説明

ナトリウムイオン分離膜を用いて水素を産生するための方法およびシステム

水酸化ナトリウムおよび水から水素を産生する方法を開示する。当該方法は、ナトリウムイオン分離器中で第1水性水酸化ナトリウム流れからナトリウムを分離し、ナトリウムイオン分離器中で産生されたナトリウムをナトリウム反応器に供給し、ナトリウム反応器中のナトリウムを水と反応させ、そして第2水性水酸化ナトリウム流れおよび水素を産生することを含む。当該方法はまた、第2水性水酸化ナトリウム流れを第1水性水酸化ナトリウム流れと組み合わせることにより、第2水性水酸化ナトリウム流れを再利用することも含み得る。水素を産生するシステムも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月7日に出願された、標題「ナトリウムイオン分離膜を用いて水素を製造するための方法およびシステム」の米国特許正規出願第12/632,058号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の利益および優先権を主張する。
【0002】
政府の権利
本発明は、アルバータ社(Alberta Limited)とバッテルエネルギー同盟社(Battelle Energy Alliance, LLC)との間の共同研究開発契約の下、米国エネルギー省により授与された契約番号第DEAC05ID14517号でなされたものである。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、水素ガスを産生する方法およびシステムに関する。さらに詳細には、本発明の実施形態は、ナトリウムイオン分離膜を用いて、水酸化ナトリウムおよび水から水素ガスを産生する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
水素は、多くの人々から炭素系燃料の有望な代替エネルギーと見なされている。水素は、種々の石油系燃料/石油由来燃料の燃焼に典型的に関連する炭素酸化物、硫黄酸化物、および窒素酸化物などの温室効果ガスをはじめとする未燃炭化水素などの汚染物質を結果として産生することがないので、燃料として特に魅力的である。エネルギー輸送に加えて、水素ガスは、例えば、電子装置の製造、燃料の脱硫、アンモニアの産生、および石油源の改良においてなど、多くの工業的用途を有する。
【0005】
水素の産生に関して種々の技術および方法が知られている。水素は、宇宙で最も豊富な元素であるが、自然形態で見出されることはまれであり、むしろ:炭化水素、炭水化物、燃料、および水などの化合物で見出される。水素をこれらの化合物から水素燃料として分離することは、複雑かつ冗漫であるだけでなく、非常に費用がかかる。水素を産生するための最も一般的な方法は:電気分解、炭化水素のガス化、酵素活性、ある金属または金属化合物の水との反応、および天然ガスまたはメタノールなどの化石燃料からの抽出である。しかし、これらの方法は、直接的に汚染物質を産生するか、または大量のエネルギーを必要とするかのいずれかであり、この場合、エネルギーを産生すると汚染物質が生じる。
【0006】
一次エネルギー源として化石燃料に変わる水素などの燃料を使用する利点は多いが、気体であろうと液体であろうと、水素を前記用途に有用とするような形態で経済的に産生することができる都合の良い手段を提供する方法は1つも現れていない。
【0007】
したがって、利用されるエネルギーと消費される反応物との両方に関して効率的である、水素を生成する方法およびシステムが必要とされている。また更に、環境に優しく、望ましくない廃棄物または副生成物を産生しない方法および組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、水酸化ナトリウムおよび水から水素を産生する方法に関する。当該方法は、ナトリウムイオン分離器中で第1水性水酸化ナトリウム流れからナトリウムを分離し、ナトリウムイオン分離器中で産生されたナトリウムをナトリウム反応器へ供給し、ナトリウム反応器中のナトリウムを水と反応させ、そして第2水性水酸化ナトリウム流れおよび水素を産生することを含む。いくつかの実施形態では、当該方法は、第2水性水酸化ナトリウム流れと第1水性水酸化ナトリウム流れとを組み合わせることにより、第2水性水酸化ナトリウム流れを再利用することを更に含む。そのような実施形態では、水、水素、および酸素だけが、本発明によって産生される。
【0009】
本発明のさらなる実施形態では、ナトリウムイオン分離器中でナトリウムを第1水性水酸化ナトリウム流れから分離することは、電解セルのアノライト区画中に第1水酸化ナトリウム流れを供給し、電解セルのカソライト区画中に鉱油を供給し、そしてセル全体にわたって電位をかけることを含む。セルのアノライト区画およびカソライト区画は、セラミック膜によって隔てられ、このセラミック膜は、セル全体にわたって電位をかけると、ナトリウムカチオンをアノライト区画からカソライト区画へと選択的に輸送する。ナトリウムカチオンは、それらが膜を越えて輸送された後、電子と組み合わされて、元素ナトリウムを形成する。カソライト区画中の鉱油は、元素ナトリウムを空気および/または水分と反応することから保護する。
【0010】
本発明の方法に関連して、水酸化ナトリウムおよび水から水素を産生するシステムも提供される。当該システムは、第1水酸化ナトリウム流れからナトリウムを分離するように設定されたナトリウムイオン分離器と、ナトリウムを水と反応させて、第2水酸化ナトリウム流れおよび水素を産生するように設定された反応器とを含む。さらなる実施形態では、当該システムは、第1水酸化ナトリウム流れからナトリウムを分離するための電解セルを含む。セルは、カソードおよび鉱油を含むカソライト区画、アノードおよび水酸化ナトリウムを含むアノライト区画、ならびにセルに電圧をかけるとアノライト区画からカソライト区画へのナトリウムカチオンの流れを選択的に許容する、アノライト区画とカソライト区画とを分離するナトリウム選択性セラミック膜を含む。
【0011】
本発明のこれらの態様や他の態様は、本明細書中、以下でさらに詳細に述べる。
【0012】
明細書は、本発明として見なされるものを特に指摘し、明確に請求する特許請求の範囲で締めくくっているが、本発明の利点は、添付の図面と関連して読んだ場合に以下の詳細な説明からさらに容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の特定の実施形態にしたがって水酸化ナトリウムおよび水から水を産生するためのシステムの簡略図である。
【図2】本発明の特定の実施形態にしたがって水酸化ナトリウムおよび水から水を産生するためのシステムの簡略図である。
【図3】本発明の一実施形態による電解セルの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の水素生成システム100の実施形態を、図1において描かれた簡略図で示す。水素生成システム100は、ナトリウムイオン分離器110およびナトリウム反応器120を含む。場合によって、図2で示されるように、水素生成システム100は、ポンプ126、128、およびガス分離器124も含み得る。
【0015】
本発明の方法の一実施形態は、第1水性水酸化ナトリウム流れ104をナトリウムイオン分離器110中に供給して、ナトリウム108、水102、および酸素106を産生することを含む。ナトリウム108はナトリウム反応器120中に供給され、ここで、ナトリウム108は水114と反応して、水素112および第2水性水酸化ナトリウム流れ113を産生する。いくつかの実施形態では、第2水性水酸化ナトリウム流れ113を第1水性水酸化ナトリウム流れ104と組み合わせることによって、第2水性水酸化ナトリウム流れ113をリサイクルすることができる。図2で示すように、ポンプ126を用いてナトリウム108を加圧した後、ナトリウム108をナトリウム反応器120へ供給することができる。同様に、ポンプ128を用いて水114を加圧した後、水114をナトリウム反応器120へ供給することができる。さらに、ナトリウム反応器120中で産生された水素112をガス分離器124に供給して、精製された水素112’を産生することができる。
【0016】
水素生成システム100のナトリウムイオン分離器110は、たとえば、電解セルを含んでもよい。電解セルの一例は、米国特許出願公開第2006/0169594号(Balagopal e. al., entitled Electrolytic Method to Make Alkali Alcoholates Using Ceramic Ion Conducting Solid Membranes(この文書の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。本発明の電解セルの一実施形態を図3に示す。セル130は、容器132、カソライトチャンバー134、アノライトチャンバー136、カソード138、アノード140、および足場またはホルダー144中に位置してもよいセラミック膜142を含む。容器132、およびセル130の他の部分は、金属、ガラス、プラスチック、複合材、セラミック、他の材料、又は前記の組み合わせをはじめとする任意の好適な材料からできているものであってよい。セル130の任意の部分を形成する材料は、好ましくは、セル130がプロセスの一部としてさらされる化学物質や条件と反応性でないか、またはそのような化学物質や条件により実質的に分解されない。
【0017】
セル130は、アノライトインレット146、アノライトアウトレット148、カソライトインレット150、およびカソライトアウトレット152を更に含む。アノライトチャンバー136から放出される可能性があるガスの排出、処理および/または収集のために、ガス抜き手段154が設けられている。ガス抜き手段154は、容器132の上部の開口部、孔、もしくは穴、および/またはアノライトチャンバー136の液面より上の空間またはギャップと流体が連通するコレクションチューブ、ホース、または導管などの簡単なガス抜きシステムであってよい。
【0018】
セル130中の膜142は、アノライトチャンバー136からカソライトチャンバー134へナトリウムカチオンを選択的に輸送できる材料を含み得る。たとえば、膜142は、セラミックNaSICON(ナトリウム超イオン伝導体)材料を含み得る。NaSICON膜組成および種類は、当該技術分野で公知であり、たとえば、米国特許第5,580,430号(標題「Selective Metal Cation-Conducting Ceramics」、セラムテック(Ceramatech)に譲渡)(この文書の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。NaSICON膜142は、低温でナトリウムイオンの高いイオン電導度を示し、カソライトチャンバー134およびアノライトチャンバー136で見出すことができる他のさらなる化学成分を本質的に通さない。
【0019】
水素生成システム100のナトリウムイオン分離器110、例えば電気化学セル130は、第1水性水酸化ナトリウム流れ104を受容し、ナトリウム108、水102および酸素106に分離するような設定にすることができる。電気化学セル130は、以下の反応にしたがって水性水酸化ナトリウムを分離する:
アノード:2OH→1/2O+HO+2e 反応1
カソード:2Na+2e→2Na 反応2
全体:2NaOH→2Na+1/2O+HO 反応3
【0020】
反応1、2、および3は、誘導電流下で起こる電解反応であり、この場合、電子166が導入または除去されて、反応を引き起こす。
【0021】
本発明にしたがってナトリウム108を第1水性水酸化ナトリウム流れ104から産生する一方法は、アノライトインレット146を通ってセル130のアノライトチャンバー136中に第1水性水酸化ナトリウム流れ104を供給することによる。セル130に電位をかけて、第1水性水酸化ナトリウム流れ104をナトリウムイオン160および水酸化物イオン164に分解させる。ナトリウムイオン160を、アノライトチャンバー136から膜142を越えてカソライトチャンバー134へ輸送する。カソライトチャンバー134中で、ナトリウムイオン160をカソード138で電子166と合わせて、反応2により示されるように元素ナトリウム108を形成する。ナトリウム108は空気中で酸化し、水と非常に反応性であるので、カソライトチャンバー134を少なくとも実質的に不活性な化合物、たとえば、鉱油116で満たして、ナトリウム108を保護する。鉱油116を実質的に不活性な化合物の一例として使用するが、ナトリウムと反応しない任意の液体をカソライトチャンバー134中で使用することができる。鉱油116を、必要に応じてカソライトインレット150を通してセル130のカソライトチャンバー134中に供給する。ナトリウム108は鉱油116よりも高密度であるので、ナトリウム108は鉱油116から分離し、カソライトチャンバー134の底部を占める可能性があり、一方、鉱油116は、破線162により示されるようにカソライトチャンバー134の上部を占める。ナトリウム108はカソライトアウトレット152を通してカソライトチャンバー134から出る可能性がある。一方、アノライトチャンバー136では、水酸化物イオン164はアノード140で電子166を供与し、次いで反応1で示されるように酸素106および水102に分解する。酸素ガス106は、ベント154を通して出る可能性があり、一方、アノライトチャンバー136中で産生された過剰の水102は、アノライトアウトレット148を通してセル130から出る可能性がある。
【0022】
非限定例な例として、セル130を約80℃〜約100℃の温度で操作することができる。さらに詳細には、セルを約90℃〜約100℃の温度で操作することができる。セル130中での約80℃〜約100℃の温度範囲は、ナトリウムイオン160の膜142を越える輸送を容易にする可能性がある。加えて、ナトリウム108はこれらの温度で液相であり、したがって、さらなる溶媒を必要とすることなくナトリウム108を輸送可能にする。
【0023】
水素生成システム100中の電解セル130を操作するための電気は、石炭火力もしくはガス火力発電所または他の燃焼系発電所などの通常の電力源をはじめとする数多くの供給源から産生することができるか、または得ることができる。いくつかの実施形態では、電気は、太陽光発電、地熱、水力、風力、または原子力などのクリーンまたは再生可能なエネルギー源から生成させることができるか、または得ることができる。ナトリウムイオン分離器110中でナトリウム108を生成させるために使用される電気を産生するためにクリーンまたは再生可能なエネルギー源を使用することにより、従来の水素産生プロセスと比較して、水素生成システム100により生成する汚染物質の総量が減少する。さらなる実施形態では、ナトリウム反応器120中の反応から生じるエネルギーを収集し、使用して、ナトリウムイオン分離器にエネルギーを供給することができる。
【0024】
図1および2に戻って参照すると、ナトリウムイオン分離器110から生成されたナトリウム108をナトリウム反応器120に供給することができる。ナトリウム反応器120は、ナトリウムおよび水を水素および水酸化ナトリウムに変換することができる任意の種類の反応器を含むことができる。ナトリウム反応器120は、ナトリウム108および水114を受容し、反応させて、水素112および第2水性水酸化ナトリウム流れ113を産生するように設定されていてもよい。ナトリウム反応器120は、以下の反応にしたがってナトリウム108および水114を反応させることができる:
Na+HO→NaOH(aq)+1/2H 反応4
【0025】
ナトリウム108を液体として反応器120に供給することができる。たとえば、ナトリウム108を約98℃よりも高い温度でナトリウム反応器120に供給することができる。水114を高温水または蒸気としてナトリウム反応器120に供給することができる。ナトリウム反応器120内の反応温度および速度は、水114の供給速度および温度を制御することによって制御することができる。たとえば、水114をナトリウム反応器120に過剰に供給して、第2水性水酸化ナトリウム流れ113中の水酸化ナトリウムの濃度を制御することができる。
【0026】
ナトリウムおよび水の反応は非常に発熱性である。したがって、反応4はナトリウム反応器120中、高温および/または高圧で進行する可能性がある。たとえば、ナトリウム反応器120中の圧力は、約1気圧〜約400気圧の範囲であり得る。さらに、反応器120中の温度は、約200℃〜約900℃の範囲であり得る。ナトリウム108と水114との反応は、大量の熱を生じることが知られているので、既知熱伝達技術を使用してナトリウム108、水114、ナトリウムイオン分離器110を加熱するために、反応器120からの熱を用いることができる。
【0027】
反応4はそのような高圧で進行可能であるので、ナトリウム反応器120から産生される水素112を形成される際に加圧することができる。これにより、水素112を加圧するためのコンプレッサの必要が無くなり、このことで、これらの装置の資本、操作、および維持コストが節約される。さらに、図2で示すように、ポンプ126、128を用いて、ナトリウム108および水114がナトリウム反応器120に入る前にナトリウム108および水114を加圧することができる。ナトリウム108および水114のフィードを加圧することにより、ナトリウム反応器120を出る水素112も高圧である可能性がある。ポンプ126、128を図2ではロータリーポンプとして示すが、ナトリウム108および水114を加圧するために当該技術分野で公知の任意の種類のポンプを使用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、少量の鉱油116(図3)が、ナトリウム反応器120に供給されるナトリウム中に存在していてもよい。鉱油116がナトリウム反応器120中で高温および/または高圧にさらされる場合、鉱油116は燃焼して、微量の一酸化炭素、二酸化炭素、炭酸ナトリウム、およびさらなる水素副生成物を産生する可能性がある。一酸化炭素、二酸化炭素、および水素は水素112とともにナトリウム反応器120を出る可能性があり、一方、炭酸ナトリウムは第2水性水酸化ナトリウム流れ113とともにナトリウム反応器120を出る可能性がある。第2水性水酸化ナトリウム流れ113中の炭酸ナトリウムを第1水性水酸化ナトリウム流れ104によりナトリウムイオン分離器110に戻すことができる。ナトリウムイオン分離器110において、ナトリウムは、膜142を越えてカソライトチャンバー134中へと輸送されると考えられる。さらに、アノライトチャンバー136中に残存する炭素は、酸素106と反応して、微量の一酸化炭素および/または二酸化炭素を形成すると考えられる。
【0029】
ナトリウム108中の鉱油の量および水素112の使用目的に応じて、水素112をガス分離器124(図2)に供給することができる。前述のように、水素112は、ナトリウム108中に存在し得る鉱油116由来の一酸化炭素および二酸化炭素などの不純物を含む可能性がある。さらに、水素112は、ナトリウム108および水114の反応から生じる、蒸気の形態でなど、水分を含む可能性がある。したがって、水素112はガス分離器124を通過して、精製された水素112’を形成することができる。ガス分離器124は、例えば、精製された水素112’を産生するための膜または圧力スイング吸着式(PSA)ガス分離器を含み得る。そのような膜およびPSA分離器は当該技術分野で公知であり、したがって本明細書中では詳述しない。非限定例な例として、膜は、パラジウム膜など、ポリマー材料または金属材料からできているものであってよい。そのような膜は、これらに限定されるものではないが、プラクサイア・サーフェース・テクノロジー社(Praxair Surface Technology, Inc.)(コネティカット州ダンベリー)、ユニバーサル・インダストリアル・ガシズ社(Universal Industrial Gases, Inc.)(ペンシルベニア州イーストン)、エア・リキード(Air Liquide)(フランス国パリ)、またはエア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社(Air Products and Chemicals, Inc.)(ペンシルベニア州リハイバレー)をはじめとする多くの供給源から商業的に入手可能である。PSA分離器は、活性アルミナ、ゼオライト、たとえばモレキュラシーブゼオライト、または活性炭モレキュラシーブであってよい。PSA分離器は、これらに限定されるものではないが、クエストエア・テクノロジー社(QuestAir Technologies Inc.)(カナダ国バーナビ−)、シークアル・テクノロジー社(SeQual Technologies Inc.)(カリフォルニア州サンディエゴ)、セプコア社(Sepcor, Inc)(テキサス州ヒューストン)、およびプラクサイア・サーフェース・テクノロジー社(コネティカット州ダンベリー)をはじめとする数多くの供給源から商業的に入手可能である。
【0030】
本発明の水素生成システム100は、当該技術分野で公知の他の水素産生技術に勝るいくつかの利点を提供する。たとえば、ナトリウム反応器120へほとんど鉱油が送られないと仮定すると、水素生成システム100は本質的に環境に優しい。図1および2で示されるように、水酸化ナトリウム流れ104、113を合わせてシステム100を通してリサイクルすることができるので、水114が本発明の水素生成システム100中で消費される唯一の材料である。さらに、全水素生成システム100は、水102、酸素106、および水素112だけを産生する。さらに、本発明の水素生成システム100のサイズおよびそれに関連する操作パラメータ、たとえば流速は、生産しようとする水素112の量に依存するであろう。このように、水素生成システム100のサイズを容易に増減して、要件を満たすことができる。さらに、水素産生に加えて、ナトリウムイオン分離器110を用いて元素ナトリウム108を産生することができ、これはさらなる産業的用途を有する可能性がある。
【0031】
本発明を本明細書中では構造的および方法論的特性に関して多少特殊な言語で記載した。しかし,本発明は表示され、記載された具体的な特徴に限定されるものと理解されるべきではない。なぜなら、本明細書中で開示した意味は、本発明を実行に移す好ましい形態を含むからである。本発明は、したがって、その形態のいずれかまたは同等物の原則にしたがって適切に解釈された添付の請求の範囲の適切な範囲内での修飾で請求される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を産生する方法であって:
第1水性水酸化ナトリウム流れからナトリウムを分離し;そして
ナトリウムを水と組み合わせて、水素および第2水性水酸化ナトリウム流れを産生することを含む、方法。
【請求項2】
第2水性水酸化ナトリウム流れを第1水性水酸化ナトリウム流れと組み合わせることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1水性水酸化ナトリウム流れからナトリウムを分離することが:
第1水性水酸化ナトリウム流れを電解セルのアノライトチャンバー中に供給し;
鉱油を電解セルのカソライトチャンバー中に供給し;
電解セル、アノライトチャンバー、およびアノライトチャンバーからカソライトチャンバーへナトリウムカチオンを選択的に輸送するためのセラミック膜により分離されているカソライトチャンバーに電位をかけ;そして
電解セルのカソライトチャンバー中でナトリウムを形成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
電解セルのカソライトチャンバー中でナトリウムを形成することが:
ナトリウムを産生するためにカソライトチャンバー中でナトリウムカチオンを電子と組み合わせ;そして
ナトリウムを鉱油中に浸すことを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
電解セルのアノライトチャンバー中で水および酸素を形成することを更に含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
ナトリウムを水と組み合わせて高圧水素を産生する前に、ナトリウムおよび水を加圧することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
水および不純物の少なくとも一部を水素から分離することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ナトリウムを水と組み合わせて、水素および第2水性水酸化ナトリウム流れを産生することが:
ナトリウムを反応器中に供給し;
水を反応器中に供給し;
反応器中でナトリウムと水とを反応させ;そして
水素および第2水性水酸化ナトリウム流れを生成させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
反応器中の発熱反応から生じる熱を用いて、ナトリウムおよび水を加熱することをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ナトリウムを反応器中に供給することが、約98℃よりも高い温度でナトリウムを反応器中に供給することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
水を反応器中に供給することが、過熱水または蒸気を反応器中に供給することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
水素を産生する方法であって:
アノライトチャンバー、カソライトチャンバー、およびアノライトチャンバーとカソライトチャンバーとを分離するセラミック膜を含む電気化学セルを提供し;
第1水性水酸化ナトリウム流れをアノライトチャンバー中に供給し;
鉱油をカソライトチャンバー中に供給し;
セラミック膜を越えてナトリウムカチオンを移動させるために、電気化学セルに電位をかけ;
カソライトチャンバー中でナトリウムを形成し;
カソライトチャンバーから反応器中へナトリウムを供給し;
水を反応器中に供給し;
ナトリウムおよび水を反応させて、第2水性水酸化ナトリウム流れおよび水素を産生し;そして
第2の水性水酸化ナトリウムを用いて更なるナトリウムを形成することを含む、方法。
【請求項13】
水を反応器中に供給することが、ナトリウムおよび水を反応させて第2水性水酸化ナトリウム流れおよび高圧水素を産生するために高圧水を反応器中に供給することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
電気化学セルに電位をかけることが、太陽光発電、地熱、水力、風力、および原子力のうちの少なくとも1つから電気化学セルに電位を供給することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
さらなるナトリウムを形成することが、第2水性水酸化ナトリウム流れを第1水性水酸化ナトリウム流れと組み合わせることを含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
水素を産生するためのシステムであって:
ナトリウムを第1水性水酸化ナトリウム流れから分離するように設定された分離器;および
分離器からナトリウムを受容し、第2水性水酸化ナトリウム流れおよび水素を産生するために水およびナトリウムを反応させるために設定された反応器と連結された水源
を含む、システム。
【請求項17】
分離器が:
アノードを有し、水性水酸化ナトリウムを含むように設定されたアノライトチャンバー;
カソードを有し、鉱油を含むように設定されたカソライトチャンバー;
アノライトチャンバーからカソライトチャンバーへナトリウムカチオンを輸送するように設定された、アノライトチャンバーとカソライトチャンバーとの間に配置された膜;および
膜を通ってアノライトチャンバーからカソライトチャンバーへとナトリウムカチオンを通過させるために、カソードおよびアノードと電気的に接続された電位源
を含む電解セルを含む、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
膜が、NaSICON材料を含むセラミック膜を含む、請求項16記載のシステム。
【請求項19】
水素を不純物および水分から分離するように設定されたガス分離器をさらに含む、請求項16記載のシステム。
【請求項20】
ナトリウムが液体を含む、請求項16記載のシステム。
【請求項21】
水を加圧するように設定された少なくとも1つのポンプをさらに含む、請求項16記載のシステム。
【請求項22】
水素を産生するためのシステムであって:
水性水酸化ナトリウムをナトリウムと水酸化物とに変換するように設定された少なくとも1つの電解セル;
電流を少なくとも1つの電解セルへ供給するために前記少なくとも1つの電解セルに連結された少なくとも1つのエネルギー源;および
水素ガスおよび水性水酸化ナトリウムを産生するために少なくとも1つの電解セルにより産生されるナトリウムを水と反応させるように設定された少なくとも1つの反応器を含む、システム。
【請求項23】
少なくとも1つの反応器に連結され、この少なくとも1つの反応器により産生される水素から水分および不純物を除去するように設定された、少なくとも1つのガス分離器をさらに含む、請求項22記載のシステム。
【請求項24】
少なくとも1つの電解セルが、前記少なくとも1つの電解セルのアノライトチャンバーからカソライトチャンバーへナトリウムカチオンを輸送するように設定されたNaSICON膜を含む、請求項22記載のシステム。
【請求項25】
反応器中で産生された水性水酸化ナトリウムを少なくとも1つの電解セルに戻すように設定された少なくとも1つの導管をさらに含む、請求項22記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−512849(P2013−512849A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542039(P2012−542039)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056243
【国際公開番号】WO2011/071653
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(501445988)バテル エナジー アライアンス,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】