ナット保持部材
【課題】管軸と垂直な横断面が閉鎖断面である管状部材と、管体や棒状体で成る構造材、又は部品類や付属品類などをボルト・ナットで接合する際に、位置ずれ脱落などの不具合を来さない安定状態に、簡単な操作で位置決めして用意でき、ボルト接合作業を軽便に確実に実行するナット保持部材を提供する。
【解決手段】ボルト孔13aを有する管状部材13とボルト孔を有する相手部材とをボルト接合する際に管状部材13の中空部内に挿入して使用するナット保持部材14であって、ナット保持部材14の外周形状は、管状部材13の内周面へ内側から接し、同管状部材13の管軸に対して直交する方向への移動が制限される形状であり、このナット保持部材14の外周部に、ボルト15のねじ込みに対してナット6を共回りしない状態に保持するナット嵌め込み部144が形成され、同ナット嵌め込み部144にナット6が保持されている。
【解決手段】ボルト孔13aを有する管状部材13とボルト孔を有する相手部材とをボルト接合する際に管状部材13の中空部内に挿入して使用するナット保持部材14であって、ナット保持部材14の外周形状は、管状部材13の内周面へ内側から接し、同管状部材13の管軸に対して直交する方向への移動が制限される形状であり、このナット保持部材14の外周部に、ボルト15のねじ込みに対してナット6を共回りしない状態に保持するナット嵌め込み部144が形成され、同ナット嵌め込み部144にナット6が保持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管軸と垂直な横断面が閉鎖断面である管状部材(以下、単にパイプという場合がある。)と、このパイプと接合するべき管体や棒状体で成る構造材、又はブラケットその他の部品類や付属品類などをボルト・ナットで締結して接合する際に、前記パイプの中空部内の所定位置へボルト接合に必要なナットを必要な個数だけ、必要とする配置(向き)に、しかもボルト接合作業の際に位置ずれとか脱落などの不具合や支障を来さない安定状態に、簡単な操作で位置決めして用意(設備)でき、前記のボルト接合作業を軽便に確実に実行することに寄与するナット保持部材の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば道路用防護柵を構築する際には、地面に立てた支柱へ直接、又は先ずブラケットをボルト接合等で取り付けて、そのブラケットへ、道路長手方向へ配置するビームパイプをボルト接合により取り付けて構築する手法が多く実施されている。
その場合に、ビームパイプの中空部は、通例、人の手を挿入することができないほど小径の略閉鎖断面であるため、多くの場合、ボルトはビームパイプの直径方向へ貫通させ、その反対側からナットをねじ込み締結して接合する手法が多く実施されている。
しかし、このようなボルト接合構造では、ビームパイプの外周面の一側にボルトの頭が露出するほか、反対側にも同ボルトのネジ軸部及びこれにねじ込んだナットが露出するので、見た目の外観意匠が無骨で美観が悪い。のみならず、通行人や車両などが前記ボルトの頭、又はボルトのネジ軸部やナットへ当たることが考えられる。
そのためビームパイプの外周面には可能な限りボルトの頭やネジ軸部、ナットが露出しないボルト接合構造の開発が要請され、実用化が進められてきた。要するに、円形の閉鎖断面であるパイプの中空部内にナットを予め設備(用意)して、そのナットへパイプの外側からボルトのネジ軸部をねじ込み接合する構造の実現である。
なお、上記ボルト接合構造を開発する要請は、上記道路用防護柵を構築する分野に限らず、円形の閉鎖断面であるパイプの中空部内にナットを予め設備(用意)して、そのナットへパイプの外側からボルトのネジ軸部をねじ込み接合する各種の組立構造物の技術分野に広く存在する。
【0003】
上記課題の解決策として、例えば下記の特許文献1に開示された道路用防護柵は、支柱に支持されたジョイントパイプとビームパイプをボルト接合するにあたり、平プレートにナットを固着し、更に前記平プレートの裏面に吸盤を取り付けたナット保持部材を構成して、これをジョイントパイプの中空部内へ挿入し、前記吸盤をジョイントパイプの内周面へ吸着させて平プレート及びナットの位置をボルト孔と一致させ、外部からボルトを挿入してボルト接合が可能とする技術が開示されている。
しかし、上記のナット保持部材は、ビームパイプの横断面が円形に湾曲しているため、吸盤を所望する位置へきっちりと強く吸着させることが難しい。その上、ビームパイプの内周面は一般的に研磨していない粗面のままであるのが普通であり、その意味でも吸盤を粗面の所望位置へきっちりと吸着させることが難しい。そのため接合作業時にはボルト孔を通じて挿入したボルトに押されてナットの位置ズレや脱落等の不具合を来たし易く、使い勝手が悪いという問題点がある。
【0004】
次に、下記の特許文献2に開示された道路用防護柵は、支柱に支持されたジョイントパイプとビームパイプをボルト接合するにあたり、横断面が溝形状の枠の溝中へナットを嵌め込み、カシメて固定したナット保持部材を構成し、これをジョイントパイプの中空部内へ挿入し、そのナットとボルト孔の位置を一致させた上で、同ナット保持部材をリベット又はタッピングビスでパイプへ止め付けて位置決めを行い、パイプの外からボルト接合する技術が開示されている。
【0005】
しかし、溝形状枠のナット保持溝中へナットを嵌めてカシメる加工などに手間隙を要してコストが嵩む問題がある。また、このナット保持部材をジョイントパイプの中空部内へ挿入し、リベット又はタッピングビスでパイプの内周面へ止め付けて位置決めする作業には、高い熟練技術を必要とするし、場所的にも実施の可能性に限界がある、という問題点が指摘されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭55−48909号公報
【特許文献2】実開平2−6717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、一例として、上記した如く地面に立てた支柱へブラケットを取り付け、そのブラケットへビームパイプをボルト接合するような場合で、しかも同ビームパイプの中空部が、ナットを持った人の手を挿入することはできないほど小径であったり、略閉鎖断面である場合に、同パイプの中空部内の所望位置へ、ボルト接合に必要なナットを必要な個数だけ、必要とする配置(向き)に、しかもボルト接合作業の際にボルト孔を通じて挿入したボルトに押されて位置ずれとか脱落などの不具合や支障を来さない安定状態に、誰でも簡単な操作で位置決めして設備ないし用意することができ、同パイプの外側(外周側)からボルト挿入し前記ナットへねじ込んでボルト接合(締結)する目的を容易に達成でき、もって同ボルトのネジ軸部やナットをパイプの外へ露出させないボルト接合構造を実現できるナット保持部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るナット保持部材は、
ボルト孔を有する管状部材とボルト孔を有する相手部材とをボルト接合する際に前記管状部材の中空部内に挿入して使用するナット保持部材であって、
前記ナット保持部材の外周形状は、前記管状部材の内周面へ内側から接し、同管状部材の管軸に対して直交する方向への移動が制限される形状であり、
このナット保持部材の外周部に、ボルトのねじ込みに対してナットを共回りしない状態に保持するナット嵌め込み部が形成され、同ナット嵌め込み部にナットが保持されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したナット保持部材において、
ナット嵌め込み部は、奥部にナットが座る段部を備えていることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載したナット保持部材において、
ナット嵌め込み部は、ナットを嵌め込む凹部として、又は少なくともナットの平行2面を嵌め込む溝状部として形成され、前記ナット嵌め込み部に保持されたナットは、ねじ込まれたボルトと共回りしない程度に緩く保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のナット保持部材は、パイプと他の管体やブラケットなどの部材をボルト接合する際に、同パイプに予め加工したボルト孔へ、保持したナットが同心の配置で相対峙する配置となるようにナット保持部材の押し込み量と円周方向の向きとを調整して同パイプの中空部内へ手で、又は同パイプの中空部内へ挿入可能に細長い棒状の道具を使用して押し込むだけの操作で設備(又は用意)でき、少なくともパイプの外側からボルトを挿入して前記ナットへねじ込み、締結作業を進める上で支障ない程度に管軸に対して直交する方向への移動を制限され、安定したボルト接合作業ができる。したがって、本発明のナット保持部材を使用すると、誰でも熟練を要することなく、人の手を挿入することができないほど小径であるパイプの中空部内へ、ボルト接合に必要なナットを確実に設備ないし用意することができ、パイプの外側からボルト孔を通じて挿入したボルトは、ナットへ確実にねじ込み締結することができ、そのネジ軸部及びナット(および保持材)をパイプの外周へ露出させない意匠のボルト接合を実現できる。
【0011】
本発明のナット保持部材は、例えば発泡ないし非発泡のプラスチックで成形した保持材にナット収容部を形成して、ナットを保持させた構成であるから、簡単に安価に提供できる上に、一つの保持材に複数個のナットを必要な向きに保持させることができるので、パイプを中心とする複数の目的のボルト接合を容易に可能ならしめる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例であるナット保持部材の要部を示した斜視図である。
【図2】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図3】A、Bは前記第1実施例のナット保持部材を使用したボルトの締結前、後の状態を示した断面図である。
【図4】本発明の第2実施例であるナット保持部材の要部を示した斜視図である。
【図5】上記第2実施例のナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図6】本発明の第3実施例であるナット保持部材の要部を示した斜視図である。
【図7】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図8】本発明の第4実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図9】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図10】本発明の第5実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図11】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図12】本発明の第6実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図13】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図14】本発明の第7実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図15】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図16】本発明の第8実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図17】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図18】本発明の第9実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図19】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図20】本発明の第10実施例であるナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図21】第11実施例であるナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるナット保持部材は、ボルト孔を有する管状部材と、ボルト孔を有する相手部材とをボルト接合する際に、前記管状部材の中空部内に挿入し使用するナット保持部材である。
このナット保持部材の外周形状は、前記管状部材の内周面へ内側から接し、同管状部材の管軸に対して直交する方向への移動が制限される形状である。
このナット保持部材の外周部に、ナットのネジ込みに対してナットを共回りしない状態に保持するナット嵌め込み部が形成され、同ナット嵌め込み部にナットが保持されている
【実施例1】
【0014】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
先ず実施例1として図1〜図3に示したナット保持部材14を説明する。
本実施例1のナット保持部材14は、管軸と垂直な横断面が図2のとおり円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面が略Y字形状をなす保持材140における片側の二叉部分に、ナット6が嵌め込まれた構成である。
更に説明すると、保持材140は、横断面が略Y字形状をなす3辺の外縁141、142と143がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成している。要するに、この保持材140の外周形状は、前記パイプ13の内周面へ内側から接し、同パイプ13のボルト孔13aから挿入してナット6へ押し当てるボルト15の作用力に対して十分に大きく安定した支持力(又は支持反力)を発揮して、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限(阻止)される形状である。
【0015】
とりわけ図2で明かなとおり、前記三つの支点141〜143は、言わばパイプ13の直径線Nに沿って位置し、二叉部分の2辺142と143が前記直径線の両側に上下に対称的な配置の支持点を形成するので、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へぴったり内接して安定した設置状態を実現できる。そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う作用力ぐらいでは位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。この位置的安定性は、要するに、保持材140の三つの支点141〜143が、パイプ13の内周面において180度を超えた円周角にわたる範囲に内接する構成によって得られている。
【0016】
したがって、ナット保持部材14の主体である保持材140の外周形状は、図2に示したように、パイプ13の内径に接して、その管軸に対し直交する各方向への移動を制限でき、ボルト15をナット6へねじ込む作業にナット6をきっちり保持して支障を生じない形状とすれば足りる。
図2では、保持材140がパイプ13の内周面へ密接する形状を示しているが、後述する各実施例のように支持部ないし支点を設けることにより、ナット6の配置に応じた様々な外周形状で実施でき、様々な向きのボルト接合に対応できることを、以下の各実施例の説明で理解されるであろう。また、ナット保持部材14に設けられたナット嵌め込み部144の形状は、ナット6の保持に適度なガタを有する形状で実施することが有効的である。ナット6の保持に適度なガタが有ると、ボルト15の先端でナット6とのネジ始端を探し当てる操作に好都合である。
【0017】
上記の保持材140の材質は特に限定する理由はない。実用上は大量生産に適して安価に軽く製造(成形)でき、取り扱いが容易である、熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂、例えばフェノール樹脂やエポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等々を使用して成形するのが好ましい。また、低・中発泡ないし高発泡のポリスチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等で成形して実施することも好適である。非発泡の合成樹脂製で実施することもできるし、木製や金属製として製作し実施することもできる。この点は、以下に説明する各実施例に共通することである。
もっとも、本実施例1の場合は、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面がY字形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、必要長さに裁断することにより得られる。この保持材140の二叉部分に、ナット6の平行2面を挟む形状の切り欠き形状のナット嵌め込み部145を形成し、その嵌め込み部145へナット6の平行2面を押し込み、奥端の段部へ位置させることでナット保持部材14が構成されている。したがって、ナット6は、ボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
図1のナット保持部材14は、保持材140へナット6を1個保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同保持材140の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに必要数を保持させることができる。或いは形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナット6を同様な手法で保持させることもできる。
【0018】
保持材140へ保持させるナット6は、図6に示したように、パイプ13の内周面とは干渉しない程度に深く嵌めて保持させ、当該ナット保持部材14をパイプ13の中空部内へ押し込んで使用する作業に支障ない構成とされている。ナット6は、その上面(ここでいうナットの上面とは、同ナットが相手部材へ接して締め付けられる座面とは反対側の面をいう。)を段部に座らせる。
【0019】
もっとも、図3A、Bに使用状態を示したように、ナット保持部材14のナット6へパイプ13の外からボルト15を挿入してねじ込んだ場合に、同ボルト15のネジ込み量が進むと、ナット6は保持材140の切り欠き部144から次第に引き出される。そして、遂には図3Bに例示したとおり、ナット6は、パイプ13の内周面へ直接に接したメタルタッチの状態にまで切り欠き部144から浮上し得る構成であり、十分に強固なボルト接合の実現に寄与できる。
因みに、図3において、符号1は例えば道路用防護柵の支柱、したがって、パイプ13はビームパイプのイメージであるが、勿論、用途を限定する意味ではない。
【実施例2】
【0020】
次に、実施例2として図4と図5に示したナット保持部材16を説明する。
本実施例2のナット保持部材16も、図5のとおり横断面が円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の中空部内へ内接状態に挿入可能な大きさで、横断面が略X字形状をなす保持材160における片側(又は両側でも可)の二叉部分に、ナット6が嵌め込まれた構成である。
更に説明すると、保持材160は、横断面が略X字形状をなす4辺の外縁161、162、163と164がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成する。この保持材160の外周形状は、前記パイプ13の内周面へ内側から接した支点が、同パイプ13のボルト孔13aから挿入してナット6へ押し当てるボルト15の作用力に対して十分大きく安定した支持力を発揮して、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限される形状である。
【0021】
更に言えば、図5で明かなとおり、前記四つの支点161〜164は、言わばパイプ13の直径線Nに沿ってその上下左右に対称的な配置で四つの支持点を形成するので、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ内接して安定した位置決め状態の設置を実現できる。そして、保持したナット6はパイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作などに伴う突き当たり作用力ぐらいでは、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限され、ナット6は、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
要するに、四つの支点161〜164が円形のパイプ13の一つの直径線Nに沿ってその上下左右の対称位置に、言わば円周角にして180度を超える範囲へ4点で内接するので、設置位置の安定性が得られる。
【0022】
この保持材160も、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面がX字形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、必要な長さに裁断することにより構成される。この保持材160の二叉部分にナット6の平行2面を挟む形状の切り欠き部165を形成し、その切り欠き部165へナット6の平行2面を押し込んで保持させることによりナット保持部材16が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
図4は、保持材160へナット6を1個だけ保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同保持材160の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに、又は丁度正反対に形成された二叉部分にも、反対向きのナット6’(図5を参照)を必要数だけ同様の手法で保持させることができる。或いは形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持材160へ保持させて使用することも勿論できる。
【0023】
保持材160へ保持させるナット6は、図5に示したように、パイプ13の内周面とは干渉しない程度に深く嵌めて保持させ、当該ナット保持部材16をパイプ13の中空部内へ押し込んで使用する作業に支障ない構成とされる。
もっとも、先の図3Aに示したように、ナット保持部材16のナット6へパイプ13の外からボルト15を挿入してねじ込んだ場合には、同ボルト15のネジ込み量が進むのに応じて、ナット6は保持材160の切り欠き部165から次第に引き出され、遂には先の図3Bに例示したように、ナット6がパイプ13の内周面へ直接に接したメタルタッチの状態にまで切り欠き部165から移動し得る構成であることにも変わりがなく、もって十分に強固なボルト接合の実現に寄与する。以下に説明する各実施例についても、このような構成は共通することを、念のためここに宣明する。
なお、図5は、パイプ13と板塀の板25とをボルト15で接合する実施例のイメージを示している。
【実施例3】
【0024】
次に、実施例3として図6と図7に示したナット保持部材17を説明する。
本実施例3のナット保持部材17も、図7のとおり横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面が略中空(但し、中実でも可。)の三角形状をなす保持材170における一つの頂角部分(又は他の頂角部分でも可。)に、ナット6が嵌め込まれた構成である。
【0025】
更に説明すると、保持材170は、横断面が中空の三角形状をなす3辺の頂角縁171、172、173がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成し、同パイプ13のボルト孔13aから挿入してナット6へ押し当てるボルト15の作用力に対して十分大きく安定した支持力を発揮し、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限される。
図7で明かなとおり、前記三つの支点171〜173は、言わばパイプ13の直径線Nに沿ってその上下に対称的な配置で2個の支持点171、172を形成するので、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へぴったり内接して安定した位置決め状態の設置を実現できる。そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。その理由は要するに、三つの支点171〜173が円形のパイプ13の一つの直径線Nに沿ってその上下両側の位置に、言わば円周角にして180度を超えた範囲に内接しているので、設置位置の安定性が得られている。
【0026】
この保持材170も、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面が中空の三角形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。この保持材170の任意の頂角部分へナット6の平行な2面を挟む形状の切り欠き部174を形成し、その切り欠き部174へナット6の平行2面を押し込んで保持させることによりナット保持部材16が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
図6は、保持材170へナット6を1個だけ保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同保持材170の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに、又は他の二つの頂角部分や辺の部分を利用して(図7のナット6’を参照。)、異なる数方向にそれぞれ、ナット6又は6’を必要数だけ同様の手法で保持させることができる。勿論、形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナット6を同様の手法で保持させることができる。
なお、図7のナット6’のように辺の部分に保持させる場合は、同辺の肉厚を全体として又は部分的に盛り上がる厚肉状に形成して実施するのが好都合である。
【実施例4】
【0027】
次に、実施例4として図8と図9に示したナット保持部材18を説明する。
本実施例4のナット保持部材18は、図9のとおり、横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面が略T字形状をなす保持材180における頭部181をパイプ13の内周面と略同じ曲率の円弧状盛り肉部として形成し、同盛り肉部の中央部長手方向に、ナット6の平行な2面の間隔よりも少し狭い溝幅の凹溝182を形成し、同凹溝182においてナット6を保持させるべき位置の溝壁に、ナット6の平行な2面それぞれの一部を嵌める浅い縦溝183を形成し、同所にナット6を嵌め込んで保持させた構成とている。
【0028】
更に説明すると、保持材180は、横断面が略T字形状をなし円弧状盛り肉部として形成した頭部181とT脚部184がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成し、同パイプ13のボルト孔13aから挿入してナット6へ押し当てるボルト15の作用力に対して十分大きく安定した支持力を発揮し、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限される。
特に言えば、図9で明かなとおり、言わばパイプ13の直径線Nに沿って位置するT脚部184の端縁184’と、パイプ13の内周面へ前記T脚部184を中心とする円周角で約70度(ただし、この角度の限りではない。)に及ぶ円弧状盛り肉部として形成した頭部181とで広範な支持点を形成しているので、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へぴったり内接して安定した位置決め状態の設置を実現できる。
【0029】
そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。その理由は要するに、T脚部184と、これを中心とする円周角で約70度に及ぶ円弧状盛り肉部として形成した頭部181とで広範囲な支持点を形成しているので、設置状態及び位置の安定性が得られている。
【0030】
この保持材180も、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面が略T字形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。そして、この保持材180の円弧状盛り肉部として形成した頭部181の凹溝182へナット6を保持させる縦溝183を形成し、同縦溝183へナット6の平行2面を押し込んで保持させることによりナット保持部材18が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
【0031】
図8は、保持材180へナット6を1個だけ保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて、同保持材180の凹溝182の長手方向に間隔を開けて必要数の縦溝183を形成してナット6を同じ向きに必要数保持させることができる。
或いは必要に応じて円弧状盛り肉部として形成した頭部181の円弧角を更に拡大し、凹溝182を2本平行に形成して、向きが異なる複数のナット6を保持させることもできる。
場合によっては頭部181の円弧角を凹溝182の形成に必要最少限度に小さく形成すること、又は頭部181の頂部の一部を例えば図13に指示した点線Mの如き位置で切断した平たい切頭形状に形成して実施することもできる。勿論、形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させて実施することもできる。
【実施例5】
【0032】
次に、実施例5として図10と図11に示したナット保持部材19を説明する。
本実施例5のナット保持部材19も、図11のとおり横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面が略中空(但し、中実でも可。)の四角形状をなす保持材190における各頂角部分(又は辺部でも可=図11を参照。)に、ナット6が複数嵌め込まれた構成である。
【0033】
更に説明すると、保持材190は、横断面が中空の四角形状における四つの頂角部191〜194がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成し、同パイプ13のボルト孔13aから挿入してナット6へ押し当てるボルト15の作用力に対して十分大きく安定した支持力を発揮し、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限される。
特に言えば、図11で明かなとおり、前記四つの支点191〜194は、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ、円周角にして360度に及ぶ範囲にわたり内接して、安定した位置決め状態の設置を実現できる。
そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
【0034】
この保持材190も、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面が中空の四角形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。この保持材190の頂角部にナット6の平行な2面を挟む形状の切り欠き部195を形成し、その切り欠き部195へナット6の平行2面を押し込んで保持させることによりナット保持部材19が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
図10は、保持材190へ3個のナット6を異なる三つの頂角部へそれぞれ異なる向きに保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同保持材190の頂角部の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を、又は辺の部分を利用するなどして異なる向きにそれぞれ、ナット6を必要数だけ同様の手法で保持させることができる。勿論、必要に応じて形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させて実施することもできる。
【実施例6】
【0035】
次に、実施例6として図12と図13に示したナット保持部材20を説明する。
本実施例6のナット保持部材20は、図13のとおり横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面が略H形状をなす保持材200における一側の凹溝201に、ナット6を保持させるべき位置の溝壁にナット6の平行な2面それぞれの一部を嵌める浅い縦溝202を形成し、同所にナット6を嵌め込んで保持させた構成とされている。
なお、本実施例6の場合は、H形状に成形された保持材200のウエブ207に、前記のように保持させたナット6と同心位置に、ボルト16のネジ軸の外径よりも少し大径のルーズ孔208をボルトの逃がし孔として設け、同ボルト15のネジ軸部の進入を許容する構成とされる。
【0036】
更に説明を続けると、保持材200は、横断面が略H形状とされ、その四つの端縁203〜206がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成する。四つの支点203〜206がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面の360度の円周角にわたり内接してバランスの良い支持点を形成しているので、安定した位置決め状態の設置を実現できる。
そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
【0037】
この保持材200も、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面が略H形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。そして、この保持材200の凹溝201へナット6を保持させる縦溝202を形成し、同縦溝202へナット6の平行2面を押し込んで保持させることによりナット保持部材18が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
図12は、保持材200へナット6を1個だけ保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同保持材200の凹溝182の長手方向に間隔を開けて必要数の縦溝202を形成して、ナット6を同じ向きに必要数保持させることができる。或いは必要に応じて反対側の凹溝201へも縦溝を形成して向きが異なる複数のナットを保持させることができる。また、形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させて実施することもできる。
【実施例7】
【0038】
次に、実施例7として図14と図15に示したナット保持部材21を説明する。
本実施例7のナット保持部材21は、図15に示すとおり、横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで横断面の基本形が円形の保持材210において、その円弧の一部を削った平面部211へナット6が嵌め込まれ、同平面部211とは反対側に、矩形溝形状の肉盗み212をできるだけ大きく形成した構成である。
更に説明すると、この保持材210は、横断面の基本形を円形に形成された円弧状外周部213と214がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点となる。
特に言えば、図15で明かなとおり、前記二つの支点213と214は、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ360度の円周角の約半分以上にわたり内接するので安定した位置決め状態の設置を実現できる。そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
【0039】
この保持材210も、例えばプラスチックの押出成形法により、均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。この保持材210の平面部211に、ナット6より少し大きい相似な六角形のナット嵌め込み部215を形成し、このナット嵌め込み部215へナット6を押し込んで保持させることによりナット保持部材19が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
なお、本実施例の場合には、ナット嵌め込み部215から矩形溝形状の肉盗み212に向かって貫通する、ボルト15のネジ軸部の進入を許容する逃がし孔216(ルーズホール)を設ける。
【0040】
上記のように貫通孔状態に設ける逃がし孔216(ルーズホール)形状と大きさは、ナット6へねじ込まれたボルトの先端部が突き当たって干渉を起こすことが無く、そして、保持材210の使用材料量の減量化と軽量化の目的に叶う肉盗みとして合理的な形態に形成する。一方、上面を前記ナット嵌め込み部215の段部へ座らせたナット6の座面は、保持材210の外周面(外径面)以上には出っ張らず、同保持材210をパイプ13の中空部内へ挿入する作業に支障ない構成とする。即ち、同保持材210の外周面よりもナット6の座面は少し沈み込むが、外周面近傍へ露出する状態にナット嵌め込み部215内へ嵌め込まれる。
【0041】
図14は、保持材210へ1個のナット6を保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同平面部211の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに保持させることができる。
場合によっては平面部211を2以上平行に形成するか、又は平面部を一切形成しないで、円弧状外周面の所望位置へ直接ナット嵌め込み部215を形成して、必要な向きに必要な数のナット6を保持させることもできる。必要によっては形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させることもできる。
【実施例8】
【0042】
次に、実施例8として図16と図17に示したナット保持部材22を説明する。
本実施例8のナット保持部材22は、図17に示すとおり、横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで横断面の基本形が円形の保持材220において、その円弧の一部を削った平面部221へナット6が嵌め込まれ、同平面部221とは反対側に、矩形溝形状の肉盗み222をできるだけ大きく形成した構成である。
【0043】
更に説明すると、この保持材220は、横断面の基本形をパイプ13の内径よりも少し小さい円形に形成された円弧状外周部の直交4方向(円周角にして90度間隔、但し120度間隔の3方向、又は等間隔ないし不等間隔の5方向以上でも可。)に、パイプ13の内周面へ接する突条223〜226が形成され、各突条223〜226がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成する。
こうして前記四つの支点223〜226は、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ360度の円周角にわたり内接するので、安定した位置決め状態の設置を実現できる。そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
【0044】
本実施例の保持材220も、例えばプラスチックの押出成形法により、均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。この保持材220の平面部221に、ナット6より少し大きい相似な六角形のナット嵌め込み部227を形成し、このナット嵌め込み部227へナット6を押し込んで保持させることによりナット保持部材22が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
なお、本実施例の場合も、ナット嵌め込み部227から矩形溝形状の肉盗み222に向かって貫通する、ボルト15のネジ軸部の逃がし孔228を設ける。
図16は、保持材220へ1個のナット6を保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同平面部221の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに保持させることができる、場合によっては平面部221を2以上平行に形成するか、又は平面部を一切形成しないで、円弧状外周面の所望位置へ直接ナット嵌め込み部227を形成して必要な向きに必要な数のナット6を保持させることもできる。必要によっては形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させることもできる。
【実施例9】
【0045】
次に、実施例9として図18と図19に示したナット保持部材23を説明する。
本実施例9のナット保持部材23は、図19に示すとおり、横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面の基本形が矩形の保持材230において、その一平面部231へナット6が嵌め込まれ、同平面部231とは反対側に、矩形溝形状の肉盗み232をできるだけ大きく形成した構成である。
更に説明すると、この保持材230は、横断面の基本形をパイプ13の内周面へ内接する矩形に形成された4隅の面取りした角部233〜236がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成する。
こうして前記四つの支点233〜236は、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ360度の円周角にわたり内接するので、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせしてねじ込む操作に伴う程度の突き当たり作用力(又は押し込み力)に対しても、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限される。
そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
【0046】
この保持材230も、例えばプラスチックの押出成形法により、均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。この保持材230の平面部231に、ナット6より少し大きい相似な六角形のナット嵌め込み部237を形成し、このナット嵌め込み部237へナット6を押し込んで保持させることによりナット保持部材23が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。なお、本実施例の場合も、ナット嵌め込み部237から矩形溝形状の肉盗み232に向かって貫通する、ボルト15のネジ軸部の逃がし孔238を設ける。
図18は、保持材230へ1個のナット6を保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同平面部231の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに保持させることができる、場合によっては他の平面部の所望位置へナット嵌め込み部237を形成して必要な向きに必要な数のナット6を保持させることもできる。
必要によっては形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させることもできる。
【実施例10】
【0047】
次に、実施例10として図20に示したナット保持部材20を説明する。
図20には、上記図12と図13に示した実施例6のナット保持部材20を用い、横断面が四角形に閉じたパイプ13’の中空部内へ挿入して、上下のフランジ相当部209がパイプ13’の上下辺の内面へ密接した状態で使用される実施例を示している。
【実施例11】
【0048】
また、実施例11として図21には、図18と図19に示した実施例9のナット保持部材23を用い、横断面が四角形に閉じたパイプ13’の中空部内へ挿入して、上下のフランジ相当部239がパイプ13’の上下辺の内面へ密接した状態で使用される実施例を示している。
上記実施例10、11のナット保持部材20、23も、上記の該当する各実施例と全く同様に使用でき、同様な機能を発揮することを例示したものである。
更にいうと、図示することまでは省略したが、パイプの横断面の形状が六角形や多角形であっても、用いる保持材の断面形状や大きさを少し修正して用いることにより、問題なく適用でき、多様に実施して上記した作用効果を等しく得られるという、応用例を実施例10と11に例示したものと理解されたい。
【0049】
また、本願の実施例1〜9では、横断面が円形に完全に閉じた管状部材(パイプ)のボルト接合について例示しているが、例えば道路用防護柵に使用するインナースリーブのように、管軸方向に目地隙間を備えて完全に閉じていない略閉鎖断面の管状部材にも全く同様に適用できる。
また、本願の上記実施例1〜11では、横断面が円形に閉じた管状部材(パイプ)のボルト接合について、管状部材と接合する相手部材をおよそ省略して図示しているが、図示は省略した道路用防護柵を構成するビームパイプやブラケットのような相手部材と管状部材をボルト接合することにも同様に適用できるものである。
【0050】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。
【符号の説明】
【0051】
1 支柱
13、13’パイプ
13a ボルト孔
14〜23 ナット保持部材
15 ボルト
140〜230 保持材
【技術分野】
【0001】
この発明は、管軸と垂直な横断面が閉鎖断面である管状部材(以下、単にパイプという場合がある。)と、このパイプと接合するべき管体や棒状体で成る構造材、又はブラケットその他の部品類や付属品類などをボルト・ナットで締結して接合する際に、前記パイプの中空部内の所定位置へボルト接合に必要なナットを必要な個数だけ、必要とする配置(向き)に、しかもボルト接合作業の際に位置ずれとか脱落などの不具合や支障を来さない安定状態に、簡単な操作で位置決めして用意(設備)でき、前記のボルト接合作業を軽便に確実に実行することに寄与するナット保持部材の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば道路用防護柵を構築する際には、地面に立てた支柱へ直接、又は先ずブラケットをボルト接合等で取り付けて、そのブラケットへ、道路長手方向へ配置するビームパイプをボルト接合により取り付けて構築する手法が多く実施されている。
その場合に、ビームパイプの中空部は、通例、人の手を挿入することができないほど小径の略閉鎖断面であるため、多くの場合、ボルトはビームパイプの直径方向へ貫通させ、その反対側からナットをねじ込み締結して接合する手法が多く実施されている。
しかし、このようなボルト接合構造では、ビームパイプの外周面の一側にボルトの頭が露出するほか、反対側にも同ボルトのネジ軸部及びこれにねじ込んだナットが露出するので、見た目の外観意匠が無骨で美観が悪い。のみならず、通行人や車両などが前記ボルトの頭、又はボルトのネジ軸部やナットへ当たることが考えられる。
そのためビームパイプの外周面には可能な限りボルトの頭やネジ軸部、ナットが露出しないボルト接合構造の開発が要請され、実用化が進められてきた。要するに、円形の閉鎖断面であるパイプの中空部内にナットを予め設備(用意)して、そのナットへパイプの外側からボルトのネジ軸部をねじ込み接合する構造の実現である。
なお、上記ボルト接合構造を開発する要請は、上記道路用防護柵を構築する分野に限らず、円形の閉鎖断面であるパイプの中空部内にナットを予め設備(用意)して、そのナットへパイプの外側からボルトのネジ軸部をねじ込み接合する各種の組立構造物の技術分野に広く存在する。
【0003】
上記課題の解決策として、例えば下記の特許文献1に開示された道路用防護柵は、支柱に支持されたジョイントパイプとビームパイプをボルト接合するにあたり、平プレートにナットを固着し、更に前記平プレートの裏面に吸盤を取り付けたナット保持部材を構成して、これをジョイントパイプの中空部内へ挿入し、前記吸盤をジョイントパイプの内周面へ吸着させて平プレート及びナットの位置をボルト孔と一致させ、外部からボルトを挿入してボルト接合が可能とする技術が開示されている。
しかし、上記のナット保持部材は、ビームパイプの横断面が円形に湾曲しているため、吸盤を所望する位置へきっちりと強く吸着させることが難しい。その上、ビームパイプの内周面は一般的に研磨していない粗面のままであるのが普通であり、その意味でも吸盤を粗面の所望位置へきっちりと吸着させることが難しい。そのため接合作業時にはボルト孔を通じて挿入したボルトに押されてナットの位置ズレや脱落等の不具合を来たし易く、使い勝手が悪いという問題点がある。
【0004】
次に、下記の特許文献2に開示された道路用防護柵は、支柱に支持されたジョイントパイプとビームパイプをボルト接合するにあたり、横断面が溝形状の枠の溝中へナットを嵌め込み、カシメて固定したナット保持部材を構成し、これをジョイントパイプの中空部内へ挿入し、そのナットとボルト孔の位置を一致させた上で、同ナット保持部材をリベット又はタッピングビスでパイプへ止め付けて位置決めを行い、パイプの外からボルト接合する技術が開示されている。
【0005】
しかし、溝形状枠のナット保持溝中へナットを嵌めてカシメる加工などに手間隙を要してコストが嵩む問題がある。また、このナット保持部材をジョイントパイプの中空部内へ挿入し、リベット又はタッピングビスでパイプの内周面へ止め付けて位置決めする作業には、高い熟練技術を必要とするし、場所的にも実施の可能性に限界がある、という問題点が指摘されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭55−48909号公報
【特許文献2】実開平2−6717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、一例として、上記した如く地面に立てた支柱へブラケットを取り付け、そのブラケットへビームパイプをボルト接合するような場合で、しかも同ビームパイプの中空部が、ナットを持った人の手を挿入することはできないほど小径であったり、略閉鎖断面である場合に、同パイプの中空部内の所望位置へ、ボルト接合に必要なナットを必要な個数だけ、必要とする配置(向き)に、しかもボルト接合作業の際にボルト孔を通じて挿入したボルトに押されて位置ずれとか脱落などの不具合や支障を来さない安定状態に、誰でも簡単な操作で位置決めして設備ないし用意することができ、同パイプの外側(外周側)からボルト挿入し前記ナットへねじ込んでボルト接合(締結)する目的を容易に達成でき、もって同ボルトのネジ軸部やナットをパイプの外へ露出させないボルト接合構造を実現できるナット保持部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るナット保持部材は、
ボルト孔を有する管状部材とボルト孔を有する相手部材とをボルト接合する際に前記管状部材の中空部内に挿入して使用するナット保持部材であって、
前記ナット保持部材の外周形状は、前記管状部材の内周面へ内側から接し、同管状部材の管軸に対して直交する方向への移動が制限される形状であり、
このナット保持部材の外周部に、ボルトのねじ込みに対してナットを共回りしない状態に保持するナット嵌め込み部が形成され、同ナット嵌め込み部にナットが保持されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したナット保持部材において、
ナット嵌め込み部は、奥部にナットが座る段部を備えていることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載したナット保持部材において、
ナット嵌め込み部は、ナットを嵌め込む凹部として、又は少なくともナットの平行2面を嵌め込む溝状部として形成され、前記ナット嵌め込み部に保持されたナットは、ねじ込まれたボルトと共回りしない程度に緩く保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のナット保持部材は、パイプと他の管体やブラケットなどの部材をボルト接合する際に、同パイプに予め加工したボルト孔へ、保持したナットが同心の配置で相対峙する配置となるようにナット保持部材の押し込み量と円周方向の向きとを調整して同パイプの中空部内へ手で、又は同パイプの中空部内へ挿入可能に細長い棒状の道具を使用して押し込むだけの操作で設備(又は用意)でき、少なくともパイプの外側からボルトを挿入して前記ナットへねじ込み、締結作業を進める上で支障ない程度に管軸に対して直交する方向への移動を制限され、安定したボルト接合作業ができる。したがって、本発明のナット保持部材を使用すると、誰でも熟練を要することなく、人の手を挿入することができないほど小径であるパイプの中空部内へ、ボルト接合に必要なナットを確実に設備ないし用意することができ、パイプの外側からボルト孔を通じて挿入したボルトは、ナットへ確実にねじ込み締結することができ、そのネジ軸部及びナット(および保持材)をパイプの外周へ露出させない意匠のボルト接合を実現できる。
【0011】
本発明のナット保持部材は、例えば発泡ないし非発泡のプラスチックで成形した保持材にナット収容部を形成して、ナットを保持させた構成であるから、簡単に安価に提供できる上に、一つの保持材に複数個のナットを必要な向きに保持させることができるので、パイプを中心とする複数の目的のボルト接合を容易に可能ならしめる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例であるナット保持部材の要部を示した斜視図である。
【図2】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図3】A、Bは前記第1実施例のナット保持部材を使用したボルトの締結前、後の状態を示した断面図である。
【図4】本発明の第2実施例であるナット保持部材の要部を示した斜視図である。
【図5】上記第2実施例のナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図6】本発明の第3実施例であるナット保持部材の要部を示した斜視図である。
【図7】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図8】本発明の第4実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図9】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図10】本発明の第5実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図11】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図12】本発明の第6実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図13】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図14】本発明の第7実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図15】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図16】本発明の第8実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図17】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図18】本発明の第9実施例であるナット保持部材を示した斜視図である。
【図19】前記ナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図20】本発明の第10実施例であるナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【図21】第11実施例であるナット保持部材の使用例を示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるナット保持部材は、ボルト孔を有する管状部材と、ボルト孔を有する相手部材とをボルト接合する際に、前記管状部材の中空部内に挿入し使用するナット保持部材である。
このナット保持部材の外周形状は、前記管状部材の内周面へ内側から接し、同管状部材の管軸に対して直交する方向への移動が制限される形状である。
このナット保持部材の外周部に、ナットのネジ込みに対してナットを共回りしない状態に保持するナット嵌め込み部が形成され、同ナット嵌め込み部にナットが保持されている
【実施例1】
【0014】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
先ず実施例1として図1〜図3に示したナット保持部材14を説明する。
本実施例1のナット保持部材14は、管軸と垂直な横断面が図2のとおり円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面が略Y字形状をなす保持材140における片側の二叉部分に、ナット6が嵌め込まれた構成である。
更に説明すると、保持材140は、横断面が略Y字形状をなす3辺の外縁141、142と143がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成している。要するに、この保持材140の外周形状は、前記パイプ13の内周面へ内側から接し、同パイプ13のボルト孔13aから挿入してナット6へ押し当てるボルト15の作用力に対して十分に大きく安定した支持力(又は支持反力)を発揮して、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限(阻止)される形状である。
【0015】
とりわけ図2で明かなとおり、前記三つの支点141〜143は、言わばパイプ13の直径線Nに沿って位置し、二叉部分の2辺142と143が前記直径線の両側に上下に対称的な配置の支持点を形成するので、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へぴったり内接して安定した設置状態を実現できる。そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う作用力ぐらいでは位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。この位置的安定性は、要するに、保持材140の三つの支点141〜143が、パイプ13の内周面において180度を超えた円周角にわたる範囲に内接する構成によって得られている。
【0016】
したがって、ナット保持部材14の主体である保持材140の外周形状は、図2に示したように、パイプ13の内径に接して、その管軸に対し直交する各方向への移動を制限でき、ボルト15をナット6へねじ込む作業にナット6をきっちり保持して支障を生じない形状とすれば足りる。
図2では、保持材140がパイプ13の内周面へ密接する形状を示しているが、後述する各実施例のように支持部ないし支点を設けることにより、ナット6の配置に応じた様々な外周形状で実施でき、様々な向きのボルト接合に対応できることを、以下の各実施例の説明で理解されるであろう。また、ナット保持部材14に設けられたナット嵌め込み部144の形状は、ナット6の保持に適度なガタを有する形状で実施することが有効的である。ナット6の保持に適度なガタが有ると、ボルト15の先端でナット6とのネジ始端を探し当てる操作に好都合である。
【0017】
上記の保持材140の材質は特に限定する理由はない。実用上は大量生産に適して安価に軽く製造(成形)でき、取り扱いが容易である、熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂、例えばフェノール樹脂やエポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等々を使用して成形するのが好ましい。また、低・中発泡ないし高発泡のポリスチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等で成形して実施することも好適である。非発泡の合成樹脂製で実施することもできるし、木製や金属製として製作し実施することもできる。この点は、以下に説明する各実施例に共通することである。
もっとも、本実施例1の場合は、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面がY字形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、必要長さに裁断することにより得られる。この保持材140の二叉部分に、ナット6の平行2面を挟む形状の切り欠き形状のナット嵌め込み部145を形成し、その嵌め込み部145へナット6の平行2面を押し込み、奥端の段部へ位置させることでナット保持部材14が構成されている。したがって、ナット6は、ボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
図1のナット保持部材14は、保持材140へナット6を1個保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同保持材140の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに必要数を保持させることができる。或いは形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナット6を同様な手法で保持させることもできる。
【0018】
保持材140へ保持させるナット6は、図6に示したように、パイプ13の内周面とは干渉しない程度に深く嵌めて保持させ、当該ナット保持部材14をパイプ13の中空部内へ押し込んで使用する作業に支障ない構成とされている。ナット6は、その上面(ここでいうナットの上面とは、同ナットが相手部材へ接して締め付けられる座面とは反対側の面をいう。)を段部に座らせる。
【0019】
もっとも、図3A、Bに使用状態を示したように、ナット保持部材14のナット6へパイプ13の外からボルト15を挿入してねじ込んだ場合に、同ボルト15のネジ込み量が進むと、ナット6は保持材140の切り欠き部144から次第に引き出される。そして、遂には図3Bに例示したとおり、ナット6は、パイプ13の内周面へ直接に接したメタルタッチの状態にまで切り欠き部144から浮上し得る構成であり、十分に強固なボルト接合の実現に寄与できる。
因みに、図3において、符号1は例えば道路用防護柵の支柱、したがって、パイプ13はビームパイプのイメージであるが、勿論、用途を限定する意味ではない。
【実施例2】
【0020】
次に、実施例2として図4と図5に示したナット保持部材16を説明する。
本実施例2のナット保持部材16も、図5のとおり横断面が円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の中空部内へ内接状態に挿入可能な大きさで、横断面が略X字形状をなす保持材160における片側(又は両側でも可)の二叉部分に、ナット6が嵌め込まれた構成である。
更に説明すると、保持材160は、横断面が略X字形状をなす4辺の外縁161、162、163と164がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成する。この保持材160の外周形状は、前記パイプ13の内周面へ内側から接した支点が、同パイプ13のボルト孔13aから挿入してナット6へ押し当てるボルト15の作用力に対して十分大きく安定した支持力を発揮して、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限される形状である。
【0021】
更に言えば、図5で明かなとおり、前記四つの支点161〜164は、言わばパイプ13の直径線Nに沿ってその上下左右に対称的な配置で四つの支持点を形成するので、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ内接して安定した位置決め状態の設置を実現できる。そして、保持したナット6はパイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作などに伴う突き当たり作用力ぐらいでは、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限され、ナット6は、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
要するに、四つの支点161〜164が円形のパイプ13の一つの直径線Nに沿ってその上下左右の対称位置に、言わば円周角にして180度を超える範囲へ4点で内接するので、設置位置の安定性が得られる。
【0022】
この保持材160も、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面がX字形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、必要な長さに裁断することにより構成される。この保持材160の二叉部分にナット6の平行2面を挟む形状の切り欠き部165を形成し、その切り欠き部165へナット6の平行2面を押し込んで保持させることによりナット保持部材16が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
図4は、保持材160へナット6を1個だけ保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同保持材160の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに、又は丁度正反対に形成された二叉部分にも、反対向きのナット6’(図5を参照)を必要数だけ同様の手法で保持させることができる。或いは形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持材160へ保持させて使用することも勿論できる。
【0023】
保持材160へ保持させるナット6は、図5に示したように、パイプ13の内周面とは干渉しない程度に深く嵌めて保持させ、当該ナット保持部材16をパイプ13の中空部内へ押し込んで使用する作業に支障ない構成とされる。
もっとも、先の図3Aに示したように、ナット保持部材16のナット6へパイプ13の外からボルト15を挿入してねじ込んだ場合には、同ボルト15のネジ込み量が進むのに応じて、ナット6は保持材160の切り欠き部165から次第に引き出され、遂には先の図3Bに例示したように、ナット6がパイプ13の内周面へ直接に接したメタルタッチの状態にまで切り欠き部165から移動し得る構成であることにも変わりがなく、もって十分に強固なボルト接合の実現に寄与する。以下に説明する各実施例についても、このような構成は共通することを、念のためここに宣明する。
なお、図5は、パイプ13と板塀の板25とをボルト15で接合する実施例のイメージを示している。
【実施例3】
【0024】
次に、実施例3として図6と図7に示したナット保持部材17を説明する。
本実施例3のナット保持部材17も、図7のとおり横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面が略中空(但し、中実でも可。)の三角形状をなす保持材170における一つの頂角部分(又は他の頂角部分でも可。)に、ナット6が嵌め込まれた構成である。
【0025】
更に説明すると、保持材170は、横断面が中空の三角形状をなす3辺の頂角縁171、172、173がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成し、同パイプ13のボルト孔13aから挿入してナット6へ押し当てるボルト15の作用力に対して十分大きく安定した支持力を発揮し、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限される。
図7で明かなとおり、前記三つの支点171〜173は、言わばパイプ13の直径線Nに沿ってその上下に対称的な配置で2個の支持点171、172を形成するので、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へぴったり内接して安定した位置決め状態の設置を実現できる。そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。その理由は要するに、三つの支点171〜173が円形のパイプ13の一つの直径線Nに沿ってその上下両側の位置に、言わば円周角にして180度を超えた範囲に内接しているので、設置位置の安定性が得られている。
【0026】
この保持材170も、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面が中空の三角形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。この保持材170の任意の頂角部分へナット6の平行な2面を挟む形状の切り欠き部174を形成し、その切り欠き部174へナット6の平行2面を押し込んで保持させることによりナット保持部材16が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
図6は、保持材170へナット6を1個だけ保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同保持材170の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに、又は他の二つの頂角部分や辺の部分を利用して(図7のナット6’を参照。)、異なる数方向にそれぞれ、ナット6又は6’を必要数だけ同様の手法で保持させることができる。勿論、形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナット6を同様の手法で保持させることができる。
なお、図7のナット6’のように辺の部分に保持させる場合は、同辺の肉厚を全体として又は部分的に盛り上がる厚肉状に形成して実施するのが好都合である。
【実施例4】
【0027】
次に、実施例4として図8と図9に示したナット保持部材18を説明する。
本実施例4のナット保持部材18は、図9のとおり、横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面が略T字形状をなす保持材180における頭部181をパイプ13の内周面と略同じ曲率の円弧状盛り肉部として形成し、同盛り肉部の中央部長手方向に、ナット6の平行な2面の間隔よりも少し狭い溝幅の凹溝182を形成し、同凹溝182においてナット6を保持させるべき位置の溝壁に、ナット6の平行な2面それぞれの一部を嵌める浅い縦溝183を形成し、同所にナット6を嵌め込んで保持させた構成とている。
【0028】
更に説明すると、保持材180は、横断面が略T字形状をなし円弧状盛り肉部として形成した頭部181とT脚部184がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成し、同パイプ13のボルト孔13aから挿入してナット6へ押し当てるボルト15の作用力に対して十分大きく安定した支持力を発揮し、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限される。
特に言えば、図9で明かなとおり、言わばパイプ13の直径線Nに沿って位置するT脚部184の端縁184’と、パイプ13の内周面へ前記T脚部184を中心とする円周角で約70度(ただし、この角度の限りではない。)に及ぶ円弧状盛り肉部として形成した頭部181とで広範な支持点を形成しているので、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へぴったり内接して安定した位置決め状態の設置を実現できる。
【0029】
そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。その理由は要するに、T脚部184と、これを中心とする円周角で約70度に及ぶ円弧状盛り肉部として形成した頭部181とで広範囲な支持点を形成しているので、設置状態及び位置の安定性が得られている。
【0030】
この保持材180も、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面が略T字形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。そして、この保持材180の円弧状盛り肉部として形成した頭部181の凹溝182へナット6を保持させる縦溝183を形成し、同縦溝183へナット6の平行2面を押し込んで保持させることによりナット保持部材18が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
【0031】
図8は、保持材180へナット6を1個だけ保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて、同保持材180の凹溝182の長手方向に間隔を開けて必要数の縦溝183を形成してナット6を同じ向きに必要数保持させることができる。
或いは必要に応じて円弧状盛り肉部として形成した頭部181の円弧角を更に拡大し、凹溝182を2本平行に形成して、向きが異なる複数のナット6を保持させることもできる。
場合によっては頭部181の円弧角を凹溝182の形成に必要最少限度に小さく形成すること、又は頭部181の頂部の一部を例えば図13に指示した点線Mの如き位置で切断した平たい切頭形状に形成して実施することもできる。勿論、形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させて実施することもできる。
【実施例5】
【0032】
次に、実施例5として図10と図11に示したナット保持部材19を説明する。
本実施例5のナット保持部材19も、図11のとおり横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面が略中空(但し、中実でも可。)の四角形状をなす保持材190における各頂角部分(又は辺部でも可=図11を参照。)に、ナット6が複数嵌め込まれた構成である。
【0033】
更に説明すると、保持材190は、横断面が中空の四角形状における四つの頂角部191〜194がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成し、同パイプ13のボルト孔13aから挿入してナット6へ押し当てるボルト15の作用力に対して十分大きく安定した支持力を発揮し、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限される。
特に言えば、図11で明かなとおり、前記四つの支点191〜194は、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ、円周角にして360度に及ぶ範囲にわたり内接して、安定した位置決め状態の設置を実現できる。
そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
【0034】
この保持材190も、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面が中空の四角形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。この保持材190の頂角部にナット6の平行な2面を挟む形状の切り欠き部195を形成し、その切り欠き部195へナット6の平行2面を押し込んで保持させることによりナット保持部材19が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
図10は、保持材190へ3個のナット6を異なる三つの頂角部へそれぞれ異なる向きに保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同保持材190の頂角部の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を、又は辺の部分を利用するなどして異なる向きにそれぞれ、ナット6を必要数だけ同様の手法で保持させることができる。勿論、必要に応じて形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させて実施することもできる。
【実施例6】
【0035】
次に、実施例6として図12と図13に示したナット保持部材20を説明する。
本実施例6のナット保持部材20は、図13のとおり横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面が略H形状をなす保持材200における一側の凹溝201に、ナット6を保持させるべき位置の溝壁にナット6の平行な2面それぞれの一部を嵌める浅い縦溝202を形成し、同所にナット6を嵌め込んで保持させた構成とされている。
なお、本実施例6の場合は、H形状に成形された保持材200のウエブ207に、前記のように保持させたナット6と同心位置に、ボルト16のネジ軸の外径よりも少し大径のルーズ孔208をボルトの逃がし孔として設け、同ボルト15のネジ軸部の進入を許容する構成とされる。
【0036】
更に説明を続けると、保持材200は、横断面が略H形状とされ、その四つの端縁203〜206がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成する。四つの支点203〜206がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面の360度の円周角にわたり内接してバランスの良い支持点を形成しているので、安定した位置決め状態の設置を実現できる。
そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
【0037】
この保持材200も、例えばプラスチックの押出成形法により、横断面が略H形状の均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。そして、この保持材200の凹溝201へナット6を保持させる縦溝202を形成し、同縦溝202へナット6の平行2面を押し込んで保持させることによりナット保持部材18が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
図12は、保持材200へナット6を1個だけ保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同保持材200の凹溝182の長手方向に間隔を開けて必要数の縦溝202を形成して、ナット6を同じ向きに必要数保持させることができる。或いは必要に応じて反対側の凹溝201へも縦溝を形成して向きが異なる複数のナットを保持させることができる。また、形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させて実施することもできる。
【実施例7】
【0038】
次に、実施例7として図14と図15に示したナット保持部材21を説明する。
本実施例7のナット保持部材21は、図15に示すとおり、横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで横断面の基本形が円形の保持材210において、その円弧の一部を削った平面部211へナット6が嵌め込まれ、同平面部211とは反対側に、矩形溝形状の肉盗み212をできるだけ大きく形成した構成である。
更に説明すると、この保持材210は、横断面の基本形を円形に形成された円弧状外周部213と214がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点となる。
特に言えば、図15で明かなとおり、前記二つの支点213と214は、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ360度の円周角の約半分以上にわたり内接するので安定した位置決め状態の設置を実現できる。そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
【0039】
この保持材210も、例えばプラスチックの押出成形法により、均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。この保持材210の平面部211に、ナット6より少し大きい相似な六角形のナット嵌め込み部215を形成し、このナット嵌め込み部215へナット6を押し込んで保持させることによりナット保持部材19が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
なお、本実施例の場合には、ナット嵌め込み部215から矩形溝形状の肉盗み212に向かって貫通する、ボルト15のネジ軸部の進入を許容する逃がし孔216(ルーズホール)を設ける。
【0040】
上記のように貫通孔状態に設ける逃がし孔216(ルーズホール)形状と大きさは、ナット6へねじ込まれたボルトの先端部が突き当たって干渉を起こすことが無く、そして、保持材210の使用材料量の減量化と軽量化の目的に叶う肉盗みとして合理的な形態に形成する。一方、上面を前記ナット嵌め込み部215の段部へ座らせたナット6の座面は、保持材210の外周面(外径面)以上には出っ張らず、同保持材210をパイプ13の中空部内へ挿入する作業に支障ない構成とする。即ち、同保持材210の外周面よりもナット6の座面は少し沈み込むが、外周面近傍へ露出する状態にナット嵌め込み部215内へ嵌め込まれる。
【0041】
図14は、保持材210へ1個のナット6を保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同平面部211の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに保持させることができる。
場合によっては平面部211を2以上平行に形成するか、又は平面部を一切形成しないで、円弧状外周面の所望位置へ直接ナット嵌め込み部215を形成して、必要な向きに必要な数のナット6を保持させることもできる。必要によっては形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させることもできる。
【実施例8】
【0042】
次に、実施例8として図16と図17に示したナット保持部材22を説明する。
本実施例8のナット保持部材22は、図17に示すとおり、横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで横断面の基本形が円形の保持材220において、その円弧の一部を削った平面部221へナット6が嵌め込まれ、同平面部221とは反対側に、矩形溝形状の肉盗み222をできるだけ大きく形成した構成である。
【0043】
更に説明すると、この保持材220は、横断面の基本形をパイプ13の内径よりも少し小さい円形に形成された円弧状外周部の直交4方向(円周角にして90度間隔、但し120度間隔の3方向、又は等間隔ないし不等間隔の5方向以上でも可。)に、パイプ13の内周面へ接する突条223〜226が形成され、各突条223〜226がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成する。
こうして前記四つの支点223〜226は、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ360度の円周角にわたり内接するので、安定した位置決め状態の設置を実現できる。そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
【0044】
本実施例の保持材220も、例えばプラスチックの押出成形法により、均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。この保持材220の平面部221に、ナット6より少し大きい相似な六角形のナット嵌め込み部227を形成し、このナット嵌め込み部227へナット6を押し込んで保持させることによりナット保持部材22が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。
なお、本実施例の場合も、ナット嵌め込み部227から矩形溝形状の肉盗み222に向かって貫通する、ボルト15のネジ軸部の逃がし孔228を設ける。
図16は、保持材220へ1個のナット6を保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同平面部221の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに保持させることができる、場合によっては平面部221を2以上平行に形成するか、又は平面部を一切形成しないで、円弧状外周面の所望位置へ直接ナット嵌め込み部227を形成して必要な向きに必要な数のナット6を保持させることもできる。必要によっては形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させることもできる。
【実施例9】
【0045】
次に、実施例9として図18と図19に示したナット保持部材23を説明する。
本実施例9のナット保持部材23は、図19に示すとおり、横断面が円形に閉じたパイプ13の中空部内へ挿入可能な大きさで、横断面の基本形が矩形の保持材230において、その一平面部231へナット6が嵌め込まれ、同平面部231とは反対側に、矩形溝形状の肉盗み232をできるだけ大きく形成した構成である。
更に説明すると、この保持材230は、横断面の基本形をパイプ13の内周面へ内接する矩形に形成された4隅の面取りした角部233〜236がそれぞれ、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ丁度内接して支持される支点を形成する。
こうして前記四つの支点233〜236は、円形に閉じた中空形状をなすパイプ13の内周面へ360度の円周角にわたり内接するので、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせしてねじ込む操作に伴う程度の突き当たり作用力(又は押し込み力)に対しても、同パイプ13の管軸に対して直交する方向への移動は制限される。
そして、保持したナット6は、パイプ13に設けたボルト孔13aと同心位置へきっちりと相対峙させることができ、パイプ13に加えられる一定強さの振動や、ボルト孔13aを通じて挿入したボルト15をナット6のネジ孔と位置合わせする操作に伴う程度の突き当たり作用力ぐらいでは、決して位置ズレや脱落を生じない安定性を発揮する。
【0046】
この保持材230も、例えばプラスチックの押出成形法により、均等断面材としてパイプ13の管軸方向に長い形態に成形し、それを必要な長さに裁断して構成される。この保持材230の平面部231に、ナット6より少し大きい相似な六角形のナット嵌め込み部237を形成し、このナット嵌め込み部237へナット6を押し込んで保持させることによりナット保持部材23が構成されている。したがって、ナット6がボルトのネジ込み時に共回りする不都合は生じない。なお、本実施例の場合も、ナット嵌め込み部237から矩形溝形状の肉盗み232に向かって貫通する、ボルト15のネジ軸部の逃がし孔238を設ける。
図18は、保持材230へ1個のナット6を保持させた構成を示すが、この限りではない。必要に応じて同平面部231の長手方向に間隔を開けて必要数のナット6を同じ向きに保持させることができる、場合によっては他の平面部の所望位置へナット嵌め込み部237を形成して必要な向きに必要な数のナット6を保持させることもできる。
必要によっては形状と大きさ(ネジ孔径)が異なるナットを同様の手法で保持させることもできる。
【実施例10】
【0047】
次に、実施例10として図20に示したナット保持部材20を説明する。
図20には、上記図12と図13に示した実施例6のナット保持部材20を用い、横断面が四角形に閉じたパイプ13’の中空部内へ挿入して、上下のフランジ相当部209がパイプ13’の上下辺の内面へ密接した状態で使用される実施例を示している。
【実施例11】
【0048】
また、実施例11として図21には、図18と図19に示した実施例9のナット保持部材23を用い、横断面が四角形に閉じたパイプ13’の中空部内へ挿入して、上下のフランジ相当部239がパイプ13’の上下辺の内面へ密接した状態で使用される実施例を示している。
上記実施例10、11のナット保持部材20、23も、上記の該当する各実施例と全く同様に使用でき、同様な機能を発揮することを例示したものである。
更にいうと、図示することまでは省略したが、パイプの横断面の形状が六角形や多角形であっても、用いる保持材の断面形状や大きさを少し修正して用いることにより、問題なく適用でき、多様に実施して上記した作用効果を等しく得られるという、応用例を実施例10と11に例示したものと理解されたい。
【0049】
また、本願の実施例1〜9では、横断面が円形に完全に閉じた管状部材(パイプ)のボルト接合について例示しているが、例えば道路用防護柵に使用するインナースリーブのように、管軸方向に目地隙間を備えて完全に閉じていない略閉鎖断面の管状部材にも全く同様に適用できる。
また、本願の上記実施例1〜11では、横断面が円形に閉じた管状部材(パイプ)のボルト接合について、管状部材と接合する相手部材をおよそ省略して図示しているが、図示は省略した道路用防護柵を構成するビームパイプやブラケットのような相手部材と管状部材をボルト接合することにも同様に適用できるものである。
【0050】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。
【符号の説明】
【0051】
1 支柱
13、13’パイプ
13a ボルト孔
14〜23 ナット保持部材
15 ボルト
140〜230 保持材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト孔を有する管状部材とボルト孔を有する相手部材とをボルト接合する際に前記管状部材の中空部内に挿入して使用するナット保持部材であって、
前記ナット保持部材の外周形状は、前記管状部材の内周面へ内側から接し、同管状部材の管軸に対して直交する方向への移動が制限される形状であり、
このナット保持部材の外周部に、ボルトのねじ込みに対してナットを共回りしない状態に保持するナット嵌め込み部が形成され、同ナット嵌め込み部にナットが保持されていることを特徴とする、ナット保持部材。
【請求項2】
ナット嵌め込み部は、奥部にナットが座る段部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載したナット保持部材。
【請求項3】
ナット嵌め込み部は、ナットを嵌め込む凹部として、又は少なくともナットの平行2面を嵌め込む溝状部として形成され、前記ナット嵌め込み部に保持されたナットは、ねじ込まれたボルトと共回りしない程度に緩く保持されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したナット保持部材。
【請求項1】
ボルト孔を有する管状部材とボルト孔を有する相手部材とをボルト接合する際に前記管状部材の中空部内に挿入して使用するナット保持部材であって、
前記ナット保持部材の外周形状は、前記管状部材の内周面へ内側から接し、同管状部材の管軸に対して直交する方向への移動が制限される形状であり、
このナット保持部材の外周部に、ボルトのねじ込みに対してナットを共回りしない状態に保持するナット嵌め込み部が形成され、同ナット嵌め込み部にナットが保持されていることを特徴とする、ナット保持部材。
【請求項2】
ナット嵌め込み部は、奥部にナットが座る段部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載したナット保持部材。
【請求項3】
ナット嵌め込み部は、ナットを嵌め込む凹部として、又は少なくともナットの平行2面を嵌め込む溝状部として形成され、前記ナット嵌め込み部に保持されたナットは、ねじ込まれたボルトと共回りしない程度に緩く保持されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したナット保持部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−47236(P2012−47236A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188780(P2010−188780)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
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