分離する場合、かなり多数のIMCが混入することを防ぐのは大変な状況である。一般的に癌患者または癌移植動物に増殖して存在するIMCは、免疫抑制機能をすると知られているが、適切な刺激を通じて免疫原性を増加させられ得ることが期待される。
【0007】
最近、ナチュラルキラーT細胞活性化による免疫増強効果が樹状細胞を通じて現れるという証拠が提示され(Kronenberg M等,Annu Rev Immunol,2005年,第 23,p.877−900;Park SH等,Nature,2000年,第406巻,p.788−792)、このような結果を根拠にして、本発明者等によって最初にナチュラルキラーT細胞リガンドをB細胞に提示してナチュラルキラーT細胞を活性化し、その助けによってB細胞の免疫原性を増加させることで、B細胞に積載した抗原に対する細胞毒性T細胞反応を誘導した。これは、樹状細胞ワクチンと類似の程度の効果を示すことを確認した(Chung Y等,Cancer Res,2006年,第66(13)巻,p.6843−6850)。しかし、このようなナチュラルキラーT細胞活性化による免疫増強効果が、B細胞以外に樹状細胞の前駆体である単核球または未分化骨髄細胞でも示されると報告した例は全くないのが実情である。そこで、本発明者等は、単核球とIMCが細胞治療ワクチンの製造に効果的に使用することができかどうか確認するために、αGalCerが積載された単核球またはIMCに抗原ペプチドを積載するか抗原を発現するアデノウイルス(adenovirus)で形質導入して体内に投与する場合、抗原特異的な免疫反応を誘導することができ、有意な抗癌効果を示すことを確認して本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Moodycliffe AM等,Nat Immunol,2000年,第1巻,p.521−525
【非特許文献2】Kronenberg M,Annu Rev Immunol,2005年,第23巻,p.877−900
【非特許文献3】Park SH & Bendelac A,Nature,2000年,第406巻,p.788−792
【非特許文献4】Kawano等,Science,1997年,第278巻,p.1626
【非特許文献5】Chen等,J Immunol,1997年,第159巻,p.2240
【非特許文献6】Wilson等,Proc Natl Acad Sci USA,2003年,第100巻,p.10913
【非特許文献7】Chung Y等,Cancer Res,2006年,第66(13)巻,p.6843−6850
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ナチュラルキラーT細胞リガンド、特にα−ガラクトシルセラミドと抗原を積載した単核球または未分化骨髄性細胞(IMC)を用いて、ナチュラルキラーT細胞を活性化して抗原特異的な免疫反応を誘導することができる免疫治療及び予防用ワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球または未分化骨髄性細胞(IMC)を含む免疫治療及び予防用ワクチンを提供する。
【0011】
また、本発明は、α−ガラクトシルセラミド(αGalCer)が積載された単核球またはIMCを含むナチュラルキラーT細胞活性化剤を提供する。
【0012】
また、本発明は、癌抗原を発現する単核球またはIMCを含む細胞毒性反応誘導剤を提供する。
【0013】
同時に、本発明は、ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球または未分化骨髄性細胞を含む免疫治療及び予防用ワクチンを個体に投与する工程を含む前記抗原の発現を指標とする疾患の免疫治療及び予防方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物である単核球またはIMCが樹状細胞に比べて得易く、ナチュラルキラーT細胞のリガンド、特に、α−ガラクトシルセラミド(αGalCer)と抗原を積載した単核球またはIMCの免疫化は、有意水準の細胞毒性Tリンパ球反応を誘導するだけでなく、悪性腫瘍の予防及び治療効果があるので、前記細胞を含むワクチンは、癌予防及び治療剤として用いることができる。併せて、本発明のワクチンは、CD4+T細胞がない場合にも免疫反応を誘導するので、CD4+T細胞の数が著しく減少して免疫欠乏が現れるHIV患者を免疫化するのにも用いることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載された単核球ワクチンの抗癌効果を示した図である。
【図2】αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入した単核球ワクチンの抗癌効果を示した図である。
【図3】αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載されたIMCワクチンの抗癌効果を示した図である。
【図4】αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入したIMCワクチンの抗癌効果を示した図である。
【図5】IMCワクチンによる抗癌効果を示す免疫細胞を確認した結果を示した図:a:NK細胞除去、及びb:CD4またはCD8細胞除去。
【図6】αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載された単核球ワクチンによる抗原ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性を示した図である。
【図7】αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載された単核球ワクチンの用量別抗原ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性を示した図である。
【図8】αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入した単核球ワクチンによる抗原特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性を示した図である。
【図9】αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載されたIMCワクチンの用量別抗原ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性を示した図である。
【図10】αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載されたIMCワクチンによる抗原ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性を示した図である。
【図11】αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入したIMCワクチンの用量別抗原ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性を示した図である。
【図12】αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入した単核球ワクチンによって誘導される抗原特異的な抗体反応を示した図である。
【図13】αGalCerとOT−1抗原ペプチドが一緒に積載されたIMCワクチンの抗原ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0017】
すでに、α−ガラクトシルセラミド(αGalCer)が積載された樹状細胞(DC)が不変性ナチュラルキラーT(iNKT)細胞を活性化するということは、公知された事実なので(van der Vliet HJ等,J Immunol Methods 1,2001年,第247(1−2)巻,p.61−72)、本発明者等は、α−ガラクトシルセラミドが積載された単核球またはIMCが前記の樹状細胞と類似の効果を示すのかどうかを確認した。
【0018】
前記単核球は、樹状細胞(DC)または大食細胞に分化することができる骨髄由来の未分化前駆体細胞である。本発明者等は、マウスからCD11bを発現する単核球細胞を分離して、αGalCer及び抗原ペプチドを積載した単核球ワクチンを製造し、前記ワクチンの抗癌効果を細胞毒性Tリンパ球抗原決定基を含む癌抗原であるHer−2/neuを発現する癌細胞HER−2/CT26(Penichet ML等,Lab Anim Sci,1999年,第49巻,p.179−88)を用いて確認した結果、有意な抗癌効果を示すことを確認した(図1参照)。また、前記ワクチンがペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるのかどうかを調べるために、生体内細胞毒性試験(in vivo CTL assay)を実施した結果、高い水準で標的を破壊する能力を有した細胞毒性反応を示し(図6参照)、1×10個の細胞だけでも効果的な細胞毒性反応を誘導させることができた(図7参照)。
【0019】
しかし、抗原ペプチドを積載した細胞ワクチンは、臨床的に用いる場合、個人の主要組織適合性複合体(major histocompatibility complex,MHC)のハプロタイプに制限的に使用されるので全ての人に普遍的に使用することはできず、単一抗原決定基(epitope)のみを提示する短所がある。これに比べて、前記抗原を発現することができるウイルスを用いる場合、全体抗原を導入することができて特定主要組織適合性複合体のハプロタイプに限られないですべての人に適用可能であり、細胞性免疫反応だけではなく体液性免疫反応も誘導することができるという長所を有する。それで、本発明者等は、抗原を発現するアデノウイルスで形質導入してαGalCerが積載された単核球ワクチンを製造してその抗癌効果を確認した結果、前記単核球ワクチンを投与した場合、癌を投与したマウスの生存期間が顕著に延長されて実際に癌細胞に対して優れた抗癌効果を示すことが分かった(図2参照)。また、前記ワクチンがペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるのかどうかを調べるために生体内細胞毒性試験を実施した結果、2×10個の細胞だけでも効果的な細胞毒性反応を誘導させることができた(図8参照)。この場合、抗原ペプチドが積載された単核球ワクチンと比べて細胞毒性反応がさらに低く測定されたが、実際の抗癌効果の面では、抗原ペプチドが積載された単核球ワクチンに比べて生存期間を延ばす能力がさらに優れていたので、アデノウイルスワクチンが細胞毒性T細胞反応以外の免疫反応を追加で生成させ得るということを類推してみることができた。そこで、抗原を発現するアデノウイルスで形質導入した単核球ワクチンが細胞性免疫反応だけでなく体液性免疫反応を誘導することができるかどうかを調べるため、前記単核球ワクチンの投与がHer−2/neu特異的な抗体を生成させることができるかどうか詳しく調べた結果、2×10個の細胞を投与した群の抗体生成が最も高く示され、1×10または5×10個の細胞を投与した群でも有意に抗体生成が観察された(図12参照)。しかし、2.5×10個の細胞以下で投与した群では抗体生成が観察されなかった。また、前記抗原ペプチドをオブアルブミン抗原に代替し同一な方法でIMCワクチンを製造して、C57BL/6マウスを対象に細胞毒性を確認した結果、オブアルブミン抗原に対しても効果的な細胞毒性反応を示し得ることを確認し、これを通じて、IMCワクチンによる効果的な免疫反応が特定抗原に限ったものではなく、多様な抗原に対しても適用され得ることが分かった(図13参照)。
【0020】
マウスに移植癌または慢性炎症が生成される場合、癌と脾臓などで未分化骨髄性細胞(IMC)が顕著に増加して、また実際の癌患者の末梢血液でもIMCの増加が観察される。このようなIMCは、多様な分化工程の骨髄性細胞の前駆体として、顆粒球、単核球、大食細胞、樹状細胞などを含み、アルギナーゼI、酸化窒素、活性酸素種、TGF−βなどの作用を通じて癌抗原特異的あるいは非特異的なTリンパ球機能を抑制することによって、癌の増殖をより悪化させることがよく知られている。また、癌細胞を移植したマウスで増殖して存在するIMCは、表面にGr−1とCD11bを同時に発現することが知られていて、単核球と類似の性格の細胞を高い割合で含む。それで、本発明者等は、単核球ワクチンと類似の方法でIMCを使用して細胞ワクチンに製作した時、抗癌効果を示すことができるかどうか確認してみた。本発明者等は、HER−2/CT26癌細胞を移植したマウスの脾臓から脾臓細胞を得て、B細胞及び樹状細胞を除去した後、αGalCerを積載した後、CD11bを発現する細胞を分離して抗原ペプチドを積載したIMCワクチンを製造した。前記方法で製作されたワクチンの場合、培養する過程でナチュラルキラーT細胞がIMCとともに存在するので、ナチュラルキラーT細胞がαGalCerを積載したIMC表面のCD1dを認識して、培養液中で活性化させてさらに効果的なワクチンとして作用することができるようにするという長所を有するようになる。前記ワクチンの抗癌効果をHER−2/CT26を用いて確認した結果、有意な抗癌効果を示すことを確認した(図3参照)。また、前記ワクチンがペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるかどうか調べるために、生体内細胞毒性試験を実施した結果、顕著に高い水準の細胞毒性反応を示した(図9参照)。これは、IMCワクチンが効果的に抗原特異的な細胞毒性反応を誘導させて癌細胞を破壊することによって、有意な抗癌効果を示すことができたことを意味する。
【0021】
また、抗原を発現するアデノウイルスで形質導入してαGalCerが積載されたIMCワクチンを製造してその抗癌効果を確認した結果、前記IMCワクチンを投与した場合、生存期間が顕著に延長されて実際の癌細胞に対して優れた抗癌効果を示すことが分かった(図4参照)。前記IMCワクチンは、NK細胞(図5a参照)またはCD8+細胞(図5b参照)が除去された動物群では、前記IMCワクチンの抗癌治療効果が有意に低くなり、前記二つの細胞がIMCワクチンの抗癌治療に重要な役割をする免疫細胞であることが分かった。反対に、CD4+細胞が除去された動物群では、前記IMCワクチンの抗癌治療効果が、除去されない群と特別に差がないことから(図5b参照)、前記IMCワクチンが、CD4+T細胞がない場合にも免疫反応を誘導するので、CD4+T細胞数が著しく減少して免疫欠乏が示されるHIV患者を免疫化するのにも使用できることを予想することができた。また、前記ワクチンがペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるのかどうか調べるために、生体内細胞毒性試験を実施した結果、高い水準の細胞毒性反応を示した(図10参照)。ペプチドで積載されたIMCワクチンを用いた結果と比較すると、その数値は高くはないが、ペプチドワクチンの場合、細胞毒性細胞の抗原決定基ペプチドのみを積載した一方、全体抗原を有するウイルスで形質導入した場合は抗原決定基のみを特異的に発現させたのではなく、形質導入効率が完璧ではないので相対的に特定抗原ペプチド特異的な細胞毒性反応が低く測定され得る。しかし、抗原ペプチド以外の免疫反応を同時に誘導することができるという長所があり、前記ワクチン8×10個の細胞で免疫化した場合において90%に近い効果的な細胞毒性反応の示す結果は、ウイルスで形質導入したIMCワクチンで効果的な細胞毒性反応を誘導することができることを示した(図11参照)。
【0022】
本発明は、ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球またはIMCを含む免疫治療及び予防用ワクチンを提供する。
【0023】
前記ナチュラルキラーT細胞のリガンドは、スピンゴモナス属(Sphingomonas spp.)起源のα−ガラクトロノシルセラミド(alpha−galacturonosylceramide)とα−グルクロノシルセラミド(alpha−glucuronosylceramide,Mattner,J.等,Nature,2005年,第434巻,p.525;Kinjo,Y.等,Nature,2005年,第434巻,p.520)。GSL−4(Eur J Immunol,2005年,第35巻,p.1692)、M.ツバクロシス(M.tuberculosis)由来のホスファチジリノシトルテトラマンノサイド(phosphatidylinositoltetramannoside,Fischer,K.等,PNAS,2004年,第101巻,p.10685)。自家抗原であるイソグロボトリヘキソシルセラミド(isoglobotrihexosylceramide,Zhou,D.等,Science,2004年,第306巻,p.1786)とガングリオサイドGD3(ganglioside GD3,Wu,D.Y.等,J.Exp.Med.,2003年,第198巻,p.173)、ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine,J.Immunol.,2005年,第175巻,p.977)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)とホスファチジルイノシトール(phosphatidylinositol,Immunity,第12巻,p.211)、スルファチド(sulfatide,J Exp Med,2004年,第199巻,p.947)、β−ガラクトシルセラミド(beta−galactosylceramide,betαGalCer,Ortaldo JR等,J.Immunol.,第172巻,p.943)、Leishmania表面糖結合リポホスホグリカン(lipophosphoglycan)とグリコイノシトールホスホリピド(glycoinositol phospholipids,J.Exp.Med.,2004年,第200巻,p.895)、α−ガラクトシルセラミドの類似体であるβ−アノマガラクトシルセラミド等(beta−anomeric GalCer)とα−アノマガラクトシルセラミド等(alpha−anomeric GalCer;J.Immunol.,2004年,第173巻,p.3693)、α−ガラクトシルセラミドの変異体(Nature,2001年,第413巻,p.531;Angew Chem Int Ed Engl,2004年,第43巻,p.3818;J Am Chem Soc,2004年,第126巻,p.13602;PNAS,2004年,第102巻,p.1351;PNAS,2005年,第12巻,p.3383;J Am Chem Soc,2006年,第128巻,p.9022;J Immunol Methods,2006年,第312巻,p.34;J Med Chem,2007年,第50巻,p.585;PNAS,2007年,第104巻,p.10299)及びバクテリア脂質抗原、例えばノカルデアファルシニカ(Nocardia falcinica)由来のグルコースモノマイコレート(glucose monomycolate,Moody,D.B.等,J.Exp.Med.,2000年,第192巻,p.965)を含む。
【0024】
前記抗原は、ワクチンに使用されて免疫反応を起こすことができる抗原はすべて使用可能であり、病原菌、ウイルス及び寄生虫を含む病原体由来の抗原または癌抗原を含み、前記抗原の全長または断片であり得る。前記病原菌由来の抗原は、百日咳菌抗原(pertussis toxin,filamentous haemagglutinin,pertactin)、破傷風菌抗原、ジフテリア菌抗原(diphtheria toxoid)、ヘリコバクター・ピロリ抗原(capsula polysaccharides of serogrup A,B,C,Y及びW−135)、肺炎菌抗原(Streptococcus pnemoniae type3 capsular polysaccharide)、結核菌抗原、コレラ抗原(cholera toxin B subunit)、ブドウ状球菌抗原(staphylococcal enterotoxin B)、赤痢菌抗原(shigella polysaccharides)、ボレリア(Borrelia sp.)抗原、カンジダ(Candida albicans)抗原及びプラスモジウム抗原を含み、前記ウイルス由来の抗原は、インフルエンザウイルス抗原(haemagglutinin及びneuraminidase抗原)、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原(glycoprotein)、小水泡性口内炎ウイルス抗原(vesicular stomatitis virus glycoprotein)、サイトメガロウイルス(CMV)抗原、肝炎(hepatitis)ウイルス抗原(hepatitis A(HAV)、B(HBV)、C(HCV)、D(HDV)及びG(HGV)抗原)(core antigen and surface antigen)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)抗原、ヘルペスシンプレックスウイルス抗原、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)抗原(GP−120、GP−160、p18、Tat、Gag、Pol、Env)及びその組み合わせを含む。同時に、癌抗原は、Her−2/neuによって発現される乳癌タンパク質、プロテイナーゼ3、WT−1、ムリノグロブリン(MUC−1)、PAP、PSA、PSMA、G250、メラノ−マ抗原遺伝子(MAGE)、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−1(TRP−1)、TRP−2、gp100、MART−1、MCIR、Ig Idiotype、CDK4、カスパーゼ−8、β−カテニン、CIA、BCR/ABL、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV E6/E7)、EBV LMP2a、HCV、HHV−8、5T4、癌胎児性抗原(CEA)、p53及びα−フェトプロテインからなる群から選択されることを特徴とする。
【0025】
また、前記抗原は、ペプチド、脂質多糖類、多糖類、糖蛋白質またはポリヌクレオチドの形態を有することで単核球またはIMCに直接積載することができ、組換えウイルスによって単核球またはIMCに形質導入して発現させて積載することができる。ペプチドを積載した細胞ワクチンに比べて、ウイルスを媒介にして全体抗原を導入した細胞ワクチンは、主要組織適合性複合体のハプロタイプに限られないのですべての人に適用可能であり、多くの抗原決定基に特異的な免疫反応を誘導することができる。特に、体液性免疫反応と細胞性免疫反応を同時に誘導することができるという長所がある。
【0026】
前記抗原発現のために単核球またはIMCに導入するウイルスは、アデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス(Pox virus)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)等が可能であるが、これに限定されない。ウイルスを使用した方法の外にも、抗原遺伝子伝達で適用可能なものは、1)DNAをリポソーム(liposome)に結合させて形質導入して酵素分解からDNAを保護したりエンドソーム(endosome)で吸収するようにする方法、2)DNAにタンパク質で構成された分子コンジュゲートや合成リガンドを結合して細胞でDNAを伝達効率を高める方法[例:アシアログリコプロテイン、トランスフェリン(transferrin)、重合IgA(polymeric IgA)]、3)PTD(Protein transduction domain)を使用した新しいDNA伝達システムで細胞へDNAの伝達効率を高めることで、抗原遺伝子を伝達する方法[例:Mph−1]、4)前記方法の外にも、ペプチドを使用したり抗原タンパク質を単核球またはIMCに適用することで、単核球またはIMCが抗原を提示するようにできる。
【0027】
本発明のワクチンは、ナチュラルキラーT細胞のリガンドと単核球またはIMCに追加で同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含むことができる。前記ワクチンは、投与のために前記記載した有効成分以外に追加で薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含んで製造することができる。薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エチルアルコール及びこれら成分の中で1成分以上を混合して使用することができ、必要によって抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤成分を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形などに製剤化することができる。さらに、当分野の適正な方法またはRemington’s Pharmaceutical Science(最近版)、Mack Publishing Company,Easton PAに開示されている方法を用いて各疾患によって、または成分によって好ましく製剤化することができる。
【0028】
本発明のワクチンは、非経口で投与することができ、非経口投与は、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射または胸部内注射注入方式による。非経口投与剤形に製剤化するためには、本発明のナチュラルキラーT細胞のリガンドを積載した単核球またはIMC、ナチュラルキラーT細胞のリガンドとペプチドを積載した単核球またはIMCまたは癌抗原を発現するウイルスで感染された単核球またはIMCは、安定剤または緩衝剤とともに混合して溶液または懸濁液に製造してそれをアンプルまたはバイアルの単位投与型で製剤化する。
【0029】
本発明のワクチンは、投与経路によって多様な形態に製造することができる。例えば、本発明のワクチンは、注射用途に相応しい滅菌水溶液または分散液の形態に製造することができ、または凍結乾燥技術を用いてフリーズドライされた形態に製造することができる。フリーズドライされたワクチンは、典型的に約4℃に維持され、補助剤を含むか含まない安定化溶液、例えば、食塩水または/及びHEPESによって復元することができる。
【0030】
本発明の方法を実施するにおいて、投与されるワクチン量に影響を及ぼす因子としては、これに限定されるのではないが、投与方式、投与頻度、治療が進行中の特定疾病、疾病の深刻性、疾病の病歴、個体が他の治療剤とともに協力治療法が進行中であるかどうか、及び治療が進行中の個体の年齢、身長、体重、健康、及び身体条件を含む。一般的に治療が進行中の患者の体重が増加するほど、この製剤をより多く投薬することが好ましい。
【0031】
ワクチンは、患者において免疫反応を刺激するのに効果的な量で投与することができる。例えば、ワクチンは、ヒトに1回ないし数回に分けて投与することができ、投与量は細胞数が1×10個/kg〜1×10個/kg、好ましくは1×10個/kg〜1×10個/kgである。α−ガラクトシルセラミドを積載した単核球またはIMCワクチンを製作する場合、単核球またはIMC1×10〜1×10個/ml当りα−ガラクトシルセラミド1〜2μg/mlが入った培地を使用して培養する。α−ガラクトシルセラミドとペプチドを積載した単核球またはIMCワクチンを製作する場合、単核球またはIMC細胞1×10〜1×10個/ml当りα−ガラクトシルセラミド1〜2μg/mlが入った培地を使用して、ペプチドは単核球またはIMC細胞1×10〜1×10個/mlを1〜10μg/mlペプチドが含まれた培地で培養して細胞に積載させる。
【0032】
α−ガラクトシルセラミドは、げっ歯類及びサルにおいて毒性を誘導しないとみられている(Nakata等,Cancer Res,1998年,第58巻,p.1202−1207)。2200μg/kgのαGalCerが注入されたマウスでも副作用は報告されていない(Giaccone等,Clin Cancer Res,2002年,第8巻,p.3702)。進行中の臨床試験でも、αGalCerの全身投与によって軽微な頭痛のような副作用が一部報告されたが(Mie Nieda等,Blood,第103巻,p.383−389,Giaccone等,Clin Cancer Res,2002年,第8巻,p.3702)パラセタモール(paracetamol)投与によって予防することができ、これら対象においても微弱な全身的副作用が必ず現れるのではない(Giaccone等,Clin Cancer Res,2002年,第8巻,p.3702)。
【0033】
また、本発明は、α−ガラクトシルセラミド(αGalCer)が積載された単核球またはIMCを媒介とするナチュラルキラーT細胞活性化剤を提供する。
【0034】
前記のように、本発明のαGalCerが積載された単核球またはIMCは、生体内で不変性ナチュラルキラーT細胞を活性化して結果的に抗癌免疫を誘導した。したがって、本発明のαGalCerが積載された単核球またはIMCは、既存の樹状細胞と同様にナチュラルキラーT細胞活性化剤として用いることができる。
【0035】
また、本発明は、癌抗原を発現する単核球またはIMCを含む細胞毒性反応誘導剤を提供する。
【0036】
アデノウイルスで形質導入した単核球またはIMCワクチンは、細胞性免疫反応を誘導するためにペプチドを積載した単核球またはIMCワクチンとは異なり、細胞性免疫反応及び体液性免疫反応を同時に誘導することができるという長所がある(図8、10及び図12参照)。
【0037】
同時に、ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球または未分化骨髄性細胞を含む免疫治療及び予防用ワクチンを個体に投与する工程を含む、前記抗原の発現を指標とする疾患の免疫治療及び予防方法を提供する。
【0038】
本発明が適用可能な個体は脊椎動物で、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトを除いた哺乳動物であり、それより好ましくはネズミ、ウサギ、ギニアピッグ、ハムスター、犬、猫のような実験動物で、チンパンジー、ゴリラのような類人猿類動物であることが最も好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例及び製剤例によって詳しく説明する。
但し、下記の実施例及び製剤例は本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記の実施例及び製剤例に限定されるのではない。
【0040】
<実施例1>抗原とα−ガラクトシルセラミド(αGalCer)が一緒に積載された単核球ワクチンの抗癌効果
単核球は、樹状細胞(DC)または大食細胞に分化することができる骨髄由来の未分化前駆体細胞である。本発明では、樹状細胞または大食細胞に分化する以前状態の単核球がナチュラルキラーT細胞によって抗原特異的な抗癌効果を示すことができるかどうか確認した。
【0041】
<1−1>αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載された単核球ワクチンの抗癌効果
BALB/cマウスから単核球を分離した。
まず、BALB/cマウス(オリエント、韓国)の末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear cell;PBMC)と脾臓を摘出した後、均質化し、Ficoll(Sigma,米国)密度勾配を遂行して下に沈澱する顆粒球及び赤血球(RBC)を除去した。続いて、抗−B220マイクロビード(Miltenyibiotec,ドイツ)及び抗−CD11cマイクロビード(Miltenyibiotec,ドイツ)で表面にB220またはCD11cを発現するB細胞または樹状細胞を除去した後、再び、抗−CD11bマイクロビード(Miltenyibiotec,ドイツ)を使用してCD11b+細胞を得た。
【0042】
前記方法で分離精製した単核球をα−ガラクトシルセラミド(1.5μg/ml)または溶媒(PBS中 0.5%ツイーン)とともに二酸化炭素培養器で14時間培養した後、細胞毒性Tリンパ球の抗原決定基(epitope)ペプチドであるHer−2/neu63−71(エニゼン、韓国)ペプチド2.5μg/mlを1時間細胞培養液に入れてインキュベーションして積載し、積載しないペプチドを洗い流して単核球ワクチンを製作した。
【0043】
最後に、前記αGalCer及び/または抗原ペプチドが積載された単核球ワクチンの抗癌効果を、特性がよく解明されていて細胞毒性Tリンパ球抗原決定基を含む癌抗原であるHer−2/neuを発現する癌細胞であるHER−2/CT26(Penichet ML等,Lab Anim Sci,1999年,第49巻,p.179−88)を用いて確認した。
【0044】
まず、2×10個のHER−2/CT26細胞をBALB/cマウスに静脈注射で移植して一日後に、単核球/pep(抗原ペプチドのみ積載した群)、単核球/αGC(αGalCerのみ積載した群)及び単核球/pep/αGC(抗原ペプチド及びαGalCerを一緒に積載した群)ワクチンをそれぞれ投与した後、生存期間を比較した。
【0045】
その結果、単核球/pepを投与した場合には癌細胞のみ静脈注射したもの(対照群)と類似の生存を示し、単核球/αGCを投与した場合には生存期間を少し延長させた。しかし、単核球/pep/αGCワクチンを投与した場合、生存期間が有意に延長されて実際に癌細胞に対して抗癌効果を示すことが分かった(図1)。
【0046】
<1−2>αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入した単核球ワクチンの抗癌効果
実施例1−1の方法で分離精製した単核球をHer−2/neu抗原の細胞外領域及び細胞膜領域(Her−2/neu extracellular domain + transmembrane domain)を発現する遺伝子を有したアデノウイルス(以下、AdHM;(株)バイロメド、大韓民国)を用いて血清を添加しない培地で100MOI(multiplicity of infection)で90分間二酸化炭素培養器で感染させた後、血清を補ってαGalCer(1.5μg/ml)または溶媒(PBS中0.5%ツイーン)を加えて14時間さらに培養してワクチンを製作した。
【0047】
最後に、前記αGalCerの積載及び/または抗原を発現するアデノウイルスで形質導入した単核球ワクチンの抗癌効果を実施例1−1と同一な方法でHER−2/CT26を用いて確認した。
【0048】
まず、2×10個のHER−2/CT26細胞をBALB/cマウスに静脈注射して移植し、一日後に単核球/AdHM(抗原発現するアデノウイルスで形質導入した群)、単核球/αGC(αGalCerのみ積載した群)及び単核球/AdHM/αGC(抗原発現するアデノウイルスで形質導入してαGalCerを一緒に積載した群)ワクチンをそれぞれ投与した後、生存期間を比較した。
【0049】
その結果、単核球/AdHMを投与した場合には癌細胞のみ静脈注射したもの(対照群)と類似の生存を示し、単核球/αGCを投与した場合には生存期間を少し延長させた。しかし、単核球/AdHM/αGCワクチンを投与した場合、生存期間が顕著に延長されて実際に癌細胞に対して優れた抗癌効果を示すことが分かった(図2)。
【0050】
<実施例2>抗原とαGalCerが一緒に積載された未分化骨髄性細胞(Immature Myeloid Cells;以下、IMC)ワクチンの抗癌効果
【0051】
<2−1>αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載されたIMCワクチンの抗癌効果
BALB/cマウスからIMCを分離した。
まず、BALB/cマウスにHER−2/CT26細胞を移植して約4週経過して癌細胞の体積が1500mm以上に成長した時、マウスから脾臓を摘出した後、均質化した。そこに抗−B220マイクロビード(Miltenyibiotec,ドイツ)及び抗−CD11cマイクロビード(Miltenyibiotec,ドイツ)で表面にB220またはCD11cを発現するB細胞または樹状細胞を除去した。
【0052】
前記方法で分離精製したIMCをαGalCer(1.5μg/ml)、ビタミンA(ATRA,all trans−retinoic acid,20μM;Sigma,米国)、GM−CSF(granulocyte macrophage colony−stimulating factor,20ng/ml;R&D systmes,米国)または溶媒(PBS中0.5%ツイーン;Sigma,米国)と一緒に二酸化炭素培養器で14時間培養した後、これから抗−CD11bマイクロビード(Miltenyibiotec,ドイツ)を用いてCD11b+細胞を得た。以後、Her−2/neu63−71(エニゼン、韓国)ペプチド2.5μg/mlで1時間積載してIMCワクチンを製作した。
【0053】
最後に、前記αGalCerまたは抗原ペプチドが積載されたIMCワクチンの抗癌効果を癌細胞であるHER−2/CT26を用いて確認した。
【0054】
まず、2×10個のHER−2/CT26細胞をBALB/cマウスに静脈注射で移植して一日後に、IMC/pep(抗原ペプチドのみ積載した群)、IMC/pep/ATRA(抗原ペプチド及びビタミンAを一緒に積載した群)、IMC/pep/GM−CSF(抗原ペプチド及びGM−CSFを一緒に積載した群)及びIMC/pep/αGC(抗原ペプチド及びαGalCerを一緒に積載した群)ワクチンをそれぞれ投与した後、生存期間を比較した。
【0055】
その結果、IMC/pep及びIMC/pep/ATRAを投与した場合には生存期間を全く延長させることができず、IMC/pep/GM−CSFを投与した場合はある程度生存期間を延長させた。しかし、IMC/pep/αGCワクチンを投与した場合、有意に生存期間が延長され、実際の癌細胞に対して抗癌効果を示すことが分かった(図3)。
【0056】
<2−2>αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入したIMCワクチンの抗癌効果
αGalCerを積載してアデノウイルスで形質導入したIMCワクチンを得た。
【0057】
実施例<2−1>の方法で分離精製したIMCを血清を添加しない培地で100MOIのAdHMで60分間二酸化炭素培養器で感染させた後、血清を補って5時間さらに培養してIMCワクチンを製作した。
【0058】
続いて、2×10個のHER−2/CT26細胞をBALB/cマウスに静脈注射で移植して一日後、IMC、IMC/AdHM(抗原発現するアデノウイルスで形質導入した群)、及びIMC/AdHM/αGC(抗原発現するアデノウイルスで形質導入してαGalCerを一緒に積載した群)ワクチンをそれぞれ投与した後、生存期間を比較した。
【0059】
その結果、IMC/AdHMを投与した場合には生存期間を少し延長させたが、IMC/AdHM/αGCワクチンを投与した場合に生存期間が顕著に延長され、実際の癌細胞に対して優れた抗癌効果を示すことが分かった(図4)。
【0060】
<実施例3>IMCワクチンによる抗癌効果を示す免疫細胞確認
IMCワクチンによる抗癌効果を示す免疫細胞を確認した。
まず、BALB/cマウスにHER−2/CT26癌細胞を静脈注射する一日前から4日間隔で、それぞれの免疫細胞を除去するための抗体[抗CD4除去抗体:GK1.5 hybrodoma(ATCC,米国)、抗CD8除去抗体:2.43 hybridoma(ATCC,米国)、抗NK除去抗体(Wako,米国):α−asialoGM1抗体(Wako,米国)]を腹腔注射した後、癌細胞注入一日後に実施例<2−2>と同一な方法で製作されたIMC/AdHM/αGCワクチンを静脈注射してマウスの生存期間を比較した。
【0061】
その結果、NK細胞を除去した群(IMC/AdHM/αGC/a−NK)では癌細胞のみを注入した群(対照群)と類似の生存率を示し、NK細胞がIMCワクチンの抗癌治療効果を示すのに重要な免疫細胞であることが分かった(図5a)。また、CD8+細胞を除去した群(IMC/AdHM/αGC/a−CD8)でも免疫細胞除去なしにIMCワクチンを投与した群(IMC/AdHM/αGC)に比べて生存期間が有意に減少する傾向を示し、IMC/AdHM/αGCワクチンによる抗癌効果が、CD8+T細胞によって媒介されることを確認した(図5b)。しかし、CD4+細胞を除去した群(IMC/AdHM/αGC/a−CD4)では、ワクチンのみを投与した群(IMC/AdHM/αGC)と類似か若干増加した程度の生存率を示し、CD4+細胞が抗癌効果を示すのに特別な影響を及ぼすことができなかったことを示唆した(図5b)。
【0062】
<実施例4>抗原とαGalCerが一緒に積載された単核球ワクチンによる抗原特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性化
単核球ワクチンが、ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるのかどうかを調べるために、生体内細胞毒性試験(in vivo CTL assay)を実施した。
【0063】
<4−1>αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載された単核球ワクチンによる抗原ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性化
αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載された単核球ワクチンが、ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるのかどうかを調べるために、生体内細胞毒性試験を実施した。
【0064】
具体的に、BALB/cマウスを実施例<1−1>の方法で得た単核球単独、単核球/pep、単核球/pep/αGCにそれぞれ免疫化した後、9日後に細胞毒性試験を行なった。まず、同種の免疫化されていないマウスの脾臓単一細胞を同量の二群に分けた後、一群はHer−2/neu63−71ペプチド(2.5μg/ml)を積載した後、20μMのCFSE(carboxyfluorescein.diacetate succinimidyl ester,Invitrogen,米国)で標識し(CFSEhigh)、他の群はペプチド積載なしに2.5μMのCFSEで標識して対照細胞にした(CFSElow)。前記二つの群の細胞を同量ずつ混合して免疫化したマウスに投与した後、一日後に脾臓単一細胞を摘出してCFSEhighとCFSElow細胞集団をフローサイトメーターを通じて測定した。ここで、CFSEhighの割合が低いほど細胞毒性免疫反応が高く現れたことを意味する。
【0065】
また、単核球/pep/αGCワクチンの細胞の数を5×10、1×10、2×10及び4×10に変えて免疫化した後、9日後にCFSEを用いた前記方法と同一に細胞毒性試験を行なった。
【0066】
その結果、単核球単独、単核球/pepを投与した群では、細胞毒性反応がほとんど示されず、単核球/pep/αGCを投与した群でのみ高い程度にペプチドが積載した標的を破壊する能力を有した細胞毒性反応を示した(図6)。また、単核球/pep/αGCワクチンの細胞数を異にして生体内細胞毒性試験を同一に進行した結果、1×10個の細胞だけでも効果的な細胞毒性反応を誘導させられることが分かった(図7)。
【0067】
<4−2>αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入した単核球ワクチンによる抗原特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性化
【0068】
αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入した単核球ワクチンがペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるのかどうか調べるために、生体内細胞毒性試験を実施した。
【0069】
具体的に、BALB/cマウスに実施例<1−2>の方法で得た単核球/AdHM/αGCワクチンの細胞数を2×10、1×10、5×10及び2.5×10に変えて免疫化した後、10日後に実施例<4−1>の方法で細胞毒性試験を行なった。
【0070】
その結果、2×10個の単核球ワクチンに免疫化した場合には効果的に細胞毒性反応が示されたが、1×10個以下で免疫化した場合には低い程度の細胞毒性反応が観察された(図8)。この場合、単核球/pep/αGCワクチンと比べて細胞毒性反応がさらに低く測定されたが、実際の抗癌効果の側面では単核球/pep/aGalCerワクチンに比べて生存期間を延ばす能力がさらに優れていたので、アデノウイルスワクチンが細胞毒性T細胞反応以外の免疫反応を追加で生成させ得ることが類推できる。
【0071】
<実施例5>抗原とαGalcerが一緒に積載されたIMCワクチンによる抗原特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性化
IMCワクチンが、ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるのかどうか調べるために、生体内細胞毒性試験を実施した。
【0072】
<5−1>αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載されたIMCワクチンによる抗原ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性化
αGalCerと抗原ペプチドが一緒に積載された単核球ワクチンがペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるのかどうか調べるために生体内細胞毒性試験を実施した。
【0073】
具体的に、BALB/cマウスを実施例<2−1>の方法で得たIMC/pep、IMC/pep/αGC、IMC/pep/ATRA、IMC/pep/GM−CSFにそれぞれ免疫化した後、10日後に実施例<4−1>の方法で細胞毒性試験を行なった。
【0074】
その結果、IMC/pep投与群及びIMC/pep/ATRA投与群では低い程度の細胞毒性が観察され、IMC/pep/GM−CSF投与群ではそれより少し高い程度の細胞毒性を示した。しかし、IMC/pep/αGCワクチンを投与した群では顕著に高い水準の体内細胞毒性を誘導させることを確認することができた(図9)。これは、IMC/pep/αGCワクチンが効果的に抗原特異的な細胞毒性反応を誘導させて癌細胞を破壊することにより、実施例<2−1>と同様に有意に抗癌効果を示すことができたことを意味する。
【0075】
<5−2>αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入したIMCワクチンによる抗原特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性化
αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入したIMCワクチンが、ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるのかどうか調べるために、生体内細胞毒性試験を実施した。
【0076】
具体的に、BALB/cマウスに実施例<2−2>の方法で得たIMC、IMC/AdHM、IMC/αGC、IMC/AdHM/αGCでそれぞれ免疫化した後、10日後に実施例<4−1>の方法で細胞毒性試験を行なった。
【0077】
また、IMC/AdHM/αGCワクチンの細胞の数を8×10、2×10、5×10及び1.25×10に変えて免疫化した後、10日後に実施例<4−1>の方法で細胞毒性試験を行なった。
【0078】
その結果、IMC単独、IMC/αGCを投与した群に比べてIMC/AdHMを投与した時、細胞毒性反応が有意に増加し、IMC/AdHM/αGCを投与した群でさらに増加して示された(図10)。実施例<5−1>のペプチドワクチンを用いた結果と比べると、その数値が高くはないが、ペプチドワクチンの場合は細胞毒性細胞の抗原決定基ペプチドのみを積載した一方、全体抗原を有するウイルスで形質導入した細胞ワクチンの場合は抗原決定基のみを特異的に発現させたのではなくて、形質導入効率が完璧ではないので相対的に特定抗原ペプチド特異的な細胞毒性反応が低く測定され得る。
【0079】
また、IMC/AdHM/αGCワクチンの細胞数を異にして生体内細胞毒性試験を同一に行なった結果、8×10個の細胞で免疫化した場合で90%に近い細胞毒性反応が示され、IMC/AdHM/αGCが効果的に抗原特異的な細胞毒性反応を誘導することを確認することができた(図11)。
【0080】
<実施例6>αGalCerを積載して抗原を発現するアデノウイルスで形質導入した単核球ワクチンによって誘導される抗原特異的な抗体反応
抗原を発現するアデノウイルスで形質導入した単核球ワクチンが細胞性免疫反応だけでなく体液性免疫反応を誘導することができるのかどうか調べるため、AdHMに形質導入された単核球ワクチンの投与がHer−2/neu特異的な抗体を生成させることができるのかどうか詳しく調べた。
【0081】
具体的に、実施例<1−2>の方法で得た単核球/AdHM/αGCワクチンを細胞数を変化させて、BALB/cマウスに静脈投与した。いかなる処理もしていない同種のマウス血清を対照群にした。10日後、眼窩採血でそれぞれのマウスから血液を抽出して常温で2時間放置した後、8000rpmで10分間遠心分離して血清を分離した。血清中の抗−Her−2/neu抗体の生成程度を調べるために、Her−2/neuを細胞表面に発現するマウス癌細胞であるHER−2/CT26細胞と4℃で60分間培養した。そこに、FITCで標識されたマウス抗体に結合する2次抗体を使用してHER−2/CT26細胞に結合したマウス抗体の結合程度をフローサイトメーターによって確認した。
【0082】
その結果、2×10個の細胞を投与した群の抗体生成が最も高く示され、1×10または5×10個の細胞を投与した群でも有意に抗体生成が観察された(図12)。しかし、2.5×10個の細胞以下で投与した群では抗体生成が観察されなかった。
【0083】
<実施例7>αGalCerとオブアルブミンペプチドが一緒に積載されたIMCワクチンによる抗原ペプチド特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性化
IMCワクチンの投与に先立って確認したHer−2/neu抗原以外の他の多様な抗原に対しても、特異的な細胞毒性Tリンパ球を活性化させて細胞毒性免疫反応を誘導することができるのかどうか調べるため、αGalCerと一般的にモデル抗原として広く使用されているオブアルブミンのOT−1ペプチド(H−2K−presented ovalbumin 257−264 aa peptide、配列番号1 SIINFEKL)が一緒に積載されたIMCワクチンに対して生体内細胞毒性試験を実施した。
【0084】
まず、C57BL/6マウス(オリエント、韓国)にマウス胸腺種細胞株(murine thymoma cell line)であるEL4細胞(ATCC、米国)を移植して約4週経て癌細胞の体積が1500mm以上に成長した時、マウスから脾臓を摘出した後、均質化し、抗−B220マイクロビード(Miltenyibiotec,ドイツ)で表面にB220を発現するB細胞を除去した。
【0085】
前記方法で分離精製したIMCをαGalCer(1.5μg/ml)または溶媒(PBS中0.5%ツイーン)とともに二酸化炭素培養器で14時間培養した後、それから抗−CD11bマイクロビード(Miltenyibiotec,ドイツ)を用いてCD11b+細胞を得た。以後、OT−1ペプチド2μg/mlで1時間積載してIMCワクチンを製作した。
【0086】
具体的に、C57BL/6マウスから前記方法で得たIMC/pepまたはIMC/pep/αGalCerでそれぞれ免疫化した後、10日後に細胞毒性試験を行なった。まず、同種の免疫化されていないマウスの脾臓単一細胞を同量の二群に分けた後、一群はOT−1ペプチド(2μg/ml;エニゼン、韓国)を積載した後、20μMのCFSE(carboxyfluorescein.diacetate succinimidyl ester,invitrogen,米国)で標識した(CFSEhigh)、他の群はペプチド積載なしに2.5μMのCFSEで標識して対照細胞にした(CFSElow)。前記二群の細胞を同量ずつ混合して免疫化したマウスに投与した後、一日後に脾臓単一細胞を摘出して、CFSEhighとCFSElow細胞集団をフローサイトメーターで測定した。
【0087】
その結果、図13に示されたようにIMC/pepを投与した場合には、なにも投与しないマウスと類似に細胞毒性反応をほとんど誘導させることができなかった一方、IMC/pep/αGalCerで免疫化した場合には、ほとんど100%に近い高水準の細胞毒性反応を誘導させることを確認した。すなわち、IMC/pep/αGalCerの投与がIMCに抗原ペプチドのみを積載したもの(IMC/pep)に比べて、Her−2/neu抗原だけではなく異種の抗原であるオブアルブミン抗原に対しても効果的な細胞毒性反応を示すことができることを確認し、これを通じて、IMCワクチンによる効果的な免疫反応が特定抗原に限ったものではなく、多様な抗原に対しても適用され得ることが分かった。
【0088】
<製剤例1>単核球/AdHM/αGCワクチンを有効成分として含む注射液剤の製造方法
本発明の抗癌用ワクチンの注射液剤は、下記の方法で製造した。
α−ガラクトシルセラミド1〜2μg/ml、単核球/AdHM/αGCワクチン5×10個/ml、ペプチド1〜2μg/ml、5’−クロロ−3,2’−ジヒドロカルコンまたは5’−クロロ−2,3’−ジヒドロカルコン塩酸塩1g、塩化ナトリウム0.6g及びアスコルビンサン0.1gを蒸留水に溶解させて100mlを作った。前記溶液を瓶に入れて20℃で30分間加熱して滅菌させた。
【0089】
<製剤例2>IMC/AdHM/αGCワクチンを有効成分として含む注射液剤の製造方法
本発明の抗癌用ワクチンの注射液剤は、下記の方法で製造した。
α−ガラクトシルセラミド1〜2μg/ml、IMC/AdHM/αGCワクチン8×10個/ml、ペプチド1〜2μg/ml、5’−クロロ−3,2’−ジヒドロカルコンまたは5’−クロロ−2,3’−ジヒドロカルコン塩酸塩1g、塩化ナトリウム0.6g及びアスコルビンサン0.1gを蒸留水に溶解させて100mlを作った。前記溶液を瓶に入れて20℃で30分間加熱して滅菌させた。
【0090】
本発明内に記載された概念および具体的な実施形態は、本発明の目的を遂行する他の実施形態に変形させたり設計するにおいて、その基準として容易に使用できるであろう。また、そのような同等な実施形態等は、添付した請求項同様、本発明の技術的事項および範囲から逸脱するものではない。
【配列表フリーテキスト】
【0091】
配列番号1:H−2K−提示オバルブミン 257−264 aa ペプチド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球または未分化骨髄性細胞(Immature Myeloid Cells;以下,IMC)を含む免疫治療及び予防用ワクチン。
【請求項2】
ナチュラルキラーT細胞のリガンドが、α−ガラクトロノシルセラミド、α−グルクロノシルセラミド、ホスファチジリノシトルテトラマンノサイド、イソグロボトリヘキソシルセラミド、ガングリオサイドGD3、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、スルファチド、β−ガラクトシルセラミド、リポホスホグリカン、グリコイノシトールホスホリピド、α−ガラクトシルセラミドの類似体であるβ−アノマガラクトシルセラミド及びα−アノマガラクトシルセラミド、バクテリア脂質抗原からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の免疫治療及び予防用ワクチン。
【請求項3】
前記抗原が、病原菌、ウイルス及び寄生虫を含む病原体由来の抗原または癌抗原であることを特徴とする、請求項1に記載の免疫治療及び予防用ワクチン。
【請求項4】
病原菌由来の抗原が、百日咳菌抗原(pertussis toxin,filamentous haemagglutinin,pertactin)、破傷風菌抗原、ジフテリア菌抗原(diphtheria toxoid)、ヘリコバクター・ピロリ抗原(capsula polysaccharides of serogrup A,B,C,Y及びW−135)、肺炎菌抗原(Streptococcus pnemoniae type3 capsular polysaccharide)、結核菌抗原、コレラ抗原(cholera toxin B subunit)、ブドウ状球菌抗原(staphylococcal enterotoxin B)、赤痢菌抗原(shigella polysaccharides)、ボレリア(Borrelia sp.)抗原、カンジダ(Candida albicans)抗原及びプラスモジウム(Plasmodium)抗原からなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の免疫治療及び予防用ワクチン。
【請求項5】
ウイルス由来の抗原が、インフルエンザウイルス抗原(haemagglutinin及びneuraminidase抗原)、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原(glycoprotein)、小水泡性口内炎ウイルス抗原(vesicular stomatitis virus glycoprotein)、サイトメガロウイルス(CMV)抗原、肝炎ウイルス抗原(hepatitis A(HAV)、B(HBV)、C(HCV)、D(HDV)及びG(HGV)抗原)(core antigen and surface antigen)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)抗原、ヘルペスシンプレックスウイルス抗原、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)抗原(GP−120、GP−160、p18、Tat、Gag、Pol、Env)及びその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の免疫治療及び予防用ワクチン。
【請求項6】
癌抗原が、Her−2/neuによって発現される乳癌タンパク質、プロテイナーゼ3、WT−1、ムリノグロブリン(MUC−1)、PAP、PSA、PSMA、G250、メラノ−マ抗原遺伝子(MAGE、melanoma antigen gene)、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ(tyrosinase)、チロシナーゼ関連タンパク質−1(TRP−1)、TRP−2、gp100、MART−1、MCIR、Ig Idiotype、CDK4、カスパーゼ−8、β−カテニン、CIA、BCR/ABL、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV E6/E7)、EBV LMP2a、HCV、HHV−8、5T4、癌胚芽抗原(carcinoembryonic antigen;CEA)、p53及びα−フェトプロテイン(α−fetoprotein)からなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の免疫治療及び予防用ワクチン。
【請求項7】
抗原が、ペプチド、脂質多糖類、多糖類、糖蛋白質またはポリヌクレオチドの形態を有することを特徴とする請求項1に記載の免疫治療及び予防用ワクチン。
【請求項8】
前記抗原が、組換えウイルスによって導入されて発現することを特徴とする請求項1に記載の免疫治療及び予防用ワクチン。
【請求項9】
前記組換えウイルスが、抗原を発現する遺伝子が導入されたアデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス(Pox virus)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)であることを特徴とする請求項8に記載の免疫治療及び予防用ワクチン。
【請求項10】
α−ガラクトシルセラミドと抗原が積載された単核球または未分化骨髄性細胞を含むナチュラルキラーT細胞活性化剤。
【請求項11】
癌抗原を発現する単核球または未分化骨髄性細胞を含む細胞毒性反応誘導剤。
【請求項12】
ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球または未分化骨髄性細胞を含む免疫治療及び予防用ワクチンを個体に投与する工程を含む前記抗原の発現を指標とする疾患の免疫治療方法。
【請求項13】
ナチュラルキラーT細胞のリガンドと抗原を積載した単核球または未分化骨髄性細胞を含む免疫治療及び予防用ワクチンを個体に投与する工程を含む前記抗原の発現を指標とする疾患の免疫予防方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−503174(P2011−503174A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533949(P2010−533949)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006057
【国際公開番号】WO2009/066824
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(503317485)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファウンデーション (25)
【Fターム(参考)】