説明

ナテグリニドの多形形態

ナテグリニドの結晶形態とその作製方法が提示してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
【0002】
本出願は、2005年5月7日に出願されたアメリカ合衆国仮出願シリアル番号第60/569,047号の恩恵を主張する。なおその開示内容は、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0003】
本発明は、ナテグリニドの固体状態の化学に関する。
【背景技術】
【0004】
ナテグリニドは(-)-N-(トランス-4-イソプロピルシクロヘキサンカルボニル)-D-フェニルアラニンとして知られており、以下の構造と特徴を有する。
【0005】
【化1】

【0006】
化学式:C19H27NO3
分子量:317.42
正確な質量:317.199093
組成:C71.89%、H8.57%、N4.41%、O15.12%
【0007】
ナテグリニドはスターリックスとして市販されており、2型糖尿病を治療するために用量が60mgと120mgの経口錠剤として処方される。スターリックスは、単独で使用することにより、またはメタフォルミンと組み合わせて使用することにより、膵臓を刺激してインスリンを分泌させる。スターリックスのメーカーによればナテグリニドは白色の粉末であり、メタノール、エタノール、クロロホルムには自由に溶け、エーテルには溶け、アセトニトリルとオクタノールには発泡しながら溶け、水にはほとんど溶けない。
【0008】
本発明は、固体状ナテグリニドの物理的性質に関する。その性質は、固体形態のナテグリニドが得られる条件を制御することによって変えることができる。固体形態の物理的性質としては、例えば、粉砕した固体の流動性が挙げられる。流動性は、その材料を医薬製品に加工するときの取り扱いやすさに影響を与える。粉末化した化合物の粒子が互いに滑らかに流れないと、製剤の専門家は、その事実を考慮して錠剤またはカプセルを開発せねばならない。すると流動促進剤として、例えばコロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプン、三塩基性リン酸カルシウムなどが必要となる可能性がある。
【0009】
固体状医薬化合物に関する別の重要な性質は、水性流体への溶解速度である。患者の胃液に活性成分が溶解する速度が、治療結果を左右する可能性がある。なぜならその溶解速度が、経口投与した活性成分が患者の血流に到達できる速度の上限を決めるからである。溶解速度は、シロップやエリキシル、あるいは他の液体医薬を製造する際にも考慮される。化合物の固体形態は、圧縮や貯蔵安定性に関する挙動にも影響を与える可能性がある。
【0010】
こうした実際的な物理的性質は、ある物質の特定の多形形態を規定する分子の立体配座と方向が、単位セル内でどのようになっているかの影響を受ける。その多形形態により、アモルファス材料や別の多形形態とは異なった熱的挙動が生じる可能性がある。熱的挙動は、実験室において例えばキャピラリー融点法、熱重量測定分析(TGA)法、示差走査熱量測定(DSC)法などの方法で測定され、その結果を利用すると、ある多形形態を別の多形形態と区別することができる。特定の多形形態は、他とは異なる分光的性質も生じさせる可能性がある。それは、粉末X線結晶測定、固体状態のCのNMR分光法、赤外分光法によって検出することができる。
【0011】
ナテグリニドはさまざまな結晶形態で存在する。アメリカ合衆国特許第5,463,116号と第5,488,150号には、ナテグリニドの2つの結晶形態(B型とH型)と、その作製方法が開示されている。形態に関するこの2つの特許の開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。両方の形態は、融点、X線回折パターン、KBr中のIRスペクトル、DSCサーモグラムに特徴がある。この2つの特許によると、B型は融点が129〜130℃であるのに対し、H型は融点が136〜142℃である。この2つの特許によると、H型結晶は、2θが8.1、13.1、19.6、19.9±0.2°の位置にピークを持ち、2θが15と17±0.2°の間に強い反射を有することを特徴とする。B型結晶は、これらのピークがなく、2θが15と17±0.2°の間に弱い反射を有すると報告されている。H型結晶は、IRスペクトルにおいて約1714、1649、1542、1214cm-1の位置に特徴的な吸収を有すると報告されている。B型結晶にはこれらの吸収がないと報告されている。
【0012】
アメリカ合衆国特許第5,463,116号によると、B型結晶は、DSCによってわかるように、不安定で粉砕中に変化しやすい。B型結晶のDSCサーモグラムでは、粉砕前には131.4℃の位置に鋭い吸熱があるのに対し、H型結晶に関するDSCサーモグラムでは、140.3℃の位置に鋭い吸熱があることがわかる。粉砕後、B型結晶のDSCサーモグラムには第2の吸熱が138.2℃の位置に見られる。これは、粉砕の間に固体-固体変換が起こったことを示唆している。
【0013】
アメリカ合衆国特許第5,463,116号によると、結晶化と濾過の温度が、結晶形態がB型になるかH型になるかを決定する。温度が10℃を超える(15℃を超えることが好ましい)とH型になるのに対し、温度が10℃未満だとB型が形成される。
【0014】
S型と名づけられたナテグリニドの別の結晶形態が、中国の2つの論文に開示されている。それは、ACTA Pharm. Sinica、2001年、第36巻(7)、532〜534ページと、Yaowu Fenxi Zazhi、2001年、第21巻(5)、342〜344ページである。S型は、融点が172.0℃であること、フーリエ変換IRが3283cm-1の位置にピークを持つこと(ピークは、B型では3257cm-1、H型では3306cm-1と考えられる)、X線回折パターンが2θ=3.78±0.2°の位置に強いピークを持つことにより、B型およびH型と区別することができる。
【0015】
WO 03/076393には、ナテグリニドの塩が開示されている。
【0016】
医薬として役立つ化合物の新しい多形形態が発見されると、医薬製品の性能を向上させる新たな機会が提供される。そのような発見により、例えば望む放出プロファイルやそれ以外の望む性質を有する薬の投与形態を製剤の研究者が設計する際に利用できる材料のレパートリーが広がる。今や、ナテグリニドの新しい多形形態が発見されたのである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの特徴により、2θが4.2、4.9、12.7、13.4、14.8、15.8、17.5、19.3±0.2°の位置にピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、ナテグリニドのアンモニウム塩の結晶形態(ファイ型)が提供される。
【0018】
本発明の1つの特徴により、この結晶形態を作製する方法であって、塩基性条件下でアンモニアの存在下にて水とメタノールの混合物からその結晶形態を沈澱させ、その結晶形態を回収する操作を含む方法が提供される。
【0019】
一実施態様では、この方法は、
a)水とメタノールの混合物とナテグリニドからなる酸性混合物を調製し;
b)その混合物を塩基およびアンモニウム・イオン供給源と混ぜて沈殿物を取得し;
c)ナテグリニドのアンモニウム塩の結晶形態を回収する操作を含んでいる。
【0020】
別の実施態様では、この方法は、
a)水と、メタノールと、塩基と、アンモニウム・イオン供給源との混合物にナテグリニドが含まれた異種混合物を調製し;
b)その混合物から結晶形態を沈澱させ;
c)その結晶形態を回収する操作を含んでいる。
【0021】
本発明の別の特徴により、2θが3.9、4.8、8.8、14.5、17.8、19.1、20.0±0.2°の位置にピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、ナテグリニドの結晶形態(ラムダ型)が提供される。
【0022】
本発明の別の特徴により、この結晶形態を作製する方法であって、水とアセトンの混合物にナテグリニドを混ぜた混合物からその結晶形態を結晶化させる操作を含む方法が提供される。
【0023】
医薬組成物も提供され、さらに、哺乳動物の血中グルコースのレベルを低下させるため、その医薬組成物を必要としている哺乳動物にその医薬組成物に投与するという方法も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明により、ナテグリニドの2つの結晶形態が提供される。それをファイ型およびラムダ型と名づける。本発明は、アメリカ合衆国出願2005/0014949、2004/0181089、2004/0116526、2005/0014836の命名システムの延長にある。
【0025】
本発明により、2θが4.2、4.9、12.7、13.4、14.8、15.8、17.5、19.3±0.2°の位置にピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、ナテグリニドのアンモニウム塩の結晶形態(ファイ型)が提供される。実際の粉末X線回折パターンを図1に示す。ファイ型は、塩基性条件下でアンモニウム・イオンの存在下にて水とメタノールの混合物から作製することができる。アンモニウム塩は、結晶の作製に使用できるだけでなく、ナテグリニドの精製にも用いることができる。
【0026】
一実施態様では、ファイ型は、ナテグリニドと、メタノールと、水とを含む酸性混合物から沈澱させることによって得られる。この混合物は、メタノールと水が約1:1(v/v)〜約4:1(v/v)の混合物を含んでいることが好ましい。この比は、約3:1であることがより好ましい。ナテグリニドは、メタノールには自由に溶けるが、水には溶けない。水とメタノールの比は、溶液が得られるように選択することが好ましい。酸性混合物の好ましいpHは約4である。水とメタノールの混合物を加熱すると、その混合物へのナテグリニドの溶解度を大きくすることができる。適切な温度は、約30℃〜約50℃である。より好ましい温度は約40℃である。
【0027】
ファイ型の結晶化は、沈澱が起こるまでナテグリニド含有酸性混合物を塩基性にすることによって実現される。塩基とアンモニウム・イオン供給源の両方に使用できる塩基性試薬を用いることが好ましい。沈澱の発生は、混合物の曇りを観察することによって、あるいは比較的少数の結晶形成を観察することによってわかる。塩基を用いて混合物のpHを約5以上にすることが好ましい。結晶化をさらに誘導するには、反応混合物を冷却するとよい。冷却温度は、約-10℃〜約10℃が好ましい。結晶は、従来法(例えば濾過)によって回収することができる。
【0028】
別の一実施態様では、ファイ型は、メタノールと、水と、塩基との混合物にナテグリニドを混ぜた異種混合物から得ることができる。塩基とアンモニウム・イオン供給源の両方に使用できる塩基性試薬を用いることが好ましい。そのような塩基性試薬は、相対的に不溶性のアンモニウム塩(ファイ型)を形成させる。pHは、約5以上であることが好ましい。メタノールと水の比は、約8:1(v/v)であることが好ましい。この混合物を十分な時間撹拌することが好ましい。得られた混合物を加熱するとよい。加熱温度は、約30℃〜約50℃であることが好ましい。より好ましいのは、混合物を約40℃の温度に加熱することである。この混合物を冷却して収率を大きくすることができる。冷却温度は、約-10℃〜約10℃が好ましい。結晶は、従来法(例えば濾過)によって回収することができる。
【0029】
塩基を用いて反応混合物のpHを5よりも大きくすると沈澱が増える。
【0030】
本発明により、2θが3.9、4.8、8.8、14.5、17.8、19.1、20.0±0.2°の位置にピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、ナテグリニドの結晶形態(ラムダ型)も提供される。実際の粉末X線回折パターンは、図2に対応する。ラムダ型は、水とアセトンの混合物から結晶化させることによって得られる。この混合物は、アセトンと水の比が約4:1〜約1:1(v/v)であることが好ましい。水とアセトンの混合物にナテグリニドを混ぜて混合物にする。この混合物を加熱すると溶解を促進することができる。一実施態様では、この混合物を約30℃〜約40℃に加熱する。より好ましい温度は約35℃である。
【0031】
一実施態様では、溶解後、混合物を冷却して結晶化を誘導する。冷却温度は、約-10℃〜約10℃が好ましい。結晶は、従来法(例えば濾過)によって回収することができる。
【0032】
得られた結晶形態を乾燥させるとよい。減圧下(1気圧未満)で乾燥させることが好ましい。この圧力は、約100mmHg未満であることが好ましい。
【0033】
従来技術の範囲で、本発明の方法におけるpHを塩基を用いて調節することができる。塩基としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の水素化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、塩基性アルミナ、水酸化アンモニウムなどがある。具体的な塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウムなどがある。アンモニウム塩を形成するときには、塩基を形成するとともにアンモニウム・イオン供給源にもなるイオン性試薬を用いるとよい。
【0034】
本発明の方法で用いる出発材料としては、ナテグリニドの任意の結晶形態またはアモルファス形態が可能であり、その中にはさまざまな溶媒和物や水和物が含まれる。結晶化プロセスでは、通常は、出発材料の結晶形態が最終結果に影響を与えることはない。当業者であれば、従来法によって出発材料を操作し、研和によって望む形態を得ることができよう。
【0035】
本発明の方法は、ナテグリニドを合成する従来法の最終ステップとして実施することもできる。
【0036】
本発明による多くの方法には、特定の溶媒から結晶化させる操作が含まれている。当業者であれば、得られた多形形態に影響を与えることなく、結晶化の条件を変更することができよう。例えばナテグリニドを溶媒に混合して溶液にするとき、その混合物を加熱して出発材料を完全に溶かす必要があろう。加熱によって混合物が透明化しない場合には、その混合物を希釈または濾過するとよい。濾過するには、加熱した混合物を紙、ガラス・ファイバー、または他の膜材料を通過させるか、透明化剤(例えばセライト)を用いるとよい、使用する装置が何であるかと、溶液の濃度と温度がどのようであるかに応じ、早すぎる段階で結晶化が起きないように濾過装置をあらかじめ温めておく必要があろう。
【0037】
条件を変更して沈澱を誘導することもできる。沈澱を誘導する好ましい方法は、溶媒の溶解度を小さくすることである。溶媒の溶解度は、例えば溶媒を冷却することによって小さくできる。
【0038】
一実施態様では、抗溶媒を溶液に添加し、その溶液に対する特定の化合物の溶解度を小さくすることができる。すると沈澱が起こる。結晶化を促進する別の方法は、生成物の種結晶を用いたり、ガラス棒で結晶化容器の内面を引っ掻いたりするというものである。結晶化は、まったく誘導せずに自発的に起こることもある。
【0039】
所定の粒径を持つナテグリニドは、ナテグリニドの新しい結晶形態の結晶、粉末凝集体、粉末途上物から出発し、粒径を小さくするための公知の方法で作ることができる。粒径を小さくするための従来法における主要な操作は、供給材料を粉砕し、粉砕された材料をサイズによって分類するというものである。
【0040】
流体エネルギー・ミル、すなわち微粉化装置は、粒径分布の狭い小さな粒子を作ることができるため、特に好ましいタイプのミルである。当業者であればわかるように、微粉化装置では、高速の流体流の中に懸濁させた粒子同士が衝突する運動エネルギーを利用して粒子を粉砕する。空気ジェット・ミルは、好ましい流体エネルギー・ミルである。懸濁した粒子を加圧し、循環している粒子流の中に注入する。より小さな粒子がミルの内部に浮遊した状態になり、粒径分類装置(例えばサイクロ(登録商標)ン)に接続された掃気口に流し込まれる。供給材料は、粉砕してまず最初に約150〜850μmにする必要がある。そうするには、従来からあるボール・ミル、ローラー・ミル、ハンマー・ミルを用いることができる。当業者であれば、粒径を小さくする間にある結晶形態から別の結晶形態へと変化する可能性のあることがわかるであろう。
【0041】
医薬組成物は、経口投与、非経口投与、直腸投与、経皮投与、口内投与、鼻腔内投与するための薬にすることができる。経口投与に適した形態としては、錠剤、圧縮されたピル、コーティングされたピル、ドラジェ、サッシェ、硬いカプセル、ゼラチン・カプセル、舌下錠、シロップ、懸濁液などがある。非経口投与に適した形態としては、水溶液、非水性溶液、水性エマルジョン、非水性エマルジョンなどがあり、直腸投与に適した形態としては、親水性ビヒクルまたは疎水性ビヒクルを用いた座薬などがある。本発明では、局所投与のためには従来技術で知られている適切な経皮送達系が利用され、鼻腔内送達のためには、従来技術で知られている適切なエーロゾル送達系が利用される。
【0042】
医薬組成物は、単一の形態のナテグリニドを含むこと、またはナテグリニドのさまざまな形態の混合物を含むことができる。本発明の医薬組成物は、活性成分に加え、1種類以上の賦形剤またはアジュバントを含んでいてもよい。賦形剤を何にするかとその使用量は、製剤の専門家であれば、この分野での標準的な手続きと参考となる研究に関する経験と考察に基づいて容易に決定することができる。
【0043】
希釈剤によって固体医薬組成物の体積が増えるため、その組成物を含む医薬投与形態を患者や看護人が取り扱いやすくなる。固体組成物のための希釈剤としては、例えば、微結晶セルロース(例えばAvicel(登録商標))、マイクロファイン・セルロース、ラクトース、デンプン、あらかじめゼラチン化したデンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖類、デキストレート、デキストリン、デキストロース、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、三塩基性リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えばEudragit(登録商標))、塩化カリウム、粉末化したセルロース、塩化ナトリウム、ソルビトール、タルクなどがある。
【0044】
圧縮によって投与形態(例えば錠剤)にされた固体医薬組成物は、賦形剤を含んでいてもよい。賦形剤の機能は、圧縮後に活性成分と他の賦形剤を一体化するのを助けることである。固体医薬組成物の結合剤としては、アラビアゴム、アルギン酸、カルボマー(例えばカルボポール)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアルゴム、水素化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えばKlucel(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばMethocel(登録商標))、液体グルコース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン(例えばKollidon(登録商標)、Plasdone(登録商標))、あらかじめゼラチン化したデンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプンなどがある。
【0045】
圧縮した固体医薬組成物が患者の胃の中で溶ける速度は、その組成物に分解剤を添加することによって大きくできる。分解剤としては、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えばAc-Di-Sol(登録商標)、Primellose(登録商標))、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えばKollidon(登録商標)、Polyplasdone(登録商標))、グアルゴム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポラクリリンカリウム、粉末化したセルロース、あらかじめゼラチン化したデンプン、アルギン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン(例えばExplotab(登録商標))、デンプンなどがある。
【0046】
流動促進剤を添加して圧縮されていない固体組成物の流動性を大きくするとともに、用量をより正確にすることができる。流動促進剤として機能する賦形剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末化したセルロース、デンプン、タルク、三塩基性リン酸カルシウムなどがある。
【0047】
粉末化した組成物を圧縮することによって錠剤などの投与形態を製造する場合、その組成物にパンチまたはダイで圧力を加える。賦形剤や活性成分によっては、パンチまたはダイの表面に付着する傾向がある。すると製品の表面に窪みその他の凹凸が生じる可能性がある。潤滑剤を組成物に添加して付着を減らすことにより、製品がダイから離れやすくすることができる。潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化ひまし油、水素化植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸亜鉛などがある。
【0048】
着香剤と調味料により、投与形態が患者にとってより好ましい風味になる。本発明の組成物に含まれていてもよい医薬製品用の一般的な着香剤および調味料としては、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール、酒石酸などがある。
【0049】
固体組成物と液体組成物を薬理学的に許容可能な着色剤を用いて染色し、外観を向上させること、および/または患者にとって製品と単位投与量のレベルをわかりやすくすることもできる。
【0050】
本発明の液体医薬組成物では、ナテグリニドと他の任意の固体賦形剤を液体基剤(例えば水、植物油、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン)に溶解または懸濁させる。
【0051】
液体医薬組成物は、活性成分を、あるいは液体基剤に溶けないそれ以外の賦形剤を組成物全体に均一に分散させるための乳化剤を含んでいてもよい。本発明の液体組成物で有用な乳化剤としては、例えば、ゼラチン、卵黄、カゼイン、コレステロール、アラビアゴム、トラガカント、ツノマタ、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、セトステアリルアルコール、セチルアルコールなどがある。
【0052】
本発明の液体医薬組成物は、製品の口当たりを改善するため、および/または胃腸管の内壁をコーティングするための増粘剤を含むこともできる。そのような増粘剤としては、アラビアゴム、アルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セトステアリルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、グアルゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、炭酸プロピレン、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン、デンプン、トラガカント、キサンタンゴムなどがある。
【0053】
甘味剤(例えばソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、アスパルテーム、フルクトース、マンニトール、転化糖)を添加して風味を改善することができる。
【0054】
摂取しても安全なレベルで保存剤やキレート剤(例えばアルコール、安息香酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、エチレンジアミン四酢酸)を添加し、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0055】
本発明によれば、液体組成物は、緩衝液(例えば、グコン酸、乳酸、クエン酸、酢酸、グコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)も含んでいてよい。
【0056】
賦形剤を何にするかとその使用量は、製剤の専門家であれば、この分野での標準的な手続きと参考となる研究に関する経験と考察に基づいて容易に決定することができる。
【0057】
本発明の固体組成物としては、粉末、顆粒、凝集体、圧縮した組成物などがある。投与形態としては、経口投与、口内投与、直腸投与、非経口投与(例えば皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与)、吸入投与、眼内投与に適した投与形態が挙げられる。どの場合でも、最適な投与経路は治療する疾患の性質と程度によって異なることになろうが、本発明で最も好ましい経路は経口である。投与形態は単位用量の形態で提示するのが便利であり、薬理学でよく知られている任意の方法で投与形態を調製することができる。
【0058】
投与形態としては、錠剤、粉末、カプセル、座薬、サッシェ、トローチ、ロゼンジなどの固体投与形態と、液体シロップ、懸濁液、エリキシルなどがある。
【0059】
本発明の投与形態は、組成物(本発明の固体組成物を粉末化または顆粒化したものが好ましい)を硬いシェルまたは柔らかいシェルの中に含むカプセルにすることができる。その組成物は、本発明の固体組成物を粉末または顆粒にしたものであることが好ましい。シェルはゼラチンで作ることができ、場合によっては可塑剤(例えばグリセリンやソルビトール)と、不透明化剤または着色剤とを含んでいてもよい。
【0060】
活性成分と賦形剤は、従来技術で知られている方法に従って組成物や投与形態にすることができる。
【0061】
錠剤またはカプセルに詰める組成物は、湿式顆粒化によって調製することができる。湿式顆粒化では、粉末の形態になった活性成分と賦形剤の一部または全体を混合した後、液体(一般に水)の存在下でさらに混合して粉末を凝集させ、顆粒にする。顆粒をスクリーニングおよび/または粉砕し、乾燥させ、さらにスクリーニングおよび/または粉砕し、望む粒径にする。その後、顆粒を錠剤にしたり、他の賦形剤(例えば流動促進剤および/または潤滑剤)を添加した後に錠剤化したりすることができる。
【0062】
錠剤組成物は、通常は乾式混合によって調製することができる。例えば活性成分と賦形剤の混合組成物を圧縮してスラグまたはシートにした後、粉末化して圧縮顆粒にすることができる。その後、圧縮顆粒を圧縮すると錠剤になる。
【0063】
乾式混合に代わる方法として、混合した組成物を直接圧縮することによって圧縮された投与形態にすることもできる。直接的な圧縮により、顆粒のない、より均一な錠剤が得られる。直接圧縮錠剤化に特に適した賦形剤としては、微結晶セルロース、スプレー乾燥させたラクトース、リン酸二カルシウム二水和物、コロイド・シリカなどがある。直接圧縮錠剤化におけるこれらの賦形剤または他の賦形剤の適切な使用法は、直接圧縮錠剤化という特別な製剤化に挑戦した経験と技術のある当業者には公知である。
【0064】
本発明のカプセル充填物としては、錠剤化に関して説明した上記の混合物と顆粒のうちの任意のものが可能であるが、それらに対して最終錠剤化ステップは実施しない。
【0065】
スターリックスの用量と製剤をガイドとして利用することができる。用量は、ナテグリニドが約30〜約240mgであることが好ましい。より好ましいのは、ナテグリニドが約60〜約120mgになっていることである。本発明の医薬組成物(コーティングした錠剤の形態が好ましい)は、食事の約10分前〜約1時間前に投与する。より好ましいのは、毎度の食事の約15分前に投与することである。食事を抜いたときには投与しない。この医薬組成物は、メタフォルミンと組み合わせて使用することもできる。
【0066】
粉末X線回折
【0067】
X線回折は、粉末X線回折装置(シンタグ社)、可変ゴニオメータ、Cu管、固体検出器を用いて行なった。サンプル・ホルダ:バックグラウンドがゼロの丸い水晶板が付いた丸い標準的なアルミニウム製サンプル・ホルダ。サンプルをサンプル・ホルダの上に置き、そのまま直ちに分析した。走査パラメータ:範囲は2θが2〜40°、連続走査、速度は3°/分。
【実施例】
【0068】
1.φ(ファイ)型の調製
【0069】
メタノール(280ml)と水(120ml)の混合物を39℃に加熱した。ナテグリニド(20g)を添加し、pHを4にして30分間にわたって撹拌して溶かした。5gの24%水酸化アンモニウム溶液をこの混合物に一滴ずつ垂らしてpHを5にした。この時点で微粒子が出現した。この混合物を5時間にわたって0℃に冷却し、この温度で1時間にわたって撹拌した後、真空下で濾過した。湿ったナテグリニドが30.69g得られた。この湿った生成物を真空下で90℃にて一晩にわたって(約12時間)乾燥させた。乾燥したナテグリニドが12g得られた。
【0070】
2.φ(ファイ)型の調製
【0071】
メタノール(280ml)と、水(60ml)と、2gの24%NH4OH溶液との混合物を40℃に加熱した。ナテグリニドを20g添加し、30分間にわたって撹拌したが、溶けなかった。この混合物を5時間にわたって0℃に冷却し、この温度で1時間にわたって撹拌した後、真空下で濾過した。湿ったナテグリニドが16.41g得られた。この湿った生成物を真空下で一晩にわたって(約12時間)乾燥させた。乾燥したナテグリニドが7.54g得られた。
【0072】
3.λ(ラムダ)型の調製
【0073】
4050mlのアセトンと、2700mlの水と、450gのナテグリニドを混合し、35℃に加熱した。この温度で溶解はほぼ完全であった。この混合物を濾過して溶けない材料を除去した。この溶液を20℃に冷却した。この溶液を10時間にわたって-10℃に冷却した。沈澱が8℃で起こった。この混合物を-10℃で3時間にわたって撹拌した後、真空下で濾過した。湿ったナテグリニドが747.4g得られた。この湿った生成物を真空下で一晩にわたって(約12時間)乾燥させた。乾燥したλ型のナテグリニドが392.4g得られた。
【0074】
本発明を特に好ましい実施態様と具体的な実施例を参照してこれまで説明してきたが、当業者であれば、この明細書に開示した本発明の精神と範囲を逸脱することなく、説明を行なった本発明の変形例を思いつくはずである。実施例は本発明の理解を助けるために提示したのであり、いかなる意味でも本発明の範囲がその実施例に限定されると考えてはならない。実施例には、従来法に関する詳細な説明は含まれていない。そのような方法は当業者には周知であり、多数の出版物に記載されている。「医薬用固体、薬、薬理科学における多形」、第95巻をガイドとして使用できる。この明細書で言及したあらゆる参考文献は、その全体がこの明細書に組み込まれているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ナテグリニドアンモニウムのファイ型に関する粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【図2】ナテグリニドのラムダ型に関する粉末X線回折(XRPD)パターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2θが4.2、4.9、12.7、13.4、14.8、15.8、17.5、19.3±0.2°の位置にピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、ナテグリニドのアンモニウム塩の結晶形態(ファイ型)。
【請求項2】
実質的に図1に示した粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
請求項1に記載の結晶形態を作製する方法であって、塩基性条件下でアンモニアの存在下にて水とメタノールの混合物からその結晶形態を沈澱させ、その結晶形態を回収する操作を含む方法。
【請求項4】
a)水とメタノールの混合物とナテグリニドからなる酸性混合物を調製し;
b)その混合物を塩基およびアンモニウム・イオン供給源と混ぜて沈殿物を取得し;
c)ナテグリニドのアンモニウム塩の結晶形態を回収する操作を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記塩基の選択を、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の水素化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、塩基性アルミナ、水酸化アンモニウムからなるグループの中から行なう、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記の塩基およびアンモニウム・イオン供給源が水酸化アンモニウムである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)の水とメタノールの混合物を約30℃〜約50℃の温度に加熱する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ステップc)の前に冷却ステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
上記冷却ステップにおいて温度を約-10℃〜約10℃にする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
メタノールと水の比が約1:1(v/v)〜約4:1(v/v)である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
上記酸性混合物のpHが約4である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)におけるpHが約5以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
a)水と、メタノールと、塩基と、アンモニウム・イオン供給源との混合物にナテグリニドが含まれた異種混合物を調製し;
b)その混合物から結晶形態を沈澱させ;
c)その結晶形態を回収する操作を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
メタノールと水の比が、約8:約1(v/v)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記塩基の選択を、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の水素化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、塩基性アルミナ、水酸化アンモニウムからなるグループの中から行なう、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
上記の塩基およびアンモニウム・イオン供給源が水酸化アンモニウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ステップa)の混合物を約30℃〜約50℃の温度に加熱する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
ステップc)の前に冷却ステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
上記冷却ステップにおいて温度を約-10℃〜約10℃にする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1の結晶形態のナテグリニドと、薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項21】
哺乳動物の血中グルコースのレベルを低下させる方法であって、請求項20に記載の医薬組成物を、それを必要としている哺乳動物に投与する操作を含む方法。
【請求項22】
2θが3.9、4.8、8.8、14.5、17.8、19.1、20.0±0.2°の位置にピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、ナテグリニドの結晶形態(ラムダ型)。
【請求項23】
実質的に図2に示した粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項22に記載の結晶形態。
【請求項24】
請求項23に記載の結晶形態を作製する方法であって、水とアセトンの混合物にナテグリニドを混ぜた混合物からその結晶形態を結晶化させる操作を含む方法。
【請求項25】
水とアセトンの比が約4:1(v/v)〜約1:1(v/v)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記混合物を冷却することによって結晶化を誘導する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
冷却の際に温度を約-10℃〜約10℃にする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項22の結晶形態のナテグリニドと、薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項29】
哺乳動物の血中グルコースのレベルを低下させる方法であって、請求項28に記載の医薬組成物を、それを必要としている哺乳動物に投与する操作を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−528858(P2007−528858A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518996(P2006−518996)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/016343
【国際公開番号】WO2005/110972
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】